(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記酸化防止剤(E)を必須に含み、前記酸化防止剤(E)がヒンダードフェノール系酸化防止剤を含み、前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤が、各フェノール基におけるターシャリーブチル基が1以下、カルボニル基が1以上を有する、請求項1に記載の合成繊維用処理剤。
前記汚染物質粒子が、乳酸、乳酸塩、モノオクチルスルホコハク酸、モノオクチルスルホコハク酸塩、無機硫酸及び無機硫酸塩、無機燐酸及び無機燐酸塩から選ばれる少なくとも1種であり、その合計が1500ppm以下である、請求項1又は2に記載の合成繊維用処理剤。
前記油膜強化剤(H)を必須に含み、前記油膜強化剤(H)が、硬化ヒマシ油のエチレンオキシド付加物とジカルボン酸の縮合物を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の合成繊維用処理剤。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の合成繊維用処理剤は、特定の成分を含み、処理剤の清浄度であるISO等級(4406:1999)が一定以下である。以下詳細に説明する。
【0011】
〔合成繊維用処理剤〕
本発明の合成繊維用処理剤は、処理剤の清浄度であるISO等級が17/16/14以下である。17/16/14を超えると、本発明の課題を解決することができない。ISO等級は15/14/12以下が好ましく、14/13/11以下がより好ましく、13/11/9以下がさらに好ましい。
ISO等級(4406:1999)とは、試料100mLに含まれる固体粒子をカウントすることにより、液体中の汚染物質粒子の分布状況を表すものである。実際のカウント数を使用すると表示する数値の範囲が大きくなるので、2の対数を使用した番号コードに変換して、汚染の程度を表す国際規格である。4μm以上の粒子数、6μm以上の粒子数、14μm以上の粒子数のカウント値に基づいてコードが算出される。
合成繊維用処理剤について、液中微粒子計測器(例えば、HACH ULTRA ANALYTICS社製、HIAC Royco 液中微粒子計測器 System 8011等)を用いて100mL当たりの汚染粒子数C
Dを求める。
本発明の合成繊維用処理剤は、本願効果を発揮する観点から、4μm以上の汚染物質粒子が100mL当たり130000個以下であり、64000個以下が好ましく、32000個以下がより好ましい。
【0012】
本発明の合成繊維用処理剤に含まれる汚染物質粒子の含有量は、1500ppm以下が好ましく、1000ppm以下がより好ましく、500ppm以下がさらに好ましく、250ppm以下が特に好ましく、125ppm以下が最も好ましい。1500ppmを超えると、長期間保管により給油ラインを閉塞させることがある。
本発明の合成繊維用処理剤に含まれる汚染物質粒子の含有量の好ましい下限値は、0.1ppmである。
【0013】
汚染物質粒子は、乳酸、乳酸塩、モノオクチルスルホコハク酸、モノオクチルスルホコハク酸塩、無機硫酸、無機硫酸塩、無機燐酸及び無機燐酸塩から選ばれる少なくとも1種以上であると、本願効果を発揮する観点から好ましい。
【0014】
本発明の合成繊維用処理剤の高温曇点は、長期間保管により給油ラインを閉塞させない観点から、50℃以上が好ましく、55℃以上がより好ましく、60℃以上がさらに好ましい。好ましい高温曇点の上限値は90℃である。
本発明の合成繊維用処理剤の低温曇点は、長期間保管により給油ラインを閉塞させない観点から、10℃以下が好ましく、5℃以下がより好ましく、0℃以下がさらに好ましい。好ましい低温曇点の下限値は−10℃である。
【0015】
本発明の合成繊維用処理剤の25℃での粘度は、粘度が低すぎると給油装置から処理剤が飛散したりする。粘度が高すぎると均一付着性が低下する。10〜100mm
2/sの範囲が望ましく、20〜95mm
2/sが好ましく、30〜90mm
2/sがより好ましく、40〜85mm
2/sがさらに好ましい。
【0016】
本発明の合成繊維用処理剤の25℃での比重は、比重が低すぎると処理剤中に浮遊している汚染物質粒子の沈降や凝集を促進するため、比重が高いほうが良い。0.75以上が好ましく、0.80以上がより好ましく、0.85以上がさらに好ましい。
【0017】
本発明の合成繊維用処理剤は、平滑剤(L)、ノニオン界面活性剤(N)、低粘度希釈剤(D)を必須で含む。
本発明の合成繊維用処理剤は、本願発明の効果の観点から、有機スルホン酸塩(AS)、有機燐酸塩(AP)、油膜強化剤(H)、有機アミンのエチレンオキシド付加物(RA)、及び酸化防止剤(E)から選ばれる少なくとも1種を含むと好ましい。
【0018】
[平滑剤(L)]
平滑成分(L)は、本発明の処理剤の必須成分である。平滑成分(L)としては、1)脂肪族一価アルコールと脂肪酸とがエステル結合した構造を有するエステル化合物(L1)、2)脂肪族多価アルコールと脂肪酸とがエステル結合した構造を有するエステル化合物(L2)、3)脂肪族一価アルコールと脂肪族多価カルボン酸とがエステル結合した構造を有するエステル化合物(L3)、4)分子内に芳香環を有する芳香族エステル化合物(L4)、5)含硫黄エステル化合物(L5)、6)鉱物油(L6)等、合成繊維用処理剤として一般的に採用されている公知の平滑成分を挙げることができる。平滑成分(L)は1種又は2種以上を使用できる。
【0019】
1)エステル化合物(L1)
エステル化合物(L1)は、脂肪族一価アルコールと脂肪酸(脂肪族一価カルボン酸)とがエステル結合した構造を有する化合物であり、また分子内にポリオキシアルキレン基を有しない化合物である。エステル化合物(L1)は1種又は2種以上を使用できる。
エステル化合物(L1)としては、下記一般式(1)で示される化合物であることが好ましい。
R
1−COO−R
2 (1)
(式中、R
1は炭素数4〜24のアルキル基又はアルケニル基を示し、R
2は炭素数6〜24のアルキル基又はアルケニル基を示す。)
【0020】
R
1の炭素数は6〜22が好ましく、8〜20がより好ましく、10〜18がさらに好ましい。該炭素数が4未満では、油膜が弱いために毛羽が増加することがある。一方、該炭素数が24超では、繊維金属間の摩擦が高くなり、毛羽が増加することがある。R
1は、アルキル基とアルケニル基のどちらでもよいが、長期間保管により給油ラインを閉塞させないという観点から、アルキル基が好ましい。
【0021】
R
2の炭素数は6〜22が好ましく、8〜20がより好ましく、10〜18がさらに好ましい。該炭素数が6未満では、油膜が弱いために毛羽が増加することがある。一方、該炭素数が24超では、繊維金属間の摩擦が高くなり、毛羽が増加することがある。R
2は、アルキル基とアルケニル基のどちらでもよいが、長期間保管により給油ラインを閉塞させないという観点から、アルケニル基が好ましい。
【0022】
