【実施例】
【0015】
[実施例の概要]
本発明に係る飛散防止装置および飛散防止方法は、建築物を最上階から下層階に向かって順次解体される方式に適用される飛散防止装置および飛散防止方法である。
図1、
図2は、本発明に係る飛散防止装置および飛散防止方法の実施例の概要を示している。
【0016】
図1、
図2において、符号1は解体される建築物を示す。建築物1には、その外壁の外側面を囲んで足場8が組まれている。足場8は、周知のとおり、建枠、足場板、連結ピン、筋交いなどからなる多数の足場ユニットを、建築物の大きさに合わせて横方向と縦方向に、互いに連結しながら組み立てられる。本実施例では、建築物1の最上階よりも高くなるように足場8が組まれている。
【0017】
図20にも示すように、建築物1の外壁101よりも内側に、防護材支持体3が適宜数立てられ、対をなす防護材支持体3間に防護材を設置するためのワイヤ4が張設されている。図示の例では、平面形状四角形の建築物1の互いに反対側の縁部に沿って偶数本の防護材支持体3が立てられている。
【0018】
互いに反対側にある隣接する2本の防護材支持体3が一対となって、互いに斜め向かいにある防護材支持体3間にワイヤ4が張設されている。したがって、対をなす防護材支持体3間の中央で2本のワイヤ4が交差しており、この交差部において別の防護材支持体3がワイヤ4を支持している。
【0019】
図20に示す例では、2本のワイヤ4を1対として5対のワイヤ4が張設されている。5対のワイヤ4にはそれぞれ
図21に示す防護材2が設置されている。ワイヤ4と防護材2との結合構造については後で説明する。各防護材2によって建築物1の最上階の上空が覆われる。防護材2で上空が覆われた最上階には、
図1に示すように、重機を導入して最上階の床100を解体し、さらには最上階の外壁101を解体する。
【0020】
防護材支持体3は、
図1、
図2、
図3などに示すように、建築物1の複数階層にまたがる長さを有していて、建築物1の床100に形成される開口10を上下に貫通して設置される。
図2、
図3に示す実施例では、防護材支持体3は5階層分の床100を貫通する長さに設定されている。
図2、
図3に示す例では屋上の床RFから30階、29階,28階の床の床30F、29F、28Fのそれぞれの開口10を防護材支持体3が貫通している。防護材支持体3の荷重は27階の床27Fに開けられている開口10を塞ぐ荷重受部材6で支持されている。
【0021】
[防護材支持体の構造]
防護材支持体3は、
図3乃至
図5などに示すように、支柱32と、支柱32の上に結合された鉄塔31を有してなる。防護材支持体3は必要に応じて上下移動でき、防護材支持体3の上下移動をガイドするガイドレール7を有している。
【0022】
支柱32は、
図6乃至
図13に示すように、正方形の端板323の各角遇部から立ち上がった4本の柱321を有する。各柱321は、例えば2mの長さを1単位として6単位の柱321を継ぎ足した構造になっている。より具体的には、1単位を構成する4本の柱321の上下両端に端板323が固着され、端板323どうしを接合し締結することにより支柱32が構成されている。
【0023】
支柱32を構成する4本の柱321は、補強あるいは実質的な一体化を図るために一定の間隔で隣り合う柱321同士が連結板322で連結されている。連結板322は垂直の姿勢で柱321同士を連結している。平面方向から見て4つの連結板322が正方形状に配置され、正方形の角隅部に柱321が位置している。
【0024】
図10、
図11、
図14乃至
図19に示すように、前記鉄塔31は支柱32の上端に結合されている。鉄塔31は8本の柱311を有する。8本の柱311は4本ずつ2群に分かれていて、各群に属する柱311はさらに2本が1対となり、1対の柱311同士が連結板312で連結されている。連結板312は垂直面をなしていて、1群をなす1対の柱311と他の1対の柱311の連結板312と、U型連結金具313の両端の垂直片とがボルトとナットで締結され、2対の柱311同士が一体化されている。
【0025】
