(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】腹腔鏡下訓練装置の上から見た斜視図である。
【
図3】本発明に従って網層を引き戻した状態の右結腸モデルの平面図である。
【
図4】本発明の右結腸モデルの大腸の平面図である。
【
図5】本発明の右結腸モデルの大動脈の平面図である。
【
図6】本発明の模擬組織構造、例えば腸間膜層の平面図である。
【
図7A】本発明の模擬組織構造、例えば腸間膜層の製造プロセスのステップを示す略図である。
【
図7B】本発明の模擬組織構造、例えば腸間膜層の製造プロセスのステップを示す略図である。
【
図7C】本発明の模擬組織構造、例えば腸間膜層の製造プロセスのステップを示す略図である。
【
図7D】本発明の模擬組織構造、例えば腸間膜層の製造プロセスのステップを示す略図である。
【
図7E】本発明の模擬組織構造、例えば腸間膜層の製造プロセスのステップを示す略図である。
【
図8A】本発明の模擬組織構造、例えば腸間膜層の外側層の組成上のバリエーションの一覧を示す図である。
【
図8B】本発明の模擬組織構造、例えば腸間膜層の中間または内側層の組成上のバリエーションの一覧を示す図である。
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図9A】本発明の模擬組織構造、例えば腸間膜層の組成上のバリエーションの流れ図である。
【
図9B】本発明の模擬組織構造、例えば腸間膜層の組成上のバリエーションの流れ図である。
【
図10A】本発明の切開可能模擬組織の第1の層の平面図である。
【
図10B】本発明の切開可能模擬組織を製造するためのモールドおよびテンプレートの平面図である。
【
図10C】本発明のモールドおよびテンプレートの頂部上の切開可能模擬組織の第1の層の平面図である。
【
図10D】本発明の第1の層、テンプレートおよびモールドの頂部上の模擬血管系および模擬腫瘍の平面図である。
【
図10E】本発明の模擬血管系、模擬腫瘍、第1の層、テンプレートおよびモールドの頂部上のゲル製の第2の層の平面図である。
【
図10F】本発明のゲル製の第2の層、模擬血管系、模擬腫瘍、第1の層、テンプレートおよびモールドの頂部上の第3の層の平面図である。
【
図10G】本発明の模擬組織プラットホームのペグに取り付けられた切開可能模擬組織のモデルの上から見た斜視図である。
【
図10H】本発明の模擬組織プラットホームのペグに取り付けられた切開可能模擬組織のモデルの平面図である。
【
図11】本発明に従って外側層に設けられた切開創が内側ゲル層を露出させた状態の切開可能模擬組織の上から見た平面図である。
【
図13】本発明の臓器モデルの分解組立て図である。
【
図14A】本発明に従って切開創が入れられた状態の臓器モデルの平面図である。
【
図14B】本発明に従って切開創がレトラクトされた状態の臓器モデルの平面図である。
【
図15】本発明に従って切開創がレトラクトされた状態の臓器モデルの上から見た斜視図である。
【
図17】本発明の臓器モデルの一部の
図16のA‐A線矢視断面図である。
【
図18A】本発明のトルトの白線の形成の際のシリコーンの2つの層の平面図である。
【
図18B】本発明に従ってトルトの白線の形成の際のシリコーンの白色層によって互いに連結されたシリコーンの2つの層の平面図である。
【
図18C】本発明のシリコーンの2つの層およびトルトの白線の
図18BのB‐B線矢視断面図である。
【
図19】本発明の模擬腸間膜層の断面側面図である。
【
図20】本発明の模擬腸間膜層および模擬トルトの筋膜の断面側面図である。
【
図21】本発明の模擬腸間膜層および模擬トルトの筋膜の断面側面図である。
【
図22】本発明の模擬腸間膜層および模擬トルトの筋膜の断面側面図である。
【
図23】本発明に従って模擬神経束を備えた模擬大動脈の上から見た斜視図である。
【
図24】本発明のモデルの骨盤領域の中線に沿って取った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1つまたは2つ以上の模擬臓器および組織の臓器トレーモデルは、カリフォルニア州所在のアプライド・メディカル・リソーシーズ・コーポレイション(Applied Medical Resources Corporation )により製造されているSIMSEI腹腔鏡下訓練システムのような模擬腹腔鏡下訓練装置の内部に配置されたときに腹腔鏡下手技および技術を訓練したり練習したりするのに理想的である。腹腔鏡下訓練装置10が
図1に示されている。腹腔鏡下訓練装置10は、プラボング等(Pravong et al.)により2011年9月29日に出願され、アプライド・メディカル・リソーシーズ・コーポレイションに譲渡され、そして米国特許出願公開第2012/0082970号明細書として公開された同時係属中の米国特許出願第13/248,449号明細書(発明の名称:Portable laparoscopic trainer)に記載されており、この米国特許出願公開を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。腹腔鏡下訓練装置10は、トップカバー12を有し、トップカバー12は、ベース14に、トップカバー12をベース14から隔てる1対のレッグ16によって連結されている。腹腔鏡下訓練装置10は、患者の胴、例えば腹部領域を真似るよう構成されている。トップカバー12は、患者の前方面を表し、トップカバー12とベース14との間に構成された空間は、臓器が位置する患者の内部または体腔またはキャビティ18を表している。腹腔鏡下訓練装置10は、患者を真似た状態で種々の外科的処置およびこれらの関連の器械を教示し、練習するとともに実演する上で有用なツールである。外科用器械がトップカバー12にあらかじめ設けられている孔20を通ってキャビティ18中に挿入される。これらあらかじめ設けられた孔20は、トロカールをシミュレートしたシールを有するのが良くまたは患者の皮膚および腹壁部分をシミュレートした模擬組織を有するのが良い。種々のツールおよび種々の方法を用いてトップカバー12を穿通することができ、それによりトップカバー12とベース14との間に配置されたモデル臓器、例えば本発明の右結腸モデルに対する実寸大の手技を実施することができる。訓練装置10のキャビティ18内に配置されると、臓器モデルは、一般に、ユーザの視界から覆い隠され、ユーザは、この場合、ビデオモニタ22上に表示されるビデオフィードにより手術部位を間接的に観察することによって術式を腹腔鏡下で練習することができる。
【0015】
トップカバー12にヒンジ留めされたビデオディスプレイモニタ22は、
図1に開放配向状態で示されている。ビデオモニタ22は、イメージをモニタ22に送るための種々の視覚システムに連結可能である。例えば、あらかじめ形成された孔20のうちの1つまたはキャビティ内に設けられたウェブカムを通って挿入され、そして模擬手技を観察するために用いられる腹腔鏡をビデオモニタ22および/またはモバイルコンピュータ計算装置に連結してイメージをユーザに提供するのが良い。別の変形例では、トップカバー12は、ビデオディスプレイ22を備えず、ラップトップ型コンピュータ、モバイルディジタル装置またはタブレットを支持し、そしてこれをワイヤでまたはワイヤレスで訓練装置10に接続する手段を有する。
【0016】
