特許第6887156号(P6887156)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6887156
(24)【登録日】2021年5月20日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】電動式搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B22C 23/00 20060101AFI20210603BHJP
   B22C 21/10 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   B22C23/00 H
   B22C21/10
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-165834(P2017-165834)
(22)【出願日】2017年8月30日
(65)【公開番号】特開2019-42751(P2019-42751A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2020年6月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】592089799
【氏名又は名称】メタルエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095577
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 富雅
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜一
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】金平 諭三
(72)【発明者】
【氏名】松島 直純
(72)【発明者】
【氏名】下村 幸一
(72)【発明者】
【氏名】船木 大輔
(72)【発明者】
【氏名】野口 昌二
(72)【発明者】
【氏名】夏野 勉
【審査官】 瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−006739(JP,A)
【文献】 特開2007−296544(JP,A)
【文献】 特開平08−117970(JP,A)
【文献】 特開平06−092441(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 23/00
B22C 21/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳型を内蔵する鋳枠である鋳型保持体または鋳型を載置する搬送台である鋳型保持体が、直列状に配列された鋳型保持体群を押出し装置とクッション装置とにより挟み込み、前記鋳型保持体群を搬送開始位置から搬送完了位置に向かって一鋳型保持体分のピッチ間隔ずつ軌道装置上を搬送方向に直線移動させる電動式搬送装置であって、
前記押出し装置は、第一電動式モータの回転運動を前記搬送方向の直線往復運動に変換する第一運動変換装置と、前記第一電動式モータにより前記第一運動変換装置を介して第一後退端と第一前進端の間で直線往復動され、前記第一後退端から前記第一前進端に前進するとき前記鋳型保持体群の最後端をプッシュして前記鋳型保持体群を前記搬送方向に直線移動させる第一直線往復体とを有し、
前記クッション装置は、第二電動式モータの回転運動を前記搬送方向の直線往復運動に変換する第二運動変換装置と、前記第二電動式モータにより前記第二運動変換装置を介して第二前進端と第二後退端との間で直線往復動される第二直線往復体と、前記鋳型保持体群の最前端に向かって突出する突出端と退入端との間で前記搬送方向に所定ストローク移動可能に前記第二直線往復体に設けられたクッション部材と、前記第二直線往復体が前記第二前進端から前記第二後退端に後退するとき前記クッション部材を前記突出端に向かって付勢して前記鋳型保持体群の前記最前端を受けさせる付勢装置とを有し、
前記第一直線往復体が前記第一後退端に位置し、前記第二直線往復体が前記第二前進端に位置し、前記クッション部材が前記退入端に位置し、前記鋳型保持体群が前記搬送開始位置に位置するとき、前記鋳型保持体群の前記最前端と前記クッション部材の先端との間に前記所定ストロークより設定値だけ小さい前部隙間が形成される、電動式搬送装置。
【請求項2】
前記付勢装置は、シリンダ装置であり、
前記クッション部材を前記鋳型保持体群の前記最前端に付勢する圧力は、
前記第一直線往復体が加速して前進するとき、前記鋳型保持体群が自由運動して前記第一直線往復体から離間しない程度に前記クッション部材を前記鋳型保持体群の前記最前端に付勢する第一圧力と、
前記第一直線往復体が減速して前進するとき、前記鋳型保持体群が慣性力で前記第一直線往復体から離間しない程度に前記クッション部材を前記鋳型保持体群の前記最前端に付勢する第二圧力との間で切替可能である、
請求項1に記載の電動式搬送装置。
【請求項3】
前記第一直線往復体が前記第一後退端から一定量前進し、前記第二直線往復体が前記第二前進端から前記一定量後退し、前記第一直線往復体が前記鋳型保持体群の前記最後端に当接し、かつ前記クッション部材の先端が前記鋳型保持体群の前記最前端に当接した状態において、前記クッション部材は、前記突出端と前記退入端との中間に位置する、
請求項1または2に記載の電動式搬送装置。
【請求項4】
前記第一直線往復体が前記第一後退端に位置し、前記第二直線往復体が前記第二前進端に位置し、前記クッション部材が前記退入端に位置し、前記鋳型保持体群が前記搬送開始位置に位置するとき、
前記第一直線往復体の先端と前記鋳型保持体群の前記最後端との間に設けられる後部隙間と、
前記クッション部材の先端と前記鋳型保持体群の前記最前端との間に設けられる前記前部隙間と、の隙間幅の合計長さは、
前記クッション部材の前記所定ストロークの半分の長さである、
請求項1または2に記載の電動式搬送装置。
【請求項5】
前記第一運動変換装置は、前記第一電動式モータの回転運動を前記搬送方向に沿った前記直線往復運動に変換する第一スライダクランク機構であり、
前記第二運動変換装置は、前記第二電動式モータの回転運動を前記搬送方向に沿った前記直線往復運動に変換する第二スライダクランク機構である、
