(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6886968
(24)【登録日】2021年5月19日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】ロボット外科用システムを用いて体腔を可視化するための角度付き内視鏡の使用方法
(51)【国際特許分類】
A61B 34/35 20160101AFI20210603BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20210603BHJP
A61B 1/313 20060101ALI20210603BHJP
A61B 1/045 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
A61B34/35
A61B1/00 654
A61B1/313
A61B1/045 622
【請求項の数】18
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-517288(P2018-517288)
(86)(22)【出願日】2016年10月5日
(65)【公表番号】特表2018-534975(P2018-534975A)
(43)【公表日】2018年11月29日
(86)【国際出願番号】US2016055396
(87)【国際公開番号】WO2017062393
(87)【国際公開日】20170413
【審査請求日】2019年10月4日
(31)【優先権主張番号】62/239,412
(32)【優先日】2015年10月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512269650
【氏名又は名称】コヴィディエン リミテッド パートナーシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】メグラン, ドワイト
【審査官】
安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2015/142957(WO,A1)
【文献】
特開平08−332169(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/121765(WO,A1)
【文献】
国際公開第2015/143067(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0245600(US,A1)
【文献】
特開2015−024026(JP,A)
【文献】
特開2014−095953(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/104088(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/00−34/35
A61B 1/00− 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科手技中に体腔を可視化するシステムであって、前記システムは、
細長い本体を備える角度付き内視鏡と、
前記細長い本体の遠位端部分に位置付けられた画像取込装置と
を備え、
前記細長い本体は、手術部位が前記画像取込装置の視野内にあるように、患者の体腔内の第1の位置に位置付けられるように構成されており、前記角度付き内視鏡が前記第1の位置にある場合、前記画像取込装置の前記視野は、前記手術部位を含む前記体腔の第1の体積を取り込み、
前記細長い本体は、指令点に応答して長手方向軸を中心として回転するように構成されており、
前記画像取込装置は、前記細長い本体が回転したときに複数の画像を取り込むように構成されており、
前記体腔の全景は、前記複数の画像から生成され、
前記システムは、ユーザインターフェースを有するロボット外科用システムをさらに備え、
前記ユーザインターフェースは、臨床医の手が前記ユーザインターフェースに接触しているか否かを検出するように構成されており、前記ユーザインターフェースは、前記ユーザインターフェースが前記臨床医の手が前記ユーザインターフェースに接触していないことを検出した場合、前記指令点を開始するように構成されている、システム。
【請求項2】