組み立てられると、トップカバー12は、レッグ16が実質的に周囲のところに配置されるとともにトップカバー12とベース14との間に相互に連結された状態で、ベース14の真上に配置される。トップカバー12およびベース14は、実質的に同一の形状およびサイズのものであり、実質的に同一の周辺輪郭を有している。訓練装置10は、側壁を備えていないが、レッグ16は、端部開放型訓練装置10からの視界から内部キャビティを部分的に隠している。腹腔鏡下訓練装置10は、ベース14に対して角度をなしたトップカバー12を有している。レッグ16は、ベース14に対するトップカバー12の角度を調節することができるよう構成されている。
図1は、ベース14に対して約30〜45°の角度まで調節される訓練装置10を示している。訓練装置10の傾斜により、有利には、トレンデレンブルグまたは逆トレンデレンブルグ位置での患者がシミュレートされる。トレンデレンブルグ位置では、患者の体は、足が心臓よりも高い位置にある状態でまたはこの反対の関係をなした状態でこの体が仰向けで平らになった状態になるよう傾けられる。トレンデレンブルグ位置により、重力が腸管を骨盤から引き離しているときに骨盤内臓器への良好な接近が可能になり、それにより骨盤内手術野上への腸管の侵入を阻止して外科医が臓器を容易に操作することができる腹腔内に広い作業空間を得ることができる。トップカバー12の選択された角度位置は、レッグ16に設けられている蝶ねじを示すことによってロックされる。ベース14に対する訓練装置10のトップカバー12の角度または水平面、例えばテーブルトップに対するトップカバー12の角度は、本発明の結腸モデルが訓練装置10のキャビティ18内に挿入された状態で右半結腸切除術の訓練および練習に関して特に有利である。
【0017】
次に
図2を参照すると、本発明の右結腸モデル26が示されており、この右結腸モデルは、腹腔鏡下環境中での手技のうちでとりわけ右半結腸切除術手技、例えば
図1を参照して上述した腹腔鏡下訓練装置10の訓練および練習に特に適している。模擬臓器は、代表的には、シリコーンまたは熱可塑性エラストマー(TPE)で作られ、トレー28に配置される。トレー28は、トレー28内に納められたモデル臓器を収容するよう構成されている。トレー28は、ベースおよび代表的にはベースの周囲に沿ってぐるりと形成された少なくとも1つの側壁を有する。追加の側壁が解剖学的構造に特有な場所を定めるようこの周囲の内側に形成され、かかる追加の側壁は、模擬構造および組織を収容する構成されている。これら追加の側壁は、モデル26がキャビティ18内に納められた状態で医師が訓練装置10のトップカバー12を通って挿入された器械を用いて模擬臓器を操作している間、医師により加えられる力に応答して側方支持体となる。
図2は、トレー28の頂部に沿って配置されたシリコーンで作られているモデル肝臓30および他の臓器の上に位置し、それぞれの血管系34を含む模擬網層32を示している。
【0018】
図3を参照すると、網層32は、下に位置する模擬臓器を露出させるよう引き戻された状態で示されており、かかる模擬臓器は、虫垂42およびS状結腸に取り付け可能な大腸36(
図4に単独で示されている)の少なくとも一部分、小腸38の少なくとも一部分、胆嚢集成体を含む肝臓30、胃、十二指腸、腎臓、尿管、大動脈40(
図5に単独で示されている)、動脈および静脈を表す血管44、腹膜、ジェロタ筋膜および腸間膜層46(
図6に単独で示されている)を含む結合組織層を含む。臓器は、種々の腹腔鏡下器械を用いた外科的訓練のために人体内に存在する正確な解剖学的体位設定および存在場所を表すよう組み立てられている。右腸モデル26とも呼ばれる場合のある右結腸モデル26は、右半結腸切除術の外科的訓練のために重要なランドマークおよび特徴を強調するための改造を施した状態でシリコーン模擬臓器を用いて組み立てられている。
【0019】
ベーストレー28が設けられている。ベーストレー28は、黄色または赤色のフォームで作られ、このベーストレーは、訓練装置10のキャビティ18内に挿入可能であるような寸法形状になっている。変形例として、ベーストレー28は、ベーストレー28中に直接嵌まり込む黄色または赤色のフォームで作られているライナを有しても良く、ベーストレー28は、このライナと一緒に腹腔鏡下訓練装置10内に挿入可能である。追加のフォーム部分をフォームベースの左側側部に追加するのが良く、その目的は、右側部側壁をシミュレートすることにある。模擬外科的処置の際の種々の体位置のシミュレーションを可能にするため、別のモデルベースが設けられる。例えば、右結腸モデルベース28またはライナは、モデル26の一端部のところに傾斜角を有するよう真空成形プラスチックで作られるのが良い。この角度は、外科的処置中における患者の逆トレンデレンブルグ体位設定をシミュレートすることができる。さらに、モデル26は、骨盤形状を真似るよう成形された湾曲形状を有するよう真空成形プラスチックベース上に作られるのが良く、骨盤形状は、腹部側壁の湾曲形状を形成するよう近位側に延びている。
【0020】
シリコーンで作られたシートが模擬臓器の取り付けおよび組み立てを助けるようモデルのベース28の頂部にくっつけられる。シリコーンで作られた臓器模擬およびこれらの色の一覧が以下の表1に見える。大腸36、大動脈40および腸間膜46は、実質的に、
図2および
図3に示されているサイズのままであっても良く、あるいは、これらは、腹腔鏡下訓練装置10のベースに良好に適合するために短くされても良く若しくは縮められても良い。これら解剖学的構造は、これらの正確な相対的解剖学的位置設定を厳密に表す仕方でフォームベーストレー28の頂部にくっつけられている。
表1:臓器及びこれらの色
【0021】
腸間膜層46は、動脈および静脈44を包封し、この腸間膜層は、腹腔鏡下切開用器を用いて把持されて切開されるよう構成されている。組織層相互間の切開は、シリコーンだけでシミュレートすることができない特性を備えている。したがって、この問題を解決するため、実際の解剖学的構造、例えば腸間膜46をシミュレートするに適した切開可能な模擬組織の幾つかの変形例を開発した。腸間膜46をシミュレートするのに適した切開可能模擬組織は、互いに頂部に積み重ねられた3つの層で構成されている。3つの層は、頂部層48、底部層50および中間層54を含む。頂部層48および底部層50は、腹膜層を表すのが良く、ゲルから成る中間層54は、切開可能なシリコーンで作られている血管44を包囲した結合組織を表すのが良い。
【0022】
次に
図7A〜
図7Eを参照して、腸間膜層46として例示的に使用できる本発明の切開可能模擬組織の構成について今説明する。注目されるように、本発明の切開可能模擬組織47は、腸間膜層46としての使用には限定されず、かかる切開可能模擬組織は、任意の模擬組織構造の少なくとも一部を形成することができる。切開可能模擬組織47の構成は、2枚の別々の薄いシリコーンシートを作る初期ステップを含み、1枚のシートは頂部層48のためであり、1枚のシートは、底部層50のためであり、これら2枚のシリコーン層は、
図7Aに示されているように完全に硬化されている。シートを完全に硬化させると、薄いシリコーンゲル層58a,58bをスパチュラまたはこれに類似したツールを用いてそれぞれ
図7Bに示されているようにシリコーンシート48,50の模様が付いていない側部上に広げる。シリコーン血管を含む模擬血管系44を未硬化ゲル層58a,58bのいずれか一方上に置く。
図7Cは、頂部層48のシート上の未硬化ゲル層58a上に配置されている模擬血管系44を示している。次に、シリコーンシート48,50は、ゲル層58a,58bとともに完全に硬化して模擬血管系44を頂部層48にくっつける。ゲル内張り層48,50を硬化させると、新たなシリコーンゲルから成る第3のまたは中間の層54を調製して層48,50の一方上に流す。一変形例では、新たなシリコーンゲルをシリコーンシート48上に流してシリコーン血管44が配置されるようにする。ゲルを塗り広げて血管系44の模擬血管を完全に覆うようにする。次に、第2の層50を第1の層48の頂部上で中間層54を覆って配置し、その間、シリコーンは、依然として未硬化のゲルであり、空気ポケットがサンドイッチ状の構造を作るようエッジに押し出される。このプロセスの結果として、3層切開可能模擬組織47を用いると、これら層相互間に配置されている包封血管系44の腹腔鏡下切開およびスケルトン化に特に適するとともに適合性のある例えば