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の電動式搬送装置。
【請求項6】
前記搬送方向に沿って延在するベースが設けられ、
前記軌道装置は、前記ベース上に固定され、
前記押出し装置は、前記ベースの前記鋳型保持体群の後端側に設けられ、
前記クッション装置は、前記ベースの前記鋳型保持体群の前端側に設けられ、
前記第一直線往復体は、前記軌道装置上の前記鋳型保持体群の後端側に往復動可能に配置され、
前記第二直線往復体は、前記軌道装置上の前記鋳型保持体群の前端側に往復動可能に配置されている、
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の電動式搬送装置。
【請求項7】
前記第一直線往復体および前記第二直線往復体と前記軌道装置との間には、前記鋳型保持体群を挟み込んで前記軌道装置上を移動する際に、前記第一直線往復体および前記第二直線往復体が前記軌道装置から外れるのを防止する外れ防止機構が夫々備えられている、
請求項6に記載の電動式搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造ラインにおいて複数の鋳枠や鋳型を搬送する電動式の搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋳造ラインにおいては、連続して鋳枠や鋳型を搬送するため、複数の鋳枠を軌道装置上に並べて、或いは鋳型を軌道装置上に並べられた台車やパレットに夫々載置して搬送する。ところが、並べられる鋳枠相互間や各台車(パレットを含む)相互間に、隙間があると搬送するときに相互に衝突して衝撃を生じる場合がある。このような衝撃は、鋳枠を損傷したり鋳型が型落ちしたりする等の悪影響を与えるため、極力衝撃を与えずに搬送する必要があった。
このような各鋳枠間または各台車相互間の隙間を無くし、搬送の際の衝撃を与えずに直列状に配列された鋳枠群(鋳型保持体群)を搬送する装置として、例えば特許文献1に示されるものが知られている。
これは、特許文献1の図1に示すように、搬送レールの一端に設置されて複数の鋳型搬送用台車群を押し出す押出しシリンダ(押出し装置)と、搬送レールの他端に設置されて押し出された鋳型搬送用台車群の移動速度を減殺するクッションシリンダ(クッション装置)とについて、いずれも駆動装置を電動サーボ式とするものである。
この電動サーボ式の押し出しシリンダおよびクッションシリンダは、シリンダの作動速度、作動距離を細かく設定することができ、搬送作業の始点、終点におけるシリンダの位置決めも高い精度で行うことができるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第2559334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、押し出しシリンダとクッションシリンダとの双方にサーボモータを設ける搬送装置は、押し出しシリンダおよびクッションシリンダの相互の関係を同調させるための複雑な制御を必要とし、その調整も手間がかかった。また、精密な設備が必要であり設備費用が高額となった。
【0005】
本発明は係る従来の問題点に鑑みてなされたものであり、押出し装置側とクッション装置側との相互の関係を同調させるための複雑な制御を必要としない搬送装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、請求項1に係る発明の構成上の特徴は、電動式搬送装置において、鋳型を内蔵する鋳枠である鋳型保持体または鋳型を載置する搬送台である鋳型保持体が、直列状に配列された鋳型保持体群を押出し装置とクッション装置とにより挟み込み、前記鋳型保持体群を搬送開始位置から搬送完了位置に向かって一鋳型保持体分のピッチ間隔ずつ軌道装置上を搬送方向に直線移動させる電動式搬送装置であって、前記押出し装置は、第一電動式モータの回転運動を前記搬送方向の直線往復運動に変換する第一運動変換装置と、前記第一電動式モータにより前記第一運動変換装置を介して第一後退端と第一前進端の間で直線往復動され、前記第一後退端から前記第一前進端に前進するとき前記鋳型保持体群の最後端をプッシュして前記鋳型保持体群を前記搬送方向に直線移動させる第一直線往復体とを有し、前記クッション装置は、第二電動式モータの回転運動を前記搬送方向の直線往復運動に変換する第二運動変換装置と、前記第二電動式モータにより前記第二運動変換装置を介して第二前進端と第二後退端との間で直線往復動される第二直線往復体と、前記鋳型保持体群の最前端に向かって突出する突出端と退入端との間で前記搬送方向に所定ストローク移動可能に前記第二直線往復体に設けられたクッション部材と、前記第二直線往復体が前記第二前進端から前記第二後退端に後退するとき前記クッション部材を前記突出端に向かって付勢して前記鋳型保持体群の前記最前端を受けさせる付勢装置とを有し、前記第一直線往復体が前記第一後退端に位置し、前記第二直線往復体が前記第二前進端に位置し、前記クッション部材が前記退入端に位置し、前記鋳型保持体群が前記搬送開始位置に位置するとき、前記鋳型保持体群の前記最前端と前記クッション部材の先端との間に前記所定ストロークより設定値だけ小さい前部隙間が形成される。
なお、鋳型保持体とは、鋳型を保持する鋳枠、鋳型を保持するための空鋳枠、鋳型を載置する台車(搬送台)、および鋳型を載置するパレット(搬送台)を含むものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る発明によると、鋳型保持体群を押出し装置とクッション装置とにより挟み込んで、搬送する際に、クッション部材は、鋳型保持体群の最前端とクッション部材の先端との間に形成される前部隙間を埋めるように突出する。鋳型保持体群の最前端にクッション部材の先端が当接した場合に、クッション部材は、ストロークから前部隙間を減算した分の長さ(設定値)が第二直線往復体内に伸び代として残っており、また、クッション部材は、突出した長さの範囲で第二直線往復体内に退入することができる。
【0008】
そのため、押出し装置とクッション装置との同期が完全でなく、押出し装置の第一直線往復体が先行して駆動する場合には、クッション部材は突出した前部隙間分の長さの範囲で退入が可能である。この場合において、クッション部材は、付勢装置によって突出端に向って付勢されているので、第一直線往復体とともに鋳型保持体群を挟み込んで鋳型保持体相互間に隙間を生じさせること無く鋳型保持体群の最前端を支持することができる。