前記画像取込装置の前記視野が前記体腔の前記第1の体積よりも大きい第2の体積を取り込むように、前記細長い本体は、前記指令点に応答して、前記細長い本体によって規定された長手方向軸に沿って、前記手術部位から離れて第2の位置に並進させられるように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記細長い本体が前記第2の位置にある場合、前記細長い本体は、前記長手方向軸を中心として回転するように構成されている、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記細長い本体は、前記体腔の前記全景が生成された後に、前記第1の位置に戻るように構成されている、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記指令点は、手動で開始される、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記システムは、前記体腔内で移動可能な外科用器具をさらに備え、前記指令点は、前記外科用器具の移動に応答して開始される、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記外科用器具の前記移動は、前記外科用器具が前記体腔の中に並進することを含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記外科用器具の前記移動は、前記外科用器具のエンドエフェクタが前記手術部位から閾値距離を超えて引き抜かれるように、前記外科用器具が並進することを含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記外科用器具の前記エンドエフェクタを、前記閾値距離を超えて引き抜くことは、前記第1の体積から前記エンドエフェクタを引き抜く、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記外科用器具の前記移動は、前記外科用器具が第2の外科用器具と交換されることを含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項11】
前記ユーザインターフェースは、前記臨床医の凝視が前記ユーザインターフェースのディスプレイに向けられているか否かを検出するように構成されており、前記ユーザインターフェースは、前記ユーザインターフェースが前記臨床医の前記凝視が前記ユーザインターフェースの前記ディスプレイに向けられていないことを検出した場合、前記指令点を開始するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記ユーザインターフェースは、ポータブルディスプレイの移動を検出するように構成されており、前記ユーザインターフェースは、前記ユーザインターフェースが前記ポータブルディスプレイが所定の位置まで移動したことを検出した場合、前記指令点を開始するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記細長い本体は、前記長手方向軸に直交するピッチ軸を中心として旋回するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記細長い本体は、前記ピッチ軸および前記長手方向軸に直交するヨー軸を中心として旋回するように構成されており、前記ピッチ軸および前記長手方向軸および前記ヨー軸は、旋回点で交差している、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記システムは、前記全景を表示するように構成されたウェアラブルディスプレイをさらに備え、前記ウェアラブルディスプレイの移動は、前記全景の臨床医の視界を更新する、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記システムは、前記体腔の前記全景を表示するように構成された対話型ディスプレイをさらに備え、前記システムは、前記体腔の前記全景を調整するために、前記対話型ディスプレイとの対話を可能にするように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記対話は、前記体腔の前記全景をパンすることを含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記対話は、前記体腔の前記全景をズームすることを含む、請求項16に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年10月9日に出願された米国仮特許出願第62/239,412号の利益及びそれに対する優先権を主張し、その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
