特許第6887152号(P6887152)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6887152
(24)【登録日】2021年5月20日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】コントローラ
(51)【国際特許分類】
   A61G 13/02 20060101AFI20210603BHJP
   H01H 13/66 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   A61G13/02
   H01H13/66
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-30705(P2017-30705)
(22)【出願日】2017年2月22日
(65)【公開番号】特開2018-134228(P2018-134228A)
(43)【公開日】2018年8月30日
【審査請求日】2020年1月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108672
【氏名又は名称】タカラベルモント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】小藤 智宏
(72)【発明者】
【氏名】趙 邦来
【審査官】 西堀 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−081587(JP,A)
【文献】 特開2009−135059(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0118718(US,A1)
【文献】 特開2008−218136(JP,A)
【文献】 特開2010−157362(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第101174511(CN,A)
【文献】 特開2003−233884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 13/02
H01H 13/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押圧操作が可能な複数の押圧部を有する透光性のカバーと、
前記カバーに隣接して設けられ、静電容量の変化により前記押圧操作を検出する静電シートと、
前記カバーとは反対側で前記静電シートに隣接して設けられ、前記押圧操作に対応した荷重が前記静電シートを介して伝達されることにより、電気接点を導通させて前記押圧操作を検出する複数のメカニカルスイッチと、
前記押圧操作を検出して前記静電シートから出力された第1検出信号および前記メカニカルスイッチから出力された第2検出信号に基づいて、操作対象物に作動信号を出力する出力部と、
前記静電シートおよび前記メカニカルスイッチが検出する前記押圧操作の状態を報知する報知部と、を備え、
前記静電シートは透光性の導電膜で構成されており、
前記報知部は、夫々の前記メカニカルスイッチの内部に各別に収容され、前記押圧操作に対応して発光する発光部を有しており、
前記発光部の発光状態が前記導電膜を介して前記押圧部の外面から視認可能に構成されており、
前記押圧操作により前記第1検出信号と前記第2検出信号とが共に検出されたときに、前記出力部は前記作動信号を出力し、
前記報知部は、前記第1検出信号が検出されておらず、且つ前記第2検出信号が検出された状態が所定時間継続したとき、全ての前記発光部を点滅させて前記メカニカルスイッチが故障であることを報知するコントローラ。
【請求項2】
押圧操作が可能な複数の押圧部を有する透光性のカバーと、
前記カバーに隣接して設けられ、静電容量の変化により前記押圧操作を検出する静電シートと、
前記カバーとは反対側で前記静電シートに隣接して設けられ、前記押圧操作に対応した荷重が前記静電シートを介して伝達されることにより、電気接点を導通させて前記押圧操作を検出する複数のメカニカルスイッチと、
