(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6886987
(24)【登録日】2021年5月19日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】高含水量および抗再付着ポリマーを含む洗剤配合物
(51)【国際特許分類】
C11D 3/37 20060101AFI20210603BHJP
C11D 17/08 20060101ALI20210603BHJP
C08F 220/06 20060101ALI20210603BHJP
C08F 220/36 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
C11D3/37
C11D17/08
C08F220/06
C08F220/36
【請求項の数】10
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-568955(P2018-568955)
(86)(22)【出願日】2017年7月7日
(65)【公表番号】特表2019-527260(P2019-527260A)
(43)【公表日】2019年9月26日
(86)【国際出願番号】US2017040998
(87)【国際公開番号】WO2018013407
(87)【国際公開日】20180118
【審査請求日】2020年6月30日
(31)【優先権主張番号】16290134.2
(32)【優先日】2016年7月13日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アン・オバーリン
(72)【発明者】
【氏名】アスガル・エイ・ピエーラ
(72)【発明者】
【氏名】スコット・バッカー
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・ジェイ・ヤンスマ
【審査官】
山本 悦司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−050561(JP,A)
【文献】
特開2000−143738(JP,A)
【文献】
国際公開第2016/093337(WO,A1)
【文献】
特表2001−525453(JP,A)
【文献】
特開平01−185398(JP,A)
【文献】
特開2001−107094(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/00−19/00
C08F 220/06、220/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体洗剤であって、(a)30〜80重量%の水と、(b)5〜50重量%の界面活性剤と、(c)20〜40重量%の(メタ)アクリル酸の重合単位、および60〜80重量%の構造H2C=C(R)CO2(CH2CH2O)n(CH(R’)CH2O)mR”(式中、Rが、HまたはCH3であり、R’が、C1−C2アルキルであり、R”が、C8−C22アルキルまたはC8−C16アルキルフェニルであり、nが、6〜30の平均数であり、mが、0〜10の平均数であり、ただし、n≧mであり、かつm+nが、6〜30である)のモノマーの重合単位を含む0.5〜10重量%のアクリルポリマーと、を含む、液体洗剤。
【請求項2】
R”が、C8−C18アルキルであり、nが、8〜20である、請求項1に記載の洗剤。
【請求項3】
前記アクリルポリマーが、0.1重量%以下の架橋剤を有する、請求項2に記載の洗剤。
【請求項4】
1〜8重量%の前記アクリルポリマーを含む、請求項3に記載の洗剤。
【請求項5】
35〜70重量%の水を含む、請求項4に記載の洗剤。
【請求項6】
10〜40重量%の界面活性剤を含む、請求項5に記載の洗剤。
【請求項7】
前記アクリルポリマーが、23〜40重量%の(メタ)アクリル酸の重合単位と、60〜77重量%の構造H2C=C(R)CO2(CH2CH2O)n(CH(R’)CH2O)mR”のモノマーの重合単位を含む、請求項6に記載の洗剤。
【請求項8】
mが、1以下であり、R’がメチルである、請求項6に記載の洗剤。
【請求項9】
40〜65重量%の水を含む、請求項8に記載の洗剤。
【請求項10】
