特許第6886998号(P6886998)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6886998
(24)【登録日】2021年5月19日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】超音波血管封止の方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/00 20060101AFI20210603BHJP
【FI】
   A61B17/00 700
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-93560(P2019-93560)
(22)【出願日】2019年5月17日
(65)【公開番号】特開2019-209134(P2019-209134A)
(43)【公開日】2019年12月12日
【審査請求日】2019年5月17日
(31)【優先権主張番号】62/678,724
(32)【優先日】2018年5月31日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】16/391,635
(32)【優先日】2019年4月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512269650
【氏名又は名称】コヴィディエン リミテッド パートナーシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】ケリー イー. グッドマン
【審査官】 小金井 匠
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/187530(WO,A1)
【文献】 特開2006−051445(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0213397(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00−17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波手術装置であって、前記超音波手術装置は、
トランスデューサと、
前記トランスデューサに結合されているエンドエフェクタであって、血管を把持して封止するように構成されているエンドエフェクタと、
電気エネルギーを前記トランスデューサに供給するように構成されている電源と、
前記電気エネルギーのパラメータを検知するように構成されているセンサと、
制御装置と
を備え、
前記制御装置は、
前記トランスデューサに結合されている前記エンドエフェクタが前記血管を把持しているときに、前記エンドエフェクタの所定の速度を達成するように前記電気エネルギーを制御することと、
前記検知されたパラメータに基づいて、前記電気エネルギーの電力値を算出することと、
前記電力値に基づいて、前記血管のサイズ範囲を推定することと、
前記電力値が第1の範囲内にあるか、または、前記電力値が前記第1の範囲よりも少なくとも部分的に高い第2の範囲内にあるかを判定することと、
前記電力値が前記第1の範囲内にあると判定されたときには前記エンドエフェクタの第1の目標速度を設定し、前記電力値が前記第2の範囲内にあると判定されたときには前記エンドエフェクタの第2の目標速度を設定することであって、前記第1の目標速度は、前記所定の速度よりも大きく、かつ、前記第2の目標速度は、前記所定の速度よりも小さい、ことと、
前記エンドエフェクタの前記第1の目標速度または前記エンドエフェクタの前記第2の目標速度を達成するように前記電気エネルギーを制御することにより、前記血管を封止することと
を行うように構成されている、超音波手術装置。
【請求項2】
前記電力値が所定の電力閾値以上であるとき、前記血管の前記サイズ範囲は、5mm以上であると推定される、請求項1に記載の超音波手術装置。
【請求項3】
前記電力値が所定の電力閾値未満であるとき、前記血管の前記サイズ範囲は、5mm未満と推定される、請求項1に記載の超音波手術装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記制御装置によって推定された前記血管の前記サイズ範囲に基づいて、前記電気エネルギーの電力値を制御することにより、前記血管を封止するようにさらに構成されている、請求項1に記載の超音波手術装置。
【請求項5】
前記電力値は、前記電気エネルギーの前記電力値から前記トランスデューサにおける電力損失および前記超音波手術装置内の導波管における電力損失を減算することによって、算出される、請求項1に記載の超音波手術装置。
【請求項6】
前記電力値は、前記電気エネルギーを供給した後に100ミリ秒が経過した後に、算出される、請求項1に記載の超音波手術装置。
【請求項7】
前記制御装置は、
前記電力値が前記第1の範囲内にあると判定されたときには、前記エンドエフェクタの前記所定の速度を増加させることによって、前記エンドエフェクタの前記第1の目標速度を達成することと、
