(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記冷却固化手段が、前記基板保持手段に保持された基板の下面に接触または近接して、当該基板を冷却する冷却プレートを含む、請求項2〜6のいずれか一項に記載の基板処理装置。
前記塗布膜形成ユニットが、前記低表面張力液体を前記基板の表面に向けて吐出する吐出口と、前記吐出口の基板からの高さを調整する吐出口高さ調整手段と、を含む、請求項2〜10のいずれか一項に記載の基板処理装置。
前記塗布膜形成ユニットが、前記低表面張力液体を前記基板の表面に向けて吐出する吐出口と、前記吐出口から前記低表面張力液体が基板に向けて吐出されている間、前記低表面張力液体の融点以上の温度に前記基板を温度調節する基板温度調節手段と、を含む、請求項2〜11のいずれか一項に記載の基板処理装置。
前記昇華ユニットが、前記昇華室内に配置され前記基板を加熱する基板加熱ユニットと、前記基板加熱ユニットによって加熱された基板を冷却する基板冷却ユニットと、を含み、
前記第2のローカル搬送手段が、前記基板加熱ユニットから前記基板冷却ユニットまで、基板を搬送する、請求項21に記載の基板処理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、基板表面の液相DIWを凍結させて固相に変化させ、その後、チャンバ内を減圧して固相DIWを気相に変化させて昇華させている。しかし、DIWが液相から固相に変化するときに体積膨張が生じるので、基板表面の微細パターンに応力がかかり、パターンが損傷するおそれがある。
また、特許文献1では、基板に対してDIWを供給し、かつそのDIWを凍結させる処理が行われるチャンバの内部の空間を減圧して、DIWを昇華させている。
【0006】
しかし、基板にDIWを供給したりするための空間を提供するチャンバは、スピンチャック等の大きな部品を収容するために、大きな容積を有しており、このような大容積の空間を速やかに減圧することは至難である。そのため、チャンバ内の減圧には相応の時間を要し、それに応じて、昇華工程が長くなる。その結果、たとえば、壁状微細パターンの両側での昇華の進行にばらつきがあると、パターン両側での応力不均衡により、パターンが損傷するおそれがある。
【0007】
したがって、小容積の減圧室を別に準備し、その小容積の減圧室内を速やかに乾燥させ、昇華工程を短時間で完了することが好ましい。しかし、そのためには、基板を減圧室まで搬送する必要が生じる。
ところが、このような搬送を行うと、その搬送途中で基板上の膜の状態変化が生じるおそれがある。より具体的には、凍結したDIWが局所的に液相に変化したり、或いは局所的に昇華したりする。とくに、局所的に液相に変化すると、基板表面のパターンが表面張力の影響を受ける。また、局所的な昇華が生じると、パターン両側での応力不均衡の問題が生じる。そのため、減圧室に至るよりも前に、基板上の微細パターンが倒壊してしまう。
【0008】
この発明の一つの目的は、塗布室内で基板上に形成された塗布膜の状態を維持しながら昇華室まで基板を搬送して基板表面の塗布膜を昇華させ、それにより、乾燥処理を良好に行える基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の
一実施形態に係る基板処理装置は、塗布室を有し、前記塗布室内で基板の表面に水よりも表面張力が小さい低表面張力液体を塗布して
固体および液体のうちの一方である所定状態の塗布膜を形成する塗布膜形成ユニットと、昇華室を有し、前記昇華室内で前記基板の表面に形成された
前記塗布膜を昇華させる昇華ユニットと、前記昇華室内を大気圧よりも低い圧力に減圧する減圧手段と、前記塗布室に基板を搬入する主搬送手段と、前記塗布室から前記昇華室へと基板を搬送するローカル搬送手段と、前記ローカル搬送手段が前記塗布室から前記昇華室へと前記基板を搬送している間、前記塗布膜の
相転移を抑制して当該塗布膜を前記所定状態
に保持する塗布膜状態保持手段と、を含む。
【0010】
この構成によれば、処理対象の基板は、主搬送手段によって、液処理ユニットの塗布室に搬入される。液処理ユニットでは、塗布室内で、水よりも表面張力が小さい低表面張力液体が基板に供給され、それによって、その低表面張力液体の塗布膜が基板上に形成される。
形成される塗布膜は、固体および液体のうちの一方の所定状態の塗布膜である。その後、塗布室から昇華室へと基板が搬送され、昇華室内で塗布膜を昇華させるための昇華処理が実行される。塗布室から昇華室への基板の搬送は、主搬送手段とは別に設けられたローカル搬送手段によって行われる。それにより、主搬送手段および主搬送手段の可動範囲に存在し得る部品や他の基板に対して塗布膜の影響が及ぶことを抑制できる。また、主搬送手段の動作状態にかかわらず、塗布室での処理を終えた基板を速やかに昇華室へと搬送できる。
【0011】
一方、ローカル搬送手段によって搬送されている間、その搬送中の基板の表面に形成された塗布膜の状態は、塗布膜状態保持手段によって保持される。
すなわち、塗布膜状態保持手段は、塗布膜の相転移を抑制して当該塗布膜を前記所定状態に保持する。したがって、塗布膜形成ユニットで基板表面に形成された塗布膜は、その状態が保持されたままで、昇華室に搬入され、昇華ユニットによる昇華処理を受ける。それにより、ローカル搬送手段による搬送中における不用意で制御されない状態での塗布膜の状態変化を抑制できる。つまり、基板表面の塗布膜を昇華させて排除するための昇華工程を、昇華室内の調整された環境中で行える。それによって、塗布膜の不用意な状態変化による基板への悪影響を回避して、基板表面の塗布膜を良好に昇華させることができる。
【0012】
また、昇華室内が大気圧よりも低い圧力に減圧されることにより、基板表面の塗布膜の昇華を促進できる。具体的には、昇華室の減圧によって、塗布膜の昇華が速やかに完了する。それにより、昇華の過程で塗布膜が基板に与える応力のエネルギーを抑制しながら、塗布膜を昇華させて基板表面から除去できる。
塗布膜状態保持手段は、たとえば、固相の塗布膜が液相に変化することを抑制する液化抑制手段を含んでいてもよい。また、塗布膜状態保持手段は、固相の塗布膜が昇華することを抑制する昇華抑制手段を含んでいてもよい。
【0013】
この発明の一実施形態では、前記塗布膜形成ユニットが、基板を水平に保持する基板保持手段と、前記基板保持手段に保持された基板に、低表面張力液体を供給する液体供給手段と、前記液体供給手段から低表面張力液体が基板に供給された後に、基板の冷却を開始し、前記低表面張力液体を融点未満に冷却させ、前記低表面張力液体の固体からなる前記塗布膜を形成する冷却固化手段と、を含む。
【0014】
この構成では、塗布室内において基板の表面に低表面張力液体が供給され、その低表面張力液体が冷却されることによって、液相から固相へと相転移させられ、固体状態の塗布膜が形成される。
この発明の一実施形態では、前記塗布膜状態保持手段が、前記基板上の塗布膜が固体から液体に戻ることを阻止する液化阻止手段を含む。これにより、ローカル搬送手段によって基板が搬送されている間、液化阻止手段によって、その固体の状態の塗布膜が液相に戻ることが阻止される。それにより、基板表面が液相の低表面張力液体からの表面張力を受けることを抑制できる。
【0015】
この発明の一実施形態では、前記液化阻止手段が、前記基板上の塗布膜を前記融点未満に維持する冷却維持手段を含む。これにより、塗布膜が固相から液相に変化することを抑制できる。
この発明の一実施形態では、前記冷却維持手段が、前記ローカル搬送手段の搬送アームを冷却するアーム冷却手段を含む。
【0016】
この構成により、ローカル搬送手段による搬送中に基板を冷却できる。それにより、基板表面の塗布膜が固相から液相に変化することを効果的に抑制できる。
この発明の一実施形態では、前記塗布膜状態保持手段が、前記基板上の塗布膜が昇華することを阻止する昇華阻止手段を含む。
この構成により、ローカル搬送手段によって基板が搬送されている間、昇華阻止手段によって、固体の状態の塗布膜が気相に変化することが阻止される。それにより、不用意で制御されない状態で固相塗布膜が昇華することを抑制できる。
【0017】
この発明の一実施形態では、前記冷却固化手段が、前記基板保持手段に保持された基板を前記低表面張力液体の融点未満の流体に接触させる。
この発明の一実施形態では、前記冷却固化手段が、前記基板保持手段に保持された基板の下面に接触または近接して、当該基板を冷却する冷却プレートを含む。この構成では、塗布膜に対する影響の少ない手段で基板を冷却できる。たとえば、基板の裏面に低温の液体を供給して基板を冷却するとすれば、その液体を乾燥させるための裏面乾燥処理が必要である。この裏面乾燥処理が基板表面の塗布膜に影響を与えるおそれがある。また、基板の表面に低温の気体を供給して基板を冷却(したがって、塗布膜を冷却)するとすれば、塗布膜の表面付近の雰囲気が当該気体によって置換されるので、塗布膜からの蒸発が促進される。したがって、基板表面の塗布膜に影響を与えるおそれがある。冷却プレートを用いる冷却では、これらの課題を回避できる。
【0018】
この発明の一実施形態では、前記冷却固化手段が、前記基板保持手段に保持された基板に液体窒素を供給する液体窒素供給手段を含む。
この発明の一実施形態では、前記液体供給手段が、前記低表面張力液体が流通し、前記基板の表面に向けて前記低表面張力液体を吐出する吐出口を有する低表面張力液体供給配管を含み、前記塗布膜形成ユニットが、前記低表面張力液体供給配管の前記塗布室内に配置されている部分を前記低表面張力液体の融点以上の温度に調節する低表面張力液体温度調節手段をさらに含む。
【0019】
この構成によれば、低表面張力液体を供給する低表面張力液体供給配管が温度調節されることにより、低表面張力液体を液体の状態で基板の表面に供給でき、それによって、基板の表面に均一な膜厚の塗布膜を形成できる。その均一な膜厚の状態の塗布膜が液相から固相に相転移し、その固相の塗布膜の状態が保たれたままで昇華室へと搬送される。それにより、均一な固相塗布膜が昇華室で昇華させられる。このようにして、面内均一性の確保された乾燥処理を達成できる。
【0020】
この発明の一実施形態では、前記塗布膜形成ユニットが、前記低表面張力液体を前記基板の表面に向けて吐出する吐出口と、前記吐出口の基板からの高さを調整する吐出口高さ調整手段と、を含む。
この構成によれば、高さ調節可能な吐出口から低表面張力液体が基板へと吐出される。吐出口の高さを適切に調節することにより、吐出口から基板の表面に到達するまでの低表面張力液体の流動状態を確保できる。すなわち、基板表面に到達した低表面張力液体は十分な流動性を有し、基板表面で広がる。それにより、基板表面に均一な膜厚の塗布膜を形成できる。その均一な膜厚の状態の塗布膜が液相から固相に相転移し、その固相の塗布膜の状態が保たれたままで昇華室へと搬送される。それにより、均一な膜厚の固相塗布膜が昇華室で昇華させられる。このようにして、面内均一性の確保された固相塗布膜除去による基板表面の乾燥処理を達成できる。
【0021】
この発明の一実施形態では、前記塗布膜形成ユニットが、前記低表面張力液体を前記基板の表面に向けて吐出する吐出口と、前記吐出口から前記低表面張力液体が基板に向けて吐出されている間、前記低表面張力液体の融点以上の温度に前記基板を温度調節する基板温度調節手段と、を含む。これにより、基板上で低表面張力液体が液相に保たれるので、その流動状態が確保される。すなわち、基板表面に到達した低表面張力液体は、基板表面上で十分な流動性を有し、基板表面で広がる。それにより、基板表面に均一な膜厚の塗布膜を形成できる。その均一な膜厚の状態の塗布膜が液相から固相に相転移し、その固相の塗布膜の状態が保たれたままで昇華室へと搬送される。それにより、均一な膜厚の固相塗布膜が昇華室で昇華させられる。このようにして、面内均一性の確保された固相塗布膜除去による基板表面の乾燥処理を達成できる。
【0022】
この発明の一実施形態では、前記塗布膜形成ユニットが、前記基板保持手段によって保持された基板を回転させる基板回転手段をさらに含む。
この構成によれば、基板を回転させることによって、基板表面に供給された低表面張力液体を基板表面で薄く均一に延ばすことができる。それにより、均一で薄い塗布膜を基板表面に形成できる。その均一で薄い塗布膜が液相から固相に相転移し、その固相の薄い塗布膜の状態が保たれたままで昇華室へと基板が搬送される。それにより、均一で薄い固相塗布膜が昇華室で昇華させられる。塗布膜の膜厚が小さいので、昇華処理時間が短くなる。面内均一性の確保された固相塗布膜除去による基板表面の乾燥処理を達成できるうえに、昇華処理時間が短縮できるので、基板への影響を一層抑制した乾燥処理を実現できる。
