特許第6887196号(P6887196)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6887196
(24)【登録日】2021年5月20日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】防寒素材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A41D 31/06 20190101AFI20210603BHJP
   A41D 31/00 20190101ALI20210603BHJP
【FI】
   A41D31/06 100
   A41D31/00 502B
   A41D31/00 502C
   A41D31/00 502E
   A41D31/00 502G
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2021-506012(P2021-506012)
(86)(22)【出願日】2020年9月28日
(86)【国際出願番号】JP2020036554
【審査請求日】2021年2月3日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520138324
【氏名又は名称】株式会社DEE LAB
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】奥川 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】本田 巨樹
【審査官】 塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3194872(JP,U)
【文献】 特許第6577688(JP,B1)
【文献】 特開2013−256746(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/00−13/12
A41D 20/00
A41D 31/06
A41D 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防寒衣服に用いる防寒素材であって、
前記防寒衣服の表地を構成する又は前記表地の裏側に配置される生地を構成する外側生地と、
前記外側生地の内側に配置される内側生地と、
前記外側生地及び前記内側生地に接着されて前記外側生地と前記内側生地との間に空間を形成する2つの連結部材と、
前記空間に収納される充填材と、を備え、
前記2つの連結部材のそれぞれは、前記外側生地に接着される外面を形成する表地と、前記内側生地に接着される内面を形成する裏地、通気性を有し前記表地及び前記裏地間に配置される通気層と、を備え
前記2つの連結部材のそれぞれは、柔軟な素材で形成されるとともに、前記外側生地又は前記内側生地の重みによっては前記外面と前記内面との間の間隔を狭めるように変形しない程度の柔らかさを有する、防寒素材。
【請求項2】
請求項1に記載の防寒素材において、
前記2つの連結部材のそれぞれは、当該2つの連結部材を前記外側生地又は前記内側生地に接着する際のプレス機の押圧力によって変形する一方で、前記プレス機による押圧力が解除されると、プレス前の形状に復元するように構成されている、防寒素材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の防寒素材において、
前記通気層は、編み物、織物又は不織布で構成されている、防寒素材。
【請求項4】
請求項に記載の防寒素材において、
前記編み物は前記表地及び前記裏地に編み込まれている、防寒素材。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の防寒素材において、
前記通気層は発泡体で構成されている、防寒素材。
【請求項6】
請求項1からの何れか1項に記載の防寒素材において、
前記2つの連結部材のそれぞれは、ダブルラッセル編み地からなる、防寒素材。
【請求項7】
請求項1からの何れか1項に記載の防寒素材において、
前記2つの連結部材のそれぞれは、高さ方向の幅に対する横方向の幅が1倍以上且つ5倍以下であり、かつ、横方向の幅が3mm以上且つ15mm以下である、防寒素材。
【請求項8】
防寒衣服に用いる防寒素材の製造方法であって、