液体洗剤であって、(a)30〜80重量%の水と、(b)5〜50重量%の界面活性剤と、(c)20〜50重量%の(メタ)アクリル酸の重合単位、および50〜80重量%の構造H2C=C(R)CO2(CH2CH2O)n(CH(R’)CH2O)mR”(式中、Rが、HまたはCH3であり、R’が、C1−C2アルキルであり、R”が、C8−C22アルキルまたはC8−C16アルキルフェニルであり、nが、6〜30の平均数であり、mが、0〜10の平均数であり、ただし、n≧mであり、かつm+nが、6〜30である)のモノマーの重合単位を含む0.5〜10重量%のアクリルポリマーと、を含み、前記アクリルポリマーが1000〜7000の重量平均分子量を有する、液体洗剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘビーデューティー洗濯(HDL)洗剤配合物に関する。
【0002】
漂白剤は、配合者にとって、HDL空間での選択肢ではないため、酵素および界面活性剤を超える添加物が必要とされている。抗再付着添加剤としてのアクリルポリマーの使用は、例えば、US4,797,223において既知である。しかしながら、この参考文献は、本明細書で特許請求される洗剤配合物の使用を提唱していない。
【0003】
本発明によって解決される問題は、改善されたヘビーデューティー洗濯(HDL)洗剤配合物に対する必要性である。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、液体洗剤であって、(a)30〜80重量%の水と、(b)5〜50重量%の界面活性剤と、(c)20〜50重量%の(メタ)アクリル酸の重合単位、および50〜80重量%の構造H
2C=C(R)CO
2(CH
2CH
2O)
n(CH(R’)CH
2O)
mR”(式中、Rが、HまたはCH
3であり、R’が、C
1−C
2アルキルであり、R’’が、C
8−C
22アルキルまたはC
8−C
16アルキルフェニルであり、nが、6〜30の平均数であり、mが、0〜10の平均数であり、ただし、n≧mであり、かつm+nが、6〜30である)のモノマーの重合単位を含む0.5〜10重量%のアクリルポリマーと、を含む、液体洗剤を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0005】
特に明記しない限り、百分率は、重量百分率(重量%)であり、温度は、℃である。特に指定しない限り、作業は、室温(20〜25℃)で実施された。洗剤中の成分の重量パーセンテージは、活性成分の重量、例えば、市販の界面活性剤製品中に存在し得る水を含まない界面活性剤分子、および水を含む液体洗濯洗剤組成物全体の重量に基づく。アクリルポリマー中のモノマー単位のパーセンテージは、ポリマー鎖の総重量、すなわち乾燥重量に基づく。「(メタ)アクリル」という用語は、メタクリルまたはアクリルを意味する。アルキル基は、直鎖または分岐鎖であり得る飽和ヒドロカルビル基である。アラルキル基は、アリール基で置換されたアルキル基である。アラルキル基の例としては、例えばベンジル、2−フェニルエチルおよび1−フェニルエチルが挙げられる。本明細書で使用される場合、「界面活性剤」という用語は、脂肪酸石鹸を含む。
【0006】
本明細書で使用される場合、特に指示がない限り、「分子量」またはMwという句は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)およびポリアクリル酸標準を用いる従来の方式で測定された重量平均分子量を指す。GPC技術は、Modem Size Exclusion Chromatography,W.W.Yau,J.J.Kirkland,D.D.Bly;Wiley−Interscience,1979およびA Guide to Materials Characterization and Chemical Analysis,J.P.Sibilia;VCH,1988,81−84頁に詳細に考察されている。分子量は、本明細書においてダルトンの単位で報告される。
【0007】
好ましくは、洗剤は、少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも1.5重量%、好ましくは少なくとも2重量%、好ましくは少なくとも2.5重量%、好ましくは少なくとも3重量%、好ましくは8重量%以下、好ましくは7重量%以下、好ましくは6重量%以下のアクリルポリマーを含む。
【0008】
好ましくは、ポリマーは、アクリルポリマー、すなわち、少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも75重量%、好ましくは少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも98重量%のアクリルモノマーの重合残基を含むものである。アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸およびそれらのC
1−C
22アルキルまたはヒドロキシアルキルエステル(構造H
2C=C(R)CO
2(CH
2CH
2O)
n(CH(R’)CH
2O)
mR”のモノマーを含む)、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、ならびにクロトン酸、イタコン酸、フマル酸、またはマレイン酸のアルキルもしくはヒドロキシアルキルエステルが挙げられる。
【0009】
好ましくは、アクリルポリマーは、少なくとも55重量%、好ましくは少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも65重量%、好ましくは77重量%以下、好ましくは75重量%以下の、構造H
2C=C(R)CO
2(CH
2CH
2O)
n(CH(R’)CH
2O)
mR”のモノマーの重合単位を含む。好ましくは、アクリルポリマーは、少なくとも23重量%、好ましくは少なくとも25重量%、好ましくは45重量%以下、好ましくは40重量%以下、好ましくは35重量%以下の(メタ)アクリル酸の重合単位を含む。
【0010】
好ましくは、Rは、HまたはCH
3である。好ましくは、R’は、CH
3である。好ましくは、nは、少なくとも8、好ましくは少なくとも10であり、好ましくは、nは、25以下、好ましくは20以下、好ましくは15以下である。好ましくは、mは、5以下、好ましくは3以下、好ましくは1以下、好ましくは0である。好ましくは、R’’は、C
8−C
18アルキルまたはC
8−C
16アルキルフェニル、好ましくはC
8−C
18アルキル、好ましくはC
10−C
16アルキルである。好ましい実施形態では、R’’は、C
10−C
16アルキルからの置換基の混合物であり、好ましくはR’’は、C
12−C
15アルキルである。
【0011】
好ましくは、アクリルポリマーの重量平均分子量(Mw)は、1,000〜10,000、好ましくは少なくとも1,500、好ましくは7,000以下、好ましくは5,000以下、好ましくは4,000以下、好ましくは3,000以下である。
【0012】
好ましくは、アクリル酸ポリマーは、0.5重量%以下、好ましくは0.3重量%以下、好ましくは0.1重量%以下、好ましくは0.05重量%以下、好ましくは0.02重量%以下の架橋モノマーの重合単位を含む。架橋モノマーは、多エチレン性不飽和モノマーである。好ましくは、洗剤配合物は、0.5重量%以下、好ましくは0.3重量%以下、好ましくは0.2重量%以下、好ましくは0.1重量%以下のZn
+2、Ca
+2、Mg
+2およびAl
+3からなる群より選択される金属イオンを含む。金属イオンの割合は、アニオンを含まない金属のみに基づく。
【0013】
好ましくは、洗剤は、少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも15重量%、好ましくは少なくとも20重量%、好ましくは40重量%以下、好ましくは35重量%以下の界面活性剤を含む。好ましくは、洗剤は、少なくとも35重量%、好ましくは少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも45重量%、好ましくは70重量%以下、好ましくは65重量%以下、好ましくは60重量%以下の水を含む。
【0014】
界面活性剤(複数可)は、カチオン性、アニオン性、非イオン性、脂肪酸金属塩、双性イオン性、またはベタイン性界面活性剤であり得る。好ましくは、配合物は、少なくとも1つの、好ましくは少なくとも2つのアニオン性界面活性剤を含む。好ましくは、非イオン性界面活性剤は、少なくとも6個の炭素原子を有するアルキル基、および少なくとも5個の重合エチレンオキシドまたはプロピレンオキシド残基を有する。好ましくは、非イオン性界面活性剤は、少なくとも5個、好ましくは少なくとも6個、好ましくは少なくとも7個の、好ましくは12個以下、好ましくは11個以下、好ましくは10個以下の重合エチレンオキシド残基を有する。好ましくは、アニオン性界面活性剤は、少なくとも10個の炭素原子を有するアルキル基、および好ましくはスルホン酸塩および硫酸塩から選択されるアニオン性基を有する。アニオン性界面活性剤はまた、エチレンオキシドの重合残基を有し得、および/または芳香環、例えば線状アルキルベンゼンスルホン酸塩を有し得る。いくつかのアニオン性界面活性剤は、脂肪酸アルカリ金属塩である。好ましくは、洗剤組成物は、5〜20重量%、好ましくは8〜18重量%、好ましくは10〜18重量%の線状アルキルベンゼンスルホン酸塩を含む。好ましくは、アルキルベンゼンスルホン酸塩は、C
10−C