図6に示されている腸間膜組立体46をシミュレートすることができる。多数の層を設けることにより、切開可能な模擬組織構造にとって正確でかつ真に迫った感触および機能が得られる。さらに、切開可能模擬組織47は、有利には、種々の組織平面を作り、医師は、かかる組織平面を介して切開技能を磨くことができる。モデル26は、層を切開する能力を与えるだけでなく、モデル26により、医師は、組織平面または層44,48,50,54,58a,58bを正しく識別することができ、これは、個々の各手技にとって学習すべき重要な技能である。一変形例では、切開可能模擬組織47は、血管系層44なしで構成され、かかる切開可能模擬組織もまた、切開を実施するのに使用できる。
【0023】
切開可能模擬組織47を作製するプロセス中に、結果的に切開可能模擬組織47の種々の所望の特性および繰り返しが得られるようにする幾つかの添加剤が導入されている。切開可能な腸間膜層46の外側の第1および第2の層48,50および内側のまたは中間の層54のための種々の成分の一覧が表2に示されており、かかる一覧は、
図8Aおよび
図8Bの流れ図にまとめられた状態で記載されている。
図8Aおよび
図8Bの所望の特性に基づいて最適な切開可能シートを決定する流れ図が
図9Aおよび
図9Bに示されている。
図9Aおよび
図9Bでは、腸間膜層は、本発明の切開可能模擬組織の例示の用途として用いられ、
図9Aおよび
図9Bの流れ図は、模擬腸間膜層だけを作るための用途には限定されず、任意の模擬組織構造における使用を含む。また、
図9Aおよび
図9Bに示されている血管は、模擬血管には限定されず、埋め込み状態の任意の模擬解剖学的構造または組織を含むことができ、かかる解剖学的構造または組織としては、腫瘍、病理学的病変部、臓器、管、軟骨などが挙げられるが、これらには限定されない。シリコーン外側層48,50は、従来の2つの部分が1:1の比の室温加硫(RTV)シリコーンで、若しくは1:1の比のRTVシリコーンとデッドナ添加剤で、または2:1の比のRTVシリコーンとデッドナ添加剤で作られている。RTVは、白金硬化室温加硫シリコーン(PCRTVS)を含むが、これには限定されない。シリコーンデッドナは、シリコーン油を含む(これには限定されない)シリコーン流体化学系統群に属し、このシリコーンデッドナは、白金硬化シリコーン添加剤である。デッドナの一例は、ペンシルベニア州マカンジー所在のスムース‐オン・インコーポレイテッド(Smooth-On, Inc.)により製造されているSLACKERと呼ばれる。添加剤としてのデッドニング剤(deadening agent)は、シリコーンを皮膚または人間組織の感触に類似するように軟らかくし、しかも本物らしくする。シリコーンデッドナは、軟化することができるとともに結果として生じる「感触」ならびに硬化シリコーンのリバウンド特性を変更することができるシリコーン添加剤である。この添加剤は、シリコーン油を含むシリコーン流体の化学系統群に含まれる。シリコーン流体およびシリコーン油は、流体の粘度および化学構造に依存するある範囲の使用を有する。シリコーンデッドナは、白金硬化室温加硫シリコーンと混合可能な種類のシリコーン油である。
【0024】
臓器を成形するために用いられる従来型シリコーンのデュロメータは、00〜10ショアから10Aショアまでの範囲にある。かくして、デッドナの添加の結果として、互いに異なるデュロメータのシリコーンに添加されたときに互いに異なる特性が得られる。デュロメータの観点からは軟質のシリコーンへのデッドナの添加の結果として、完全硬化時に、ゲル状の組成物が得られる。しかしながら、デュロメータ的に高いシリコーンへのデッドニング剤(deadening agent)の添加の結果として、軟らかい感触のシリコーンの所望の特徴が得られ、かかる軟らかい感触のシリコーンは、完全硬化時に、その変形破断点に容易に達する。かくして、シリコーンとデッドニング剤の組み合わせは、腸間膜46を構成する外側層48,50、例えば腹膜層の手触り上の特徴を提供することができる。
【0025】
中間層の変形例は、(1)デッドナまたはデッドニング剤を含むゲル、(2)アルコールを含むゲル、(3)アルコールを含み熱が加えられたゲル、または(4)デッドナまたはデッドニング剤およびアルコールを含み熱が加えられたゲルを含む。イソプロピルアルコールが用いられる。包封ゲル層54への各添加剤の添加は、層を切開するために用いられて層の切開を容易にする圧力および力の大きさを減少させる。ゲルは、腸間膜組立体46中に中間可能層54として使用できる白金硬化シリコーンゴムゲルである。中間層54の切開を容易にする別の変形例では、アルコールを添加してゲルを薄くし、かくしてゲルへの侵入を容易にする。ゲル層54のそれ以上の劣化は、中間層54を切開することができる容易さを一層高めることができる。アルコールとゲルの混合物を約70℃まで加熱して硬化時間を早めるとともにアルコールの蒸発の結果として生じる多孔質中間層54を作る。ゲル、アルコールおよび熱で構成された多孔質中間層54は、ゲルに固有の粘着性を減少させ、腸間膜層48,50,54中に侵入してこれを切開しやすくする。別の変形例では、デッドナをシリコーンゲルに添加し、その結果、低い弾力特性を有することになるが、完全硬化時に粘着性が高められた調合物が得られる。硬化ゲル混合物の粘着性を含む問題を軽減するため、アルコールを同じ比でシリコーンゲルとデッドナの混合物に添加する。その結果得られた特性は、完全硬化時に、ゲル混合物それ自体およびゲルとデッドナと比較して粘着性が減少するが、この特性はまた、腹腔鏡下切開用器を用いた場合に所望の切開可能な手応えを示す。この場合もまた、熱をこの混合物に加えると、切開可能層の別の変形例について上記において一覧表示した特徴を有する多孔質中間層54が作られる。ゲルおよび種々の添加剤で構成される中間の切開可能層54の変形例は、有利には、組織を通って移動して腸間膜層46内で2つの外側層48,50相互間に納められている自由な血管を切開するという手応えを提供する。さらに、本明細書において与えられている調合されたゲル変形例は、キャビティが包囲されて腹腔鏡により照明される腹腔鏡下手技において特に有利である光沢または艶を提供する本物のような濡れた見掛けを層54に与える。
表2:層及び材料
【0026】
右結腸モデル26中に存在する血管系44は、テキサス州ヒューストン所在のクレートン・ポリマーズ(Kraton Polymers)製のシリコーンまたはKRATONポリマー管で作られている。血管は、上述した模擬腸間膜層46内に納められている。血管系44は、解剖学的に配置されてゲル中間層54によって腹膜層48,50にくっつけられている。さらに、血管系44が納められた切開可能な組織を右半結腸切除術用モデルに関して説明したが、この製造方法を同様な手段により任意の組織模擬モデルに利用することができまたは模擬組織プラットホーム用のスタンドアロン型モデルとして利用することができる。
【0027】
