(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記建屋に前記電力供給機器が収容されている場合に、当該電力供給機器は、前記架構内に収容された電力消費機器と接続された状態となっていることを特徴とする請求項1に記載の天然ガスプラント用モジュール。
前記建屋には、電圧レベルが異なる複数種の前記電力供給機器が収容されている場合に、電圧レベルが1000V以上の前記電力消費機器は、当該電圧レベルに対応する前記電力供給機器と未接続の状態であり、電圧レベルが1000V未満の前記電力消費機器について、当該電圧レベルに対応する電力供給機器と接続された状態となっていることを特徴とする請求項3に記載の天然ガスプラント用モジュール。
前記建屋に前記制御情報出力機器が収容されている場合に、当該制御情報出力機器は、前記架構内に収容された被制御機器と接続された状態となっていることを特徴とする請求項1に記載の天然ガスプラント用モジュール。
前記建屋には、当該建屋の内圧を大気圧よりも高い圧力に保つための空気の取り込み配管が接続され、前記取り込み配管の末端部の空気の取り込み部は、前記架構内に配置されている可燃物の取り扱い機器よりも高い位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の天然ガスプラント用モジュール。
【背景技術】
【0002】
天然ガスの処理を行う天然ガス(NG)プラントには、天然ガスの液化を行う液化天然ガス(LNG: Liquefied Natural Gas)プラントや、天然ガスからLPG(Liquefied Petroleum Gas)や重質分の分離・回収などを行う天然ガス処理プラントなどがある。
近年、NGプラントを建設するにあたり、NGプラントを構成する多数の機器をブロック分けし、各ブロックの機器群を共通の架構内に組み込むモジュール化の取り組みがなされている(例えばLNGプラントにつき特許文献1)。以下、天然ガスプラントを建設するためのモジュールを天然ガス(NG)プラント用モジュールと呼ぶ。
【0003】
例えばNGプラント用モジュールは、NGプラントの建設敷地とは異なる場所で建造され、建設敷地へと輸送された後、その敷地内に設置される。そして、複数のNGプラント用モジュールを組み合わせることにより、NGプラントが構成される。
【0004】
NGプラント用モジュールを構成する架構内には、外部から駆動用の電力の供給を受ける機器(電力消費機器)や、制御信号に基づいて動作制御が行われる機器(被制御機器)が多数台、設置される。
電力消費機器に対する電力の供給について、NGプラント用モジュールには、電圧変換を行う変電器や、各電力消費機器への給電制御を行う給電制御設備、遮断機や断路器などの電力供給機器を備えた変電室が併設される場合がある。
【0005】
また、被制御機器の動作制御に関して、NGプラント用モジュールには、NGプラント全体の統括制御を行う中央制御室にて、オペレータまたは自動制御装置から受け付けた流量設定値や圧力設定値、温度設定値など、被制御機器の動作制御に係る情報を、被制御機器の動作制御を行うコントローラに対して出力したり、被制御機器を用いて制御される流量、圧力、温度などの情報を中央制御室に向けて出力したりする制御情報出力機器を備えた機器制御室が併設される場合もある。
【0006】
特許文献2に記載のように、出願人は、NGプラント用モジュールの外部に上述の変電室や機器制御室を構成する建屋を併設するにあたり、当該モジュールの建造地にてモジュールの架構に建屋を連結し、これらモジュールと建屋とを一緒にNGプラントの建設敷地へと輸送する技術を開発した(特許文献2)。NGプラントの建設敷地では、NGプラント用モジュールと建屋とを連結する連結部材を取り外すことにより、これらモジュールと建屋とが分離され、NGプラント用モジュールに隣接する位置に建屋が併設された状態となる。
【0007】
