【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1に記載の駆動機構により解決され、好ましい本発明の発展態様は、従属請求項の対象である。
【0008】
本発明では、自動車とは少なくとも一人の人間を運ぶための車両であることを意味する。有利には、この意味において自動車は、轍が一本となる車両、特にはオートバイである。
【0009】
本発明では、駆動機械は、自動車の走行抵抗を上回るための駆動出力を供給するように構成されている駆動原動機を意味する。有利には、駆動機械は、少なくとも一つまたは複数の気筒を有する内燃式動力機械である。さらに有利には、駆動機械は、電気機械的なエネルギー変換機、有利には電気モータ/発電機であり、特に好ましくは、駆動機械は、二つまたはそれより多い先に述べた駆動機械による組み合わせを有し、特に好ましくは、この種の駆動機械は、所謂ハイブリッド駆動部として形成されている。
【0010】
本発明の意味において、シフト可能なトランスミッションは、トランスミッション入力軸とトランスミッション出力軸との間の変速比を段階的に変更するための装置である。有利には、この種のシフト可能なトランスミッションは、多数のとびとびの変速比(段)を有するオートバイトランスミッションとして形成されている。有利には、最も大きな変速比を有する段、つまり、通常は停止状態からスタートするために用いられるトランスミッションの段は、第1段と呼ばれる。さらに有利には、シフト可能なトランスミッションのこれら複数段の少なくとも一つは同期しておらず、有利には少なくとも第1段が同期しておらず、さらに有利にはこのシフト可能なトランスミッションの多数の段が同期しておらず、好ましくは全ての段が同期していない。同期は、自動車の製造から公知で、特に自動車のトランスミッションでは、確動式の接続(形状結合)を行うために構成されている部材間の回転数差を摩擦接続式に調整するために用いられ、段が同期されないときには、この種の摩擦接続式の接触型の回転数調整はなされない。
【0011】
本発明の意味におけるクラッチは、駆動機械からシフト可能なトランスミッションへのトルク伝達方向におけるこれら両者の中間に配置されており、その結果、トルク伝達をこのクラッチにより選択的に切断できるようになる装置である。有利には、この種のクラッチは、多板クラッチとして、さらに有利には湿式多板クラッチとして形成されている。有利には、湿式多板クラッチは、多数のクラッチ板を有している。クラッチの解放状態では、これらのクラッチ板は互いに離間されており、設計上は何らのトルクもクラッチには伝達できない。特に、湿式多板クラッチの潤滑のために個々のクラッチ板の間には潤滑剤があり、幾ばくかのドラッグトルクが、流体摩擦(これはニュートン的なせん断摩擦と捉えることができる。)のために伝達される。
【0012】
本発明の意味におけるトランスミッション入力軸は、シフト可能なトランスミッションの軸であり、この軸に、駆動機械により供給可能な駆動出力を伝達することができる。有利には、トランスミッション入力軸は、直接的にクラッチに接続可能、或いはクラッチに接続されており、さらに有利にはこのトランスミッション入力軸がこのクラッチを介して選択的にトルクが伝達する態様で駆動機械に接続可能とされている。
【0013】
本発明の意味における変速機歯車は、シフト可能なトランスミッションの歯車であり、この歯車は、トルク伝達のためにトランスミッション内に設けられている。有利には、シフト可能なトランスミッションは、多数の変速機歯車を有し、これらの変速機歯車から有利には個々の歯車が選択的にトランスミッション入力軸に運動学的に連結可能である。さらに有利には、この運動学的な連結は、確動式の接続により行われる。
【0014】
連結装置は、変速機歯車の少なくとも一つに確動式に接続するために設けられている装置である。有利には、連結装置は、シフト可能なトランスミッションのトランスミッション軸に相対回転不能に且つ有利には軸方向に移動可能に接続されている。有利には、連結装置は、シフト可能なトランスミッションのトランスミッション軸に変速機歯車の一つを確動式に接続するスライドスリーブや爪クラッチを有していることで、トランスミッション入力軸との変速機歯車の運動学的な連結が選択的に行なえるようになっている。
【0015】