右結腸トレーの別のコンポーネントは、網(omentum)32である。網32は、大腸36上にくっつけられ、この網は、モデル26の頂部上に掛かっている。網32の幾つかの変形例が開発されている。第1の変形例は、モデル26の頂部上に容易に掛かることができるテキスチャ付きシリコーン流延網32である。しかしながら、網32の重さおよび感触をシミュレートするため、この網もまた、軟質シリコーンフォームを用いて流延により成形されるのが良い。フォームで作られた網32は、黄色に着色されており、これは腹腔内に広い空間を占めるように見えるが、モデル26の頂部上に掛かることができる。血管系34は、網32が体内で見えるようにその外観をシミュレートするために網32の両方の変形例上に存在している。
【0028】
図3に戻ってこれを参照すると、上行結腸60を腹壁62に連結しているモデル上の付着部64の存在は、右半結腸切除手技の訓練にとって重要な特徴である。腹壁62に取り組むため、数個の同じ模型が作製される。腹壁62の第1の模型は、高さが約2インチ(5.08cm)である長くて薄いフォーム片をこれまたフォームで作られるのが良いベース28の側部に取り付けることによって作られる。腹部側壁62もまた、上述の成形されたベースおよび側壁の曲率を通ってベース28中に組み込まれるのが良い。最後に、腹部側部62は、フォームベース28の長さに合わせて延びてフォームベース28にくっつけられる湾曲した剛性で硬質の流延材料で作られるのが良い。外側付着部64を上述の腹壁62のうちの任意のものに取り付けることができる。外側付着部64は、上述の腹壁62のちの任意のものの頂部にくっつく2枚のテキスチャ付きシリコーンシートを用いることによって作られる。腹壁62にくっつけられた2枚のシート相互間にはトルトの白線が存在する。トルトの白線については幾つかのモデルが存在する。第1の模型は、トルトの白線をロープファイバ(rope fiber)でシミュレートしている。白い綿ロープのストランドがトルトの白線の血管系平面の外観を真似るようモデル26内に用いられている。トルトの白線もまた、解剖学的ランドマークを表すためにシリコーンで白いストライプまたは縞を作ることによってシミュレートできる。トルトの白線は、シリコーンシートの2つの層相互間にくっつけられ、次に、これらの層は、エッジに沿って互いにくっつけられ、次に上行結腸60にくっつけられる。その結果得られた構造は、腸36を含む側壁62に連結する外側付着部である。
【0029】
本発明の別の観点では、切開可能な模擬組織47は、少なくとも2つの互いに異なる層で構成されている。第1の層は、シリコーン層で構成され、第2の層は、シリコーンゲルで構成されている。切開可能な模擬組織47を用いると、解剖学的酷似を備えた合成組織および臓器モデルを作ることができ、しかもかかる切開可能模擬組織47を切開および他の外科的処置の訓練のために用いられる模擬訓練モデルとして使用することができる。本発明の切開可能模擬組織47は、少なくとも1つの外側シリコーン層および1つまたは2つ以上の外側シリコーン層によって包封されたゲル層で構成されている組立体であり、その結果、外科医によって観察される切開に酷似する構造が得られる。切開可能模擬組織の1つまたは2つ以上のシリコーン層は、全重量の33%を占めるシリコーンデッドナと混合された2部品RTV10Aデュロメータシリコーンで作られ、それにより、用いられる全シリコーンとデッドナの比は2:1になる。デッドナは、これが添加される硬化シリコーンの特性を軟化するシリコーン油である。その結果、デッドナが添加される10Aデュロメータシリコーンは、硬化して10A未満のデュロメータシリコーンになる。デッドナの添加量は、これが添加されるデュロメータの特性の変化に比例する。シリコーン顔料がシリコーンとデッドナの混合物に添加され、それによりシリコーンが流延されてこれによって表される解剖学的構造に対応した顔料との粘性混合物がつくられる。シリコーン混合物をオプションとしてテキスチャを有するフォームのシート上に流延しまたは石膏材料で作られたテキスチャを含むシート上に流延する。フォームが用いられる場合には室温で約45分間かけてまたはフォームが用いられない場合にはオーブン内において約70℃の温度で約25分間かけて流延シリコーン混合物を硬化させる。シートサイズは、切開されている平面または表面のサイズに応じて漸変する長さおよび幅を有するのが良い。
【0030】
シリコーンシートは、いったん硬化すると、長方形キャビティを有するモールド上に配置され、このキャビティは、シリコーンサイズよりも小さい。シリコーンシートは、このシートの中央領域がキャビティ内に配置されるとともにシートの外周部がモールドの表面上に平らに置かれるようモールド上に配置される。このセットアップ構成を提供することにより、ゲルの漏れを最小限に抑えた状態でゲルの包封プロセスが容易になる。中央キャビティ内において、シリコーン血管系および病理学的病変部、例えば腫瘍がシリコーン系接着剤を用いてキャビティ内に位置するシートの部分上にくっつけられる。血管系および病理学的病変部の配置は、切開が代表的に実施される解剖学的組織に類似している。シリコーン系接着剤が硬化し、血管系および病理学的病変部が無傷である場合、中間ゲル層が作られる。本発明は、血管系の埋め込みには限定されず、他の解剖学的ランドマークおよび構造をも含み、かかるランドマークおよび構造としては、血管系、腫瘍、病理学的病変部、臓器および組織構造が挙げられるが、これらには限定されず、これらの構成材料としては、任意のポリマー材料、シリコーン、KRATONなどが挙げられるが、これらには限定されない。
【0031】
一変形例では、切開可能模擬組織中に存在する包封ゲルは、シリコーンゲル、デッドナ、およびイソプロピルアルコールで構成されている。ゲルを作るため、2部分から成るシリコーンゲルを等しい重量部および容量部で混合カップに入れる。デッドナを全シリコーン添加容量と等しい量で添加する。イソプロピルアルコールをデッドナの容量と等しい量で添加する。混合物を混合してついには、均質の溶液が得られるようにする。シリコーン顔料を必要に応じて添加して切開されるべき人間の組織に酷似する顔料を作るのが良い。溶液をいったん十分に混合すると、この溶液をモールドのキャビティ内に配置されている外側シリコーンシートの頂部上に流延してゲル層を作る。ゲルは、封入されてキャビティの頂部を通ることはなく、と言うのは、もしそうなると、ゲルの漏れが生じ、これは全体的組織モデルにとって有害だからである。シリコーンゲルは、シリコーンエラストマーである。しかし極めて軟質であるのは、白金硬化シリコーンゴムである。シリコーンゲルのデュロメータは、ショア00硬度スケールを下回り、それにより、ゲル状の軟質性、粘着性および低い耐引き裂き性が生じる。切開可能な組織に用いられるゲルの一例は、スムース‐オン社によって製造されて000‐35の硬度を有するECOFLEXゲルである。
【0032】
この製造時点で、切開可能な模擬組織モデルを完了させる2つの別々の方法が存在する。例えば、切開可能模擬組織を
図1〜
図6を参照して説明したように外科的処置の訓練に的を絞った臓器トレー内のコンポーネントとして消費することができる。かかる場合、切開可能模擬組織がトレー内のコンポーネントとして消費される場合、第1のシリコーンシートと同一のサイズおよびシリコーン、デッドナ、および顔料の蘇生を有する第2のシリコーンシートを用いてゲル層を包封する。第2のシリコーンシートをゲルを含む第1のシート上に載せる。層を押して空気ポケットがシートの側部に押し出されて大気中に放出されるようにする。シリコーン接着剤を用いて2枚のシリコーンシート相互間でキャビティの周囲を内張りし、それにより2つのシリコーン層相互間にシールを作ってゲルの漏れを阻止する。ゲルを2枚のシリコーンシート相互間で室温で硬化させる。いったん硬化すると、切開可能模擬組織を注型モールドから取り出すのが良い。シリコーンシートの周囲を用いて切開可能模擬組織を臓器トレー内で種々のシリコーン臓器に付着させるのが良い。切開可能模擬組織47は、特に