エステル化合物(L1)としては、特に限定されないが、例えば、2−デシルテトラデカノイルエルシネート、2−デシルテトラデカノイルオレエート、2−オクチルドデシルステアレート、イソオクチルパルミテート、イソオクチルステアレート、ブチルパルミテート、ブチルステアレート、ブチルオレート、イソオクチルオレート、ラウリルオレエート、イソトリデシルステアレート、ヘキサデシルステアレート、イソステアリルオレエート、オレイルオクタノエート、オレイルラウレート、オレイルパルミテート、オレイルステアレート、オレイルオレエート等が挙げられる。これらの中でも、2−デシルテトラデカノイルオレエート、2−オクチルドデシルステアレート、イソオクチルパルミテート、イソオクチルステアレート、ラウリルオレエート、イソトリデシルステアレート、ヘキサデシルステアレート、イソステアリルオレエート、オレイルオレエートが好ましい。
【0023】
2)エステル化合物(L2)
エステル化合物(L2)は、脂肪族多価アルコールと脂肪酸(脂肪族一価カルボン酸)とがエステル結合した構造を有する化合物であり、また分子内にポリオキシアルキレン基を有しない化合物である。エステル化合物(L2)は1種又は2種以上を使用できる。
【0024】
エステル化合物(L2)を構成する脂肪族多価アルコールは、2価以上であれば特に限定はなく、1種又は2種以上を使用できる。多価アルコールは、油膜強度の点から、3価以上が好ましく、3〜4価がより好ましく、3価がさらに好ましい。
脂肪族多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、エリスリトール、ジグリセリン、ソルビタン、ソルビトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、トリグリセリン、テトラグリセリン、ショ糖等が挙げられる。これらの中でも、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、エリスリトール、ジグリセリン、ソルビタン、ソルビトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、ショ糖が好ましく、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、エリスリトール、ジグリセリン、ソルビタンがより好ましく、グリセリン、トリメチロールプロパンがさらに好ましい。
【0025】
エステル化合物(L2)を構成する脂肪酸は、飽和であっても不飽和であってもよい。不飽和結合の数については特に限定はないが、3つ以上有する場合、酸化により劣化が進行して処理剤が増粘して潤滑性が損なわれるため、1つ又は2つが好ましい。脂肪酸の炭素数としては、油膜強度と潤滑性の両立から、8〜24が好ましく、10〜20がより好ましく、12〜18がさらに好ましい。脂肪酸は、1種又は2種以上を使用してもよく、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸を併用してもよい。
【0026】
エステル化合物(L2)は、分子内に2個以上のエステル結合を有する化合物であるが、長期間保管により給油ラインを閉塞させない観点から、分子内に3個以上のエステル結合を有する化合物であることが好ましく、分子内に3個のエステル結合を有する化合物であることがさらに好ましい。
エステル化合物(L2)のヨウ素価については、特に限定はない。
【0027】
エステル化合物(L2)の重量平均分子量は、300〜1200が好ましく、300〜1000がより好ましく、500〜1000がさらに好ましい。該重量平均分子量が300未満の場合、油膜強度が不足し、毛羽が増加したり、熱処理時の発煙が増加したりする場合がある。一方、該重量平均分子量が1200超の場合、平滑性が不足して毛羽が多発し、高品位の繊維が得られないだけでなく、製織や編み工程での品位が劣る場合がある。なお、本発明における重量平均分子量は、東ソー(株)製高速ゲルパーミエーションクロマトグラフィー装置HLC−8220GPCを用い、試料濃度3mg/ccで、昭和電工(株)製分離カラムKF−402HQ、KF−403HQに注入し、示差屈折率検出器で測定されたピークより算出した。
【0028】
エステル化合物(L2)としては、例えば、トリメチロールプロパントリカプリレート、トリメチロールプロパントリカプリナート、トリメチロールプロパントリラウレート、トリメチロールプロパントリオレエート、トリメチロールプロパン(ラウレート、ミリスチレート、パルミテート)、トリメチロールプロパン(ラウレート、ミリスチレート、オレエート)、トリメチロールプロパン(トリパーム核脂肪酸エステル)、トリメチロールプロパン(トリヤシ脂肪酸エステル
)、ヤシ油、菜種油、パーム油、グリセリントリラウレート、グリセリントリオレエート、グリセリントリイソステアレート
、ペンタエリスリトールテトラカプリレート、ペンタエリスリトールテトラカプリナート、ペンタエリスリトールテトララウレート、エリスリトールテトララウレート、ペンタエリスリトール(テトラパーム核脂肪酸エステル)、ペンタエリスリトール(テトラヤシ脂肪酸エステル)
、1,6ヘキサンジオールジオレエート等が挙げられる。
【0029】
エステル化合物(L2)、は一般的に市販されている脂肪酸と脂肪族多価アルコールを用いて、公知の方法で合成し得られたものを使用してもよい。又、天然の果実、種子又は花など天然より得られる天然エステルであって、エステル化合物(L2)の構成を満足する天然エステルをそのまま使用したり、必要に応じて、天然エステルを公知の方法で精製したり、更に精製したエステルを公知の方法で融点差を利用して分離、再精製を行ったエステルを用いたりしてもよい。又、2種以上の天然エステル(油脂)をエステル交換して得られたエステルを用いてもよい。
【0030】
3)エステル化合物(L3)
エステル化合物(L3)は、脂肪族一価アルコールと脂肪族多価カルボン酸とがエステル結合した構造を有する化合物であり、また分子内にポリオキシアルキレン基を有しない化合物である。エステル化合物(L3)は1種又は2種以上を使用できる。
【0031】
エステル化合物(L3)を構成する脂肪族一価アルコールは、特に限定はなく、1種又は2種以上を使用できる。脂肪族一価アルコールは、飽和であっても不飽和であってもよい。不飽和結合の数については特に限定はないが、2つ以上有する場合、酸化により劣化が進行して処理剤が増粘して潤滑性が損なわれるため、1つが好ましい。脂肪族一価アルコールの炭素数としては、長期間保管により給油ラインを閉塞させない観点から、8〜24が好ましく、14〜24がより好ましく、18〜22がさらに好ましい。脂肪族一価アルコールは、1種又は2種以上を使用してもよく、飽和脂肪族一価アルコールと不飽和脂肪族1価アルコールを併用してもよい。
【0032】
脂肪族1価アルコールとしては、オクチルアルコール、イソオクチルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、ミリストレイルアルコール、セチルアルコール、イソセチルアルコール、パルミトレイルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、エライジルアルコール、バクセニルアルコール、ガドレイルアルコール、アラキジルアルコール、イソイコサニルアルコール、エイコセノイルアルコール、ベヘニルアルコール、イソドコサニルアルコール、エルカニルアルコール、リグノセリニルアルコール、イソテトラコサニルアルコール、ネルボニルアルコール、セロチニルアルコール、モンタニルアルコール、メリシニルアルコール等が挙げられる。これらの中でも、オクチルアルコール、イソオクチルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、ミリストレイルアルコール、セチルアルコール、イソセチルアルコール、パルミトレイルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、エライジルアルコール、バクセニルアルコール、ガドレイルアルコール、アラキジルアルコール、イソイコサニルアルコール、エイコセノイルアルコール、ベヘニルアルコール、イソドコサニルアルコール、エルカニルアルコール、リグノセリニルアルコール、イソテトラドコサニルアルコール、ネルボニルアルコールが好ましく、ミリストレイルアルコール、パルミトレイルアルコール、オレイルアルコール、エライジルアルコール、バクセニルアルコール、ガドレイルアルコール、エイコセノイルアルコール、エルカニルアルコール、ネルボニルアルコールがより好ましく、オレイルアルコール、エライジルアルコール、バクセニルアルコール、ガドレイルアルコール、エイコセノイルアルコール、エルカニルアルコールがさらに好ましい。
