(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
[I.概観]
図面を参照すると、患者12の生体構造を加工するためのシステム10及び方法が図面
の全体にわたって示されている。なお、いくつかの図面を通して、同様の番号は、同様又
は対応する部品を示すものとする。
図1に示されているように、システム10は、骨又は
軟組織のような患者12の生体構造から材料を切除するためのロボット外科切除システム
である。
図1において、患者12は、外科処置を受けている。
図1の生体構造は、患者1
2の大腿骨(F)及び脛骨(T)を含んでいる。外科処置は、組織除去を含んでいる。他
の実施形態では、外科処置は、部分膝関節置換手術又は全膝関節置換手術及び股関節置換
手術を含んでいる。システム10は、股関節移植片又は膝関節移植片のような外科移植片
によって置換されることになる材料を切除するように設計されている。なお、膝関節移植
片は、単顆移植片、双顆移植片、及び全膝移植片を含んでいる。これらの形式の移植片の
いくつかは、「人工移植片及び移植の方法」と題する米国特許出願第13/530,92
7号に示されている。この開示内容は、参照することによって、ここに含まれるものとす
る。当業者であれば、ここに開示されるシステム及び方法は、他の外科処置又は非外科処
置を行うために用いられてもよいし、又はロボットシステムが利用される産業用途又は他
の用途に用いられてもよいことを理解するだろう。
【0014】
システム10は、マニピュレータ14を備えている。マニピュレータ14は、ベース1
6及びリンケージ18を有してる。リンケージ18は、直列アーム構成又は平行アーム構
成を形成するリンクを備えているとよい。工具20がマニピュレータ14に連結されてお
り、生体構造と相互作用するためにベース16に対して移動可能になっている。工具20
は、マニピュレータ14に取り付けられたエンドエフェクタ22の一部をなすものである
。工具20は、オペレータによって把持されるようになっている。マニピュレータ14及
び工具20の1つの例示的な構成が、「外科用器具を多重モードによって制御することが
できる外科用マニピュレータ」と題する米国特許第9,119,655号に記載されてい
る。この開示内容は、参照することによって、ここに含まれるものとする。マニピュレー
タ14及び工具20は、代替的な形態を有するように構成されてもよい。工具20は、2
014年3月15日に出願された「外科用ロボットマニピュレータのエンドエフェクタ」
と題する米国特許出願公開2014/0276949号に示されている工具と同様のもの
とすることができる。この文献は、参照することによって、ここに含まれるものとする。
工具20は、外科部位において患者12の組織に接触するように設計されたエネルギーア
プリケータ24を備えている。エネルギーアプリケータ24は、ドリル、鋸ブレード、バ
ー、超音波振動チップ、プローブ、等であるとよい。また、マニピュレータ14は、マニ
ピュレータコンピュータ26又は他の形式の制御ユニットを収容している。
【0015】
図2を参照すると、システム10は、制御装置30を備えている。制御装置30は、マ
ニピュレータ14を制御するためのソフトウエア及び/又はハードウエアを含んでいる。
制御装置30は、マニピュレータ14の運動を指示し、座標系に対する工具20の方位を
制御する。一実施形態では、座標系は、マニピュレータ座標系MNPL(
図1参照)であ
る。マニピュレータ座標系MNPLは、原点を有しており、該原点は、マニピュレータ1
4上の一点に位置している。マニピュレータ座標系MNPLの一例が、「外科用器具を多
重モードによって制御することができる外科用マニピュレータ」と題する米国特許第9,
119,655号に記載されている。この開示内容は、参照することによって、ここに含
まれるものとする。
【0016】
システム10は、ナビゲーションシステム32をさらに備えている。ナビゲーションシ
ステム32の一例が、2013年9月24日に出願された「光学的及び非光学的センサを
備えるナビゲーションシステム」と題する米国特許第9,008,757号に記載されて
いる。この文献は、参照することによって、ここに含まれるものとする。ナビゲーション
システム32は、種々の対象物の移動を追跡するようになっている。このような対象物と
して、例えば、工具20及び生体構造、例えば、大腿骨F及び脛骨Tが挙げられる。ナビ
ゲーションシステム32は、これらの対象物を追跡し、ローカライザー座標系LCLZに
おける各対象物の位置情報を収集する。ローカライザー座標系LCLZの座標は、従来の
変換技術を用いて、マニピュレータ座標系MNPLに変換されるとよい。ナビゲーション
システム32は、オペレータに対してそれらの対象物の相対位置及び相対方位の仮想イメ
ージを表示することもできるようになっている。
【0017】
ナビゲーションシステム32は、ナビゲーションコンピュータ36を収容するコンピュ
ータカートアセンブリ34、及び/又は他の形式の制御ユニットを備えている。ナビゲー
ションインターフェイスが、ナビゲーションコンピュータ36と作動的に通信するように
なっている。ナビゲーションインターフェイスは、1つ又は複数のディスプレイ38を含
んでいる。キーボード及びマウスのような第1及び第2の入力装置40,42を用いて、
情報をナビゲーションコンピュータ36に入力し、又はナビゲーションコンピュータ36
のいくつかの特性を選択/制御するようになっているとよい。(図示されない)タッチス
クリーン又は音声起動を含む他の入力装置40,42も考えられる。制御装置30は、シ
ステム10内の任意の適切な1つ又は複数の装置、例えば、制限されないが、マニピュレ
ータコンピュータ26、ナビゲーションコンピュータ36、及びその任意の組合せに実装
されているとよい。
【0018】
ナビゲーションシステム32は、ナビゲーションコンピュータ36と通信するローカラ
イザー44も備えている。一実施形態では、ローカライザー44は、光学的ローカライザ
ーであり、カメラユニット46を備えている。カメラユニット46は、1つ又は複数の光
学位置センサ50を収容する外側ケーシング48を有している。システム10は、1つ又
は複数のトラッカーを備えている。トラッカーは、ポインタートラッカーPT、工具トラ
ッカー52、第1の患者トラッカー54、及び第2の患者トラッカー56を含んでいると
よい。トラッカーは、アクティブマーカー58を含んでいる。アクティブマーカー58は
、発光ダイオード又はLEDであるとよい。他の実施形態では、トラッカー52,54,
56は、パッシブマーカー、例えば、カメラユニット46から放出された光を反射する反