本発明の意味における運動学的な連結とは、トランスミッション入力軸との連結装置または変速機歯車の強制的な接続である。有利には、この種の運動学的な連結は、トランスミッション入力軸の動きが、この軸に運動学的に連結された構成部品の強制的な動きをもたらすようにするためのものである。有利には、運動学的に互いに連結された二つの構成部品は、有利には一つの変速段ないし好ましくは複数の変速段により構造的には互いに切断されていてもよい。
【0016】
本発明の意味において、駆動機構の第一の動作状態は、クラッチが解放された状態にあり、連結装置または変速機歯車のいずれかが運動学的にトランスミッション入力軸に連結されている状態であって、そのいずれの場合であっても上記二つの構成部品の他方はトランスミッション入力軸に運動学的に連結されていない状態である。
【0017】
このとき、クラッチが解放された状態は、上述のとおり、予定ではクラッチにより何らのトルクも伝達できないような状態である。
【0018】
有利には、駆動機構の第二の動作状態は、連結装置および変速機歯車のいずれもが運動学的にトランスミッション入力軸に連結されている状態である。有利には、この第二の動作状態では、クラッチは依然として解放された状態にある。
【0019】
有利には、駆動機構は、制動装置を有し、これが制動装置の第一の部分から第二の部分に制動力を無接触式に伝達する。さらに、有利には、制動装置の第一の部分は、運動学的にトランスミッション入力軸に連結可能であり、第二の部分は、変速機歯車に連結可能である。従って特に、制動装置により、トランスミッション入力軸から変速機歯車に制動力を無接触式に伝達することが可能である。
【0020】
特に、このような駆動機構により、クラッチにより引き起こされるドラッグトルクによって増速されるトランスミッション入力軸を、段入れの前に無接触式に制動することができ、その結果、連結装置と変速機歯車との間を確動式に接続する際に発生し得るシフトショックを低減ないし防止することが可能になる。
【0021】
本発明の好ましい実施形態において、制動装置は、渦電流式ディスクブレーキとして形成されている。渦電流式ディスクブレーキは、従来技術より知られており、これを用いて特に信頼性のある駆動機構が実現できる。
【0022】
本発明の好ましい実施形態において、渦電流式ディスクブレーキは、第一の部分と第二の部分を有し、これら二つの部分の間において制動力が無接触式に伝達できる。有利には、渦電流式ディスクブレーキの第一の部分は、トランスミッション入力軸に相対回転不能に接続されている。さらに、有利には、渦電流式ディスクブレーキの第二の部分は、相対回転不能に変速機歯車に接続されている。特に、一方では変速機歯車との、また他方ではトランスミッション入力軸との渦電流式ディスクブレーキの二つの部分のこのような相対回転不能な接続により、本発明の駆動機構の特に簡単な構造が実現できる。
【0023】
本発明の好ましい実施形態において、渦電流式ディスクブレーキの第一の部分は、連結装置と接続されており、有利には少なくとも部分的に又は好ましくは完全にこの中に収容されている。有利には、連結装置は、軸ハブ結合により軸方向には動けるが相対回転は不能にトランスミッション入力軸に接続可能とされている。
【0024】
本発明の好ましい実施形態において、渦電流式ディスクブレーキの第二の部分は、強磁性領域を有している。有利には、この領域は、構成要素として永久磁石材料、好ましくはネオジムを有している。有利には、渦電流式ディスクブレーキのこの強磁性領域は、渦電流式ディスクブレーキの第一の部分には、特に第二の部分に対する第一の部分の相対運動時に、渦電流が発生するように設けられている。
【0025】
本発明の好ましい実施形態において、渦電流式ディスクブレーキの第一の部分は、導電領域を有している。有利には、この導電領域は、電気コイルとして或いは好ましくは導電インサートとして形成されている。特に、電気コイルまたは電気的なインサートにより、特に大きな制動力が渦電流式ディスクブレーキにより達成できる。
【0026】
特に、シフト可能なトランスミッションの1段目へのシフト操作中の騒音の発生を低減するために、有利には、特にスライドスリーブとして形成された連結装置および変速機歯車に組み込まれている渦電流式ディスクブレーキが、トランスミッション入力軸を無接触式に制動する制動トルクをもたらすように構成されている。
【0027】
以下に、図面に基づき本発明を詳しく説明する。