前記押圧操作を検出して前記静電シートから出力された第1検出信号および前記メカニカルスイッチから出力された第2検出信号に基づいて、操作対象物に作動信号を出力する出力部と、
前記静電シートおよび前記メカニカルスイッチが検出する前記押圧操作の状態を報知する報知部と、を備え、
前記静電シートは透光性の導電膜で構成されており、
前記報知部は、夫々の前記メカニカルスイッチの内部に各別に収容され、前記押圧操作に対応して発光する発光部を有しており、
前記発光部の発光状態が前記導電膜を介して前記押圧部の外面から視認可能に構成されており、
前記押圧操作により前記第1検出信号と前記第2検出信号とが共に検出されたときに、前記出力部は前記作動信号を出力し、
前記報知部は、起動時に前記第1検出信号が検出されたとき、全ての前記発光部を点灯または点滅させて操作不可能であることを報知するコントローラ。
【請求項3】
前記発光部が点灯または点滅し始めた後、前記第1検出信号が所定時間継続して検出されたとき、前記静電シートが故障であると判断する請求項2に記載のコントローラ。
【請求項4】
前記発光部が点灯または点滅し始めた後、前記第1検出信号が前記所定時間内に検出されなくなると、前記発光部を消灯して前記押圧部の押圧操作を可能にする請求項2または3に記載のコントローラ。
【請求項5】
複数の前記押圧部の1つは、その他の前記押圧部を押圧操作可能状態に設定するスイッチとして設けられており、
前記スイッチの前記押圧操作により当該スイッチの前記第1検出信号と前記第2検出信号とが共に検出されたときに、押圧操作可能状態となったその他の前記押圧部に対応する発光部が点灯する請求項1から4のいずれか一項に記載のコントローラ。
【請求項6】
前記操作対象物は、医療機器である請求項1からのいずれか一項に記載のコントローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術台等の医療機器の作動を指示するコントローラに関する。
【背景技術】
【0002】
一般外科、心臓血管外科、脳神経外科等の手術に用いられる外科用手術台が広く普及している。この手術台は、手術用途に応じた高さ調節機能や患者の姿勢変更機能、さらには術者の足元確保のためのスライド機能等が付与されている。従来、このような様々な機能の作動を一元的に制御できるハンディタイプのコントローラが知られている(例えば、特許文献1−3参照)。
【0003】
特許文献1のコントローラは、タッチパネルが設けられており、このタッチパネルは複数の操作ボタン(高さ調節、スライド、横転位等)を含む機能選択画面と、操作ボタンを押下することで画面が切り替わって機能ごとに操作可能な操作ボタンを含む操作画面とを備えている。
【0004】
特許文献2のコントローラは、複数の機能(高さ調節、縦転位、横転位等)ごとの操作ボタンが一覧で表示されており、上部に手術台の模型が固定されている。操作ボタンを押下することで、模型は、実際の手術台の作動と同様の作動が実行されるので、操作性が向上すると記載されている。
【0005】
特許文献3のコントローラは、複数の機能(高さ調節、背板調節等)ごとの操作ボタンが一覧で表示されており、アンドゥボタンやリドゥボタンをさらに備えている。アンドゥボタンを押下することで手術台が前の姿勢に戻され、リドゥボタンを押下することで手術台が元の姿勢に復帰される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2001−522648号公報
【特許文献2】特開昭59−222149号公報
【特許文献3】特開2014−204974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のコントローラは、術者等の使用者の指先が意図せず操作ボタンに触れてしまって手術台が誤作動するときの安全対策が講じられていない。例えば、特許文献1のタッチパネルを静電容量式で構成した場合、使用者の指先が触れるだけで操作ボタンが反応するため、誤作動対策が重要である。
【0008】
一方、例えば特許文献2〜3の操作ボタンをメカニカルスイッチで構成した場合、押下されたスイッチが筺体に引っ掛かって復元しない故障の検出が重要となるが、従来のコントローラでは故障の検出について考慮されていない。特に、医療機器の作動を制御するコントローラにおいては、誤作動防止の対策や故障検出の対策が望まれている。
