【文献】
Kenji SUZUKI et al.,Environmental-data Collection System for Satellite-to-Ground Optical Communications,TRANSACTIONS OF THE JAPAN SOCIETY FOR AERONAUTICAL AND SPACE SCIENCES, AEROSPACE TECHNOLOGY JAPAN,2018年 1月,Volume 16 Issue 1,pp. 35-39,URL,https://www.jstage.jst.go.jp/article/tastj/16/1/16_35/_pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
領域内の雲画像データを取り込み、宇宙機の前記領域内での予想軌道弧を描き、前記領域内の雲画像データに前記領域内の予想軌道弧を重ね合わせて前記領域内の予想軌道弧の雲占有割合を判別する情報処理装置を備え、
前記情報処理装置は、前記領域内の予想軌道弧を2以上の区間に分け、前記区間ごとに予想軌道弧の雲占有割合を判別し、前記区間ごとの予想軌道弧の雲占有割合及び各前記区間の合計の予想軌道弧の雲占有割合を出力する
雲監視判別装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現状では、雲を回避できる仕組みが十分に確立されておらず、宇宙−地上間の光通信のように大気中でレーザーを使用する場合は、局分散技術(Site Diversity)だけでは、実際に雲が進入した場合は運用休止となる。本発明者らの知見によれば、局分散技術(Site Diversity)に非特許文献1に開示された技術を適用したとしても雲の進入による運用休止が発生する可能性が高いと考えられる。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、より効率よく光地上局の運用を管理することができる光地上局運用管理システム、光運用計画装置、光地上局運用管理方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る光地上局運用管理システムは、低層雲監視判別装置と、高層雲監視判別装置と、光運用計画装置とを具備する。
低層雲監視判別装置は、視野内の雲画像データを取り込み、前記光地上局との間で光リンクを結ぶ宇宙機の前記視野内での予想軌道弧を描き、前記視野内の雲画像データに前記視野内の予想軌道弧を重ね合わせて前記視野内の予想軌道弧の雲占有割合を判別する。
高層雲監視判別装置は、広域の雲画像データを取り込み、前記宇宙機の前記広域での予想軌道弧を描き、前記広域の雲画像データに前記広域の予想軌道弧を重ね合わせて前記広域の予想軌道弧の雲占有割合を判別する。
光運用計画装置は、前記低層雲監視判別装置により判別された結果及び前記高層雲監視判別装置により判別された結果に基づき、前記宇宙機の予想軌道弧の低層雲と高層雲とを重畳した総合的な雲占有割合を判断し、前記判断した結果に基づき前記光地上局の運用計画を管理し制御する。
【0008】
本発明の一形態に係る光地上局運用管理システムでは、視野内の予想軌道弧の雲占有割合及び広域の予想軌道弧の雲占有割合に基づき、宇宙機の予想軌道弧の低層雲と高層雲とを重畳した雲占有割合を判断し、宇宙機の予想軌道弧の低層雲と高層雲とを重畳した雲占有割合を判断した結果に基づき光地上局の運用計画を管理し、局切り替え運用を制御する。つまり、例えば気象衛星から撮像した雲画像では主に高層雲しか把握できないが、本発明では、地上側及び衛星側の相互の宇宙機の予想軌道弧を用いて高層雲と低層雲とを重畳して宇宙機の予想軌道弧上の雲占有割合を判別している。このように判別された雲占有割合はより正確な値であり、それに基づき光地上局の運用計画を管理しているため、より効率よく光地上局の運用を管理することができる。
【0009】
本発明の一形態に係る光地上局運用管理システムでは、前記低層雲監視判別装置は、前記視野内の予想軌道弧を2以上の区間に分け、前記区間ごとに予想軌道弧の雲占有割合を判別し、前記区間ごとの予想軌道弧の雲占有割合及び各前記区間の合計の予想軌道弧の雲占有割合を、当該低層雲監視判別装置により判別した結果として前記光運用計画装置に出力し、前記高層雲監視判別装置は、前記広域の予想軌道弧を2以上の区間に分け、前記区間ごとに予想軌道弧の雲占有割合を判別し、前記区間ごとの予想軌道弧の雲占有割合及び各前記区間の合計の予想軌道弧の雲占有割合を、当該高層雲監視判別装置により判別した結果として前記光運用計画装置に出力してもよい。これにより、予想軌道弧への雲の進入をより正確に判別でき、より効率よく光地上局の運用を管理することができる。
【0010】
本発明の一形態に係る光地上局運用管理システムでは、前記高層雲監視判別装置は、前記広域の雲画像データに基づき、前記広域の予想軌道弧に近接する雲の当該予想軌道弧への第1の到達予報情報を作成し、前記第1の到達予報情報を前記光運用計画装置に出力し、前記光運用計画装置は、前記第1の到達予報情報も加味して前記光地上局の運用計画を管理してもよい。また、前記低層雲監視判別装置は、前記視野内の雲画像データに基づき、前記視野内の予想軌道弧に近接する雲の当該予想軌道弧への第2の到達予報情報を作成し、前記第2の到達予報情報を前記光運用計画装置に出力し、前記光運用計画装置は、前記第2の到達予報情報も加味して前記光地上局の運用計画を管理してもよい。これにより、予想軌道弧への雲の進入をより正確に判別でき、より効率よく光地上局の運用を管理することができる。
【0011】
本発明の一形態に係る光地上局運用管理システムでは、前記光運用計画装置は、いずれかの前記雲占有割合を蓄積し、前記蓄積した雲占有割合も加味して前記光地上局の運用計画を管理してもよい。これにより、予想軌道弧への雲の進入をより正確に判別でき、より効率よく光地上局の運用を管理することができる。