前記防寒素材は、
前記防寒衣服の表地を構成する又は前記表地の裏側に配置される生地を構成する外側生地と、
前記外側生地の内側に配置される内側生地と、
前記外側生地及び前記内側生地に接着されて前記外側生地と前記内側生地との間に空間を形成する2つの連結部材と、
前記空間に収納される充填材と、を備え、
前記2つの連結部材のそれぞれは、前記外側生地に接着される外面と、前記内側生地に接着される内面とを有するとともに通気性を有し、
前記2つの連結部材のそれぞれは、柔軟な素材で形成されるとともに、前記外側生地又は前記内側生地の重みによっては前記外面と前記内面との間の間隔を狭めるように変形しない程度の柔らかさを有し、
前記製造方法では、
2つの連結部材をそれぞれ、外面又は内面が上を向いた状態で所定の位置に配置し、
前記所定の位置に配置された前記2つの連結部材に外側生地及び内側生地の一方を載せ、
前記外側生地及び前記内側生地の前記一方を上から押圧して前記2つの連結部材に接着し、
前記2つの連結部材が接着された前記外側生地及び前記内側生地の前記一方を、前記2つの連結部材が上になるようにプレス台に置き、
前記外側生地及び前記内側生地の他方を、前記外側生地及び前記内側生地の前記一方に接着された前記2つの連結部材に接着し、
前記外側生地及び前記内側生地の間の空間であって前記2つの連結部材間の空間に充填材を挿入する防寒素材の製造方法。
【請求項9】
請求項に記載の防寒素材の製造方法において、
上面に少なくとも2つの溝が形成された受け部材を用意し、
前記2つの連結部材をそれぞれ、外面又は内面が上を向いた状態で前記2つの溝に載置し、
前記2つの溝に載置された前記2つの連結部材に前記外側生地及び前記内側生地の前記一方を載せて、前記外側生地及び前記内側生地の前記一方を上から押圧して前記2つの連結部材に接着する、防寒素材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防寒素材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1及び2に開示されているように、防寒衣服に用いられる防寒素材が知られている。この種の防寒素材では、第1の生地と第2の生地との間の空間に羽毛、羽根、中綿等の充填材が詰められた構成となっているため、保温性が確保される。このように充填材が詰められる空間を第1の生地と第2の生地との間に形成すべく、特許文献1に開示された防寒素材では、図10及び図11に示すように、帯状部材80が用いられている。帯状部材80は、所定の幅を有するとともに一方向に長い帯状の部材であり、幅方向の一縁部80aが第1の生地81に縫い合わされ、幅方向の他縁部80bが第2の生地82に縫い合わされる。帯状部材80を第1の生地81及び第2の生地82に縫い合わせるには、まず、図12に示すように、帯状部材80を幅方向の中央部で2つに折り曲げておき、この状態で、折り曲げられた一方の部位80cの中間位置を第1の生地81に縫い付ける。そして、図13に示すように、折り曲げられた他方の部位80dを第2の生地82に縫い付ける。その後、第1の生地81と第2の生地82との間隔が広げて、両生地81,82間にできた空間に充填材83を詰める。なお、図10では、帯状部材80が略U字状に折り曲げられているが、帯状部材80は、図11に示すように、略Z字状に折り曲げられてもよい。この場合、帯状部材80は、幅方向に3つに折り曲げられた状態で第1の生地81及び第2の生地82に縫い付けられる。
【0003】
特許文献2の開示された防寒素材では、メッシュテープからなる帯状部材が幅方向に3つ折りされ、両端の部位にそれぞれ接着テープが縫い付けられる。そして、一方の接着テープが第1の生地に接着され、他方の接着テープが第2の生地に接着される。この構成では、帯状部材は略Z字状に折り曲げられた構成となる。ただし、帯状部材が第1の生地及び第2の生地に接着されるため、生地に縫い孔ができない。したがって、縫い孔を通して充填材が飛び出すことを防止できる。
【0004】