特許文献2に記載の技術においては、建屋をNGプラント用モジュールの外部に配置することにより、耐爆構造が要求される範囲を局所限定している。この結果、耐爆構造の建屋をNGプラント用モジュール内に設ける場合と比較して、前記モジュールの架構自体の耐爆化や、耐爆構造に伴う高荷重の建屋を支えることに伴う架構を構成する鉄骨材料の大径化を抑制している。
一方で、NGプラントの敷地面積の制約などから、変電室や機器制御室である建屋の併設用の敷地を確保できない場合もある。このような場合に、いかなる構成の建屋をどこに設けるかについては、特許文献1、2には記載されていない。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施の形態に係る天然ガスプラント用モジュールにより、液化天然ガス(LNG)プラントを構成する例について説明する。以下、LNGプラントを構成する前記モジュールを単に「モジュール」ともいう。
図1は、本例のLNGプラントの概略構成の一例である。LNGプラントは、NGから液体を分離する気液分離部11と、NG中の水銀の除去を行う水銀除去部12と、NGから二酸化炭素や硫化水素などの酸性ガスを除去する酸性ガス除去部13と、NGに含まれる微量の水分を除去する水分除去部14と、これらの不純物が除去されたNGを冷却、液化してLNを得る液化処理部15と、液化されたLNGを貯蔵する貯蔵タンク17とを備える。
【0015】
気液分離部11は、パイプラインなどにより輸送されてきたNGから、常温で液体のコンデンセートを分離する。例えば気液分離部11は、比重差を利用してNGから液体を分離するための傾斜配置された細長いパイプやドラム、輸送の過程におけるパイプラインの閉塞を防止する目的で必要に応じて添加される不凍液の加熱再生を行う不凍液の再生塔やリボイラー、及びこれらの付帯設備などの機器群を備えている。
【0016】
水銀除去部12は、液体が分離された後のNGに含まれる微量の水銀を除去する。例えば水銀除去部12は、吸着塔内に水銀除去剤を充填した水銀吸着塔やその付帯設備などの機器群を備えている。
【0017】
酸性ガス除去部13は、液化の際にLNG中で固化するおそれのある二酸化炭素や、硫化水素などの酸性ガスを除去する。酸性ガスの除去法としては、アミン化合物などを含むガス吸収液を用いる手法や、NG中の酸性ガスを透過させるガス分離膜を用いる手法が挙げられる。
【0018】
ガス吸収液が採用されている場合、酸性ガス除去部13は、NGとガス吸収液とを向流接触させる吸収塔や、酸性ガスを吸収したガス吸収液を再生するための再生塔、再生塔内のガス吸収液を加熱するためのリボイラー、及びこれらの付帯設備などの機器群を備える。
また、ガス分離膜が採用されている場合、酸性ガス除去部13は、本体内に多数本の中空糸膜を収容したガス分離ユニットやその付帯設備などの機器群を備える。
【0019】
水分除去部14は、NG中に含まれる微量の水分を除去する。例えば水分除去部14は、モレキュラーシーブやシリカゲルなどの吸着剤が充填され、NGの水分除去操作と、水分を吸着した吸着剤の再生操作とが交互に切り替えて実施される複数の吸着塔、再生操作が行われている吸着塔に供給される吸着剤の再生用ガス(例えば水分除去後のNG)の加熱を行うヒーター、及びこれらの付帯設備などの機器群を備える。
【0020】
以上に説明した各処理部11〜14にて不純物が除去された後のNGは、液化処理部15に供給されて液化される。例えば液化処理部15は、プロパンを主成分とする予冷用冷媒によってNGの予冷を行う予冷熱交換器、予冷後のNGから重質分を除去するスクラブカラム、窒素、メタン、エタン、プロパンなどの複数種類の冷媒原料を含む混合冷媒(Mixed Refrigerant)によりNGを冷却して液化、過冷却する極低温熱交換器(MCHE:Main Cryogenic Heat Exchanger)、熱交換により気化した予冷用冷媒や混合冷媒のガスを圧縮する冷媒圧縮機21、及びこれらの付帯設備などの機器群を備える。
【0021】
なお
図1においては、予冷用冷媒や混合冷媒の個別の冷媒圧縮機(混合冷媒用の低圧MR圧縮機、高圧MR圧縮機、予冷用冷媒用のC3圧縮機)を1つにまとめて記載した他は、上述の各機器の個別の記載は省略してある。