前記電力値が前記第2の範囲内にあると判定されたときには、前記エンドエフェクタの前記所定の速度を減少させることによって、前記エンドエフェクタの前記第2の目標速度を達成することと、
前記エンドエフェクタの前記達成された第1の目標速度または前記達成された第2の目標速度を維持するように前記電気エネルギーを制御することにより、前記血管を封止することと
を行うようにさらに構成されている、請求項に記載の超音波手術装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、血管を封止するための超音波手術装置に関する。より詳細には、本開示は、血管のサイズ範囲を自動的に推定して、血管を封止する電気エネルギーを制御する、超音波手術装置に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の背景)
超音波手術装置は、大きな止血、及び横方向の熱的損傷を最小限にした組織の効率的な封止、及び低い発煙を実現することが実証されている。患者に電流の流れる必要がある、電気手術装置とは異なり、超音波手術装置は、機械的共振周波数において駆動されるトランスデューサの機械作用を適用することにより動く。
【0003】
血管は、サイズ範囲がさまざまであり、したがって、血管の封止が、トランスデューサに機械連結されているエンドエフェクタがさまざまな速度となることの恩恵を受ける。より小さな血管により大きな速度がもたらされると、血管が破れるおそれがあり、より大きな血管により小さな速度がもたらされると、血管を適切に封止することができない。したがって、標的血管の特性に応じた血管封止の改善に継続的な関心が寄せられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、血管を封止する前に血管のサイズ範囲を推定するための超音波手術装置、及びこのような超音波手術装置を制御するための方法を提供する。血管の推定サイズ範囲に基づく超音波手術装置のエンドエフェクタの適切な速度を維持することにより、超音波手術装置は、一層、適切に血管を封止することが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の態様によれば、本開示は、超音波手術装置を制御するための方法を含む。本方法は、血管を封止するため、トランスデューサに電気エネルギーを供給するステップであって、電気エネルギーの周波数が超音波範囲となるステップ、トランスデューサに連結されているエンドエフェクタが血管を把持すると、電気エネルギーを制御してこのエンドエフェクタの所定の速度を実現するステップ、エンドエフェクタが所定の速度を達成すると、電気エネルギーのパラメータを検知するステップ、検知したパラメータに基づいて電気エネルギーの電力値を算出してこの電力値に基づいて血管のサイズ範囲を推定するステップ、及び電気エネルギーを制御し、血管の推定サイズ範囲に基づいて決定される目標速度を実現して、血管を封止すステップを含む。
【0006】
さまざまな実施形態では、血管のサイズ範囲は、電力値が、所定の電力閾値以上となるとき、5ミリメートル(mm)以上となる。
【0007】
さまざまな実施形態では、血管のサイズ範囲は、電力値が、所定の電力閾値未満となるとき、5mm未満となる。
【0008】
さまざまな実施形態では、血管の推定サイズ範囲に基づいて電気エネルギーを制御するステップは、血管の推定サイズ範囲に基づき、電気エネルギーの電力値を制御して血管を封止するステップを含む。
【0009】
さまざまな実施形態では、電力値は、電気エネルギーの電力値から、トランスデューサにおける電力損失及び超音波手術装置における導波管を減算することにより算出される。
【0010】
さまざまな実施形態では、電力値は、電気エネルギーを供給後、約100ミリ秒、算出される。
【0011】
さまざまな実施形態では、血管の推定サイズ範囲に基づいて電気エネルギーを制御し、血管を封止するステップは、電力値が、第1の範囲にあるか、又は第1の範囲よりも少なくとも一部高い第2の範囲にあるかどうかを判定するステップ、及び電力値が第1の範囲にあると判定されると第1の目標速度を設定し、電力値が第2の範囲にあると判定されると第2の目標速度を設定するステップを含む。血管の推定サイズ範囲に基づいて電気エネルギーを制御して血管を封止するステップは、電気エネルギーを制御して、エンドエフェクタの第1又は第2の目標速度を維持して、血管を封止するステップを含む。第1の目標速度は、所定の速度よりも大きい。第2の目標速度は、所定の速度よりも小さい。
【0012】
