(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る有価媒体処理システム1を示す図である。有価媒体処理システム1は、銀行等の金融機関や、店舗に設置される。以下の説明では、有価媒体処理システム1で取り扱われる有価媒体が貨幣であることを前提とするが、有価媒体として、貨幣だけでなく、宝くじや商品券等の有価証券も挙げられる。
【0016】
有価媒体処理システム1は、有価媒体処理装置2と、管理装置3と、プリンタ4とを含む。有価媒体処理装置2は、貨幣のうちの紙幣、特に新券の出金処理を行うための新券払出機2Aと、紙幣の入金処理および出金処理を行うための紙幣入出金機2Bと、貨幣のうちの硬貨の入金処理および出金処理を行うための硬貨入出金機2Cとを含む。新券払出機2Aと紙幣入出金機2Bと硬貨入出金機2Cと管理装置3とプリンタ4とは、通信可能に接続されている。
【0017】
新券払出機2Aと紙幣入出金機2Bと硬貨入出金機2Cとは、左右方向に並んでいる。有価媒体処理システム1で取り扱われる有価媒体が宝くじである場合には、新券払出機2Aは、宝くじ販売機として機能し、有価媒体が商品券である場合には、新券払出機2Aは、商品券発行装置として機能する。新券払出機2Aにおいて利用者に臨む前面部10の上端部には、出金処理の際に新券が払い出される払出口11が設けられている。紙幣入出金機2Bの前面部12には、例えば100枚毎にまとまった状態において帯封された紙幣によって構成された束紙幣が出金処理の際に払い出される束出金口13と、入金処理の際にバラ紙幣が利用者によって入金される入金口14と、出金処理の際にバラ紙幣が払い出されるバラ出金口15とが、例えば上側からこの順番にて設けられている。前面部12には、束出金口13を開閉するシャッタ16と、バラ出金口15を開閉するシャッタ17とが設けられている。
【0018】
管理装置3は、有価媒体処理装置2およびプリンタ4を管理する装置であって、例えばコンピュータによって構成される。管理装置3には、タッチパネルディスプレイ等によって構成された表示操作部3Aが設けられ、表示操作部3Aには、有価媒体処理装置2やプリンタ4の動作に関する様々な情報が表示される。また、利用者は、表示操作部3Aに表示されたタッチキーにタッチすることによって有価媒体処理システム1に指示を与えることができる。プリンタ4は、有価媒体処理装置2において実行された処理の内容を記したレシートを発行する。なお、管理装置3およびプリンタ4は、有価媒体処理装置2の一部として、いずれかの有価媒体処理装置2に組み込まれてもよい。また、利用者に携帯されて有価媒体処理装置2およびプリンタ4と通信可能なスマートフォン18やタブレット端末19が、表示操作部3Aの操作端末としての役割を兼ねてもよい。
【0019】
次に、新券払出機2Aに着目して有価媒体処理装置2について詳しく説明する。新券払出機2Aの模式的な縦断面右側面図である
図2を参照して、新券払出機2Aは、例えば縦長のボックス状の装置本体25を含む。装置本体25において前側(
図2では左側)の側面部は、前述した前面部10である。装置本体25の下面部には、新券払出機2Aを移動させるためのキャスター26が設けられている。装置本体25内には、収納部27と、装填部28と、繰出部29と、払出部30と、搬送部31と、識別部32と、一時保留部33とが設けられている。
【0020】
収納部27は、箱状に形成され、複数(ここでは4つ)存在し、装置本体25内における前寄りの領域において上下方向に並んで配置されている。4つ並んだ収納部27のうち、縦に並んだ上側3つの収納部27のそれぞれには、新券が一金種毎に収納される。そのため、これらの3つの収納部27のうち、例えば、最上位の収納部27には万円札だけが収納され、上から2番目の収納部27には千円札だけが収納され、上から3番目の収納部27には5千円札だけが収納される。4つ並んだ収納部27のうち、最下位の収納部27には、前記3金種のいずれかの金種の新券が選択的に収納されたり、他の一金種(例えば2千円札)の新券だけが収納されたりする。各収納部27内には、例えば最大350枚の新券を前後方向(
図2では左右方向)に長手かつ上下方向に積層された状態にて収納される。以下では、収納部27に新券を収納することを「補充」ということがある。装置本体25の前面部10において4つの収納部27と上下方向において同じ位置にある部分には、開閉可能な縦長の前カバー34が設けられている。利用者、厳密には新券払出機2Aを管理する係員が、各収納部27を含む内部ユニット23全体を引き出すと、収納部27が装置本体25の外に露出されるので、係員は、手作業によって各収納部27の側面から新券を補充することができる。
【0021】