また
図1には、冷媒圧縮機21を駆動する動力源としてガスタービン22を用いた例を示してあるが、冷媒圧縮機21の規模などに応じてモーターなどを用いてもよい。
【0022】
また上述の液化処理部15の各冷媒圧縮機21の後段には、圧縮された冷媒を冷却するための各種クーラーやコンデンサーが設けられている場合がある。この他、酸性ガス除去部13がガス吸収液を用いている場合に、再生塔にて再生されたガス吸収液や塔頂液を冷却するためのクーラーが設けられている場合もある。LNGプラントには、これらクーラーやコンデンサーを構成し、当該LNGプラント内で取り扱われる流体の冷却を行うための多数の空冷式熱交換器(ACHE:Air-Cooled Heat Exchanger)41が設けられている。
【0023】
さらに液化処理部15には、冷却されたNGから分離された液体(液体重質分)から、エタンを分離するデエタナイザと、エタン分離後の液体からプロパンを分離するデプロパナイザと、プロパン分離後の液体からブタンを分離し、常温で液体のコンデンセートを得るデブタナイザとを含む精留部16が併設されている。デエタナイザ、デプロパナイザ、デブタナイザは、それぞれ各成分の精留を行う精留塔、各精留塔内の液体を加熱するリボイラー、及びこれらの付帯設備などの機器群を備えている。精留部16は、本実施の形態の重質分除去部に相当する。
【0024】
貯蔵タンク17には、液化処理部15にて液化、過冷却された後の液化天然ガス(LNG)が送液され、貯蔵される。貯蔵タンク17に貯蔵されたLNGは、不図示のLNGポンプによって送液され、LNGタンカーやパイプラインへと出荷される。
【0025】
このほか、LNGプラント内には、上述の各処理部11〜16にて実施される種々の加熱操作や貯蔵タンク17の底面に設けられた地面の凍結防止用のヒーターなどに供給される熱媒(例えばホットオイルや蒸気など)の加熱を行うオイルヒーターやボイラーなどとその付帯設備、LNGプラント内で消費される電力を供給するガスタービン発電機やガスエンジン発電機とその付帯設備といった機器群も設置されている。
【0026】
図2は、上述のLNGプラントのレイアウトの一例を示している。本例のLNGプラントは、共通の架構30に、各処理部11〜16を構成する機器群(架構内機器6やACHE41など)を収容した複数のモジュールMを組み合わせて構成されている。
後述する変電室や機器制御室を構成する建屋の配置位置を示す図示の便宜上、
図2に示す各モジュールMは、複数階層の架構30の最下層における架構内機器6の配置位置を示している。但し、ACHE41が設けられているモジュールMについては、架構30の上面に設けられたACHE群4を併記し、一部の架構内機器6が隠れている場合もある。
【0027】
図2に示す例において、液化処理部15を構成する機器群は、さらに複数のグループに分けられ、各々のグループの機器群を架構30内に収容した複数のモジュールMが設けられている。また、他の処理部11、12、13、14、16や、オイルヒーター、ボイラーなどを構成する各機器群(架構内機器6やACHE41)についても、処理部11、12、13、14、16毎などにグループ分けされ、各グループの機器群を架構30に収容した複数のモジュールMが設けられている。
【0028】
また
図2に示すように、液化処理部15側の複数のモジュールMを横方向に並べ、また、他の処理部11、12、13、14、16などに係るモジュールMを横方向に並べ、これら2列のモジュールMにより、LNGプラントが構成されている。また、液化処理部15のモジュールMの列の両脇には、MR圧縮機やC3圧縮機である冷媒圧縮機21が配置されている。
以下の説明では、
図2中に実線で示した座標軸はLNGプラント全体についての向きを示している。また、
図2〜4中に破線で示した副座標軸は、各モジュールMに着目した方向を示し、副座標軸のY’軸の基点側を後端側、矢印方向側を先端側と呼ぶ。
【0029】
以下、モジュールMの具体的な構成例について説明するが、