【0009】
そこで、本発明は、操作性を担保しながら操作対象物の誤作動を確実に防止できるコントローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るコントローラの特徴構成は、押圧操作が可能な複数の押圧部を有する透光性のカバーと、前記カバーに隣接して設けられ、静電容量の変化により前記押圧操作を検出する静電シートと、前記カバーとは反対側で前記静電シートに隣接して設けられ、前記押圧操作に対応した荷重が前記静電シートを介して伝達されることにより、電気接点を導通させて前記押圧操作を検出する複数のメカニカルスイッチと、前記押圧操作を検出して前記静電シートから出力された第1検出信号および前記メカニカルスイッチから出力された第2検出信号に基づいて、操作対象物に作動信号を出力する出力部と、前記静電シートおよび前記メカニカルスイッチが検出する前記押圧操作の状態を報知する報知部と、を備え、前記静電シートは透光性の導電膜で構成されており、前記報知部は、夫々の前記メカニカルスイッチの内部に各別に収容され、前記押圧操作に対応して発光する発光部を有しており、前記発光部の発光状態が前記導電膜を介して前記押圧部の外面から視認可能に構成されており、前記押圧操作により前記第1検出信号と前記第2検出信号とが共に検出されたときに、前記出力部は前記作動信号を出力し、前記報知部は、前記第1検出信号が検出されておらず、且つ前記第2検出信号が検出された状態が所定時間継続したとき、全ての前記発光部を点滅させて前記メカニカルスイッチが故障であることを報知する点にある。
【0011】
本構成では、押圧部を押圧操作すると、押圧部からの荷重が静電シートを介してメカニカルスイッチに伝達されるので、静電シートの静電容量が変化すると共にメカニカルスイッチが押下されて電気接点が導通する。このとき、静電シートの第1検出信号とメカニカルスイッチの第2検出信号とが共に検出されて、出力部は操作対象物の作動信号を出力する。つまり、一つの押圧部を押圧操作するだけで静電シートおよびメカニカルスイッチのオン状態を作り出すことができる。また、本構成においては、例えば使用者の指先が軽く押圧部に触れて静電シートの第1検出信号が検出されても、メカニカルスイッチの第2検出信号が検出されないので、作動信号が出力されない。その結果、使用者が意図せず押圧部に触れてしまって操作対象物が誤作動するといった不都合を解消することができる。
【0012】
一方、もし押圧操作後にメカニカルスイッチが筺体に引っ掛かって復元しない故障状態になった場合でも、使用者の指先が故障状態になったメカニカルスイッチを押圧する押圧部に触れていない限り静電シートの第1検出信号が検出されないので、作動信号が出力されない。その結果、メカニカルスイッチの故障も検出することができる。
【0013】
また、メカニカルスイッチは、カバーとは反対側で静電シートに隣接して設けられ、押圧部からの荷重が静電シートを介して伝達されるので、メカニカルスイッチは静電シートから露出していない。このため、メカニカルスイッチの一部を静電シートから露出させている場合に比べて防水性能が高く、あらゆる医療現場で使用できる。しかも、使用者の指先で押圧部を押圧すると、押圧部の背面が最初に静電シートに接触するので、押圧部の背面が最初にメカニカルスイッチに接触する場合に比べて、指先と静電シートとの間の静電容量の変化が確実に検出され、誤検出を防止できる。
【0014】
このように、操作性を担保しながら操作対象物の誤作動を確実に防止できるコントローラを提供できた。
【0015】
【0016】
また、本構成のように、押圧部を外部から視認可能に発光させることで、例えば内視鏡下の手術等のように手術室の照明を落とした場合でもコントローラを操作することができる。しかも、メカニカルスイッチに発光部を内蔵し、静電シートを透光性の導電膜で構成するだけでよいので、製造コストを低減することができる。さらに、静電シートやメカニカルスイッチが正常状態であるか故障状態であるかによって押圧部の発光状態を変更すれば、使用者にコントローラの状態を確実に認識させることができる。
【0017】
【0018】