装填部28は、収納部27とは別に設けられ、収納部27とほぼ同じ大きさを有する箱状に形成され、前面部10の払出口11よりも下側かつ最上位の収納部27よりも上側に配置されている。厳密には、当該箱状部分の内部空間が、装填部28である。装填部28には、装填部28から下側に延びる搬送路(装填搬送路39という)が設けられている。前面部10において装填部28と上下方向において同じ位置にある部分には、略矩形状の開口10Aが形成されている(後述する
図3および
図4を参照)。開口10Aは、前面部10の上端部における払出口11よりも下側かつ前カバー34よりも上側に配置されている。前カバー35が、装填部28の前側に配置されている。装填部28、装填搬送路39、前カバー35および繰出部29は、一体化されて装填ユニット49を構成している。前カバー35は、前後方向に一致した板厚方向を有して、開口10Aを塞ぐ大きさを有する略矩形板状に形成されている。前カバー35の後面部には、前後方向に伸縮可能な左右一対のガイドレール36の前端部が固定されていて、各ガイドレール36における後側(
図2では右側)の部分は、装置本体25内の内部ユニット23に固定されている(
図4参照)。そのため、装填ユニット49は、各ガイドレール36を介して内部ユニット23によって支持されていて、各ガイドレール36の伸縮に応じて前後方向にスライド可能である。具体的には、装填ユニット49は、装置本体25に装着されて装置本体25内に収容された装着位置(
図2参照)と、装置本体25から前側へ引き出された引出位置(
図3および
図4参照)との間において移動可能であり、装填部28も装着位置(
図2参照)と引出位置(
図3および
図4参照)との間において移動可能となる。そして、装填ユニット49を引出位置へ引き出すと、装填部28が前方に配置されて外部に露出されるので、後述するように装填部28の側面から新券を補充できる。装填ユニット49には、ロック機構(図示せず)が設けられており、所定の権限を有する係員が、管理装置3を操作することによって、ロック機構による装填ユニット49のロックが解除される。
【0022】
装着位置における装填部28は、装置本体25内における最上位の収納部27の真上に位置し、このときの前カバー35は、前面部10の開口10Aを塞いでいて、前カバー35の前面部は、前面部10とほぼ面一になっている(
図2参照)。係員が、装填ユニット49のロック機構によるロックを解除した後、前カバー35の前面部に設けられた凹み35A(
図4参照)に指をかけて手前へ引くと、装填部28が装着位置から引出位置まで到達するまで装填ユニット49が引き出される。引出位置における装填部28は、前面部10よりも前側に位置し、このときの前カバー35は、前面部10の開口10Aを前側へ開放している(
図3および
図4参照)。装填部28の側面(ここでは右側面)には、扉50によって開閉される開口部28Aが形成されていて(
図4参照)、係員は、扉50を開いて開口部28Aから装填部28内に新券をセットすることができる。以下では、装填部28に新券をセットまたは収納することを「装填」ということがある。装填された新券は、装填部28内において、前後方向に長手となった状態にて上下方向に積層される。装填部28内には、例えば最大350枚の新券を装填できる。なお、束紙幣が装填される場合には、金庫等から取り出された官封の束紙幣が、バラの新券にばらされた後に装填部28に装填される。
【0023】
装填部28には、その内部における新券の有無を検知する第1検知部37が設けられている。また、装置本体25内には、装填部28の位置、詳しくは装填部28が装着位置および引出位置のいずれにあるかを検知する第2検知部38が設けられている。第1検知部37および第2検知部38のそれぞれは、例えば反射センサまたはマイクロスイッチによって構成される。
【0024】
繰出部29は、ローラ40等を含み、装填部28に設けられている。モータ等の駆動部(図示せず)の駆動力を受けてローラ40が回転することによって、装填部28内の新券が装填部28の外の装填搬送路39へ繰り出される。なお、繰り出しの場合とは逆の方向へローラ40が回転することによって、装填搬送路39上の新券を装填部28内へ送り込むことができる。繰出部29は、装填部28に固定されているので、装着位置と引出位置との間において移動する装填部28に同行する。また、繰出部29と同様に構成された繰出部42が、各収納部27に設けられている。繰出部42は、対応する収納部27から新券を繰り出したり、後述する第1搬送路44上の新券を収納部27へ送り込んだりすることができる。
【0025】
払出部30は、装置本体25の内部から搬送される新券を受け入れることができる箱状に形成され、装着位置の装填部28の真上に配置されている。装置本体25の前面部10の払出口11は、払出部30の内部に前側から連通している。払出部30内には、回転するローラ43Aおよび従動ローラ43Bが設けられている。モータ等の駆動部(図示せず)の駆動力を受けてローラ43Aが回転することによって、払出部30内の新券が、ローラ43Aと従動ローラ43Bとの間を通って払出口11まで送り込まれる。払出口11では、例えば最大100枚の新券を一度に出金できる。