上述したように、特許文献1及び2に開示された防寒素材では、帯状部材が用いられており、第1の生地と第2の生地との間に充填材を収納する際には、第1の生地と第2の生地との間の間隔が広がるように、帯状部材を変形させる作業が必要となる。すなわち、帯状部材は、第1の生地に縫い付けられる又は接着されるように、幅方向に折り曲げられる素材で構成される。このため、図13に示すように、充填材83が詰められる前の状態では、第1の生地81と第2の生地82との間の隙間幅は非常に狭く、それ故に、充填材83を生地81,82間に挿入するには、第1の生地81と第2の生地82との間の間隔を広げる作業が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6226703号公報
【特許文献2】特許第6247431号公報
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、外側生地と内側生地との間に充填材を充填する際の作業負担を軽減できる防寒素材を提供することである。
【0007】
本発明の一局面に係る防寒素材は、防寒衣服に用いる防寒素材であって、前記防寒衣服の表地を構成する又は前記表地の裏側に配置される生地を構成する外側生地と、前記外側生地の内側に配置される内側生地と、前記外側生地及び前記内側生地に接着されて前記外側生地と前記内側生地との間に空間を形成する2つの連結部材と、前記空間に収納される充填材と、を備える。前記2つの連結部材のそれぞれは、前記外側生地に接着される外面を形成する表地と、前記内側生地に接着される内面を形成する裏地、通気性を有し前記表地及び前記裏地間に配置される通気層と、を備える。前記2つの連結部材のそれぞれは、柔軟な素材で形成されるとともに、前記外側生地又は前記内側生地の重みによっては前記外面と前記内面との間の間隔を狭めるように変形しない程度の柔らかさを有する。
【0008】
本発明の一局面に係る防寒衣服に用いる防寒素材の製造方法は、前記防寒衣服の表地を構成する又は前記表地の裏側に配置される生地を構成する外側生地と、前記外側生地の内側に配置される内側生地と、前記外側生地及び前記内側生地に接着されて前記外側生地と前記内側生地との間に空間を形成する2つの連結部材と、前記空間に収納される充填材と、を備える前記防寒素材の製造方法である。前記2つの連結部材のそれぞれは、前記外側生地に接着される外面と、前記内側生地に接着される内面とを有するとともに通気性を有する。前記2つの連結部材のそれぞれは、柔軟な素材で形成されるとともに、前記外側生地又は前記内側生地の重みによっては前記外面と前記内面との間の間隔を狭めるように変形しない程度の柔らかさを有する。前記製造方法では、2つの連結部材をそれぞれ、外面又は内面が上を向いた状態で所定の位置に配置し、前記所定の位置に配置された前記2つの連結部材に外側生地及び内側生地の一方を載せ、前記外側生地及び前記内側生地の前記一方を上から押圧して前記2つの連結部材に接着し、前記2つの連結部材が接着された前記外側生地及び前記内側生地の前記一方を、前記2つの連結部材が上になるようにプレス台に置き、前記外側生地及び前記内側生地の他方を、前記外側生地及び前記内側生地の前記一方に接着された前記2つの連結部材に接着し、前記外側生地及び前記内側生地の間の空間であって前記2つの連結部材間の空間に充填材を挿入する。
【0009】
以上説明したように、本発明によれば、外側生地と内側生地との間に充填材を充填する際の作業負担を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】防寒素材の斜視図である。
図2】防寒素材が用いられた後ろ身頃の図である。
図3】防寒素材を構成する連結部材の概略図である。
図4】連結部材の変形例である。
図5】連結部材の他の変形例である。
図6】防寒素材を製造するときに用いる受け部材の斜視図である。
図7】受け部材に配置する前の状態の防寒素材を説明するための図である。
図8】外側生地に連結部材を接着する工程を説明する図である。
図9】内側生地に連結部材を接着する工程を説明する図である。
図10】従来の防寒素材を示す図である。
図11】従来の他の防寒素材を示す図である。
図12】帯状部材を第1の生地に縫い付ける工程を説明する図である。
図13】帯状部材が第1の生地及び第2の生地に縫い付けられた状態を示す図である。
【実施形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら、実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0012】