【0012】
本発明の一形態に係る光地上局運用管理システムでは、前記光地上局に設けられ、当該光地上局の視野内の航空機の位置情報を取得し、前記位置情報に基づき運用停止メッセージを前記光運用計画装置に伝達する運用停止メッセージ伝達部を更に具備し、前記光運用計画装置は、前記運用停止メッセージ伝達部から伝達された運用停止メッセージも加味して前記光地上局の運用計画を管理してもよい。これにより、例えば宇宙機からの一定時間以上のダウンリンクサービスの停止を回避し、ダウンリンクの効率を向上させることができる。
【0013】
本発明の一形態に係る光地上局運用管理システムでは、前記低層雲監視判別装置、前記高層雲監視判別装置及び前記光運用計画装置は、異なる地域に配置された複数の前記光地上局ごとに対して設置され、前記光運用計画装置は、前記光地上局ごとに、前記宇宙機の予想軌道弧の低層雲と高層雲を重畳した雲占有割合を判断し、前記判別した宇宙機の軌道弧との重なり状態の結果に基づき複数の前記光地上局から条件の良い局を順次選択して運用する運用計画を管理することがより好ましい。
【0014】
本発明の一形態に係る光地上局運用管理システムでは、前記光運用計画装置は、前記宇宙機の軌道予報値を取り込み、前記軌道予報値に基づき前記複数の光地上局を順次運用する初期運用計画を作成して各前記光地上局に転送し、前記複数の光地上局のうち少なくとも1つが前記宇宙機の予想軌道弧の低層雲と高層雲を重畳した雲占有割合が所定の閾値を超えた場合、前記初期運用計画を変更する処理を実行し、変更後の運用計画を各前記光地上局に転送することがより好ましい。
【0015】
本発明の一形態に係る光地上局運用管理システムでは、少なくとも前記低層雲監視判別装置と前記光運用計画装置との間のデータのやりとり及び前記高層雲監視判別装置と前記光運用計画装置との間のデータのやりとりは、メッセージの形式で行うことが好ましい。これにより、各部間でやりとりするデータ量を小さくでき、より迅速な運用が可能である。
【0016】
本発明の一形態に係る光地上局運用管理システムでは、前記宇宙機は、前記光地上局に光通信によりデータをダウンリンクする。
【0017】
本発明の一形態に係る光運用計画装置は、低層雲監視判別装置による雲占有情報及び高層雲監視判別装置による雲占有情報に基づき、宇宙機の予想軌道弧に対する低層雲及び高層雲の雲占有割合を判別し、前記判別した結果に基づき光地上局の運用計画を管理する制御部を具備する。
【0018】
本発明の一形態に係る光地上局運用管理方法は、光地上局の近くの視野内の雲画像データを取り込み、前記光地上局との間で光リンクを結ぶ宇宙機の前記視野内での予想軌道弧を描き、前記視野内の雲画像データに前記視野内の予想軌道弧を重ね合わせて前記視野内の予想軌道弧の雲占有割合を判別し、広域の雲画像データを取り込み、前記宇宙機の前記広域での予想軌道弧を描き、前記広域の雲画像データに前記広域の予想軌道弧を重ね合わせて前記広域の予想軌道弧の雲占有割合を判別し、判別された前記視野内の予想軌道弧の雲占有割合及び前記広域の予想軌道弧の雲占有割合に基づき、前記宇宙機の予想軌道弧の低層雲と高層雲とを重畳した雲占有割合を判断し、前記判断した結果に基づき前記光地上局の運用計画を管理し制御する。
【0019】
本発明の一形態に係るプログラムは、光地上局の近くの視野内の雲画像データを取り込み、前記光地上局との間で光リンクを結ぶ宇宙機の前記視野内での予想軌道弧を描き、前記視野内の雲画像データに前記視野内の予想軌道弧を重ね合わせて前記視野内の予想軌道弧の雲占有割合を判別した結果を入力するステップと、広域の雲画像データを取り込み、前記宇宙機の前記広域での予想軌道弧を描き、前記広域の雲画像データに前記広域の予想軌道弧を重ね合わせて前記広域の予想軌道弧の雲占有割合を判別した結果を入力するステップと、前記入力した前記視野内の予想軌道弧の雲占有割合及び前記広域の予想軌道弧の雲占有割合に基づき、前記宇宙機の予想軌道弧の低層雲と高層雲とを重畳した雲占有割合を判断するステップと、前記宇宙機の予想軌道弧の低層雲と高層雲とを重畳した雲占有割合を判断した結果に基づき前記光地上局の運用計画を管理し制御するステップとをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、より効率よく光地上局の運用を管理することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係る光地上局運用管理システムの概要を説明するための図である。
この実施形態に係る光地上局運用管理システムは、
図1に示すように、複数の光地上局2(2a、2b、2c)の光運用計画を管理する。ここで、光地上局2a、2b、2cは、典型的には、地球上のアジア太平洋、欧州、北米等の3つの異なる地域にそれぞれ設置されている。また、アジア太平洋、欧州、北米の3つの地域では、それぞれの気象衛星4a、4b、4cが雲を観測している。
図1中符号5は宇宙機としての火星等を探査する探査機であり、探査機5から光地上局2a、2b、2cへ光通信により撮像データ等のデータをダウンリンクする。
図1中では、アジア太平洋の光地上局2aが探査機5からデータを受信しているが、この実施形態に係る光地上局運用管理システムの運用計画と制御に沿って、探査機5からデータを受信する光地上局が光地上局2aから他の光地上局2b、2cに切り替えられる。以下、主として光地上局2aについて説明するが、特に個別に説明する場合を除き、他の光地上局2b、2cについても同様に構成される。
【0024】
探査機5は、火星等の探査対象を撮影するカメラとその撮像データを格納するメモリ、メモリ内のデータを光地上局2a,2b,2cへ送信(ダウンリンク)するための通信部などを備える。