14アルキル基を有する。好ましくは、洗剤組成物は、少なくとも3重量%、好ましくは少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも6重量%、好ましくは15重量%以下、好ましくは12重量%以下、好ましくは10重量%以下の非イオン性界面活性剤を含む。好ましくは、非イオン性界面活性剤は、1分子当たり1〜10個、好ましくは3〜8個の重合エチレンオキシド単位を含有する。好ましくは、非イオン性界面活性剤は、C
6−C
12、好ましくはC
7−C
10、好ましくはC
8アルキル基を有する。好ましくは、アルキル基は、分岐アルキル基である。好ましくは、非イオン性界面活性剤はまた、好ましくはアルキル基と重合エチレンオキシド単位との間のブロックとして、3〜7個のプロピレンオキシドの重合単位を含有する。
【0015】
好ましくは、洗剤は、1〜12重量%、好ましくは2〜11重量%、好ましくは3〜10重量%のC
1−C
4グリコール溶剤、好ましくはプロピレングリコールをさらに含む。好ましくは、洗剤は、0.5〜8重量%、好ましくは1〜5重量%のC
2−C
4アルコール溶剤をさらに含む。好ましくは、アルコール溶剤は、エタノールまたはイソプロパノール、好ましくはエタノールである。
【0016】
好ましくは、洗剤組成物のpHは、6〜11、好ましくは7〜10、好ましくは7.5〜9.5である。配合物のpHを調整するのに好適な塩基としては、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウム;水酸化アンモニウムなどの無機塩基;ならびにモノ−、ジ−もしくはトリ−エタノールアミン;または2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール(DMAMP)などの有機塩基が挙げられる。塩基の混合物を使用してもよい。水性媒体のpHを調整するのに好適な酸としては、塩酸、リン酸、および硫酸などの無機酸、ならびに酢酸などの有機酸が挙げられる。酸の混合物を使用してもよい。配合物は、塩基を用いてより高いpHに調整し、次いで酸を用いて上述の範囲に逆滴定してもよい。
【0017】
ビルダーが本発明の組成物中に存在する場合、好ましいビルダーとしては、クエン酸塩、リン酸塩、炭酸塩、アルミノケイ酸塩、有機ホスホン酸塩、カルボン酸塩、ポリカルボン酸塩(例えばポリアクリル酸もしくはマレイン酸/(メタ)アクリル酸コポリマー)、ポリアセチルカルボキシレート、またはそれらの混合物が挙げられる。「炭酸塩(複数可)」という用語は、炭酸塩、重炭酸塩、過炭酸塩、および/またはセスキ炭酸塩を指す。ビルダーは、塩としてまたは酸の形態で添加され得る。好ましくは、炭酸塩またはクエン酸塩は、ナトリウム塩、カリウム塩またはリチウム塩、好ましくはナトリウムまたはカリウム、好ましくはナトリウムである。好ましいビルダーとしては、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、またはそれらの2つ以上の混合物が挙げられる。好ましくは、本発明の組成物中に存在する場合のビルダーの量は、洗剤組成物の総重量に基づいて、例えば0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%の範囲であり得る。
【0018】
コビルダーもまた、本発明の組成物中に含まれ得る。好ましいコビルダーとしては、ポリアクリル酸およびそのコポリマー、スルホン酸塩、ホスホン酸塩(例えば、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホネートナトリウム(sodium diethylenetriamine pentamethylene phosphonate))が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、本発明の組成物中に存在する場合のコビルダーの量は、洗剤組成物の総重量に基づいて、例えば0.1〜20重量%、代替的に0.5〜10重量%の範囲であり得る。
【実施例】
【0019】
実施例1
一方はポリマーを含み、一方はポリマーを含まない、2種類のHDL配合物を使用して、いくつかの部類の染み(漂白可能な染み、酵素系染み、および油脂系染み)を研究して、HDL配合物中のポリマーの効果を評価した。
【0020】
【表1】
【0021】
研究された合計14種の染みのうち、6種の染みに有意な改善が観察され(表の上部に示す、Delta>HSD)、残りは有意に改善されなかった。ハイブリッドポリマーの添加は、主な洗浄性能に悪影響を及ぼさなかった。
【0022】
【表2】