【0033】
エステル(L3)を構成する脂肪族多価カルボン酸は、2価以上であれば特に限定はなく、1種又は2種以上を使用できる。本発明で用いる脂肪族多価カルボン酸は、チオジプロピオン酸等の含硫黄多価カルボン酸を含まない。脂肪族多価カルボン酸の価数は、2価が好ましい。同様に、分子内にヒドロキシル基を含まないことが好ましい。
脂肪族多価カルボン酸としては、クエン酸、イソクエン酸、リンゴ酸、アコニット酸、オキサロ酢酸、オキサロコハク酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等が挙げられる。これらの中でも、アコニット酸、オキサロ酢酸、オキサロコハク酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸が好ましく、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸がより好ましい。
【0034】
エステル化合物(L3)としては、例えば、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジラウリル、アジピン酸ジオレイル、アジピン酸次イソセチル、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジラウリル、セバシン酸ジオレイル、セバシン酸ジイソセチル等を挙げることができる。
【0035】
エステル化合物(L3)は、分子内に2個以上のエステル結合を有する化合物である。エステル化合物(L3)のヨウ素価については、特に限定はない。
【0036】
エステル化合物(L3)の重量平均分子量は、500〜1000が好ましく、500〜800がより好ましく、500〜700がさらに好ましい。該重量平均分子量が500未満の場合、油膜強度が不足し、毛羽が増加したり、熱処理時の発煙が増加したりする場合がある。一方、該重量平均分子量が1000超の場合、融点が高くなり、製織や編み工程でのスカム発生の原因となり、品位が劣る場合がある。
【0037】
4)芳香族エステル化合物(L4)
芳香族エステル化合物(L4)は、分子内に少なくとも1つの芳香環を有するエステル化合物である。詳細には、芳香族カルボン酸とアルコールとがエステル結合した構造を有するエステル化合物(L4−1)、芳香族アルコールとカルボン酸とがエステル結合した構造を有するエステル化合物(L4−2)を挙げることができる。また、芳香族エステル化合物(L4)は、分子内にポリオキシアルキレン基を有しない化合物である。芳香族エステル化合物(L4)は、1種又は2種以上を使用できる。
【0038】
5)含硫黄エステル化合物(L5)
含硫黄エステル化合物は、チオジプロピオン酸と脂肪族アルコールとのジエステル化合物及びチオジプロピオン酸と脂肪族アルコールとのモノエステル化合物から選ばれる少なくとも1種である。
含硫黄エステル化合物は、抗酸化能を有する成分である。該含硫黄エステル化合物を使用することで、処理剤の耐熱性を高めることができる。含硫黄エステル化合物は、1種又は2種以上を使用できる。該含硫黄エステル化合物を構成するチオジプロピオン酸の分子量は、400〜1000が好ましく、500〜900がより好ましく、600〜800がさらに好ましい。該含硫黄エステル化合物を構成する脂肪族アルコールは、飽和であっても不飽和であってもよい。また、脂肪族アルコールは、直鎖状であっても分岐構造を有していてもよいが、分岐構造を有するものが好ましい。脂肪族アルコールの炭素数は8〜24が好ましく、12〜24がより好ましく、16〜24がさらに好ましい。脂肪族アルコールとしては、例えば、オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、イソセチルアルコール、オレイルアルコールおよびイソステアリルアルコールなどが挙げられ、これらの中でもオレイルアルコール、イソステアリルアルコールが好ましい。
【0039】
6)鉱物油(L6)
また、本発明の合成繊維用処理剤は、上記以外の平滑成分として、鉱物油を含有してもよい。ここでいう鉱物油は処理剤を希釈するために用いる低粘度希釈剤ではなく、不揮発分に含まれる。鉱物油としては、特に限定はないが、マシン油、スピンドル油、流動パラフィン等を挙げることができる。鉱物油は、1種又は2種以上を使用してもよい。鉱物油の30℃における粘度は、100〜500秒が好ましい。
【0040】
平滑成分(L)としては、長期間保管により給油ラインを閉塞させない観点から、触媒等を除去して精製したものを用いることが好ましい。
【0041】
[ノニオン界面活性剤(N)]
本発明の処理剤は、原糸に油膜強度、集束性を与え、製糸性を向上させる点から、上記の平滑成分(L)に加え、ノニオン界面活性剤(N)を必須に含有する。なお、ノニオン界面活性剤(N)は、前記の平滑成分(L)を除くものいう。ノニオン界面活性剤(N)は、1種又は2種以上を使用してもよい。
【0042】
ノニオン界面活性剤(N)としては、ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテル、ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪族アルコールエーテル、ポリアルキレングリコールの脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0043】
(ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテル)
ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルとは、多価アルコールに対して、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなどのアルキレンオキシドが付加した構造を持つ化合物である。
多価アルコールとしては、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ソルビタン、ソルビトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、ショ糖等が挙げられる。これらのなかでもグリセリン、トリメチロールプロパン、ショ糖、が好ましい。
【0044】
アルキレンオキシドの付加モル数としては、3〜100が好ましく、4〜70がより好ましく、5〜50がさらに好ましい。また、アルキレンオキシドに占めるエチレンオキシドの割合は、50モル%以上が好ましく、80モル%以上がさらに好ましい。
ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルの重量平均分子量は、300〜10000が好ましく、400〜8000がより好ましく、500〜5000がさらに好ましい。該分子量が300未満の場合、毛羽、断糸の発生を低減できないことがある。一方、該分子量が10000を超えると、処理剤の摩擦が高くなり、毛羽、断糸の発生を低減できないばかりか、かえって悪化することがある。
【0045】
ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルとしては、ポリエチレングリコール、グリセリンエチレンオキシド付加物、トリメチロールプロパンエチレンオキシド付加物、ペンタエリスリトールエチレンオキシド付加物、ジグリセリンエチレンオキシド付加物、ソルビタンエチレンオキシド付加物、ソルビタンエチレンオキシドプロピレンオキシド付加物、ソルビトールエチレンオキシド付加物、ソルビトールエチレンオキシドプロピレンオキシド付加物、ジトリメチロールプロパンエチレンオキシド付加物、ジペンタエリスリトールエチレンオキシド付加物、ショ糖エチレンオキシド付加物等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0046】
(ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル)
ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステルは、多価アルコールに対して、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなどのアルキレンオキシドが付加した化合物と、脂肪酸とがエステル結合した構造を持つ化合物である。
多価アルコールとしては、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、エリスリトール、ジグリセリン、ソルビタン、ソルビトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、ショ糖等が挙げられる。これらのなかでも、グリセリン、ジグリセリン、ソルビタン、ソルビトールが好ましい。
【0047】
脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、イソセチル酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、エイコセン酸、ベヘン酸、イソドコサン酸、エルカ酸、リグノセリン酸、イソテトラコサン酸等が挙げられる。
【0048】
アルキレンオキシドの付加モル数としては、3〜100が好ましく、5〜70がより好ましく、10〜50がさらに好ましい。また、アルキレンオキシドに占めるエチレンオキシドの割合は、50モル%以上が好ましく、80モル%以上がさらに好ましい。
ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステルの重量平均分子量は、300〜7000が好ましく、500〜5000がより好ましく、700〜3000がさらに好ましい。該分子量が300未満の場合、熱処理工程で発煙が発生し、環境を悪化する場合がある。また、断糸の発生を低減できないことがある。一方、該分子量が7000を超えると、処理剤の摩擦が高くなり、毛羽、断糸の発生を低減できないばかりか、かえって悪化することがある。
【0049】
ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステルとしては、グリセリンエチレンオキシド付加物モノラウレート、グリセリンエチレンオキシド付加物ジラウレート、グリセリンエチレンオキシド付加物トリラウレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシド付加物トリラウレート、ソルビタンエチレンオキシド付加物モノオレエート、ソルビタンエチレンオキシド付加物ジオレエート、ソルビタンエチレンオキシド付加物トリオレエート、ソルビタンエチレンオキシドプロピレンオキシド付加物モノオレエート、ソルビタンエチレンオキシドプロピレンオキシド付加物ジオレエート、ソルビタンエチレンオキシドプロピレンオキシド付加物トリオレエート、ソルビタンエチレンオキシドプロピレンオキシド付加物トリラウレート、ショ糖エチレンオキシド付加物トリラウレート等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0050】
(ポリオキシアルキレン脂肪族アルコールエーテル)
ポリオキシアルキレン脂肪族アルコールエーテルとは、脂肪族一価アルコールに対し、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなどのアルキレンオキシドを付加した構造を持つ化合物である。
ポリオキシアルキレン脂肪族アルコールエーテルとしては、例えば、オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコールなどの脂肪族アルコールのアルキレンオキシド付加物が挙げられる。
アルキレンオキシドの付加モル数としては、1〜100モルが好ましく、2〜70モルがより好ましく、3〜50モルがさらに好ましい。また、アルキレンオキシド全体に対するエチレンンオキシドの割合は、20モル%以上が好ましく、30モル%以上がより好ましく、40モル%以上がさらに好ましい。
【0051】
(ポリアルキレングリコールの脂肪酸エステル)
ポリアルキレングリコールの脂肪酸エステルとはポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールと、脂肪酸とがエステル結合した構造を持つ化合物である。ポリアルキレングリコールの重量平均分子量は、100〜1000が好ましく、150〜800がより好ましく、200〜700がさらに好ましい。
【0052】
ポリアルキレングリコール脂肪酸エステルとしては、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールモノオレエート、ポリエチレングリコールジオレエート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリエチレンポリプロピレングリコールモノラウレート、ポリエチレンポリプロピレングリコールジラウレート、ポリエチレンポリプロピレングリコールモノオレエート、ポリエチレンポリプロピレングリコールジオレエート等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0053】
(多価アルコール脂肪酸エステル)
多価アルコール脂肪酸エステルは、多価アルコールと脂肪酸がエステル結合した構造を持つ化合物であり、上記の平滑成分(L)を除く化合物である。
多価アルコールとしては、エチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、エリスリトール、ジエチレングリコール、ジグリセリン、ソルビタン、ソルビトール、ジトリメチロールプロパン、ショ糖等が挙げられる。これらのなかでも、エチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ソルビタン、ソルビトールが好ましい。