また、本構成によれば、静電シートの第1検出信号とメカニカルスイッチの第2検出信号とを検出するだけで、メカニカルスイッチが筺体に引っ掛かって復元しない故障状態であることが全ての発光部を点滅させて報知されるので、故障検出手法が簡便である。
【0019】
本発明に係るコントローラの特徴構成は、押圧操作が可能な複数の押圧部を有する透光性のカバーと、前記カバーに隣接して設けられ、静電容量の変化により前記押圧操作を検出する静電シートと、前記カバーとは反対側で前記静電シートに隣接して設けられ、前記押圧操作に対応した荷重が前記静電シートを介して伝達されることにより、電気接点を導通させて前記押圧操作を検出する複数のメカニカルスイッチと、前記押圧操作を検出して前記静電シートから出力された第1検出信号および前記メカニカルスイッチから出力された第2検出信号に基づいて、操作対象物に作動信号を出力する出力部と、前記静電シートおよび前記メカニカルスイッチが検出する前記押圧操作の状態を報知する報知部と、を備え、前記静電シートは透光性の導電膜で構成されており、前記報知部は、夫々の前記メカニカルスイッチの内部に各別に収容され、前記押圧操作に対応して発光する発光部を有しており、前記発光部の発光状態が前記導電膜を介して前記押圧部の外面から視認可能に構成されており、前記押圧操作により前記第1検出信号と前記第2検出信号とが共に検出されたときに、前記出力部は前記作動信号を出力し、前記報知部は、起動時に前記第1検出信号が検出されたとき、全ての前記発光部を点灯または点滅させて操作不可能であることを報知する点にある。
【0020】
本構成のように起動時に静電シートの第1検出信号を確認すれば、押圧部を押下していないにも関わらず静電シートが反応し続ける故障状態であることを検出し、全ての前記発光部を点灯または点滅させて操作不可能であることを報知することができる。しかも、この検出は起動時のみなので、通常操作時に影響を与えることなく操作性を損なわない。
【0021】
他の特徴構成は、前記発光部が点灯または点滅し始めた後、前記第1検出信号が所定時間継続して検出されたとき、前記静電シートが故障であると判断する点にある。
他の特徴構成は、前記発光部が点灯または点滅し始めた後、前記第1検出信号が前記所定時間内に検出されなくなると、前記発光部を消灯して前記押圧部の押圧操作を可能にする点にある。
他の特徴構成は、複数の前記押圧部の1つは、その他の前記押圧部を押圧操作可能状態に設定するスイッチとして設けられており、前記スイッチの前記押圧操作により当該スイッチの前記第1検出信号と前記第2検出信号とが共に検出されたときに、押圧操作可能状態となったその他の前記押圧部に対応する発光部が点灯する点にある。
他の特徴構成は、前記操作対象物は、医療機器である点にある。
【0022】
上述したコントローラは、操作性を担保しながら誤作動対策や故障対策が万全であるため、本構成のように手術台等の医療機器を操作するコントローラとして適している。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】手術台の概略斜視図である。
図2】操作ボタンの概略断面図である。
図3】コントローラのブロック図である。
図4】コントローラの報知形態を示すフローチャートである。
図5】起動時に操作不可状態にあるコントローラの正面図である。
図6】操作可能状態を示すコントローラの正面図である。
図7】操作実行状態であるコントローラの正面図である。
図8】操作時に操作不可状態であるコントローラの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明に係るコントローラの実施形態について、図面に基づいて説明する。本実施形態では、コントローラの一例として、手術台Yの作動を指示するコントローラXとして説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0025】
図1に示すように、本実施形態におけるコントローラXは、手術台Yの作動を指示する。手術台Yは、患者が横たわる台部11と、台部11を支持する脚部12と、脚部12が接続される台座13とを備えている。また、台座13には、手術台Yの配置を変更できるようにキャスター14が固定されている。
【0026】