【0009】
クッション装置の第二直線往復体が先行して駆動する場合には、クッション部材は、第二直線往復体内に伸び代として残っている設定値の長さ分だけさらに突出することができる。この場合においてもクッション部材は、付勢装置によって突出端に向って付勢されている。これによって、クッション部材は、第一直線往復体とともに鋳型保持体群を挟み込んで鋳型保持体相互間に隙間を生じさせること無く鋳型保持体群の最前端を支持することができる。
【0010】
このように押出し装置とクッション装置との同期が完全でない場合においても、押出し装置とクッション装置との間に鋳型保持体群を挟み込んで、鋳型保持体相互間に衝突を生じさせること無く、鋳型保持体群を安全に搬送することができる。そのため、押出し装置とクッション装置とを同期させるための複雑な制御を必要としない搬送設備とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第一実施形態における本発明に係る電動式搬送装置の概要を示す平面図である。
図2】電動式搬送装置の正面図である。
図3】押出し装置を拡大して示す平面図である。
図4】押出し装置を断面図で示す側面図である。
図5】押出し装置を拡大して示す正面図である。
図6】クッション装置を拡大して示す断面図である。
図7】クッション装置を拡大して示す平面図である。
図8】クッション装置を拡大して示す正面図である。
図9】クッション装置を断面で示す側面図である。
図10】搬送を開始した状態を示す正面図である。
図11】減速を開始する状態を示す正面図である。
図12】搬送が完了した状態を示す正面図である。
図13】第二実施形態における本発明に係る電動式搬送装置のクッション装置側を一部拡大して示す正面図である。
図14】第二実施形態における搬送を開始する状態を示すクッション装置の正面図である。停止する前の状態を示すクッション装置の正面図である。
図15】第二実施形態における加速前進による搬送を開始した状態を示すクッション装置の正面図である。
図16】第二実施形態における減速前進による搬送をしている状態を示すクッション装置の正面図である。
図17】第二実施形態における搬送が完了した状態を示すクッション装置の正面図である。
図18】別例のトラバーサを示す図である。
図19】運動変換装置の別例を断面で示す側面図である。
図20】運動変換装置の別例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第一実施形態)
本発明に係る電動式搬送装置の第一実施形態を図面に基づいて以下に説明する。図1は、本実施形態における電動式搬送装置1の概要を示す平面図であり、図2は、電動式搬送装置1の正面図である。
【0013】
電動式搬送装置1は、搬送方向に延在する軌道装置2(本実施形態では、ローラコンベヤ)と、軌道装置2上に直列状に配列された鋳型保持体群3(本実施形態では鋳枠群)を搬送方向に押し出す押出し装置4と、押出し装置4により押出された鋳型保持体群3の搬送方向の運動を停止させるクッション装置5と、付勢装置6とを有している。
【0014】
(軌道装置)
軌道装置2は、図2に示すように、対向して搬送方向に延在するバー部材21と、バー部材21の内側の対向側面に、搬送方向に直角な水平方向の軸心の回転軸22a(図3参照)に回転自在に設けられた複数のローラ22とを備えている。床BSには、搬送方向に沿って延在するベース23が設けられている。ベース23には、対となった複数の支柱24が搬送方向に沿って立設され、複数の支柱24にはバー部材21が横架状態で支持されている。対向するバー部材21は、支柱によって所定の高さ位置に夫々架設されている。このように軌道装置2は、ベース23上に固定され一体となっている。軌道装置2には、床BS上に併設軌道装置2Aが平行して設けられている(図1参照)。
【0015】
(押出し装置)
押出し装置4は、図2図3および図4に示すように、第一運動変換装置41と、第一直線往復体42と、第一電動式モータ43とを備えている。押出し装置4の第一運動変換装置41は、軌道装置2(ローラコンベヤ)上に鋳型保持体群3が配列されたときに鋳型保持体群3の後端側のベース23上に固定されている。
【0016】
第一運動変換装置41は、第一スライダクランク機構411を備えている。第一スライダクランク機構411は、第一電動式モータ43に減速機構(図略)を介して回転する回転軸411aに基端が相対回転不能に連結されたアーム411bを有するクランク部411cと、アーム411bの先端に設けられ上下方向に延在するガイド部411dに沿ってスライドするスライド部411eとを備えている。第一電動式モータ43および回転軸411aの軸受部411a1は、ベース23に固定されている。ガイド部411dは、第一直線往復体42の後部に相対移動不能に設けられている。アーム411bが回転軸411aを中心に回転すると、スライド部411eは、ガイド部411dに沿って上下動するとともに、ガイド部411dと一体になった第一直線往復体42を搬送方向に沿って直線往復動するように構成されている。第一直線往復体42は、図5に示すように、第一後退端FBと第一前進端FFとの間で直線往復動するが、第一後退端FBから第一前進端FFへ移動する距離は、一鋳型保持体3a分のピッチ間隔に相当する。鋳型保持体群3は、第一直線往復体42にプッシュされて搬送開始位置SPから搬送完了位置EPに向って直線移動する。
第一スライダクランク機構411を駆動させる第一電動式モータ43として、同期モータを挙げることができる。同期モータは、サーボモータのような複雑な位置制御を行うことなく、回転数を変える周波数制御を行う。
【0017】
第一直線往復体42は、長方形板状に形成され、軌道装置2であるローラコンベヤの後部上(鋳型保持体3の後端側)に搬送方向に沿って往復動可能に載置されている。第一直線往復体42は、後端部で開口する操作溝42aが中央部から後端部に設けられている。操作溝42aの後端内側には、第一運動変換装置41のガイド部411dが固定されている。操作溝42aの搬送方向に直角な幅は、アーム411bが通過可能に形成されている。第一直線往復体42の前端部中央には、例えば鋼鉄製部材で円柱状に形成され鋳型保持体群3の最後端に当接する当接部44が設けられている。