【0054】
脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、イソセチル酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、イソイコサン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、ベヘン酸、イソドコサン酸、エルカ酸、リグノセリン酸等が挙げられる。
【0055】
また該多価アルコール脂肪酸エステルは、少なくとも1つ又は2つ以上の水酸基を有する。
多価アルコール脂肪酸エステルの重量平均分子量は、100〜1000が好ましく、200〜800がより好ましく、300〜600がさらに好ましい。
【0056】
脂肪酸エステルとしては、グリセリンモノラウレート、グリセリンジラウレート、グリセリンモノオレエート、グリセリンジオレエート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンジオレエート、ショ糖モノラウレート、ショ糖ジラウレート、等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0057】
ノニオン界面活性剤(N)としては、耐熱性向上の観点から、触媒等を除去して精製したものを用いることが好ましい。
【0058】
[油膜強化剤(H)]
油膜強化剤(H)は、ノニオンポリオキシアルキレン基含有ヒドロキシ脂肪酸多価アルコールエステル(以下、ポリヒドロキシエステルということがある)及びポリヒドロキシエステルの少なくとも一つの水酸基を脂肪酸で封鎖したエステルから選ばれる少なくとも1種である。油膜強化剤(H)は、平滑剤(L)及びノニオン界面活性剤(N)には含まれない。
【0059】
(ポリヒドロキシエステル、ポリヒドロキシエステルの少なくとも一つの水酸基を脂肪酸で封鎖したエステル)
ポリヒドロキシエステルは、構造上、ポリオキシアルキレン基含有ヒドロキシ脂肪酸と多価アルコールとのエステルであり、多価アルコールの水酸基のうち、2個以上の水酸基がエステル化されていることが好ましい。したがって、ポリオキシアルキレン基含有ヒドロキシ脂肪酸多価アルコールエステルは、複数の水酸基を有するエステルである。
【0060】
ポリオキシアルキレン基含有ヒドロキシ脂肪酸は、脂肪酸の炭化水素基に酸素原子を介してポリオキシアルキレン基が結合した構造を有し、ポリオキシアルキレン基の脂肪酸の炭化水素基と結合していない片末端が水酸基となっている。
ポリヒドロキシエステルとしては、例えば、炭素数6〜22(好ましくは16〜20)のヒドロキシ脂肪酸と多価アルコールとのエステル化物のアルキレンオキシド付加物を挙げることができる。
【0061】
炭素数6〜22のヒドロキシ脂肪酸としては、例えば、ヒドロキシカプリル酸、ヒドロキシカプリン酸、ヒドロキシラウリン酸、ヒドロキシステアリン酸、リシノール酸挙げられ、ヒドロキシオクタデカン酸、リシノール酸が好ましい。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、ソルビタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられ、グリセリンが好ましい。アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等の炭素数2〜4のアルキレンオキシドが挙げられる。
【0062】
アルキレンオキシドの付加モル数は、3〜60が好ましく、8〜50がさらに好ましい。アルキレンオキシドに占めるエチレンオキシドの割合は50モル%以上が好ましく、80モル%以上がさらに好ましい。
2種類以上のアルキレンオキシドを付加する場合、それらの付加順序は特に限定されるものでなく、付加形態はブロック状、ランダム状のいずれでもよい。アルキレンオキシドの付加は公知の方法により行うことができるが、塩基性触媒の存在下にて行うことが一般的である。
【0063】
ポリヒドロキシエステルは、例えば、多価アルコールとヒドロキシ脂肪酸(ヒドロキシモノカルボン酸)を通常の条件でエステル化してエステル化物を得て、次いでこのエステル化物にアルキレンオキシドを付加反応させることによって製造できる。ポリヒドロキシエステルは、ヒマシ油などの天然から得られる油脂やこれに水素を添加した硬化ヒマシ油を用い、さらにアルキレンオキシドを付加反応させることによっても、好適に製造できる。
【0064】
上述のポリヒドロキシエステルの少なくとも1つの水酸基を脂肪酸で封鎖したエステルである。封鎖する脂肪酸の炭素数は6〜24が好ましく、12〜18がさらに好ましい。脂肪酸中の炭化水素基の炭素数は分布があってもよく、炭化水素基は直鎖状であっても分岐を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、多環構造を有していてもよい。このような脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エイコサン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等が挙げられる。エステル化の方法、反応条件等については特に限定はなく、公知の方法、通常の条件を採用できる。
【0065】
ポリヒドロキシエステル及びポリヒドロキシエステルの少なくとも一つの水酸基を脂肪酸で封鎖したエステルとしては、例えば、硬化ヒマシ油エチレンオキシド付加物、POE(20)硬化ヒマシ油、ヒマシ油エチレンオキシド付加物、硬化ヒマシ油エチレンオキシド付加物モノオレエート、硬化ヒマシ油エチレンオキシド付加物ジオレエート、硬化ヒマシ油エチレンオキシド付加物トリオレエート、POE(20)硬化ヒマシ油トリオレエート、ヒマシ油エチレンオキシド付加物トリオレエート、硬化ヒマシ油エチレンオキシド付加物トリステアレート、ヒマシ油エチレンオキシド付加物トリステアレート、POE(20)硬化ヒマシ油トリステアレート、これらのなかでも処理剤の相溶性、油膜強度、毛羽減少の点から、硬化ヒマシ油エチレンオキシド付加物、硬化ヒマシ油エチレンオキシド付加物トリオレエート、硬化ヒマシ油エチレンオキシド付加物トリステアレートが好ましい。
油膜強化剤(H)は、本願効果を奏する観点から、硬化ヒマシ油のエチレンオキシド付加物とジカルボン酸の縮合物であると好ましい。
【0066】
[有機スルホン酸塩(AS)]
有機スルホン酸塩(AS)としては、芳香族スルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩が挙げられる。
【0067】
芳香族スルホン酸塩としては、トルエンスルホン酸ナトリウム、エチルベンゼンスルホン酸カリウム、プロピルベンゼンスルホン酸リチウム、ブチルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ヘキシルベンゼンスルホン酸カリウム、オクチルベンゼンスルホン酸リチウム、ノニルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ノニルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、デシルベンゼンスルホン酸カリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム、テトラデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクタデシルベンゼンスルホン酸カリウム等が挙げられる。これらの中でもトルエンスルホン酸ナトリウム、ノニルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ノニルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム等分子中に炭素数1〜12のアルキル基を有する芳香族スルホン酸塩が好ましい。