台部11は、脚部12に対して相対移動可能に構成されており、更に、長手方向の中心軸Ka及び脚部12の延在方向に対して垂直な軸Kb(長手方向の中間よりも紙面左寄りの軸)を境界として背板11aと脚板11bとが独立して移動可能に構成されている。具体的には、台部11は、長手方向の中心軸Kaを基準として、スライド方向y1および横転位方向y2に移動可能であり、長手方向の中心軸Kaに対して垂直な軸Kbを基準として、縦転位方向y3,C字状の屈曲方向y4(ジャックナイフポジション),および背板11aの屈折方向y5に移動可能である。また、台部11は、高さ方向y6にも移動可能に構成されている。なお、本実施形態では台部11の脚板11bを屈折,開脚方向(砕石位)に移動可能に構成しているが、以下においては説明を省略する。
【0027】
コントローラXは、筺体15の表面に、複数の操作ボタンA〜I(押圧部)が設けられている。操作ボタンAは、キャスター14の移動,固定を切換えるスイッチである。操作ボタンB1,B2は、手術台Yの短手方向の軸Kbを基準としたC字状の屈曲方向y4の移動量を調節するスイッチである。操作ボタンC1,C2は、手術台Yの長手方向の中心軸Kaを基準としたスライド方向y1の移動量を調節するスイッチである。
【0028】
操作ボタンD1,D2は、手術台Yの短手方向の軸Kbを基準とした背板11aの屈折方向y5の移動量を調節するスイッチである。操作ボタンE1,E2は、手術台Yの短手方向の軸Kbを基準とした縦転位方向y3の移動量を調節するスイッチである。操作ボタンF1,F2は、手術台Yの長手方向の中心軸Kaを基準とした横転位方向y2の移動量を調節するスイッチである。操作ボタンG1,G2は、台部11の高さ方向y6の移動量を調節するスイッチである。
【0029】
操作ボタンHは、電源投入時に押下して、他の操作ボタンA〜G,Iを有効状態(操作可能状態)に設定するスイッチ(以降、「Eスイッチ」と言う。)である。操作ボタンIは、台部11を元の水平状態に復帰させるスイッチである。
【0030】
図2に示すように、コントローラXは、透光性のカバー21と、カバー21に透明接着層22を介して隣接するタッチセンサ23(静電シートの一例)と、タッチセンサ23に隣接するタクトスイッチ24(メカニカルスイッチの一例)と、基板26と、が樹脂製の筺体15に固定されて構成されている。なお、透明接着層22は、透光性を有する接着剤であれば特に限定されず、例えば半透明で構成しても良い。
【0031】
カバー21は、透明や半透明等の透光性のある樹脂シート等で構成されており、上述した複数の操作ボタンA〜Iに対応する複数の押圧部20が表面より外側に湾曲して形成されている。このカバー21の押圧部20の背面には、各操作ボタンA〜Iの機能を説明する模式図が印字されている(図1参照)。タッチセンサ23は、カバー21および筺体15に対して透明接着層22で接着されており、押圧部20の押圧操作により静電容量が変化する静電容量型のセンサである。このタッチセンサ23は、樹脂等で構成される透明絶縁フィルム23aと、複数の電極パターンが配置されたITO(酸化インジウムスズ)等で構成される透明電極層23bと、PET等の樹脂で構成され、透明電極層23bを支持する透明基材フィルム23cと、を有している。なお、透明絶縁フィルム23a,透明電極層23b,および透明基材フィルム23cは、透光性を有していれば特に限定されず、例えば半透明であったり、着色されたりしていても良い。
【0032】
タクトスイッチ24は、タッチセンサ23を基準としてカバー21とは反対側でタッチセンサ23に隣接して設けられており、夫々の押圧部20の押圧操作に対応して対向する電気接点を接触させて導通させるモーメンタリ動作スイッチである。このタクトスイッチ24は、押圧部20からの荷重がタッチセンサ23を介して伝達されることにより、電気接点を導通させて押圧部20の押圧操作を検出する。タクトスイッチ24の先端部はタッチセンサ23を貫通して配置されておらず、タクトスイッチ24の先端部が透明基材フィルム23cに接触している。
【0033】