【0018】
第一直線往復体42の底面には、図4および図5に示すように、搬送方向に沿って延在する一対の条部42bが設けられている。一対の条部42bは、軌道装置2の対向するローラ22の内側に対向して配置され、ローラ22の直径よりも少し大きな所定長さで下方に突出している。一対の条部42bには、底部より外側に向って突出する細長い板状に形成された外れ防止板42cが固定され、外れ防止板42cは、ローラ22の転動面の下部に夫々当接可能に構成されている。第一直線往復体42の底面と外れ防止板42cの上面とによりローラ22を挟むことで、第一直線往復体42が軌道装置2から外れるのを防止している。これらの条部42bおよび外れ防止板42cは、第一外れ防止機構421(外れ防止機構)を構成している。
【0019】
(クッション装置)
クッション装置5は、図2図6図7および図9に示すように、第二運動変換装置51と、第二直線往復体52と、第二電動式モータ53と、クッション部材54とを備えている。クッション装置5の第二運動変換装置51は、ベース23の前端側すなわち、軌道装置2(ローラコンベヤ)上に鋳型保持体群3が配列されたときに鋳型保持体群3の前端側のベース23上に固定されている。第二運動変換装置51は、スライダクランク機構(第二スライダクランク機構511に相当する)を備えている。第二スライダクランク機構511は、第二電動式モータ53に減速機構(図略)を介して回転する回転軸511aに基端が相対回転不能に連結されたアーム511bを有するクランク部511cと、アーム511bの先端に設けられ上下方向に延在するガイド部511dに沿ってスライドするスライド部511eとを備えている。第二電動式モータ53および回転軸511aの軸受部511a1は、ベース23に固定されている。ガイド部511dは、第二直線往復体52の前部に相対移動不能に設けられている。アーム511bが回転軸511aを中心に回転すると、スライド部511eはガイド部511dに沿って上下動するとともに、ガイド部511dと一体になった第二直線往復体52を搬送方向に沿って直線往復動するように構成されている。第二直線往復体52は、図8に示すように、第二前進端SFと第二後退端SBとの間で直線往復動するが、第二前進端SFと第二後退端SBとの距離は、押出し装置4と同様に一鋳型保持体3a分のピッチ間隔に相当する。第二電動式モータ53として、押出し装置4の第一電動式モータ43と同様の規格の同期モータを挙げることができる。
【0020】
第二直線往復体52は、長方形板状に形成され、軌道装置2の前部上(鋳型保持体群3の前端側)に搬送方向に沿って直線移動可能に載置される。第二直線往復体52は、前端部で開口する操作溝52aが中央部から前端部に設けられている。操作溝52aの前端内側には、第二運動変換装置51のガイド部511dが固定されている。操作溝52aの搬送方向に直角な幅は、アーム511bが通過可能に形成されている。
【0021】
第二直線往復体52の底面には、図8および図9に示すように、搬送方向に沿って延在する一対の条部52bが設けられている。一対の条部52bは、軌道装置2の対向するローラ22の内側に対向して配置され、ローラ22の直径よりも少し大きな所定長さで下方に突出している。一対の条部52bには、底部より外側に向って突出する細長い板状に形成された外れ防止板52cが固定され、外れ防止板52cは、ローラ22の転動面の下部に夫々当接可能に構成されている。第二直線往復体52の底面と外れ防止板52cの上面とによりローラ22を挟むことで、第二直線往復体52が軌道装置2から外れるのを防止している。これらの条部52bおよび外れ防止板52cは、第二外れ防止機構521(外れ防止機構)を構成している。
【0022】
第二直線往復体52の後端部には、図6および図8に示すように、挿入支持穴52dが形成され、挿入支持穴52dには後述するクッション部材54が突出・退入可能に挿通されている。挿入支持穴52dは、第二直線往復体52の鋳型保持体群3側に開口し、穴の内周壁の中心が搬送方向に沿って形成されている。挿入支持穴52dは、シリンダ装置55のシリンダを構成する。
【0023】
(クッション部材)
クッション部材54は、図6に示すように、ピストンロッドとしての棒状本体54aと棒状本体54aの先端部に設けられた緩衝部54bと、棒状本体54aの後端部に設けられたピストン54cを備えている。棒状本体54aは、例えば鋼鉄製部材で棒状に形成されている。緩衝部54bは、例えば焼入れした鋼鉄製部材から短円柱状に形成され、鋳型保持体群3との接触でクッション部材54の先端部が磨耗するのを防止している。ピストン54cは、例えば鋼鉄製部材から鍔状に形成されて、第二直線往復体52に形成される挿入支持穴52dの開口縁に掛止するとともに挿入支持穴52dの内周壁とピストン54cの外周との間をシールするシール部(図略)を備えている。クッション部材54は、突出端PEと退入端REとの間で所定ストロークL移動する。挿入支持穴52d(シリンダ)、棒状本体54a(ピストンロッド)、およびピストン54cにより主にシリンダ装置55が構成される。
【0024】
(付勢装置)
付勢装置6は、図2図6および図8に示すように、シリンダとしての挿入支持穴52dからピストンロッドとしての棒状本体54aを、突出・退入させる。付勢装置6は、シリンダ装置55に連通する油圧回路61と、油圧回路61に油圧を加える油圧供給源62とを備えている。挿入支持穴52dの内壁には、前端部付近に開口する前端開口孔52d1と挿入支持穴52dの奥部付近に開口する奥部開口孔52d2とが形成されている(図6参照)。挿入支持穴52dの前端開口部の周縁と棒状本体54aの外周の間、ピストン54cの外周と挿入支持穴52dの内周壁との間は夫々相互に摺動可能にシール(図略)されている。
【0025】
(油圧回路)
油圧回路61は、図8に示すように、突出側配油管61aと退入側配油管61bとを備えている。突出側配油管61aは、挿入支持穴52dの奥部開口孔52d2に接合され、油が加圧されて挿入支持穴52dの奥部に充填すると、クッション部材54を突出させる。突出側配油管61aには、油圧供給源62(本実施形態では油圧ポンプ)が接続され、奥部開口孔52d2と油圧供給源62との間には、第一電磁切替弁63および第二電磁切替弁64が設けられている。