なお、宇宙機は、探査機に限られず、探査機以外の人工衛星、宇宙ステーションなどの宇宙空間を移動可能な通信機能を有する構造体も含む。人工衛星は、静止軌道(GEO:Geostationary Earth Orbit)を周回する静止衛星のほか、地球の自転周期とは無関係に地球低軌道(LEO:Low Earth Orbit)や中軌道(MEO:Medium Earth Orbit)、さらには深宇宙等を飛翔する人工衛星などを含む。すなわち宇宙機の地表からの高度は特に制限されない。人工衛星は、典型的には気象衛星や通信衛星などであるが、いかなる目的に基づいて打ち上げられたものであってもよい。
【0025】
図2はこの実施形態に係る光地上局運用管理システムの概略構成を示す図である。
図2に示すように、光地上局運用管理システム1は、低層雲監視判別システム10と、高層雲監視判別システム20と、光運用計画装置30とからその主要部が構成される。低層雲監視判別システム10、高層雲監視判別システム20および光運用計画装置30は、それぞれ光地上局2a、2b、2cに配置される。
【0026】
低層雲監視判別システム10は、視野内の雲画像データを取り込み、光地上局2aとの間で光リンクを結ぶ宇宙機の上記視野内での予想軌道弧を描き、上記視野内の雲画像データに上記視野内の予想軌道弧を重ね合わせて上記視野内の予想軌道弧の雲占有割合を判別する。
低層雲監視判別システム10は、光地上局2aの近くに配置されている。典型的には、低層雲監視判別システム10は、光地上局2aと同一のサイト内(例えば、望遠鏡の近傍)に配置され、光地上局2aから見上げた上空の雲(本明細書において低層雲ともいう)の有無あるいはその動きを監視する。低層雲監視判別システム10で作成された低層雲についての上記雲占有割合に関する情報(以下、雲占有メッセージともいう)は、通信ネットワークを介して光運用計画装置30に送信される。
【0027】
高層雲監視判別システム20は、広域の雲画像データを取り込み、探査機5の上記広域での予想軌道弧を描き、上記広域の雲画像データに上記広域の予想軌道弧を重ね合わせて上記広域の予想軌道弧の雲占有割合を判別する。
高層雲監視判別システム20は、気象衛星4aから気象データセンター6a及び通信ネットワークを介してアジア太平洋地域の広域の雲画像データ(フルディスク画像)を受信する。気象衛星4aは、地球周回軌道上または静止軌道上に位置し、気象衛星4aから地球を見下ろした雲(本明細書において高層雲ともいう)の有無あるいはその動きを監視する。高層雲監視判別システム20で作成された高層雲についての上記雲占有割合に関する情報(以下、雲占有メッセージともいう)は、通信ネットワークを介して光運用計画装置30に送信される。
【0028】
光運用計画装置30は、以下に説明する光地上局運用管理を実行するためのプログラムがインストールされたコンピュータで構成される。光運用計画装置30は、低層雲についての雲占有メッセージ及び高層雲についての雲占有メッセージなどに基づき、探査機5の予想軌道弧の低層雲と高層雲とを重畳した雲占有割合を判別し、光地上局2a、2b、2cの運用計画を管理するための光運用計画を作成する制御部を備える。光運用計画装置30で作成された光運用計画は、通信ネットワークを介して光地上局2aなどに送信される。
【0029】
光地上局2aは、光運用計画に沿って探査機5から光通信により探査機5のメモリに格納された撮像データ等をダウンリンクにより受信する。なお、光地上局2aは、近くのレーダー7より航空機8の進入に関するデータを入手し、このデータに基づき、光地上局2aより探査機5へ出射するレーザー光が航空機8に照射されないように、シャッター機能(図示を省略)によりレーザー光を遮蔽する。
この場合、レーダー7は、光地上局2aの視野内の航空機8の位置情報を取得し、当該位置情報に基づき運用停止メッセージを光運用計画装置30に伝達する運用停止メッセージ伝達部として機能する。光運用計画装置30は、レーダー7から伝達された運用停止メッセージも加味して光地上局2aの運用計画を管理(光運用計画の立案、修正、実行など。)する。
上記運用停止メッセージ伝達部は、例えば、光地上局2aの上空を航行する航空機8の位置や進路に基づき、航空機8が探査機5の予想軌道弧に接近するか否かを判定し、航空機8が探査機5と光地上局2aとを結ぶ領域に接近すると判定したときは、運用停止メッセージを生成し、光運用計画装置30へ送信する。この場合、探査機5の予想軌道弧との接近距離が所定の距離以下になったときに、運用停止メッセージが生成されてもよい。あるいは、上記所定の距離の大きさによっては、当該所定の距離以下となってから所定時間経過後に運用停止メッセージが生成されてもよい。
【0030】
なお、以下では、各光地上局2a、2b、2cに設けられた光地上局運用管理システム1をそれぞれ符号1a、1b、1cとして説明する場合がある。また、各光地上局2a、2b、2cに設けられた光運用計画装置30をそれぞれ光運用計画装置30a、30b、30cとして説明する場合がある。さらに、各地上局2a、2b、2cに設けられた気象データセンター6をそれぞれ気象データセンター6a、6b、6cとする(
図1参照)。
【0031】
図2に示すように、光運用計画装置30a、30b、30c間では通信ネットワークを介して光運用計画及び雲占有メッセージ(低層雲の情報及び高層雲の情報が重畳されている)のやりとりが行われる。雲占有メッセージは、後述するように、低層雲監視判別システム10の視野内における探索機5の予想軌道弧に占める雲の割合(雲占有割合)を含む。
【0032】
図3は低層雲監視判別システム10の構成を示すブロック図である。
図3に示すように、低層雲監視判別システム10は、視野角180度の魚眼レンズが装着され、視野内の雲画像データを取り込む赤外線カメラ11と、可視カメラ12と、温度補償用のヒーター13と、赤外線カメラ11及び可視カメラ12の制御及び画像データの取り込みなどを行うPC14とを備える。赤外線カメラ11は、魚眼レンズ(図示せず)と、水蒸気(雲)から放射される赤外線(例えば、波長10.4μmを含む赤外線)を撮像する撮像素子を有する。可視カメラ12の設置は任意であり、必要に応じて省略されてもよい。また、低層雲監視判別システム10は、温度補償用のファン(図示せず)をさらに備えてもよい。