【0026】
搬送部31は、装填搬送路39と、第1搬送路44と、第2搬送路45と、これらの搬送路のそれぞれに設けられたローラ46および無端状のベルト47と、分岐爪48とを含む。装填部28が装着位置にあるときに、第1搬送路44は、装填ユニット49の装填搬送路39から装置本体25の前面部10に沿って下側へ延び、各収納部27の繰出部42につながっている。第2搬送路45は、第1搬送路44において最上位の収納部27よりも上側の部分から後側へ延び、装着位置の装填部28の後側に回り込んで上側へ延びた後に払出部30につながっている。
【0027】
モータ等の駆動部(図示せず)の駆動力を受けてローラ46が回転したりベルト47が周回移動したりすると、新券が装填搬送路39、第1搬送路44および第2搬送路45において搬送される。分岐爪48は、第1搬送路44と各収納部27の繰出部42との接続位置、および、第1搬送路44と装填搬送路39と第2搬送路45との接続位置に設けられている。各分岐爪48の向きは、ソレノイド等の駆動部(図示せず)の作動に応じて切り換わる。これによって、装填搬送路39内の新券を第1搬送路44や第2搬送路45に受け渡したり、第1搬送路44内の新券を各収納部27の繰出部42や装填搬送路39や第2搬送路45に受け渡したり、第2搬送路45内の新券を装填搬送路39や第1搬送路44に受け渡したりすることができる。
【0028】
識別部32は、第2搬送路45の途中領域、詳しくは、第2搬送路45において第1搬送路44から後側へ延びている領域に配置されている。識別部32は、第2搬送路45において搬送される新券の金種、正損、真偽等を識別する一般的なセンサである。損傷のある新券や偽の新券や重送等による搬送異常券は、リジェクト券であると識別部32によって識別される。リジェクト券には、重送や斜行といった搬送不良等によって識別できなかった新券や、本来識別されるべき金種と異なる金種間違いの新券も含まれる。リジェクト券以外の新券は、正常券であると識別部32によって識別される。また、識別部32は、新券を1枚ずつ識別することによって計数することもできる。
【0029】
一時保留部33は、第2搬送路45において装着位置の装填部28の後側に回り込んで上側へ延びている領域よりも後側に配置され、当該領域に接続されている。当該領域と一時保留部33との接続位置には、前述した分岐爪48が設けられている。分岐爪48の向きが切り換わることによって、第2搬送路45内の新券を、引き続き第2搬送路45内で搬送したり、一時保留部33に受け渡したりすることができる。一時保留部33は、いわゆるテープリール式の一時保留部であり、具体的には、テープT1が巻き付けられた第1テープリール51と、テープT2が巻き付けられた第2テープリール52と、テープT1およびテープT2のそれぞれの先端部が接続されたドラム53と、ドラム53を駆動回転させるモータ等の駆動部(図示せず)とを含む。第2搬送路45から一時保留部33に新券が分岐されると、ドラム53が駆動回転される。これにより、この新券は、テープT1およびテープT2によって挟まれた状態においてテープT1およびテープT2とともにドラム53に巻き取られて一時保留される。一時保留部33は、例えば最大350枚の新券を一時保留できる。なお、ドラム53が逆回転されると、今までドラム53に巻き取られていた新券は、一時保留部33から第2搬送路45に受け渡される。このときの分岐爪48の位置によって、新券は、第2搬送路45において、上方向の払出口11へ搬送されたり、下方向の装填部28や収納部27へ搬送されたりする。
【0030】
次に、
図5のブロック図を参照して、新券払出機2Aの電気的構成について説明する。新券払出機2Aは、例えばマイクロコンピュータによって構成された制御部60と、通信I/F部61と、記憶部62とを含む。制御部60には、通信I/F部61と、記憶部62と、前述した装填部28の第1検知部37、第2検知部38、繰出部29、払出部30、搬送部31、一時保留部33、繰出部42および識別部32のそれぞれとが電気的に接続されている。
【0031】
制御部60は、通信I/F部61を介して、紙幣入出金機2B、硬貨入出金機2C、管理装置3およびプリンタ4や他の外部機器と通信できる。そのため、制御部60は、利用者による管理装置3の表示操作部3A(
図1参照)の操作を受け付けたり、表示操作部3Aの表示を制御したり、プリンタ4によってレシートを発行したりすることができる。
【0032】
制御部60は、第1検知部37の検知結果に応じて、装填部28における新券の有無を把握する。制御部60は、第2検知部38の検知結果に応じて、装填部28の位置を把握する。制御部60は、繰出部29、払出部30、搬送部31、一時保留部33、繰出部42のそれぞれの駆動部(図示せず)を制御する。これにより、制御部60は、装着位置の装填部28と、各収納部27、払出部30および一時保留部33のそれぞれとの間において新券を移動させたり、収納部27同士の間において新券を移動させたりする。識別部32による新券の識別結果は、制御部60に入力される。制御部60は、識別部32による新券の計数結果に基づいて各収納部27における新券の金種および在高(収納数)を把握する。