図2に示すように、本例のLNGプラントは、その上面側に複数台のACHE41が設けられたモジュールM1と、ACHE41が設けられていないモジュールM2との2種類のモジュールMによって構成されている。
これらのモジュールM1、M2は、ACHE41の有無を除いて基本的な構成は共通している。以下のモジュールMの説明においては、ACHE41に関する説明以外は、モジュールM1、M2に共通する構成である。
【0030】
図2、3に示すように、各モジュールMを構成する架構30は、平面形状が概略矩形に形成されると共に、各処理部11〜16の機器群に含まれる機器を上下方向に多層に配置することが可能な鉄骨製の骨組み構造体である。
【0031】
架構30の上面には、先端側から後端側へ向くY軸方向に沿ってACHE41を複数台並べた列が設けられている。さらに架構30の幅方向に向けてACHE41の列を複数列(図示の便宜上、
図2には3列の例を示してある)設けることにより、多数のACHE群4が配置されている。これらACHE41は、各処理部11〜16の機器群の一部を構成している。
【0032】
図3に示すように、ACHE群4が配置されている領域の下方側の空間は、各処理部11〜16間で受け渡される流体が流れる多数の配管42を配置したパイプラックとなっている。これらの配管42についても、各処理部11〜16の機器群の一部を構成している。
なお、ACHE群4が配置されていないモジュールM2においても、他のモジュールM1のACHE群4の配置領域と横並びとなる、後端側の領域に、パイプラックが設けられている。
【0033】
また、パイプラックに配置された配管42の下方側や、パイプラックよりも先端側の空間には、既述のACHE41と共に、各処理部11〜16の機器群の一部を構成する架構内機器6が配置されている。架構内機器6には、塔槽や熱交換器などの静機器、ポンプ6aなどの動機器、各静機器、動機器間やパイプラック側の配管42との間を接続する接続配管(不図示)などが含まれる。
【0034】
上述の構成を備えたモジュールMにおいて、架構30に収容された機器のうち、ACHE41やポンプ6aなど、駆動用の電力を消費する電力消費機器に対しては、各電力消費機器の定格電圧に応じて変圧された電力が給電線を介して供給される。
そこで、これらの電力消費機器を収容した架構30には、周囲から区画された外郭構造物からなる建屋内に、電圧変換を行う変電器や、各電力消費機器への給電制御を行う給電制御設備、遮断機や断路器などの電力供給機器を収容した変電室(Substation、SS)が併設される。
【0035】
さらに、架構30に収容された各種の機器には、流体の流量を調整する流量調整弁や塔槽内の圧力を調整する圧力調整弁、温度調整の対象となる流体の熱交換器出口を調整するために、熱媒や冷媒の流量を増減する流量調整弁などのコントロール弁や、塔槽内の液位などに応じて、開閉動作が実行される開閉弁などの各種の被制御機器が含まれる。
【0036】
これらの被制御機器にはコントローラが併設され、流体の流量、圧力、温度や液位などを検出部にて検出した結果に基づいて、コントローラから被制御機器に制御信号を出力し、各被制御機器の動作制御を行う制御ループが構築されている。
【0037】
このとき、これら制御ループに係る機器を収容した架構30には、建屋内に、FCS(Field Control Station)などと呼ばれる制御情報出力機器を収容した機器制御室(Instrument Control Room、CR)が併設される場合もある。制御情報出力機器は、LNGプラント全体の統括制御を行う中央制御室にて、オペレータまたは自動制御装置から受け付けた流量設定値や圧力設定値、温度設定値など、被制御機器の動作制御に係る情報を、被制御機器の動作制御を行うコントローラに対して出力したり、検出部にて検出された流体の流量、圧力、温度や液位などの情報を中央制御室に向けて出力したりする。
制御情報出力機器と、各被制御機器のコントローラや検出部とは、信号線を介して接続されている。また以下の説明では、上述の変電室や機器制御室を構成する建屋をSS/CR50と記す。
【0038】