【0068】
脂肪族スルホン酸塩としては、特に制限はなく、例えば、アルカンスルホネートナトリウム、1−オクチルスルホン酸ナトリウム、1−デカンスルホン酸カリウム、1−ラウリルスルホン酸ナトリウム、1−ミリスチルスルホン酸ナトリウム、1−セチルスルホン酸カリウム、1−ステアリルスルホン酸ナトリウム、イソオクチルスルホン酸ナトリウム、イソデカンスルホン酸ナトリウム、イソラウリルスルホン酸ナトリウム、イソミリスチリルスルホン酸ナトリウム、イソセチルスルホン酸ナトリウム、イソステアリルスルホン酸ナトリウム、ジイソブチルスルホコハク酸カリウム、ジ2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジノニルスルホコハク酸ナトリウム等が挙げられる。これらの成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも下記の化7で示される化合物及び下記の化8で示される化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物を含有するものが好ましい。これらの化合物を使用することにより、本発明の効果をより向上、特に製糸工程において発生するタール汚れ、白粉汚れをより低減することができる。
【0069】
[有機燐酸塩(AP)]
有機燐酸塩(AP)としては、特に限定されないが、POE(8)オレイルホスフェートアルキルアミノエーテル塩、イソセチルホスフェートPOEアルキルアミノエーテル塩、オレイルホスフェートジブチルエタノールアミン塩、イソセチルホスフェート・POE(10)ラウリルアミノエーテル塩、イソセチルホスフェート・POE(10)ラウリルアミノエーテル塩、イソセチルホスフェート・POE(10)ステアリルアミノエーテル塩、トリデシルホスフェート・POE(3)ラウリルアミノエーテル塩、POE(8)オレイルエーテルホスフェート・POE(2)ラウリルアミノエーテル塩等が挙げられる。
なお、POE(8)とは、ポリオキシエチレン8モル付加を意味する。
【0070】
[有機アミンのエチレンオキシド付加物(RA)]
有機アミンのエチレンオキシド付加物(RA)は、有機アミンにエチレンオキシドが付加した構造を有する化合物である。
有機アミンとしては、1)メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン等の、脂肪族アミン化合物、2)モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等の、アルカノールアミン化合物、3)N,N−ビス(ヒドロキシエチル)ブチルアミン、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)オクチルアミン、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)ラウリルアミン等の、脂肪族アルカノールアミン化合物、が挙げられる。
エチレンオキシドの付加モル数は、本願効果を奏する観点から、1〜40が好ましく、2〜30がより好ましく、3〜20がさらに好ましい。
有機アミンのエチレンオキシド付加物(RA)の具体例としては、POE(10)ラウリルアミノエーテル、POE(15)オレイルアミノエーテル、POE(10)牛脂アルキルアミノエーテル、POE(10)牛脂アルキルアミノエーテル・オレイン酸塩等が挙げられる。
【0071】
[低粘度希釈剤(D)]
低粘度希釈剤(D)としては、特に制限はなく、例えば、有機溶剤、低粘度鉱物油、水等が挙げられる。
有機溶剤の具体例としては、ヘキサン、エタノール、イソプロパノール、オレイルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチルエーテル、トルエン、キシレン、ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン、クロロホルム、グリセリン等が挙げられる。
低粘度鉱物油の具体例としては、30℃における動粘度が5mm
2/s以下の鉱物油が挙げられ、より具体的には、ノルマルウンデカン、ノルマルドデカン、ノルマルトリデカン、ノルマルテトラデカン、炭素数11〜13のパラフィン(例えば商品名:N−パラフィンNo.1408、Sasol社製等)、炭素数12のパラフィン(例えば商品名:カクタスノルマルパラフィンN−12D、ジャパンエナジー社製等)、炭素数13〜15のパラフィン(例えば商品名:カクタスノルマルパラフィンYHNP、ジャパンエナジー社製等)、炭素数14のパラフィン(例えば商品名:カクタスノルマルパラフィンN−14、ジャパンエナジー社製等)等が挙げられる。これらの低粘度希釈剤は単独で用いることもできるし、また相溶性を有する範囲内において二つ以上を混合して用いることもできる。
【0072】
[酸化防止剤(E)]
酸化防止剤(E)としては、特に限定はないが、本願効果を奏する観点から、有機酸化防止剤が好ましい。有機酸化防止剤としては、トリオクタデシルフォスファイト、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、ジオレイル−チオジプロピオネート、ヒンダードフェノール系酸化防止剤等が挙げられる。中でも本願効果を奏する観点から、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。
前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤が、各フェノール基におけるターシャリーブチル基が1以下、カルボニル基が1以上を有するとより好ましい。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、たとえば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,4−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−〔1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル〕フェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)]アクリレート、テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸、ビス[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオン酸][エチレンビス(オキシエチレン)]、3,9−ビス[2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピニロキシ]−1,1−ジメチレニル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール等を挙げることができる。