射鏡を有しているとよい。当業者であれば、ここに具体的に記載されない他の適切な追跡
システム及び方法が利用されてもよいことを理解するだろう。
【0019】
図1の例示的実施形態では、第1の患者トラッカー54は、患者12の大腿骨Fにしっ
かりと固定されており、第2の患者トラッカー56は、患者12の脛骨Tにしっかりと固
定されている。患者トラッカー54,56は、骨の部分にしっかりと固定されている。工
具トラッカー52は、工具20にしっかりと取り付けられている。トラッカー52,54
,56は、どのような適切な方法によってそれぞれの構成要素に固定されてもよいことを
理解されたい。
【0020】
トラッカー52,54,56は、カメラユニット46と通信し、位置データをカメラユ
ニット46に供給する。カメラユニット46は、トラッカー52,54,56の位置デー
タをナビゲーションコンピュータ36に供給する。一実施形態では、ナビゲーションコン
ピュータ36は、大腿骨F及び脛骨Tの位置データ及び工具20の位置データを決定し、
該位置データをマニピュレータコンピュータ26に送信する。大腿骨F、脛骨T、及び工
具20の位置データは、従来の位置合せ/ナビゲーション技術を用いて、トラッカー位置
データによって決定されるとよい。位置データは、大腿骨T、脛骨T、工具20及び追跡
される任意の他の対象物の位置及び/又は方位に対応する位置情報を含んでいる。ここに
記載される位置データは、位置データ、方位データ、又は位置データと方位データとの組
合せであってもよい。
【0021】
マニピュレータコンピュータ26は、工具20に対するナビゲーション基データ及び工
具20に対するエンコーダ基データを用いて変換行列を決定することによって、位置デー
タをローカライザー座標系LCLZからマニピュレータ座標系MNPLに変換する。エン
コーダに基づく位置データを決定するために、マニピューレータ14の継手に位置する(
図示されない)エンコーダが用いられる。マニピュレータコンピュータ26は、エンコー
ダを用いて、マニピュレータ座標系MNPLにおける工具20のエンコーダに基づく位置
及び方位を計算する。また、工具20の位置及び方位は、ローカライザ座標系LCLZに
おいて知られているので、変換行列が生成されることになる。
【0022】
図2に示されているように、制御装置30は、ソフトウエアモジュールをさらに備えて
いる。ソフトウエアモジュールは、システム10の制御を支援するようにデータを処理す
るためにマニピュレータコンピュータ26、ナビゲーションコンピュータ36、又はその
組合せに作用する1つ又は複数のコンピュータプログラムの一部であるとよい。ソフトウ
エアモジュールは、マニピュレータコンピュータ26、ナビゲーションコンピュータ36
、又はその組合せのメモリに記憶され、コンピュータ26,36の1つ又は複数のプロセ
ッサによって実行される指令の組を含んでいる。加えて、オペレータに指示及び/又は通
信するソフトウエアモジュールは、1つ又は複数のプログラムの一部をなしていてもよく
、マニピュレータコンピュータ26、ナビゲーションコンピュータ36、又はその組合せ
のメモリに記憶された指令を含んでいてもよい。オペレータは、第1及び第2の入力装置
40,42及び1つ又は複数のディスプレイ38と相互作用し、ソフトウエアモジュール
と通信するようになっている。
【0023】
一実施形態では、制御装置30は、マニピュレータ14の運動を指示するようにデータ
を処理するためのマニピュレータ制御装置60を備えている。マニピュレータ制御装置6
0は、単一源又は多数源からデータを受信し、かつ処理するようになっているとよい。
【0024】
制御装置30は、大腿骨F、脛骨T、及び工具20に関する位置データをマニピュレー
タ制御装置60に通信するためのナビゲーション制御装置62をさらに備えている。マニ
ピュレータ制御装置60は、ナビゲーション制御装置62から供給された位置データを受
信し、マニピュレータ14の運動を指示するように処理する。一実施形態では、
図1に示
されているように、ナビゲーション制御装置62は、ナビゲーションコンピュータ36に
実装されている。
【0025】
また、マニピュレータ制御装置60又はナビゲーション制御装置62は、大腿骨F及び
/又は脛骨T及び工具20のイメージをディスプレイ38上に表示することによって、患
者12及び工具20の位置をオペレータに知らせるようになっているとよい。また、オペ
レータがマニピュレータ14を指示するためにマニピュレータコンピュータ26と相互作
用することができるように、マニピュレータコンピュータ26又はナビゲーションコンピ
ュータ36は、指示又はリクエスト情報をディスプレイ38上に表示するようになってい
るとよい。
【0026】
図2に示されているように、制御装置30は、境界生成器66を備えている。境界生成
器66は、
図2に示されているように、マニピュレータ制御装置60に実装されるとよい
ソフトウエアモジュールである。代替的に、境界生成器66は、ナビゲーション制御装置
62のような他の構成要素に実装されていてもよい。以下に詳細に示されているように、
境界生成器66は、工具20を拘束するための仮想境界を生成するようになっている。
【0027】
工具経路生成器68は、制御装置30、さらに具体的には、マニピュレータ制御装置6
0によって処理される他のソフトウエアである。工具経路生成器68は、
図3に示されて
いるように、移植片を受け入れるために一部が除去されるべき骨を示す工具経路70を生
成するようになっている。
図3において、工具経路70は、ジグザグ線によって表されて
いる。仕上げ面の滑らかさ及び品質は、その一部がジグザグ線の相対的な位置決めに依存
している。さらに具体的には、線のジグザグ経路が狭いほど、仕上げ面の正確さ及び滑ら
かさが大きくなる。破線84は、マニピュレータ14を用いて除去されるべき骨の外周を
表している。工具経路70を生成するための1つの例示的システム及び方法が、「外科用
器具を多重モードによって制御することができる外科用マニピュレータ」と題する米国特
許第9,119,655号に記載されている。この開示内容は、参照することによって、
ここに含まれるものとする。
【0028】
[II.システム及び方法の概観]
工具20によって生体構造を加工するためのシステム10及び方法は、
図4,5に示さ
れているように、生体構造に関連する第1の仮想境界又は中間仮想境界90及び第2の仮
想境界又は目標仮想境界80を制御装置30によって画定することを含んでいる。中間仮
想境界90は、目標仮想境界80から離間している。中間仮想境界90は、
図4に示され
ているように、第1のモードにおいて有効化される。第1のモードでは、工具20の移動