図1に示す防寒素材10は、保温性を有する防寒衣服の要素として用いられる素材である。防寒衣服は、例えば、ジャケット、ベスト、パンツ、コート、ブルゾン、パーカー等の衣服であって、保温性に優れた衣服である。防寒素材10は、例えば図2に示すように、ジャケットの後ろ身頃1として構成されてもよい。なお、図1は、後ろ身頃1を構成する防寒素材10の一部のみを描いている。防寒素材10は、後ろ身頃1を構成するように形成されるのではなく、前身頃、脇見頃、袖、襟等を構成するように形成されてもよい。また、防寒素材10は、パンツの股上、股下を構成するように形成されていてもよい。
【0013】
図1に示すように、防寒素材10は、外側生地12と内側生地14と少なくとも2つの連結部材16,16と充填材18とを備える。
【0014】
外側生地12は、防寒衣服の表地(外地)を構成してもよく、これに代えて、前記表地の裏側に配置される生地を構成してもよい。外側生地12は、通気性がない合成繊維又は通気性がほとんどない合成繊維によって構成されている。
【0015】
内側生地14は、外側生地12の内側に配置される生地であり、例えば防寒衣服の裏地によって構成されている。ただし、内側生地14は、防寒衣服の裏地によって構成されていなくてもよい。内側生地14は、例えば、防寒衣服において裏地の外側に位置する生地(例えば、防寒衣服が4層構造の場合には、外側から3層目の生地)によって構成されていてもよい。
【0016】
2つの連結部材16,16はそれぞれ、外側生地12と内側生地14とを連結する部材であって、一方向に長い帯状に形成されている。2つの連結部材16,16は、互いに平行に並んだ状態で直線状に延びる。しかしながら、この形態に限られるものではなく、各連結部材16は曲がっていてもよく、また、互いに平行でなくても良い。
【0017】
連結部材16の外面16a(すなわち、前記一方向に直交する面の内の1つの面)は外側生地12に接着されている。連結部材16において外面16aとは反対側を向く内面16bは、内側生地14に接着されている。連結部材16と外側生地12との間の接着は、熱可塑性接着剤(ホットメルト)、溶剤系接着剤、湿気硬化型接着剤、UV硬化型接着剤、又はアクリル接着剤(架橋しない粘着剤)を用いて接着されている。連結部材16と内側生地14との間の接着も同様である。
【0018】
2つの連結部材16,16が外側生地12と内側生地14とに結合されることにより、外側生地12、内側生地14及び2つの連結部材16,16によって空間20が形成される。つまり、2つの連結部材16,16はそれぞれ、外側生地12と内側生地14との間に、閉じた空間20を形成するための部材である。
【0019】
各連結部材16は、柔軟な素材で形成されている。ただし、各連結部材16は、外側生地12又は内側生地14の重みによっては外面16aと内面16bとの間の間隔を狭めるように変形しない程度の柔らかさを有する。つまり、各連結部材16は、外側生地12又は内側生地14の重みによって潰れたり、折れ曲がったりしない程度の強度を有しているため、空間20内に充填材18が充填されていない状態のときでも、連結部材16近傍の外側生地12と内側生地14との間の間隔は縮まらない。
【0020】
各連結部材16は、通気性を有している。このため、空気が連結部材16を通過できるため、連結部材16を通して空間20の内外に空気が流通できる。
【0021】
充填材18は、空間20に収納される。充填材18は、羽根、ダウン、綿等の素材であって、空間20に閉じ込められることにより、防寒素材10が保温性を発揮するのに寄与する素材である。
【0022】
図3に示すように、各連結部材16は、ダブルラッセル編み地からなる。すなわち、連結部材16は、表地24と裏地25と通気層26とを含む三層構造に構成されている。表地24の表面は連結部材16の外面16aを形成し、裏地25の裏面は連結部材16の内面16bを形成している。表地24の表面は外側生地12に接着され、裏地25の裏面は内側生地14に接着される。そして、通気層26は、表地24の裏面に結合されるとともに、裏地25の表面に結合されている。なお、通気層26は、表地24の裏面に接着されてもよく、また裏地25の表面に接着されてもよい。
【0023】
表地24及び裏地25はそれぞれ、例えばナイロンとポリウレタンの混紡生地(織物)で構成されていてもよく、あるいはポリエステル生地(織物)で構成されていてもよい。また、表地24と裏地25とは、互いに異なる生地で構成されていてもよい。
