【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人科学技術振興機構研究成果展開事業 センター・オブ・イノベーションプログラム『多様化・個別化社会イノベーションデザイン拠点』委託研究開発、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本開示に至った経緯)
先進国における少子高齢化が進む近年、高齢者の見守りや生活支援の必要性が増している。特に、高齢者においては、加齢に伴う身体能力の低下から宅内生活のQOL(Quality of Life)を維持することが難しくなる傾向にある。
【0012】
このような背景の下、高齢者などのユーザの歩行を支援しつつ、ユーザの身体能力を向上させることができる歩行支援ロボットが求められている。
【0013】
背景技術で述べたように、ユーザの歩行を支援する装置として、ハンドル部にかかる力の変動に応じて前後方向の移動を制御することによって、ユーザの歩行を支援する歩行支援機が開発されている(例えば、特許文献1等参照)。
【0014】
しかしながら、特許文献1の歩行支援機では、ユーザの身体能力を向上させるという点については開示されていない。
【0015】
また、ユーザの歩行機能を向上させる装置としては、例えば、予め入力された歩行パターンに従って、アーム等でユーザの足を動かす歩行訓練装置が開発されている(例えば、特開2006−6384号公報参照)。この歩行訓練装置では、アームを用いて、ユーザの脚を遊脚から立脚へ移行するに従って、ユーザの体幹を立脚側へ移動させることによってユーザの歩行訓練を行っている。
【0016】
しかしながら、この歩行訓練装置は、装置を装着する手間がかかると共に、所定の歩行パターンに従った周期的なリズムでの制御しか対応していない。このため、ユーザの実際の歩行に応じて負荷を制御することができず、ユーザの身体能力を効率良く向上させることができない。
【0017】
本発明者らは、ハンドル荷重の情報に基づいて歩行中のユーザの足位置を推定し、推定した足位置に応じてユーザの足部に与える負荷を設定することによって、ユーザの身体能力を効率良く向上させることができることを見出した。
【0018】
そこで、本発明者らは、以下の発明に至った。
【0019】
本開示の一態様に係る歩行支援ロボットは、
ユーザの歩行を支援しつつ、ハンドル荷重に応じて移動する歩行支援ロボットであって、
本体部と、
前記本体部に設けられ、前記ユーザが把持可能なハンドル部と、
前記ハンドル部にかかるハンドル荷重を検知する検知部と、
回転体を有し、前記検知部で検知した荷重に応じて前記回転体の回転を制御して当該歩行支援ロボットを移動させる移動装置と、
前記検知部で検知された前記ハンドル荷重の変化に基づいて前記ユーザの足位置を推定する足位置推定部と、
前記足位置の情報に基づいて、前記ユーザに与える負荷を設定する負荷設定部と、
を備える。
【0020】
このような構成により、ユーザの歩行を支援しながら身体能力を向上させることができる。また、足位置の情報に基づいて、ユーザの実際の歩行に応じて負荷を設定し、ユーザの身体能力を効率良く向上させることができる。
【0021】
前記歩行支援ロボットにおいて、前記負荷設定部は、前記足位置の情報に基づいて、前記ハンドル荷重を補正してもよい。
【0022】
このような構成により、ハンドル荷重を補正し、歩行支援ロボットの移動を制御することによってユーザに与える負荷を設定することができる。これにより、ユーザの身体能力を効率良く向上させることができる。
【0023】
前記歩行支援ロボットにおいて、更に、
前記ユーザの身体情報を取得する身体情報取得部を備え、
前記負荷設定部は、前記身体情報と前記足位置の情報とに基づいて、前記ユーザに与える負荷を設定してもよい。
【0024】
このような構成により、身体情報と足位置の情報とに基づいて、ユーザに与える負荷を設定することができ、ユーザの身体能力を効率良く向上させることができる。
【0025】
前記歩行支援ロボットにおいて、更に、
前記身体情報、足位置の情報、及び前記負荷の情報のうち少なくとも一方を前記ユーザに通知するユーザ通知部を備えてもよい。
【0026】
このような構成により、ユーザ自身が日々の身体情報、足位置の情報、又は負荷の情報を把握することができ、身体能力の維持及び向上へのモチベーションアップ、又は歩行時の注意力喚起に繋がる。
【0027】
前記歩行支援ロボットにおいて、前記身体情報取得部は、更に、
前記検知部で検知された前記ハンドル荷重に基づいて、前記身体情報を推定する身体情報推定部を備えてもよい。
【0028】
このような構成により、ハンドル荷重から身体情報を推定することができるため、身体情報をより簡単に取得することができる。
【0029】
前記歩行支援ロボットにおいて、更に、
前記身体情報と前記足位置の情報とに基づいて、負荷を与える対象となる筋肉を判定する負荷対象判定部を備え、
前記負荷設定部は、判定された前記筋肉に応じた負荷を設定してもよい。
【0030】
このような構成により、負荷を与える対象となる筋肉を判定し、身体能力を効率良く向上させることができる。
【0031】
前記歩行支援ロボットにおいて、更に、
前記身体情報と前記足位置の情報とに基づいて、当該歩行支援ロボットの旋回半径を変更する旋回負荷設定部を備えてもよい。
【0032】
このような構成により、歩行支援ロボットの旋回時において、旋回半径を変更することによって、身体能力を効率良く向上させることができる。
【0033】
前記歩行支援ロボットにおいて、更に、
前記ユーザを誘導する誘導情報を生成する誘導情報生成部を備え、
前記移動装置は、前記誘導情報に基づいて当該歩行支援ロボットを移動させ、
前記負荷設定部は、前記身体情報と、前記足位置の情報と、前記誘導情報とに基づいて、前記負荷を設定してもよい。
【0034】
このような構成により、歩行支援ロボットが自律的に移動してユーザを誘導しながら、身体情報と足位置の情報と誘導情報とに基づいて、ユーザに与える負荷を設定することができる。
【0035】
前記歩行支援ロボットにおいて、前記負荷設定部は、前記足位置に応じて、当該歩行支援ロボットが前記ユーザを誘導する誘導距離を変更してもよい。
【0036】
このような構成により、足位置に応じて誘導距離を変更することで、身体能力を向上させることができる。
【0037】
前記歩行支援ロボットにおいて、前記身体情報は、歩幅を含み、
前記負荷設定部は、左右の足の歩幅の差異に基づいて負荷を設定してもよい。
【0038】
このような構成により、左右の足の歩幅の差異に基づいて、左右の足のうち筋力が劣っている方の足を効率良く鍛えることができる。
【0039】
前記歩行支援ロボットにおいて、前記負荷設定部は、前記足位置毎に負荷を設定してもよい。
【0040】
このような構成により、足位置毎に負荷を設定することによって、身体情報を効率良く向上させることができる。
【0041】
前記歩行支援ロボットにおいて、前記負荷設定部は、前記ハンドル荷重の変化に基づいて、前記ユーザに与える負荷を設定してもよい。
【0042】
本開示の一態様に係る歩行支援方法は、
歩行支援ロボットを用いてユーザの歩行を支援する歩行支援方法であって、
前記歩行支援ロボットのハンドル部にかかるハンドル荷重を検知部によって検知するステップ、
前記検知部で検知したハンドル荷重に応じて、当該歩行支援ロボットを移動装置によって移動するステップ、
前記ハンドル荷重の変化に基づいて前記ユーザの足位置を推定するステップ、
前記足位置の情報に基づいて、前記ユーザに与える負荷を設定するステップ、
を含む。
【0043】
このような構成により、ユーザの歩行を支援しながら身体能力を向上させることができる。また、足位置の情報に基づいて、ユーザの実際の歩行に応じて負荷を設定し、ユーザの身体能力を効率良く向上させることができる。
【0044】
前記歩行支援方法において、前記負荷を設定するステップは、前記足位置の情報に基づいて、前記ハンドル荷重を補正してもよい。
【0045】