【0033】
記憶部62は、不揮発性メモリやハードディスクドライブといった記憶デバイスによって構成されていて、新券払出機2Aに関する様々な情報を記憶している。特に、記憶部62は、各収納部27における新券の金種および在高も記憶している。制御部60は、記憶部62に記憶された情報を参照したり、記憶部62に記憶された情報を書き換えたり、新たな情報を記憶部62に記憶させたりする。
【0034】
次に、各収納部27に新券を補充する手順について、
図6〜
図12を参照しながら説明する。権限を有する係員が管理装置3の表示操作部3Aに操作することによってログインして新券の補充を選択すると、制御部60は、
図6に示すメニュー画面70を表示操作部3Aに表示する。なお、表示操作部3Aには、「取消」という文字が記されたタッチキー71が常に表示されているので、係員がタッチキー71にタッチすることによって、今回の補充をキャンセルすることができる。係員は、前カバー34を開いて手作業によって収納部27に新券を補充したい場合には、メニュー画面70において「手補充」という文字が記されたタッチキー72にタッチする。すると、制御部60は、例えば前カバー34を閉じた状態においてロックするロック機構(図示せず)によるロックを解除するので、係員は、前カバー34を開いて手作業によって収納部27に新券を補充できる。係員が補充後に前カバー34を閉じると、制御部60は、このロック機構を作動させるので、前カバー34が閉じた状態においてロックされる。
【0035】
係員は、装填部28を用いて新券を補充したい場合には、メニュー画面70において「計数装填」という文字が記されたタッチキー73にタッチする。すると、制御部60は、表示操作部3Aに、
図7に示す選択画面74を表示する。選択画面74には、「補充する新券の金種を選択して下さい」という見出しの下に、補充できる新券の金種(ここでは、万円札、5千円札、千円札の3金種)と、金種毎に設けられたチェックボックス75と、補充先の収納部27における新券の補充可能数(
図7では、いずれの金種も350枚)とが並んで表示されている。制御部60は、各収納部27における新券の最大収納数から現在の在高を差し引くことによって補充可能数を取得する。なお、選択画面74には、補充可能数とともに、補充可能数に相当する金額が金種毎に表示されてもよい。
【0036】
係員が、補充したい新券の金種に対応するチェックボックス75にタッチすると、制御部60は、このチェックボックス75内にチェックマーク76(
図7では黒丸)を表示する。その後、係員が、例えば選択画面74の左下において「開始」という文字が記されたタッチキー77にタッチすると、制御部60は、表示操作部3Aに、
図8に示す案内画面78を表示する。案内画面78には、「新券を装填して下さい」という見出しの下に、装填部28が引出位置まで引き出された状態における新券払出機2Aのイメージ画像Gが表示されている。係員が装填部28における開口部28A(
図4参照)を把握できるように、イメージ画像Gにおいて開口部28Aに相当する部分が強調表示されてもよい。
【0037】
また、制御部60は、表示操作部3Aに案内画面78を表示するタイミングにおいて、装填部28が装着位置にある状態において装填ユニット49をロックするロック機構(図示せず)によるロックを解除する。これにより、係員は、前カバー35の凹み35A(
図4参照)に指を掛けて、装填部28が引出位置に到達するまで装填ユニット49を前側へ引き出すことができる。
【0038】
係員が先ほど選択した金種の新券を引出位置の装填部28に装填してから、装填ユニット49を後側へ押して装填部28を装着位置まで移動させる。すると、第1検知部37(
図2参照)は、装填部28に新券が有ることを検知するとともに、第2検知部38(
図2参照)は、装填部28が引出位置から装着位置まで移動したことを検知する。このような第1検知部37および第2検知部38の検知結果に応じて、制御部60は、装填部28における新券の繰り出しを開始して、装填部28の新券を装填搬送路39、第1搬送路44および第2搬送路45において搬送して一時保留部33に移す(
図12の破線の矢印を参照)。この際、制御部60は、繰出部29によって装着位置の装填部28から新券を繰り出して、繰り出し後の新券を搬送部31によって装置本体25内において一時保留部33へ向けて搬送する。繰り出されて搬送される新券は、搬送部31の第2搬送路45において識別部32を1枚ずつ通過するので、制御部60は、第2搬送路45内の新券を識別部32によって1枚ずつ識別および計数する。このように、係員が装填部28を装着位置まで移動させれば、その後に係員が表示操作部3Aを追加で操作しなくても、装填部28からの新券の繰り出しおよび識別部32による識別および計数が自動で開始されるので、係員によって使い勝手が良い。