本開示の態様によれば、本開示は、トランスデューサ、トランスデューサに連結されており、かつ血管を把持して封止するよう構成されているエンドエフェクタ、トランスデューサに電気エネルギーを供給するよう構成されている電源、電気エネルギーのパラメータを検知するよう構成されているセンサ、エンドエフェクタが血管を把持したときに、トランスデューサに連結されているエンドエフェクタの所定の速度を実現するよう、検知されたパラメータに基づいて電気エネルギーの電力値を算出するよう、電力値に基づいて血管のサイズ範囲を推定するよう、及び電気エネルギーを制御して、血管の推定サイズ範囲に基づいて判定される、目標速度を実現し、血管を封止するよう構成されている制御装置を含む、超音波手術装置を含む。
【0013】
さまざまな実施形態では、血管のサイズ範囲は、電力値が、所定の電力閾値以上となるとき、5mm以上となる。
【0014】
さまざまな実施形態では、血管のサイズ範囲は、電力値が、所定の電力閾値未満となるとき、5mm未満となる。
【0015】
さまざまな実施形態では、制御装置は、血管の推定サイズ範囲に基づいて、電気エネルギーの電力値を制御して、血管を封止するよう更に構成されている。
【0016】
さまざまな実施形態では、電力値は、電気エネルギーの電力値から、トランスデューサにおける電力損失及び超音波手術装置における導波管を減算することにより算出される。
【0017】
さまざまな実施形態では、電力値は、電気エネルギーを供給後、約100ミリ秒、算出される。
【0018】
さまざまな実施形態では、制御装置は、電力値が、第1の範囲にあるか、又は第1の範囲よりも少なくとも一部高い第2の範囲にあるかどうかを判定し、電力値が第1の範囲にあると判定されると第1の目標速度を設定し、電力値が第2の範囲にあると判定されると第2の目標速度を設定するよう更に構成されている。制御装置は、電気エネルギーを制御して、エンドエフェクタの第1又は第2の目標速度を維持して、血管を封止するよう更に構成されている。第1の目標速度は、所定の速度よりも大きい。第2の目標速度は、所定の速度よりも小さい。
【0019】
本開示の例示的な実施形態の更なる詳細及び態様が、以下に添付の図面を参照してより詳細に説明される。
本願明細書は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
超音波手術装置を制御する方法であって、
血管を封止するため、トランスデューサに電気エネルギーを提供するステップであって、上記電気エネルギーの周波数が超音波範囲にある、ステップと、
上記トランスデューサに連結されているエンドエフェクタが上記血管を把持すると、上記電気エネルギーを制御して上記エンドエフェクタの所定の速度を実現するステップと、
上記エンドエフェクタが上記所定の速度を達成すると、上記電気エネルギーのパラメータを検知するステップと、
上記検知されたパラメータに基づいて、上記電気エネルギーの電力値を算出するステップと、
上記電力値に基づいて上記血管のサイズ範囲を推定するステップと、
上記電気エネルギーを制御し、上記血管の上記推定サイズ範囲に基づいて決定される目標速度を実現して、上記血管を封止すステップと
を含む、方法。
(項目2)
上記電力値が所定の電力閾値以上となるとき、上記血管の上記サイズ範囲が5mm以上となる、上記項目に記載の方法。
(項目3)
上記電力値が所定の電力閾値未満となるとき、上記血管の上記サイズ範囲が5mm未満となる、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目4)
上記血管の上記推定サイズ範囲に基づいて上記電気エネルギーを制御するステップが、上記血管の上記推定サイズ範囲に基づいて、上記電気エネルギーの電力値を制御して、上記血管を封止するステップを含む、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目5)
上記電力値が、上記電気エネルギーの上記電力値から、上記トランスデューサにおける電力損失及び上記超音波手術装置における導波管を減算することにより算出される、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目6)
上記電力値が、上記電気エネルギーを供給後、約100ミリ秒、算出される、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目7)
上記血管の上記推定サイズ範囲に基づいて、上記電気エネルギーを制御して、上記血管を封止するステップが、
上記電力値が、第1の範囲にあるか、又は上記第1の範囲よりも少なくとも一部高い第2の範囲にあるかどうかを判定するステップと、
上記電力値が上記第1の範囲にあると判定されると第1の目標速度を設定し、上記電力値が上記第2の範囲にあると判定されると第2の目標速度を設定するステップと
を含む、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目8)
上記血管の上記推定サイズ範囲に基づいて、上記電気エネルギーを制御して、上記血管を封止するステップが、
上記電気エネルギーを制御して、上記エンドエフェクタの上記第1又は第2の目標速度を維持し、上記血管を封止するステップを更に含む、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目9)