このような構成により、ハンドル荷重を補正し、歩行支援ロボットの移動を制御することによってユーザに与える負荷を設定することができる。
【0046】
前記歩行支援方法において、更に、
前記ユーザの身体情報を取得するステップを含んでもよい。
【0047】
このような構成により、身体情報と足位置の情報とに基づいて、ユーザに与える負荷を設定することができ、ユーザの身体能力を効率良く向上させることができる。
【0048】
前記歩行支援方法において、更に、
前記身体情報、前記足位置の情報、及び前記負荷の情報のうち少なくとも一方を前記ユーザに通知するステップを含んでもよい。
【0049】
このような構成により、ユーザ自身が日々の身体情報、足位置の情報、又は負荷の情報を把握することができ、身体能力の維持及び向上へのモチベーションアップ、又は歩行時の注意力喚起に繋がる。
【0050】
前記歩行支援方法において、前記ユーザの身体情報を取得するステップは、更に、
前記ハンドル荷重に基づいて、前記身体情報を推定することを含んでもよい。
【0051】
このような構成により、ハンドル荷重から身体情報を推定することができるため、身体情報をより簡単に取得することができる。
【0052】
前記歩行支援方法において、更に、
前記身体情報と前記足位置の情報とに基づいて、負荷を与える対象となる筋肉を判定するステップを含み、
前記負荷を設定するステップは、判定された前記筋肉に応じた負荷を設定してもよい。
【0053】
このような構成により、負荷を与える対象となる筋肉を判定し、身体能力を効率良く向上させることができる。
【0054】
前記歩行支援方法において、更に、
前記身体情報と前記足位置の情報とに基づいて、当該歩行支援ロボットの旋回半径を変更するステップを含んでもよい。
【0055】
このような構成により、旋回半径を変更することによって、身体能力を効率良く向上させることができる。
【0056】
前記歩行支援方法において、更に、
前記ユーザを誘導する誘導情報を生成するステップ、
前記誘導情報に基づいて当該歩行支援ロボットを移動させるステップ、
を含み、
前記負荷を設定するステップは、前記身体情報と、前記足位置の情報と、前記誘導情報とに基づいて、前記負荷を設定することを含んでもよい。
【0057】
このような構成により、歩行支援ロボットが自律的に移動してユーザを誘導しながら、身体情報と足位置の情報と誘導情報とに基づいて、ユーザに与える負荷を設定することができる。
【0058】
以下、本開示の実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。また、各図においては、説明を容易なものとするため、各要素を誇張して示している。
【0059】
(実施の形態1)
[全体構成]
図1は、実施の形態1に係る歩行支援ロボット1(以下、「ロボット1」と称する)の外観図を示す。
図2は、ロボット1による歩行支援を受けてユーザが歩行している様子を示す。
【0060】
図1及び
図2に示すように、ロボット1は、本体部11と、ハンドル部12と、検知部13と、移動装置14と、身体情報取得部15と、足位置推定部16と、負荷設定部17と、を備える。
【0061】
本体部11は、例えば、他の構成部材を支持するとともにユーザが歩行する際の荷重を支えることができるような剛性を有するフレームにより構成される。
【0062】
ハンドル部12は、本体部11の上部に設けられており、歩行中のユーザの両手により把持しやすい形状及び高さ位置に設けられている。
【0063】
検知部13は、ハンドル部12をユーザが把持することにより、ユーザがハンドル部12にかけるハンドル荷重を検知する。具体的には、ユーザがハンドル部12を把持して歩行するときに、ユーザはハンドル部12にハンドル荷重をかける。検知部13は、ユーザがハンドル部12にかけるハンドル荷重の向き及び大きさを検知する。
【0064】
図3は、検知部13で検知するハンドル荷重の検知方向を示す。
図3に示すように、検知部13は、互いに直交する三軸方向にかかる力、及び三軸の軸回りのモーメントをそれぞれ検出可能な六軸力センサである。互いに直交する三軸とは、ロボット1の左右方向に延在するx軸、ロボット1の前後方向に延在するy軸、及びロボット1の高さ方向に延在するz軸である。三軸方向にかかる力とは、x軸方向にかかる力Fx、y軸方向にかかる力Fy、及びz軸方向にかかる力Fzである。実施の形態1では、Fxのうち右方向にかかる力をFx
+とし、左方向にかかる力をFx
−としている。Fyのうち前方向にかかる力をFy
+とし、後方向にかかる力をFy
−としている。Fz方向のうち歩行面に対して鉛直下方向にかかる力をFz
−とし、歩行面に対して鉛直上方向にかかる力をFz
+としている。三軸の軸回りのモーメントとは、x軸の軸回りのモーメントMx、y軸の軸回りのモーメントMy、及びz軸の軸回りのモーメントMzである。
【0065】
移動装置14は、本体部11を移動させる。移動装置14は、検知部13で検知されたハンドル荷重(力及びモーメント)の大きさ及び向きに基づいて、本体部11を移動させる。実施の形態1では、移動装置14は、以下のような制御を行っている。なお、本明細書においては、Fx、Fy、Fz、Mx、My、Mzを荷重と称する場合がある。
【0066】
<前進動作>
移動装置14は、検知部13でFy
+の力が検知された場合、本体部11を前方向に移動させる。即ち、検知部13でFy
+の力が検知された場合、ロボット1は前進動作を行う。ロボット1が前進動作を行っている間、検知部13で検知されるFy
+の力が大きくなると、移動装置14は、ロボット1の前方向への移動の速度を上げる。一方、ロボット1が前進動作を行っている間、検知部13で検知されるFy
+の力が小さくなると、移動装置14は、ロボット1の前方向への移動速度を下げる。
【0067】
<後退動作>
移動装置14は、検知部13でFy
−の力が検知された場合、本体部11を後方向に移動させる。即ち、検知部13でFy
−の力が検知された場合、ロボット1は後退動作を行う。ロボット1が後退動作を行っている間、検知部13で検知されるFy
−の力が大きくなると、移動装置14は、ロボット1の後方向への移動の速度を上げる。一方、ロボット1が後退動作を行っている間、検知部13で検知されるFy
−の力が小さくなると、移動装置14は、ロボット1の後方向への移動速度を下げる。
【0068】
<右旋回動作>
移動装置14は、検知部13でFy
+の力とMz
+のモーメントとが検知された場合、本体部11を右方向に旋回移動させる。即ち、検知部13でFy
+の力とMz
+のモーメントが検知された場合、ロボット1は右旋回動作を行う。ロボット1が右旋回動作を行っている間、検知部13で検知されるMz
+のモーメントが大きくなると、ロボット1の旋回半径が小さくなる。また、ロボット1が右旋回動作を行っている間、検知部13で検知されるFy
+の力が大きくなると、旋回速度が大きくなる。
【0069】
<左旋回動作>
移動装置14は、検知部13でFy
+の力とMz
−のモーメントとが検知された場合、本体部11を左方向に旋回移動させる。即ち、検知部13でFy
+の力とMz
−のモーメントが検知された場合、ロボット1は左旋回動作を行う。ロボット1が左旋回動作を行っている間、検知部13で検知されるMz
−のモーメントが大きくなると、ロボット1の旋回半径が小さくなる。また、ロボット1が左旋回動作を行っている間、検知部13で検知されるFy
+の力が大きくなると、旋回速度が大きくなる。
【0070】
なお、移動装置14の制御は、上述した例に限定されない。移動装置14は、例えば、Fy及びFzの力に基づいて、ロボット1の前進動作及び後退動作を制御してもよい。また、移動装置14は、例えば、Mx又はMyのモーメントに基づいて、ロボット1の旋回動作を制御してもよい。
【0071】
移動速度を算出するために用いるハンドル荷重は、前方向(Fy
+)の荷重、又は下方向(Fz
−)の荷重であってもよいし、前方向(Fy
+)の荷重と下方向(Fz
−)の荷重とを組み合わせた荷重であってもよい。