【0023】
この発明の一実施形態では、前記塗布膜形成ユニットが、液膜状態の塗布膜を基板の表面に形成するように構成されており、前記塗布膜状態保持手段が、前記塗布膜を液膜の状態に保持するように構成されており、前記昇華ユニットが、前記基板に形成された液膜状態の塗布膜を前記低表面張力液体の融点未満に冷却させて、前記低表面張力液体の固体膜に転換させる冷却固化手段を含む。
【0024】
この構成では、昇華室において、基板表面の塗布膜が液相から固相に相転移させられる。したがって、ローカル搬送手段は、液相の塗布膜が表面に形成された基板を塗布室から減圧室へと搬送する。その搬送の間、塗布膜状態保持手段によって、塗布膜の状態が保持される。
塗布膜状態保持手段は、この場合、塗布膜が液相から固相に変化することを抑制する固体化阻止手段を含んでいてもよい。また、塗布膜状態保持手段は、塗布膜が液相から気相に変化して蒸発することを抑制する蒸発阻止手段を含んでいてもよい。
【0025】
この発明の一実施形態では、前記塗布膜状態保持手段に代えて、前記基板に形成された液膜状態の塗布膜を前記低表面張力液体の融点未満に冷却させて、前記低表面張力液体の固体膜に転換させる冷却固化手段を含む。
換言すれば、この発明の一実施形態に係る基板処理装置は、塗布室を有し、前記塗布室内で基板の表面に水よりも表面張力が小さい低表面張力液体を塗布して液体状態の塗布膜を形成する塗布膜形成ユニットと、昇華室を有し、前記昇華室内で前記基板の表面に形成された塗布膜を昇華させる昇華ユニットと、前記昇華室内を大気圧よりも低い圧力に減圧する減圧手段と、前記塗布室に基板を搬入する主搬送手段と、前記塗布室から前記昇華室へと基板を搬送するローカル搬送手段と、前記ローカル搬送手段が前記塗布室から前記昇華室へと前記基板を搬送している間に、前記基板に形成された液膜状態の塗布膜を前記低表面張力液体の融点未満に冷却させて、前記低表面張力液体の固体膜に転換させる冷却固化手段と、を含む。
この構成によれば、塗布室では、基板の表面に液相の塗布膜が形成される。その後、ローカル搬送手段によって搬送している間に、その液相の塗布膜が固相に変化させられる。そして、その固相塗布膜が形成された基板が昇華室に搬入される。こうして、ローカル搬送手段による搬送中に塗布膜を固体化させることができるので、搬送と固体化とを並行して実施できるから、生産性を向上できる。
【0026】
この発明の一実施形態では、前記ローカル搬送手段が、ローカル搬送室を通る搬送経路に従って基板を搬送するように構成されており、前記ローカル搬送室と前記昇華ユニットとが連通している。
この構成により、処理室から昇華室への基板の搬送がローカル搬送室内で行われる。それにより、ローカル搬送手段によって搬送中の基板表面の塗布膜の影響がローカル搬送室内に留められる。したがって、主搬送手段その他の基板処理装置の構成部分に対する塗布膜による影響を抑制できる。
【0027】
この発明の一実施形態では、前記昇華室が、前記ローカル搬送手段によって基板が搬入される搬入開口を有しており、前記ローカル搬送手段が、前記搬入開口を密閉する蓋手段を有している。
この構成により、ローカル搬送手段は、昇華室の搬入開口から基板を搬入し、かつその搬入開口を蓋手段によって密閉できる。それにより、搬入開口の開閉機構を別に準備する必要がない。
【0028】
この発明の一実施形態では、前記ローカル搬送手段が、基板を搬送する搬送アームを備えており、前記蓋手段が前記搬送アームに設けられている。この構成により、搬送アームで昇華室に基板を搬送する動作により、蓋手段によって搬入開口を密閉できる。
この場合、搬送アームは、昇華室内で基板を保持する基板保持手段の役割を担ってもよい。それにより、昇華室内に別の基板保持手段を設ける必要がなくなる。とくに、減圧昇華乾燥のように、乾燥工程に要する時間が短い場合には、昇華室内でローカル搬送手段の搬送アームで基板を保持する構成とすることにより、基板の受け渡しを省略できるから、工程全体の所要時間を短縮でき、生産性を向上できる。
【0029】
この発明の一実施形態では、前記昇華ユニットが、前記昇華室内で基板を保持する基板保持手段と、前記基板保持手段に保持された基板を加熱する基板加熱手段と、を含む。また、前記基板加熱手段が、伝熱または輻射熱によって基板を加熱するヒータ、または電磁波を照射して基板を加熱する電磁波照射手段を含む。
この構成によれば、昇華室内で基板が加熱されることにより、固相塗布膜の昇華を一層促進でき、昇華処理時間を短縮できる。基板加熱手段は、伝熱、熱輻射または電磁波照射によって基板を加熱するので、塗布膜の昇華を妨げない。
【0030】
この発明の一実施形態では、前記昇華ユニットが、基板を保持する複数の基板保持位置を有しており、前記複数の基板保持位置の間で基板を搬送する第2のローカル搬送手段をさらに含む。この構成により、昇華室内で基板を複数の位置の間で搬送できる。
この発明の一実施形態では、前記昇華ユニットが、前記昇華室内に配置され前記基板を加熱する基板加熱ユニットと、前記昇華室内に配置され前記基板加熱ユニットによって加熱された基板を冷却する基板冷却ユニットと、を含み、前記第2のローカル搬送手段が、前記基板加熱ユニットから前記基板冷却ユニットまで、基板を搬送する。
【0031】
この構成によれば、基板の加熱によって塗布膜の昇華を促進でき、かつその昇華処理後の加熱された基板を第2のローカル搬送手段で基板冷却ユニットまで搬送して冷却できる。したがって、昇華ユニットは、乾燥処理を終えた基板を冷却して払い出すことができる。たとえば、主搬送手段は冷却済みの基板を昇華ユニットから取り出すことができる。それにより、主搬送手段が加熱された基板からの熱を蓄えることがない。したがって、主搬送手段によって搬送される基板に対して熱による悪影響が及ぶことを抑制できる。
【0032】
この発明の一実施形態では、前記昇華室の容積が、前記塗布室の容積よりも小さい。この構成により、昇華室内での減圧昇華処理を速やかに進行させることができるので、処理時間をさらに短くできる。それにより、低表面張力液の表面張力が基板に与える影響をさらに少なくすることができる。
この発明の一実施形態では、前記低表面張力液体が有機溶剤を含む。
【0033】
この発明の一実施形態では、前記主搬送手段が主搬送室に配置されており、前記ローカル搬送手段が、前記主搬送室から離隔されたローカル搬送室に配置されている。この構成により、低表面張力液体の塗布膜の影響をローカル搬送室内に留めることができるので、主搬送手段によって搬送される基板に対する低表面張力液体の影響を抑制できる。
この発明の一実施形態では、前記塗布膜状態保持手段が、前記ローカル搬送室に配置されている。また、この発明の一実施形態では、前記塗布膜状態保持手段が、前記ローカル搬送手段に備えられている。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
[第1の実施形態]
図1Aは、この発明の第1の実施形態に係る基板処理装置1の構成を説明するための平面図であり、
図1Bはその立面図である。基板処理装置1は、キャリヤ保持部2と、インデクサロボットIRと、複数の液処理ユニットM11〜M14,M21〜M24(総称するときには「液処理ユニットM」という。)と、複数の昇華ユニットD11〜D14,D21〜D24(総称するときには「昇華ユニットD」という。)と、主搬送ロボットCRと、ローカル搬送ロボットLR11〜LR14,LR21〜LR24(総称するときには「ローカル搬送ロボットLR」という。)とを含む。主搬送ロボットCRは主搬送手段の一例であり、ローカル搬送ロボットLRはローカル搬送手段の一例である。
【0036】
キャリヤ保持部2は、複数枚の基板Wを積層状態で保持する基板容器であるキャリヤ3を保持する。この実施形態では、キャリヤ保持部2は、複数のキャリヤ3を保持可能に構成されている。インデクサロボットIRは、キャリヤ保持部2に保持されたキャリヤ3にアクセスして基板Wを出し入れし、かつ主搬送ロボットCRとの間で基板Wの受け渡しを行う。
【0037】
複数の液処理ユニットMおよび複数の昇華ユニットDは、この実施形態では、複数層構造(この実施形態では2層構造)を成すように立体的に配置されている。具体的には、
図1Aに表れているように、平面視において、キャリヤ保持部2から直線状に延びた主搬送室5に主搬送ロボットCRが配置されており、主搬送室5の両側に2つずつの積層ユニット群G1,G2;G3,G4が主搬送室5に沿って配置されている。それにより、平面視において、主搬送ロボットCRの周囲に4箇の積層ユニット群G1〜G4が配置されている。
【0038】
基板処理装置1の第1層S1および第2層S2に各4個の液処理ユニットM11〜M14,M21〜M24が配置されており、基板処理装置1は、合計で8個の液処理ユニットMを備えている。第1層S1において、主搬送室5の両側に2つずつの液処理ユニットM11,M12;M13,M14が主搬送室5に沿って配置されている。これらの4個の液処理ユニットM11〜M14の上に4個の昇華ユニットD11〜D14がそれぞれ配置されている。さらに、第2層S2において、主搬送室5の両側に2つずつの液処理ユニットM21,M22;M23,M24が主搬送室5に沿って配置されている。これらの4個の液処理ユニットM21〜M24の上に4個の昇華ユニットD21〜D24がそれぞれ配置されている。一つの液処理ユニットMと、その上に配置された昇華ユニットDとが、対応する対を成している。
【0039】
積層ユニット群G1は、下から順に、液処理ユニットM11、昇華ユニットD11、液処理ユニットM21および昇華ユニットD21を積層して構成されている。積層ユニット群G2は、下から順に、液処理ユニットM12、昇華ユニットD12、液処理ユニットM22および昇華ユニットD22を積層して構成されている。積層ユニット群G3は、下から順に、液処理ユニットM13、昇華ユニットD13、液処理ユニットM23および昇華ユニットD23を積層して構成されている。積層ユニット群G4は、下から順に、液処理ユニットM14、昇華ユニットD14、液処理ユニットM24および昇華ユニットD24を積層して構成されている。
【0040】
主搬送ロボットCRは、合計8個の液処理ユニットMにアクセスして基板Wを渡すことができ、かつ合計8個の昇華ユニットDにアクセスして基板Wを取り出すことができ、さらにインデクサロボットIRとの間で基板Wを受け渡しすることができる。
ローカル搬送ロボットLRは、この実施形態では、第1層S1に4個備えられ、第2層S2に4個備えられている。より具体的には、平面視において、第1層S1には、主搬送室5の両側に2個ずつのローカル搬送ロボットLR11,LR12;LR13,LR14が配置されている。さらに具体的には、主搬送室5の一方側において、第1層S1には、キャリヤ保持部2と液処理ユニットM11との間に一つのローカル搬送ロボットLR11が配置されており、キャリヤ保持部2から遠い側の端部にもう一つのローカル搬送ロボットLR12が配置されている。主搬送室5の他方側における2つのローカル搬送ロボットLR13,LR14の配置も同様である。そして、第2層S2における4個のローカル搬送ロボットLR21,LR22;LR23,LR24も同様に配置されている。ローカル搬送ロボットLR11〜LR14,LR21〜LR24は、ローカル搬送室C11〜C14,C21〜C24(総称するときには「ローカル搬送室C」という。)内にそれぞれ配置されている。ローカル搬送室Cは、主搬送室5から分離(離隔)するように区画された搬送空間を形成している。
【0041】
こうして、各対の液処理ユニットMおよび昇華ユニットDに対して、一つのローカル搬送ロボットLRが設けられている。ローカル搬送ロボットLRは、液処理ユニットMによって処理された後の基板Wを当該液処理ユニットMから取り出して、対応する昇華ユニットDへと搬送する。
インデクサロボットIR、主搬送ロボットCRおよびローカル搬送ロボットLRの動作例を概説すれば、次のとおりである。
【0042】