ロボット外科用システムは、最小侵襲性医療手技において使用されている。このような医療手技中、ロボット外科用システムは、ユーザインターフェースとインターフェースをとる外科医によって制御される。ユーザインターフェースにより、外科医は、患者の上で作動する道具を認識し、操作することができる。ユーザインターフェースは、ディスプレイ、及びロボット外科用システムを制御するために外科医によって移動可能な入力コントローラまたはハンドルを含む。
【0003】
一般に、ロボット外科用システムは、内視鏡を含み、この内視鏡は、患者の開口部を通して挿入され、患者の体腔内の手術部位の可視化を提供する。現行の内視鏡は、手術部位の視野に制約をもたらす。具体的には、この内視鏡は、複数の道具が細胞組織の上で作動している場所の手術部位に向けられている。これにより、体腔の大部分が観察されないままとなる。医療手技中、内視鏡の視野の外側にある、体腔内の目標外の細胞組織と接触することがある(例えば、いくつかの道具が交換されるとき)。その結果、目標外の細胞組織の観察が所望され得るか、または必要であり得る。
【0004】
いくつかの医療手技中、複数の及び/または専用の内視鏡が、体腔の可視化の増加を提供するために使用される。複数の及び/または専用の内視鏡の使用により、医療手技のコストが増大する場合がある。さらに、複数の内視鏡の使用により、それらの内視鏡が、医療手技中に交換されまたは取り替えられる必要があり得る。加えて、またはあるいは、複数の内視鏡の使用により、患者の体腔の可視化を提供するために体腔内に必要な開口部の数が増える場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、単一の内視鏡を利用して医療手技中に体腔の可視化を増加させることができるロボット外科用システムが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様では、外科手技中に体腔を可視化する方法は、角度付き内視鏡の細長い本体を患者の体腔内の第1の位置に位置付けることと、指令点に応答して長手方向軸を中心として細長い本体を回転させることと、細長い本体が回転したときに画像取込装置を用いて複数の画像を取り込むことと、複数の画像から体腔の全景を生成することとを含む。角度付き内視鏡の細長い本体を位置付けることは、画像取込装置の視野内に手術部位を位置付けることを含む。画像取込装置は、細長い本体の遠位端部分内に位置付けられている。画像取込装置の視野は、角度付き内視鏡が第1の位置にある場合、手術部位を含む体腔の第1の体積を取り込む。
【0007】
いくつかの態様では、本方法は、指令点に応答して、細長い本体を、細長い本体により規定された長手方向軸に沿って、手術部位から離れて第2の位置に並進させることを含む。第2の位置にある画像取込装置の視野は、体腔の第1の体積よりも大きい、第2の体積を取り込むことができる。細長い本体が第2の位置にある場合、長手方向軸を中心として細長い本体を回転させることが起こり得る。本方法は、体腔の全景を生成した後に、細長い本体を第1の位置に戻すことを含み得る。
【0008】
いくつかの態様では、本方法は、指令点を開始することを含むか、または本方法は、指令点が外科用器具の移動に応答して開始されるように、体腔内に外科用器具を移動させることを含み得る。外科用器具を移動させることは、外科用器具を体腔の中に並進させることを含み得る。あるいは、外科用器具を移動させることは、外科用器具のエンドエフェクタが手術部位から閾値距離を超えて引き抜かれるように、外科用器具を並進させることを含み得る。外科用器具のエンドエフェクタを、閾値距離を超えて引き抜くことは、第1の体積からエンドエフェクタを引き抜き得る。外科用器具を移動させることは、外科用器具を第2の外科用器具に取り替えることを含み得る。
【0009】
ある特定の態様では、本方法は、ロボット外科用システムのユーザインターフェースとインターフェースをとる臨床医の属性を検出し、指令点を開始することを含み得る。ユーザインターフェースとインターフェースをとる臨床医の属性を検出することは、臨床医のユーザインターフェースに対する凝視を検出すること、及び臨床医の凝視がユーザインターフェースのディスプレイに向けられていない場合に指令点を開始することを含み得る。加えて、またはあるいは、ユーザインターフェースとインターフェースをとる臨床医の属性を検出することは、ポータブルディスプレイの移動を検出すること、及びポータブルディスプレイの所定の移動に基づいて指令点を開始することを含み得る。
【0010】