【0072】
移動装置14は、本体部11の下部に設けられた回転体18と、回転体18を駆動制御する駆動部19と、を備える。
【0073】
回転体18は、本体部11を自立させた状態で支持し、駆動部19により回転駆動される車輪である。実施の形態1では、駆動部19により2つの回転体18が回転し、ロボット1を移動させる。具体的には、回転体18は、ロボット1を自立させた姿勢を保った状態で、本体部11を
図2に示す矢印の方向(前方向または後方向)に移動させる。なお、実施の形態1において、移動装置14が回転体18として2つの車輪を用いた移動機構を備える例を説明したが、これに限定されない。例えば、回転体18は、走行ベルト、ローラなどであってもよい。
【0074】
駆動部19は、検知部13で検知したハンドル荷重に基づいて、回転体18を駆動する。
【0075】
身体情報取得部15は、ユーザの身体情報を取得する。実施の形態1では、身体情報取得部15は、例えば、ユーザの身体情報が格納された身体情報データベースを含む。身体情報取得部15は、身体情報データベースからユーザ毎の身体情報を取得する。
【0076】
本明細書では、身体情報とは、歩行に関する身体の情報であり、例えば、歩行速度、歩行率、身体の傾き、身体の揺れ、歩幅、筋力を含む。なお、身体情報は、これらに限定されない。例えば、身体情報は、ハンドル荷重において、移動方向の平均荷重、重心の偏り方向の平均荷重、移動方向の揺らぎ周波数、左右方向の揺らぎ周波数などを含んでもよい。
【0077】
本明細書では、歩行率とは、単位時間当たりの歩数を意味する。また、筋力は、ユーザの歩行動作毎に使う足部の筋肉(例えば、前脛骨筋、腓骨筋など)毎に6段階の評価(レベル0〜5)で表される。なお、レベルは、数字が大きくなる程、筋力が強いことを示す。なお、筋力は、足部の筋力に限定されず、例えば、股関節、ひざ関節に関わる筋力を含んでもよい。
【0078】
足位置推定部16は、ユーザの足位置を推定する。実施の形態1では、検知部13で検知されたハンドル荷重の変化に基づいて、ユーザの足位置を推定する。足位置の推定については、後述する。
【0079】
ユーザの足位置とは、歩行中のユーザの足位置を意味する。足位置は、例えば、初期接地、荷重応答期、立脚中期、立脚終期、前遊脚期、遊脚初期、遊脚中期、遊脚後期などを含む。なお、足位置は、これらに限定されず、例えば、足趾離地、踵接地、踵離地、加速期、減速期などを含んでもよい。
【0080】
本明細書において、初期接地とは、同側足部が床に触れて体重移動の開始直後までを意味する。なお、「同側」とは、左右の足のうち、足の動きを注目している側を意味する。荷重応答期とは、足が床に設置した後、反対側の足が離地するまでを意味する。なお、「反対側」とは、左右の足のうち、足の動きを注目していない側を意味する。立脚中期とは、反対側の下肢の遊脚期開始から同側踵離地までを意味する。立脚終期とは、同側踵離地から反対側下肢の初期接地までを意味する。初期接地、荷重応答期、立脚中期、立脚終期は、歩行中のユーザの足が地面に接してから離れるまでの期間を含んでいる。
【0081】
本明細書において、前遊脚期とは、反対側下肢の初期接地から同側足趾離地までを意味する。遊脚初期とは、同側足趾離地から同側足部が反対側足部と並ぶまでを意味する。遊脚中期とは、同側足部が反対測足部と並ぶときから同側脛骨が垂直になるまでを意味する。遊脚後期とは、同側脛骨が垂直のときから同側初期接地までを意味する。
【0082】
本明細書において、足趾離地とは、足のつま先が地面から離れる瞬間を意味する。踵接地とは、踵が地面に接地する瞬間を意味する。踵離地とは、踵が地面から離れる瞬間を意味する。加速期とは、足のつま先が地面から離れて、体幹の後方にある時期を意味する。減速期とは、足が体幹の前方へ振り出されている時期を意味する。
【0083】
実施の形態1では、ユーザは、歩行時において、初期接地、荷重応答期、立脚中期、立脚終期、前遊脚期、遊脚初期、遊脚中期、遊脚後期の足位置を周期的に繰り返している。本明細書では、初期接地から遊脚後期までを歩行周期と称している。
【0084】
負荷設定部17は、ユーザに与える負荷を設定する。実施の形態1では、負荷設定部17は、身体情報と足位置の情報とに基づいて負荷を設定する。例えば、負荷設定部17は、右足の筋力が左足の筋力と比べて低い場合、右足の筋力を鍛えるために、右足が初期接地から立脚終期にある間、ロボット1の移動装置14の駆動力を低下させてもよい。また、負荷設定部17は、左足の筋力が右足の筋力と比べて高い場合、左足が初期接地から立脚終期にある間、ロボット1の移動装置14の駆動力を増大させてもよい。具体的には、負荷設定部17は、検知部13で検知されたハンドル荷重を補正することによって、移動装置14の駆動力を制御し、ユーザに与える負荷を制御している。移動装置14は、検知部13で検知されたハンドル荷重に応じた移動速度で移動する。このため、負荷設定部17は、ハンドル荷重を補正することによって、移動装置14の移動速度を変更することができる。
【0085】
[歩行支援ロボットの制御構成]
このような構成を有する歩行支援ロボット1において、ユーザの歩行支援をするための制御構成について説明する。
図4は、ロボット1における主要な制御構成を示す制御ブロック図である。また、
図4の制御ブロック図では、それぞれの制御構成と取り扱われる情報との関係についても示している。
図5は、ロボット1の歩行支援の制御構成の一例を示す制御ブロック図である。
【0086】
駆動部19について説明する。
図4及び
図5に示すように、駆動部19は、ユーザ移動意図推定部20と、駆動力算出部21と、アクチュエータ制御部22と、アクチュエータ23と、を備える。
【0087】
ユーザ移動意図推定部20は、検知部13で検知されたハンドル荷重の情報に基づいてユーザの移動意図を推定する。ユーザの移動意図とは、ユーザの意図によって移動するロボット1の移動方向及び移動速度を含む。実施の形態1において、ユーザ移動意図推定部20は、検知部13で検知された各移動方向におけるハンドル荷重の値から、ユーザの移動意図を推定する。例えば、検知部13で検知されるFy
+の力が所定の第1閾値以上の値であり、My
+の力が所定の第2閾値未満の値である場合、ユーザ移動意図推定部20は、ユーザの移動意図が直進動作であると推定してもよい。また、ユーザ移動意図推定部20は、Fz方向におけるハンドル荷重の値に基づいて、移動速度を推定してもよい。一方、検知部13で検知されるFy
+の力が所定の第3閾値以上の値であり、My
+の力が所定の第2閾値以上の値である場合、ユーザ移動意図推定部20は、ユーザの移動意図が右旋回動作であると推定してもよい。また、ユーザ移動意図推定部20は、Fz方向におけるハンドル荷重の値に基づいて旋回速度を推定し、My方向におけるハンドル荷重の値に基づいて旋回半径を推定してもよい。
【0088】
また、ユーザ移動意図推定部20は、負荷設定部17で設定された負荷に応じて補正されたハンドル荷重の値に基づいて、移動速度を推定してもよい。例えば、負荷設定部17が右足荷重応答期において、Fy方向に−10Nの負荷を設定している場合、検知部13で検知されたハンドル荷重に−10Nを加えて、移動速度を推定してもよい。
【0089】
実施の形態1では、ユーザ移動意図推定部20は、ハンドル荷重の情報に基づいて、移動距離を推定することもできる。具体的には、ユーザ移動意図推定部20は、移動速度とハンドル荷重をかけている時間とに基づいて移動距離を推定することができる。
【0090】
駆動力算出部21は、ユーザ移動意図推定部20でハンドル荷重の情報から推定されたユーザの移動意図、即ちユーザの移動方向及び移動速度に基づいて、駆動力を算出する。例えば、駆動力算出部21は、ユーザの移動意図が前進動作又は後退動作である場合、2つの車輪(回転体)18の回転量が均等になるように駆動力を算出する。駆動力算出部21は、ユーザの移動意図が右旋回動作である場合、2つの車輪18のうち右側の車輪18の回転量を左側の車輪18の回転量よりも大きくなるように駆動力を算出する。また、駆動力算出部21は、ユーザの移動速度に応じて、駆動力の大きさを算出する。