上記第1の目標速度が、上記所定の速度よりも大きい、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目10)
上記第2の目標速度が、上記所定の速度よりも小さい、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目11)
超音波手術装置であって、
トランスデューサと、
上記トランスデューサに連結されており、かつ血管を把持して封止するよう構成されている、エンドエフェクタと、
上記トランスデューサに電気エネルギーを供給するよう構成されている電源と、
上記電気エネルギーのパラメータを検知するよう構成されているセンサと、
制御装置であって、
上記トランスデューサに連結されている上記エンドエフェクタが上記血管を把持すると、上記電気エネルギーを制御して上記エンドエフェクタの所定の速度を達成するように、
上記検知されたパラメータに基づいて、上記電気エネルギーの電力値を算出するように、
上記電力値に基づいて上記血管のサイズ範囲を推定するように、及び
上記電気エネルギーを制御して、上記血管の上記推定サイズ範囲に基づいて判定される、目標速度を実現して、上記血管を封止するように、構成されている、上記制御装置と、
を備える、超音波手術装置。
(項目12)
上記電力値が所定の電力閾値以上となるとき、上記血管の上記サイズ範囲が5mm以上であると推定される、上記項目のいずれかに記載の超音波手術装置。
(項目13)
上記電力値が所定の電力閾値未満となるとき、上記血管の上記サイズ範囲が5mm未満と推定される、上記項目のいずれかに記載の超音波手術装置。
(項目14)
上記制御装置が、上記血管の上記推定サイズ範囲に基づいて、上記電気エネルギーの電力値を制御して、上記血管を封止するよう更に構成されている、上記項目のいずれかに記載の超音波手術装置。
(項目15)
上記電力値が、上記電気エネルギーの上記電力値から、上記トランスデューサにおける電力損失及び上記超音波手術装置における導波管を減算することにより算出される、上記項目のいずれかに記載の超音波手術装置。
(項目16)
上記電力値が、上記電気エネルギーを供給後、約100ミリ秒、算出される、上記項目のいずれかに記載の超音波手術装置。
(項目17)
上記制御装置が、
上記電力値が、第1の範囲にあるか、又は上記第1の範囲よりも少なくとも一部高い第2の範囲にあるかどうかを判定するように、及び
上記電力値が上記第1の範囲にあると判定されると第1の目標速度を設定し、上記電力値が上記第2の範囲にあると判定されると第2の目標速度を設定するように、
更に構成されている、上記項目のいずれかに記載の超音波手術装置。
(項目18)
上記制御装置が、上記電気エネルギーを制御して、上記エンドエフェクタの上記第1又は第2の目標速度を維持して、上記血管を封止するよう更に構成されている、上記項目のいずれかに記載の超音波手術装置。
(項目19)
上記第1の目標速度が、上記所定の速度よりも大きい、上記項目のいずれかに記載の超音波手術装置。
(項目20)
上記第2の目標速度が、上記所定の速度よりも小さい、上記項目のいずれかに記載の超音波手術装置。
(摘要)
本方法は、血管を封止するため、トランスデューサに電気エネルギーを供給するステップであって、電気エネルギーの周波数が超音波範囲となるステップ、トランスデューサに連結されているエンドエフェクタが血管を把持すると、電気エネルギーを制御してこのエンドエフェクタの所定の速度を実現するステップ、エンドエフェクタが所定の速度を達成すると、電気エネルギーのパラメータを検知するステップ、検知したパラメータに基づいて電気エネルギーの電力値を算出してこの電力値に基づいて血管のサイズ範囲を推定するステップ、及び電気エネルギーを制御し、血管の推定サイズ範囲に基づいて決定される目標速度を実現して、血管を封止すステップを含む。
【0020】
本開示は、この後の詳細説明と併せて考えると、添付の図面を参照することにより理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1A】本開示の実施形態による、超音波手術装置の側面立面図である。
図1B】分離部分の斜視図であり、本開示の実施形態による、図1Aの超音波手術装置のハンドルの左部分、トランスデューサ及び右部分を示している。
図2】本開示の実施形態による、図1Aの超音波手術装置の機能ブロック図である。
図3】本開示の実施形態による、超音波手術装置を制御するための方法を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
一般に、本開示は、組織における血管を封止するための超音波手術装置、及び超音波手術装置を制御する方法を提供する。超音波手術装置は、トランスデューサを利用して、超音波機械運動を発生させる。本開示の態様によれば、超音波手術装置は、血管を封止する前に、封止される血管のサイズ範囲を自動的に推定する。超音波手術装置は、血管の推定サイズ範囲に基づいて、エンドエフェクタの適切な速度を維持して、血管を適切に封止する。