本実施の形態において、各モジュールMに併設されているSS/CR50は、他の架構内機器6群と共に、モジュールMを構成する架構30によって囲まれた領域の内側に設けられ、モジュールMと一体に輸送可能となっている。
架構30の骨組みを構成する多数の柱と梁のうち、同じ高さ位置に横架された複数の梁によって形成される面を架構30の各階層としたとき、
図3に示すように、架構30は複数階層(同図の例では4階層)に構成されている。
【0039】
本例のSS/CR50は、上記複数階層構造の架構30の最下層に配置されている。また、当該SS/CR50が配置されている位置の上方の領域は、既述のように、LNGプラント内で取り扱われる流体が流れる配管42群が架構によって保持されたパイプラックとなっている。言い替えると、SS/CR50は、パイプラックの下方側の空間に設けられている。
【0040】
以上に説明したように、本例のモジュールMにおいては、可燃性の流体が流れる配管42の下方側に密閉構造の建屋であるSS/CR50が配置されている。一般に、可燃性流体を取り扱う機器(配管42を含む)の近傍に建屋を配置する場合には、耐爆構造、防爆構造の検討が行われる。
耐爆構造とは、建屋の周囲で爆発が発生した場合であっても、建屋の損壊を抑制することを可能なように、建屋の構成部材の強度設計が行われていることである。また防爆構造とは、建屋の内部への可燃性物質の進入を抑制し、また可燃性物質が進入した場合であっても着火を抑制する仕組みである。
【0041】
耐爆構造に係る建屋の構成部材の強度や、建屋内に進入した毒性物質の排出能力などを決定する手法(Management System)の1つとして、API RP(American Petroleum Institute Recommended Practice)752がある(以下、単に「API752」と記載)。
耐爆構造の決定手法に関し、API752には、(1)建屋に影響を及ぼし得る最大の事象を想定して、その結果生じる帰結の定量的、定性的評価を行うこと、(2)当該建屋に対する人員の滞在頻度や避難場所としての建屋の機能を考慮すること、(3)これらの検討結果を踏まえて、建屋の耐爆強度の基準を策定し、当該基準に則って建屋の強度設計を行うことなどが記載されている。
【0042】
API752は、米国の推奨手法であるが、他国におけるLNGプラントの建設においても当該手法に則って建屋の強度設計が行われることがある。
この手法を採用した場合、
図3に示すように可燃性の流体が流れる配管42が配置されたパイプラックの下方の空間にSS/CR50を配置する条件下では、SS/CR50を構成する建屋に対しては、極めて高い耐爆性が必要とされる可能性が高い。この結果、SS/CR50の重量も増大し、当該SS/CR50を保持するために、架構30を構成する鉄骨材料も大径化して、架構30の材料コスト、輸送コストが上昇する要因となる。
【0043】
一方で、建設敷地内に多数の機器やこれらの機器を支持するラックを順次、設置していく従来のLNGプラントと比較して、本例のモジュールMは、各架構30における架構内機器6の集積度が高い。言い替えると、モジュールMは、限定された領域に可燃性の流体を取り扱う架構内機器6が集中的に配置されているといえる。
【0044】
そして、
図2に示すように、各モジュールMは隣り合う他のモジュールMとの間に隙間を空けて配置されている。即ち、地上に多数の機器が配置された従来のLNGプラントと異なり、モジュールMによって構成されるLNGプラントは、モジュールMの外に出てしまえば、前記隙間を介して退避がしやすい構造となっている。
さらに、LNGプラントのオペレータが常駐している中央制御室とは異なり、各SS/CR50は、点検時やメンテナンス実施時などを除いて、通常は人員が不在の建屋である。
【0045】
これらのことを考慮すると、LNGプラントにおける建屋の耐爆構造の設計手法(例えば既述のAPI752)に従い、人員の安全確保を行ったうえで、SS/CR50の強度設計を行うことが本例のモジュールMにおいては合理的と言える。