【0091】
アクチュエータ制御部22は、駆動力算出部21で算出された駆動力の情報に基づいて、アクチュエータ23の駆動制御を行う。また、アクチュエータ制御部22は、アクチュエータ23から車輪18の回転量の情報を取得し、駆動力算出部21に車輪18の回転量の情報を送信することができる。
【0092】
アクチュエータ23は、例えば、車輪18を回転駆動させるモータ等である。アクチュエータ23は、歯車機構又はプーリー機構等を介して車輪18と接続されている。アクチュエータ23は、アクチュエータ制御部22によって駆動制御されることによって、車輪18を回転駆動している。
【0093】
実施の形態1では、ロボット1は、荷重波形データベース24を備えてもよい。荷重波形データベース24は、検知部13で検知されたハンドル荷重の波形を格納している。荷重波形データベース24は、例えば、ユーザの足位置毎のハンドル荷重の波形情報を、波形特徴量データとして格納している。波形特徴量データは、検知部13で検知されたハンドル荷重の波形情報と、足位置推定部16で推定された足位置の情報とに基づいて、生成及び更新されるデータである。荷重波形データベース24に格納されたハンドル荷重の波形情報は、足位置推定部16に送信される。
【0094】
実施の形態1では、波形特徴量データは、10歩分のハンドル荷重波形の情報に基づいて足位置推定部16によって算出される。例えば、足位置推定部16は、足位置毎のハンドル荷重波形データを検出し、各足位置における10歩分の平均荷重波形のデータを波形特徴量データとして算出してもよい。
【0095】
なお、波形特徴量データは、各足位置における10歩分の平均荷重波形のデータに限定されず、例えば、(10歩分のデータ)×(複数回のデータ)、又は1歩以上10歩以下又は10歩以上のハンドル荷重波形データに基づいて算出してもよい。また、波形特徴量データは、ハンドル荷重波形データの平均値に限定されず、例えば、中央値などを用いてもよい。
【0096】
[身体情報の例]
身体情報取得部15の身体情報データベース15aに格納された身体情報の例について説明する。
図6Aは、身体情報の一例である。
図6Aに示すように、ユーザAの身体情報として、歩行速度、歩行率、身体の傾き、身体の揺れ、歩幅、足部の筋力を用いてもよい。
【0097】
図6Bは、身体情報の別例である。
図6Bに示すように、ユーザAの直進動作の身体情報として、歩行速度、歩行率、移動方向の平均荷重、重心の偏り方向の平均荷重、移動方向の揺らぎ周波数、左右方向の揺らぎ周波数、歩幅、足部の筋力を用いている。また、
図6Bに示す身体情報は、ハンドル荷重の入力波形が「No.1」と「No.3」の2つを合算していることが示されている。
【0098】
図6A及び
図6Bに示す足部の筋力は、MMT(Manual Muscle Testing)又は筋電データに基づいて算出してもよい。また、足部の筋力は、検知部13で検知された荷重データから推定した足位置又は荷重の偏りに基づいて算出してもよい。例えば、加速期に左側に荷重が偏っていると判定した場合、加速期に使用される左足の筋力(前脛骨筋、ヒラメ筋等)が右足に比べて弱いため、左足の筋力のレベルを右足の筋力のレベルより低く算出する。
【0099】
[足位置推定処理]
足位置推定部16のハンドル荷重の変化に基づく足位置推定処理の例について説明する。
図7は、足位置推定部16の足位置推定処理の例示的なフローチャートを示す。
【0100】
図7に示すように、ステップST11において、検知部13がハンドル荷重の変化を検知したか否かを判定する。検知部13がハンドル荷重の変化を検知した場合、ステップST12へ進む。検知部13がハンドル荷重の変化を検知しない場合、ステップST11を繰り返す。
【0101】
ステップST12において、検知部13がハンドル荷重の波形情報を取得する。具体的には、検知部13がリアルタイムでハンドル荷重を検知することによって、ハンドル荷重の波形情報を取得する。検知部13で取得したハンドル荷重の波形情報は、足位置推定部16に送信される。
【0102】
ステップST13において、足位置推定部16が荷重波形データベース24から足位置毎の波形特徴量データを取得する。
【0103】
ステップST14において、足位置推定部16が、波形特徴量データに、負荷設定部17により設定した負荷が与えられたときのデータが含まれているか否かを判定する。負荷が与えられたときのデータが波形特徴量データに含まれている場合、ステップST15へ進む。負荷が与えられたときのデータが波形特徴量データに含まれていない場合、ステップST16へ進む。
【0104】
ステップST15において、足位置推定部16が、ステップST12で取得したハンドル荷重の波形情報と、ステップST13及びST14で取得した波形特徴量データに基づいて、足位置を推定する。ステップST15では、波形特徴量データは、負荷が与えられたときのデータである。
【0105】
ステップST16において、足位置推定部16が、ステップST12で取得したハンドル荷重の波形情報と、ステップST13及びST14で取得した波形特徴量データに基づいて、足位置を推定する。ステップST16では、波形特徴量データは、負荷が与えられていないときのデータである。
【0106】
ステップST17において、足位置推定部16は、ステップST15又はST16で推定した足位置の情報と、ハンドル荷重の波形情報とに基づいて、荷重波形データベース24に格納された波形特徴量データを更新する。
【0107】
[足位置推定処理の具体例]
ハンドル荷重の波形情報に基づく足位置推定処理の具体的な例について説明する。
図8は、ハンドル荷重の波形情報と歩行周期との関係の一例を示す。
図8は、ユーザの歩行時におけるハンドル荷重のFz方向の荷重の変化と、My方向のモーメントの変化を示す。
図8に示すように、Fz方向の荷重及びMy方向のモーメントは、歩行周期に合わせて変動している。このため、ハンドル荷重の波形情報に基づいて、ユーザの足位置を推定することができる。
【0108】
例えば、荷重応答期において、ユーザは主に足で荷重を支えることができるため、ハンドル部12にかかるFz
−方向のハンドル荷重が最も小さくなる。言い換えると、ユーザの足位置が荷重応答期にあるとき、Fz方向の荷重波形がFz
+方向に向かって突出した凸状のピーク位置を有する。なお、凸状のピーク位置の算出方法は、例えば、ハンドル荷重の変化量が増加から減少に変化する点に基づいて算出してもよいし、最小2乗法で2次曲線を推定し、推定した2次曲線の最大値に基づいて算出してもよい。
【0109】
また、荷重応答期において、左足で荷重を支える場合、左足に重心がかかるため、My
+方向のモーメントがかかる。このため、My
+方向にモーメントがかかっている場合、左足が地面に接して歩行していることが推定できる。一方、右足で荷重を支える場合、右足に重心がかかるため、My
−方向のモーメントがかかる。このため、My
−方向にモーメントがかかっている場合、右足が地面に接して歩行していることが推定できる。
【0110】
なお、実施の形態1において、
図8に示すハンドル荷重の波形情報は、一例であって、これに限定されるものではない。ユーザの歩行周期とハンドル荷重の波形との関係は、ユーザの年齢、身体能力、身体のサイズなどが要因で異なっていてもよい。例えば、Fz方向の荷重波形のピーク位置に対応する足位置が足趾離地であってもよい。
【0111】
足位置推定部16は、上述したハンドル荷重の波形の変化と歩行周期との関係に基づいて、足位置を推定することができる。
【0112】
図9は、ハンドル荷重の変化と足位置との関係の一例を示す。
図9は、ハンドル荷重のFz方向の荷重の変化と、My方向のモーメントの変化、及びハンドル荷重の変化に対する右足の足位置及び左足の足位置を示す。
【0113】
図9に示すように、足位置推定部16は、Myのモーメントのかかる方向に基づいて、重心のかかっている足を推定する。即ち、足位置推定部16は、Myのモーメントのかかる方向に基づいて、荷重を支えている足が左足であるか、右足であるかを推定することができる。