【0023】
本開示によれば、超音波手術装置は、さまざまな制御を含み、この制御は、プロセッサにより実行されるハードウエア及び/又はソフトウエアに統合することができ、DC電源によりエネルギーが供給される、トランスデューサの超音波機械運動を制御することができる。制御の1つは、エンドエフェクタの縦方向モードの配置を調節する振幅制御である。別の制御により、DC出力からACシグナルが発生し、トランスデューサの共振式周波数を追跡する。さまざまな制御の使用により、超音波手術装置は、本開示の実施形態により、血管を処置するのに十分に制御されている超音波機械運動を実現する。
【0024】
さまざまな血管が、エンドエフェクタのさまざまな速度からの利益を受けて、適切に血管を処置するので、超音波手術装置は、血管を処置する前に、血管のサイズ範囲を推定する。超音波手術装置は、血管の推定サイズ範囲に基づいて、エンドエフェクタの速度を設定して、血管を適切に処置する。
【0025】
図1A及び1Bを参照すると、組織を処置するための超音波手術装置100が、例示されている。この超音波手術装置100は、電源110、ハウジング130、トランスデューサ150、及び超音波プローブ190を含む。電源110は、トランスデューサ150にDC出力を供給する。実施形態では、電源110は、電池などの携帯型電源であってもよく、任意の場所にDC出力を供給するよう運搬され得る。更なる実施形態では、電源110は、挿入可能であってもよく、又はハウジング130に統合されていてもよく、その結果、超音波手術装置100は、いかなるケーブルも邪魔にならず、携帯して持ち運ぶことができる。更に別の実施形態では、電源110は、充電可能であってもよく、その結果、電源110は、再使用可能とすることができる。更に別の実施形態では、電源110は、壁のコンセントから出力を受給してもよい。
【0026】
別の実施形態では、電源110は、交流電流(AC)電源に接続されているコンバータを含んで、AC出力をDC出力に変換することができる。AC電源は約60ヘルツ(Hz)などの、比較的低い周波数であってもよい一方、超音波手術装置100は、より高い周波数で稼働する。したがって、電源110は、低周波数のAC出力をDC出力に変換し、その結果、DC出力が、次に、トランスデューサ150に超音波機械運動を発生させるのに好適な周波数を有するAC出力に反転されてもよい。
【0027】
図1A及び1Bを続けて参照すると、ハウジング130は、区画132を有するハンドル部分131を含み、この区画は、電源110、及び区画132内の電源110を固定する電源ドア134を収容することができる。一態様では、電源ドア134は区画132の内側と外側との間に防水シールを形成するよう構成されていてもよい。
【0028】
ハウジング130はまた、カバー133を含み、これは、トランスデューサ150と出力装置180とを収容する。トランスデューサ150は、発生器アセンブリ152、及びトランスデューサ本体156を有するトランスデューサアセンブリ154、及びロック部分162を含む(図1B)。発生器アセンブリ152は、一対の接触部158を介して、トランスデューサアセンブリ154に電気連結されている。
【0029】
図1Bを参照すると、トランスデューサ150は、カバー133から分離されているように例示されている。トランスデューサ150が、カバー133に挿入されて、これと共に組み立てられている場合、一対の接触部158は、トランスデューサ150の円形溝に接続されており、その結果、トランスデューサ本体156の回転動作のために、トランスデューサ本体156と発生器アセンブリ152との間の接続部を邪魔しない。したがって、トランスデューサ本体156は、ハウジング130内で自由回転することができる。
【0030】
出力装置180は、超音波手術装置100に関する、又はさまざまな実施形態では、超音波プローブ190とトランスデューサ150との間の機械連結部の状態に関する情報を出力する。さまざまな実施形態では、出力装置180はまた、超音波プローブ190が、トランスデューサ150に適切に接続されていないという警告を表示することもできる。
【0031】
別の実施形態では、出力装置180は、トランスデューサ150に超音波プローブ190が適切に又は不適切に接続されていることを示す、可聴音を出力するよう構成されているスピーカーであってもよい。更に別の実施形態では、出力装置180は、超音波プローブ190とトランスデューサ150との間の機械連結部の状態を表示する、さまざまな期間、パルス及び色の光を発光するよう構成されている、1つ又は複数の発光素子を含んでもよい。
【0032】
ハンドル部分131は、トリガ136を更に含む。トリガ136が作動すると、電源110は、トランスデューサ150にエネルギーを供給し、その結果、トランスデューサ150は、超音波プローブ190が超音波機械運動を発生するよう出力される。トリガ136が解放されると、トランスデューサ150への電力が終了する。
【0033】