これらのヒンダードフェノール系酸化防止剤は1種または2種以上を併用してもよい。
【0073】
〔合成繊維用処理剤の製造方法〕
本発明の合成繊維用処理剤の製造方法は、工程(II)及び工程(III)を必須に含み、工程(I)及び/又は工程(IV)を含む。
【0074】
(工程(I))
工程(I)は、油膜強化剤(H)、有機スルホン酸塩(AS)及び有機燐酸塩(AP)から選ばれる少なくとも1種と、有機アミンのエチレンオキシド付加物(RA)、及び低粘度希釈剤(D)を混合し、30〜100℃で1時間以上攪拌した後、10時間以上静置して得られた混合物の上澄みを、下記濾過条件にて濾過して混合液(i)を得る工程である。
濾過条件
濾紙:坪量300〜400、厚さ0.5〜1、透気度100〜150、濾過精度1〜5μm
濾過助剤:珪藻土
濾紙の珪藻土の厚さ:5〜20cm
【0075】
油膜強化剤(H)、有機スルホン酸塩(AS)、有機燐酸塩(AP)、有機アミンのエチレンオキシド付加物(RA)及び低粘度希釈剤(D)は、〔合成繊維用処理剤〕で記載したものと同じものを使用できる。
【0076】
攪拌時の温度は、長期間保管により給油ラインを閉塞させない観点から、30〜100℃であり、35〜80℃が好ましく、40〜70℃がより好ましく、45〜60℃がさらに好ましい。30℃未満では汚染物質粒子の凝集が不十分であるため、濾過工程での汚染物質粒子の捕捉率が低下する。100℃を超えると、液中の揮発分が蒸発して相分離が発生しやすくなる。
攪拌時間は1時間以上であり、3時間以上が好ましく、6時間以上がより好ましく、9時間以上がさらに好ましい。1時間未満では汚染物質粒子の凝集が不十分である。
【0077】
(工程(II))
工程(II)は、平滑剤(L)及びノニオン界面活性剤(N)から選ばれる少なくとも1種と酸化防止剤(E)とを混合し、60℃〜150℃で攪拌して、前記酸化防止剤(E)を溶解させたあと、10〜100℃に冷却して溶解液(ii)を得る工程である。
【0078】
平滑剤(L)、ノニオン界面活性剤(N)及び酸化防止剤(E)は、〔合成繊維用処理剤〕で記載したものと同じものを使用できる。
【0079】
工程(II)の攪拌時の温度は60℃〜150℃であり、80〜130℃が好ましく、90〜120℃がより好ましく、100〜110℃がさらに好ましい。60℃未満では酸化防止剤の溶解が不足する。150℃を超えると、平滑剤の分解を引き起こす。
溶解液(ii)は、酸化防止剤(E)が均一に溶解していることが重要である。
【0080】
(工程(III))
工程(III)は、前記混合液(i)、前記溶解液(ii)及び、平滑剤(L)、ノニオン界面活性剤(N)、低粘度希釈剤(D)から選ばれる1つ以上を混合する工程である。
平滑剤(L)及びノニオン界面活性剤(N)は、工程(I)と同じものであっても異なったものでもよい。
低粘度希釈剤(D)は、最後に混合した方が好ましい。
【0081】
(工程(IV))
工程(IV)は、溶解液(iii)を30〜100℃で1時間以上攪拌した後、10時間以上静置してから、下記濾過条件にて濾過して最終処理剤液(iv)を得る工程である。
濾過条件
濾紙:坪量300〜400、厚さ0.5〜1、透気度100〜150、濾過精度1〜5μm
濾過助剤:珪藻土
濾紙の珪藻土の厚さ:5〜20cm
溶解液(iii)の攪拌時の温度は、30〜100℃であり、35〜90℃が好ましく、40〜80℃がより好ましい。溶解液(iii)の攪拌時間は、1時間以上であり、1時間半が好ましく、2時間がより好ましい。
静置時間は、10時間以上であり、12時間以上が好ましく、20時間がより好ましい。24時間を超えると生産性が低下する。
【実施例】
【0082】
以下に、実施例により本発明を説明する、本発明はここに記載した実施例に限定されるものではない。なお、文中及び表中の「%」は「重量%」を、意味する。
【0083】
[ISO等級(4406:1999)]
ISO等級(4406:1999)とは、試料100mLに含まれる固体粒子をカウントすることにより、液体中の汚染物質粒子の分布状況を表すものである。実際のカウント数を使用すると表示する数値の範囲が大きくなるので、2の対数を使用した番号コードに変換して、汚染の程度を表す国際規格である。4μm以上の粒子数、6μm以上の粒子数、14μm以上の粒子数のカウント値に基づいてコードが算出される。
合成繊維用処理剤について、液中微粒子計測器(例えば、HACH ULTRA ANALYTICS社製、HIAC Royco 液中微粒子計測器 System 8011等)を用いて100mL当たりの汚染粒子数C
Dを求めた。
【0084】
[乳酸量(ppm)]
試料(処理剤の不揮発分)をメタノールに溶解し、水酸化カリウム−クラウンエーテルのメタノール溶液で中和した。減圧下、メタノールを蒸発させた後、ラベル化試薬4−ブロモフェナシルブロミドを加え、更にアセトニトリルを加えて全量を10mlとした。80℃で15分間反応させた後、室温に冷却後、反応液をHPLCにて分析し、乳酸量を定量した。
【0085】
[燐酸量、硫酸量]
燐酸イオン及び硫酸イオン標準原液は、110℃で5時間乾燥した燐酸水素二ナトリウム(JIS K 9020 pH測定用)2.0003g及び750℃で1時間強熱した硫酸カリウム(JIS K 8962 特級)2.1765gを超純水に溶解し、合わせて全量1Lとした。この標準原液は燐酸イオン及び硫酸イオンとして1000ppm含有する。
試料(処理剤の不揮発分)を超純水で不揮発分5〜20%に希釈し、その水溶液をイオンクロマトグラフ分析装置にて測定し、試料中の燐酸イオン及び硫酸イオンを定量した。定量した燐酸イオン及び硫酸イオン量は、各々燐酸水素二ナトリウム及び硫酸カリウムに換算して合算し、各々燐酸量、硫酸量とした。
【0086】
[モノオクチルスルホコハク酸量]
ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム70%品のネオコールP(第一工業製薬)をアデカカーポールMH−4(ADEKA)に溶解させて50℃で1晩静置し、生じた沈殿物を濾過回収して標準用のモノオクチルスルホコハク酸ナトリウムを得た。
試料(処理剤の不揮発分)を超純水で不揮発分5〜20%に希釈し、その水溶液をイオンクロマトグラフ分析装置にて測定し、試料中のモノオクチルスルホコハク酸を定量した。
【0087】
[実施例1〜10、比較例1〜4]
表1〜3に記載の成分を混合して、均一になるまで攪拌し、処理剤を調製した。調製した各処理剤のISO等級、乳酸量(ppm)、モノオクチルスルホコハク酸(MOSSNa)(ppm)、燐酸(ppm)、硫酸量(ppm)、外観、高温曇点、低温曇点を測定した。調製した各処理剤を用いて、下記の方法でノズル詰りを評価した。その結果を表1〜3に示す。
なお、表1〜3の処理剤の不揮発分組成の数字は、処理剤の不揮発分に占める各成分の重量割合を示す。
【0088】
表1〜3中のローマ数字は、各成分を各工程(工程(I)、工程(II)、工程(III))のいずれかで混合したことを示す。
また、ラジオライト(I)は、工程Iにて濾過を実施し、ラジオライト(IV)は、工程IVにて濾過を実施したことを示す。
【0089】
表1〜3中の各成分は次の通り。
L−1 ペンタエリスリトールテトラカプリレート
L−2 グリセリントリオレエート