【0114】
図9において、右足の足位置に着目して、ハンドル荷重の波形と足位置の関係について説明する。
【0115】
足位置推定部16は、上述したようにFzのハンドル荷重波形において、Fz
+方向に突出した凸状のピーク位置P1に基づいて、初期接地と荷重応答期を推定する。例えば、足位置推定部16は、位置P1の直前を初期接地と推定し、初期接地の後、位置P1を過ぎてFz
−方向にかかるハンドル荷重の増加が滑らかな時期を荷重応答期と推定してもよい。このとき、足位置推定部16は、MyのモーメントがMy
−方向にかかり始めることから、右足位置が初期接地又は荷重応答期であることを推定する。
【0116】
足位置推定部16は、右足荷重応答期の後、Fz
−方向のハンドル荷重が大きくなっていき、Fzのハンドル荷重波形において、Fz
−方向に突出した凸状のピーク位置P2までの期間を右足立脚中期と推定する。
【0117】
足位置推定部16は、右足立脚中期の後、Myのモーメントが0になる直前までの期間を右足立脚終期と推定する。
【0118】
足位置推定部16は、右足立脚終期の後、MyのモーメントがMy
+方向にかかり始めると共に、Fzのハンドル荷重波形において、Fz
+方向に突出した凸状のピーク位置P3の付近を右足前遊脚期と推定する。
【0119】
足位置推定部16は、右足前遊脚期の後、My
+方向へのモーメントの増加、及びFzのハンドル荷重において、Fz
−方向に向かう凸状のピーク位置P4付近までの時期を、右足遊脚初期、右足遊脚中期を推定する。
【0120】
足位置推定部16は、右足遊脚中期の後、Fz
-方向へのハンドル荷重が小さくなり、右足初期接地までの期間を右足遊脚後期と推定する。
【0121】
上記した足位置推定部16による右足位置の推定は、一例であって、これに限定されない。また、左足位置の推定は、右足位置の推定と同じように行われてもよいし、異なる処理で推定されてもよい。
【0122】
以上のように、足位置推定部16は、検知したハンドル荷重の波形情報に基づいて、ユーザの足位置を推定することができる。また、足位置推定部16は、リアルタイムで検知したハンドル荷重の波形情報に基づいて、現在の足位置をリアルタイムで推定することができる。このため、足位置推定部16は、推定した現在の足位置の情報に基づいて、次の足位置を推定することができる。
【0123】
実施の形態1では、歩行周期は、初期接地、荷重応答期、立脚中期、立脚終期、前遊脚期、遊脚初期、遊脚中期、遊脚後期を繰り返す。このため、足位置推定部16は、現在の足位置が初期接地であると推定すると、次の足位置が荷重応答期であることを推定することができる。
【0124】
足位置推定部16で推定された足位置の情報は、負荷設定部17に送信される。このため、負荷設定部17は、足位置推定部16によって推定した足位置の情報に基づいて、リアルタイムで負荷を設定することができる。例えば、推定された現在の足位置の情報が荷重応答期である場合、負荷設定部17は、次の足位置が立脚中期であることを判定し、ユーザに与える負荷を立脚中期の設定に変更することができる。
【0125】
[負荷設定処理]
負荷設定部17の負荷設定処理の例について説明する。
図10は、負荷設定部17の負荷設定処理の例示的なフローチャートを示す。
【0126】
図10に示すように、ステップST21において、負荷設定部17が身体情報を取得する。具体的には、身体情報取得部15が、身体情報データベース15aから身体情報を取得し、負荷設定部17に身体情報を送信する。
【0127】
ステップST22において、足位置推定部16が足位置を推定したか否かを判定する。足位置推定部16が足位置を推定している場合、ステップST23へ進む。足位置推定部16が足位置を推定していない場合、足位置推定部16が足位置を推定するまでステップST22を繰り返す。
【0128】
ステップST23において、負荷設定部17が足位置の情報を取得する。具体的には、足位置推定部16が足位置の情報を負荷設定部17に送信する。
【0129】
ステップST24において、負荷設定部17がステップST21で取得した身体情報と、ステップST24で取得した足位置の情報とに基づいて、ユーザに与える負荷を設定する。負荷設定部17は、設定した負荷情報をユーザ移動意図推定部20に送信する。
【0130】
具体的には、負荷設定部17は、身体情報に基づいて、例えば、負荷の強度を設定する。例えば、負荷設定部17は、左足の筋力が右足の筋力と比べて弱いと判定した場合、右足より左足の負荷を大きく設定する。実施の形態1では、負荷設定部17は、足位置毎に負荷を設定することができる。
【0131】
次に、負荷設定部17は、足位置推定部16で推定されたリアルタイムの足位置の情報に基づいて、負荷を設定する。例えば、負荷設定部17は、推定された現在の足位置の情報に基づいて、現在の足位置に対応する負荷を設定する。また、負荷設定部17は、現在の足位置の情報に基づいて、次の足位置を予測する。これにより、負荷設定部17は、現在の足位置が終了して次の足位置が開始するときに、次の足位置に対応する負荷を設定することができる。
【0132】
[負荷設定処理の具体例]
図11は、負荷設定の一例を示す。
図11に示すように、左足の前脛骨筋の筋力が「5」であり、右足の前脛骨筋の筋力が「3」である場合、負荷設定部17は、左足位置が初期接地から立脚中期までのFy方向の荷重を+10Nに設定する。一方、負荷設定部17は、右足位置が初期接地、荷重応答期、立脚中期のFy方向の荷重を、それぞれ−10N、−10N、−15Nに設定する。これにより、ユーザが左足で荷重を支えて歩行しているときは、ロボット1の前進方向への移動の負荷を右足で荷重を支えて歩行するときと比べて小さくすることができる。一方、ユーザが右足で荷重を支えて歩行しているときは、ロボット1の前進方向への移動の負荷を左足で荷重を支えて歩行するときと比べて大きくすることができる。
【0133】
[ユーザの移動意図の推定]
ユーザの移動意図の推定について、
図12を用いて説明する。
図12は、ユーザの移動意図の推定処理の例示的なフローチャートを示す。
【0134】
図12に示すように、ステップST31において、ユーザ移動意図推定部20が、検知部13で検知されたハンドル荷重の情報を取得する。
【0135】
ステップST32において、ユーザ移動意図推定部20が、負荷設定部17から負荷情報を取得する。
【0136】
ステップST33において、ユーザ移動意図推定部20が、ステップST31で取得したハンドル荷重の情報と、ステップST32で取得した負荷情報とに基づいて、ユーザの移動意図(移動方向、移動速度)を推定する。具体的には、ユーザ移動意図推定部20は、ハンドル荷重のFx、Fy、Fz、Mx、My、Mz方向の力の大きさと、これらの方向に加えられる負荷に基づいて、ユーザの移動方向及び移動速度を推定する。
【0137】
[駆動力の算出]
駆動力の算出について、
図13を用いて説明する。
図13は、駆動力の算出処理の例示的なフローチャートを示す。
【0138】
図13に示すように、ステップST41において、駆動力算出部21は、ユーザ移動意図推定部20からユーザの移動意図の情報を取得する。
【0139】
ステップST42において、駆動力算出部21は、アクチュエータ制御部22から車輪18の回転量の情報を取得する。
【0140】
ステップST43において、駆動力算出部21は、ステップST21で取得したユーザの移動意図と車輪18の回転量の情報とに基づいて駆動力を算出する。具体的には、駆動力算出部21は、車輪18の回転量の情報から算出された現在の移動方向及び移動速度と、ユーザの移動意図の情報から推定された移動方向及び移動速度との差分に基づき、車輪18の回転量を算出する。
【0141】
一例として、ロボット1が前進方向に71cm/sの移動速度で移動している状態のとき、ユーザがFy