すなわち、インデクサロボットIRは、いずれかのキャリヤ3から未処理の基板Wを取り出し、主搬送ロボットCRに渡す。主搬送ロボットCRは、インデクサロボットIRから受け取った基板Wをいずれかの液処理ユニットMに搬入する。液処理ユニットMは、搬入された基板Wに対する処理を実行する。液処理ユニットMは、具体的には、基板表面に対して処理液による処理を施した後、塗布膜を基板Wの表面に形成する。液処理ユニットMによって処理された基板W、すなわち、表面に塗布膜が形成された基板Wは、ローカル搬送ロボットLRによって搬出され、その直上に配置された昇華ユニットDへと搬送される。昇華ユニットDは、搬入された基板Wの表面の塗布膜を昇華させて除去する。この昇華処理後の基板Wは、主搬送ロボットCRによって搬出される。主搬送ロボットCRは、その基板WをインデクサロボットIRに渡す。インデクサロボットIRは、渡された基板Wをいずれかのキャリヤ3に収納する。
【0043】
インデクサロボットIRは、未処理の基板Wを主搬送ロボットCRに渡し、その直前、直後または同時に、処理済みの基板Wを主搬送ロボットCRから受け取るように動作してもよい。同様に、主搬送ロボットCRは、未処理の基板WをインデクサロボットIRから受け取り、その直前、直後または同時に、処理済みの基板WをインデクサロボットIRに渡すように動作してもよい。さらに、主搬送ロボットCRは、未処理の基板Wを液処理ユニットMに搬入し、その直後または直前に昇華ユニットDから処理済みの基板Wを搬出するように動作してもよい。
【0044】
このように、この実施形態では、一つの液処理ユニットMに対して一つの昇華ユニットDが対応付けられている。そして、液処理ユニットMと昇華ユニットDとが積層されている。さらに、一つの液処理ユニットMおよび一つの昇華ユニットDの対に対して、一つのローカル搬送ロボットLRが設けられており、ローカル搬送ロボットLRは、それらの液処理ユニットMおよび昇華ユニットDにアクセス可能である。ローカル搬送ロボットLRは、液処理ユニットMによって処理された基板Wを液処理ユニットMから搬出し、その液処理ユニットMに対応する昇華ユニットDへと搬送して、その昇華ユニットDに搬入する。具体的には、ローカル搬送ロボットLRは、液処理ユニットMから取り出した基板Wを垂直方向(さらに具体的には上方)へと搬送する。主搬送ロボットCRは、未処理の基板Wを液処理ユニットMに搬入し、昇華ユニットDから処理後の基板Wを搬出する。
【0045】
液処理ユニットMは、塗布膜形成ユニットの一例である。
図2は、液処理ユニットMの構成例を説明するための図解的な断面図である。液処理ユニットMは、処理室11を備えている。処理室11は、基板Wの表面に塗布膜を形成する塗布室の一例である。処理室11内には、基板Wを水平に保持して回転可能な基板保持手段としてのスピンチャック12と、スピンチャック12を取り囲むカップ13と、薬液ノズル14と、リンス液ノズル15と、有機溶剤ノズル16と、遮断板19とが設けられている。スピンチャック12は、基板回転手段の一例であるモータ17によって鉛直な回転軸線18まわりに回転させられる。
【0046】
薬液ノズル14には、薬液配管21が結合されている。薬液配管21の途中には、薬液通路を開閉する薬液バルブ22が介装されている。薬液配管21には、薬液供給源23から薬液が供給される。薬液の例としては、HF(フッ酸)、SC1(アンモニア過酸化水素水)、SC2(塩酸過酸化水素水)、SPM(硫酸過酸化水素水)、リン酸、フッ硝酸、FPM(フッ酸過酸化水素水)、FOM(フッ酸オゾン水)、AOM(アンモニアオゾン水)等を挙げることができる。リンス液ノズル15には、リンス液配管26が結合されている。リンス液配管26の途中には、リンス液通路を開閉するリンス液バルブ27が介装されている。リンス液配管26には、リンス液供給源28から、リンス液が供給される。リンス液は、この実施形態ではDIW(脱イオン水)である。むろん、炭酸水等の他のリンス液が用いられてもよい。
【0047】
有機溶剤ノズル16には、有機溶剤配管31A,31Bが結合されている。より具体的には、この実施形態では、有機溶剤配管31Bが有機溶剤ノズル16に結合されており、有機溶剤配管31Aが有機溶剤配管31Bに合流している。有機溶剤配管31A,31Bの途中には、それぞれの有機溶剤通路を開閉する有機溶剤バルブ32A,32Bが介装されている。有機溶剤配管31A,31Bには、有機溶剤供給源33A,33Bから第1有機溶剤および第2有機溶剤が液体の状態で供給される。有機溶剤は、リンス液よりも表面張力が小さい低表面張力液体の一例である。この実施形態では、第1および第2有機溶剤が共通のノズル16から供給されているが、第1有機溶剤および第2有機溶剤をそれぞれ供給する個別のノズルが設けられてもよい。
【0048】
第1有機溶剤は、リンス液と置換可能な有機溶剤であり、より具体的には、水との親和性のある有機溶剤である。このような第1有機溶剤としては、IPA(イソプロピルアルコール)、メタノール、エタノール、ブタノール、アセトン、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、EGMEA(エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート)などを例示することができる。
【0049】
第2有機溶剤は、第1有機溶剤を置換可能な有機溶剤であって、供給時には液相であり、基板W上で冷却することによって固相に相転移し、かつ固相で減圧雰囲気中に置かれることによって気相に相転移して昇華する性質の有機溶剤である。より具体的には、使用に適する第2有機溶剤の一つの例は、フッ素系有機溶剤であり、たとえば、環状構造を有するフッ素系有機溶剤である。その他、ターシャリブタノール、炭酸エチレン、酢酸なども、冷却して固体化でき、かつ減圧によって昇華させることができる第2有機溶剤の例である。
【0050】
第2有機溶剤として、リンス液を置換可能な有機溶剤、より具体的には水と親和性のある有機溶剤を用いるときには、第1有機溶剤の使用を省くことができる。
遮断板19は、スピンチャック12に保持される基板Wの上面に対向する対向面19aを有している。遮断板19は、遮断板駆動ユニット20によって駆動される。遮断板駆動ユニット20は、遮断板昇降ユニット20Aと、遮断板回転ユニット20Bとを含む。遮断板昇降ユニット20Aは、遮断板19を上下動させて、対向面19aをスピンチャック12に保持された基板Wに接近させたり離間させたりする。遮断板回転ユニット20Bは、スピンチャック12と共通の回転軸線18まわりに遮断板19を回転駆動する。より具体的には、遮断板回転ユニット20Bは、遮断板19を支持している回転軸25に回転力を与える。遮断板19の対向面19aの中央、すなわち、回転軸線18上に、有機溶剤ノズル16が配置されている。回転軸25は、中空軸であり、その内部を有機溶剤配管31Bが挿通している。有機溶剤配管31Bは、低表面張力液体供給配管の一例である。
【0051】
対向面19aの中央には、有機溶剤ノズル16を下方に向けて露出させる開口19bが形成されている。この開口19bは、回転軸25の内部空間と連通している。有機溶剤配管31Bと回転軸25の内壁との間には、温度調節ガスを流通させるための温度調節ガス流路45が形成されている。この温度調節ガス流路45には、温度調節ガス配管46が接続されている。温度調節ガス配管46の途中には、流路を開閉する温度調節ガスバルブ47が介装されている。温度調節ガス配管46は、温度調節ガス供給源48に結合されている。温度調節ガス供給源48は、温度調整された不活性ガスを供給する。不活性ガスは、基板Wの表面の物質に対して不活性なガスであり、たとえば窒素ガスであってもよい。
【0052】
遮断板昇降ユニット20Aによって遮断板19を上下動させることによって、有機溶剤ノズル16が同時に昇降し、それによって、スピンチャック12に保持された基板Wから有機溶剤ノズル16までの高さが変動する。
有機溶剤ノズル16から供給される有機溶剤は、水よりも表面張力の小さい低表面張力液体の一例である。有機溶剤ノズル16の吐出口は、低表面張力液体の吐出口である。したがって、有機溶剤ノズル16の高さを変更する遮断板昇降ユニット20Aは、吐出口高さ調整手段の一例である。
【0053】
有機溶剤ノズル16から第2有機溶剤が液体の状態で吐出されることを保証するために、処理室11内に配置された有機溶剤配管31Bの少なくとも一部には、有機溶剤温度調節ユニット34が配置されている。さらに具体的には、有機溶剤配管31Bは、二重配管で構成されていてもよい。そして、その中央の流路に有機溶剤を流通させ、外側の流路に熱媒としての流体を流通させ、かつ熱媒を温度調節する構成によって、有機溶剤温度調節ユニット34が構成されてもよい。有機溶剤温度調節ユニット34は、低表面張力液体温度調節手段の一例である。有機溶剤温度調節ユニット34は、有機溶剤配管31Bの温度を第2有機溶剤の融点以上に温度調節し、それによって、その内部を流通する第2有機溶剤の温度をその融点以上に温度調節する。それにより、第2有機溶剤が液体の状態で流動し、有機溶剤ノズル16から吐出される。第2有機溶剤の融点によっては、第2有機溶剤供給源および接続される配管も含めて、第2有機溶剤の適切な経路範囲も温度調節される。
【0054】
スピンチャック12の回転軸130は、中空軸で構成されている。この回転軸130には、裏面ノズル131が挿通されている。裏面ノズル131の上端は、基板W下面の回転中心に向けて温度調節液を吐出する吐出口132を形成している。裏面ノズル131には、温度調節液供給配管133が結合されている。温度調節液供給配管133は、温度調節水バルブ134を介して温度調節水供給源135に結合され、かつ冷温水バルブ136を介して冷温水供給源137に結合されている。温度調節水供給源135は、基板Wの下面に供給されたときに、基板Wを第2有機溶剤の融点以上の温度に温度調節できる液体として、たとえば20℃〜40℃のDIW(温度調節水)を供給する。冷温水供給源137は、基板Wの下面に供給されたときに、基板Wを第2有機溶剤の融点未満の温度に温度調節して、基板W上の第2有機溶剤を固化(凝固)させることができる温度の液体として、冷温(たとえば15℃以下)のDIWを供給する。
【0055】
裏面ノズル131と回転軸130との間の空間は、基板Wの下面に向けて温度調節ガスを供給するための温度調節ガス流路140を形成している。温度調節ガス流路140には、温度調節ガス供給配管141が結合されている。温度調節ガス供給配管141の途中に温度調節ガスバルブ142が介装されている。温度調節ガス供給配管141は、温度調節ガス供給源143に結合されている。温度調節ガス供給源143は、温度調節された不活性ガスを供給する。不活性ガスは、基板Wを構成する物質に対して不活性なガスであり、たとえば窒素ガスであってもよい。
【0056】
処理室11の側壁35,36には、主搬送ロボットCRによって未処理の基板Wが搬入される基板搬入開口37と、ローカル搬送ロボットLRによって処理済みの基板Wが搬出される基板搬出開口38とがそれぞれ形成されている。基板搬入開口37および基板搬出開口38には、それらを開閉するシャッタ39,40がそれぞれ配置されている。シャッタ39,40は、シャッタ駆動ユニット41,42によって、それぞれ開閉駆動される。基板搬入開口37は、主搬送室5と処理室11とを連通させる開口であり、主搬送室5と処理室11とを区画する側壁35に形成されている。基板搬出開口38は、処理室11とローカル搬送室Cとを連通させる開口であり、処理室11とローカル搬送室Cとを区画する側壁36に形成されている。
【0057】
液処理ユニットMの動作を概説すれば次のとおりである。
主搬送ロボットCRが未処理の基板Wを搬入するとき、シャッタ39が基板搬入開口37を開く。未処理の基板Wを保持した主搬送ロボットCRのハンドHC(アーム)が基板搬入開口37から処理室11内へと進入し、スピンチャック12に、その基板Wを渡す。基板Wの受け渡しのために、必要に応じて、カップ13またはスピンチャック12が上下動されてもよい。基板Wをスピンチャック12に渡した主搬送ロボットCRのハンドは、基板搬入開口37を通って処理室11から退出する。その後、シャッタ駆動ユニット41は、シャッタ39を駆動して、基板搬入開口37を閉じる。
【0058】
次いで、モータ17によってスピンチャック12が回転させられ、薬液バルブ22が開かれる。それにより、回転状態の基板Wの表面に薬液が供給され、遠心力によって基板W表面の全域に薬液が行き渡る。こうして、基板Wを薬液で処理する薬液工程が実行される。薬液バルブ22を閉じることにより薬液の供給が停止して、薬液工程が終了する。