L−3 パーム油
L−4 ヤシ油
L−5 トリメチロールプロパン(トリパーム核脂肪酸エステル)
L−6 1,6−ヘキサンジオールジオレエート
L−7 2−オクチルドデシルステアレート
L−8 オレイルオレエート
L−9 POE(4)オクチルエーテルカプリレート
L−10 チオジプロピオン酸・ジオレイル
N−1 ポリグリセリンジオレエート(グリセリン縮合度1〜6、平均2)
N−2 POP(5)POE(10)トリデシルエーテル(ランダム)
N−3 POP(14)POE(12)ステアリルエーテル(ランダム)
N−4 POE(7)POP(15)POE(7)ブロックエーテル
N−5 PEG600ジオレエート
N−6 POE(15)トリメチロールプロパントリラウレート
N−7 POE(20)ソルビタントリオレエート
H−1 POE(20)硬化ヒマシ油
H−2 POE(20)硬化ヒマシ油トリオレエート
H−3 POE(20)硬化ヒマシ油トリステアレート
H−4 POE(20)硬化ヒマシ油エーテル2モルとマレイン酸1モルのエステルの末端水酸基をステアリン酸で封鎖した化合物
H−5 POE(25)硬化ヒマシ油エーテル2モルとマレイン酸1モルのエステルの末端水酸基をステアリン酸で封鎖した化合物
AS−1 ジ2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム
AS−2 アルカンスルホネートナトリウム
AP−1 イソセチルホスフェート・POE(10)ラウリルアミノエーテル塩
AP−2 イソセチルホスフェート・POE(10)ステアリルアミノエーテル塩
AP−3 トリデシルホスフェート・POE(3)ラウリルアミノエーテル塩
AP−4 POE(8)オレイルエーテルホスフェート・POE(2)ラウリルアミノエーテル塩
RA−1 POE(10)ラウリルアミノエーテル
RA−2 POE(15)オレイルアミノエーテル
RA−3 POE(10)牛脂アルキルアミノエーテル
RA−4 POE(10)牛脂アルキルアミノエーテル・オレイン酸塩
E−1 1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸
E−2 ビス[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオン酸][エチレンビス(オキシエチレン)]
E−3 3,9−ビス[2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピニロキシ]−1,1−ジメチレニル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン
D−1 ノルマルウンデカン
D−2 ノルマルドデカン
D−3 ノルマルトリデカン
D−4 ノルマルテトラデカン
D−5 エチレングリコール
D−6 オレイルアルコール
D−7 グリセリン
D−10 水
POE(n)は、エチレンオキシドの付加モル数を示す。
【0090】
(実施例1)
工程(I)
ジソジウム−2−エチルヘキシルサクシネート 1重量部、POE(8)オレイルエーテルホスフェート・POE(2)ラウリルアミノエーテル塩 1重量部、POE(15)オレイルアミノエーテル 1重量部、ノルマルウンデカン 9重量部、オレイルアルコール 1重量部を混合して、50℃で6時間攪拌した後、12時間静置して得られた混合物の上澄みを、濾過条件(濾紙:坪量320、厚さ0.74、濾水時間(JIS P 3801)80秒、破断強さ(JIS P 8112)378、保持粒子径(JIS Z 8901規定粉体分散水、90%以上保持)3μm、濾過助剤:珪藻土、濾紙の珪藻土の厚さ:1cm)にて濾過して混合液(i−1)を得た。
【0091】
工程(II)
平滑剤(L)としてグリセリントリオレエート 50重量部、チオジプロピオン酸・ジオレイル 5重量部、酸化防止剤(E)として1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸 1重量部とを混合し、110℃で1時間攪拌し、前記酸化防止剤(E)の溶解を確認し、40℃まで冷却して溶解液(ii−1)を得た。
【0092】
工程(III)
前記混合液(i−1)、前記溶解液(ii−1)、ノニオン界面活性剤(N)としてポリグリセリンジオレエート(グリセリン縮合度1〜6、平均2) 7重量部、POP(14)POE(12)ステアリルエーテル(ランダム) 9重量部、POE(20)ソルビタントリオレエート 9重量部、油膜強化剤(H)としてPOE(20)硬化ヒマシ油 6重量部、POE(20)硬化ヒマシ油トリオレエート 4重量部、POE(20)硬化ヒマシ油トリステアレート 3重量部、POE(20)硬化ヒマシ油エーテル2モルとマレイン酸1モルのエステルの末端水酸基をステアリン酸で封鎖した化合物 2重量部、POE(20)硬化ヒマシ油エーテル3モルとマレイン酸2モルのエステルの末端水酸基をステアリン酸で封鎖した化合物 1重量部、低粘度希釈剤(D)としてノルマルドデカン 6重量部、ノルマルトリデカン 8重量部、ノルマルテトラデカン 2重量部、エチレングリコール 1重量部及び水 2重量部とを混合して溶解液(iii−1)を得た。
【0093】
[外観]
試料を遠心沈殿管に10mL計量し、25℃の温度条件で、60分間、回転数3000rpmで遠心分離を行った後、遠心沈殿管の底に沈殿物の有無を確認する。
【0094】
[高温曇点]
100mlのビーカーに試料(揮発分を含む)50gを入れ、電熱ヒーターにて徐々に加温し、液全体が曇るときの温度を高温曇点とした。
【0095】
[低温曇点]
100mlのビーカーに試料(揮発分を含む)50gを入れ、環境試験機に入れ、徐々に環境試験機内の温度を低下させ、液全体が曇るときの温度を低温曇点とした。
【0096】
[ノズル詰り]
オイリングガイド(湯浅糸道YM99C−HF2)へマイクロポンプにて初期流速100ml/hで繊維処理剤を流し続け、吐出量が80%以下となるまでの日数を調べた。1日未満は不良×、1日以上2日未満はやや不良△、2日以上3日未満はやや良〇、3日以上は良◎とした。
【0097】
【表1】
【0098】
【表2】
【0099】
【表3】
【0100】
表1からわかるように、本願発明の合成繊維用処理剤は、平滑剤(L)、ノニオン界面活性剤(N)及び低粘度希釈剤(D)を必須で含み、有機スルホン酸塩(AS)、有機燐酸塩(AP)、油膜強化剤(H)、有機アミンのエチレンオキシド付加物(RA)及び酸化防止剤(E)から選ばれる少なくとも1種を含む合成繊維用処理剤であって、前記処理剤の清浄度であるISO等級(4406:1999)が17/16/15以下、又は、4μm以上の汚染物質粒子が100mL当たり130000個以下であるため、本願課題を解決できている。
一方、表2からわかるように、比較例1〜4は、処理剤の清浄度であるISO等級(4406:1999)が17/16/15より大きいため、本願課題が解決できていない。
【解決手段】平滑剤(L)、ノニオン界面活性剤(N)及び低粘度希釈剤(D)を必須で含み、有機スルホン酸塩(AS)、有機燐酸塩(AP)、油膜強化剤(H)、有機アミンのエチレンオキシド付加物(RA)及び酸化防止剤(E)から選ばれる少なくとも1種を含む合成繊維用処理剤であって、前記処理剤の清浄度であるISO等級(4406:1999)が17/16/14以下、又は、4μm以上の汚染物質粒子が100mL当たり130000個以下である、合成繊維用処理剤。