発生器アセンブリ152は、電源110からDC出力を受給し、20kHzより大きな周波数を有するACシグナルを発生する。発生器アセンブリ152は、操作の所望のモードに基づいた周波数を有するシグナルを発生することが可能となることがあり、この周波数は、トランスデューサ150の共振式周波数とは異なってもよい。
【0034】
トランスデューサアセンブリ154のトランスデューサ本体156は、発生器アセンブリ152によって発生したACシグナルを受信し、発生したACシグナルの振幅及び周波数に基づいて、超音波プローブ190内で超音波機械運動を発生させる。トランスデューサ本体156は、圧電材料を含み、この材料は、発生したACシグナルを超音波機械運動に変換する。
【0035】
超音波手術装置100はまた、スピンドル170を含み、これは、超音波プローブ190に連結されており、このスピンドルのおかげで、その長手軸の周りを超音波プローブ190が回転するのが可能になる。超音波プローブ190は、ハウジングに取り付けられており、ロック部分162を介して、トランスデューサ150に機械接続されており、こうして、スピンドル170は、超音波プローブ190によって画定される長手軸の周りを回転するので、それに対応して、超音波プローブ190及びトランスデューサ150はまた、トランスデューサ150と超音波プローブ190との間の接続部に影響を及ぼすことなく、やはり回転する。
【0036】
超音波プローブ190は、封止組織に好適なエンドエフェクタを含むことができる。超音波プローブ190は、導波管192、導波管192から延在するエンドエフェクタ194、及びジョー部材196を含む。超音波プローブ190は、ロック部分162を介して、トランスデューサ本体156に機械連結されている。
【0037】
ジョー部材196は、ジョー部材196とエンドエフェクタ194との間の組織を把持及び/又はクランプするよう構成されている枢動アームとして形成されていてもよい。ジョー部材196及びエンドエフェクタ194が、組織を把持して、エンドエフェクタ194が超音波機械運動を伝えると、エンドエフェクタ194とジョー部材196との間の把持された組織の温度が、超音波機械運動のために増大する。これらの運動により、ひいては、組織中の血管が処置、例えば、切断及び/又は封止される。態様では、エンドエフェクタ194は、封止される血管のサイズ範囲に基づいて、さまざまな速度で振動することができる。
【0038】
図1A及び図1Bの例示されている実施形態は、単なる例示に過ぎず、変形は、本開示の範囲内にあることが企図されている。例えば、構成要素は、図1A及び図1Bに配置されている、又はこれらに例示されているとおり構成されている必要はなく、さまざまに配列又は構成されてもよく、同時に、依然として、本明細書に記載されている操作及び/又は機能を発揮する。
【0039】
図2は、図1の超音波手術装置100の機能ブロック図を例示している。上記のとおり、超音波手術装置100は、封止される血管のサイズ範囲を推定し、好適な電力値及び周波数を有する電気エネルギーを、トランスデューサ150に供給し、このトランスデューサは、次に、超音波機械運動をエンドエフェクタ192に供給する。アナログ又はデジタルパルス幅変調(PWM)シグナルを使用して、超音波機械運動を調節することができる。超音波手術装置100は、電源110、コンバータ330、センサ340、制御装置350、インバータ370、トランスデューサ150及びコンパレータ390を含む。
【0040】
電源110は、DC出力をコンバータ330に供給し、このコンバータは、DC出力の振幅を増幅し、その結果、超音波手術装置100は、組織を処置するのに十分に大きな超音波機械運動を発生させる。次に、センサ340は、インバータ370への電気エネルギーの流れに関連するパラメータを検知する。検知されたパラメータは、インバータ370に供給された電気エネルギーの検知された電流波形及び検知された電圧波形を含むことができる。
【0041】
制御装置350は、センサ340から検知されたパラメータを受信し、検知されたパラメータに基づいたさまざまなパラメータ(例えば、二乗平均平方根(RMS)又は平均電圧、電流、電力値又はインピーダンス)を算出して、制御シグナルを発生し、コンバータ330の負荷サイクルを制御する。実施形態では、デジタルPWMシグナルを使用して、コンバータ330の負荷シグナルを制御することができる。
【0042】
インバータ370は、コンバータ330からの増幅DCシグナルを受信する。インバータ370は、制御装置350からのシグナルを出力することにより駆動される。さまざまな実施形態では、インバータ370は、トランスデューサ150を機械的に振動させるのに好適な周波数を有する電気エネルギーを発生させるための、Hブリッジ構造を含むことができる。
【0043】