薬液工程の後、スピンチャック12の回転を継続しながら、リンス液バルブ27が開かれる。それにより、回転状態の基板Wの表面にリンス液が供給される。リンス液は、基板W表面の全域に広がり、基板W表面の薬液を置換する。こうしてリンス工程が実行される。リンス液バルブ27を閉じることによりリンス液の供給が停止して、リンス工程が終了する。
【0059】
このリンス工程の終了後、またはリンス工程の終了直前に、有機溶剤バルブ32Aが開かれる。それにより、基板W表面に第1有機溶剤が供給される。スピンチャック12は回転状態に保持される。したがって、第1有機溶剤は、基板W表面の全域に広がり、基板W表面のリンス液を置換する。このとき、遮断板駆動ユニット20は、遮断板19を下降させて、対向面19aを基板Wの表面に近接した処理位置に配置する。
【0060】
次に、有機溶剤バルブ32Bが開かれる。それにより、基板W表面に第2有機溶剤が供給される。スピンチャック12は回転状態に保持される。したがって、第2有機溶剤は、基板W表面の全域に広がり、基板W表面の第1有機溶剤を置換する。基板Wの全面に第2有機溶剤が広がった後、有機溶剤バルブ32Bが閉じられる。有機溶剤ノズル16は、基板Wの表面に十分に接近した位置から第2有機溶剤を吐出するので、第2有機溶剤は液体の状態で基板Wの表面に到達し、かつ基板Wの表面上で広がる。つまり、有機溶剤ノズル16と基板Wとの間の距離が液体の状態で第2有機溶剤が基板Wの表面に到達可能であるように定められ、基板W表面からの距離がそのような距離となるように、有機溶剤ノズル16が基板Wの表面に近接して配置される。
【0061】
第2有機溶剤の供給が開始されるよりも前から、温度調節水バルブ134が開かれる。それにより、裏面ノズル131から基板W裏面(下面)に温度調節水が供給され、その温度調節水は、遠心力によって基板Wの裏面の全域に行き渡り、基板Wの温度を第2有機溶剤の融点以上に保持する。有機溶剤ノズル16から吐出された第2有機溶剤が基板Wの表面に到達するまでに、基板Wの温度は、20℃〜40℃に調節され、第2有機溶剤の融点よりも高温になっている。その状態で、第2有機溶剤が基板Wの表面に液体の状態で到達するので、基板Wの表面に到達した第2有機溶剤は、液体の状態に保たれ、基板W表面の第1有機溶剤を置換しながら基板W表面の全域に広がる。裏面ノズル131、温度調節液供給配管133および温度調節水バルブ134などは、基板温度調節手段の一例である。
【0062】
第2有機溶剤の供給が停止されると、基板Wの表面では遠心力によって第2有機溶剤が基板Wの外周から排除されていくので、第2有機溶剤の液膜が薄膜化される。その後、温度調節水バルブ134が閉じられ、代わって、冷温水バルブ136が開かれる。それにより、裏面ノズル131は、基板Wの裏面に冷温水(冷却用の流体の一例)を供給する。その冷温水は、基板Wの裏面全域に行き渡り、基板Wを第2有機溶剤の融点未満の温度に冷却する。たとえば、第2有機溶剤の融点が20℃程度である場合、冷温水の温度は15℃程度であってもよい。このとき、温度調節ガスバルブ47が開かれて、基板Wの表面に冷温(第2有機溶剤の融点よりも低温)の不活性ガスが併せて供給されてもよい。ただし、不活性ガスの供給によって生じ得る、第2有機溶剤の蒸発または昇華が不所望な程度である場合には、冷温不活性ガスの供給は省くことが好ましい。裏面ノズル131、温度調節液供給配管133および冷温水バルブ136などは、冷却固化手段の一例である。
【0063】
こうして、基板Wが冷却されることにより、薄膜化された第2有機溶剤の液膜は液相から固相へと相転移し、基板Wの表面に固相の塗布膜10を形成する。こうして、固相の塗布膜10が形成されると、冷温水バルブ136が閉じられ、基板Wの裏面の冷温水が遠心力によって振り切られる(裏面乾燥処理)。このとき、温度調節ガスバルブ142が開かれて、基板Wの下面に冷温(第2有機溶剤の融点よりも低温)の不活性ガスが供給される。これにより、基板Wを冷温状態に保持できる。
【0064】
その後、遮断板駆動ユニット20が遮断板19を上方に退避させる。そして、スピンチャック12の回転が停止されて、液処理ユニットMによる処理が終了する。
次に、シャッタ駆動ユニット42は、シャッタ40を駆動して、基板搬出開口38を開く。この基板搬出開口38から、ローカル搬送ロボットLRのハンドLH(アーム)が処理室11内に進入し、スピンチャック12から基板Wを受け取り、基板搬出開口38を通して、当該基板Wを処理室11外へと搬出する。基板Wの受け渡しのために、必要に応じて、カップ13またはスピンチャック12が上下動されてもよい。ローカル搬送ロボットLRは、表面に第2有機溶剤の固相塗布膜10が形成された状態の基板Wを、昇華ユニットDまで搬送する。
【0065】
図3は、昇華ユニットDの構成例を説明するための図解的な断面図である。昇華ユニットDは、密閉可能な減圧チャンバ(真空チャンバ)からなる昇華室51を有している。昇華室51の容積は、液処理ユニットMの処理室11の容積よりも小さく、それによって、昇華室51は、内部空間を効率的に減圧できる構造を有している。昇華室51内に、基板Wを保持する基板保持手段としての基板ホルダ52が配置されている。基板ホルダ52には、基板加熱手段としてのヒータ53Hと、基板冷却手段としての冷却ユニット53Cとが内蔵されており、それによって、温度調節プレートが構成されている。ヒータ53Hは、伝熱または熱輻射によって基板Wを加熱する。ヒータ53Hの代わりに、電磁波(紫外線、赤外線、マイクロ波、レーザ光など)を照射して基板を加熱する電磁波照射ユニットを基板加熱手段として用いてもよい。冷却ユニット53Cは、基板ホルダ52内を通る冷媒通路を有していてもよいし、電子冷熱素子を有していてもよい。
【0066】
基板ホルダ52を貫通して複数(3本以上)のリフトピン54が配置されている。リフトピン54は、リフトピン昇降ユニット55よって上下動され、それによって、基板ホルダ52上で基板Wを上下動させる。
昇華室51は、ベース部511と、ベース部511に対して上下動する可動蓋部512とを有している。可動蓋部512は、蓋部駆動ユニット56によって、ベース部511に対して上下動させられる。ベース部511と可動蓋部512との間に昇華処理空間50が区画される。可動蓋部512の下端縁部58は、ベース部511の上面59に倣う平面に沿って形成されている。ベース部511において、可動蓋部512の下端縁部58に対向する位置には、シール部材としてのOリング60が配置されている。可動蓋部512をベース部511に接近させ、ベース部511に向けて押し付けると、可動蓋部512とベース部511との間がOリング60によって密閉される。こうして、密閉された昇華処理空間50が形成される。
【0067】
ベース部511には、排気配管62が結合されている。排気配管62は、昇華処理空間50に連通している。排気配管62は、真空ポンプ等の排気ユニット63に接続されている。排気配管62には、排気バルブ64が介装されている。排気ユニット63は減圧手段の一例であり、排気バルブ64を開いて排気ユニット63を駆動することによって、昇華処理空間50を大気圧よりも低い気圧(たとえば0.01Torr以下)に減圧できる。
【0068】
可動蓋部512には、昇華処理空間50に温度調節ガスとしての冷温不活性ガス(第2有機溶剤の融点よりも低温の不活性ガス)を導入するための冷温不活性ガスノズル71が設けられている。冷温不活性ガスノズル71には、冷温不活性ガス配管72が結合されている。冷温不活性ガス配管72の途中には、冷温不活性ガスバルブ73が介装されている。冷温不活性ガス配管72は、冷温不活性ガスを供給する冷温不活性ガス供給源74に結合されている。
【0069】
昇華ユニットDの動作を概説すれば、次のとおりである。
ローカル搬送ロボットLRのハンドLHは、表面に固相の塗布膜10が形成された状態の基板Wを昇華ユニットDに搬入する。基板Wが搬入されるとき、可動蓋部512はベース部511から離れた開放位置にあり、それにより、可動蓋部512とベース部511との間に基板搬入開口が形成される。このとき、リフトピン54は、その先端が基板ホルダ52の表面から上方に離間した上昇位置にある。その状態で、ローカル搬送ロボットLRのハンドLHが、可動蓋部512とベース部511との間に進入して、リフトピン54に基板Wを渡す。基板Wを渡されたリフトピン54は、下降し、基板ホルダ52の上面に基板Wを載置する。
【0070】
基板Wが搬入されるよりも前から、冷温不活性ガスバルブ73が開かれ、冷温不活性ガスノズル71から冷温不活性ガスが吐出され、基板ホルダ52の周辺は第2有機溶剤の融点よりも低温の雰囲気に制御されている。また、冷却ユニット53Cが作動させられ、基板ホルダ52は、第2有機溶剤の融点よりも低温に温度調節されている。
一方、蓋部駆動ユニット56は、可動蓋部512を下降させ、Oリング60を介してベース部511に押し付ける。これにより、昇華処理空間50が密閉空間となる。さらに、排気バルブ64が開かれ、排気ユニット63が駆動されることにより、昇華処理空間50内の雰囲気が排気され、昇華処理空間50が減圧される。
【0071】
昇華処理空間50の減圧が開始されるまでの期間には、冷温不活性ガスバルブ73が開かれ、冷温不活性ガスノズル71から昇華処理空間50内に冷温不活性ガスが供給される。また、冷却ユニット53Cが作動させられ、基板ホルダ52は、第2有機溶剤の融点よりも低温に温度調節される。それにより、基板Wの表面の固相塗布膜10の溶解が抑制される。昇華処理空間50の減圧が開始されると、減圧を阻害しないように、冷温不活性ガスバルブ73が閉じられる。また、冷却ユニット53Cが作動停止し、基板ホルダ52の冷却が停止される。
【0072】
昇華処理空間50内が減圧されることによって、基板Wの表面の固相塗布膜10の昇華が開始される。さらに昇華を補助するために、ヒータ53を駆動して基板ホルダ52が加熱される。こうして、基板Wの雰囲気の減圧と基板Wの加熱とを併用して、固相塗布膜10が速やかに(たとえば30秒〜60秒で)昇華する。すなわち、固相塗布膜10は、液相を経ることなく、基板Wの表面から取り除かれる。
【0073】
塗布膜10の昇華が終了した後、排気ユニット63が停止され、必要に応じて冷温不活性ガスバルブ73を開くことにより、昇華処理空間50内が大気圧まで加圧される。このとき、昇華処理空間50には、冷温不活性ガスではなく、常温の不活性ガスを導入してもよい。その後、蓋部駆動ユニット56が、可動蓋部512を上昇させて、ベース部511から離間させる。さらに、リフトピン54が上昇して、基板ホルダ52の上面から上方に離れた高さまで基板Wを持ち上げる。この状態で、主搬送ロボットCRのハンドHCが可動蓋部512とベース部511との間に進入し、リフトピン54から処理後の基板Wをすくいとり、主搬送室5へと退出する。
【0074】
図4は、ローカル搬送ロボットLRの構成例を説明するための図である。ローカル搬送ロボットLRは、ローカル搬送室C内に配置されている。ローカル搬送室Cは、液処理ユニットMの処理室11と、当該処理室11の上に配置された昇華ユニットDの昇華室51とに対向し、昇華室51が開かれているときに、昇華室51と連通する。
ローカル搬送ロボットLRは、基板Wを保持するためのハンドLH(アーム)と、ハンドLHを駆動するハンド駆動ユニット90とを含む。ハンド駆動ユニット90は、ハンドLHを水平移動および垂直移動させ、さらに必要に応じて、ハンドLHを鉛直な回転軸線89まわりに回動させる。それにより、ハンドLHは、液処理ユニットMの処理室11内に進入してスピンチャック12から基板Wを受け取り、その基板Wを昇華ユニットDまで搬送し、昇華室51内へとその基板Wを搬入してリフトピン54(
図3参照)に渡し、その後にローカル搬送室Cに退出することができる。
【0075】
昇華ユニットDは、液処理ユニットMの上に配置されているので、ローカル搬送ロボットLRは、液処理ユニットMから基板Wを搬出した後、ハンドLHを昇華ユニットDの高さまで上昇させるように動作する。
ローカル搬送ロボットLRは、さらに、ハンドLHを冷却するハンド冷却ユニット97(アーム冷却ユニット)を備えている。ハンド冷却ユニット97は、ハンドLHに形成された冷媒通路98に冷媒を循環させるように構成されていてもよい。このような冷媒通路98を有する構成に代えて、ハンドLHを冷却する電子冷熱素子(図示せず)を備えてもよい。また、ハンド冷却ユニット97は、ローカル搬送室Cに備えられた冷却プレート99を冷却するように構成されていてもよい。この場合、ローカル搬送ロボットLRが基板Wを保持していない期間に、ハンドLHが冷却プレート99に接触させられる。それにより、ハンドLHの非稼