は、中間仮想境界90に関連して拘束されることになる。中間仮想境界90は、
図5に示
されているように、第2のモードにおいて無効化される。第2のモードでは、工具20の
移動は、目標仮想境界80に関連して拘束されることになる。
【0029】
仮想境界80,90を生成するための1つの例示的なシステム及び方法が、「外科用器
具を多重モードによって制御することができる外科用マニピュレータ」と題する米国特許
第9,119,655号に記載されている。この開示内容は、参照することによって、こ
こに含まれるものとする。境界生成器66は、目標仮想境界80及び中間仮想境界90を
画定するマップを生成する。これらの境界80,90は、工具20が除去するべき組織と
工具20が除去するべきではない組織との間を線引きする。代替的に、これらの境界80
,90は、工具20のエネルギーアプリケータ24が作用するべき組織とエネルギーアプ
リケータ24が作用するべきではない組織との間を線引する。従って、目標仮想境界80
及び中間仮想境界90は、切断境界又は加工境界であり、工具20の移動を制限すること
になる。多くの場合、制限されるものではないが、仮想境界80,90は、患者12内に
画定されるようになっている。
【0030】
図面の全体を通して、目標仮想境界80及び中間仮想境界90は、第1及び第2のモー
ド間において、工具20の移動を独立して拘束するようになっている。すなわち、工具2
0は、第1のモードにおける中間仮想境界90又は第2のモードにおける目標仮想境界8
0のいずれかによって拘束されるようになっている。工具20の移動を拘束するための方
法は、「外科用工具を多重モードによって制御することができる外科用マニピュレータ」
と題する米国特許第9,119,655号に記載されている。この開示内容は、参照する
ことによって、ここに含まれるものとする。
【0031】
外科用システム10は、工具20の種々の拘束形態をもたらすために、第1及び第2の
モード間の切換えを行うことが可能になっている。
図5に示されているように、第1のモ
ードが第2のモードに切り換えられた時、目標仮想境界80を残して、中間仮想境界90
が無効化される。従って、第2のモードでは、工具20は、目標仮想境界80に達するこ
とが可能である。何故なら、中間仮想境界90が工具20を拘束しないからである。工具
20は、中間仮想境界90が無効化された時、目標仮想境界80に関連して拘束されるこ
とになる。
【0032】
第2のモードが
図4に示されているように第1のモードに切り換えられた時、中間仮想
境界90は、有効化又は再有効化される。中間仮想境界90が有効化された時、工具20
は、中間仮想境界90に関連して拘束される。従って、第1のモードでは、中間仮想境界
90は、工具20が目標仮想境界80に達するのを防ぐことになる。
【0033】
マニピュレータ14は、制御装置30から指令を受信し、工具20を第1のモードにお
ける中間仮想境界90及び/又は第2のモードにおける目標仮想境界80に関連して移動
させるように、構成されている。ナビゲーションシステム32は、第1のモードにおける
中間仮想境界90及び/又は第2のモードにおける目標仮想境界80に関連して工具20
の移動を追跡する。工具20が移動すると、マニピュレータ14及びナビゲーションシス
テム32は、協働して、工具20が第1のモードにおける中間仮想境界90及び/又は第
2のモードにおける目標仮想境界90の内側にあるかどうかを判断する。マニピュレータ
14は、工具20が移動する程度を選択的に制限する。具体的には、制御装置30は、第
1のモードにおける中間仮想境界90及び/又は第2のモードにおける目標仮想境界80
の外側への工具20の作用をもたらす移動からマニピュレータ14を拘束することになる
。もしオペレータが、第1のモードにおける中間仮想境界90及び/又は第2のモードに
おける目標仮想境界80を超える工具20の前進をもたらす力及びトルクを加えたなら、
マニピュレー14は、工具20のこの意図された位置付けを実行しないようになっている
。
【0034】
図5に示されているように、目標仮想境界80は、生体構造、さらに具体的には、生体
構造の目標面92と関係付けられている。目標仮想境界80は、目標面92に関連して画
定されている。目標面92は、除去処置の後に残る骨の輪郭であり、移植片が取り付けら
れるべき表面でもある。換言すれば、目標面92は、切除が完了した後に残る切れ目なく
画定された表面領域である。
【0035】
図5に示されているように、処置中、目標仮想境界80は、目標面92からいくらか位
置ずれ又は離間しているとよい。一実施形態では、これは、工具20の大きさ及び加工特
性を考慮してなされる。工具20の加工特性によって、工具20が目標仮想境界80を突
き破ることがある。この突き破りを考慮し、目標仮想境界80は、目標面92と目標仮想
境界80との間に画定された所定距離だけ目標面82から平行移動されているとよい。一
例では、この距離は、工具20の厚みの半分に相当する。他の実施形態では、目標仮想境
界80は、工具20及びエネルギーアプリケータ24がいかに追跡されるかに応じて、目
標面92からいくらか位置ずれ又は離間しているとよい。例えば、エネルギーアプリケー
タ24は、エネルギーアプリケータ24の外側の切除面に基づく点よりもむしろエネルギ
ーアプリケータ24の中心に基づく点に基づいて追跡されるとよい。このような場合、目
標仮想境界80を目標面92から位置ずれさせることによって、目標面92への行き過ぎ
を防ぐように中心追跡を調整することができる。例えば、工具20のエネルギーアプリケ
ータが球形バーである時、目標仮想境界は、バーの工具中心点(TCP)が追跡された時
にバーの直径の半分だけ位置ずれすることになる。その結果、TCPが目標仮想境界80
上に位置する時、バーの外面が目標面92上に位置することになる。
【0036】
中間仮想境界90は、目標仮想境界80から離間している。
図4に示されているように
、中間仮想境界90は、目標仮想境界80が目標面92から離間しているよりも目標面9
2から大きく離間している。本質的に、目標仮想境界80は、目標面92と中間仮想境界
90との間に位置している。中間仮想境界90が目標面92から大きく離間しているので
、工具20の移動は、一般的に、目標仮想境界80に関連して拘束されるのと比較して、
中間仮想境界90に関連してより大きく拘束されることになる。換言すれば、工具20の
移動は、第2のモードにおけるのと比較して第1のモードにおいてより大きく拘束される
ことになる。
【0037】
図4に示されているように、区域100が目標仮想境界80と中間仮想境界90との間
に画定されている。境界80,90は、どのような適切な距離だけ互いに離間していても