特定の態様では、外科用器具を回転させることは、長手方向軸と直交するピッチ軸を中心として細長い本体を旋回させることを含む。加えて、外科用器具を回転させることは、ピッチ軸及び長手方向軸と直交するヨー軸を中心として細長い本体を回回させることを含む。ピッチ軸、長手方向軸、及びヨー軸は、共通の旋回点で交差することができる。
【0011】
いくつかの態様では、本方法は、ウェアラブルディスプレイの移動が全景の臨床医の視界を更新するように、ウェアラブルディスプレイ上に全景を表示することを含み得る。本方法は、体腔の全景と対話して、体腔の全景を調整することを含み得る。体腔の全景と対話することは、体腔の全景をパンすることを含む。加えて、またはあるいは、体腔の全景と対話することは、体腔の全景をズームすることを含む。
【0012】
本開示の典型的な実施形態のさらなる詳細及び態様は、添付された図を参照しながら、以下により詳細に記載されている。
本願明細書は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
外科手技中に体腔を可視化する方法であって、
角度付き内視鏡の細長い本体を患者の体腔内の第1の位置に位置付けることであって、これにより、手術部位が前記細長い本体の遠位端部分内に位置付けられた画像取込装置の視野内にあるようになり、前記角度付き内視鏡が前記第1の位置にある場合、前記画像取込装置の前記視野が、前記手術部位を含む、前記体腔の第1の体積を取り込む、位置付けることと、
指令点に応答して長手方向軸を中心として前記細長い本体を回転させることと、
前記細長い本体が回転したときに前記画像取込装置を用いて複数の画像を取り込むことと、
前記複数の画像から前記体腔の全景を生成することと、を含む、方法。
(項目2)
前記画像取込装置の前記視野が前記体腔の前記第1の体積よりも大きい第2の体積を取り込むように、前記指令点に応答して、前記細長い本体を、前記細長い本体により規定された長手方向軸に沿って、前記手術部位から離れて前記第2の位置に並進させることをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記細長い本体が前記第2の位置にある場合、前記長手方向軸を中心として前記細長い本体を回転させることが起こる、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記体腔の前記全景を生成した後に、前記細長い本体を前記第1の位置に戻すことをさらに含む、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記指令点を手動で開始することをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記指令点が外科用器具の移動に応答して開始されるように、前記体腔内で前記外科用器具を移動させることをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記外科用器具を移動させることは、前記外科用器具を前記体腔の中に並進させることを含む、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記外科用器具を移動させることは、前記外科用器具のエンドエフェクタが前記手術部位から閾値距離を超えて引き抜かれるように、前記外科用器具を並進させることを含む、項目6に記載の方法。
(項目9)
前記外科用器具の前記エンドエフェクタを、前記閾値距離を超えて引き抜くことが、前記第1の体積から前記エンドエフェクタを引き抜く、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記外科用器具を移動させることは、前記外科用器具を第2の外科用器具と交換することを含む、項目6に記載の方法。
(項目11)
ロボット外科用システムのユーザインターフェースとインターフェースをとる臨床医の属性を検出して、前記指令点を開始することをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目12)
前記ユーザインターフェースとインターフェースをとる臨床医の属性を検出することは、前記ユーザインターフェースとの前記臨床医の手の接触を検出することを含み、前記臨床医の手が前記ユーザインターフェースと接触していない場合、前記指令点を開始することが起こる、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記ユーザインターフェースとインターフェースをとる臨床医の属性を検出することは、前記ユーザインターフェースでの前記臨床医の凝視を検出することを含み、前記臨床医の前記凝視が前記ユーザインターフェースのディスプレイに向けられていない場合、前記指令点を開始することが起こる、項目11に記載の方法。