図10などに示すように、それぞれ4本の柱311からなる2群の柱は、それぞれ対をなす2本の柱311が、前記支柱32の上端に結合されている。より具体的には、最上段の前記4本の柱321の上端の端板323の上には連結金具324が重ねられて端板323に締結され、連結金具324の角遇部に前記対をなす2本の柱311が載っている。連結金具324の両側縁部は垂直面をなす立ち上がり部325になっていて、この立ち上がり部325と立ち上がり部325とがボルトとナットで締結されている。
【0026】
このようにして、それぞれ4本の柱311からなる2群の柱は、2本の柱311が端板323および連結金具324の上に位置し、他の2本の柱311は平面方向から見て端板323および連結金具324の外側に位置している。
【0027】
鉄塔31を構成する柱311は、例えば4.2mの長さが1単位となっていて3単位の柱311を継ぎ足した構造になっている。
図16、
図17に示すように、2つの柱311の結合部には、横断面形状が円形の双方の柱311のほぼ半周に連結帯316が巻き付いている。連結帯316と柱311を貫いてピン317が打ち込まれ、2つの柱311が結合されている。
【0028】
2本1対の柱311は、適宜の間隔ごとに垂直面をなす連結板312によって結合されている。2本を1対として隣り合う2対の柱311の連結板312と、U型連結金具313の両端垂直片とがボルトとナットで締結され、隣り合う2対の柱311からなる1群の柱311が実質一体に結合されている。4本の柱311を1群とする2群の柱311は、逆U字型の連結金具318の両端垂直片が、各群の連結板312にボルトとナットなどで締結されることにより、前記2群の柱311が一体に結合されている。
【0029】
図3、
図4などに示すように、防護材支持体3は、建築物1の複数階層にまたがる長さを有している。図示の例では、5階層にまたがるのに十分な長さを有している。解体する建築物1の階層は5階層以上の高層の建築物を想定し、それに適した構成になっている。防護材支持体3は、建築物1の各階の床100に形成した開口10を上下に貫通して設置する。防護材支持体3の下端、すなわち支柱32の下端は、この下端が位置する階層の床100に形成されている開口10を塞ぐ荷重受部材6の上に載せられ、防護材支持体3にかかる荷重を荷重受部材6で支えている。
【0030】
支柱32の下端と荷重受部材6との間にはジャッキ33が介在している。ジャッキ33を介在させることにより、防護材支持体3全体の高さ、支柱32の高さなどを微調整することができる。
【0031】
防護材支持体3は、建築物1の解体工程に応じて上下方向に移動でき、この移動をガイドする前記ガイドレール7を有している。
図7乃至
図16などに示すように、防護材支持体3と平行にかつ防護材支持体3と一体にガイドレール7が取り付けられている。ガイドレール7は、例えば、鉄塔31の上端の1単位を残し、また、支柱32の下端の1単位を残した長さになっている。ガイドレール7は、鉄塔31と支柱32の両側に配置されている。各ガイドレール7と支柱32を構成する柱321との間には介在部材327が介在し、介在部材327は各ガイドレール7と各柱321との間隔を一定に保っている。
【0032】
[防護材支持体のガイド部材]
複数階層の床100を貫通する防護材支持体は、各床100の開口10の位置においてガイド部材5により上下方向の移動がガイドされる。
図8、
図9、
図12乃至
図15などにガイド部材5の構造を示している。ガイド部材5は、各階層の床100の開口10の近くに、2つのガイドレール7を個別にガイドするために2つずつ配置されている。
【0033】
ガイド部材5は、ガイドレール7の移動をガイドする態様とガイドレール7を移動不能にクランプするガイドクランプ51を主体に構成されている。ガイドクランプ51からはガイドレール7を両側から挟むようにして一対の爪52が伸び出ている。各爪52にはローラ53が回転可能に軸で支持されている。ガイドレール7は横断面形状が四角形で、この四角形の対角位置にローラ53が接するようにローラ53の外周にはV字状の周溝が形成されている。
【0034】