+の力を大きくして移動速度を77cm/sまで加速させる場合の駆動力算出部21の動作を説明する。駆動力算出部21は、前進方向に速度71cm/sで移動している状態において、左右両方の車輪18の回転量が2000rpmであることを示す情報を取得する。次に、駆動力算出部21は、ロボット1の移動速度を77cm/sにするために、左右両方の車輪18の回転量が2500rpm必要であることを算出する。駆動力算出部21は、左右の車輪18の回転量を500rpm大きくするように駆動力を算出する。
【0142】
なお、実施の形態1では、駆動力算出部21は、ユーザの移動意図の情報とアクチュエータ制御部22から取得した車輪18の回転量の情報とに基づいて、駆動力を算出する例について説明したが、これに限定されない。例えば、駆動力算出部21は、ユーザの移動意図の情報のみから駆動力を算出してもよい。即ち、駆動力の算出処理において、ステップST22を含まなくてもよい。
【0143】
また、駆動力算出部21は、ハンドル荷重と車輪18の回転量との対応関係を示す制御テーブルに基づいて、駆動力を算出してもよい。具体的には、駆動力算出部21は、ハンドル荷重と車輪18の回転量との対応関係を示す制御テーブルを格納する記憶部を備えてもよい。駆動力算出部21は、この記憶部に格納された制御テーブルを用いて、検知部13で検知されたハンドル荷重の値に対応する車輪18の回転量を算出してもよい。
【0144】
[効果]
実施の形態1に係る歩行支援ロボット1によれば、以下の効果を奏することができる。
【0145】
歩行支援ロボット1によれば、ユーザの歩行を支援しながら身体能力を向上させることができる。また、ロボット1によれば、身体情報と足位置の情報とに基づいて、ユーザの実際の歩行に応じて負荷を設定し、ユーザの身体能力を効率良く向上させることができる。
【0146】
ロボット1によれば、装置を装着する手間を必要としないため、使い勝手が向上する。
【0147】
歩行において、足位置毎に使用する足部の筋力は異なるため、足位置に応じて負荷を設定することで、ユーザの身体能力を効率良く向上させることができる。
【0148】
ロボット1において、負荷設定部17は、ユーザに与える負荷を設定するために、検知部13で検知されたハンドル荷重を補正している。移動装置14は、検知部13で検知されたハンドル荷重の値に応じて、移動速度及び移動方向を決定している。このため、負荷設定部17は、ハンドル荷重を補正し、ロボット1の移動を制御することによってユーザに与える負荷を設定することができる。
【0149】
なお、実施の形態1では、ロボット1を構成する要素は、例えば、これらの要素を機能させるプログラムを記憶したメモリ(図示せず)と、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサに対応する処理回路(図示せず)を備え、プロセッサがプログラムを実行することでこれらの要素として機能してもよい。あるいは、ロボット1を構成する要素は、これらの要素を機能させる集積回路を用いて構成してもよい。
【0150】
実施の形態1では、ロボット1の動作を主として説明したが、これらの動作は、歩行支援方法として実行することもできる。
【0151】
実施の形態1では、検知部13は、六軸力センサである例を説明したが、これに限定されない。検知部13は、例えば、三軸センサ、又は歪みセンサ等を用いてもよい。
【0152】
実施の形態1では、移動装置14は、ユー-ザのハンドル荷重の値に基づいて移動速度を算出する例について、説明したがこれに限定されない。例えば、移動装置14は、ユーザのハンドル荷重±αの値に基づいて移動速度を算出してもよい。±αの値は、例えば、固定値、ユーザ毎に設定された値、ユーザが入力した値であってもよい。
【0153】
実施の形態1では、ロボット1が身体情報取得部15を備える例について説明したが、これに限定されない。
図14は、実施の形態1の変形例のロボット1Aの制御構成の一例を示す制御ブロック図を示す。
図14に示すように、ロボット1Aは、身体情報取得部15を備えない点でロボット1と異なる。具体的には、ロボット1Aは、本体部11と、ハンドル部12と、検知部13と、移動装置14と、足位置推定部16と、負荷設定部17と、を備える。ロボット1Aにおいて、負荷設定部17は、身体情報に基づかず、足位置の情報に基づいて、負荷を設定する。例えば、負荷の強度は、予め設定された値に設定されてもよい。あるいは、負荷の強度は、入力インタフェースから手動で入力されることによって設定されてもよいし、コンピュータにより自動で設定されてもよい。このような構成により、ユーザの歩行を支援しながら、足位置の情報に基づいて、ユーザの実際の歩行に応じて負荷を設定し、ユーザの身体能力を効率良く向上させることができる。
【0154】
実施の形態1では、身体情報として、筋力は、主に足部の筋力を説明したが、これに限定されない。筋力は、歩行により使用する筋力であればよく、例えば、股部、膝部などの筋力であってもよい。
【0155】
実施の形態1では、ロボット1が身体情報データベース15aと荷重波形データベース24とを備える例について説明したが、これに限定されない。身体情報データベース15a及び荷重波形データベース24は、サーバなどに備えられていてもよい。この場合、ロボット1は、ネットワークを介してサーバと通信することによって、身体情報データベース15a及び荷重波形データベース24から身体情報及び荷重波形情報を取得してもよい。
【0156】
実施の形態1では、負荷設定部17は、負荷を設定するために、ハンドル荷重を補正する例について説明したが、これに限定されない。例えば、負荷設定部17は、負荷を設定するために、駆動力算出部21で補正係数を用いて駆動力を補正してもよいし、又は回転体18の回転量を制御してもよい。また、負荷設定部17は、旋回半径を補正してもよい。あるいは、負荷設定部17は、これらの組み合わせによって負荷を設定してもよい。
【0157】
実施の形態1では、2つの車輪(回転体)18の回転量をそれぞれ設定することにより、ロボット1の前進動作、後退動作、右旋回動作、左旋回動作などを制御する例について説明したが、これに限定されない。例えば、ブレーキ機構などによって、車輪18の回転量を制御し、ロボット1の動作を制御してもよい。
【0158】
実施の形態1では、負荷設定部17は、左右の足部の筋力に基づいて負荷を設定する例について説明したが、これに限定されない。負荷設定部17は、左右の足の歩幅の差異に基づいて負荷を設定してもよい。このような構成により、左右の足のうち筋力が劣っている方の足を容易に判定することができ、左右の足を効率良く鍛えることができる。
【0159】
また、負荷設定部17は、左右の足部の筋力の差異に基づいて、一方の足の負荷を大きくし、他方の足の負荷を小さく設定する例について説明したが、これに限定されない。例えば、負荷設定部17は、両足の筋肉を鍛えたい場合、両方の足の負荷を大きくするように設定してもよい。
【0160】
負荷設定部17は、ハンドル荷重の変化に基づいて、負荷を設定してもよい。負荷設定部17は、ハンドル荷重の変化に基づき、ユーザが歩行していることを検知することができため、ユーザの歩行が検知されたときに負荷を設定することができる。
【0161】
実施の形態1では、ユーザ移動意図推定部20は、検知部13で検知されたハンドル荷重に基づいてユーザの移動意図を推定する例について説明したが、これに限定されない。ユーザ移動意図推定部20は、検知部13で検知されたハンドル荷重を補正した値(補正ハンドル荷重)に基づいて、ユーザの移動意図を推定してもよい。
【0162】
ハンドル荷重の補正の方法としては、例えば、ユーザの歩行時の過去のハンドル荷重データから揺らぎ周波数を算出し、検知部13で検知されたハンドル荷重から揺らぎ周波数をフィルタリングすることによって、ハンドル荷重の補正を行ってもよい。検知部13で検知されたハンドル荷重の平均荷重値を用いてハンドル荷重の補正を行ってもよい。あるいは、ユーザの荷重傾向データに基づいて、ハンドル荷重の補正を行ってもよい。更に、ロボット1の使用場所、使用時間、及びユーザの体調などに基づいて、ハンドル荷重の値を補正してもよい。