また、夫々のタクトスイッチ24の内部には、夫々の押圧部20の押圧操作に対応して各別に発光する発光部25(報知部の一例)が収容されている。本実施形態における発光部25はLEDで構成されている。この発光部25の発光状態は、透明接着層22を含む透光性を有するタッチセンサ23とカバー21とで、押圧部20が外面から視認可能に構成されている。本実施形態では、押圧部20の背面に印字された各操作ボタンA〜Iの機能を説明する模式図を外形線で表現しており、外形線の内側で発光状態が視認できるように構成されている(図1参照)。なお、メカニカルスイッチはタクトスイッチ24に限定されず、マイクロスイッチ等で構成しても良いし、発光部25を白熱電球等で構成しても良く特に限定されない。
【0034】
基板26の表面には、押圧部20の押圧操作を検出して出力されるタッチセンサ23およびタクトスイッチ24の検出信号に基づいて手術台Yに作動信号を出力すると共に発光部25の発光状態を制御する電子回路が配置されている。
【0035】
このように、押圧部20からの荷重がタッチセンサ23を介してタクトスイッチ24に伝達されるので、タクトスイッチ24を露出させている場合に比べて防水性能が高く、あらゆる医療現場で使用できる。しかも、例えば使用者の指先で押圧部20を押圧すると、押圧部20の背面が最初にタッチセンサ23に接触するので、押圧部20の背面が最初にタクトスイッチ24に接触する場合に比べて、指先とタッチセンサ23との間の静電容量の変化が確実に検出され、誤検出を防止できる。また、押圧部20を外部から視認可能に発光させることで、例えば内視鏡下の手術等のように手術室の照明を落とした場合でもコントローラXを操作することができる。
【0036】
図3は、コントローラXに備えられている機能部を表す機能ブロック図である。本実施形態における各機能部は、各種処理を実行するプロセッサやメモリを中核としてハードウェア又はソフトウェア或いはその両方で構築されている。
【0037】
コントローラXは、押圧部20の押圧操作を検出してタッチセンサ23の第1検出信号やタクトスイッチ24の第2検出信号を発生させる検出部Pと、検出部Pからの検出信号の伝達を受けてコントローラXや手術台Yの作動を制御する制御部Qとを備えている。
【0038】
検出部Pは、押圧部20に使用者の指先が触れた(押圧部20が押圧操作された)とき、タッチセンサ23の静電容量が変化することで発生するタッチセンサ23の第1検出信号を制御部Qに出力する。また、検出部Pは、押圧部20が押下された(押圧部20が押圧操作された)とき、タクトスイッチ24に荷重が印加されて沈み込むことにより電気接点が導通して発生するタクトスイッチ24の第2検出信号を制御部Qに出力する。
【0039】
制御部Qは、検出部Pからの検出信号が伝達される判定部27と、判定部27からの判定信号が伝達される報知部28と、判定部27からの判定信号が伝達される出力部29と、を有している。
【0040】
判定部27は、第1検出信号および第2検出信号に基づいて、タッチセンサ23およびタクトスイッチ24のオン,オフ状態を判定して、報知部28および出力部29に判定結果を伝達する。報知部28は、上述した発光部25を有しており、判定部27の判定結果に基づいて発光部25の発光状態を制御することにより、タッチセンサ23およびタクトスイッチ24が検出する押圧部20の押圧操作の状態を報知する。出力部29は、判定部27の判定結果に基づいて手術台Yに作動信号を出力する。なお、この作動信号を手術台Yに伝達する手段は無線通信であることが好ましいが、有線通信であっても良く特に限定されない。
【0041】
図4を参照して、コントローラXの制御方法の一例を説明する。コントローラXの電源がオンになる(♯41)とEスイッチである操作ボタンHが点灯し、タッチセンサ23がオン状態であるか否か(第1検出信号が検出されたか否か)が判定される(♯42)。例えば、使用者の指先が意図せず押圧部20に触れている場合やタッチセンサ23が故障している場合、判定部27にタッチセンサ23の第1検出信号が入力される(♯42Yes判定)。この場合、報知部28は、全てのタクトスイッチ24に収容された発光部25を発光させて、全ての押圧部20を点滅させる(♯43、図5参照)。これによって、使用者はコントローラXが操作不可能であることを知らされる。この判定は起動時のみなので、通常操作時に影響を与えることなくコントローラXの操作性を損なわない。なお、コントローラXが操作不可能である報知形態は、全ての押圧部20を点滅表示にする形態に限定されず、例えば、全ての押圧部20を非点灯又は警告色で点灯させても良い。また、使用者の指先が接触している押圧部20のみを警告色や点滅表示等で報知しても良い。