ガイドクランプ51は、前記開口10の両側において床100に固定された固定ブロック55にグリップ部材54を介して固定されている。ガイドクランプ51の設定によって、ローラ53が回転してガイドレール7の移動をガイドする態様と、ローラ53でガイドレール7を強固に挟み込みガイドレール7との相対移動をクランプする態様に切り替えることができる。固定ブロック55は左右方向に長い四角柱状の部材で、固定ブロック55の長さ方向に位置調整してガイドクランプ51を適切な位置に調整できる。
【0035】
防護材支持体3の固定態様をより安定に保持できるように、
図14、
図15などに示す一対の鉄塔固定金具314、3141を有している。1つの鉄塔固定金具314は、例えば、解体する建築物1の例えば最上階層の床100の2つの固定ブロック55で挟まれる位置に設置された一対の保持金具315にまたがって固定されている。鉄塔固定金具314はU溝状の金具で、一方の垂直片が4本の柱311に面している。
【0036】
もう1つの鉄塔固定金具3141もU溝状の金具で、一方の垂直片が前記4本の柱311を挟んで鉄塔固定金具314の垂直片に対向している。これら鉄塔固定金具314、3141の相対向する垂直片がボルトとナットで締結され、防護材支持体3が移動不能に拘束される。鉄塔固定金具314、3141を除去し、かつ、前記ガイドクランプ51によるクランプを解除すると、防護材支持体3を移動可能な態様にすることができる。
【0037】
[駆動装置]
防護材支持体3には、防護材支持体3自体の荷重や防護材2の荷重がかかった状態で上下移動させるための駆動装置が付加されている。駆動装置は、
図3乃至
図7などに示すようにウィンチ35を主体とし、ウィンチ35によって巻き上げられ、巻き戻されるワイヤ16を有してなる。ワイヤ16の先端は
図13などに示すように支柱32の適宜の高さ位置に設けられた逆U字型の吊り金具17に連結されている。
【0038】
ワイヤ16は、吊り金具17よりも上方にある滑車12によって折り返され、ウィンチ15に至っている。滑車12は、解体しようとする複数階層のうちの適宜の階層の床100を下面側で支えている梁102に保持金具328により回転可能に支持されている。図示の例では、同一レベルで支持されている2つの滑車12にまたがって水平に引き回されたワイヤ16の両端がそれぞれウィンチ15と吊り金具17に至っている。
【0039】
図6、
図7などに示すように、ウィンチ15は手動により回転操作するタイプのもので、手動操作しやすいように、適宜の台座の上に設置している。ウィンチ15によってワイヤ16を巻き上げれば防護材支持体3を上昇させることができ、ワイヤ16を巻き戻せば防護材支持体3を降下させることができる。初めに説明した複数本のワイヤごとにウィンチ15が設けられ、各ウィンチを同期的に操作して防護材支持体3を同期的に上下移動させる。ウィンチ15は電気的な制御によって同期的に作動する電動式あるいはその他の形式のウィンチであってもよい。
【0040】
[防護材の設置構造]
図18乃至
図23などに防護材2の設置構造を示す。すでに説明したように、建築物1の相対向する両側縁部に設置されている複数の防護材支持体3のうち一側の2本とこれに対向する他側の2本を一対として、合計4本の防護材支持体3に2本のワイヤ4が互いに交差して張設されている。この2本のワイヤ4によって防護材2が設置されている。2本のワイヤ4が交差する位置にも防護材支持体3が設置され、
図23に示すように、防護材支持体3の上端から上方に延びた支持棒319で2本のワイヤ4を交差位置で支持している。
【0041】
防護材2は、建築物1の解体時に瓦礫、金属片などの解体資材や塵埃が飛散するのを阻止するのに十分な強度と密度を有している。本実施例においては、防護材2として防護ネットを使用している。
図2、
図21などに示すように、建築物1の両側に複数の防護材支持体3が対向して設置され、片側2本、両側で4本の防護材支持体3で支持されている前記2本のワイヤで1つの防護材2を支持している。このような支持構造で複数の防護材2を支持し、複数の防護材2で建築物1の最上階を覆っている。隣り合う防護材2の両側縁部は重なり合い、建築物1の最上階の上空を隙間なく覆っている。