さまざまな実施形態では、制御装置350は、トランスデューサ150に連結されているエンドエフェクタ194の速度を測定して、封止過程の間、エンドエフェクタ194の特定の速度を維持することができる。コンパレータ390は、トランスデューサ150からシグナルを受信し、エンドエフェクタ194の速度を表示して、エンドエフェクタ194の速度と、血管のサイズ範囲を推定するために設定された所定の速度とを比較する。速度が所定の速度未満である場合、制御装置350は、制御シグナルを発生して、電気エネルギーの振幅を増大させて、トランスデューサ150を振動させることができ、エンドエフェクタ194の速度の増大を更にもたらす。速度が所定の速度より大きい場合、制御装置350は、別の制御シグナルを発生して、トランスデューサ150の振動を少なくし、速度の低下をもたらすよう、電気エネルギーの振幅を低下させることができる。
【0044】
エンドエフェクタ194の速度が、所定の速度閾値を達成すると、制御装置は、処置される血管のサイズ範囲を推定することができる。特に、制御装置350は、電気エネルギーの電力値を算出し、その電力値に基づいて、処置される血管のサイズ範囲を推定する。一実施形態では、電力値が、所定の閾値電力値よりも小さい場合、血管のサイズ範囲は、5mm未満又は小血管と推定され、電力値が所定の閾値電力値以上である場合、血管のサイズ範囲は、5mmより大きいと推定されるか、又は血管は大きい。
【0045】
電気エネルギーの供給が開始すると、エンドエフェクタの速度が所定の速度を達成するための時間が必要となる。したがって、速度が所定の速度を達成することを可能にするよう、ある期間を利用することができる。態様では、電気エネルギーの供給が開始した後、測定前又は算出前に、100ミリ秒(ms)の期間が経過してもよい。しかし、測定前又は算出前のこの期間は、100msに限定されず、100ms未満であってもよく、又はこれより長くてもよい。
【0046】
制御装置350は、PWM制御シグナルを発生して、コンバータ330、及びインバータ370のための他の制御シグナルを駆動することができる。制御装置350は、コンパレータ390からの出力値を受信し、コンパレータ390の出力値に応答して、インバータ370のための制御シグナルを発生する。次に、インバータ370は、DC出力をACシグナルに変換する。態様では、変圧器(図示せず)が、インバータ370とトランスデューサ150との間に電気連結されていてもよく、その結果、この変換器は、変換されたAC出力の振幅を所望のレベルまで増大又は低下させてもよい。
【0047】
態様では、センサ340は、トランスデューサ150に供給された広域ACシグナルの電圧及び電流波形を検知するよう構成されており、センサシグナルを制御装置350に伝送する。制御装置350は、センサシグナル及びコンパレータ390の出力値を処理し、エンドエフェクタ194の速度を制御することができる。
【0048】
態様では、制御装置350は、プロセッサ、及びプロセッサに連結されているメモリを含んでもよい。プロセッサは、以下に限定されないが、ハードウエアプロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、中央処理装置(CPU)、マイクロプロセッサ及びそれらの任意の組合せを含めた、本開示において記載されている、操作、算出及び/又は一組の命令を行うようになされている任意の好適なプロセッサ(例えば、制御回路)とすることができる。当業者は、プロセッサが、本開示で記載されている、アルゴリズム、算出及び/又は一組の命令を実行するようになされている任意の論理プロセッサ(例えば、制御回路)を使用することによって置き換えされてもよいことを理解するであろう。メモリは、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、電気的消去可能なプログラマブルROM(EEPROM)、非揮発性RAM(NVRAM)、又はフラッシュメモリなどの、揮発性、非揮発性、磁気的、光学的又は電気的メディアのうちの1種又は複数を含むことができる。
【0049】
図3は、血管を適切に封止するための超音波トランスデューサを制御するための方法300を例示するフローチャートである。方法300は、2つの相を含み、その1つは、エンドエフェクタにおいて所定の速度を達成し、もう一方は、封止される血管のサイズ範囲を判定し、したがって、エンドエフェクタの速度を設定する。
【0050】
トランスデューサに連結されているエンドエフェクタは、血管を含む組織を把持すると、工程305において、方法300の第1の制御が、電気エネルギーをトランスデューサに供給して開始する。この電気エネルギーは、周波数及び振幅を含み、これは、トランスデューサに機械連結されているエンドエフェクタの速度を制御する。トランスデューサの機械的な運動が測定されて、エンドエフェクタが動く速度が、工程310において算出される。
【0051】
より大きなサイズ範囲の血管は、通常、速度を維持するためにより多くの電気エネルギーを必要とするので、測定した速度は、工程315における閾値速度と比較される。エンドエフェクタの速度が、閾値速度未満であると判定されると、より多量の電気エネルギーが、工程320においてトランスデューサに供給される。エンドエフェクタの速度が、閾値速度より大きいと判定されると、より少量の電気エネルギーが、工程325においてトランスデューサに供給される。このように、エンドエフェクタの速度は、所定の速度を達成するよう制御される。