図2〜
図6に示されているような右半結腸切除手技について訓練する模擬臓器訓練トレーのために作られるのが良い。
【0033】
別の例では、切開可能模擬組織46を小さなプラットホーム上で利用して切開の技術についてのみ訓練を行うことができる。この場合、ゲル層をキャビティ内にいったん流し込むと、ゲル層を約60℃においてオーブン内で約35分間かけて硬化させる。ゲルを硬化させると、10Aデュロメータシリコーン混合物を切開可能模擬組織の外側シリコーンシートと同一の顔料で調製する。第2のシリコーンシート層を形成するため、シリコーン混合物をゲルおよび外側シリコーンシート層に流延し、次に、オーブン内において約60℃で約30分間かけて硬化させる。その結果得られた切開可能模擬組織モデルは、切開の技量を練習するために用いることができるスタンドアロン型モデルである。切開可能模擬組織のこの模型は、一方の側部を持つモデルであり、この場合、外側層の一方だけが人の組織と同様な特性を持つ軟質のシリコーンである。10Aデュロメータシリコーンで構成された外側層は、例えば2012年9月25日に出願された米国特許出願第14/037,005号明細書(発明の名称:Surgical training model for laparoscopic procedures)に記載されている形式の縫合プラットホーム内に配置された場合にモデルのためのぴんと張った支持体に役立ち、この米国特許出願を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。
【0034】
外側シリコーン層の作製中に添加される添加剤としてのデッドニング剤により、硬化後のシリコーンが軟質になるとともに皮膚またはヒトの組織の感触について本物のようになる。デッドナの添加の結果として、互いに異なるデュロメータを持つシリコーンに添加されると、互いに異なる特性が得られる。デュロメータ的に軟質のシリコーンへのデッドニング剤の添加の結果として、完全硬化時にゲルのような組成物が得られる。しかしながら、デュロメータ的に高いシリコーンへのデッドニング剤の添加の結果として、軟らかい感触のシリコーンの所望の特徴が得られ、かかる軟らかい感触のシリコーンは、完全硬化時に、その変形破断点に容易に達する。かくして、シリコーンとデッドニング剤の組み合わせは、腸間膜を構成するヒトの組織、例えば腹膜層の手触り上の特徴を提供することができる。
【0035】
中間ゲル層は、デッドナを含むとともにアルコールが追加されかつ熱の加えられたゲルを有する。包封ゲル層への各添加剤の添加により、切開のために用いられる圧力および力の大きさが減少し、それにより切開が容易になる。ゲルは、切開可能模擬組織中の中間切開可能層として使用できる白金硬化シリコーンゴムゲルである。アルコールを添加してゲルを薄くし、それにより中間層を切開しやすくするとともにこれに侵入しやすくする。さらに、ゲル層の劣化は、中間層の切開可能特性を更に高めることができる。アルコールとゲルの混合物を加熱して硬化時間を早めるとともにアルコールの蒸発により多孔質中間層を作る。ゲルおよびアルコールで構成された多孔質中間層は、ゲルに固有の粘着性を減少させるとともに包封ゲル層に侵入してこれを切開しやすくする。別の変形例では、デッドナをシリコーンゲルに添加し、その結果、完全硬化時に弾力特性が低いが、粘着性が増大した配合物が得られる。硬化ゲル混合物の粘着性を含む問題を軽減するため、アルコールを同じ比でシリコーンゲルとデッドナの混合物に添加する。その結果得られた特性は、完全硬化時に、ゲル混合物それ自体およびゲルとデッドナと比較して粘着性が減少するが、この特性はまた、腹腔鏡下切開用器を用いた場合に所望の切開可能な手応えを示す。この場合もまた、熱をこの混合物に加えると、切開可能層の別の変形例について上記において一覧表示した特徴を有する多孔質中間層が作られる。ゲルおよび種々の添加剤で構成された中間切開可能層の構成により、組織を通って移動して腸間膜層または他の組織構造若しくは臓器内の自由な血管を切開するという手応えを提供する。さらに、ゲルの光沢または艶の使用により、本物の組織の場合と同様な本物のような濡れた見掛けが与えられ、かかる使用は、腹腔鏡下技能の訓練の際にビデオモニタで見て特に有用である。
【0036】
外側シリコーン層を作製する際の変形例は、シリコーンのデュロメータの変更を含む。模擬臓器モデルを作るために有用であるRTV白金硬化シリコーンは、00‐10デュロメータおよび10Aデュロメータを有し、シリコーン外側層は、いずれか一方のシリコーンを用いて作製できる。加うるに、デッドナをシリコーンに添加すると、シリコーンの硬化形態を軟化させることができる。シリコーンの軟らかさおよび弾性の変化は、添加されるデッドナの量に正比例する。
図8Aは、切開可能模擬組織を形成する外側シリコーン層の流れ図を示している。
【0037】
中間ゲル層は、デッドナ、アルコールを含む添加剤が施されるとともに硬化するために熱が加えられたベースシリコーンゲルから成る。添加剤の各々を別々になくすことにより、各ステップのところでの変形例が与えられ、その結果、各形態について特性が得られる。
図8Bは、特定の比で添加剤を含むとともにこれら添加剤が示す特性を備えた各ゲル層組成物の変形例を示している。全ての実施形態についてこの本明細書全体にわたり、外側層に関する比は、容量に基づくか重量に基づくかのいずれかであるのが良く、その理由は、シリコーンおよびデッドナの密度がほぼ等しいからある。ゲル層とデッドナとアルコールの比は、容量に基づくものである。
【0038】
切開可能な模擬腸間膜層の組み立てにおける変形例は、血管系をくっつけるシリコーンゲルの使用を含む場合がある。この組立体の構成は、デッドナを含むシリコーンの2枚の別々のシートを作り、そして
図7Aに示されているようにこれらを完全に硬化させる初期ステップを含む。シートを完全に硬化させると、スパチュラまたは類似のツールを用いてシリコーンゲルの薄い層58a,58bを
図7Bに示されているようにシリコーンシート48,50の各々の模様なしの側部上に広げる。シリコーン血管で作られた血管系44を
図7Cに示されているようにシートのうちの1枚上の未硬化ゲル層58a上に載せる。ゲル層58a,58bを含むシリコーンシート48,50を完全に硬化させる。ゲル内張り層を硬化させると、新たなシリコーンゲル54を調製し、シリコーン血管44を配置させたシリコーンシート48上に流延する。ゲル54を塗り広げてこれが
図7Dに示されているように血管44を完全に覆う。次に、第2のシリコーンシート50を未硬化ゲル上に載せ、空気ポケットをエッジまで押し出す。このプロセスの結果として、多層腸間膜は、
図7Eに示されているような腹腔鏡下切開と適合性を持つことができる。
【0039】
本発明の切開可能模擬組織は、切開される代表的な組織の低い耐引き裂き性、弾性、靱性、色、およびテキスチャという機械的特性を有する。腹腔鏡下ツール、例えばマリーランド(Maryland)切開容器または腹腔鏡下はさみをこの組織内で用いて組織をそれぞれ切開しまたは切断するのが良い。ゲルの切開可能組織使用により、材料に対して独特の光沢が付与され、それによりこの材料は、本物のように濡れた外観を有することができる。この切開可能組織を構成するために用いられるゲルは、シリコーンを主成分としているので、ゲルを既に製造された種々の他のシリコーンモデルまたは他の臓器、例えばシリコーン血管に結合することができる。さらに、ゲルの粘性により、他の熱可塑性エラストマー、例えばKRATONポリマー(クレートンポリマー)で作られた血管をシリコーンゲルで外側シリコーン層に付着させることができる。
【0040】