【0039】
識別部32がリジェクト券(搬送異常券や識別不能券等を含む)を識別した場合には、制御部60は、このリジェクト券を第2搬送路45において最後まで搬送し、払出部30によって払出口11から係員に返却する。制御部60は、正常券であると識別された新券を搬送部31によって一時保留部33まで搬送し、一時保留部33において一時保留する。なお、リジェクト券は、直ちに払出口11にリジェクトされるのではなく、装填部28と一時保留部33との間を往復することによって識別部32による再識別を受け、このようなリトライ処理が所定回数だけ繰り返されても相変わらずリジェクト券と識別された場合に、払出口11にリジェクトされてもよい。
【0040】
制御部60は、例えば装填部28における新券の繰り出しを開始するタイミングにおいて、表示操作部3Aに、
図9に示す処理画面80を表示する。処理画面80には、<補充可能数>という見出しの下に、各金種についての前述した補充可能数が並んで表示され、<計数明細>という見出しの下に、一時保留部33に一時保留されている新券の枚数である一時保留数が金種毎に並んで表示されている。新券の繰り出しが進むにつれて、処理画面80における補充可能数および一時保留数のそれぞれの値がリアルタイムにて変動してもよい。または、新券の繰り出しが完了するまで補充可能数および一時保留数が処理画面80に表示されずに、繰り出しの完了後に、補充可能数および一時保留数の最終値が処理画面80に表示されてもよい。また、新券の繰り出しが進むにつれて、この新券の金種についての実際の補充可能数が減少するが、補充可能数が零になっても装填部28に新券が存在する場合には、制御部60は、これ以上の繰り出しを停止する。装填ユニット49のロック機構によるロックが解除されて装填ユニット49が引き出されると、装填部28に残った新券であるオーバーフロー券は、係員に返却される。
【0041】
装着位置の装填部28から全ての新券が繰り出されると、第1検知部37(
図2参照)は、装填部28に新券が無いことを検知する。すると、制御部60は、表示操作部3Aに、
図10に示す問い合わせ画面81を表示する。問い合わせ画面81は、処理画面80から切り替わった新しい画面であってもよいし、処理画面80上に重ねて表示されたポップアップ画面であってもよい。問い合わせ画面81には、「続けて装填しますか?」という見出しの下に、「はい」という文字が記されたタッチキー82と、「いいえ」という文字が記されたタッチキー83とが並んで表示されている。追加の新券を装填部28に装填したい係員は、タッチキー82にタッチする。すると、制御部60は、前述した選択画面74(
図7参照)を表示操作部3Aに表示するので、係員は、メニュー画面70(
図6参照)において再び計数装填を選択しなくても、追加の新券を装填部28に装填することができる。追加の新券のうち、リジェクト券は、前述したように払出口11から係員に返却され、正常券は、前述したように一時保留部33に一時保留される。なお、追加の新券の金種は、直前に装填した新券の金種と同じであってもよいし異なっていてもよい。追加の新券の金種と、直前に装填した新券の金種とが異なる場合には、複数金種の新券が混在状態にて一時保留部33に一時保留される。
【0042】
追加の新券を装填部28に装填する予定のない係員は、タッチキー83にタッチする。すると、制御部60は、表示操作部3Aに、
図11に示す完了画面84を表示する。完了画面84には、「計数が完了しました」という見出しの下に、前述した補充可能数および一時保留数の最終値が表示されている。これらの値を確認した係員が、例えば完了画面84の右下において「完了」という文字が記されたタッチキー85にタッチすると、制御部60は、識別部32によって識別された後に一時保留部33において一時保留された新券を各収納部27に振り分けるという所定の指示を受け付けたことになる。この場合に、制御部60は、一時保留部33における新券を搬送部31によって収納部27まで搬送する
(
図12の1点鎖線の矢印を参照)。一時保留部33における新券は、識別部32によって既に金種が識別されているので、制御部60は、当該新券を、その金種に応じた収納部27まで搬送することによって金種毎に振り分ける。
【0043】
係員がタッチキー85にタッチしたことに応じて、制御部65は、今回の補充の処理内容(例えば完了画面84の内容)を記したレシートをプリンタ4によって発行する。また、制御部65は、一時保留部33の新券を収納部27に収納中であることを示す画面(図示せず)を表示操作部3Aに表示してもよい。この画面には、収納部27への新券の収納が完了するまでの残り時間が表示されてもよい。収納部27への新券の収納、つまり今回の補充が完了すると、制御部65は、メニュー画面70(