【0042】
図18に示すように、防護材2は4辺がワイヤやロープなどで縁取りされ、それぞれの角遇部から延びたワイヤなどが結合されたリング42を一つのワイヤ4が貫いている。各ワイヤ4は防護材支持体3の上端、したがって鉄塔31の上端側部にワイヤ4の数に対応して設置されたU字状の吊り金具41に個別に掛けられている。
【0043】
図18に示す例では4つの吊り金具41が防護材支持体3の上端部に吊り金具設置部材40を介して設置されている。吊り金具設置部材40は、ボルト402によって2本の柱311に固定されている。吊り金具設置部材40は吊り金具41に対応した数の吊り金具支持板401を垂直態様で有し、各吊り金具支持板401で吊り金具41を保持している。
【0044】
各ワイヤ4は、吊り金具41の位置でほぼ水平方向からほぼ直角に下方に曲がり、水平方向の部分で防護材2を支持し、下方に曲がった部分は
図24などに示すレバーブロック(登録商標)11により防護材支持体3に連結されている。レバーブロック11は人が床100の上に立って操作するのに適した高さで防護材支持体3に設置されている。吊り金具41の代わりに滑車を使用してもよい。
【0045】
レバーブロック11は、周知のとおり、レバー操作でチェーンを引き寄せることができる道具である。レバーブロック11でワイヤ4を引き寄せることによりワイヤ4の張力、したがって防護材2の張力を調整することができる。レバーブロック11はブレーキ機構を内蔵し、ワイヤ4の張力を維持することができる。また、ブレーキの解除によりワイヤ4の張力を緩めることもできる。
【0046】
ワイヤ4の張力、したがって防護材2の張力を調整することにより、防護材2と解体中の建築物1の最上階との間には、建築物1の最上階で重機などを使う解体作業に支障のない空間を確保する。そのために、防護材支持体3の上端が建築物1の最上階よりも十分な高さになるように防護材支持体3を設置する。
【0047】
[飛散防止方法]
以上説明した飛散防止装置による飛散防止方法を説明する。解体しようとする建築物1の各階の床100に、相対向する外壁101の内側面に隣接してあらかじめ開口10を垂直方向の仮想線上に形成する。2本ずつ相対向する4本の防護材支持体3を対角線状につなぐ2本のワイヤが交差する位置の下方においても、各階の床100に開口10を形成する。これらの開口10を貫通させて防護材支持体3を設置する。
【0048】
図2乃至
図4に示すように、防護材支持体3は5階層分に達するのに十分な長さになっている。建築物1の解体は最上階から順に行うために、最上階の上空を防護材2で覆うことができるように防護材支持体3を設置する。防護材支持体3は支柱32と鉄塔31の部分に分かれていて、所定の位置に設置して互いに結合する。
図5は防護材支持体3の設置工程を順に示す。
【0049】
図示の建築物1の例は30階建の建物で、
図5(a)に示すように、27階の床27Fに形成した開口10を荷重受部材6で塞ぐ。次に、防護材支持体3を構成する支柱32を30階の床30Fから28階の床28Fまでの開口10に通し、支柱32の下端を、ジャッキ33を介して27階の前記荷重受部材6に載せる。
【0050】
支柱32は、
図8、
図9などについて説明したように2本のガイドレール7と実質一体である。実質一体の支柱32とガイドレール7は、例えばクレーンによって吊り上げかつ吊り下げながら前記各開口10に挿通して設置することができる。ガイドレール7は、最上階の床RFから28階の床28F至る長さになっている。最上階から28階の各開口10の周辺に設置したガイド部材5によってガイドレール7の上下移動をガイドし、また、移動不能にクランプすることができる。
【0051】
次に、
図5(b)に示すように、鉄塔31をクレーンで吊り下げ、一対のガイドレールの間に挿通する。鉄塔31の下端と支柱32の上端は
図10について説明した構造によって結合される。27階には荷重受部材6のそばにウィンチ15を設置する。29階の床29Fを支える梁102にはウィンチ15の上方において滑車12を設置する。ウィンチ15から延びたワイヤ16を滑車12に掛けて下方に折り返し、