(項目14)
前記ユーザインターフェースとインターフェースをとる臨床医の属性を検出することは、ポータブルディスプレイの移動を検出して、前記指令点を開始することを含む、項目11に記載の方法。
(項目15)
前記外科用器具を回転させることは、前記長手方向軸に直交するピッチ軸を中心として前記細長い本体を旋回させることを含む、項目1に記載の方法。
(項目16)
前記外科用器具を回転させることは、前記ピッチ軸及び前記長手方向軸に直交するヨー軸を中心として前記細長い本体を旋回させることを含み、前記ピッチ軸、前記長手方向軸、及び前記ヨー軸は、旋回点で交差している、項目15に記載の方法。
(項目17)
ウェアラブルディスプレイの移動が前記全景の臨床医の視界を更新するように、前記ウェアラブルディスプレイ上に前記全景を表示することをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目18)
前記体腔の前記全景と対話して、前記体腔の前記全景を調整することをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目19)
前記体腔の前記全景と対話することは、前記体腔の前記全景をパンすることを含む、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記体腔の前記全景と対話することは、前記体腔の前記全景をズームすることを含む、項目18に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本開示の様々な態様は、図面を参照しながら、以下に記載され、これらの図面は、本明細書に組み込まれ、かつ本明細書の一部を構成する。
【0014】
【
図1】本開示に基づいて提供された内視鏡の概略側面図である。
【
図2】第1の位置にある
図1の内視鏡と一緒の患者の体腔、及び内視鏡の視野内にある手術部位に位置付けられた外科用器具の切断図である。
【
図3】内視鏡の視野から引き抜かれた外科用器具と一緒の、
図2の患者の体腔の切断図である。
【
図4】第2の位置にある内視鏡と一緒の、及び内視鏡の視野に再度取り込まれた外科用器具と一緒の、
図2の患者の体腔の切断図である。
【
図5】本開示に基づくユーザインターフェース及びロボットシステムの概略図である。
【
図6】本開示に基づく患者の体腔を表示する方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示の実施形態は、今から図面を参照しながら詳細に記載されるが、それらの図面の中で、同じ参照数字は、いくつかのそれぞれの図にある同一のまたは対応する構成要素を示す。本明細書の中で使用されているように、用語「臨床医」とは、医師、看護師、または任意の他の介添人を指し、また支援要員を含んでもよい。本記述を通じて、用語「近位の」とは、装置または構成部品のうち臨床医に最も近い部分を指し、また用語「遠位の」とは、装置または構成部品のうち臨床医から最も遠い部分を指す。
【0016】
概して、本開示は、内視鏡を用いた最小侵襲性外科手技中に患者の体腔を可視化するための方法及び装置に関する。具体的には、本開示は、0°内視鏡の役割を果たすことが可能なロボット外科用システムを用いた角度付き内視鏡の使用について詳述し、また患者の体腔内にある手術部位の全景を提供する。以下に詳述されているように、角度付き内視鏡は、ある道具が細胞組織の上で作動している手術部位の0°内視鏡観察の役割を果たすことができ、また再位置付け可能であるため手術部位を囲んでいる体腔の全景を提供することができる。角度付き内視鏡は、所定の指令点または時間間隔で(例えば、外科手技中の、所定の時間間隔でまたは特殊な段階で)そのような全景を自動的に提供することができる。加えて、またはあるいは、角度付き内視鏡は、ユーザが生成した指令点に応答して(例えば、臨床医の要求時に)このような全景を提供することができる。内視鏡は、独立型の器具として、またはロボット外科用システムの一部として使用され得る。
【0017】
ここで
図1を参照すると、角度付き内視鏡10は、本開示に基づいて提供され、角度付き内視鏡10の長手方向軸「A−A」を規定する細長い本体12を含む。細長い本体12は、長手方向軸「A−A」に対して垂直に延びる線または平面からある角度「θ」を規定する角度付きされた遠位端16を含む遠位端部分14まで延びている。図に示されているように、角度「θ」は、約30°であるが、角度「θ」は、約0°〜約60°の範囲内であってもよい。
【0018】