よい。一例では、目標仮想境界80及び中間仮想境界90が略0.5mmだけ離間してい
る場合、区域100は、0.5mmの厚みを有することになる。一面では、中間仮想境界
90は、目標仮想境界80に関してオフセット境界と考えられる。一般的に、制御装置3
0は、第1のモードにおいて、工具20が区域100を貫通するのを阻止するようになっ
ている。第1のモードにおける工具20の区域100の貫通阻止は、目標仮想境界80が
有効であるかどうかに関わらずに生じるようになっているとよい。制御装置30は、第2
のモードでは、工具20が区域100を貫通することを可能にする。区域100は、目標
仮想境界80及び/又は中間仮想境界90が有効であるか又は無効であるかに関わらず画
定されるとよい。
【0038】
目標仮想境界80及び中間仮想境界90は、
図4に示されているように、同一の輪郭を
有しているとよい。具体的には、目標仮想境界80及び中間仮想境界90は、目標面92
と同様の輪郭を有している。同様の輪郭は、目標面92の段階的な形成を促進するのに有
益である。
【0039】
ディスプレイ38は、目標仮想境界80及び中間仮想境界90、並びに治療されている
生体構造のイメージを示すとよい。加えて、目標仮想境界80及び中間仮想境界90に関
連する情報は、マニピュレータ制御装置60に送信され、工具20がこれらの仮想境界8
0,90に侵入しないように、該仮想境界80,90に対するマニピュレータ14及び工
具20の対応する移動を案内するようになっているとよい。
【0040】
マニピュレータ制御装置60は、目標仮想境界80及び中間仮想境界90の移動を連続
的に追跡するとよい。場合によっては、生体構造は、処置中に第1の位置から第2の位置
に移動することがある。このような場合、マニピュレータ制御装置60は、仮想境界80
,90の位置を生体構造の第2の位置と一致するように更新することになる。
【0041】
一実施形態では、第1のモード及び/又は第2のモードは、自律モード又は手動モード
である。自律モード及び手動モードの例は、「外科用器具を多重モードによって制御する
ことができる外科用マニピュレータ」と題する米国特許第9,119,655号に記載さ
れている。この開示内容は、参照することによって、ここに含まれるものとする。
【0042】
一実施形態では、第1のモードにおいて、システムは、手動モードによって運転される
ようになっている。オペレータは、手動によって指示し、マニピュレータ14は、外科部
位にある工具20、従って、エネルギーアプリケータ24の移動を制御する。オペレータ
は、工具20の移動を生じさせるために工具20と物理的に接触する。マニピュレータ1
4は、工具20を位置決めするために、オペレータによって工具20に加えられた力及び
トルクを監視する。これらの力及びトルクは、マニピュレータ14の一部であるセンサに
よって測定される。加えられた力及びトルクに応じて、マニピュレータ14は、オペレー
タによって加えられた力及びトルクに基づいて生じ得る移動を実行することによって、工
具20を機械的に移動させることになる。第1のモードにおける工具20の移動は、中間
仮想境界90に関連して拘束される。この場合、中間仮想境界90が触覚境界として作用
し、マニピュレータ14は、オペレータに触覚フィードバックをもたらし、中間仮想境界
90の位置をオペレータに示すことになる。例えば、マニピュレータ14が中間仮想境界
90を超える工具20の移動を抑止又は阻止することによって、オペレータは、中間仮想
境界90に達した時に仮想壁を触覚によって検知することになる。
【0043】
第1のモードにおける手動加工中のどんな時でも、又は第1のモードにおける加工が完
了した後、システム10は、第1のモードから第2のモードへの切換えを行うことができ
る。一実施形態では、第1のモードと第2のモードとの間の切換えは、手動入力に応じて
行われる。例えば、オペレータは、ある種の制御を用いて、第1及び第2のモードのいず
れが有効であるかを遠隔的に管理することができる。代替的に、切換えは、特定の事象又
は条件に応じて自律的に行われてもよい。例えば、システム10は、第1のモードにおい
て必要量の組織が除去されたと判断し、それに応じて、第2のモードへの切換えを行うよ
うになっていてもよい。当業者であれば、第1のモードと第2のモードとの間の切換えは
、ここに明示的に記載されない他の方法によって行われてもよいことを理解するだろう。
【0044】
第2のモードにおいて、一実施形態では、マニピュレータ14は、外科部位にある工具
20、従って、エネルギーアプリケータ24の自律運動を指示するようになっている。マ
ニピュレータ14は、オペレータの支援なしに工具20を移動させることができる。「オ
ペレータの支援なし」は、工具20を移動させる力を加えるためにオペレータが工具20
に物理的に接触しないことを意味している。代わって、オペレータは、ある種の制御を用
いて、移動の開始及び停止を遠隔的に管理することになる。例えば、オペレータは、工具
20の移動を開始する遠隔制御のボタンを押下し、工具20の移動を停止するために該ボ
タンを解放するとよい。代替的に、オペレータは、工具20の移動を開始するボタンを押
し、工具20の移動を停止するボタンを押すようになっていてもよい。第2のモードにお
ける工具20の移動は、目標仮想境界80に関連して拘束されることになる。
【0045】
システム10及び方法は、有利には、第1のモードと第2のモードとの間で中間仮想境
界90の有効化を選択的に制御する機会をもたらすようになっている。これによって、シ
ステム10及び方法は、第1及び第2のモードの各々に対して種々の仮想境界構成をもた
らすことになる。その結果、外科用システム及びオペレータの手技の融通性が高められる
ことになる。いくつかの実施形態では、これは、有利には、オペレータが第1のモードに
おいて塊加工を行うようにマニピュレータ14を用いる機会をもたらす。オペレータは、
最初、組織の大きな塊を除去するために工具20を手動によって作動させるとよい。処置
のこの部分は、減量(debulking)と呼ばれることもある。中間仮想境界90が工具20
を目標面92から離れて拘束していることを知っているオペレータは、自律加工中におけ
るよりも著しく迅速な塊加工を行う措置を取ることができる。いったん組織の塊が手動に
よって除去されたなら、システム10は、第2のモードに切換えられ、組織の残りの部分
の自律加工を極めて正確かつ制御された方法によって行うことができる。換言すれば、第
2のモードでは、オペレータは、残りの組織の表面を画定するために、器具の微細な位置
決めを必要とする。処置のこの部分は、仕上げ切除(finishing cut)としても知られて