第一電磁切替弁63は、3ポート・2位置の電磁切替弁である。第一電磁切替弁63は、挿入支持穴52dの奥部開口孔52d2に連通する奥部連通ポート63a、第一減圧弁65(後述)に連通する第一減圧弁連通ポート63b、および第二電磁切替弁64に連通する第二電磁切替弁連通ポート63cを有している。第一電磁切替弁63は、A部およびB部という2つの切替部を有している。A部は、奥部連通ポート63aと第一減圧弁連通ポート63bとを連通させ、第二電磁切替弁連通ポート63cの連通を遮断させる。B部は、奥部連通ポート63aと第二電磁切替弁連通ポート63cとを連通させ、第一減圧弁連通ポート63bの連通を遮断させる。また、第一電磁切替弁63は、油の流れる方向を限定しないユニバーサル電磁切替弁となっている。通常、挿入支持穴52dの奥部開口孔52d2と第一減圧弁65とが連通するA部がノーマルポジションとなっている。
【0026】
退入側配油管61bは、挿入支持穴52dの前端開口孔52d1に接合され、油が加圧されて挿入支持穴52dの前端側に充填すると、クッション部材54を退入させる。退入側配油管61bには、油圧供給源62(本実施形態では油圧ポンプ)が接続され、油圧供給源62と挿入支持穴52dの前端開口孔52d1との間には第二電磁切替弁64が設けられている。第二電磁切替弁64は、5ポート・2位置の電磁切替弁である。第二電磁切替弁64は、挿入支持穴52dの前端開口孔52d1に連通する前端部連通ポート64a、第一減圧弁65および第一電磁切替弁63に連通する第一減圧弁・第一電磁切替弁連通ポート64b、第二減圧弁66に連通する第二減圧弁連通ポート64c、第一ドレイン67に連通する第一ドレイン連通ポート64d、および第二ドレイン68に連通する第二ドレイン連通ポート64eを有している。第二電磁切替弁64は、C部およびD部という2つの切替部を有している。C部は、前端部連通ポート64aと第二減圧弁連通ポート64cとを連通させ、第一減圧弁・第一電磁切替弁連通ポート64bを第一ドレイン連通ポート64dに連通させる。第二ドレイン連通ポート64eの連通を遮断させる。D部は、第一減圧弁・第一電磁切替弁連通ポート64bと第二減圧弁連通ポート64cとを連通させ、前端部連通ポート64aと第二ドレイン連通ポート64eとを連通させる。第一ドレイン連通ポート64dの連通を遮断させる。
【0027】
第一減圧弁65は、油圧供給源62から挿入支持穴52d(シリンダ)の奥部に加えられる油圧が、第一圧力以上となった場合に、油圧回路61(突出側配油管61a)を減圧して、挿入支持穴52dの奥部に第一圧力を超える圧力が加えられないようになっている。第一電磁切替弁63がA部に位置決めされ、第二電磁切替弁64がD部に位置決めされた状態で働く(図10参照)。
【0028】
第二減圧弁66は、油圧供給源62から挿入支持穴52dの奥部に加えられる油圧が、第二圧力以上となった場合に、油圧回路61(突出側配油管61a)を減圧して、挿入支持穴52dの奥部に第二圧力を超える圧力が加えられないようになっている。第二圧力は、鋳型保持体群3に制動をかける圧力であって、第一圧力よりも大きな圧力が設定されている。第一電磁切替弁63がB部に位置決めされ、第二電磁切替弁64がD部に位置決めされた状態で働く(図11参照)。
【0029】
図2に示すように、第一直線往復体42が第一後退端FBに位置し、第二直線往復体52が第二前進端SFに位置している。また、クッション部材54が退入端REに位置し、鋳型保持体群3が搬送開始位置SPに位置している。この場合、鋳型保持体群3の前進端とクッション部材54の先端との間には前部隙間FGが形成されている。第一直線往復体42(当接部44)と鋳型保持体群3の最後端との間には、後部隙間BGが形成されている。前部隙間FG幅の長さは、所定ストロークLの長さから所定ストロークLの半分の長さL/2と後部隙間BG幅の長さとを差しい引いた値に設定されている。所定ストロークLの半分の長さL/2と後部隙間BG幅の長さとの合計により設定値が構成される。
なお、所定ストロークLの長さが、押出し装置4(第一直線往復体42)とクッション装置5(第二直線往復体52)との同期ずれを吸収するのに必要な長さよりも、例えば充分に長く形成されている場合がある。この場合、クッション部材54が実際の搬送時に突出・退入する実際のストロークは、所定ストロークLよりも短い値となる。また、この実際のストロークでは、実際のストロークの往復動作の振幅の半分がストロークの半分であり、振幅の中心は、付勢装置6の付勢力と鋳型保持体群3の慣性力との釣り合いによって変化する。
クッション装置5は、クッション部材54の突出・退入する距離をなるべく多く確保すべきことより、所定ストロークLの半分L/2は、実際のストロークの振幅の中心が合致する位置で定めることが望ましい。そのため、所定ストロークLの半分L/2という長さは、クッション部材54の実際の往復動作によって変化し、その値にはある程度の許容範囲が必要となる。
【0030】
(鋳型保持体交換装置)
鋳型保持体交換装置7は、図1に示すように、軌道装置2の上流側搬入位置UPと併設軌道装置2Aの下流側搬出位置DPAとの間に設けられた第一鋳型保持体交換装置71と、軌道装置2の下流側搬出位置DPと併設軌道装置2Aの上流側搬入位置UPAとの間に設けられた第二鋳型保持体交換装置72とを、備えている。第一鋳型保持体交換装置71と第二鋳型保持体交換装置72とは、その構成が同様であるので、第一鋳型保持体交換装置71により代表して説明する。
【0031】
第一鋳型保持体交換装置71は、図2に示すように、走行フレーム7aと、移動台7bと、昇降シリンダ7cと、横架枠部材7dと、把持爪7eとを備えている。
走行フレーム7aは、軌道装置2の上流側搬入位置UPと併設軌道装置2Aの下流側搬出位置DPAとを跨ぐように設けられた一対の走行レール7a1と、一対の走行レール7a1の端部を支持する四本の支持柱7a2とを備えている。移動台7bは、板状の支持台7b1と、支持台7b1に回動可能に支持され走行レール上を転動する四つの転動車輪7b2とを備えている。移動台7bは、油圧等で駆動される図略の往復シリンダにより走行レール7a1上を往復移動する。
【0032】
昇降シリンダ7cは、シリンダ部7c1とピストン部7c2とを備えている。シリンダ部7c1は、円筒状に形成され下端に挿通口が設けられるとともに、下部外周が移動台7bに固定されている。ピストン部7c2は、挿通口に挿入され移動台7bの下方で上下方向に進退するようになっている。ピストン部7c2の下端は、横架枠部材7dの上端中央部に連結されている。シリンダ部7c1は、例えば油圧等でピストン部7c2を進退させる。