働期間にハンドLHが冷却される。その冷却されたハンドLHによって基板Wを搬送することにより、搬送中に基板Wを冷却(より具体的には第2有機溶剤の融点未満に冷却)できるので、基板W上の固相塗布膜10の温度がその融点以上となって液相に相転移することを抑制または防止できる。
【0076】
ハンドLHに保持された基板Wを効率的に冷却するために、ハンドLHは、基板Wの形状に対応したプレート状に構成されていてもよい。このようなプレート状のハンドLHは、スピンチャック12との基板Wの受け渡しのために、スピンチャック12に備えられたチャックピンを回避する切欠きが周囲に形成された切欠き付プレート形状を有していてもよい。
【0077】
以上のように、この実施形態によれば、処理対象の基板Wは、主搬送ロボットCRによって、液処理ユニットMの処理室11に搬入される。液処理ユニットMでは、処理室11内で基板Wに薬液およびリンス液が順に供給され、それらの処理液によって基板Wが処理される。その後、第1有機溶剤で基板W上のリンス液が置換され、さらに第2有機溶剤で第1有機溶剤が置換される。そして、スピンチャック12の回転によって第2有機溶剤の液膜を薄膜化した後に、基板Wが冷却されることにより、第2有機溶剤が液相から固相に移行する。こうして、基板W上に固相の塗布膜10が形成される。この基板Wは、ローカル搬送ロボットLRによって、処理室11から昇華室51へと搬送され、昇華室51内で基板W表面の固相塗布膜10を昇華させるための昇華処理が実行される。
【0078】
処理室11から昇華室51への基板Wの搬送は、主搬送ロボットCRとは別に設けられたローカル搬送ロボットLRによって行われる。それにより、主搬送ロボットCRおよびその可動範囲に存在し得る部品や他の基板Wに対して固相塗布膜10を構成する有機溶剤の影響が及ぶことを抑制できる。
液処理ユニットMは、処理室11内にスピンチャック12および遮断板19を有しており、その容積が比較的大きい。そのため、処理室11内の空間を減圧して塗布膜10を昇華させるのは実際的でなく、仮に可能であるとしても、大きな容積の空間の減圧には長い時間がかかる。すると、基板W表面のパターンが固相塗布膜10から応力を受ける時間が長くなるから、基板W表面のパターンは昇華過程で固相塗布膜10が発生する応力による影響(具体的にはパターン倒壊等の損傷)を受けるおそれがある。
【0079】
そこで、この実施形態では、液処理ユニットMで処理を終えた後の基板Wを、より容積の小さい昇華室51に搬入し、昇華室51内での減圧昇華処理を行っている。これにより、固相塗布膜10を短時間で除去して基板W表面を乾燥させることができるので、基板W表面のパターンの倒壊を抑制または防止できる。
また、減圧処理によって基板Wの表面全域の固相塗布膜10を同時かつ短時間で昇華除去できるので、固相塗布膜10の昇華除去が基板Wの表面内で均一に実行できる。
【0080】
さらに、主搬送ロボットCRの動作状態にかかわらずに、ローカル搬送ロボットLRによって、昇華室51へ基板Wを速やかに搬送することができる。したがって、搬送時間を短縮できるので、搬送中の基板W表面の状態を保ちやすい。
また、昇華室51内が大気圧よりも低い圧力に減圧されることにより、基板W表面の塗布膜10の昇華を促進できる。具体的には、昇華室51の減圧によって、塗布膜10の昇華が速やかに完了する。それにより、昇華の過程で塗布膜10が基板Wに与える応力のエネルギーを抑制しながら、塗布膜10を昇華させて基板W表面から除去できる。
【0081】
また、この実施形態では、昇華室51内で基板Wが保持される基板ホルダ52にヒータ53Hが内蔵されている。それにより、昇華室51内を減圧するときに基板Wを加熱できるので、固相塗布膜10の昇華を一層促進でき、昇華処理時間を短縮できる。ヒータ53Hは、伝熱または熱輻射によって基板を加熱するので、塗布膜の昇華を妨げない。電磁波照射によって基板Wを加熱する加熱ユニットを設ける場合も同様である。
【0082】
また、この実施形態では、基板ホルダ52に冷却ユニット52Cが備えられており、昇華室51内の減圧開始前には、基板Wが第2有機溶剤の融点未満の温度に保持される。また、昇華室51内の減圧開始前には、冷温不活性ガスが昇華室51に導入される。それにより、制御されない雰囲気中での不用意な昇華を抑制できる。
また、この実施形態では、ローカル搬送ロボットLRのハンド(搬送アーム)がハンド冷却ユニット97によって冷却され、それによって、基板Wが第2有機溶剤の融点未満の温度に冷却される。それにより、ローカル搬送ロボットLRによる搬送中に基板W上の固相塗布膜10が液化することを回避できる。したがって、基板W表面の固相塗布膜10が液化することによる表面張力の影響を回避できるので、基板Wの表面のパターンの倒壊を抑制できる。
【0083】
この実施形態では、ハンド冷却ユニット97は、固相塗布膜10をその融点未満の温度に維持する冷却維持手段の一例であり、それによって固相塗布膜10の液化を抑制する液化抑制手段または液化阻止手段の一例である。また、ハンド冷却ユニット97によって、ハンドLHを介して基板Wが冷却されることによって、固相塗布膜10の昇華も抑制または防止される。すなわち、ハンド冷却ユニット97は、固相塗布膜10の昇華を抑制または阻止する昇華抑制手段または昇華阻止手段の一例でもある。つまり、ローカル搬送ロボットLRによって基板Wが搬送されている間、固相塗布膜10が不用意で制御されない状態で気相に移行して昇華することを抑制できる。
【0084】
さらに、この実施形態では、液処理ユニットMにおいて、有機溶剤配管31Bの処理室11内に配置されている部分に、有機溶剤温度調節ユニット34が設けられている。それにより、とくに第2有機溶剤が液体の流動性が確保され、液体の状態で有機溶剤ノズル16から基板W上に吐出される。それによって、基板W上で第2有機溶剤の均一な膜厚の液膜を形成できる。そして、その均一な膜厚の液膜が液相から固相へと相転移して、均一の膜厚の固相塗布膜10が形成される。その固相塗布膜10の状態が保たれたままで昇華室51へと搬送されて減圧昇華処理が行われる。それにより、均一な固相塗布膜10が昇華室51で昇華させられる。このようにして、面内均一性の確保された乾燥処理を達成できる。
【0085】
また、この実施形態では、有機溶剤ノズル16が遮断板19に組み込まれており、遮断板駆動ユニット20によって上下動される。それにより、有機溶剤ノズル16の基板Wからの高さを調節できる。すなわち、遮断板駆動ユニット20(とくに遮断板昇降ユニット20A)は、吐出
口高さ調整手段の一例である。この構成により、有機溶剤ノズル16から基板Wの表面に到達するまでに第2有機溶剤が固相に変化しないように有機溶剤ノズル16から基板Wまでの距離を調節でき、それによって、第2有機溶剤の流動状態を確保して、基板Wの表面に到達させることができる。さらに、この実施形態では、有機溶剤ノズル16から第2有機溶剤の液体が基板Wに向けて吐出されている間、裏面ノズル131から
温度調節水が基板Wの下面に吐出され、それによって、基板Wが第2有機溶剤の融点以上に温度調節される。それにより、有機溶剤ノズル16から吐出されて基板Wに到達した第2有機溶剤が固相に変化することを回避でき、基板W上における第2有機溶剤の流動状態を確保できる。すなわち、基板W表面に到達した第2有機溶剤の液体は十分な流動性を有し、基板W表面で広がる。それにより、基板W表面に均一な膜厚の液膜を形成できる。その均一な膜厚の状態の液膜が液相から固相に相転移して固相塗布膜10となり、その固相塗布膜10の状態が保たれたままで昇華室51へと搬送されて減圧昇華処理を受ける。このようにして、面内均一性の確保された乾燥処理を達成できる。
【0086】
さらにまた、この実施形態では、有機溶剤ノズル16から第2有機溶剤が吐出されている期間に、モータ17によってスピンチャック12が回転させられる。それにより、基板Wが回転され、基板W表面に供給された第2有機溶剤の液体を基板W表面で薄く均一に延ばすことができる。それにより、均一で薄い液膜を基板表面に形成できる。その均一で薄い液膜が液相から固相に相転移して固相塗布膜となる。その固相の薄い塗布膜10の状態が保たれたままで昇華室51へと基板Wが搬送されて、減圧昇華処理を受ける。固相塗布膜10の膜厚が小さいので、昇華処理時間が短くなり、かつ昇華処理の面内均一
性も高くなる。こうして、面内均一性の確保された乾燥処理を達成できるうえに、昇華処理時間が短縮できるので、基板Wへの影響を一層抑制した乾燥処理を実現できる。
【0087】
また、この実施形態では、ローカル搬送ロボットLRが、ローカル搬送室Cを通る搬送経路に従って基板Wを搬送するように構成されている。それにより、ローカル搬送ロボットLRによって搬送中の基板W表面の塗布膜10を構成する有機溶剤の影響がローカル搬送室C内に留められる。したがって、主搬送ロボットCRその他の基板処理装置1の構成部分に対する有機溶剤の影響を抑制できる。とくに、この実施形態では、主搬送ロボットCRが主搬送室5に配置されており、ローカル搬送ロボットLRが、主搬送室5から離隔されたローカル搬送室Cに配置されている。これにより、有機溶剤の蒸気が主搬送室5に入り込むことを抑制または防止できるので、主搬送ロボットCRによって搬送される基板Wに対する有機溶剤蒸気の影響を抑制できる。
【0088】
[第2の実施形態]
次に、前述の構成の基板処理装置1によって別の処理を実行する第2の実施形態について説明する。
前述の第1の実施形態では、液処理ユニットMにおいて固体塗布膜10が基板W上に形成され、その状態の基板Wがローカル搬送ロボットLRによって昇華ユニットDに搬送されている。
【0089】
これに対して、第2の実施形態では、液処理ユニットMでは、基板W上の第2有機溶剤を固体化する処理(冷却処理)が行われない。つまり、液処理ユニットMは、液体の第2有機溶剤塗布膜10が形成された状態で、基板Wに対する処理を終える。この液体塗布膜10が形成された基板Wがローカル搬送ロボットLRによって搬出される。ローカル搬送ロボットLRは、その基板Wの搬送中に、基板W上の液体塗布膜10を冷却して固体化する。より具体的には、ローカル搬送ロボットLRに備えられたハンド冷却ユニット97によって、ハンドLHに保持された基板Wが第2有機溶剤の融点未満に冷却される。それによって、ローカル搬送ロボットLRによって搬送されている間に、基板Wの表面の塗布膜10が液相から固相へと変化する。この場合、ハンド冷却ユニット97は、冷却固化手段の一例である。
【0090】
こうして、基板Wの表面に固体塗布膜10が形成され、その状態の基板Wが昇華室51に搬入される。この後の処理は、前述の第1の実施形態と同様である。
[第3の実施形態]
次に、前述の基板処理装置1によってさらに別の処理を実行する第3の実施形態について説明する。
【0091】
第2の実施形態の場合と同様に、液処理ユニットMは、基板W上の第2有機溶剤を固体化せず、液体の有機溶剤塗布膜10が形成された状態で、基板Wに対する処理を終える。この液体塗布膜10が形成された基板Wがローカル搬送ロボットLRによって搬出される。
ローカル搬送ロボットLRは、その基板Wの搬送中に、基板W上の液体塗布膜10を、液体の状態に保持する。この場合、ハンド冷却ユニット97は、基板Wの温度を第2有機溶剤の融点以上の温度に基板Wを保温し、それによって、基板W上の液体塗布膜10を液体の状態に保持するように、ハンド保温ユニットとして動作することが好ましい。また、ハンド冷却ユニット97(ハンド保温ユニット)は、基板W上の液体塗布膜10の蒸発が抑制されるように、第2有機溶剤の融点よりも少しだけ高い温度(たとえば22℃程度)に基板Wの温度を保持することが好ましい。それによって、ローカル搬送ロボットLRによって搬送されている間、基板Wの表面の液体塗布膜10が液体の状態に保持され、かつ蒸発による液膜の減少が抑制される。すなわち、この場合、ハンド冷却ユニット97(ハンド保温ユニット)は、固体化阻止手段および蒸発阻止手段として機能する。
【0092】
ローカル搬送ロボットLRは、第2有機溶剤の液体塗布膜10が表面に形成された基板Wを昇華室51に搬入する。昇華ユニットDは、基板Wを冷却してその表面の液体塗布膜10を固体化して固体塗布膜10を形成し、その後にその固体塗布膜10を昇華させるように動作する。