人員の安全確保については、火災などが発生した場合にSS/CR50内に人員が滞在していた場合には、当該SS/CR50内に留まるのではなく、速やかにモジュールM外に退避しやすい構造を採用し、そのうえでSS/CR50の保持する安全に関する機能を限定することが合理的である。
【0046】
この観点で
図2に示すように、各モジュールM内に配置されたSS/CR50には、架構30の側面に向けて開口するように、異なる位置に複数の出入口(図中には出入り口のドア52を記してある)が設けられている。このように、出入口を配置することにより、SS/CR50内に人員が滞在していた場合であっても、火災などが発生した場合には直ちにモジュールMの外部へ退避することができる。
【0047】
一方、上述のように、モジュールMの外部へ退避することが人員の安全確保の前提となっている場合、過剰な耐爆構造のSS/CR50を設けることは合理的ではない。
【0048】
架構内機器6の集積度が高く、人員が退避しやすいモジュールMの構造に着目し、リスクに応じた耐爆強度を採用することで、SS/CR50の過剰な重量化や、SS/CR50を保持する架構30の鉄骨材料の大径化も抑制することができる。
【0049】
また、
図4に示すように、本例のモジュールMに設けられたSS/CR50には、防爆構造の1つとして、SS/CR50の内圧を大気圧よりも高い圧力に保つための空気の取り込み配管531が接続されている。例えば取り込み配管531は、架構30の側面に沿って上方側へ向けて伸びるように設けられる。この取り込み配管531の末端部の空気の空気取り込み部532は、モジュールMの架構30内に配置されている可燃物の取り扱い機器よりも高い位置に配置されている。特にACHE41が設けられたモジュールM1においては、空気取り込み部532はACHE41の配置位置よりも高い位置に配置される。
【0050】
以上に説明した、架構30の内側にSS/CR50が設けられたモジュールMの建造工程について
図4を参照しながら説明する。
図4Aに示すように、モジュールMは、モジュールヤードと呼ばれる、LNGプラントの建設敷地とは異なる建造地にて建造される。一方、SS/CR50は、当該モジュールヤードとは異なる場所であって、電力供給機器や制御情報出力機器のメーカーの近くなどに設けられた、ショップと呼ばれる工場で組み立てられる場合がある。
【0051】
モジュールヤードにおいて、建造中モジュールM’は、下方側の階層から順に架構30を組み上げながら、各階層に架構内機器6を配置していく。このとき、架構30の最下層にSS/CR50が配置される場合には、ショップにおけるSS/CR50の組み立てが完了しないと、建造中モジュールM’の建造に着手できないようにも思える。
【0052】
しかしながら、SS/CR50の組み立ての完了を待っていると、モジュールMの建造期間が過度に長くなってしまうおそれがある。そこで、
図4Aに示す建造中モジュールM’においては、SS/CR50が配置される空間を残して建造中モジュールM’の建造を進める。この期間、ショップにおいては、架台501上に配置された状態のSS/CR50が並行して組み立てられていく。
【0053】
そして
図4Bに示すように、モジュールMの建造がほぼ完成すると、ショップにて組み立てられたSS/CR50をモジュールヤードへ搬送し、パイプラック下の配置領域にSS/CR50を挿入する。しかる後、例えば架台501と架構30とを連結することにより、モジュールM内にSS/CR50が設置された状態となる(
図4B)。
【0054】
ここで既述のように、LNGプラントの完成後には、SS/CR50内の電力供給機器と架構30内の電力消費機器とは給電線を介して接続され、またSS/CR50内の制御情報出力機器と架構30内の被制御機器のコントローラや検出部とは信号線を介して接続された状態となる。
このとき、既にSS/CR50が設置された状態のモジュールM内において、これら給電線や信号線の繋ぎ込みも完了させておいた方が、モジュールMを建設敷地に設置した後の工数を大幅に低減できる。
【0055】