本発明の切開可能模擬組織は、切開可能であり、しかもヒトの組織に酷似した幾つかの有利な特性を有する。模擬組織は、ヒトの組織の機械的特性、例えば弾性、靱性、色、およびテキスチャを真似ている。また、模擬組織の耐引き裂き性または引き裂き強度は低く、有利には、組織分離の伝搬を可能にする。模擬組織の耐引き裂き性が低いことにより、腹腔鏡下マリーランド(Maryland)切開容器または腹腔鏡下はさみを最小限の力で用いて鈍切開が容易になる。模擬組織はまた、切開を必要とする代表的な解剖学的構造の解剖学的ランドマークまたは解剖学的構造を含むことができる。これら解剖学的ランドマークまたは構造としては、臓器、腸間膜層相互間に埋め込まれた血管系、または切除される必要のある病理学的病変部、例えば腫瘍を包囲した腹膜シートが挙げられるが、これには限定されない。解剖学的ランドマークまたは構造は、非外傷性腹腔鏡下把持器またはマリーランド切開用器を用いて把持できまたは腹腔鏡下はさみを用いて切断できる。加うるに、本発明の切開可能模擬組織は、切開の完了時に解剖学的構造の操作および手技を可能にする。これら構造の運動は、切開の完了時にヒトの組織の解剖学的構造の運動に酷似している。加うるに、切開可能模擬組織は、一貫して製造可能である。模擬組織は、ヒトの臓器または膜の形状を取るよう成形可能である。切開可能模擬組織はまた、種々のシリコーンおよび熱可塑性樹脂と結合可能である。本発明は、シリコーン層の任意のものおよび全ては、下に位置する埋め込み状態の病理学的病変部、腫瘍、血管系などが層のうちの1つまたは2つ以上越しに僅かに視認できるよう半透明または透明であるのが良い。
実施例
【0041】
図10A〜
図10Hを参照して、切開可能な模擬組織の組成物を有する付勢を有する模擬組織モデルを製造する実施例を今説明する。2つの部分、すなわち部分Aおよび部分Bを含む10Aデュロメータシリコーンを用意する。10Aデュロメータシリコーンの約5グラムの部分Aを10Aデュロメータシリコーンの約5グラムの部分Bと混合する。約5グラムのシリコーンデッドナを添加する。黄色のシリコーン顔料を添加する。シリコーンとデッドナと顔料を十分に混合する。混合物をテキスチャ付きモールド上に流延し、そして硬化させて
図10Aに示されているように第1の層シート66を形成する。深さ約0.125インチ(3.175mm)の中央キャビティ70を備えた長方形のモールド68を
図10Bに示されているように用意する。中央キャビティ70の深さを所望の切開可能な厚さに応じて変更することができる。血管系テンプレート72を
図10Bに示されているよう長方形のモールドの中央キャビティ内に配置する。テンプレート72は、シリコーン血管が正確な解剖学的構造のために配置されるべき線74を示している。テンプレート72は、ある特定の病理学的病変部が配置されるべき解剖学的存在的場所76の表示を更に含む。血管系テンプレート72を開示するが、本発明は、これには限定されず、任意の解剖学的特徴のテンプレート72をある特定の構造、病理学的病変部、臓器、腫瘍および他の組織ならびに解剖学的ランドマークが配置されるべき場所に差し向けた状態で用いることができる。次に、第1の層シート66をこれが
図10Cに示されているようにモールド68の外縁部と整列するようモールド68上に配置する。第1の層シート66は、テンプレート72が第1の層シート66越しに視認できるように透明である。次に、
図10Dに示されているように、シリコーン系接着剤を用いて模擬血管系78および模擬腫瘍80を第1のシリコーンシート層66にくっつけるとともに下に配置されているテンプレート72上に示されている場所に配置する。模擬血管系78をテンプレート72の線74上に配置する。テンプレート72上の線74または他の形状を更に色付けしてこれと対応して色付けされた血管および/または臓器を正確な解剖学的存在場所に配置するのが良い。約3.3グラムの部分Aシリコーンゲルを約3.3グラムの部分Bシリコーンゲルと混合する。約6.67ミリメートルのシリコーンデッドナおよび5.27グラムのイソプロピルアルコールをシリコーンゲルに添加して一緒に混ぜる。体積または容量測定により、これらは、量的に約3.3ミリリットルの部分Aシリコーンゲル、約3.3ミリリットルの部分Bシリコーンゲル、6.67ミリリットルのシリコーンデッドナおよび6.67ミリリットルのイソプロピルアルコールを混ぜたものになる。黄色および白色のシリコーン含量を添加して混合する。混合物を中央キャビティ内に流し込んで模擬血管系78を包囲するが、キャビティを越えて漏れることがないようにし、それにより
図10Eに示されているような中間ゲル層82を形成する。コンポーネントの全てをオーブン内において約60℃で約35分間かけて硬化させる。中間ゲル層82もまた、硬化時には透明であり、したがって、模擬血管78および模擬腫瘍80が中間ゲル層82越しに視認できるようになる。10Aデュロメータシリコーンの約35グラムの部分Aと35グラムの部分Bを混合する。シリコーンを硬化済みのゲルおよびモデルの側面上に流延して第2の外側層84を形成する。次に、モデルをオーブン内において約60℃で約25分間かけて硬化させる。第2の外側層84もまた、透明であり、ゲル層82と外側層84の組み合わせ中の埋め込み状態のランドマーク、例えば模擬腫瘍80および模擬血管78が層66,82,84越しに視認できるようにする。シリコーンシートサンドイッチの過剰の周囲を切り落としてモデルの寸法が縦横約4インチ×5インチ(10.16cm×12.7cm)になるようにし、中間ゲル層82が2つの包囲している外側層66,84で包封されるようにする。モデルの周囲を2つの外側層66,84相互間に中間ゲル層82がない状態で互いにくっつけられた2つの外側層66,84で作ってモデルからのゲル層82の漏れを阻止するようにする。外側層66,84は、ゲル中間層82を密封するとともにこれを包囲するのに役立つ。
図10Gおよび
図10Hを参照すると、長方形のモデルのコーナー部に4つの穴86をあけ、モデルを模擬組織プラットホーム90の直立したペグ88上に配置してトランポリンのように浮かせ、切開を練習することができるようにする。
図10A〜
図10Hの模擬組織モデルは、胆嚢の付近の血管系のモデルであり、部分胆嚢モデルと見なすことができ、これは、模擬胆嚢を含んでも良くまたは含まなくても良い。使用にあたり、モデルをプラットホーム90上に浮かせまたは大きな臓器モデルまたは臓器トレーの一部を形成し、そして医師がモデルに対して外科的処置を訓練するための外科的模擬装置および/または訓練装置内に配置する。モデルを模擬装置および/または訓練装置の外側で用いても良い。さらに
図11を参照すると、医師は、第2の外側層84に切り込んで中間ゲル層82に入る。医師は、第2の外側層84を第1の外側層66から離して広げ、それにより埋め込み状態の構造、模擬血管78および模擬腫瘍80に接近する。このようにする際、医師は、中間ゲル層82を分離しまたは切開する必要があろう。中間ゲル層82は、軟らかくて光沢があり、しかも弾性である。第2の外側層84を持ち上げると、中間層82の軟質弾性ゲルは、有利には、第2の外側層84を第1の外側層66から遠ざけたときにこのゲルが延びているときに線維膜に似ている。中間ゲル層82が延びているとき、この中間ゲル層は、有利には、ゲルのストランド92が、外科医がゲルのこれらストランドを切り開くよう練習する2つの層相互間に相互結合状態のままで深いポケット内に開く。軟質シリコーンゲルの鈍または鋭(sharp )切開が続いて空間をあけ、それにより中間ゲル層82を通りかつ第1の外側層66と第2の外側層84との間の切開平面を作る。前方の層もまた、切り込んでこれを分割するのが良く、それにより例えば中間ゲル層82内に埋め込まれている模擬血管系78のような構造の視認性を更に得るのが良く、それによりスケルトン化を真似る。