また、低層雲監視判別システム10は、PC14から画像データ等に基づき低層雲についての雲占有メッセージを作成し、通信ネットワークを介してその雲占有メッセージを光運用計画装置30に送信する低層雲監視判別装置15を備える。
【0033】
図4は低層雲監視判別装置15の動作を示すフローチャートである。
低層雲監視判別装置15は、PC14から視野内の雲画像データを取り込む(ステップ401)と共に、視野内の雲画像データを解析用のデータとして保存する(ステップ402)。視野内の雲画像データとは、典型的には上空の天頂から水平線(360度)に至る範囲(全天)を撮影できる魚眼レンズ(赤外線カメラ11)の視野内の画像データである。視野内の雲画像データは、低層雲のデータである。
次に、低層雲監視判別装置15は、通信ネットワークを介して所定のサイト又は光運用計画装置30から探査機5の軌道予報値を取り込み、当該視野内での探査機5の予想軌道弧を描く(ステップ403)。
次に、低層雲監視判別装置15は、前記の視野内の雲画像データに前記の視野内の予想軌道弧を重ね合わせる(ステップ404)。
図5にその一例を示す。
【0034】
次に、低層雲監視判別装置15は、
図5に示すように、視野内の予想軌道弧と重なる領域を例えば3区間B1、B2、B3に分け、それぞれの区間B1〜B3の雲占有割合を判別する(ステップ405)。区間B1〜B3は、魚眼レンズを介して取得された赤外線カメラの撮像データを上記予想軌道弧に沿う探査機5の移動方向(
図5において、南東から北東を経由して北西に向かう矢印として図示)に沿って区画した領域であり、
図5の例は、南東から北西に向かって区間B1、区間B2及び区間B3が順に任意の角度範囲で区画された例を示している。分割する軌道弧は3区間に限定されず、2区間或いは4区間以上であってもよい。なお、区間B1〜B3は、
図9に示す高域画像データにおける区間Bの範囲内で、その一部をさらに3つに分割した各区間に相当する。
【0035】
低層雲監視判別装置15は、雲画像データの各ピクセルの出力情報に基づき雲有無を判別する。例えば、低層雲監視判別装置15は、画像データの各ピクセルの輝度又は温度などの情報に基づき雲有無を判別する。
本実施形態において、予想軌道弧に対する雲占有割合は、予想軌道弧が属する画素の総数を第1画素数、第1画素数のうち雲が占める画素の総数を第2画素数としたとき、第1画素数に対する第2画素数の割合((第2画素数/第1画素数)×100[%])で算出される。
第1画素数は、探査機5が属する区間(
図5の例では区間B1)にあっては、予想軌道弧上における現在の探査機5の位置から当該探査機が属する区間の予想軌道弧の終端までのピクセルの総数をいい、探査機5の移動に応じて徐々に減少する。一方、探査機5が属さない区間(
図5の例では区間B2および区間B3)にあっては、当該各区間において予想軌道弧が占めるピクセルの総数をいう。
【0036】
低層雲監視判別装置15は、雲占有メッセージとして、3区間B1〜B3の雲占有割合とこれらの合計に関する情報を光運用計画装置30に出力する(ステップ406)。
図6に、低層雲監視判別装置15から光運用計画装置30へ送信される雲占有メッセージCM1の一例を示す。雲占有メッセージCM1は、現時点における各区間の雲占有割合および全区間の雲占有割合を、
図6に示す如くメッセージの形式(例えば、テキスト形式)で作成される。
【0037】
低層雲監視判別装置15は、以上の処理(ステップ401〜406)を所定の周期で繰り返す。これにより、時々刻々と変化する探査機5の位置と雲の動きに対応した雲占有割合の時間変化を取得することができる。所定の周期は特に限定されず、例えば、5分、10分、30分あるいはそれ以上の時間であってもよい。また、所定の周期で上記処理を繰り返すことによって、時々刻々と変化する探査機5の位置と雲の動きに対応した雲占有割合のデータは更新、上書きされてもよい。
【0038】
なお、低層雲監視判別装置15は、前記視野内の雲画像データと観測センサー(赤外線カメラ11等)の光学設計(レンズ視野角、焦点距離、センサーサイズ、ピクセル数等)から分かる予想軌道弧の外側の観測領域内において、予想軌道弧の外側から近接する低層雲の当該予想軌道弧への到達予報情報(第2の到達予報情報)を作成し、当該到達予報情報を光運用計画装置30に出力するように構成することもできる。当該到達予報情報は、例えば、探査機5の予想軌道弧の外側の観測領域における低層雲の有無等に基づいて作成される。この場合、光運用計画装置30は、当該到達予報情報も加味して光地上局2aの運用計画を管理する。例えば、光運用計画装置30は、低層雲の到達予報情報を用いた光地上局2a,2b,2cの局間のネットワーク切り替え判断と制御に関する運用を管理(例えば、立案した光運用計画を修正)することで、先読み処理による、リアルタイムに近い予測に基づいた運用の管理を行うことができる。
【0039】
図7は高層雲監視判別システム20の構成を示すブロック図である。
図7に示すように、高層雲監視判別システム20は、気象衛星4aから気象データセンター6及び通信ネットワークを介して広域の雲画像データ(フルディスク画像)を受信して蓄積する気象衛星データサーバー21を備える。また、高層雲監視判別システム20は、データサーバー21からの画像データ等に基づき高層雲についての雲占有メッセージを作成し、通信ネットワークを介してその雲占有メッセージを光運用計画装置30に送信する高層雲監視判別装置22を備える。
【0040】
図8は高層雲監視判別装置22の動作を示すフローチャートである。
高層雲監視判別装置22は、気象衛星データサーバー21よりアジア太平洋領域のフルディスクの赤外観測情報(広域)を取り込む(ステップ801)。広域とは、典型的には、1つの気象衛星から見える地球上の領域である(