より具体的には、ローカル搬送ロボットLRのハンドLHが、可動蓋部512とベース部511との間に進入して、リフトピン54に基板Wを渡すと、基板Wを渡されたリフトピン54は、下降し、基板ホルダ52の上面に基板Wを載置する。一方、蓋部駆動ユニット56は、可動蓋部512を下降させ、Oリング60を介してベース部511に押し付ける。これにより、昇華処理空間50が密閉空間となる。冷却ユニット53Cは、基板Wが基板ホルダ52の上面に載置されるよりも前から、基板ホルダ52を第2有機溶剤の融点よりも低温に温度調節している。基板Wが基板ホルダ52の上面に載置されると、冷温不活性ガスバルブ73が開かれ、冷温不活性ガスノズル71から冷温不活性ガスが吐出され、基板ホルダ52の周辺は第2有機溶剤の融点よりも低温の雰囲気に制御される。これにより、基板ホルダ52上で液体塗布膜10が液相から固相へと相転移し、基板W上に固体塗布膜10が形成される。このように、冷却ユニット53Cは、冷却固化手段として機能する。
【0093】
次に、排気バルブ64が開かれ、排気ユニット63が駆動されることにより、昇華処理空間50内の雰囲気が排気され、昇華処理空間50が減圧される。昇華処理空間50の減圧が開始されると、減圧を阻害しないように、冷温不活性ガスバルブ73が閉じられる。また、冷却ユニット53Cが作動停止し、基板ホルダ52の冷却が停止される。
昇華処理空間50内が減圧されることによって、基板Wの表面の固相塗布膜10の昇華が開始される。さらに昇華を補助するために、ヒータ53を駆動して基板ホルダ52が加熱される。こうして、基板Wの雰囲気の減圧と基板Wの加熱とを併用して、固相塗布膜10が速やかに(たとえば30秒〜60秒で)昇華する。すなわち、液相を経ることなく、基板Wの表面から取り除かれる。
【0094】
塗布膜10の昇華が終了した後、排気ユニット63が停止され、必要に応じて冷温不活性ガスバルブ73を開くことにより、昇華処理空間50内が大気圧まで加圧される。このとき、昇華処理空間50には、冷温不活性ガスではなく、常温の不活性ガスを導入してもよい。その後、蓋部駆動ユニット56が、可動蓋部512を上昇させて、ベース部511から離間させる。さらに、リフトピン54が上昇して、基板ホルダ52の上面から上方に離れた高さまで基板Wを持ち上げる。この状態で、主搬送ロボットCRのハンドHCが可動蓋部512とベース部511との間に進入し、リフトピン54から処理後の基板Wをすくいとり、主搬送室5へと退出する。
【0095】
ローカル搬送ロボットLRによる搬送中に基板Wの表面の液体塗布膜の蒸発を抑制するために、基板Wの表面に乾燥防止ガスを供給する乾燥防止ガスノズルが設けられてもよい。
たとえば、
図4に示すように、ローカル搬送ロボットLRのハンドLH(またはハンドLHの移動によらずにハンドLHとの相対位置が大きく変化しない可動部位)には、ハンドLHに保持された基板Wの周囲(とくに基板Wの上面付近)に乾燥防止ガスとしての有機溶剤蒸気を供給する有機溶剤ガスノズル91が配置されてもよい。有機溶剤ガスノズル91は、有機溶剤ガス配管92に接続されている。有機溶剤ガス配管92には、有機溶剤ガスバルブ93が介装されている。有機溶剤ガス配管92は、有機溶剤ガス供給源94に接続されている。有機溶剤ガス供給源94は、塗布膜10と同種の有機溶剤、すなわち第2有機溶剤の蒸気(気体)を供給することが好ましい。有機溶剤ガスノズル91等により、液体塗布膜の蒸発を抑制する蒸発阻止手段が構成されている。
【0096】
有機溶剤ガスバルブ93を開くことにより、ローカル搬送室C内、とくにハンドLHに保持された基板Wの付近に有機溶剤ガスを供給することができる。これにより、基板Wの上面の第2有機溶剤の塗布膜10(液膜)の周囲は有機溶剤ガスの濃度が高い雰囲気となる。そのため、液体の塗布膜10を構成する第2有機溶剤の蒸発が進みにくいので、液体の塗布膜10を基板W上に保ったままで、液処理ユニットMから昇華ユニットDへと基板Wを搬送できる。この構成では、ハンドLHが移動しても、有機溶剤ガスノズル91とハンドLHとの相対位置がほぼ一定に保たれるので、ハンドLHによって搬送される途中においても基板Wの周囲の空間の有機溶剤濃度を安定的に高い値に保持できる。それにより、有機溶剤の蒸発をより確実に抑制または防止できる。
【0097】
図4に示すように、ハンドLHに有機溶剤ガスノズル91を備える代わりに、またはその有機溶剤ガスノズル91に加えて、ローカル搬送室C内に有機溶剤ガスを供給する有機溶剤ガスノズル91Aが配置されてもよい。
ローカル搬送ロボットLRによって搬送されている間、その搬送中の基板Wの表面には、有機溶剤の乾燥を防ぐ乾燥防止ガスとして、有機溶剤の蒸気が供給される。したがって、液処理ユニットMで処理された基板Wは、その処理後の状態、すなわち表面に第2有機溶剤の液膜(塗布膜)が形成された状態で、昇華室51に搬入され、昇華ユニットDによる減圧昇華処理を受ける。それにより、ローカル搬送ロボットLRによる搬送中における基板W表面の不用意で制御されない状態での塗布膜の状態変化を抑制できる。つまり、基板Wの表面から有機溶剤の塗布を排除するための工程を、昇華室51内の調整された環境中で行える。それによって、不用意な乾燥による基板Wへの悪影響を回避して、基板Wの乾燥を良好に行うことができる。
【0098】
[第4の実施形態]
図5Aは、この発明の第4の実施形態に係る基板処理装置1Aの構成を説明するための図解的な平面図であり、
図5Bはその立面図である。
図5Aおよび
図5Bにおいて、前述の
図1Aおよび
図1Bの各部の対応部分には同一参照符号を付す。
この実施形態では、平面視において、主搬送室5の一方側に配置された2つの積層ユニット群G1,G2の間にローカル搬送室Cが配置され、そのローカル搬送室Cにローカル搬送ロボットLRが配置されている。同様に、主搬送室5の他方側に配置された2つの積層ユニット群G3,G4の間にローカル搬送室Cが配置され、そのローカル搬送室Cにローカル搬送ロボットLRが配置されている。積層ユニット群G1〜G4を構成する複数のユニットおよびそれらの積層状態は、第1の実施形態の場合と同様である。
【0099】
主搬送ロボットCRは、第1の実施形態の場合と同様に、合計8個の液処理ユニットMにアクセスして基板Wを渡すことができ、かつ合計8個の昇華ユニットDにアクセスして基板Wを取り出すことができ、さらにインデクサロボットIRとの間で基板Wを受け渡しすることができる。
ローカル搬送ロボットLRは、この実施形態では、第1層S1に2個備えられ、第2層S2に2個備えられている。より具体的には、平面視において、第1層S1には、主搬送室5の両側に1個ずつのローカル搬送ロボットLR11,LR12が配置されている。さらに具体的には、主搬送室5の一方側において、第1層S1には、液処理ユニットM11,M12の間に一つのローカル搬送ロボットLR11が配置されている。主搬送室5の他方側にも同様に、液処理ユニットM13,M14の間に一つのローカル搬送ロボットLR12が配置されている。第2層S2における2個のローカル搬送ロボットLR21,LR22も同様に配置されている。ローカル搬送ロボットLR11,LR12,LR21,LR22は、ローカル搬送室C11,C12,C21,C22内にそれぞれ配置されている。ローカル搬送室Cは、主搬送室5から分離(離隔)するように区画された搬送空間を形成している。
【0100】
第1層S1において、主搬送室5の一方側に配置されたローカル搬送ロボットLR11は、2つの液処理ユニットM11,M12によって共有される。すなわち、ローカル搬送ロボットLR11は、キャリヤ保持部2に近い側の液処理ユニットM11での処理を終えた基板Wを取り出し、垂直方向(より具体的には上方)に搬送し、その液処理ユニットM11の上の昇華ユニットD11へと搬入する。また、ローカル搬送ロボットLR11は、キャリヤ保持部2から遠い側の液処理ユニットM12での処理を終えた基板Wを取り出し、垂直方向(より具体的には上方)に搬送し、その液処理ユニットM12の上の昇華ユニットD12へと搬入する。
【0101】
ローカル搬送ロボットLR11は、キャリヤ保持部2に近い側の液処理ユニットM11での処理を終えた基板Wを、キャリヤ保持部2から遠い側の液処理ユニットM12の上の昇華ユニットD12に搬送してもよい。同様に、ローカル搬送ロボットLR11は、キャリヤ保持部2から遠い側の液処理ユニットM12での処理を終えた基板Wをキャリヤ保持部2に近い側の液処理ユニットM11の上の昇華ユニットD11に搬送してもよい。より一般化すれば、ローカル搬送ロボットLR11は、第1層S1において主搬送室5の一方側に配置された2つの液処理ユニットM11,M12と、それらの上にそれぞれ配置された2つの昇華ユニットD11,D12にアクセス可能である。そして、一つの液処理ユニットM11,M12で処理を終えた基板Wは、ローカル搬送ロボットLR11によって、2つの昇華ユニットD11,D12のいずれかに搬入されて減圧昇華処理を受ける。
【0102】
第1層S1において主搬送室5の他方側に配置されたローカル搬送ロボットLR12の動作も同様である。すなわち、ローカル搬送ロボットLR12は、2つの液処理ユニットM13,M14および2つの昇華ユニットD13,D14にアクセス可能に構成されており、それらに対して、主搬送室5の反対側のローカル搬送ロボットLR11と同様な動作を行う。
【0103】
第2層S2に配置されたローカル搬送ロボットLR21,LR22の動作も同様である。すなわち、ローカル搬送ロボットLR21は、2つの液処理ユニットM21,M22および2つの昇華ユニットD21,D22にアクセス可能に構成されており、それらに対して、ローカル搬送ロボットLR11と同様な動作を行う。また、ローカル搬送ロボットLR22は、2つの液処理ユニットM23,M24および2つの昇華ユニットD23,D24にアクセス可能に構成されており、それらに対して、ローカル搬送ロボットLR11と同様な動作を行う。
【0104】
主搬送室5の一方側に配置された2つのローカル搬送ロボットLR11,LR21は、この実施形態では、平面視において重なり合う2つのローカル搬送室C11,C21にそれぞれ配置されている。同様に、主搬送室5の他方側に配置された2つのローカル搬送ロボットLR12,LR22は、この実施形態では、平面視において重なり合う2つのローカル搬送室C12,C22にそれぞれ配置されている。
【0105】
上下に重なり合った2つのローカル搬送室C11,C21;C12,C22を、上下に連通した一つのローカル搬送室としてもよい。そして、この一つのローカル搬送室C内に一つのローカル搬送ロボットLRを配置してもよい。
この場合、主搬送室5の一方側では、ローカル搬送室Cに対してキャリヤ保持部2側には、液処理ユニットM11、昇華ユニットD11、液処理ユニットM21および昇華ユニットD21がこの順で積層された積層ユニット群G1が位置し、キャリヤ保持部2から遠い側にも、液処理ユニットM12、昇華ユニットD12、液処理ユニットM22および昇華ユニットD22がこの順で積層された積層ユニット群G2が位置する。ローカル搬送室Cに配置された一つのローカル搬送ロボットLRは、これらの一対の積層ユニット群G1,G2を構成する合計8個のユニットに対してアクセスすることができる。この場合、ローカル搬送ロボットLRは、或る液処理ユニットM11,M12,M21,M22で処理が終了した一つの基板Wをその直上に積層された昇華ユニットD11,D12,D21,D22に搬入するように動作してもよい。また、ローカル搬送ロボットLRは、或る液処理ユニットM11,M12,M21,M22で処理が終了した一つの基板Wを、アクセス可能な4つの昇華ユニットD11,D12,D21,D22のうちの任意の一つに搬入してもよい。一般的には、処理のために使われていない昇華ユニットDに基板Wを搬入することにより、生産性を高めることができる。
【0106】
主搬送室5の他方側についても、同様の構成であり、2つの積層ユニット群G3,G4によって共有される一つのローカル搬送ロボットLRを同様に動作させることができる。
図1Aおよび
図5Aの比較から理解されるとおり、この実施形態の構成により、基板処理装置1Aの占有面積(フットプリント)を小さくすることができる。
[第5の実施形態]
図6Aは、この発明の第5の実施形態に係る基板処理装置1Bの構成を説明するための図解的な平面図であり、
図6Bは、その立面図である。この実施形態の基板処理装置1Bでは、ユニットの配置が、第1層S1、第2層S2および第3層S3を含む三層構造を形成している。
【0107】