【0052】
速度が、工程315において、閾値速度を達成したと判定されると、供給された電気エネルギーの電力値は、工程330で算出される。態様では、エンドエフェクタの速度が所定の速度を達成するために時間がかかることがあるので、工程315における比較は、エンドエフェクタが作動した後のある期間、行われてもよい。例えば、所定期間は、100msとすることができる。
【0053】
態様では、出力は、検知された結果から算出され得る。例えば、電力値は、電圧波形と電流波形とを乗算することにより算出され得る。別の態様では、電力値は、組織に実際に適用された電力値を算出するよう較正されていてもよい。この算出は、電圧波形及び電流波形を乗算することにより得られた結果から、導波管及びトランスデューサにおける電力損失を減算することにより行うことができる。更に、所定の電力閾値はまた、処置される血管を含めた、あるタイプの組織に基づいて設定されてもよい。
【0054】
さまざまな実施形態では、トランスデューサにおける電力損失は、トランスデューサの圧電積層体の特性のばらつきに基づくことができる。電力値の較正過程は、電圧、電流、速度及び周波数の測定のための倍率を決定するためのジョーの開口起動を含んでもよく、ジョーの開口起動に使用した電力値を測定するステップを含んでもよい。実施形態では、トランスデューサに関連する較正パラメータを、後の電力値較正過程に使用するよう、メモリに記憶させてもよい。
【0055】
さまざまな実施形態では、導波管及びトランスデューサにおける電力損失は、超音波装置のメモリに記憶されている、較正済み値とすることができる。導波管は、長さがさまざまとなり得、その内部の電力損失はさまざまとなる。導波管の長さに基づいた電力損失に関連するパラメータはメモリに記憶され得、サイズ範囲を推定して血管の封止を行っている間に、メモリから読み取られて、電力損失を較正することができる。
【0056】
算出した電力値に基づいて、血管のサイズ範囲を、工程335で決定することができる。例えば、算出された電力値が、所定の電力閾値より低い場合、血管は、5mmより小さい小血管であると判定される。算出された出力が、所定の電力閾値以上の場合、血管は、5mm以上かつ7mm未満の大血管であると判定される。
【0057】
態様では、所定の電力閾値は、あるタイプの血管に基づいて、異なって設定されてもよい。例えば、腎臓の動脈に対する所定の電力閾値は、頸動脈又は大腿骨の動脈の電力閾値とは異なっていてもよい。
【0058】
次に、算出した電力値を、工程340において、2つの範囲と比較して、血管を適切に封止するよう、エンドエフェクタの目標速度を設定する。算出した電力値が、第1の範囲内に収まる、又は血管が、小血管であると判定された場合、この目標速度は、工程345における所定の速度よりも大きくなるよう設定される。例えば、算出した電力値が、18ワット(W)〜23.5Wにある場合、目標速度は増大する。
【0059】
算出した電力値が、第1の範囲よりも大きな第2の範囲内に収まる、又は血管が、大血管と判定された場合、この目標速度は、工程350における所定の速度よりも小さくなるよう設定される。例えば、算出した電力値が、26.5W〜36Wにある場合、目標速度が低下される。第1及び第2の範囲の値は、例として単に提示されているに過ぎず、第1及び第2の範囲は、これらの値に限定されず、異なる値を有してもよい。
【0060】
工程355では、電気エネルギーは、目標速度においてエンドエフェクタの速度を維持するよう制御される。次に、血管は、目標速度で適切に封止され、方法300が終了する。態様では、封止過程の期間は、血管のサイズ範囲に応じて、制御され得る。言い換えると、小血管は、大血管よりも迅速に封止され得る。
【0061】
さまざまな実施形態では、工程315は、速度が所定の速度閾値を達成したとき、工程330に進まないことがある。むしろ、さまざまな実施形態では、工程315は、100msなどのある期間を経過した後にしか、工程330に進まないことがある。
【0062】
さまざまな実施形態では、工程345は、目標速度を単に増大させないことがあり、工程350は、目標速度を単に低下させないことがある。さまざまな実施形態では、工程345は、第1の速度曲線に接近することができ、工程350は、第2の速度曲線に接近することができる。本明細書で使用する場合、速度曲線は、経時的に速度を指定する関数、表又は他の数値的な関係である。次に、工程355は、電気エネルギーを制御し、その結果、エンドエフェクタの速度は、経時的に特定の速度曲線を追跡する。
【0063】
他の修正及び変更が、特定の操作要件及び状況に適合するようなされ得るので、本開示は、本明細書に記載されている例示的な例に限定されないこと、並びに本開示の趣旨又は範囲から逸脱しないさまざまな他の変更及び修正を包含し得ることが当業者により理解される。
図1A
図1B
図2
図3