図9参照)。
次に、高層雲監視判別装置22は、取得した赤外観測情報よりフルディスクの赤外雲画像(広域)を作成し画像データとして出力する(ステップ802)。
高層雲監視判別装置22は、以上の処理(ステップ801〜802)を繰り返す。
なお、高層雲監視判別装置22は、赤外雲画像だけでなく、可視雲画像を取得可能に構成されてもよい。
【0041】
次に、高層雲監視判別装置22は、出力した画像データを取り込み(ステップ803)、また通信ネットワークを介して所定のサイト又は光運用計画装置30から探査機5の軌道予報値を取り込み、当該広域での探査機5の予想軌道弧を描く(ステップ804)。
次に、高層雲監視判別装置22は、前記の広域の雲画像データに前記の広域での予想軌道弧を重ね合わせる(ステップ805)。
図9にその一例を示す。
【0042】
高層雲監視判別装置22は、広域の雲画像データの各ピクセルの輝度又は温度などの情報に基づき雲有無を判別する。高層雲監視判別装置22は、
図9に示すように、当該広域の赤外雲画像内の予想軌道弧と重なる領域を例えば3区間A〜Cに分け、それぞれの区間A〜Cの雲占有割合を判別する(ステップ806)と共に、予報処理を実行する(ステップ807)。分割する軌道弧は3区間に限定されず、2区間或いは4区間以上であってもよい。
【0043】
区間A〜Cは、当該広域の赤外雲画像を予想軌道弧に沿う探査機5の移動方向(
図9において、南東から北西に向かう矢印として図示)に沿って区画した領域であり、
図9の例では、南東から北西に向かって区間A、区間B及び区間Cが順に気象衛星4aから見た所定の角度範囲で区画された例を示している。区間Bには、高層雲のほか、
図5の区間B2から区間B3にかけて存在する低層雲が確認される。
雲占有割合の算出方法は、上述した低層雲監視判別装置15において実行される雲占有割合の算出方法と同様であるため、その詳細な説明は省略する。この場合、低層雲監視判別装置15において取得される低層雲の雲画像データと高層雲監視判別装置22において取得される広域の雲画像データとの間の解像度を合わせるためのデータ補完処理、または解像度変換処理が実施されてもよい。
予報処理では、所定時間(例えば10分)毎の雲位置変化と、例えば2km間隔のメッシュ定義より雲予報情報(速度、方向、到達時間)及び警告情報を作成する。ここで到達時間とは、現在から光地上局2aと探査機5との2点間光伝送路(光通信リンク)を雲が遮蔽するまでの時間を意味する。
【0044】
次に、高層雲監視判別装置22は、雲占有メッセージとして、3区間A〜Cの雲占有割合とこれらの合計に関する情報、ならびに予報情報を光運用計画装置30に出力する(ステップ808)。
図10に、高層雲監視判別装置22から光運用計画装置30へ送信される雲占有メッセージCM2の一例を示す。雲占有メッセージCM2は、
図10に示す如くメッセージの形式(例えば、テキスト形式)で作成される。
【0045】
高層雲監視判別装置22は、以上の処理(ステップ803〜808)を所定の周期で繰り返す。これにより、時々刻々と変化する探査機5の位置と雲の動きに対応した雲占有割合の時間変化を取得することができる。所定の周期は特に限定されず、典型的には、上述した低層雲監視判別装置15における処理(
図4)と同一の周期(例えば、10分、30分、1時間、あるいはそれ以上の時間)である。
【0046】
光運用計画装置30は、このように分割された区間A〜Cの雲占有割合(雲占有メッセージCM1,CM2)に基づき、宇宙と地上間の光通信リンクの雲による遮断の有無について、探査機5との通信時間軸に沿って上記区間毎に確認する。これにより、宇宙機の進行方向に対する各区間に対して雲占有による遮断の有無を細かく事前に判断した雲回避が可能となり、探査機5からのデータ転送の通信時間がより確保可能な各光地上局の選択と局間のネットワーク切り替え制御を実現できる。結果として宇宙‐地上間の光通信リンクは、雲に遮断されることなく柔軟にデータ転送を実施できる。なお、この区間設定は地域差や雲の種類で相違のある雲占有の状況に応じて変更可能とし判断をより高度化することもできる。
【0047】
また、3区間A〜Cの区間毎の雲占有割合だけではなく、それらの合計を例えば、光通信リンクの時間軸上の全体の雲占有率として用いることができる。例えば、区間毎では、区間毎の評価でしかなく、区間毎の細かな対応が判断できるが、探査機5の移動により過去の区間は意味をなさなくなる場合がある。これに対して、同時に全区間の雲占有割合の合計値が分かると、進行時間毎の合計値で全体を俯瞰した光地上局の切り替え判断をすることができる。
【0048】
更に、予報情報を例えば探査機5の軌道弧の外側から侵入し、地上の雲観測装置では限定された観測領域により観測困難な他の雲の軌道弧への進入予測として用いることができる。
本実施形態において、高層雲監視判別装置22は、広域の雲画像データに基づき、当該広域の予想軌道弧に近接する雲の当該予想軌道弧への到達予報情報(第1の到達予報情報)を作成し、当該到達予報情報を光運用計画装置30に出力する。この場合、光運用計画装置30は、当該到達予報情報も加味して光地上局2aの運用計画を管理する。
これにより、地上観測では視野外にある他の雲の軌道弧への進入予測に使用できる先読みをした雲回避のための光地上局間の切り替え判断が実施可能となり、光通信リンクの雲による途絶機会をより低減し、宇宙‐地上局間のデータ伝送サービスの向上を実現することが可能となる。
【0049】
図11に示すように、光地上局2と探査機5との間の大気中には様々な高度に様々な種類の雲が存在する。本実施形態に係る光地上局運用管理システム1は、上記の構成の低層雲監視判別装置15及び高層雲監視判別装置22を備えることで、地上および宇宙からこれらの様々な高度の雲の有無を判別することができる。
【0050】