【0024】
通気層26は、連結部材16において通気性を確保する部分であり、表地24と裏地25との間に位置している。通気層26は、編み物26aで構成されている。この編み物26aは表地24及び裏地25に編み込まれている。このため、表地24は通気層26から容易に剥がれず、また、裏地25も通気層26から容易に剥がれない。
【0025】
なお、通気層26は、編み物26aに代え、発泡体26bによって構成されていてもよい。この場合、直方体形状の発泡体26bによって構成され、発泡体26bは表地24及び裏地25に接着される。また、図4に示すように、発泡体26bの表面及び裏面にそれぞれラミネート層26c、26dが接着されていてもよく、この表側のラミネート層26cに表地24が接着され、裏側のラミネート層26dに裏地25が接着されていてもよい。
【0026】
また、通気層26は、編み物26aに代え、織物によって構成されてもよく、あるいは、不織布によって構成されてもよい。通気層26が織物によって構成される場合には、この織物は、表地24及び裏地25よりも目が粗いことが好ましい。
【0027】
各連結部材16は、高さ方向の幅hに対する横方向の幅wが1倍以上且つ5倍以下であり、かつ、横方向の幅wが3mm以上且つ15mm以下である。ただし、この寸法に限られるものではなく、連結部材16は他の寸法を有していても良い。
【0028】
なお、連結部材16は、ダブルラッセル編み地よって構成される形態に限られない。例えば、図5に示すように、連結部材16は発泡体28によって構成されていても良い。発泡体28は、一方向に長い帯状に形成されており、外面28a(すなわち、前記一方向に直交する面の内の1つの面)が外側生地12に接着され、外面28aとは反対側を向く内面28bが内側生地14に接着される。
【0029】
ここで、防寒素材10の製造方法について、図6図9を参照しつつ説明する。なお、ここでは、連結部材16をまず外側生地12に接着し、その後で内側生地14を接着する方法について説明する。ただし、先に内側生地14を接着し、その後に外側生地12を接着する方法も同様に行うこともできる。その場合、外側生地12と内側生地14を用いる順番が逆になる点で異なるが、その他は同じであるため、ここではその説明を省略する。
【0030】
防寒素材10を製造するには、図6に示す受け部材30を用いる。受け部材30は例えばシリコンマットで構成され、上面に少なくとも2つの溝30a,30aが形成されている。各溝30aは、連結部材16の形状に適した形状であり、外側生地12及び内側生地14に連結部材16,16を配置する際の間隔で溝30a,30aが形成されている。この受け部材30をプレス台35の上に載置する。
【0031】
必要な数の連結部材16,16をそれぞれ、外面16aが上を向いた状態で溝30aに載置する。このとき、連結部材16の外面16aは、受け部材30の上面よりも上側に突出している。つまり、受け部材30の溝30aの深さは、連結部材16の高さ方向の幅hよりも浅い。
【0032】
図7に示すように、連結部材16の外面16a及び内面16bには、それぞれ離型紙32a,32bが取り付けられているので、まず、外面16aに付着している離型紙32aを取り除く。これにより、連結部材16の外面16aに付着している接着剤34aが露出する。なお、外面16aの離型紙32aを取り除く作業は、連結部材16を溝30aに配置する前に行っても良い。
【0033】
次に、図8に示すように、溝30aに載置された各連結部材16に外側生地12を載せ、プレス機によって外側生地12を上から押圧し、外側生地12を各連結部材16,16に接着する。このとき、接着剤34aの種類にもよるが、加熱しながら押圧する。すなわち、多数の連結部材16,16を一括して外側生地12に接着する。
【0034】
連結部材16,16が外側生地12に接着されると、外側生地12に接着された連結部材16,16を受け部材30から外し、この外側生地12を、連結部材16,16が上になるようにプレス台35の上に置く。この状態で、連結部材16の内面16bに取り付けられている離型紙32bを取り除いて接着剤34bを露出させ、この状態で、図9に示すように、外側生地12の位置に合わせて上から内側生地14を載せる。このとき、充填材18がまだ空間20内に配置されていないが、この状態でも、各連結部材16は、外側生地12又は内側生地14の重みによっては、外面16aと内面16bとの間の距離が小さくなるように変形しない。一方で、外側生地12又は内側生地14は、自身の重みによって、空間20を凹ませるようにたわむ。