いる。この仕上げ切除が可能になるのは、中間仮想境界90が無効化され、目標仮想境界
80が有効化されているからである。
【0046】
[III.他の実施形態]
目標及び仮想境界80,90は、マニピュレータ14、さらに具体的には、境界生成器
66への種々の入力値から導かれるとよい。境界生成器66への1つの入力値として、処
置が行われるべき部位の術前イメージが挙げられる。もしマニピュレータ14が、患者1
2に移植片が装着されるように組織を選択的に除去するようになっていたなら、境界生成
器66への第2の入力値は、移植片の形状のマップである。このマップの当初のバージョ
ンは、移植片データベースから得られるとよい。移植片の形状は、移植片を受け入れるた
めに除去されるべき組織の境界を画定する。この関係は、移植片が患者12の骨に装着さ
れることが意図された成形外科移植片の場合、特に当てはまる。
【0047】
境界生成器66への他の入力値は、オペレータ設定値である。これらの設定値は、エネ
ルギーアプリケータ24がどの組織に作用されるべきかを指示する値であるとよい。もし
エネルギーアプリケータ24が組織を除去するようになっていたなら、設定値は、除去さ
れるべき組織とエネルギーアプリエータ24の作用の後に残る組織との間の境界を識別す
る値であるとよい。もしマニピュレータ14が整形外科移植片の取付けを助長するように
なっていたなら、これらの設定値は、どの組織上に移植片が位置決めされるべきかを規定
する値であるとよい。これらの設定値は、データ処理ユニットを用いて、術前に入力され
るとよい。代替的に、これらの設定値は、システム10の構成要素の1つに関係付けられ
た入力/出力ユニット、例えば、ナビゲーションインターフェイス40,42によって入
力されてもよい。
【0048】
前述の入力データ及び指令に基づき、境界生成器66は、目標仮想境界80及び中間仮
想境界90を生成するとよい。境界80,90は、二次元であってもよいし、三次元であ
ってもよい。例えば、目標仮想境界80及び中間仮想境界90は、図示されているように
、仮想マップ又は他の三次元モデルとして生成されるとよい。生成されたマップ又はモデ
ルは、工具20の移動を案内することになる。モデルは、対象物の位置を示すためにディ
スプレイ38上に表示されるとよい。加えて、モデルに関する情報は、マニピュレータ制
御装置60に送信され、目標仮想境界80及び中間仮想境界90に関連してマニピュレー
タ14及び工具20の対応する移動を案内するようになっているとよい。
【0049】
実際には、処置の開始前に、外科部位におけるオペレータは、目標仮想境界80及び中
間仮想境界90の当初バージョンを設定するとよい。処置の開始時に、患者12に実際に
装着されるべき移植片をさらに正確に画定するデータが、境界生成器66内に読み込まれ
るとよい。このようなデータは、移植片に関係付けられた記憶装置、例えば、メモリステ
ィク又はRFIDタグから得られるとよい。このようなデータは、境界生成器66に供給
される移植片データベースデータの構成部分であってもよい。これらのデータは、特定の
移植片の製造後測定値に基づくものである。これらのデータは、製造のバラツキによって
移植片形状の先に記憶された入手可能な画定といくらか異なる可能性がある特定移植片の
形状の画定をもたらすことになる。移植片に固有のデータに基づき、境界生成器66は、
除去されるべき組織と残存させるべき組織との間の境界を示す目標仮想境界80及び中間
仮想境界90を更新するとよい。患者12内に移植される移植片の例として、2012年
6月22日に出願された「人工移植片及び移植の方法」と題する米国特許出願第13/5
30,927号に示されるものが挙げられる。この文献は、参照することによって、ここ
に含まれるものとする。適切な量の材料、例えば、骨が除去された後、ここに開示されて
いる移植片を患者12内に移植することができる。他の移植片も考えられる。
【0050】
一実施形態では、目標仮想境界80は、生体構造に関係付けられた座標系の点から導か
れるようになっている。目標仮想境界80は、捕捉された点の各々を互いに接続すること
によって補間されるとよい。これによって、目標仮想境界80を画定するウエブ又はメッ
シュが生じることになる。もし2つの点のみが捕捉されたなら、目標仮想境界80は、こ
れらの点間の線になる。もし3つの点が捕捉されたなら、目標仮想境界80は、互いに隣
接する点を接続する2つの線によって形成されることになる。ディスプレイ38は、生じ
た目標仮想境界80の形状の仮想フィードバックをもたらすとよい。入力装置40,42
を利用して、例えば、境界を移動させることによって、境界を拡大又は収縮することによ
って、又は目標仮想境界80の形状を変化させることによって、目標仮想境界80を制御
及び修正するとよい。当業者であれば、目標仮想境界80は、ここに具体的に記載されな
い他の方法によって生成されてもよいことを理解するだろう。
【0051】
目標仮想境界80の代替的配置及び構成が、
図7,10に示されている。場合によって
は、
図7に示されているように、目標仮想境界80と生体構造の目標面92との間に位置
ずれを生じさせず、むしろ目標仮想境界80を目標面92と直接一致させると適切なこと
がある。例えば、工具20の加工特性によっては、工具20が目標仮想境界80を超えな
いことがある。追加的又は代替的に、工具20は、エネルギーアプリケータ24の中心点
ではなくエネルギーアプリケータ24の外面の点に基づいて、追跡される場合がある。こ
のような場合、目標仮想境界80を目標面92と一致させることによって、目標面92を
生じさせる正確な加工を行うことができる。さらに他の実施形態では、工具20は、工具
20の外面の移動の範囲を輪郭付けする包絡線に基づいて追跡されることがある。例えば
、工具20が鋸ブレードである時、包絡線は、鋸ブレードの振動中の鋸ブレードの外面の
移動が包絡線内に捕捉されるように、鋸ブレードの外面の移動の範囲を含むことになる。
目標仮想境界80の位置決めは、このような包絡線を考慮するとよい。
【0052】
他の例では、
図5に示されているように、目標仮想境界80は、概して目標面92と一
致していない。代わって、目標仮想境界80は、目標面92から離間し、目標面92を超
えて位置している。当業者であれば、目標仮想境界80がここに具体的に記載されない他
の構成を有していてもよいことを理解するだろう。
【0053】
中間仮想境界90は、目標仮想境界80と同様の方法によって形成されるとよい。代替
的に、制御装置30は、目標仮想境界80から中間仮想境界90を導いてもよい。例えば
、制御装置30は、中間仮想境界90を形成するために、目標仮想境界80をコピーして