【0163】
実施の形態1では、ロボット1が直進動作時の負荷の設定の例について説明したが、これに限定されない。例えば、ロボット1が後退動作、旋回動作をしている場合であっても、直進動作と同様に負荷を設定してもよい。このような構成により、ロボット1の様々な動作において、負荷を設定することができる。
【0164】
(実施の形態2)
本開示の実施の形態2に係る歩行支援ロボットについて説明する。なお、実施の形態2では、主に実施の形態1と異なる点について説明する。実施の形態2においては、実施の形態1と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態2では、実施の形態1と重複する記載は省略する。
【0165】
実施の形態2では、ユーザの身体情報を推定する身体情報推定部を備える点が実施の形態1と異なる。
【0166】
[歩行支援ロボットの制御構成]
図15は、実施の形態2に係る歩行支援ロボット51(以下、「ロボット51」と称する)における主要な制御構成の一例を示す制御ブロック図を示す。
図16は、ロボット51の歩行支援の制御構成の一例を示す制御ブロック図を示す。
【0167】
図15及び
図16に示すように、実施の形態2では、身体情報取得部15が身体情報推定部25を備える。
【0168】
身体情報推定部25は、ユーザの身体情報を推定する。具体的には、身体情報推定部25は、検知部13で検知されたハンドル荷重の情報に基づいて、身体情報を推定する。
【0169】
例えば、身体情報推定部25は、ハンドル荷重の情報に基づいて、歩幅を算出することができる。例えば、ユーザが直進動作をしている場合、右足と左足とを交互に前方向に出して歩行している。直進動作をしているユーザのハンドル荷重の波形情報は、歩行周期と連動して変化する。上述したように、Fz方向のハンドル荷重の波形情報は、荷重応答期において、Fz
+方向に突出した凸状のピーク位置P1、P3を有する。身体情報推定部25は、ピーク位置P1からピーク位置P3の区間を1歩とカウントし、移動距離を算出することによって、歩幅を推定することができる。
【0170】
また、身体情報推定部25は、ハンドル荷重の情報の他、駆動力の情報に基づいて、身体情報を推定する。例えば、身体情報推定部25は、駆動力の情報に基づいて移動距離を算出し、移動時間で除算することにより歩行速度を算出する。
【0171】
身体情報推定部25で推定された身体情報は、身体情報データベース15aに送信される。
【0172】
[身体情報の推定]
身体情報の推定について、
図17を用いて説明する。
図17は、ロボット51の身体情報推定処理の例示的なフローチャートを示す。
【0173】
図17に示すように、ステップST51において、身体情報推定部25は、ハンドル荷重の波形情報を取得する。具体的には、身体情報推定部25は、荷重波形データベース24からハンドル荷重の波形情報を取得する。
【0174】
ステップST52において、身体情報推定部25は、回転体18の駆動力の情報を取得する。具体的には、身体情報推定部25は、駆動力算出部21から駆動力の情報を取得する。
【0175】
ステップST53において、身体情報推定部25は、ステップST51で取得したハンドル荷重の波形情報と、ステップST52で取得した駆動力の情報とに基づいて、身体情報を算出する。
【0176】
例えば、身体情報推定部25は、駆動力の情報に基づいて、移動方向及び移動速度を算出する。身体情報推定部25は、ハンドル荷重の波形情報の中からユーザの移動方向に対応するハンドル荷重の波形情報を取得する。例えば、身体情報推定部25は、ユーザの移動方向がFy
+方向である場合、Fz方向のハンドル荷重の波形情報又はMy方向のモーメントの波形情報を取得する。
【0177】
次に、身体情報推定部25は、ユーザの移動方向に対応するハンドル荷重の波形情報と、駆動力の情報とに基づいて、身体情報を推定する。
【0178】
実施の形態2では、身体情報推定部25は、身体情報として、歩行速度、歩行率、身体の傾き、身体の揺れ、歩幅、筋力を推定する。
【0179】
歩行速度は、上述したように、駆動力の情報に基づいて移動距離を算出し、移動時間で除算することにより算出する。
【0180】
歩行率は、歩数を移動時間で除算することにより算出する。歩数は、上述したように、Fz方向のハンドル荷重の波形情報において、Fz
+方向に突出した凸状のピーク位置から次のピーク位置までの区間を1歩とカウントすることにより算出する。
【0181】
身体の傾きは、ハンドル荷重の情報に基づいて算出する。身体の傾きは、ユーザの重心の傾きによって生じる荷重の偏りに基づいて算出する。例えば、重心が右方向に偏った状態で歩行するユーザについては、Fx
+方向の荷重を身体の傾きとして算出する。
【0182】
身体の揺れは、合算した波形情報に基づいて揺らぎ周波数を算出することによって算出する。具体的には、身体情報推定部25は、推定したユーザの移動方向におけるハンドル荷重の周波数解析を行うことにより、揺らぎ周波数を算出する。
【0183】
歩幅は、上述したように、Fz方向の荷重の波形において、ピーク位置から次のピーク位置の区間を1歩とカウントし、移動距離を算出することによって算出する。
【0184】
筋力は、足位置毎の荷重値の偏り、左右の歩幅の差、移動量の差などから算出する。例えば、筋力は、ユーザの歩行動作毎に使う足部の筋肉(例えば、前脛骨筋、腓骨筋など)毎に6段階の評価(レベル0〜5)で表される。なお、レベルは、数字が大きくなる程、筋力が強いことを示す。
【0185】
実施の形態2では、上述した身体情報のデータは、10歩分の情報に基づいて算出している。具体的には、10歩分のデータの平均値を身体情報として算出している。なお、身体情報は、10歩分のデータの平均値に限定されない。例えば、身体情報は、10歩分のデータに限らず、1歩以上10歩未満のデータ、10歩より多い歩数のデータ、又は(10歩分のデータ)×(複数回のデータ)等に基づいて算出されてもよい。また、身体情報は、10歩分のデータの平均値以外に中央値などによって算出してもよい。
【0186】
ステップST54において、ステップST53で算出された身体情報のデータは、身体情報データベース15aに格納される。また、身体情報データベース15aに格納された身体情報のデータは、身体情報の推定が行われる度に、新しい情報に更新される。
【0187】
このように、身体情報推定部25は、ハンドル荷重の情報に基づいて、身体情報を推定することができる。
【0188】
[効果]
実施の形態2に係る歩行支援ロボット51によれば、以下の効果を奏することができる。
【0189】
ロボット51によれば、身体情報推定部25によって、ハンドル荷重の情報に基づいて、ユーザの身体情報を推定することができる。このように、ロボット51がユーザの歩行を支援しながらユーザの身体情報を容易に取得できる。また、身体情報データベース15aに格納された身体情報を容易に更新することもできる。
【0190】
ロボット51によれば、体に他の機器を装着する負担無く、ハンドル荷重の情報だけでユーザの身体情報を自動で取得することが可能となる。
【0191】
また、日々の身体情報を捉えることで、日々の細かな身体情報の変動に対しても負荷を適切に与えることが可能となる。
【0192】
なお、実施の形態2では、身体情報推定部25は、荷重波形データベース24からハンドル荷重の波形情報を取得する例について説明したが、これに限定されない。身体情報推定部25は、検知部13からハンドル荷重の波形情報を取得してもよい。
【0193】
実施の形態2では、身体情報推定部25は、ハンドル荷重の情報と、駆動力の情報とに基づいて、身体情報を推定する例について説明したが、これに限定されない。例えば、身体情報推定部25は、ハンドル荷重の情報と、アクチュエータ制御部22で測定された回転体18の回転量と、に基づいて、身体情報を推定してもよい。
【0194】
[ユーザ通知部]
図18は、ロボット51の歩行支援の制御構成を示す別の制御ブロック図を示す。