【0035】
そして、プレス機によって内側生地14を上から押圧して、内側生地14を連結部材16,16に接着する。このとき、接着剤34bの種類にもよるが、加熱しながら押圧する。すなわち、多数の連結部材16,16を一括して内側生地14に接着する。このとき、連結部材16,16は、プレス機による押圧力によって外側生地12と内側生地14とが互いに近づくように変形するが、プレス機による押圧力が解除されたときには、連結部材16,16は、プレスされる前の形状に復元する。このため、外面16aと内面16bとの間の距離が大きくなるように連結部材16を変形させる作業は必要ない。
【0036】
この点に関し、図12及び図13に示す従来技術のように、U字状に折り曲げられる帯状部材80が用いられる場合において、プレス機を使って、多数の帯状部材80を第1の生地81又は第2の生地82に同時に接着しようとすると、帯状部材80に折り目がついてしまい、帯状部材80はU字状に折れ曲がった状態に維持されてしまう。このため、第1の生地81と第2の生地82との間の間隙はほとんどなくなってしまう。したがって、第1の生地81と第2の生地82との間の距離を広げる作業が必要になる。一方、帯状部材80に折り目がつかないようにするには、各帯状部材80をそれぞれ第1の生地81又は第2の生地82に1つずつ接着しなければならないため、空間形成のための工数が多くなってしまう。
【0037】
これに対し、本実施形態の連結部材16は、連結部材16を外側生地12及び内側生地14に接着する際にプレスされたとしても、その後に、外側生地12又は内側生地14の重みで潰れていない状態に復元する。したがって、プレス機を使って多数の連結部材16を外側生地12及び内側生地14に接着することが可能となっている。
【0038】
最後に、外側生地12と内側生地14との間の空間20に充填材18を挿入する。これにより、防寒素材10が完成する。
【0039】
以上説明したように、本実施形態に係る防寒素材10では、外側生地12と内側生地14との間の空間20に充填材18が収納されていない状態で且つ2つの連結部材16,16の上に外側生地12又は内側生地14が載った状態においては、2つの連結部材16,16のそれぞれは、連結部材16,16の外面16aと内面16bとの間の間隔が狭まるように変形しない。つまり、2つの連結部材16,16は、外側生地12と内側生地14との間の空間20に充填材18が収納されていないときの形状が、当該空間20に充填材18が収納されたときの形状とほぼ同じ形状に維持されている。このため、連結部材16の近傍における外側生地12と内側生地14との間の間隙の幅が、連結部材16,16の高さ幅に確保される。したがって、外側生地12と内側生地14との間の空間20に充填材18を詰める際に、連結部材16,16の形状を変形させる作業が不要になる。一方で、連結部材16,16はそれぞれ柔軟な素材で形成されているため、防寒素材10が防寒衣服に使用された場合において、連結部材16,16の存在によって防寒衣服のシルエットが損なわれるという事態が起こりにくい。また、連結部材16,16が通気性を有しているため、充填材18が収納される空間20に空気が出入りすることが許容される。
【0040】
防寒素材10では、通気層26によって、2つの連結部材16,16間の空間20への空気の出入りが確保される。また、連結部材16,16は、表地24によって外側生地12に接着されるため、連結部材16,16と外側生地12との接着力が確保される。また、連結部材16,16は、裏地25によって内側生地14に接着されるため、連結部材16,16と内側生地14との接着力が確保される。
【0041】
また、通気層26が編み物で構成されるため、連結部材16,16が、通気性を確保しやすくなる。なお、通気層26を構成する編み物は、たて編みされたものでもよく、あるいは、丸編みされたものでもよい。
【0042】
また、編み物が表地24及び裏地25に編み込まれているため、表地24と通気層26との間の剥離強度が高くなり、また通気層26と裏地25との間の剥離強度も高くなる。結果として、外側生地12と内側生地14との間の連結強度が確保される。