図13(a)などに示すように、支柱32に取り付けた吊り金具17にワイヤ16の先端を繋ぐ。
図5に示す例では28階部分の支柱32にワイヤ16がつながれている。
【0052】
このようにしてすべての防護材支持体3を設置し、各防護材支持体3によって防護材2を支持するためのワイヤ4を張設する。ワイヤ4の張設構造は既に説明した。
図1、
図20などはワイヤ4を張設した様子を示している。張設したワイヤ4によって防護材2を設置する。
図18はワイヤ4による防護材2の設置構造を示し、
図21は複数の防護材2を設置して建築物1の最上階の上空を防護材2で覆った様子を示す。
【0053】
建築物1の最上階の上空を防護材2で覆った状態で最上階の床を解体し、外壁があれば外壁も解体する。最上階から順に解体を行うごとに各防護材支持体3を防護材2とともに降下させ、その段階での最上階の上空を防護材2で覆って、解体に伴う物の飛散を防止する。
【0054】
図2は、屋上階の床RFの解体からその下の30階の床30Fの解体に移行するために防護材支持体3を防護材2とともに降下させたイメージを示す。実際には、すべての防護材支持体3を同期させながら降下させ、解体すべき次の階層の上空を防護材2で覆う。
【0055】
図3、
図4は、各階層の解体が進むごとに防護材支持体3を降下させる様子を示す。
図3(a)、
図4(a)は屋上階の床RFなどを解体するときの防護材支持体3の態様を示しており、前述の通り、防護材支持体3の上端は床RFから十分に高い位置にある。防護材支持体3で支持されている防護材2は床RFから十分高い上空にあり、床RF上に重機を導入して解体作業を行うことができる。
【0056】
解体作業を行うときは、各防護材支持体3が安定に保持されるように、すべてのガイド部材5がそのローラ53によってガイドレール7を強固に挟持する。また、
図14に示す鉄塔固定金具314によって鉄塔31を移動不能に固定する。屋上階の床RFを解体する工程の最終段階では、屋上階のガイド部材5を除去し、ガイド部材5を配置していた床部分も解体する。
【0057】
床RFなどの解体が終わると、30階の床30Fを解体するために各防護材支持体3を1階層分降下させる。防護材支持体3を降下させるには、まず、前記ガイド部材5によるガイドレール7の挟持と鉄塔固定金具314による鉄塔31の固定を解除する。そして、駆動装置であるウィンチ15を稼働させて防護材支持体3を引き上げ、27階の床27Fにある荷重受部材6から防護材支持体3を浮かせる。この状態で荷重受部材6を除去し、開口10を開放して防護材支持体3の降下を可能にする。
【0058】
防護材2とともに防護材支持体3を降下するとき、必要に応じてレバーブロック11の操作によってワイヤ4の張力を緩める。防護材支持体3を降下させた後はレバーブロック11の操作によってワイヤ4に張力を加える。
【0059】
次に、26階の床26Fの開口10を荷重受部材6で塞ぎ、ウィンチ15を操作してワイヤ16を巻き戻し、
図3(b)、
図4(b)に示すように、防護材支持体3を降下させてその荷重を荷重受部材6で受け止める。防護材支持体3の降下とともに防護材2も降下し、防護材2が30階の上空を覆う。ガイド部材5のローラ53によるガイドレール7の挟持、鉄塔固定金具314による鉄塔31の固定を行い、30階の床30Fおよび外壁などの解体に備える。
【0060】
30階の解体も屋上階の解体と同様に行い、29階の解体に備えて、
図3(c)、
図4(c)に示すように、防護材支持体3を1階層分降下させる。このときの防護材支持体3の降下手順も前述の通りである。すなわち、ウィンチ15による防護材支持体3の引き上げ、26階の荷重受部材6の除去、25階の開口10への荷重受部材6の設置、ウィンチ15による防護材支持体3の1階層分の降下、という手順になる。防護材支持体3の降下後は、前述通り防護材支持体3固定し、29階の解体に備える。
【0061】
29階の床29Fを支える梁102には滑車12が設置されているため、床29Fを解体する前に滑車12を取り外す。床29Fを解体し、28階の床28Fなどを解体するために、