もよい。目標仮想境界80のコピーは、中間仮想境界90を形成するためにどのような適
切な方法によって修正又は変形されてもよい。例えば、目標仮想境界80のコピーには、
平行移動、転移、傾斜、寸法変更、回転、反射、及び同様の修正が施されてもよい。当業
者であれば、中間仮想境界90がここに具体的に記載されない他の方法によって目標仮想
境界80から導かれてもよいことを理解するだろう。
【0054】
目標仮想境界80及び中間仮想境界90は、どのような適切な輪郭を有していてもよい
。例えば、
図5に示されているように、目標仮想境界80は、目標面92の輪郭と同様の
輪郭を有しているとよい。
図10において、目標仮想境界80は、平面的又は平らな輪郭
を有している。
図4において、中間仮想境界90は、目標面92の輪郭と同様の輪郭を有
している。
図9において、中間仮想境界90は、平面的又は平らな輪郭を有している。当
業者であれば、目標仮想境界80及び中間仮想境界90は、ここに具体的に記載されない
他の輪郭を有していてもよいことを理解するだろう。
【0055】
目標仮想境界80及び中間仮想境界90は、
図4に示されているように、同じ輪郭を有
する必要がない。代わって、境界80,90は、
図9に示されているように、互いに異な
る輪郭を有していてもよい。
図9において、目標仮想境界80の輪郭は、目標面92の輪
郭と同一であり、中間仮想境界90の輪郭は、平面的である。勿論、当業者であれば、境
界80,90のいずれかの輪郭は、
図9に示されてるものと異なっていてもよいことを理
解するだろう。境界80,90の各々の輪郭は、どのような適切な技術によって手動的又
は自動的に生成されてもよい。いくつかの因子、例えば、制限されないが、用いられる工
具20及び/又はモデルに応じて種々の輪郭を有すると、有益である。
【0056】
第1のモードを考慮すると、目標仮想境界80のいくつかの異なる実施形態が可能であ
る。前述したように、第1のモードでは、中間仮想境界90が有効化され、工具20は、
中間仮想境界90に関連して拘束される。しかし、第1のモードでは、目標仮想境界80
の有効化及び無効化が制御されてもよい。例えば、
図4、
図6および
図9に示されている
ように、第1のモードでは、目標仮想境界80が有効化され、同時に中間境界90も有効
になっていてもよい。一例では、これは、冗長目的のためになされるとよい。前述したよ
うに、中間境界90は、切除境界として作用するので、システム10の重要な特徴である
。中間境界90の実行におけるエラーは、目標面92をエラーに晒す可能性がある。目標
仮想境界80を同時に有効化することによって、システム10は、目標仮想境界80を中
間仮想境界90に対するバックアップとして有することによって、信頼性を高めることに
なる。これによって、マニピュレータ14は、目標仮想境界80が冗長境界として設けら
れていることを知ることによって、より高速で作動することができる。代替的に、
図8に
示されているように、目標仮想境界80は、第1のモードにおいて無効化されてもよい。
これは、コンピューティング資源を保存し、実行の複雑さなどを減少するために行われる
とよい。
【0057】
第1のモードにおける目標仮想境界80の制御は、自動的に行われてもよいし、又は手
動によって行われてもよい。例えば、オペレータは、第1のモードにおいて目標仮想境界
80を手動によって有効化又は無効化するとよい。代替的に、システム10は、ある特定
の事象又は条件に依存して、目標仮想境界80を有効化するのが適切であるかどうかを自
動的に決定するようになっていてもよい。例えば、システム10の不安定さの検出が、第
1のモードにおける目標仮想境界80の自動有効化をもたらすことになる。
【0058】
第1のモード及び第2のモードは、用途及び種々の他の因子に依存して、互いに異なる
形式(すなわち、手動/自律)であってもよいし、又は同一形式であってもよい。このよ
うな1つの因子は、工具20の送り速度によって大きく影響される操作手順の期間である
。送り速度は、エネルギーアプリケータ24の遠位端が経路区域に沿って前進する速度で
ある。概して、自律モードでは、マニピュレータ14は、より正確であるが、手動モード
よりも遅い送り速度をもたらす。手動モードでは、マニピュレータ14は、正確ではない
が、自律モードよりも早い送り速度をもたらすことができる。正確さと送り速度との間の
このトレードオフは、第1及び第2のモード中にどの形式の制御が実施されるべきかを示
す1つの因子である。
【0059】
切除経路70に沿った工具20の前後振動の周波数は、第1のモードと第2のモードと
の間で異なっているとよい。一般的に、振動の周波数が大きくなるほど、切除経路70の
振幅が小さくなり、工具20によってもたらされる切込みが「より微細(fine)」になる
。一方、振動の周波数が小さくなるほど、切除経路70の振幅がより大きくなり、工具2
0によってもたらされる切込みが「より大きく(bulkier)」なる。
【0060】
一般的に、工具20が切除経路70を横断すると、工具20は、
図13および
図14に
示されるように、生体構造(遠位大腿)にリブ110を形成する。このようなリブの例は
、「骨パッド」と題する米国特許出願第14/195,113号に示されている。この開
示内容は、参照することによって、ここに含まれるものとする。リブ110の特定の三次
元形状は、例えば、複数の通路加工部112を形成するバーのような回転工具によって得
られるものである。図示されている実施形態では、複数の通路加工部112は、切除経路
70に沿った工具20の前後運動から得られる実質的に線状の経路に追従している。リブ
110は、高さ114、幅116、及び複数の突起118を有している。第1及び第2の
モードが異なる振動周波数の切除経路70を示す時、第1及び第2のモードは、異なる形
態を有するリブ110を生じることになる。
【0061】
一例では、振動数は、第1のモードよりも第2のモードにおいてより大きくなる。例え
ば、
図13A〜
図13Cは、第1のモードにおける塊切除によって生じるリブ110を示
しており、
図14A〜
図14Cは、第2のモードにおける微細切除によって生じるリブ1
10を示している。その結果、リブ110は、第1のモードと第2のモードとの間で異な
って形成されている。具体的には、第1のモード(
図13B)において形成されたリブ1
10は、第2のモード(
図14B)において形成された(互いにより近接している)リブ
110と比較して、互いに隣接するリブ110間のより大きい頂点間距離を示している。
リブ110の高さ及び/又は幅も、第1もモードと第2のモードとの間で異なっていても
よい。例えば、塊切除モード(