角度付き内視鏡10は、細長い本体12の遠位端16を通じて体腔「C」(
図2)の画像を取り込む画像取込装置18(例えば、カメラ)を含む。それらの画像は、静止画像またはビデオの形態であってもよい。図に示されているように、画像取込装置18は、細長い本体12の遠位端部分14内に位置付けられるが、画像取込装置18は、細長い本体12内の任意の場所に位置付けられてもよいことが企図される。また、画像取込装置18は、細長い本体12の外側に位置付けられてもよく、細長い本体12の遠位端16を通じて画像を取り込むための、細長い本体12内に位置付けられた光ファイバケーブル(図示せず)を含んでもよいことが企図される。画像取込装置18は、細長い本体12の遠位端16を通じて円錐状の視野「FV」を有し、その結果、視野「FV」の一方の端部または第1の端部は、長手方向軸「A−A」に対しておおよそ平行であり、視野「FV」のもう一方の、反対側の、または第2の端部は、長手方向軸「A−A」に対して約30°の角度「α」で広がっている。異なった角度「θ」の場合には、視野「FV」の第2の端部の角度もまた、変化するであろうことは、理解されるであろう。
【0019】
図2を追加して参照すると、角度付き内視鏡10は、外科手技中に体腔「C」を可視化するため、患者の体腔「C」の中に、開口部「O」を通して挿入される。開口部「O」は、生まれながらに生じている孔または切開部であってもよい。角度付き内視鏡10は、開口部「O」内に位置付けられたカニューレ110を通して挿入されてもよい。
【0020】
外科手技中、細長い本体12は、長手方向軸「A−A」が円錐状の視野「FV」内に全体が存在するような手術部位「S」を通過するように位置付けられている。
図1を詳細に参照すると、角度付き内視鏡10は、長手方向軸「A−A」を手術部位「S」と整合させ、かつ画像取込装置18を使って体腔を表示するため、少なくとも4つの自由度において移動可能である。第1に、細長い本体12は、長手方向軸「A−A」に沿って内部及び外部に並進可能である。第2に、細長い本体12は、長手方向軸「A−A」を中心として転がることが可能または回転可能である。第3に、細長い本体は、旋回点「P」で長手方向軸「A−A」と交差しかつ直交するピッチ軸を中心として旋回可能である。最後に、細長い本体12は、長手方向軸「A−A」と交差しかつ直交し、ならびに旋回点「P」でピッチ軸と直交するヨー軸を中心として旋回可能である。
図2に示されているように、旋回点「P」は、長手方向軸「A−A」が、体腔「C」を規定する壁「W」を通過する点である。
【0021】
続けて
図2を参照すると、外科手技中、外科用器具200が、体腔「C」を規定する壁「W」の中の開口部「O」を通して挿入される。外科用器具200は、角度付き内視鏡10と同じ開口部「O」を通して、または
図2に示されているように、別個の開口部「O」を通して挿入されてもよい。外科用器具200は、手術部位「S」における患者の細胞組織の上で作動するエンドエフェクタ210を含む。角度付き内視鏡10の細長い本体12は、手術部位「S」、及び外科用器具200のエンドエフェクタ210が、画像取込装置18の視野「FV」内にあるように、体腔「C」の体積を可視化するように位置付けられる。角度付き内視鏡10の細長い本体12は、外科用器具200のエンドエフェクタ210、及び手術部位「S」が、画像取込装置18の視野「FV」内にあるように位置付けられる。角度付き内視鏡10は、0°内視鏡として動作し、細長い本体12を操作する(例えば、角度付き内視鏡10をヨー軸及び旋回軸を中心として旋回させる)ことによって手術部位「S」をとらえることができる。画像取込装置18と手術部位「S」との間の距離が減るに従い、画像取込装置18により取り込まれる手術部位「S」の詳細な画像が増えることが理解されるであろう。
【0022】
図3を参照すると、外科手技中、外科用器具200は、外科用器具200のエンドエフェクタ210が、手術部位「S」、及び画像取込装置18の視野「FV」から引き抜かれるように、手術部位「S」から、または体腔「C」から外へ引き抜かれることができる。外科用器具200は、様々な理由のために、手術部位「S」から引き抜かれる場合があり、それらの理由には、以下に限定されないが、外科用器具200を別の外科用器具(図示せず)に取り替えること、エンドエフェクタ210を再装填すること、及びエンドエフェクタ210を再位置付けすることが含まれる。外科用器具200が、視野「FV」から引き抜かれるため、外科用器具200は、画像取込装置18の視野「FV」の外側の体腔「C」内の細胞組織に接触する場合がある。
【0023】