図3(d)に示すように、防護材支持体3が貫通している最下段の床である26階の床26Fを支える梁102に前記滑車12を移設する。また、ウィンチ15も下層階に移設する。
図3(c)、(d)に示す例では、ウィンチ15を27階の床27Fから24階の床24Fに移設している。
【0062】
このようにして移設したウィンチ15、滑車12およびワイヤ16によって防護材支持体3を引き上げ、25階の荷重受部材6の除去、24階の開口10への荷重受部材6の設置を行う。次に、ウィンチ15により防護材支持体3を1階層分降下させ、24階の荷重受部材6で防護材支持体3の荷重を支える。
【0063】
その後は、1階層分の解体を行うごとに防護材支持体3とともに防護材2を1階層分ずつ降下させ、解体する階層の上空を防護材2で覆う。3階層分の解体が完了するごとに、ウィンチ15、滑車12を前述のように移設し、建築物1の解体を継続し、最終的に建築物1の全てを解体する。建築物1の各階層を解体することによって生じる瓦礫や解体資材などの飛散が防護材2で防止され、解体中の建築物1の周囲の安全が確保される。
【0064】
[実施例の効果]
本発明に係る飛散防止装置および飛散防止方法の実施例によれば、建築物1の最上階から順次解体するごとに防護材支持体3を防護材2とともに降下させることができる。防護材支持体3は、建築物1の複数階層にまたがる長さを有していて、建築物1の全階層にまたがる長さよりも短くすることができるため、長さが短く、自重が軽く、構造を簡単にすることができる。
【0065】
防護材支持体3を上下動させる駆動装置は、防護材支持体3の自重が軽いため、防護材支持体3を駆動するのに必要な力量が小さいものでよく、コストを低減できる。また、駆動装置は、ウィンチ15とワイヤ16と滑車12で構成でき、比較的簡単であるため、この点でもコストを低減できる。
【0066】
ウィンチ15とワイヤ16と滑車12を有してなる駆動装置は、複数階層分解体するごとに移設するようにすることができ、1階層分の解体ごとに移設する必要はない。したがって、駆動装置の移設に要する労力を軽減できる。
【0067】
防護材支持体3は複数階層分の床の開口10を貫通して設置し、各階層の開口10の周辺に設置したガイド部材5で防護材支持体3の上下移動をガイドするため、防護材支持体3の上下移動を安定にガイドできる。また、ガイド部材5を簡単な構成にすることができる。
【0068】
[変形例]
本発明に係る飛散防止装置および飛散防止方法は、図示した実施例の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に記載した技術的思想を逸脱しない範囲で設計変更可能である。以下に、変形例を記す。
【0069】
駆動装置の駆動方式は任意であり、実施例のように手動による操作方式でもよいし、電動力、その他の機械による駆動方式でもよい。電動力による駆動方式を用いれば、すべての防護材支持体の移動量を検知しながら、すべての防護材支持体を同期して移動させることができる。
【0070】
実施例では、防護材支持体3が支柱32と鉄塔31に分かれていて、これらが上下に連結された形態になっていたが、支柱32と鉄塔31に分けることは必須ではなく、全体が支柱の部分のみまたは鉄塔の部分のみであってもよい。また、支柱32と鉄塔31自体の構成も図示の実施例の構成に限定されるものではない。
【0071】
実施例では、建築物1の相対向する両側縁部に設置されているそれぞれ2本の防護材支持体3を一対として、合計4本の防護材支持体3に2本のワイヤ4を互いに交差して張設し、この2本のワイヤ4によって防護材2を保持している。2本のワイヤ4が交差する位置にも防護材支持体3を設置して2本のワイヤ4を交差で支持している。しかし、対をなす前記2本の防護材支持体3相互の距離などの条件によっては、必ずしも前記2本のワイヤを交差させなくてもよく、前記2本の防護材支持体3相互の中間に別の防護材支持体3を設けなくてもよい場合がある。
【0072】
建築物1の最上階の上空を覆う防護材2のみでなく、防護材2に続いて最上階の周辺部を囲う別の防護材を設けてもよい。この別の防護材は、防護材2を延長したものであってもよいし、防護材2とは別個の防護材であってもよい。