図13C)におけるリブ110の幅116は、微細切除モ
ード(
図14C)のリブ110の幅116よりも大きくなっている。逆に、塊切除モード
(
図13C)のリブ110の高さ114は、微細切除モード(
図14C)のリブ110の
高さ114よりも小さくなっている。加えて、第1のモードにおいて形成された突起11
8の幾何学的形状は、第2のモードにおいて形成されたものと異なっていてもよい。第1
及び第2のモードは、有利には、特定の用途に適する種々の表面仕上げをもたらすことに
なる。当業者であれば、第1及び第2のモードは、リブに関してここに記載されている以
外の生体構造の特性の違いをもたらすことを認めるだろう。
【0062】
一実施形態では、第1のモードは、自律モードであり、第2のモードは、手動モードで
ある。第1のモーでは、工具20の移動は、自律的に行われ、中間仮想境界90に関連し
て拘束される。第1のモードにおける自律加工は、第2のモードにおける手動加工に切り
換えられる。第2のモードでは、工具20の移動は、手動によって行われ、目標仮想境界
80に関して拘束される。具体的には、オペレータは、外科用システム10に依存して、
第1のモードにおいて組織の加工の大半を自律的に行うことになる。必要に応じて、オペ
レータは、目標面92により近い目標仮想境界80に直接相互作用するために第1のモー
ドにおける手動加工に切り換えてもよい。これを行うことによって、オペレータは、多目
的処置、例えば、目標面92への不規則な面仕上げを行うことができる。システム10及
び方法によって、オペレータは、自律加工によって計画されるよりも良好に移植片を固定
する目標面92の最終切口を作製することができる。さらに、オペレータが組織を目標面
92まで完全に自律的に切除することができなくなっていると好ましい場合がある。第1
のモードにおいて中間仮想境界90を有効化させることによって、自律加工中にオペレー
タに追加的な余裕を与えることになる。何故なら、中間仮想境界90は、目標仮想境界8
0から離間しているからである。
【0063】
他の実施形態では、第1及び第2のモードは、いずれも手動モードである。第1のモー
ドでは、工具20の移動は、手動によって行われ、中間仮想境界90に関連して拘束され
る。第1のモードにおける手動加工は、第2のモードにおける手動加工に切り換えられる
。手動加工は、第2のモードにおいても保存されるが、境界構成が変化する。何故なら、
中間仮想境界90が無効化されるからである。第2のモードにおいて、工具20の移動は
、手動によって行われ、目標仮想境界80に関連して拘束される。この実施形態は、有利
には、オペレータがマニピュレータ14を用いて第1及び第2のモードにおいて塊加工を
行う機会をもたらすことになる。中間仮想境界90が工具20を目標面92から離れる方
に拘束することを知っているオペレータは、自律加工中におけるよりも著しく迅速かつよ
り積極的な塊加工を行うことができる。いったん組織の塊が第1のモードにおいて手動に
よって除去されたなら、システム10は、組織の残り部分の手動加工を可能にするために
第2のモードに切り換えられるとよい。第2のモードにおいて、オペレータは、目標仮想
境界80に関して目標面92に不規則な表面仕上げ又は微細な表面仕上げを手動によって
生成することができる。
【0064】
さらに他の実施形態では、第1及び第2のモードは、いずれも自律モードである。第1
のモードでは、工具20の移動は、自律的に行われ、中間仮想境界90に関連して拘束さ
れる。第1のモードにおける自律加工は、第2のモードにおける自律加工に切り換えられ
る。第2のモードへの切換えは、自律加工を維持するが、中間仮想境界90を無効化する
ことによって、境界構成が変化する。第2のモードでは、工具20の移動は、自律的に行
われ、目標仮想境界80に関連して拘束される。この実施形態は、有利には、第1及び第
2のモードを通して、高度に正確な制御された方法によって組織を自律的に加工する機会
をもたらすことになる。加えて、オペレータは、第1のモードにおける自律加工の後、組
織を検査することができる。換言すれば、外科用装置10は、目標面92まで完全に自律
的に加工するのではなく、第1のモードが第1の段階として用いられることによって、オ
ペレータは、第2のモードにおける中間仮想境界90を無効化する前に自律切除の進展及
び精度をチェックすることができる。
【0065】
一実施形態では、システム及び方法は、‘n’個のモードを実行するようになっている
。例えば、システム及び方法は、3つ以上のモードを実行することができる。第1のモー
ドは、手動モードであるとよい。第2のモードは、例えば、
図13に示されているような
自律的塊切除を示す自律モードであるとよい。第3のモードは、例えば、
図14に示され
ているような自律的微細切除を示す自律モードであるとよい。当業者であれば、‘n’個
のモードのいずれかがここに記載されている自律モード又は手動モード以外のモードであ
ってもよいことを理解するだろう。
【0066】
システム及び方法は、‘n’個の仮想境界を設定するとよい。例えば、システム及び方
法は、3つ以上の仮想境界を設定するとよい。‘n’個の仮想境界は、‘n’個のモード
に対して実行されるとよい。3つの仮想境界の一例が、
図15に示されている。
図15に
おいて、第1の仮想境界90、第2の仮想境界80、及び第3の仮想境界120が、生体
構造に関係付けられている、ここで、第1の仮想境界90は、骨の軟骨及び表面層の除去
を促進するために設けられており、第2の仮想境界80は、移植片を配置するための骨の
より深い層の除去を促進するために設けられており、第3の仮想境界120は、移植片を
固定するためのペグ/テイルを挿入するための加工孔の形成を促進するために設けられて
いる。第1のモードにおいて、第1の仮想境界90が有効化される。第1のモードでは、
工具の移動は、第1の仮想境界90に関連して拘束される。第2モードにおいて、第1の
仮想境界90が無効化される。第2のモードでは、第3の仮想境界120の有効化が維持
されるとよい。第2のモードにおいて、工具の移動は、第2の仮想境界80に関連して拘
束される。第3のモードにおいて、第2の仮想境界80が無効化される。第3のモードで
は、工具の移動は、第3の仮想境界120に関連して拘束される。
【0067】
いくつかの実施形態では、‘n’個の仮想境界は、組織に特有である。すなわち、仮想
境界は、異なる種類の組織に関連して工具20を拘束するように構成されている。例えば
、‘n’個の仮想境界は、軟組織、軟骨、骨、靭帯等に関連して工具を拘束するようにな
っているとよい。これは、工具20による加工から特定の組織を保護するために行われて
もよい。
【0068】