【0033】
横架枠部材7dは、平面矩形状に形成され、搬送方向の前後端部において把持爪7eの基端部が回転自在に軸支される連結軸(図略)が設けられている。把持爪7eは、鈎状の掛止部(図略)が内側に対向するように前後方向に二対設けられている。把持爪7eは、図略の開閉機構によって開閉し、鋳型保持体3a(鋳枠)を両側から挟んで把持する様になっている。
また、第一電動式モータ43、第二電動式モータ53の駆動、第一電磁切替弁63および第二電磁切替弁64の切替え等は、図略の制御装置によって動作が制御される。
【0034】
(作動)
次に上記の構成の電動式搬送装置1の作動について図面に基づき以下に説明する。
軌道装置2の上流側搬入位置UPには、第一鋳型保持体交換装置71により搬入された鋳型保持体3aが搬入され、搬入された鋳型保持体3aの下流側には、直列状に複数の鋳型保持体3aが配列され、搬入された鋳型保持体3aとともに鋳型保持体群3が形成されている。
【0035】
図2に示すように、押出し装置4は、第一直線往復体42が第一後退端FBに位置している。クッション装置5は、第二直線往復体52は、第二前進端SFに位置決めされている。第一電磁切替弁63は、A部に位置決めされ、第二電磁切替弁64は、C部に位置決めされている(図8参照)。これによって、退入側配油管61bに油圧が加えられてクッション部材54が退入端REに位置決めされた状態となっている。鋳型保持体群3は、搬送開始位置SPに位置決めされている。
この場合、鋳型保持体群3の最前端とクッション部材54の先端部との間に、所定ストロークL(図6参照)から後部隙間BG幅および所定ストロークの半分L/2を差し引いた値に前部隙間FG幅が設定されるようになっている。
【0036】
次に、制御装置は、押出し装置4の第一電動式モータ43およびクッション装置5の第二電動式モータ53を駆動させる。これによって、第一運動変換装置41および第二運動変換装置51を介して第一直線往復体42および第二直線往復体52を搬送方向に前進させる。この際に、図10に示すように、油圧回路61の第二電磁切替弁64をD部に切り替え、第一減圧弁・第一電磁切替弁連通ポート64bと第二減圧弁連通ポート64cとを連通させる。
【0037】
当接部44が鋳型保持体群3の最後端に当接して、鋳型保持体群3の搬送方向に加速前進を開始する。また、同時にクッション部材54が突出して、先端の緩衝部54bが鋳型保持体群3の最前端を受ける。先端の緩衝部54bが鋳型保持体群3の最前端を受けた際、クッション部材54は、突出端PEと退入端REとの中間に位置する(図6参照)。
【0038】
油圧供給源62からの油圧は、第一減圧弁65(第二減圧弁66よりも設定圧力が小さい)によって、鋳型保持体群3が自由運動して第一直線往復体42から離間しない程度の第一圧力を生じて、クッション部材54により鋳型保持体群3の最前端を付勢する。これによって、押出し装置4とクッション装置5とにより鋳型保持体群3を挟み込んで搬送方向に沿って移動させる。
【0039】
次に、図11に示すように、一鋳型保持体3a分の半分の距離が搬送された場合、アーム411bの回転角度は垂直位置を越え、第一直線往復体42は、減速して前進する状態となる。この場合、制御装置は、第一電磁切替弁63をB部に切り替え、第一減圧弁連通ポート63bを遮断し、第二電磁切替弁連通ポート63cを奥部連通ポート63aと連通させる。これにより、油圧供給源62からの油圧は、第二減圧弁66によって、鋳型保持体群3が慣性力で第一直線往復体42から離間しない程度の第二圧力(第一圧力より大きい圧力)を生じて、クッション部材54により鋳型保持体群3最前端を付勢する。
【0040】
次に、図12に示すように、押出し装置4において、アーム411bが水平位置まで回転し、第一直線往復体42は、第一前進端FFに位置決めされる。クッション装置5において、アーム511bが水平位置まで回転し、第二直線往復体52は、第二後退端SBに位置決めされる。鋳型保持体群3は、搬送完了位置EPに位置決めされる。制御装置は、第二電磁切替弁64をC部に切替え、第二減圧弁連通ポート64cと前端部連通ポート64aとを連通させてクッション部材54を退入端REに退入させる。
さらに、制御装置は、軌道装置2上の下流側搬出位置DPに位置決めされた鋳型保持体3aを第二鋳型保持体交換装置72によって把持して、例えば、併設軌道装置2Aに搬出する。
【0041】
(第二実施形態)
本発明に係る電動式搬送装置の第二実施形態を図13図17に基づいて以下に説明する。
第二実施形態における電動式搬送装置101は、クッション装置における付勢装置が油圧回路およびシリンダ装置によるものではなく、コイルばね106によりクッション部材54を突出端に向って付勢している点において第一実施形態の電動式搬送装置1と相違する。その他の点においては同様な構成であるので、同じ符号を付与して説明を省略する。
【0042】
第二実施形態の電動式搬送装置101において、第一直線往復体42が第一後退端FBに位置し、第二直線往復体52が第二前進端SFに位置し、鋳型保持体群3が搬送開始位置SPに位置するとき、仮にクッション部材54を退入端に位置させた場合、鋳型保持体群3の最前端とクッション部材54の先端との間に所定ストロークLより設定値(L/2+BG)だけ小さい前部隙間FGが形成される構成となっている。BGは、後部隙間である(図2参照)。
【0043】
(作動)
鋳型保持体群3の搬送が開始されたとき、図14にしめすように、クッション部材54はコイルばね106により付勢され、クッション部材54は、所定ストロークLの半ばが突出した状態で鋳型保持体群3の最前端を受ける。
【0044】
コイルばね106は、ばねの圧縮量が増加すると付勢力が大きくなり、ばねの圧縮量が減少すると付勢力は減少する。そのため、図15に示すような、第一直線往復体42によって鋳型保持体群3が加速して前進する場合には、コイルばね106の圧縮量は小さく、鋳型保持体群3が自由運動して第一直線往復体42から離間しない程度の小さな付勢力を鋳型保持体群3の最前端に生じさせる。
【0045】
次に、第一直線往復体42によって鋳型保持体群3が減速して前進する場合には、図16に示すように、鋳型保持体群3が慣性力で第一直線往復体42から離間しない程度の大きな付勢力(制動力を兼ねている)を鋳型保持体群3の最前端に生じさせる。
【0046】