光運用計画装置30は、低層雲監視判別装置15により判別された結果及び高層雲監視判別装置22により判別された結果に基づき、宇宙機の予想軌道弧の低層雲と高層雲とを重畳した雲占有割合を判断し、その判断結果によって光地上局2の運用計画を管理するものである。ここで、低層雲と高層雲とを重畳した雲占有割合を判断するとは、低層雲に関する雲占有割合と高層雲に関する雲占有割合の2つのうち、区間ごとに、雲占有割合の高い方を採用することをいう。
【0051】
典型的には、光運用計画装置30は、光地上局2の初期運用計画を立案し、上記の低層雲監視判別装置15により判別された結果及び高層雲監視判別装置22により判別された結果に基づき、当該計画を適宜修正する。そして、本実施形態に係る光地上局運用管理システム1は、当該計画に基づき光地上局2間のネットワーク切り替え制御を実施する。この点を以下でより詳細に説明する。
【0052】
図12は本実施形態に係る光地上局運用管理システム1におけるネットワーク上の構成を示す図である。
図12において、符号1aはアジア太平洋機関における光地上局運用管理システム、符号1bは欧州機関における光地上局運用管理システム、符号1cは北米機関における光地上局運用管理システムを示している。CMは低層雲および高層雲の雲占有メッセージCM1,CM2の総称であり、NPはネットワーク計画(運用計画)を示している。そして、LPS(Laser Planning Systems)_Aは光運用計画装置30aを、LPS_Bは光運用計画装置30bを、LPS_Cは光運用計画装置30cをそれぞれ示している。
【0053】
光運用計画装置30は、宇宙機(例えば探査機5)の所属機関に応じた数が存在する。1機関であれば、光運用計画装置30は1台であり、
図12に示した如く3機関であれば3台となる。ここでは、各機関の光運用計画装置を光運用計画装置30a、光運用計画装置30b、光運用計画装置30cとする。
【0054】
本実施形態に係る光地上局運用管理システム1においては、光運用計画装置30が1台の場合、限定された光運用計画装置30がネットワーク制御の判断と実施を行うマスター局となる。一方、
図12に示す如く光運用計画装置30が3台の場合、例えば所属機関の宇宙機の運用優先順などに応じて切り替えられる各光運用計画装置30a、30b、30cのうち1つをマスター局、他は支援装置と定義する。いずれの場合もマスター局が、局切り替えの判断と制御の権限をもつことにより複数の光地上局2a、2b、2cに対して雲を回避した宇宙機からのデータダウンリンクの効率の向上を図ることができる。
【0055】
マスター局の光運用計画装置30(例えば光運用計画装置30a)では、収集した情報とネットワーク切り替え判断基準に基づき光地上局間のネットワーク切り替え制御を実施する。このネットワーク切り替え判断基準(後述する「基準割合」)は、光地上局2a、2b、2cが設置されている場所の年間の雲占有率と宇宙機との通信時間との関係で変更可能とされている。また、ネットワーク切り替え制御は、各宇宙機の各光地上局2a、2b、2cにおける運用開始前の処理(プリパス処理)時刻に対して切り替え処理が十分に間に合うことを条件としている。
【0056】
図13は光運用計画装置30の動作を示すフローチャートである。
マスター局の光運用計画装置30aは、探査機5の軌道予報値を取り込み、初期運用計画を作成する(ステップ1301)。探査機5の軌道予報値は、例えば所定のサイト又は測距サービスにより提供される軌道情報を用いて専用の軌道解析装置から通信ネットワークを介して取り込む。
次に、各光運用計画装置30は、初期運用計画を各光地上局2a、2b、2cへ転送し、設定し、各設定に対する応答を受信し、設定完了を確認する(ステップ1302)。
次に、各光運用計画装置30は、低層雲監視判別装置15により判別された結果及び高層雲監視判別装置22により判別された結果としての雲占有メッセージCM(低層雲の雲占有メッセージCM1及び高層雲の雲占有メッセージCM2)の取り込みを開始する(ステップ1303)。
【0057】
次に、マスター局の光運用計画装置30aは、雲占有メッセージCMに基づき、
光地上局2aでの雲占有割合 ≦ 基準割合[%]
光地上局2bでの雲占有割合 ≦ 基準割合[%]
光地上局2cでの雲占有割合 ≦ 基準割合[%]
かどうかを判断する(ステップ1304)。
マスター局の光運用計画装置30aは、光地上局での雲占有割合が基準割合を超えない場合には、初期運用計画を維持する(ステップ1305)。
なお、基準割合は、当初立案された光運用計画(初期光運用計画)を変更する処理を実行するか否かの基準となる閾値に相当し、光運用計画装置30aは、雲占有割合が当該基準割合を超えた場合、変更後の光運用計画を各光地上局へ転送する。基準割合の値は特に限定されず、例えば、50%、60%、あるいは70%以上など、任意に設定可能である。また、基準割合は各光地上局において同一の値に設定されてもよいし、異なる値に設定されてもよい。
【0058】
一方、マスター局の光運用計画装置30aは、雲占有割合が基準割合を超えた場合には、基準割合を超えた光地上局の雲遮蔽予想割当時間(BP)を算出する(ステップ1306)。例えば、光地上局2aの雲占有率が基準割合を超えた場合には、光地上局2aの雲遮蔽予想割当時間(BP:Blocking Plan)を算出する。
次に、マスター局の光運用計画装置30aは、光地上局2a以外の他の光地上局2b、2cにおいて、
t(変更作成+転送時間)≦tb(光地上局2bのプリパス処理時間)
t(変更作成+転送時間)≦tc(光地上局2cのプリパス処理時間)
かどうかを判断する(ステップ1307)。つまり、光地上局2aから変更可能な光地上局があるかどうかを判断する。ここで、光地上局2b、2cのプリパス処理時間とは、局制御の準備処理に必要な時間である。
【0059】