図6参照)または所定の待機画面(図示せず)を表示操作部3Aに表示することによって待機する。
【0044】
以上のように収納部27に新券が補充された状態において、制御部60は、利用者による管理装置3の表示操作部3Aの操作によって出金処理の指示を受け付ける。すると、制御部60は、出金対象の金種の新券を収納した収納部27から必要枚数の新券を取り出して、第1搬送路44および第2搬送路45の順に搬送し、払出部30によって払出口11から出金する。なお、制御部60は、収納部27から取り出した新券のうち、リジェクト券であると識別部32によって新たに識別されたものを、例えば一時保留部33に一時保留してから装填部28や元の収納部27にリジェクトしてもよい(
図12の2点鎖線の矢印を参照)。この場合の装填部28におけるリジェクト券は、例えば次回の新券の補充時に回収される。また、制御部60は、収納部27から取り出した新券のうち、正常券であると識別部32によって識別されたものをカウントすることによって、各収納部27における在高を更新する。出金対象の新券が全て払出口11に出金されると、出金処理が終了する。
【0045】
以上のように、有価媒体処理装置の一例である新券払出機2Aでは、新券を識別部32によって1つずつ識別することによって、装填部28に装填された新券の金種を確認できるとともに、装填部28に装填された新券の数を管理できる。そのため、新券の金種間違いのない正確な補充と、補充後の収納部27における新券の正確な在高管理とを図ることができる。また、新券を補充する際、装填部28だけが新券の装填のために装置本体25から引き出されるものの、収納部27は、装置本体25内に残っていて装置本体25の外に露出されないので、収納部27におけるセキュリティ性の向上を図れる。また、装填部28を引き出して新券を装填部28に装填して、装填部28を装着位置まで移動させて装置本体25に装着すれば、その後にさらに手間をかけなくても収納部27への新券の補充を開始できるので、使い勝手の向上を図れる。また、新券が装填された装填部28が装着位置まで移動したという第1検知部37および第2検知部38の検知結果に応じて、装填部28における新券の繰り出しが開始されるので、空振りすることなく、装填部28から収納部27への新券の補充を確実に実施できる。
【0046】
また、装填部28に装填された新券を一時保留部33において一時保留すれば、係員が完了のタッチキー85(
図11参照)をタッチすることによる収納部27への新券の補充が確定するまでの間は、今回装填された新券と収納部27に既にある新券とを区別することができる。さらに、一時保留後において係員が取消のタッチキー71(
図11参照)をタッチすることによって今回の補充をキャンセルした場合には、制御部60は、新券を一時保留部33から装填部28に戻して返却することもできる。なお、一時保留部33に一時保留された新券は、外部の新券として扱われるので、一時保留部33の新券を装填部28に返却しても、在高管理等の面において特に問題はない。
【0047】
また、新券の返却に関して、制御部65は、タイマー機能を有しており、新券が一時保留部33において一時保留されたまま、例えば数分の所定時間が経過すると、制御部65は、一時保留部33における新券を搬送部31によって装填部28に戻す。テープリール式の一時保留部33において長時間にわたって一時保留された新券は、ドラム53に巻き付けられることによってカール癖が付くと、新券として使用できなくなったり、搬送部31内において詰まることによって搬送エラーを引き起こしたり、収納部27においてきれいに集積できなくなったりする虞がある。そこで、一時保留部33において一時保留されたまま所定時間が経過した新券を装填部28に戻すことによって、新券にカール癖が付くことを抑制できる。装填部28に戻された新券は、係員によって回収されたり、再度の計数装填に用いられたりする。なお、制御部65は、所定時間の経過時に新券を装填部28に自動的に戻すのではなく、例えば、表示操作部3Aにおける表示等によって係員に警告し、タッチキー85(
図11参照)をタッチすることによる収納部27への新券の補充を速やかに確定させるように促してもよい。
【0048】
図12を参照して、各収納部27と装着位置の装填部28とは、装置本体25内において上下方向に並んで配置され、各収納部27および装填部28のそれぞれの周囲において新券を繰り出したり搬送したりするための構成(繰出部29、繰出部42および搬送部31等)のレイアウトは、ほぼ同じである。この場合には、各収納部27および装填部28のそれぞれに対して、前側(
図12では左側)という同じ方向から新券を収納できるので、手補充したときの収納部27における新券の向き(表裏や長手方向や短手方向の向き)と、計数装填のために装填部28に装填したときの新券の向きとを揃えることができる。そのため、手補充および計数装填による補充のいずれの場合であっても、補充後の収納部27や、払出口11において、向きの異なる新券が混在することを抑制できる。