この実施形態では、平面視において、主搬送室5の一方側に3つの積層ユニット群G11,G12,G13が主搬送室5に沿って配置され、主搬送室5の他方側に3つの積層ユニット群G14,G15,G16が主搬送室5に沿って配置されている。
積層ユニット群G11は、3つの液処理ユニットM11,M21,M31を下から順に積層して構成されている。積層ユニット群G13は、3つの液処理ユニットM12,M22,M32を下から順に積層して構成されている。積層ユニット群G11,G13の間に配置された積層ユニット群G12は、6つの昇華ユニットD11,D12,D21,D22,D31,D32を下から順に積層して構成されている。積層ユニット群G11,G13の間には、さらに、ローカル搬送室C11,C21,C31が下から順に積層して配置されており、それらの中に、ローカル搬送ロボットLR11,LR21,LR31がそれぞれ配置されている。ローカル搬送室C11,C21,C31は、この実施形態では、積層ユニット群G12に対して、主搬送室5とは反対側に配置されている。
【0108】
積層ユニット群G14は、3つの液処理ユニットM13,M23,M33を下から順に積層して構成されている。積層ユニット群G16は、3つの液処理ユニットM14,M24,M34を下から順に積層して構成されている。積層ユニット群G14,G16の間に配置された積層ユニット群G15は、6つの昇華ユニットD13,D14,D23,D24,D33,D34を下から順に積層して構成されている。積層ユニット群G14,G16の間には、さらに、ローカル搬送室C12,C22,C32が下から順に積層して配置されており、それらの中に、ローカル搬送ロボットLR12,LR22,LR32がそれぞれ配置されている。ローカル搬送室C12,C22,C32は、この実施形態では、積層ユニット群G15に対して、主搬送室5とは反対側に配置されている。
【0109】
各層の構成に着目すると、第1層S1において、主搬送室5の一方側には、主搬送室5の平面視における長手方向に沿って、一対の液処理ユニットM11,M12が配置されており、この一対の液処理ユニットM11,M12の間に、一対の昇華ユニットD11,D12と、一つのローカル搬送ロボットLR11とが配置されている。一対の昇華ユニットD11,D12は、この実施形態では、上下に積層されている。昇華ユニットD11,D12は、主搬送室5に近い位置に配置されており、昇華ユニットD11,D12に対して主搬送室5とは反対側にローカル搬送ロボットLR11が配置されている。
【0110】
ローカル搬送ロボットLR11は、ローカル搬送室C11内に配置されている。ローカル搬送ロボットLR11は、一対の液処理ユニットM11,M12および一対の昇華ユニットD11,D12にアクセス可能である。ローカル搬送ロボットLR11は、一つの液処理ユニットM11,M12で処理を終えた基板Wを搬出して、一対の昇華ユニットD11,D12のいずれかにその基板Wを搬入するように動作する。
【0111】
第1層S1において、主搬送室5の他方側のユニット配置も同様である。すなわち、主搬送室5の他方側には、主搬送室5の平面視における長手方向に沿って、一対の液処理ユニットM13,M14が配置されており、この一対の液処理ユニットM13,M14の間に一対の昇華ユニットD13,D14と一つのローカル搬送ロボットLR12とが配置されている。一対の昇華ユニットD13,D14は上下に積層されている。それらの昇華ユニットD13,D14は、主搬送室5に近い位置に配置され、昇華ユニットD13,D14に対して主搬送室5とは反対側にローカル搬送室C12が区画され、そこにローカル搬送ロボットLR12が収容されている。
【0112】
ローカル搬送ロボットLR12は、一対の液処理ユニットM13,M14および一対の昇華ユニットD13,D14にアクセス可能である。ローカル搬送ロボットLR12は、一つの液処理ユニットM13,M14で処理を終えた基板Wを搬出して、一対の昇華ユニットD13,D14のいずれかにその基板Wを搬入するように動作する。
第2層S2および第3層S3のユニット配置および各層のローカル搬送ロボットLRの動作も同様である。第2層S2は、主搬送室5の一方側に配置された一対の液処理ユニットM21,M22、一対の昇華ユニットD21,D22および一つのローカル搬送ロボットLR21を含み、さらに、主搬送室5の他方側に配置された一対の液処理ユニットM23,M24、一対の昇華ユニットD23,D24および一つのローカル搬送ロボットLR22を含む。第3層S3は、主搬送室5の一方側に配置された一対の液処理ユニットM31,M32、一対の昇華ユニットD31,D32および一つのローカル搬送ロボットLR31を含み、さらに、主搬送室5の他方側に配置された一対の液処理ユニットM33,M34、一対の昇華ユニットD33,D34および一つのローカル搬送ロボットLR32を含む。
【0113】
このように、この実施形態では、液処理ユニットMと昇華ユニットDとが平面的に配置(水平配置)されており、それにより、基板処理装置1Bの全高を抑制しながら、多数の液処理ユニットMおよび昇華ユニットDを備えることができる。
主搬送室5の一方側に配置された3つのローカル搬送ロボットLR11,LR21,LR31は、この実施形態では、平面視において、重なり合う3つのローカル搬送室C11,C21,C31にそれぞれ配置されている。この3つのローカル搬送室C11,C21,C31を上下に連通した一つのローカル搬送室Cとしてもよい。また、この一つのローカル搬送室C内に一つのローカル搬送ロボットLRを配置してもよい。この場合、ローカル搬送室Cに対してキャリヤ保持部2側には、3つの液処理ユニットM11,M21,M31が積層された積層ユニット群G11が位置し、キャリヤ保持部2から遠い側には、3つの液処理ユニットM12,M22,M32が積層された積層ユニット群G13が位置し、主搬送室5側には6つの昇華ユニットD11,D12,D21,D22,D31,D32が積層された積層ユニット群G12が位置する。ローカル搬送室Cに配置された一つのローカル搬送ロボットLRは、これらの3つの積層ユニット群G11〜G13を構成する合計12個のユニットに対してアクセスすることができる。
【0114】
この場合、ローカル搬送ロボットLRは、或る液処理ユニットMで処理が終了した一つの基板Wを同一層内に位置する昇華ユニットDに搬入するように動作してもよい。また、ローカル搬送ロボットLRは、或る液処理ユニットMで処理が終了した一つの基板Wを、アクセス可能な6つの昇華ユニットDのうちの任意の一つに搬入してもよい。一般的には、処理のために使われていない昇華ユニットDに基板Wを搬入することにより、生産性を高めることができる。むろん、主搬送室5の反対側に関しても、同様の構成とすることができる。
【0115】
図1Aおよび
図6Aの比較から理解されるとおり、この実施形態の構成により、基板処理装置1Bの占有面積(フットプリント)を小さくすることができる。さらに、
図5Bおよび
図6B等の比較から理解されるとおり、この実施形態の構成により、同じ高さのスペースに、より多くのユニットを配置することができる。換言すれば、同じユニット数の基板処理装置を、より低い高さで構成することができる。
【0116】
[第6の実施形態]
図7は、この発明の第6の実施形態に係る基板処理装置1Cの構成を説明するための図解的な立面図であり、主搬送室の一方側の構成が示されている。主搬送室5(
図5A等参照)の一方側に、一対の積層ユニット群G21,G22が配置されており、それらの間にローカル搬送ロボットLR1,LR2が配置されている。この例では、一つの積層ユニット群G21は3つの液処理ユニットM1,M2,M3を三層に積層して構成されている。もう一つの積層ユニット群G22は、一つの液処理ユニットM4と、その上に順に積層された4つの昇華ユニットD1〜D4とを含む。主搬送室5の反対側にも同様の構成が設けられている。主搬送ロボットCRは、主搬送室5の一方側に配置された4つの液処理ユニットM1〜M4および4つの昇華ユニットD1〜D4にアクセス可能であり、かつ主搬送室5の反対側に同様に配置された4つの液処理ユニットおよび4つの昇華ユニットにアクセス可能である。
【0117】
この例では、主搬送室5の一方側に、2つのローカル搬送ロボットLR1,LR2が設けられており、それらは、一つのローカル搬送室C内に配置されている。たとえば、下側のローカル搬送ロボットLR1は、3つの液処理ユニットM1,M2,M4および2つの昇華ユニットD1,D2にアクセス可能であってもよい。そして、上側のローカル搬送ロボットLR2は、2つの液処理ユニットM2,M3および4つの昇華ユニットD1〜D4にアクセス可能であってもよい。これらのローカル搬送ロボットLR1,LR2は、液処理ユニットM1〜M4で処理された後の基板Wをいずれかの昇華ユニットD1〜D4に搬入するように動作する。主搬送室5の反対側にも同様の構成が設けられており、2つのローカル搬送ロボットの動作も同様である。
【0118】
[第7の実施形態]
図8は、この発明の第7の実施形態に係る基板処理装置1Dの構成を説明するための図解的な平面図である。この実施形態では、3つの積層ユニット群G31,G32,G33が設けられている。第1の積層ユニット群G31は、液処理ユニットM11,M21,M31を複数層(この実施形態では三層)に積層して構成されている。第2の積層ユニット群G32は、キャリヤ保持部2におけるキャリヤ3の整列方向に沿って、第1の積層ユニット群G31に対向している。この第2の積層ユニット群G32は、液処理ユニットM12,M22,M32を複数層に積層して構成されている。第3の積層ユニット群G33は、第1および第2の積層ユニット群G31,G32の間に配置されている。第3の積層ユニット群G33は、昇華ユニットD1〜D6を複数層(この実施形態では6層)に積層して構成されており、
図6Aおよび
図6Bに示した積層ユニット群G12,G15と類似の構成を有している。昇華ユニットD1〜D6に対して主搬送ロボットCRとは反対側にローカル搬送室Cが配置されている。ローカル搬送室Cには、ローカル搬送ロボットLRが配置されている。ローカル搬送ロボットLRは、液処理ユニットM11,M12;
M21,M22;M31,M32に対応した各層に一つずつ設けられていてもよい。また、複数層(たとえば全ての層)に配置された液処理ユニットMに対して共通に用いられる一つのローカル搬送ロボットLRが設けられていてもよい。
【0119】
主搬送ロボットCRは、主搬送室5Aに配置されている。主搬送室5
Aは、第1〜第3の積層ユニット群G31〜G33とインデクサロボットIRとの間に区画されている。インデクサロボットIRと主搬送ロボットCRとの間の基板Wの受け渡しは、一時的に基板Wを保持する基板受渡しユニット7を介して行われてもよい。主搬送ロボットCRは、インデクサロボットIRから基板受渡しユニット7を介して受け取った未処理の基板Wを、第1または第2の積層ユニット群G31,G32に含まれる一つの液処理ユニットMに搬入する。その液処理ユニットMで処理された後の基板Wは、ローカル搬送ロボットLRによって搬出され、当該ローカル搬送ロボットLRがアクセス可能な昇華ユニットD1〜D6のいずれかに搬入される。その昇華ユニットDで処理された後の基板Wは、主搬送ロボットCRによって取り出され、基板受渡しユニット7を介して、インデクサロボットIRへと渡される。
【0120】
[第8の実施形態]
図9は、この発明の第8の実施形態に係る基板処理装置の構成を説明するための図であり、昇華ユニットDの構成例を示す。この昇華ユニットDは、真空チャンバを構成する昇華室111を有している。昇華室111には、排気管112が接続されている。排気管112は、真空ポンプ等の排気ユニット113に接続されている。排気管112には、排気バルブ110が介装されている。
【0121】
昇華室111には、基板Wを搬入するための基板搬入開口114が側壁115に形成されている。さらに、昇華室111には、基板Wを搬出するための基板搬出開口116が側壁117に形成されている。基板搬出開口116を開閉するためのシャッタ118が設けられており、シャッタ118はシャッタ駆動ユニット119によって駆動される。シャッタ118の昇華室111に対向する表面には、シール部材としてのOリング120が設けられている。シャッタ118は、昇華室111の側壁117に押し付けられ、それによって、Oリング120を介して基板搬出開口116を気密に密閉する。主搬送ロボットCRが昇華ユニットDによる処理済みの基板Wを搬出するときには、シャッタ駆動ユニット119はシャッタ118を駆動して基板搬出開口116を開放する。その開放された基板搬出開口116に主搬送ロボットCRのハンドHCが進入する。