図4を参照すると、角度付き内視鏡10は、長手方向軸「A−A」に沿って、体腔「C」から外へ並進することができ、その結果、角度付き内視鏡10の遠位端16が、手術部位「S」から離れながら移動する。角度付き内視鏡10の遠位端16が、手術部位「S」から離れながら移動するため、画像取込装置18の視野「FV」は、体腔「C」のより大きな体積を包含し、エンドエフェクタ210が手術部位「S」から引き抜かれる場合、外科用器具200のエンドエフェクタ210は、視野「FV」内にある一方で、エンドエフェクタ210を取り囲んでいる細胞組織が、画像取込装置18の視野「FV」内にあるように、体腔「C」内に留まっている。さらに、角度付き内視鏡10は、長手方向軸「A−A」を中心として転がりまたは回転することができ、元の視野「FV」を含む全景視野「PV」内の複数の画像を取り込むことができる。全景視野「PV」は、角度付き内視鏡10が転がりまたは回転する間に取り込まれる複数の画像を一緒につなぎ合わせることによって作り出される手術部位「S」の全景である。この全景視野「PV」は、手術部位「S」を取り囲んでいる体腔「C」の可視化を提供し、臨床医の、体腔「C」に関するより大きな可視化を可能にする。角度付き内視鏡10が転がりまたは回転する間に、角度付き内視鏡10はまた、ピッチ軸及び/またはヨー軸(
図1)を中心として旋回して、画像取込装置18の焦点を調節し、全景視野「PV」を増加させることもできると企図される。
【0024】
先に詳述されたように、長手方向軸「A−A」を中心とする角度付き内視鏡10の転がりまたは回転は、360°の完全回転であるが、角度付き内視鏡10の回転は、360°未満の部分回転であってもよい。角度付き内視鏡10が、ほんの一部分転がりまたは回転して全景視野「PV」を生成する場合、角度付き内視鏡10は、以前の回転位置に転がりまたは回転して戻ってもよい。角度付き内視鏡10の完全なもしくは部分的な転がりもしくは回転は、約1.0秒の継続時間を有するが、角度付き内視鏡の完全なもしくは部分的な転がりもしくは回転は、約0.1秒〜約2.0秒の継続時間を有してもよいことが企図される。
【0025】
全景視野「PV」の生成は、所定の指令点で自動的に、または指令点が、臨床医により開始されるときに、開始され得る。所定の指令点のいくつかの例としては、以下に限定されないが、エンドエフェクタ210が手術部位「S」から引き抜かれるとき、外科用器具(例えば、外科用器具200)が開口部「O」を通して挿入されるとき、外科用器具が開口部「O」から引き抜かれるとき、外科用器具が視野「FV」から引き抜かれるとき、または様々な時間間隔による場合が含まれる。
【0026】
図5を参照すると、角度付き内視鏡10及び外科用器具200は、本開示に基づくロボット外科用システム301の一部であり得る。ロボット外科用システム301は、ロボットシステム310、処理装置330、及びユーザインターフェース340を含む。ロボットシステム310は、通常、連結機構312及びロボットベース318を含む。連結機構312は、移動可能となるように道具(例えば、角度付き内視鏡10または外科用器具200)を支持する。連結機構312は、それぞれが、道具を支持する端314を有するアームの形態であってもよい。ユーザインターフェース340は、処理装置330を通じてロボットベース318と通信する。
【0027】
ユーザインターフェース340は、三次元画像を表示するように構成されているディスプレイ装置344を含む。ディスプレイ装置344は、手術部位「S」の三次元画像を表示し、三次元画像は、連結機構312の端314上に位置付けられた撮像装置(例えば、角度付き内視鏡10)により取り込まれたデータを含み得、かつ/または外科手術講義室の回りに位置付けられた撮像装置(例えば、手術部位「S」内に位置付けられた撮像装置、患者の近くに位置付けられた撮像装置、撮像用アーム352の遠位端に位置付けられた撮像装置356)により取り込まれたデータを含み得る。撮像装置は、手術部位「S」の視覚画像、赤外線画像、超音波画像、X線画像、熱画像、及び/または任意の他の既知のリアルタイム画像を取り込むことができる。撮像装置は、取り込まれた画像データを処理装置330に送信し、処理装置は、画像データからリアルタイムで手術部位「S」の三次元画像を作り出し、そして表示するためのディスプレイ装置344に三次元画像を送信する。
【0028】