【0049】
この発明は、以上の実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項に記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【0050】
例えば、装填部28の内部空間における奥側(新券払出機2Aにおける後側)の領域には、ガイド部材90が1つ設けられてもよい。
図13に示すように、ガイド部材90は、例えば板状に形成されていて、装填部28内における新券Mの短手方向Sに延びている。装填部28には、モータ等によって構成されてガイド部材90を新券Mの長手方向Lに沿って移動させるアクチュエータ(図示せず)が設けられている。制御部60は、このアクチュエータの動作を制御することによって、ガイド部材90を装填部28内において移動させる。前述した計数装填の場合には、制御部60は、選択画面74(
図7参照)において選択された金種の新券Mの長さに合わせて、前後方向(
図13では左右方向)におけるガイド部材90の位置を調整する。なお、
図13において実線で示されたガイド部材90は、最も長い万円札に対応した位置である。装填部28内において調整後のガイド部材90よりも前側(
図13では左側)において新券Mが配置される配置空間28Bでは、前後方向の寸法が、選択された金種の新券の長手方向Lの寸法とほぼ一致するので、その後の繰り出しにおいて、装填部28内の新券Mを精度よく繰り出すことができる。
【0051】
また、一時保留部33から装填部28に新券Mを返却する際には、制御部60が、返却する金種の新券Mの長さに合わせてガイド部材90を移動させるので、返却された複数の新券Mを、長手方向Lにおける端縁(前端縁および後端縁の少なくとも一方)が揃うように装填部28内においてきれいに集積できる。なお、返却された新券Mが装填部28内において引っ掛からずにきれいに集積されるように、装填部28に新券Mを返却するときのガイド部材90の位置は、装填部28から同一金種の新券Mを繰り出すときのガイド部材90の位置から若干後側にずれた位置に設定される。
【0052】
また、複数金種の新券Mが一時保留部33に一時保留されている場合には、一時保留部33における新券Mの金種の順番が記憶部62(
図5参照)に記憶されているので、制御部60は、記憶部62の記憶内容に基いて、装填部28に返却される金種が変わる毎にガイド部材90の位置を調整する。これにより、返却された複数金種の新券Mを、
図14に示すように長手方向Lにおいてガイド部材90側とは反対側の前端縁が揃うように装填部28内においてきれいに集積できるので、係員は、返却された複数金種の新券Mの前端部を一度に掴んで装填部28から抜き取ることができる。ただし、金種が変わる毎にガイド部材90の位置を調整するためには、新券Mは、千円札M1、2千円札M2、5千円札M3、万円札M4というように長手方向Lにおいて短い金種から順に返却される必要がある。もちろん、返却される金種のなかで最も長い金種の新券Mに合わせてガイド部材90の位置を固定しても、複数金種の新券Mを装填部28内においてある程度きれいに集積できる。なお、ガイド部材90と同様のガイド部材(図示せず)が各収納部27内に設けられてもよいが、各収納部27内のガイド部材は、対応する一金種に合わせて位置が固定される。
【0053】
また、前述した実施形態では、繰出部29が装填ユニット49内に配置されることによって、装填ユニット49自体が新券の繰出機能を有していたが(
図3参照)、繰出部29は、予め装置本体25に固定されていて、装填ユニット49つまり装填部28が装着位置にあるときに装填部28から新券を繰り出せるように構成されてもよい。
【0054】
また、装填部28は、ガイドレール36(
図4参照)を介して装置本体25によって支持されなくてもよく、この場合の引出位置における装填部28は、装置本体25から取り外された分離状態にあってもよい。
【0055】
また、前述した実施形態では、係員が手動によって装填部28を装着位置と引出位置との間で移動させたが、モータ等によって構成されて装填部28を移動させるアクチュエータ(図示せず)が装置本体25内に設けられてもよい。アクチュエータが設けられる場合には、制御部60は、前述した計数装填の際に案内画面78(
図8参照)を表示するタイミングにおいてアクチュエータを作動させて装填部28を引出位置まで移動させる。この場合には、例えば案内画面78において「OK」という文字が記されたタッチキー(図示せず)が表示されるので、装填部28に新券を装填した係員が当該タッチキーにタッチすると、制御部60は、アクチュエータを作動させて装填部28を装着位置まで移動させる。
【0056】
また、計数装填の際に表示操作部3Aに案内画面78(