鋳型保持体群3の搬送が完了した場合には、図17に示すように、クッション部材54と最前端の鋳型保持体3aとの間に隙間を生じさせ、図略の搬出装置によって最前端の鋳型保持体3aを搬出する。
【0047】
上記記載より明らかなように、本実施形態に係る電動式搬送装置1は、鋳型を内蔵する鋳枠である鋳型保持体3aまたは鋳型を載置する搬送台(台車、パレット)である鋳型保持体が、直列状に配列された鋳型保持体群3を押出し装置4とクッション装置5とにより挟み込み、鋳型保持体群3を搬送開始位置SPから搬送完了位置EPに向かって一鋳型保持体3a分のピッチ間隔ずつ軌道装置2上を搬送方向に直線移動させる電動式搬送装置1である。
【0048】
押出し装置4は、第一電動式モータ43の回転運動を搬送方向の直線往復運動に変換する第一運動変換装置41と、第一電動式モータ43により第一運動変換装置41を介して第一後退端FBと第一前進端FFの間で直線往復動され、第一後退端FBから第一前進端FFに前進するとき鋳型保持体群3の最後端をプッシュして鋳型保持体群3を搬送方向に直線移動させる第一直線往復体42とを有している。
【0049】
クッション装置5は、第二電動式モータ53の回転運動を搬送方向の直線往復運動に変換する第二運動変換装置51と、第二電動式モータ53により第二運動変換装置51を介して第二前進端SFと第二後退端SBとの間で直線往復動される第二直線往復体52と、鋳型保持体群3の最前端に向かって突出する突出端PEと退入端REとの間で搬送方向に所定ストロークLの範囲で移動可能に第二直線往復体52に設けられたクッション部材54と、第二直線往復体52が第二前進端SFから第二後退端SBに後退するときクッション部材54を突出端PEに向かって付勢して鋳型保持体群3の最前端を受けさせる付勢装置6とを有している。
【0050】
第一直線往復体42が第一後退端FBに位置し、第二直線往復体52が第二前進端SFに位置し、クッション部材54が退入端REに位置し、鋳型保持体群3が搬送開始位置SPに位置するとき、鋳型保持体群3の最前端とクッション部材54の先端との間に所定ストロークLより設定値(L/2+BG)だけ小さい前部隙間FGが形成される。
【0051】
なお、鋳型保持体3aとは、鋳型を保持する鋳枠、鋳型を保持するための空鋳枠、鋳型を載置する台車、および鋳型を載置するパレットを含むものである。
【0052】
これによると、鋳型保持体群3を押出し装置4とクッション装置5とにより挟み込んで、搬送する際に、クッション部材54は、鋳型保持体群3の最前端とクッション部材54の先端との間に形成される前部隙間FGを埋めるように突出する。鋳型保持体群3の最前端にクッション部材54の先端が当接した場合に、クッション部材54は、所定ストロークLから前部隙間FGを減算した分の長さ(設定値)が第二直線往復体52内に伸び代として残っており、また、クッション部材54は、突出した長さの範囲で第二直線往復体52内に退入することができる。
【0053】
そのため、押出し装置4とクッション装置5との同期が完全でなく、押出し装置4の第一直線往復体42が先行して駆動する場合には、クッション部材54は突出した前部隙間FG分の長さの範囲で退入が可能である。この場合において、クッション部材54は、付勢装置6によって突出端に向って付勢されているので、第一直線往復体42とともに鋳型保持体群3を挟み込んで鋳型保持体3a相互間に隙間を生じさせること無く鋳型保持体群3の最前端を支持することができる。
【0054】
クッション装置5の第二直線往復体52が先行して駆動する場合には、クッション部材54は、第二直線往復体52内に伸び代として残っている設定値の長さ分だけさらに突出することができる。この場合においてもクッション部材54は、付勢装置6によって突出端PEに向って付勢されている。これによって、クッション部材54は、第一直線往復体42とともに鋳型保持体群3を挟み込んで鋳型保持体3a相互間に隙間を生じさせること無く鋳型保持体群3の最前端を支持することができる。
【0055】
このように押出し装置4とクッション装置5との同期が完全でない場合においても、押出し装置4とクッション装置5との間に鋳型保持体群3を挟み込んで、鋳型保持体3a相互間に衝突を生じさせること無く、鋳型保持体群3を安全に搬送することができる。そのため、押出し装置4とクッション装置5とを同期させるための複雑な制御を必要としない安価で取り扱いの容易な搬送設備とすることができる。
【0056】
また、付勢装置6は、シリンダ装置55であり、クッション部材54を鋳型保持体群3の最前端に付勢する圧力は、第一直線往復体42が加速して前進するとき、鋳型保持体群3が自由運動して第一直線往復体42から離間しない程度にクッション部材54を鋳型保持体群3の最前端に付勢する第一圧力と、第一直線往復体42が減速して前進するとき、鋳型保持体群3が慣性力で第一直線往復体42から離間しない程度にクッション部材54を鋳型保持体群3の最前端に付勢する第二圧力との間で切替可能である。
これら第一圧力および第二圧力の切替えによって、第一直線往復体42とクッション部材54との間に鋳型保持体群3を挟み込んで、鋳型保持体3a相互間に衝突を生じさせること無く、鋳型保持体群3を安全に搬送することができる。
【0057】
また、第一直線往復体42が第一後退端FBから一定量前進し、第二直線往復体52が第二前進端SFから一定量(第一直線往復体42が前進したのと同じ一定量)後退し、第一直線往復体42が鋳型保持体群3の最後端に当接し、かつクッション部材54の先端が鋳型保持体群3の最前端に当接した状態において、クッション部材54は、突出端PEと退入端REとの中間に位置することである。
これによると、クッション部材54が、中間の位置から突出端PE側或いは退入端RE側へ所定ストロークLの範囲内で移動することで、第一直線往復体42と第二直線往復体52との同期動作からのずれを吸収して、鋳型保持体群3を挟み込んだ状態で、搬送することができる。
【0058】
また、第一直線往復体42が第一後退端FBに位置し、第二直線往復体52が第二前進端SFに位置し、クッション部材54が退入端REに位置し、鋳型保持体群3が搬送開始位置SPに位置するとき、第一直線往復体42の先端と鋳型保持体群3の最後端との間に設けられる後部隙間BGと、クッション部材54の先端と鋳型保持体群3の最前端との間に設けられる前部隙間FGと、の隙間幅の合計長さは、クッション部材54の所定ストロークLの半分の長さである。