【0042】
次に
図12〜
図15を参照して本発明の別の形態としての臓器モデル200について説明する。臓器トレーモデル200は、
図2〜
図6を参照して説明した特徴の全てを含み、これら特徴は、右結腸モデル26と関連しており、この臓器トレーモデルは、以下の模擬解剖学的構造、すなわち、模擬脾臓、模擬下降結腸、模擬S状結腸、模擬腸、模擬横行結腸、模擬直腸、模擬左腹側壁、模擬左トルトの白線、模擬大動脈、模擬左腎臓、模擬膵臓、模擬神経、腸間膜と腹膜後隙との間の模擬トルトの筋膜/腔、模擬左尿管、模擬生殖腺血管、模擬前立腺、模擬精嚢、模擬尿道、模擬膀胱、模擬腸間膜、模擬ダノンビリエー筋膜、模擬骨盤、左内腸間膜静脈および血管、およびプラスチックベースのうちの1つまたは2つ以上を含む左結腸モデルの特徴を更に有する。模擬解剖学的構造202は、オプションとしてのプラットホーム204上に支持され、このプラットホームは、ベース206内に配置された状態で外側模擬表皮層208で覆われている。プラットホーム204は、締結具、例えばリベット226を受け入れる複数の穴209を有し、これらリベット226は、模擬解剖学的構造202と関連しておりかつ模擬解剖学的構造202をプラットホーム204に解除可能に連結するよう穴209内にスナップ動作で入り込むよう構成されている。表皮層208の追加により開放手技をシミュレートすることができる。切開創211が
図14Aに示されているように表皮層208に入れられており、次にこの切開創をレトラクトして
図14Bおよび
図15に示されているように模擬解剖学的構造202を露出させる。モデル200によりユーザは、開放または腹腔鏡下手術法を用いて直腸腸間膜全摘出手術(TME)を練習することができる。模擬腹腔鏡下手術の場合、表皮層208なしのモデル200が訓練装置10のキャビティ18内に配置される。開放手技を練習するため、訓練装置10のレッグ16を取り外し、トップカバー12をベース14上に直接載せてモデル200がトップカバー12とベース14との間に位置した状態でキャビティ18のサイズおよび高さを減少させる。シリコーン壁インサートをトップカバー12に設けられた大きなアパーチュア20内に配置する。開放手技を練習するための別の形態では、訓練装置10のレッグ16は、長さが短くなっており、それによりトップカバー12とベース14との間のキャビティ18の高さを減少させるよう改造されている。開放手技を練習するための更に別の形態では、訓練装置10のトップカバー12を取り外し、シリコーンシートをベース14内に配置されたモデル200上に配置する。表皮層をシミュレートするシリコーンシート208もまた、例えば
図12に示されているベース14およびベース14の側壁上に配置する。
【0043】
次に
図16および
図17を参照すると、模擬上行結腸216、模擬横行結腸218、および模擬下降結腸220を含む模擬腸210の一部分が模擬トルトの右白線212および模擬トルトの左白線214と一緒に示されている。右の模擬トルトの白線212と左の模擬トルトの白線214の両方が
図16に示されているが、モデル200は、右または左のトルトの白線のうちの両方または一方だけを含む場合がある。
図17は、左トルトの白線214に焦点を絞った断面図である。右トルトの白線212は、モデル200の右側について実質的に同一である。模擬腹膜層222は、腸210の上に位置した状態で腸210の底部からの模擬腸間膜層224に接合して模擬左トルトの白線214を形成し、次にそれぞれ、プラットホーム204の側壁に設けられたアパーチュア209を通って挿入された締結具、例えば226により側壁に連結されている。模擬腸間膜層224の少なくとも一部は、2015年7月16日に出願された米国特許仮出願第62/193,143号明細書に詳細に説明されているサンドイッチ層を作るためにポリフィル繊維材料の第3の層232によって互いに隔てられたシリコーンの第1の層228とシリコーンの第2の層230を有している。
【0044】
ポリフィルの層は、複数の1つまたは2つ以上の整列していない状態でランダムに配置された不織繊維から成り、かかる繊維は、この繊維の長さに沿う1つまたは2つ以上の場所で1つまたは2つ以上の隣接のシリコーン層に連結されていても良くそうでなくても良い。繊維は、以下に詳細に説明する製造プロセス中、第1の層および第2の層のうちの1つまたは2つ以上の中へ埋め込まれることによって第1の層および第2の層のうちの1つまたは2つ以上に連結されている。各繊維は、ストランド、フィラメント、ヤーン、マイクロファイバなどの形態をしているのが良く、各繊維は、長さを有するとともに、少なくとも第1の端部および第2の端部を備えている。繊維を連結するために接着剤が用いられても良くそうでなくても良い。第3の層の繊維は、第1の層と第2の層との間の隙間内にランダムに配置されたやり方で位置している。例えば、ファイバの1本のストランドは、1つの場所で第1の層に連結されるのが良く、次に繊維の長さに沿う別の場所で再び第1の層または第2の層に連結されても良く、その自由端部は、第1または第2の層中に埋め込まれても良くそうでなくても良い。繊維の数本のストランドが第1の層または第2の層に連結されなくても良く、これら数本のストランドは、第1の層と第2の層との間に自由に配置される。繊維の数本のストランドは、これらストランドが他のストランドに対して動くことができるよう他のストランドとルーズな仕方で絡み合わされるとともに撚りあわされている。繊維は、繊維の長さに沿う1つまたは2つ以上の場所で向かいのまたは第2の層に連結されるよう隙間をまたぐのが良い。第3の層を構成するのに複数の繊維ストランドに代えて単一の繊維ストランドを用いることが可能である。単一の繊維ストランドは、同じ隙間を埋めるのに短いストランドを用いるのと比較して、層相互間の隙間を埋めるとともに作るよう長さが長い。ポリフィルという用語が明細書全体を通じて用いられているが、組成は、ポリエステルには限定されない。繊維は、任意適当な材料、例えばポリエステル、ポリアミド、アクリル樹脂、アセテート、ポリオレフィン、綿、ファイバーフィル(繊維充填材)、詰め物、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ナイロン、ポリフィル、ファイバーフィル、ポリマー、プラスチック、スパンデックスまたは他の適当な繊維、天然繊維、非吸収性繊維、合成繊維または繊維状材料から選択されるが、かかる繊維は、依然としてポリフィルと呼ばれる。かかる材料は、織られていても良く、織られていなくても良く、あるいは部分的に織られていても良い。ファイバーフィル/ポリフィルは、代表的には、ガーネッティングによって作られ、かかるガーネッティングでは、ガーネット機が繊維を受け取ってこれらをくしけずってバットの形態にする。ガーネット機は、次に、繊維を折り曲げて裁断し、それにより短くしかも互いにかたまりとされるストランドを作る。繊維は、互いにもつれ、絡み合い、そして束になる。繊維は、有利には、特に腹腔鏡を用いた画像捕捉装置によりビデオモニタ上で見ると、濡れた状態の生きている組織を真似ている光沢のある繊維から光が多くの方向に反射されると、つやのある組織の見た目を提供する。
【0045】
図18A〜
図18Cを参照すると、模擬トルトの白線212,214は、扁平なシリコーンの2つの薄い層234a,234bを
図18Aに示されているように互いの頂部上に配置することによって作られる。底部層234bは、トルトの筋膜をシミュレートするよう第1のシリコーン層228と第2のシリコーン層230との間に配置されたポリフィルの第3の層232を有するポリフィルサンドイッチ層である。幅の狭いストリップ236が2つの並置された切れ目を