付加的又は代替的に、‘n’個の仮想境界は、領域/位置に特有である。すなわち、仮
想境界は、種々の領域又は位置に関連して工具20を拘束するように構成されている。例
えば、‘n’個の仮想境界は、外科部位における他の対象物、例えば、開創器、他の工具
、トラッカー等に関連して工具20を拘束するようになっているとよい。加えて‘n’個
の仮想境界のいずれか1つは、生体構造が灌注されている湿った位置への工具20の接近
を防ぐ灌注境界として機能するようになっているとよい。当業者であれば、‘n’個の仮
想境界及び‘n’個のモードがここで具体的に記載されない種々の他の技術によって実施
されてもよいことを認めるだろう。
【0069】
他の実施形態では、‘n’個の仮想境界は、2つ以上の外科用工具20と併せて用いら
れてもよい。例えば、
図16に示されているように、第1の外科用工具20a及び第2の
外科用工具20bが設けられている。工具20a,20bは、連携して及び/又は同期し
て移動するようになっている。第1の仮想境界90は、生体構造の上面に関連して画定さ
れており、第2及び第3の仮想境界80,120は、それぞれ、生体構造の左右の面に沿
って画定されている。ここで、仮想境界80,90,120は、同時に有効化されるとよ
い。さらに、仮想境界80,90,120は、互いに交差していてもよいし、又は接触し
ていてもよい。他の例では、1つの工具20は、加工のために用いられ、他の工具は、組
織除去のために用いられるようになっている。このような場合、1つの仮想境界は、加工
拘束境界として機能するとよく、他の仮想境界は、牽引工具が意図された牽引領域から離
脱するのを防ぐ組織牽引境界として機能するとよい。
【0070】
‘n’個の仮想境界のいずれかは、生体構造の位置が変化するにつれて仮想境界が移動
するように、生体構造に対して画定されるとよい。これは、ここに記載されているナビゲ
ーション技術及び制御技術を用いて達成されるとよい。
【0071】
‘n’個の仮想境界は、例えば、図面の全体を通して示されているように同一の生体構
造に関して画定されるとよい。このような場合、‘n’個の仮想境界の各々は、生体構造
が移動すると該生体構造に追従することになる。代替的に、‘n’個の仮想境界は、種々
の生体構造に関連して画定されてもよい。例えば、‘n’個の仮想境界のいくつかが大腿
骨に関連して画定され、‘n’個の仮想境界の他のものが脛骨に関して画定されてもよい
。これは、予期しない加工から脛骨を保護するために行われる。このような場合、仮想境
界間の空間は、大腿骨と脛骨との間のそれぞれの移動に応じて変更されてもよい。
【0072】
制御装置30は、第1のモードがいつ第2のモードに切り換えられたか又はその逆に第
2のモードがいつ第1のモードに切り換えられたかを検出するようになっている。制御装
置30は、工具20の拘束が目標仮想境界80又は中間仮想境界90のいずれに関連して
生じているかどうかをオペレータに伝えるために、オペレータに警告を発するようになっ
ているとよい。警告は、視覚的、触覚的、聴覚的、及び同様の方法であるとよい。当業者
であれば、警告がここに具体的に記載されていない種々の他の方法によって実施されても
よいことを理解するだろう。
【0073】
場合によっては、システム10が第1のモードに切り換えられた時、工具20が第2の
モードにおける区域100内にあってもよい。このような場合、工具20は、中間仮想境
界90と目標仮想境界80又は目標面92との間に捕捉されることになる。一例では、図
11に示されているように、目標仮想境界80は、第1のモードにおいてその有効化が維
持され、これによって、工具20が中間仮想境界90と目標仮想境界80との間に捕捉さ
れている。他の例では、
図12に示されているように、目標仮想境界80は、第1のモー
ドにおいて無効化され、これによって、工具20が中間仮想境界90と目標面92との間
に捕捉されている。
【0074】
このような工具20の捕捉は、意図的であってもよいし、又は非意図的であってもよい
。非意図的である時、制御装置30は、第2のモードが第1のモードに切り換えられた時
の工具20の位置を評価し、これによって、工具20の捕捉を防ぐようになっていてもよ
い。例えば、もし工具20が第1のモードに切り換えられた時に区域100内にあったな
ら、制御措置30は、工具20が中間仮想境界90を超えて引っ張られるように工具20
を区域100から引き出すように、マニピュレータ14を指示するとよい。これは、工具
20の離脱を可能にするために中間仮想境界90を一時的に無効化することを必然的に伴
うことになる。他の場合、工具20を第1のモードにおいて区域100内に捕捉すること
が意図されてもよい。工具20の捕捉は、中間仮想境界90を上側拘束又は切除境界とし
て用いるために行われるとよい。図示されているように、第2のモードにおいて、工具2
0は、狭い切口によって区域100内の組織を貫通することになる。その後、第1のモー
ドが再び有効化され、中間仮想境界90によって工具20を区域100において捕捉する
とよい。工具20が前述のように拘束されていることを知っているオペレータは、区域1
00内の組織を自動的又は自律的に除去することができる。この構成は、組織内に孔等を
形成する時に有用である。
【0075】
以上、いくつかの実施形態について検討してきた。しかし、ここで検討された実施形態
は、包括的であることを意図しておらず、すなわち、本発明を任意の特定の形態に制限す
ることを意図していない。用いられた専門用語は、記載の便宜上のものであり、制限する
ことを意図するものではない。上記の示唆に照らせば、多くの修正及び変更が可能であり
、本発明は、具体的に記載される以外の方法によって実施されてもよい。
【0076】
本発明の多くの特徴及び利点は、詳細な説明から明らかであり、それ故、本発明の真の
精神及び範囲内に含まれる本発明の全てのこのような特徴及び利点を包含することが添付
の請求項によって意図されている。さらに、多数の修正及び変更が当業者によって容易に
行われることから、本発明を図示かつ記載された正確な構造及び操作に制限することは、
求められておらず、従って、全ての適切な修正及び等価物は、本発明の範囲内に含まれる
ことになる。
【解決手段】工具20によって生体構造を加工するための外科用システム及び方法は、生体構造に関連する第1の仮想境界90を画定することと、生体構造に関連する第2の仮想境界80を画定することとを含んでいる。第1の仮想境界は、第1のモードにおいて有効化される。第1のモードにおいて、工具の移動は、第1の仮想境界に関連して拘束される。第1の仮想境界は、第2のモードにおいて無効化される。第2のモードでは、工具の移動は、第2の仮想境界に関連して拘束される。