【0042】
使用者の指先が意図せず押圧部20に触れている場合、警告を受けた使用者が指先を押圧部20から離すことで、タッチセンサ23がオフ状態となったか否か(第1検出信号が検出されないか否か)が判定される(♯44)。使用者が指先を押圧部20から離したにも関わらず、タッチセンサ23のオン状態(第1検出信号の検出)が第一所定時間T1(例えば、2〜3秒)継続した場合(♯44Nо判定,♯45Yes判定)には、タッチセンサ23が故障であるとして、コントローラXを操作不可能に設定する(♯46)。この場合、他に故障個所がない限り、コントローラXの電源を再投入すれば使用可能に設定するのが好ましい。
【0043】
一方、起動時にタッチセンサ23がオフ状態(第1検出信号が非検出)である場合(♯42Nо判定)や、警告を受けた使用者が第一所定時間T1内に指先を押圧部20から離した場合(♯44Yes判定,♯45Nо判定)、Eスイッチを除く全ての押圧部20を消灯して点滅を解除する(♯54)。そして、操作ボタンA〜G,Iを有効状態(押圧操作可能)に設定するEスイッチがオン状態であるか否かが判定される(♯47)。この判定は、操作ボタンHの押圧操作によりタッチセンサ23の第1検出信号とタクトスイッチ24の第2検出信号とが共に検出されたときに、Eスイッチがオン状態であると判定する。
【0044】
Eスイッチがオン状態である場合(♯47Yes判定)、手術台Yの機能に応じて操作可能に設定された操作ボタンA〜G,I(本実施形態では全機能が操作可能)に対応する押圧部20を発光部25により点灯させる(♯48、図6参照)。これによって、使用者は、どの操作ボタンA〜G,Iが操作可能なのかを瞬時に判別できる。
【0045】
次いで、Eスイッチがオン状態となってから第三所定時間T3(例えば、5秒)が経過したか否かを判定する(♯49)。Eスイッチがオン状態となってから第三所定時間T3が経過した場合(♯49Nо判定)、Eスイッチを除く全ての押圧部20を消灯して(♯56)、再度、Eスイッチを押圧操作して再開する(♯47)。一方、Eスイッチがオン状態となってから第三所定時間T3が経過していない場合(♯49Yes判定)、使用者が作動させたい手術台Yの機能(例えば、スライド機能)に対応する操作ボタンC1に対応する押圧部20を押下し、タクトスイッチ24がオン状態であるか否か(第2検出信号が検出されたか否か)が判定される(♯50)。タクトスイッチ24がオフ状態(第2検出信号が非検出)の場合(♯50Nо判定)、再度同じ判定を繰り返す(♯49〜♯50)。なお、Eスイッチの点灯は、コントローラXに内蔵されたバッテリ(不図示)の充電状態に応じて変更しても良い。例えば、充電が少なくなってきた程度に応じて、Eスイッチを警告色に変更したり点滅させたりするように構成されている。
【0046】
一方、タクトスイッチ24が正常に機能していてオン状態である場合(第2検出信号が検出された場合、♯50Yes判定)、タッチセンサ23がオン状態であるか否か(第1検出信号が検出されたか否か)を判定する(♯51)。そして、タッチセンサ23がオン状態である場合(第1検出信号が検出された場合、♯51Yes判定)、タッチセンサ23の第1検出信号およびタクトスイッチ24の第2検出信号を受けた判定部27が、操作ボタンC1に対応する押圧部20が正常に操作されたと判定して、操作可能に設定された操作ボタンA〜G,Iに対応する押圧部20の点灯状態を維持する。なお、操作された操作ボタンC1に対応する押圧部20を異なる色で点灯させてもよい(図7参照)。これによって、使用者に現在の操作情報を報知することができる。
【0047】
そして、操作ボタンC1に対応する押圧部20が正常に操作されたという判定結果が出力部29に伝達され、出力部29は、手術台Yをスライド移動させる作動信号を出力する(♯52)。その結果、手術台Yの台部11が操作時間に応じた距離だけスライド移動される。その後、操作ボタンC1およびEスイッチの何れか1つでもオフ状態となった場合、出力部29は手術台Yを作動させる作動信号の出力を停止する。