【0043】
また、各連結部材16がダブルラッセル編み地からなるので、連結部材16,16によって空間20に空気が出入りすることを確保できる。しかも、連結部材16,16と外側生地12との接着強度及び連結部材16,16と内側生地14との接着強度を確保できるため、外側生地12と内側生地14との間の連結強度を確保できる。
【0044】
また、各連結部材16は、高さ方向の幅hに対する横方向の幅wが1倍以上且つ5倍以下であるため、連結部材16を外側生地12及び内側生地14にプレスによって接着する場合でも、連結部材16が折れ曲がることを抑制することができる。また、連結部材16における横方向の幅wが3mm以上且つ15mm以下であるため、各連結部材16と外側生地12及び内側生地14との接着面積を確保できる。
【0045】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。例えば、前記防寒素材10は、ダブルラッセル編み地に代え、ダブルフェイスによって構成されていてもよい。ダブルフェイスは、二枚の生地を互いに縫い合わせたり貼り合わせたりした生地である。この場合、少なくても一方の生地が通気性の良い生地で構成される。2枚の生地同士を部分的に縫い付ける二重織であってもよく、ポリウレタン樹脂接着剤等の接着剤で貼り合わせた構成であってもよい。
【0046】
前記実施形態の防寒素材10を製造するのに、受け部材30を用いたがこれに限られるものではない。例えば、目印などを設けることによって、複数の連結部材16,16をプレス台35上で所定の位置に並べて配置できるのであれば、受け部材30を用いなくてもよい。
【0047】
前記実施形態では、多数の連結部材16,16を一括して外側生地12に接着するようにしているが、これに代え、多数の連結部材16,16を1つずつ外側生地12に接着するようにしてもよい。内側生地14に接着する方法についても同様である。
【0048】
ここで、前記実施形態について概説する。
【0049】
(1)前記実施形態に係る防寒素材は、防寒衣服に用いる防寒素材であって、前記防寒衣服の表地を構成する又は前記表地の裏側に配置される生地を構成する外側生地と、前記外側生地の内側に配置される内側生地と、前記外側生地及び前記内側生地に接着されて前記外側生地と前記内側生地との間に空間を形成する2つの連結部材と、前記空間に収納される充填材と、を備える。前記2つの連結部材のそれぞれは、前記外側生地に接着される外面と、前記内側生地に接着される内面とを有するとともに通気性を有する。前記2つの連結部材のそれぞれは、柔軟な素材で形成されるとともに、前記外側生地又は前記内側生地の重みによっては前記外面と前記内面との間の間隔を狭めるように変形しない程度の柔らかさを有する。
【0050】
前記実施形態に係る防寒素材では、外側生地と内側生地との間の空間に充填材が収納されていない状態で且つ2つの連結部材の上に外側生地又は内側生地が載った状態においては、2つの連結部材のそれぞれは、連結部材の外面と内面との間の間隔が狭まるように変形しない。つまり、2つの連結部材は、外側生地と内側生地との間の空間に充填材が収納されていないときの形状が、当該空間に充填材が収納されたときの形状とほぼ同じ形状に維持されている。このため、外側生地と内側生地との間の間隙の幅が、連結部材の高さ幅に確保されるため、外側生地と内側生地との間の空間に充填材を詰める際に、連結部材の形状を変形させる作業が不要になる。一方で、連結部材はそれぞれ柔軟な素材で形成されているため、防寒素材が防寒衣服に使用された場合において、連結部材の存在によって防寒衣服のシルエットが損なわれるという事態が起こりにくい。また、2つの連結部材が通気性を有しているため、充填材が収納される空間に空気が出入りすることが許容される。
【0051】
(2)前記2つの連結部材のそれぞれは、当該2つの連結部材を前記外側生地又は前記内側生地に接着する際のプレス機の押圧力によって変形する一方で、前記プレス機による押圧力が解除されると、プレス前の形状に復元するように構成されていてもよい。この態様では、プレス機を用いて外側生地及び内側生地を押圧して2つの連結部材に接着した後でも、連結部材の外面と内面との間の幅が狭くなるように連結部材が変形した状態に維持されることはない。したがって、プレス後に、連結部材の形状を変形させる作業が不要になる。