図8参照)が表示された状態において、前述した実施形態では、係員が装填部28を装着位置まで移動させれば、制御部60により、装填部28からの新券の繰り出しおよび識別部32による識別および計数が自動で開始される。しかし、繰り出しを開始すべきでない状況が発生し、この状況が解消されないのに、係員が装填部28を装着位置まで移動させた場合には、制御部60は、繰り出しを開始せずに、係員による装填部28の新券の抜き取りを待つ。抜き取りを待つ制御部60は、装填部28の新券の抜き取りを係員に促す画面を表示操作部3Aに表示したり、先ほどのアクチュエータ(図示せず)を作動させて装填部28を引出位置まで強制的に移動させたりしてもよい。繰り出しを開始すべきでない状況とは、例えば、前述したオーバーフロー券が装填部28に残っている状況である。また、係員が選択した金種と異なる金種の新券を誤って装填部28に装填した状態において一旦識別および計数が開始されて、装填部28からの新券が金種間違いのリジェクト券であるとの識別が所定回数(例えば5回)連続した場合に、制御部60は、金種間違いの新券が装填部28に装填されたと判断して、繰り出しを停止するが、その後、金種間違いの新券が装填部28に残っている状況も、繰り出しを開始すべきでない異常じみた状況である。
【0057】
また、前述した実施形態では、新券が一金種ずつ装填部28に装填されたが、複数の金種の新券が混在した状態にて装填部28に装填されてもよい。
【0058】
また、例えば月に1回のタイミングにおいて、各収納部27における全ての新券が装置本体25の外へ一旦回収された後に、手補充によって新券が各収納部27に直接補充されることがある。この場合、制御部65は、各収納部27について、収納部27に補充された新券を一時保留部33に移し替えてから元の収納部27に戻し、その際に、識別部32によって新券を識別することによって収納部27内の新券の金種および在高を確認する。なお、識別部32によってリジェクト券であると識別された新券は、払出口11にリジェクトされた後に、あらためて装填部28から装填される。このように各収納部27の新券を一時保留部33に移し替えてから元の収納部27に戻す際に収納部27内の新券の金種および在高を確認するという精査処理は、各収納部27における全ての新券を回収しない場合にも実施される。
【0059】
また、一時保留部33は、テープリール式でなく、装填部28のように新券が集積されるボックス状に構成されてもよい。この場合に、前述した精査処理において、リジェクト券と正常券とを分けるために、一時保留部33を2つ設けるか、リジェクト券を回収するためのリジェクト部(図示せず)を装置本体25内に別途設けるとよい。
【0060】
また、官封の束紙幣をばらして装填部28にセットした場合において、束紙幣を構成する新券は、正常券であるにもかかわらず、重送や斜行といった搬送不良のためにリジェクト券であると識別部32によって識別されることがある。この場合のリジェクト券は、あらためて装填部28にセットし直せば正常券であると識別されるはずであるが、再びリジェクト券であると識別されることが稀に生じ得る。この場合、再びリジェクト券であると識別された数枚の新券が手元に残ると、係員にとって、その後の後処理が面倒である。そこで、新券が再びリジェクト券であると識別されたことに応じて、紙幣入出金機2Bが自動で補充モードになり、係員は、これらの新券を紙幣入出金機2Bの入金口14(
図1参照)に投入することができる。紙幣の識別に関するアルゴリズムが、新券払出機2Aと紙幣入出金機2Bとにおいて異なっていれば、これらの新券は、紙幣入出金機2Bでは新券であると識別されて紙幣入出金機2B内の収納部(図示せず)に収納されることがある。
【0061】
また、新券払出機2Aに着目して有価媒体処理装置2について説明したが、前述した計数装填に関する構成が他の有価媒体処理装置2(
図1参照)に設けられている場合には、今までの説明は、当該他の有価媒体処理装置2にも当てはまる。
【0062】
また、有価媒体処理システム1において、例えば管理装置3が、有価媒体処理装置2における一部の機能(例えば制御部60や記憶部62の機能)を有してもよい。
【0063】
また、計数装填の際に係員が金種を選択しなくても(
図7参照)、制御部60が、装填後の新券についての識別部32による識別結果に基づいて金種を判断して、該当する金種の収納部27に新券を振り分けてもよい。この場合、振分先の収納部27における新券の収納数が最大収納数に近づいたニアフル状態になると、制御部60は、係員に警告して新券の振り分けを一時停止する。
【0064】
また、識別部32を、第2搬送路45ではなく、第1搬送路44の最上位置または装填搬送路39に配置してもよい(
図2参照)。これにより、装填部28に装填された新券を一時保留部33に一時保留することなく、速やかに各収納部27部に振り分けることができるので、計数装填における時間短縮を図れる。
【0065】
また、識別部32として、計数機能だけを有するものを用いてもよい。これにより、コストダウンを図れる。