ユーザインターフェース340はまた、臨床医が、ロボットシステム310を操作する(例えば、連結機構312、連結機構312の端314、及び/または様々な道具を動かす)ことが可能な入力アームまたはハンドル342も含む。それぞれの入力ハンドル342は、処理装置330と通信可能であり、そこへ制御信号を送信し、またそこからフィードバック信号を受信する。それぞれの入力ハンドル342は、外科医が、連結機構312の端314で支持された様々な道具を操作する(例えば、締め付ける、捕捉する、加熱する、開く、閉じる、回転させる、押す、切り取るなど)ことが可能な入力装置を含み得る。
【0029】
外科手技中、ロボットシステム310は、角度付き内視鏡10を動作させ0°内視鏡として機能させることができ、同時に臨床医は、連結機構312を操作することによってユーザインターフェース340と関わり合うことができる。先に詳述されたように、臨床医が、ユーザインターフェース340を切り離すとき(例えば、臨床医が入力ハンドル342を解除するとき、臨床医がディスプレイ344から目を離すとき)、ユーザインターフェース340は、指令点を生成することができ、その結果、処理装置330はロボットシステム310に信号を送信し、角度付き内視鏡10を使って手術部位「S」の全景を生成することができる。加えて、ロボットシステム310は、ある道具(例えば、外科用器具200)が特殊な移動を完了する場合(例えば、その道具が、閾値距離を超えて引き抜かれる場合、ある器具が別の道具と交換される場合)、動的追跡法を使用して、指令点を生成することができる。
【0030】
次いで、ユーザインターフェース340は、ディスプレイ344上に、手術部位「S」の全景を表示する。先に詳述されたように、ディスプレイ344は、手術部位「S」の全景が3Dで表示されるように、3Dディスプレイであり得る。ディスプレイ344は、臨床医が、手術部位の全景内で興味ある区域をパン、回転、ズームイン、及び/またはズームアウトするような対話型ディスプレイであり得る。加えて、またはあるいは、ディスプレイ344は、臨床医の頭部の移動により、臨床医が手術部位「S」の全景対話することができるように、ディスプレイヘルメット344aを含み得ると企図される。ヘルメット344aは、慣性追跡法を使用して、臨床医の頭部の移動を検出することができる。さらに、ユーザインターフェース340は、ディスプレイ344と関連して移動可能なポータブルディスプレイまたはモニタ344bを含み得ると企図される。ポータブルディスプレイ344bは、手術部位「S」の視界を表示し、ポータブルディスプレイ344bがディスプレイ344に対して移動されるときに、慣性追跡法を使用して、ポータブルディスプレイ344b上の手術部位「S」の視界を更新することができる。さらに、臨床医は、ポータブルディスプレイ344bと相互に連携して、ポータブルディスプレイ344b上の手術部位「S」の視界を更新することができる。また、ポータブルディスプレイ344bは、ディスプレイ344がなくても使用されることもできると企図される。
【0031】
ここで
図6を参照すると、外科手技中に体腔を可視化する方法400が、角度付き内視鏡(例えば、角度付き内視鏡10)を利用した本開示に基づいて記載されている。最初に、角度付き内視鏡は、患者の体腔「C」内に位置付けられる(ステップ410)。外科手技中、角度付き内視鏡は、0°内視鏡として動作することができる(ステップ420)。先に詳述されたように、角度付き内視鏡は、ピッチ軸、ヨー軸、及び長手方向軸を中心として角度付き内視鏡を操作することによって、0°内視鏡として動作することができる。
【0032】
外科手技中、指令点が生成される(ステップ430)。指令点に応答して、角度付き内視鏡は、長手方向軸を中心として回転する(ステップ440)。角度付き内視鏡は、角度付き内視鏡が回転する前に体腔「C」内に引き抜かれ、また角度付き内視鏡が回転した後で引き抜かれる前に、元の位置に戻され得る(ステップ444)。角度付き内視鏡が回転するため、角度付き内視鏡内に配置された画像取込装置18は、複数の画像を取り込む(ステップ450)。体腔「C」の全景が、それらの複数の画像から生成される(ステップ460)。先に詳述されたように、全景は、臨床医に対して表示される(ステップ470)。先に詳述されたように、臨床医は、全景と対話することができる。
【0033】
本開示のいくつかの実施形態が、図面の中に示されてきたが、本開示がそれらに限定されることを意図しておらず、本開示は、当技術分野が可能な範囲と同じ範囲の広さであり、また本明細書は、同様に解釈されることを意図されている。また、上記の実施形態の任意の組み合わせも想定され、添付された特許請求の範囲の適用内である。したがって、上記の説明は、限定すべきものと解釈されてはならず、単に特定の実施形態の例示として解釈されるべきである。当業者は、本開示に添付された特許請求の範囲の範囲内で他の変形例を想定することができるであろう。