【0052】
(3) 前記2つの連結部材のそれぞれは、前記外面を形成する表地と、前記内面を形成する裏地と、前記表地及び前記裏地間の通気層と、を備えていてもよい。この態様では、通気層によって、2つの連結部材間の空間への空気の出入りが確保される。また、連結部材は、表地によって外側生地に接着されるため、連結部材と外側生地との接着力が確保される。また、連結部材は、裏地によって内側生地に接着されるため、連結部材と内側生地との接着力が確保される。
【0053】
(4)前記通気層は、編み物、織物又は不織布で構成されていてもよい。通気層が編み物又は不織布で構成される場合には、連結部材が、通気性を確保しやすくなる。一方、通気層が織物で構成される場合には、この織物は、表地及び裏地よりも目が粗いことが好ましい。
【0054】
(5)前記編み物は前記表地及び前記裏地に編み込まれていてもよい。この態様では、表地と通気層との間の剥離強度が高くなり、また通気層と裏地との間の剥離強度も高くなる。結果として、外側生地と内側生地との間の連結強度が確保される。
【0055】
(6)前記通気層は発泡体で構成されていてもよい。この態様では、連結部材を通して前記空間への空気の出入りすることが確保される。なお、発泡体は表地及び裏地に直接接着されてもよいが、発泡体の表面及び裏面にそれぞれラミネート層が接着されていて、この表側のラミネート層に表地が接着され、裏側のラミネート層に裏地が接着されていてもよい。
【0056】
(7)前記2つの連結部材のそれぞれは、ダブルラッセル編み地からなってもよい。この態様では、連結部材によって前記空間に空気が出入りすることを確保できる。しかも、連結部材と外側生地との接着強度及び連結部材と内側生地との接着強度を確保できるため、外側生地と内側生地との間の連結強度を確保できる。
【0057】
(8)前記2つの連結部材のそれぞれは、発泡体からなってもよい。この態様では、連結部材を通して前記空間への空気の出入りすることが確保される。
【0058】
(9)前記2つの連結部材のそれぞれは、高さ方向の幅に対する横方向の幅が1倍以上且つ5倍以下であり、かつ、横方向の幅が3mm以上且つ15mm以下であってもよい。この態様では、高さ方向の幅に対する横方向の幅が1倍以上且つ5倍以下であるため、連結部材を外側生地及び内側生地にプレスによって接着する場合でも、連結部材が折れ曲がることを抑制することができる。また、連結部材における横方向の幅が3mm以上且つ15mm以下であるため、連結部材と外側生地及び内側生地との接着面積を確保できる。
【0059】
(10)前記防寒素材の製造方法は、2つの連結部材をそれぞれ、外面又は内面が上を向いた状態で所定の位置に配置し、前記所定の位置に配置された前記2つの連結部材に外側生地及び内側生地の一方を載せ、前記外側生地及び前記内側生地の前記一方を上から押圧して前記2つの連結部材に接着し、前記2つの連結部材が接着された前記外側生地及び前記内側生地の前記一方を、前記2つの連結部材が上になるようにプレス台に置き、前記外側生地及び前記内側生地の他方を、前記外側生地及び前記内側生地の前記一方に接着された前記2つの連結部材に接着し、前記外側生地及び前記内側生地の間の空間であって前記2つの連結部材間の空間に充填材を挿入する。
【0060】
(11)前記防寒素材の製造方法において、上面に少なくとも2つの溝が形成された受け部材を用意し、前記2つの連結部材をそれぞれ、外面又は内面が上を向いた状態で前記2つの溝に載置し、前記2つの溝に載置された前記2つの連結部材に前記外側生地及び前記内側生地の前記一方を載せて、前記外側生地及び前記内側生地の前記一方を上から押圧して前記2つの連結部材に接着してもよい。
【要約】
防寒素材は、外側生地と、内側生地と、前記外側生地及び前記内側生地に接着されて前記外側生地と前記内側生地との間に空間を形成する2つの連結部材と、前記空間に収納される充填材と、を備える。前記2つの連結部材のそれぞれは、前記外側生地に接着される外面と、前記内側生地に接着される内面とを有するとともに通気性を有し、前記2つの連結部材のそれぞれは、柔軟な素材で形成されるとともに、前記外側生地又は前記内側生地の重みによっては前記外面と前記内面との間の間隔を狭めるように変形しない程度の柔らかさを有する。
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