これによると、鋳型保持体群3が搬送開始後、第一直線往復体42は、後部隙間BGを埋めるように前進し、クッション部材54は、前部隙間FGを埋めるように前進する。このとき、第二直線往復体52は、第一直線往復体42の前進と連動して後退するため、クッション部材54は、前部隙間FGと後部隙間BGとの長さの合計の長さを突出することで、第一直線往復体42が、前進して鋳型保持体群3の最後端に当接するときに先端を鋳型保持体群3の最前端に当接する。このように、クッション部材54は、所定ストロークLの半分の長さを突出させて、鋳型保持体群3の搬送を開始する。そのため、その後の搬送において、クッション部材54が、突出端PE側或いは退入端RE側へ所定ストロークLの範囲内で移動することで、第一直線往復体42と第二直線往復体52との同期ずれを効率よく吸収して、搬送することができる。
【0059】
また、第一運動変換装置41は、第一電動式モータ43の回転運動を搬送方向に沿った直線往復運動に変換する第一スライダクランク機構411であり、第二運動変換装置51は、第二電動式モータ53の回転運動を搬送方向に沿った直線往復運動に変換する第二スライダクランク機構511である。
これによると、第一運動変換装置41と第二運動変換装置51とを、構造上同じ変換機構である第一スライダクランク機構411と第二スライダクランク機構511とすることで、第一直線往復体42および第二直線往復体52の直線方向の動作を容易に同期させることができる。
【0060】
また、搬送方向に沿って延在するベース23が設けられ、軌道装置2は、ベース23上に固定され、押出し装置4は、ベース23の鋳型保持体群3の後端側に設けられ、クッション装置5は、ベース23の鋳型保持体群3の前端側に設けられ、第一直線往復体42は、軌道装置2上の鋳型保持体群3の後端側に往復動可能に配置され、第二直線往復体52は、軌道装置2上の鋳型保持体群3の前端側に往復動可能に配置されていることである。
これによると、軌道装置2、ベース23、押出し装置4およびクッション装置5が一体となったユニット化を図ることができる。第一直線往復体42および第二直線往復体52は、軌道装置2上で往復動するので、第一直線往復体42および第二直線往復体52を支持する特別なガイド機構不要とし、低コストの設備とすることができる。
【0061】
また、第一直線往復体42および第二直線往復体52と軌道装置2との間には、鋳型保持体群3を挟み込んで軌道装置2上を移動する際に、第一直線往復体42および第二直線往復体52が軌道装置2から外れるのを防止する外れ防止機構421,521が夫々備えられている。
これによると、第一直線往復体42および第二直線往復体52が軌道装置2から外れるのを防止することができる。
【0062】
なお、本実施形態においては、鋳型保持体の搬入・搬出を鋳型保持体交換装置7により行ったが、これに限定されない。例えば、図18に示すように、トラバーサ77によるものでもよい。トラバーサ77は、軌道装置102における搬入位置IPおよび搬出位置OPの夫々において、軌道装置102に直交するレール77aがベース23に固定されている。レール77aには転動輪77bが設けられた移送台77cが移動可能に載置されている。移送台77cには、軌道装置102のローラ22に整列可能なローラ77c1が設けられ、移送台77cが軌道装置102に整列した際に、第一直線往復体42または第二直線往復体52が移送台77cのローラ77c1上を転動可能に構成されている。
【0063】
また、第一・第二運動変換装置41,51をスライダクランク機構としたが、これに限定されない。例えば、図19および図20にしめすように、ピニオン81の回転運動をラック82の直線往復運動に変換するラックピニオン機構でもよい。
【0064】
また、軌道装置2を、鋳型保持体(鋳枠)3aを直接載置して搬送するローラコンベヤとしたが、これに限定されない。例えば、鋳型を載置した台車(鋳型保持体)を転動させるレールでもよい。鋳型を載置したパレット(鋳型保持体)を搬送するコンベヤでもよい。
また、電動式搬送装置によって搬送するのは、鋳型を保持する鋳枠、鋳型を保持するための空鋳枠、鋳型を載置する台車(搬送台)、および鋳型を載置するパレット(搬送台)に限定されるものではない。例えば、鋳物品をパレットや台車によって搬送するのに使用してもよい。
【0065】
また、クッション部材54を付勢する付勢装置6を油圧回路61および油圧供給源62によるものとしたが、これに限定されない。例えば、空気圧回路と空気圧供給源とを備える付勢装置でもよい。
【0066】
また、所定ストロークLを、図6に示すように、棒状本体54aが挿入支持穴52dに対して構造上突出可能な突出端PEと構造上退入可能な退入端REとの移動距離としたが、これに限定されない。例えば、クッション部材54が鋳型保持体群3を受けて搬送する際に、棒状本体54aが実際に突出・退入する突出端と退入端との距離を所定ストロークとしてもよい。
この場合、所定ストロークLの半分L/2は、構造上突出可能な突出端PEと構造上退入可能な退入端REとの移動距離である所定ストロークLの半分L/2の値を示すものではなく、クッション部材54が挿入支持穴52dに対して突出・退入する往復動の振幅の半分を示す値となり、振幅の中心位置も付勢装置6の付勢力と鋳型保持体群3の慣性力と釣り合いによって変化する。このように、所定ストロークLの半分L/2は、挿入支持穴52dに対して突出・退入する往復動作によって変化するものであり、その中心位置は、例えば、±30%程度の許容範囲が存在する。
【符号の説明】
【0067】
1…電動式搬送装置、2…軌道装置、3…鋳型保持体群、3a…鋳型保持体、4…押出し装置、41…第一運動変換装置、411…第一スライダクランク機構、42…第一直線往復体、421…第一外れ防止機構(外れ防止機構)、43…第一電動式モータ、5…クッション装置、51…第二運動変換装置、511…第二スライダクランク機構、52…第二直線往復体、521…第二外れ防止機構(外れ防止機構)、53…第二電動式モータ、54…クッション部材、55…シリンダ装置、6…付勢装置、BG…後部隙間、EP…搬送完了位置、FB…第一後退端、FG…前部隙間、FF…第一前進端、PE…突出端、RE…退入端、SB…第二後退端、SF…第二前進端、SP…搬送開始位置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20