図18Aに示されているように入れることによって両方の層234a,234bから除去される。トルトの白線をシミュレートする白色シリコーンの層238が幅の狭いストリップ236の除去によって作られた隙間を横切って被着されて
図18Bに示されているように硬化するようになる。この構成の結果として、第1のシリコーン層234aおよび第2のシリコーン層234bの各々をそれぞれ2つ有する4つの層が
図18Cに示されているようにシリコーンの白色の層238によって互いにくっつけられる。シミュレートされたトルトの白線238の一方の側に位置するシリコーンの第1の層234aおよび第2の層234bは、それぞれ、模擬腹膜層222および模擬腸間膜224を形成し、そしてこれらの層234a,234bは、接着剤により結腸に連結され、模擬トルトの白線234の他方の側に位置するシリコーンの第1の層234aおよび第2の層234bは、プラットホーム204に設けられた穴209中に差し込まれた締結具、例えばプラスチックリベット226によりプラットホーム204の側壁に取り付けられている。層222はまた、シリコーン、締結具、リベット、またはシアノアクリレート系接着剤を用いて右結腸の近傍で他方の側において側壁に取り付けられるのが良い。
【0046】
一形態では、模擬腸間膜224は、3つの層、すなわち、シリコーンの頂部の層48、シリコーンの底部層50およびゲルの中間層54のゲルサンドイッチから成り、ゲル中間層54は、本明細書に説明するとともに
図19に示されているように頂部層と底部層との間にシリコーンなどで作られた摸擬血管44を封入している。
図20に示されている別の形態では、模擬腸間膜層224は、シリコーンの第1の層228およびシリコーンの第2の層230ならびに第1の層と第2の層との間に位置するポリフィル繊維の第3の層232を有する。シリコーンの第1の層228は、接着剤240によりシリコーンの底部層50にくっつけられ、このシリコーンの底部層50は、シリコーンの頂部層48と一緒になって、ゲルの中間層54をサンドイッチしている。ゲル中間層54は、シリコーンで作られた摸擬血管44を封入するのが良い。
図21に示されている更に別の形態では、シリコーンの頂部層48とシリコーンの底部層50は、ゲルの中間層54をサンドイッチし、このゲルの中間層54は、シリコーンで作られた摸擬血管44を封入するのが良い。底部層50は、シリコーンの第2の層230と一緒になって、これらの間にポリフィル繊維の第3の層232をサンドイッチしている。
図22に示されたさらに別の形態では、シリコーンの第1の層228は、シリコーンの第2の層230と一緒になって、これらの間にポリフィルの第3の層232をサンドイッチしている。シリコーンの頂部層48が設けられ、模擬血管44が頂部層48と第1の層228との間に配置されている。模擬血管44は、接着剤240によって第1の層228にくっつけられているが、頂部層48にはくっつけられていない。また、頂部層48は、例えば
図22に示されているように模擬血管44相互間の選択された領域に塗布された接着剤240により第1の層228にくっつけられている。この形態では、ゲルの中間層が設けられていない。別の形態では、シリコーンの第1の層228および第2の層230は、これらの間に設けられたポリフィルの第3の層232を備えている。シリコーンの頂部層48は、頂部層48と第1の層228との間にポリフィルの中間層54を備え、シリコーンの模擬血管44が頂部層48と第1の層228との間に配置されている。また、底部層50がポリフィルの中間層54とシリコーンの第1の層228との間に設けられるのが良い。
図19〜
図22に示されているこれらの形態は、腸間膜と腹膜後隙との間のトルトの筋膜/腔をシミュレートする形態である。この腔は、2つのシリコーン層によって画定され、ポリフィルの第3の層232がこれら2つのシリコーン層の間に位置している。
図20〜
図22の形態は、トルトの筋膜242と腸間膜224の組み合わせの形態を示している。筋膜層内において、模擬尿管、模擬生殖線血管、模擬十二指腸、および模擬神経束が配置されるのが良い。
【0047】
次に
図23を参照すると、好ましくは赤色に染色されたシリコーンで作られている摸擬大動脈40が示されている。黄色に着色されたシリコーンで作られている模擬神経束244が設けられ、この模擬神経束は、図示のように模擬大動脈40に取り付けられている。模擬神経束244は、複数の開口部246を有する。一形態では、模擬神経束244は、ポリフィル領域内のトルトの筋膜242の腔内で大動脈上に嵌まっている。一形態では、模擬神経束244の色は、黄色ではない。
【0048】
次に
図24を参照すると、モデル200は、下骨盤部分を有する。右または左結腸の可動化を練習した後、ユーザは、骨盤領域への切開を練習して模擬直腸間膜262を取り出すことができる。
図24は、モデル200の骨盤領域のほぼ正中線断面を示している。モデル200は、恥骨をシミュレートするよう構成された前方に配置されているプラスチックシート248を有する。プラスチックシート248は、ユーザが練習を行わなければならない作業空間を減少させる。模擬直腸250の上方の解剖学的構造は、模擬前立腺系252を含む。模擬前立腺系252は、模擬前立腺254、模擬精嚢256、模擬膀胱258、模擬尿道、および模擬精管を含む。模擬尿道および模擬精管は、中実または中空の管の状態に形成されたシリコーンで作られている。模擬精嚢256は、ウレタンフォームもしくは他のフォームまたは模擬精管上に被覆成形された材料で作られている。模擬前立腺254は、ウレタンフォームもしくは他のフォームまたは模擬尿道上に被覆された材料で作られている。模擬前立腺系252は、プラスチックシート248に設けられた穴209に通して挿入された締結具、例えばリベット226によりプラスチックシート248に連結されている。プラスチックベース
248がモデル200の後側に設けられている。プラスチックベース
248は、外科的処置を練習するための限局された空間を作っている。模擬直腸250は、模擬直腸間膜層262によって包囲されたシリコーンの筒形の形状を有する。シリコーンの別の層または管264が設けられ、この層または管264は、ポリフィル繊維の内側層266を含む。外科医は、ポリフィル繊維層266の切断を練習して模擬直腸250の一部分を可動化する。模擬直腸250は、プラスチックベース
248に設けられた穴209中に挿入された締結具、例えばリベット226によりベース
248に連結されている。リベット226は、ユーザにポリフィル層266に入ってこれを切開して模擬直腸250および模擬直腸間膜262を除去するための空間を与えるよう
第3の層または管264に取り付けられている。
【0049】
2015年3月26日に出願された国際出願PCT/US2015/022774号明細書(発明の名称:Simulated dissectible tissue)を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。2016年7月12日に出願された国際出願PCT/US/2016/041852号明細書(発明の名称:Simulated dissectible tissue)を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。
【0050】
本明細書において開示した切開可能な模擬組織の実施形態に対して種々の改造を行うことができることは言うまでもない。したがって、上述の説明は、本発明を限定するものと解されてはならず、単に好ましい実施形態の例示として考えるべきである。当業者であれば、本発明の範囲および精神に含まれる他の改造例を想到するであろう。