マスター局の光運用計画装置30aは、例えば光地上局2bが可能な場合には、光地上局2bへの変更計画を作成し、光運用計画装置30bと共有し、そこを介して光地上局2bにその変更計画を転送して設定し、応答を受信する(ステップ1308)。また、マスター局の光運用計画装置30aは、光地上局2b及び光地上局2cの両方が可能な場合には、時間軸で次パスの光地上局2b又は光地上局2cへの変更計画を作成し、光運用計画装置30b又は光運用計画装置30cを介して光地上局2b又は光地上局2cにその変更計画を転送して設定し、応答を受信する(ステップ1309)。
マスター局の光運用計画装置30aから各光運用計画装置30b、30c及び光地上局2b、2cへ送信される運用計画の情報は、
図14に示す如くメッセージの形式で行われる。
【0060】
図15は、雲遮蔽を回避するための光運用計画の修正方法を説明する図である。同図に示すように、光地上局2a、2b、2cは、それぞれ異なる時間帯域において運用計画が割り当てられる。本実施形態では
図1に示すように、光地上局2a、光地上局2b及び光地上局2cの順で探査機5との光通信が切り替えられ、探査機5のメモリに蓄積されたデータ(例えば画像データ)が各地上局2a〜2cによって時分割して受信される。
マスター局の光運用計画装置30aは、地上局2a〜2cの運用期間(VP:Visible Plan)を含む運用計画を立案する。VPは、地上局2a〜2cが探査機5と光通信を行う割り当て時間(AP:Assigned Plan)と、その前後に設定されたプリパス処理時間およびポストパス処理時間とを含む。光運用計画装置30aは、雲占有メッセージCMに基づき、一の地上局のAPの期間内に雲占有割合が基準割合以上となる期間が生じると判定した場合、その期間を雲遮蔽予想割当時間(BP:Blocking Plan)として設定し、当該BPの期間において受信予定であったデータを他の光地上局が代わりに受信できるように運用計画を修正する。この場合、当該他の地上局のAPに、上記一の地上局のBP期間内に受信予定であったデータを受信するための再割り当て時間RP(Reassigned Plan)が設定される。
図15に示す「初期計画変更に必要な時間」は、光地上局2aのBPの開始時刻から光地上局2bのRPの開始時刻までの時間をいう。
【0061】
次に、
図16〜
図19をも参照して、本実施形態に係る光地上局運用管理システム1の具体的な動作を説明する。
【0062】
図16は、
図13のステップ1304及びステップ1306に応じた各光運用計画装置30a、30b、30cにおける各光地上局2a、2b、2cの割り当て計画状態の例を示している。
図17は、各光地上局2a、2b、2cの状態を示している。
図17に示すように、各光運用計画装置30a〜30cにおける各光地上局2a〜2cは、過去の雲占有情報(雲占有割合の時間変化)、現在の雲占有情報(現在の雲占有割合)等を保有する。また、これらは、探査機5から受信した現在までのデータ量と目標データ量、さらには各回のパス運用ごとのデータ受信量の累積データを数値や適宜のグラフで表示する累積サービス結果を提供する機能を有する。
累積サービス結果とは、雲回避を実現するネットワーク切り替え制御によって各光地上局が実際に実施した各宇宙機に対する光通信リンクによるデータ伝送サービス実施結果であり、例えば、宇宙‐地上間光通信ネットワーク全体の運用サービス稼働率等の評価や、そのサービス稼働率の向上のために先に説明した区間情報等の切り替え判断処理のための設定変更の調整指標としても使用される。ここでは、図中右側のグラフに示すように、自身の光地上局における受信データ量と他の2つの光地上局における受信データ量の累積値が各回のパス運用ごとに表示され、その累積値の時間変化によって光運用計画の実効性が評価される。
【0063】
図17に示すように、光地上局2aでの過去の雲占有情報(雲占有割合)は徐々に増加し、現在(ステップ1304の判断時)の雲占有情報(雲占有割合)は70%となっている。光地上局2bでの過去の雲占有情報(雲占有割合)は徐々に減少し、現在の雲占有情報(雲占有割合)は30%となっている。光地上局2cでの過去の雲占有情報(雲占有割合)は徐々に増加し、現在の雲占有情報(雲占有割合)は50%となっている。
【0064】
ステップ1304における基準割合が例えば一律に70%であるとすると、ステップ1306において例えば光地上局2b又は光地上局2cが選択される。そして、例えば、ステップ1309の処理によって光地上局2bが選択される。従って、
図16に示す如く、光地上局2aの第1パス運用の途中(
図15のBP期間に相当)からデータを切り取り、それを光地上局2bの第1パス運用の先頭(
図15のRP期間に相当)に挿入する計画に変更する。
【0065】
図18は上記のステップ1302及びステップ1303における各部間のデータのやりとりを示している。また、
図19は
図13のステップ1309における、具体的には
図15及び
図16に示した計画変更における各部間のデータのやりとりを示している。なお、
図18及び
図19の符号2a、2b、2cに示す光地上局が3つのブロック201、202、203から構成されている。左より、ブロック201は光地上局を構成する光地上局本体(制御ブロック)、ブロック202はモデム(送受信装置)、ブロック203は宇宙機と光通信を行う望遠鏡等のハードウェアである。
各光地上局2a、2b、2cは、光運用計画装置30aが立案した光運用計画(計画1、計画2、計画3)に基づいて、前処理(プリパス処理)、パス(AP)、後処理(ポストパス処理)を実行する。そして、例えば、光地上局2aにおいて雲占有割合が基準割合を超えると判定された場合、光地上局2aのBP期間を光地上局2bのAP期間に設定する光運用計画の変更(修正)が実行される(
図19参照)。
【0066】