【0122】
一方、基板搬入開口114は、ローカル搬送ロボットLRのハンドLHに備えられた蓋部材125によって開閉される。蓋部材125の昇華室111に対向する表面には、シール部材としてのOリング126が設けられている。ローカル搬送ロボットLRは、液処理ユニットMで処理された後の基板Wを昇華室111に搬入し、さらに、蓋部材125をOリング126を介して昇華室111の側壁115に押し付けるように動作する。それにより、基板搬入開口114が気密に閉塞される。
【0123】
昇華室111の天井面には、昇華室111内の空間に冷温不活性ガスを導入するための冷温不活性ガスノズル71Aが設けられている。この冷温不活性ガスノズル71Aに関して、
図3に示した昇華ユニットの場合と同様の構成が備えられており、冷温不活性ガスノズル71Aに冷温不活性ガスが供給されている。
図9において、
図3の各部に対応する部分に同一参照符号を付して説明を省略する。
【0124】
昇華ユニットDの動作の概要は次のとおりである。
基板搬出開口116がシャッタ118によって閉塞された状態で、ローカル搬送ロボットLRが基板Wを昇華室111に搬入する。この基板Wは、その上面に有機溶剤の固相塗布膜10が形成された状態の基板である。ローカル搬送ロボットLRは、ハンドLHを昇華室111内に進入させ、かつ、蓋部材125を昇華室111の側壁115の外面に押し付けて基板搬入開口114を閉塞する。こうして、昇華室111内は気密な密閉空間となる。この状態で、排気バルブ110が開かれ、排気ユニット113が作動させられることにより、昇華室111内の空間が大気圧よりも低圧に減圧される。それによって、基板W上の固相塗布膜10が速やかに昇華する。
【0125】
昇華室111内の空間の減圧が開始されるまでの期間には、冷温不活性ガスバルブ73が開かれ、冷温不活性ガスノズル71から昇華室111内に冷温(固相塗布膜10の融点よりも低い温度)の不活性ガスが供給される。それにより、昇華室111に導入された基板W表面の固相塗布膜10の液化が抑制される。昇華室111内の減圧が開始されると、減圧を阻害しないように、冷温不活性ガスバルブ73が閉じられる。
【0126】
こうして基板W上の塗布膜10の昇華が終了すると、排気ユニット113が動作停止され、必要に応じて冷温不活性ガスバルブ73が開かれる。それによって、昇華室111内の空間が大気圧に戻る。このとき、冷温不活性ガスバルブ73は、常温の不活性ガスを昇華室111に導入してもよい。次いで、シャッタ駆動ユニット119がシャッタ118を基板搬出開口116から退避させ、それによって、基板搬出開口116が開かれる。その後、主搬送ロボットCRがハンドHCを昇華室111内に進入させ、ローカル搬送ロボットLRのハンドLHから、昇華乾燥処理済みの基板Wを受け取り、基板搬出開口116からその基板Wを搬出する。
【0127】
このように、ローカル搬送ロボットLRのハンドLHに蓋部材125を設けることによって、基板搬入開口114を開閉するためのシャッタ駆動機構を省くことができる。また、昇華室111内での基板Wの保持をローカル搬送ロボットLRのハンドLHで行えるので、昇華室111内に基板保持機構を設ける必要がない。減圧による塗布膜10の昇華は短時間(たとえば30秒〜60秒)で行えるので、ローカル搬送ロボットLRのハンドLHによる昇華処理中の基板Wの保持が原因で生産性に大きな影響が生じるおそれはない。
【0128】
また、昇華室111にハンドLHで基板Wを搬送する動作により、蓋部材125によって基板搬入開口114を密閉でき、そのまま、昇華室111内で基板Wを保持して減圧昇華処理を行える。したがって、基板搬入開口114の開閉専用の動作および基板Wの受け渡し動作を省略できるから、工程全体の所要時間を短縮でき、生産性を向上できる。具体的には、基板搬入開口のためのシャッタ開閉時間、基板搬入時にハンドLHが昇華室111から退出する時間、基板搬出時にハンドLHが昇華室111に進入する時間、基板をリフトピンに置く動作のための時間、基板をリフトピンから受け取る動作のための時間、リフトピンを上昇および下降させる時間などを省くことができる。
【0129】
この実施形態の昇華ユニットDを用いる場合に、前述の第2の実施形態と同様の処理を行うこともできる。すなわち、ローカル搬送ロボットLRによって基板Wがローカル搬送室Cを通って搬送されている間に、ハンド冷却ユニット97によって基板Wを冷却し、それによって、基板W上の液体塗布膜10を固体化してもよい。
また、この実施形態の昇華ユニットDを用いる場合に、前述の第3の実施形態と同様の処理を行うこともできる。すなわち、ローカル搬送ロボットLRは、液体塗布膜10が形成された状態の基板Wを液処理ユニットMから昇華ユニットDに搬送し、昇華ユニットD内でハンド冷却ユニット97によって基板Wを冷却して、液体塗布膜10を固体化してもよい。
【0130】
さらに、いずれの処理を行う場合にも、減圧昇華処理と並行して、基板Wを加熱してもよい。具体的には、ローカル搬送ロボットLRのハンドLHを加熱することによって、基板Wを加熱してもよい。また、昇華室111内に輻射熱または電磁波照射によって基板Wを加熱する加熱ユニット127(
図9参照)を備え、この加熱ユニット127によって、ハンドLHに保持されている基板Wを加熱してもよい。
【0131】
[第9の実施形態]
図10は、この発明の第9の実施形態に係る基板処理装置の構成を説明するための図であり、前述の昇華ユニットに代えて用いることができる、昇華ユニットの構成例を図解的に示す断面図である。
この実施形態では、昇華ユニットDは、
図3に示した構成と類似の構成を有しており、さらに、基板冷却ユニットとしての冷却プレート80を備えている。
図3に示した構成に代えて、
図9に示した構成と類似の構成を用いることもできる。
図10には、
図3に示した構成と類似の構成を備えた例を示す。
【0132】
冷却プレート80は、ベース部81上に配置されており、その上面に基板Wを保持して下面から冷却する。冷却プレート80を貫通して複数(3本以上)のリフトピン84が配置されている。リフトピン84は、リフトピン昇降ユニット85
によって上下動され、それによって、冷却プレート80上で基板Wを上下動させる。
基板処理装置は、さらに、昇華室51における昇華処理が終了した基板Wを冷却プレート80まで搬送する第2のローカル搬送ロボット150を備えている。第2のローカル搬送ロボット150は、基板Wを保持するハンド151と、ハンド151を移動させるハンド駆動ユニット152とを含む。ハンド駆動ユニット152は、基板ホルダ52の上方(第1の基板保持位置)と冷却プレート80の上方(第2の基板保持位置)との間でハンド151を往復移動させる。ハンド151とリフトピン54,84との基板Wの受け渡しに際しては、リフトピン54,84が昇降される。むろん、ハンド駆動ユニット152が基板Wを昇降させてリフトピン54,84と基板Wを受け渡す構成とすることもできる。
【0133】
昇華室51では、基板ホルダ52によって基板Wを加熱しながら、昇華室51内の昇華処理空間50を減圧して、基板Wの表面の固体塗布膜10が昇華させられる。
この昇華処理の後、昇華処理空間50が大気圧に戻され、可動蓋部512が開放される。そうしてベース部511と可動蓋部512との間に基板Wを搬出するための開口が形成される。そして、リフトピン54によって、昇華処理済みの基板Wが基板ホルダ52の上方へと持ち上げられる。すると、第2のローカル搬送ロボット150は、ベース部511と可動蓋部512との間に形成された開口を介してそのハンド151を進入させる。その後、リフトピン54が下降することにより、昇華処理済みの基板Wがハンド151に渡される。そして、第2のローカル搬送ロボット150は、ハンド151を駆動して、その基板Wを冷却プレート80の上方まで移動させる。その状態で、リフトピン昇降ユニット85がリフトピン84を上昇させることにより、ハンド151から基板Wを受け取る。ハンド151が冷却プレート80の上方から退避した後、リフトピン84が下降し、それによって、冷却プレート80上に基板Wが載置される。
【0134】
冷却プレート80は基板Wを常温まで冷却する。その後、リフトピン84が基板Wを持ち上げ、主搬送ロボットCRのハンドHCがその基板Wを受け取って昇華ユニットD外へと搬出する。
このように、昇華処理後の基板Wを冷却プレート80で冷却する構成であるので、昇華室51での処理時間を短縮できるから、生産性を高めることができる。昇華室51で加熱された基板Wの搬送を主搬送ロボットCRとは別の第2のローカル搬送ロボット150で行うので、主搬送ロボットCRに過剰な熱が蓄えられることを回避でき、主搬送ロボットCRが搬送する基板Wに対する熱の影響を抑制できる。
【0135】
以上、この発明の実施形態について説明してきたが、この発明は、さらに他の形態で実施することができる。
液体の状態で基板表面に塗布でき、基板上で液相から固相へと相転移させ、さらに固相から気相へと相転移させて昇華させることができる低表面張力液体は、前述のような有機溶剤(第2有機溶剤)に限られない。具体的には、液相において水よりも表面張力が小さい物質であって、
図11に示すような状態図において、三重点Tの特定が可能な物質は、この発明における低表面張力液体として使用可能である。
図11において、昇華曲線TA、蒸発曲線TBおよび融解曲線TCによって物質の固相、液相および気相の各領域が分けられ、それらの曲線TA,TB,TCの交点が三重点Tである。液相から固相への相転移PT1(凝固)は冷却によって生じさせることができる。固相から気相への相転移PT2(昇華)は、減圧および加熱によって生じさせることができる。この場合、昇華曲線TAから気相領域の内方に離れた状態であるほど昇華速度が速い。すなわち、圧力が低いほど、また温度が高いほど昇華速度が速くなる。
【0136】
低表面張力液体を液相から固相に相転移させるための冷却手段は、前述のものに限られない。たとえば、液体窒素を基板Wの下面または基板W上面の塗布膜上に供給する液体窒素供給手段が備えられてもよい。たとえば、
図2の構成において、温度調節ガス配管46を通して、基板Wに液体窒素を供給してもよい。
また、
図2に二点鎖線で示すように、液処理ユニットMは、スピンチャック12に保持された基板Wを冷却するための基板冷却ユニットとして、たとえば、スピンチャック12に保持された基板Wの下面に対向するように設けられた冷温プレート30を含んでいてもよい。冷温プレート30を基板Wの下面に対して接近/離隔させるプレート駆動ユニットがさらに備えられていてもよい。冷温プレート30は、冷媒が流通する冷媒路が内部に形成されたプレートであってもよい。また、冷温プレート30は、電子冷熱素子を備えていてもよい。冷温プレート30は、基板Wを第2有機溶剤の融点未満の温度に冷却し、基板W表面の第2有機溶剤の液膜を固体化する。第2有機溶剤の吐出時には基板Wを冷却しない方がよいので、プレート駆動ユニットを備えて、第2有機溶剤の吐出時には、冷温プレート30を基板Wの下面から離隔した退避位置に配置することが好ましい。そして、第2有機溶剤液膜が基板Wの表面に薄く広がった後に、冷温プレート30を基板Wの下面に接近させて、基板Wを冷却し、塗布膜を液相から固相へと変化させることが好ましい。
【0137】
このような冷温プレート30を設ける代わりに、液処理ユニットMの処理室11の全体を冷却し、処理室11内の雰囲気を有機溶剤の融点未満に冷却してもよい。
これらの構成の場合には、基板Wの下面に液体を接触させることなく基板Wを冷却できる。したがって、基板Wの下面の液体を振り切るためのスピン乾燥処理を省くことができる。それにより、スピン乾燥処理に伴う、塗布膜10の蒸発または昇華を回避できる。
【0138】
昇華ユニットDは、昇華室51,111内で基板Wの表面の塗布膜10に温風(たとえば加熱した不活性ガス)を供給する温風供給ユニットを備えていてもよい。それにより、塗布膜10の近傍の雰囲気を置換して、昇華を促進できる。
前述の
図1、
図5、
図6、
図7の構成において、インデクサロボットIRと主搬送ロボットCRとの間に、基板Wを一時的に保持する基板受渡しユニットを配置し、
図8の構成の場合と同様にして、それらの間の基板受け渡しを行ってもよい。
【0139】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。