そこで架構30内にSS/CR50を設置した後は、SS/CR50内に収容されている不図示の電力供給機器と、同じ架構30内に配置された電力消費機器とを給電線51を介して接続し、給電試験を行う。
図3中、給電線51は破線で示してある。
【0056】
ここでモジュールM内には、使用電圧が異なる複数種の電圧レベルの電力消費機器が配置されている場合がある。このとき、例えば1000V未満の中圧、低圧の電圧レベルの電力消費機器は、電力供給機器との接続作業や通電試験も比較的容易である。このため、モジュールMが建設敷地に設置される前の事前の接続作業、通電試験作業に適している。
一方で、1000V以上の高圧の電圧レベルの電力消費機器は、大型の接続治具や試験機器が必要となるため、モジュールヤード内での接続作業、通電試験作業には適していない場合もある。
【0057】
そこで、本例のモジュールMは、SS/CR50に電圧レベルが異なる複数種の電力供給機器が収容されている場合に、電圧レベルが1000V以上の電力消費機器は、当該電圧レベルに対応する前記電力供給機器と未接続の状態としてもよい。
図3に示すモジュールMの例では、大型のポンプ6aがこれに相当する。
一方、電圧レベルが1000V未満の前記電力消費機器については、当該電圧レベルに対応する電力供給機器と接続された状態となっている。
図3に示す例では、各ACHE41がこれに相当する。
【0058】
さらにモジュールヤードにおいては、SS/CR50に制御情報出力機器が収容されている場合に、これらの制御情報出力機器については、架構30内に収容された被制御機器と信号線を介して接続する接続作業、制御信号の送受信試験作業を行ってもよい。なお、
図3においては、制御情報出力機器、被制御機器、信号線の記載は省略してある。
【0059】
以上に説明した作業が完了した後、SS/CR50が設置されたモジュールMは、運搬船や輸送車を用いて建設敷地まで輸送される。次いで、前記敷地内に予め設置された基礎に対してモジュールMを接続し、架構30の下端部や、SS/CR50の基台部501の下端部を基礎に固定する。
【0060】
所定の位置にモジュールMを設置し、複数のモジュールM間やモジュールMの外部の機器との間での配管の繋ぎ込み、発電設備などから変電室である各SS/CR50への給電線の繋ぎ込みや、中央制御室と機器制御室である各SS/CR50との間の信号線の繋ぎ込みなどを行う。また、各モジュールM内において、1000V以上の高圧の電力消費機器と、当該電圧レベルに対応する電力供給機器との接続、給電試験が完了していない場合は、これらの作業も実施する。
これらの作業を実施することにより、LNGプラントを構成することができる。
【0061】
本実施の形態に係るモジュールMによれば以下の効果がある。本例のモジュールMは、架構30内に設けられ、電力供給機器または制御情報出力機器が収容されたSS/CR50をパイプラックの下方領域に配置している。パイプラック下方の空間を利用して前記建屋を配置することにより、モジュールMの設置面積の低減に資することができる。
【0062】
ここで、SS/CR50を配置する位置は、架構30の最下層に限定されない。架構30の上面(最上層)を除く架構30の内側であれば、2階層以上の高さ位置にSS/CR50を配置してもよい。
【0063】
また、SS/CR50が設けられた上述のモジュールMを利用して建設可能なプラントは、LNGプラントに限定されない。天然ガスからLPGや重質分である天然ガス液の分離・回収処理などを行う天然ガス処理プラントに対しても本技術は適用することができる。
【解決手段】天然ガスプラント用モジュールMは、前記天然ガスプラントの一部を構成する機器6群を収容した架構30と、架構30内に設けられ、電力消費機器に対して電力を供給する電力供給機器、または、制御信号を用いて被制御機器の動作制御を行うコントローラに対して、前記動作制御に係る情報を出力する制御情報出力機器の少なくとも一方を収容した建屋50と、を備え、前記建屋の配置の上方の領域は、前記天然ガスプラント内で取り扱われる流体が流れる配管群を前記架構に保持するパイプラックとなっている。