以上説明したとおり、現状では、雲を回避できる仕組みが十分に確立されておらず、宇宙−地球間の光通信のように大気中でレーザーを使用する場合は、従来の局分散技術だけでは、実際に雲が進入した場合は運用休止となる。しかし、本実施形態に係る光地上局運用管理システム1により、対象の衛星軌道弧との雲の重なりを判別し、光運用計画装置30により雲回避型光地上局ネットワーク制御を実施することにより、雲の進入に邪魔されず効率的に宇宙機(例えば探査機5)と光地上局2間で条件のよい光地上局2(2a、2b、2c)の選択をする。これにより、データダウンリンクの効率の向上を実現することができる。また、一の光地上局で受信できなかったデータを他の光地上局で受信することができるため、複数の光地上局を用いた相互補完(クロスサポート)による光運用計画を実現することができる。
【0067】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されず、様々な変形や応用をしての実施が可能である。そして、そのような実施の範囲も本発明の技術的範囲に属する。
【0068】
例えば、宇宙機と地上局間で雲の進入により運用が休止する課題を持つミッションは光通信だけでなく、広義の意味での宇宙機といえる対象に対するレーザー測距やデブリ観測、レーザーによる太陽光発電システムなど地球大気を通じて光学的な運用を実施する光地上システムにも本発明を適用することが可能である。
【0069】
また、上記の実施形態において観測される雲は、未来の時間に対する制御処理に用いられるものであるが、本発明では、長期間の切り替え時の雲状態メッセージ(
図6及び
図10参照)を蓄えて統計処理をすることにより各地上局における雲進入のパターンが把握できる。そこで、切り替えタイミング等の制御に際して、過去の雲状態の傾向を統計データに基づいて切り替えタイミングを判断する知的処理を行うように、光運用計画装置が構成されてもよい。
【0070】
なお、上記実施形態において、低層雲監視判別装置15で観測される画像は、
図5のように、魚眼レンズを介した観測視野が天空のみからなる全天画像を例示した。しかし、低層雲監視判別装置15で観測される画像が、天空に加えて周辺の建物等の人工構造物、山、岩、樹木等自然物を含む場合には、観測視野からこれら人工構造物、自然物を電子的に除去する処理をさらに含んで低層雲監視判別装置15が構成される。
【0071】
更に、宇宙−地上間の大気中におけるレーザー伝送において問題となるのは、大気揺らぎの影響、進入する雲であるが、昨今の地上からのレーザーを発射する事案の増加に対して航空機8が視野内に進入する場合にレーザー発射を自らブロックする必要がある。仮に視野内に長時間、航空機8が進入する場合は、それも宇宙機と光地上局との間の通信を妨げる原因となる。このため、光地上局は、従来、何らかのレーザー発射停止の仕組みとしての保安機能を具備しているが、現在では運用を停止するしか術がない。これに対して、本発明では、この場合に運用時間に対して停止から求められた一定時間が経過した段階で光地上局からメッセージを光運用計画装置30に伝達し、光運用計画装置30が雲回避と同様に切り替え制御を実施することで、この課題による一定時間以上のダウンリンクサービスの停止を回避し、ダウンリンクの効率を向上させることができる。
【0072】
[他の実施形態]
気象条件により、光地上局の周辺に霧が発生し、低層雲監視判別システムにおける魚眼レンズの視野内のある範囲、または視野全域が霧で覆われることがある。霧は光線を散乱させるため、雲と同様に通信を遮断する。このため、本発明は、雲による通信の遮断だけでなく、霧による通信の遮断を回避する目的で、上述の実施形態と同様な手法を用いて光運用計画を立案あるいは修正することも可能である。
その一方で、霧と霧以外の領域との境界は曖昧であり、魚眼レンズ視野における霧占有領域を特定することに困難を伴う。
そこで、夜間の霧の発生を想定した低層雲監視判別システム10の実施態様として、可視カメラ12の画像出力から、通信しようとする衛星の軌道の近傍にある天体について、その天体の輝度を測定する輝度測定手段(図示せず)をさらに備えてもよい。
【0073】
この場合、輝度測定手段を併せ持つ低層雲監視判別システム10は、天体の輝度測定手段を用いて、その天体の輝度を測定し、データベース(図示せず)にあらかじめ記録しておいたその天体の輝度閾値と比較する。ここで輝度閾値とは、地上−衛星間通信が可能な大気状態におけるその天体の最小輝度であってもよいし、夜間晴天時のその天体の輝度であってもよい。このように衛星の軌道の近傍にある天体の輝度をデータベースの輝度閾値と比較することによって、通信しようとする衛星の軌道に対して霧など通信障害を起こし得る気象現象の有無を判定し、光運用計画装置30へ出力する。
【0074】
光運用計画装置30は、通信しようとする衛星に対する光運用計画を作成した後、衛星軌道に対する雲占有率のデータのみならず、霧等の気象現象の有無を加味して、作成した運用計画を修正することができる。例えば、通信しようとする衛星軌道に対する雲占有率が小さい場合であっても、天体の輝度測定により通信不可と判定された場合には、その光地上局における通信を中断し、他の光地上局に切り替える。
なお上記した天体は、輝度測定が可能な輝度を有し、軌道予測可能な天体であれば制限はない。また天体が星のような点光源の場合、可視カメラ12と魚眼レンズにより構成される光学系の解像度が輝度測定に不充分な解像度である場合には、第2の可視カメラを天体追尾するように設け、第2の可視カメラによる輝度測定を実施してもよい。
【0075】
以上の説明では、霧を可視カメラによる撮影画像から判別する例を説明したが、赤外線カメラによる撮影画像から霧を判別することも可能である。この場合、地上の低層雲監視判別システムにおける赤外線カメラの撮影画像が用いられてもよいし、気象衛星で撮影された赤外線画像が用いられてもよいし、その双方が用いられてもよい。例えば、気象衛星の赤外線画像は、Night microphysics RGB合成と呼ばれる方法で処理される。雲は赤外チャネルの10.4μm対応を見ればよいが、その前後の別の赤外チャネルを使用し、データの減算、合成等を行うことで、霧の判別が可能である。