【0048】
このように、押圧部20の押圧操作によりタッチセンサ23の第1検出信号およびタクトスイッチ24の第2検出信号が共に検出された場合のみ手術台Yを作動させるので、使用者の指先が軽く押圧部20に触れてタッチセンサ23の第1検出信号が検出されてもタクトスイッチ24の第2検出信号が検出されないので、作動信号が出力されない。その結果、使用者が意図せず押圧部20に触れてしまって手術台Yが誤作動するといった不都合を解消することができる。
【0049】
図4のフローチャートに戻って、タッチセンサ23がオフ状態である場合(第1検出信号が検出されない場合、♯51Nо判定)、タクトスイッチ24のオン状態(第2検出信号の検出)が第二所定時間T2(例えば、2〜3秒)継続したか否かを判定する(♯53)。タクトスイッチ24のオン状態(第2検出信号の検出)が第二所定時間T2(例えば、2〜3秒)継続した場合(♯53Yes判定)、全ての押圧部20を点滅させ(♯54)、タクトスイッチ24が沈み込んだ状態で復元しない故障状態であるとして、コントローラXを操作不可能に設定する(♯55)。このとき、操作不可能である操作ボタンC1に対応する押圧部20を異なる色で点滅させても良い(図8参照)。これによって、どのタクトスイッチ24が故障モードなのかを視認できるので、コントローラXを修理する際に故障したタクトスイッチ24のみを交換すれば良く、効率的である。なお、説明を省略したが、Eスイッチのオン状態を判定する際(♯47)にも、タクトスイッチ24の故障検出(♯50〜♯51および♯53〜♯55)が実行される。
【0050】
一方、タクトスイッチ24が第二所定時間T2内に復帰した場合(♯53Nо判定)には、♯49〜♯51の判定を繰り返す。そして、上述した♯49〜♯51がYes判定の場合には、手術台Yをスライド移動させる作動信号を手術台Yに出力する(♯52)。このように、タクトスイッチ24が沈み込んだ状態で復元しない故障状態であった場合でも、押圧部20に触れていない限りタッチセンサ23の第1検出信号が検出されないので、タクトスイッチ24の故障検出を確実に行うことができる。
【0051】
[その他の実施形態]
(1)上述した実施形態では、Eスイッチの操作ボタンHとEスイッチ以外の操作ボタンA〜G,Iとが共にオン状態であるときに手術台Yに作動信号を出力したが、Eスイッチを省略してEスイッチ以外の操作ボタンA〜G,Iがオン状態であるときに作動信号を出力しても良い。また、Eスイッチのタッチセンサ23及びタクトスイッチ24の何れか一方を省略しても良い。
(2)上述した実施形態では、タッチセンサ23およびタクトスイッチ24の操作状態を報知する報知部として発光部25を用いたが、報知形態は特に限定されない。例えば、音声で報知しても良いし、発光部25の色表示を複数用意して操作状態に応じて発光色を異ならせても良い。
(3)上述した実施形態では、カバー21の押圧部20の背面に各操作ボタンA〜Iの機能を説明する模式図を印字したが、この模式図を印字した透明印字シートを別途設けても良いし、印字しなくても良い。また、例えば縦転位方向y3で頭部を下降させる操作のように長時間の姿勢維持が好ましくない場合は、予め押圧部20を警告色(橙色等)で着色して、使用者に注意喚起しても良い。
(4)上述した実施形態における制御部Qの各機能は、必要に応じて適宜省略しても良い。例えば、起動時にタッチセンサ23の故障判定する機能を省略しても良い。
(5)コントローラXの操作対象物として、手術台Yを例に挙げたが、診療台や診療椅子等の医療機器であっても良く、特に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、手術台等の医療機器を作動させるコントローラに利用可能である。
【符号の説明】
【0053】
20 押圧部
21 カバー
23 タッチセンサ(静電シート)
24 タクトスイッチ(メカニカルスイッチ)
25 発光部
28 報知部
29 出力部
X コントローラ
Y 手術台(操作対象物)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8