図18に示すように、ロボット51は、ユーザ通知部26を備えてもよい。
【0195】
ユーザ通知部26は、身体情報と、負荷情報とのうち少なくとも一方をユーザに通知する。具体的には、ユーザ通知部26は、身体情報推定部25から推定した身体情報を取得する。また、ユーザ通知部26は、負荷設定部17から負荷情報を取得する。
【0196】
ユーザ通知部26は、例えば、LED、ディスプレイ、又はスピーカーなどで構成される。なお、ユーザ通知部26は、LED、ディスプレイ、スピーカー、又はこれらの組み合わせで構成されていてもよい。
【0197】
ユーザ通知部26がLEDを有する場合を説明する。ユーザ通知部26は、例えば、身体情報を取得したとき、足位置を推定したとき、又は負荷を設定したときにLEDを点灯してもよい。なお、LEDの点灯のパターンに応じて、提示したい情報を識別してもよい。例えば、ユーザ通知部26は、右足に比べて左足の負荷が大きい場合、左足が初期接地から立脚終期にある間、LEDを点灯し、右足が初期接地から立脚終期にある間、LEDを消灯してもよい。あるいは、ユーザ通知部26は、負荷の大きさに応じてLEDの光の強さを段階的に変化させてもよい。
【0198】
ユーザ通知部26がディスプレイを有する場合を説明する。ユーザ通知部26は、身体情報を取得したとき、例えば、ディスプレイ上に「あなたの歩行速度は○○です」、「歩行率は○○です」、「右足の筋力が弱いです」などのメッセージを表示してもよい。ユーザ通知部26は、足位置を推定したとき、例えば、ディスプレイ上に「右足初期接地」、「右足荷重応答期」、「左足遊脚初期」などのメッセージを表示してもよい。ユーザ通知部26は、負荷を設定したとき、例えば、ディスプレイ上に「あなたに合わせて支えます」、「あなたに合わせて制御を変えます」、「負荷を強めます」、「負荷を弱めます」、「筋肉を鍛えます」などのメッセージを表示してもよい。なお、ディスプレイに表示するメッセージは、これらに限定されない。
【0199】
ユーザ通知部26がスピーカーを有する場合を説明する。ユーザ通知部26は、身体情報を取得したとき、例えば、スピーカーによって「あなたの歩行速度は○○です」、「歩行率は○○です」、「右足の筋力が弱いです」などの音声を出力してもよい。ユーザ通知部26は、足位置を推定したとき、例えば、スピーカーによって「右足初期接地」、「右足荷重応答期」、「左足遊脚初期」などの音声を出力してもよい。また、ユーザ通知部26は、負荷を設定したとき、例えば、スピーカーによって、「あなたに合わせて支えます」、「あなたに合わせて制御を変えます」、「ブレーキを強めます」、「揺れを抑えます」、「安定させます」などの音声を出力してもよい。なお、スピーカーによって出力する音声は、これらに限定されない。
【0200】
このように、ユーザ通知部26を備えることによって、ユーザは身体情報、足位置の情報、又は負荷の情報を、視覚及び/又は聴覚で取得することができる。
【0201】
ユーザ通知部26がこれらの情報を通知することにより、ユーザ自身が日々の身体情報を把握し、身体能力の維持及び向上へのモチベーションアップ、又は歩行時の注意力喚起に繋がる。
【0202】
また、ユーザ通知部26がこれらの情報を通知することにより、ロボット51の制御状態をユーザが把握することができ、負荷が強まるような操作感の大きな変化に対し適応することが可能となる。
【0203】
(実施の形態3)
本開示の実施の形態3に係る歩行支援ロボットについて説明する。なお、実施の形態3では、主に実施の形態1と異なる点について説明する。実施の形態3においては、実施の形態1と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態3では、実施の形態1と重複する記載は省略する。
【0204】
実施の形態3では、負荷対象を判定する負荷対象判定部を備える点が実施の形態1と異なる。
【0205】
[歩行支援ロボットの制御構成]
図19は、実施の形態3に係る歩行支援ロボット61(以下、「ロボット61」と称する)における主要な制御構成の一例を示す制御ブロック図を示す。
図20は、ロボット61の歩行支援の制御構成の一例を示す制御ブロック図を示す。
【0206】
図19及び
図20に示すように、実施の形態3では、ロボット61が負荷対象判定部27を備える。
【0207】
負荷対象判定部27は、負荷を与える対象を判定する。具体的には、負荷対象判定部27は、身体情報に基づいて負荷を与えるべき筋肉を判定する。例えば、負荷対象判定部27は、身体情報に基づいて右足のヒラメ筋が弱いと判定すると、負荷を与えるべき筋肉として右足のヒラメ筋を判定する。
【0208】
[負荷対象の判定]
負荷対象の判定について、
図21を用いて説明する。
図21は、ロボット61の身体情報推定処理の例示的なフローチャートを示す。
【0209】
図21に示すように、ステップST61において、負荷対象判定部27は、足位置推定部16から足位置の情報を取得する。
【0210】
ステップST62において、負荷対象判定部27は、ステップST61で取得した足位置の情報に基づいて、歩行時に使用される筋肉を判定する。具体的には、負荷対象判定部27は、足位置と歩行時に使用される筋肉の関係を示したテーブルを用いて、推定された足位置に応じた筋肉を判定する。
【0211】
図22A及び
図22Bは、それぞれ、足位置と歩行時に使用される筋肉の関係を示したテーブルの一例を示す。
図22A及び
図22Bにおいて、白丸で示す箇所が各足位置において使用する筋肉を示す。
図22A及び
図22Bに示すように、歩行時に使用する筋肉は、足位置に応じて異なっている。
【0212】
例えば、
図22Aに示すように、足位置が初期接地及び荷重応答期にある場合、股部の大殿筋、大内転筋、大腿二頭筋が使用され、膝部の中間広筋、内側広筋、外側広筋が使用され、足部のヒラメ筋、長趾伸筋、長母趾伸筋が使用される。足位置が立脚中期及び立脚終期にある場合、股部及び膝部の筋肉は使用されずに、足部のヒラメ筋が使用される。
図22Bに示すように、足位置が踵接地にある場合、股部の大殿筋、大内転筋、大腿二頭筋が使用され、膝部の中間広筋、内側広筋、外側広筋が使用され、足部のヒラメ筋、長趾伸筋、長母趾伸筋が使用される。足位置が踵離地にある場合、股部及び膝部の筋肉は使用されずに、足部のヒラメ筋が使用される。
【0213】
このように、負荷対象判定部27は、
図22A及び
図22Bに示すようなテーブルを用いて、足位置の情報から、歩行時に使用する股部、膝部、又は足部で使用する筋肉を判定する。
【0214】
ステップST63において、負荷対象判定部27は、身体情報取得部15から身体情報を取得する。
【0215】
ステップST64において、負荷対象判定部27は、ステップST63で取得した身体情報に基づいて、負荷を与えるべき筋肉を判定する。例えば、負荷対象判定部27は、身体情報に基づき、右足のヒラメ筋は左足のヒラメ筋よりも弱いと判定した場合、右足のヒラメ筋を、負荷を与えるべき筋肉として判定する。
【0216】
ステップST65において、負荷対象判定部27は、ステップST62で判定された歩行時に使用する筋肉に、ステップST64で判定した負荷を与えるべき筋肉が含まれているか否かを判定する。歩行時に使用する筋肉に負荷を与えるべき筋肉が含まれていると判定した場合、ステップST66へ進む。歩行時に使用する筋肉に負荷を与えるべき筋肉が含まれていないと判定した場合、ステップST67へ進む。
【0217】
例えば、足位置が荷重応答期であって、歩行時に使用する筋肉が、足部のヒラメ筋、長趾伸筋、長母趾伸筋であると判定され、負荷を与えるべき筋肉が右足のヒラメ筋であると判定された場合を考える。この場合、負荷対象判定部27は、歩行時に使用される筋肉にヒラメ筋が含まれていると判定し、ステップST66へ進む。
【0218】
足位置が前遊脚期であって、歩行時に使用する筋肉が、足部の長趾伸筋、長母趾伸筋であると判定され、負荷を与えるべき筋肉が右足のヒラメ筋であると判定された場合を考える。この場合、負荷対象判定部27は、歩行時に使用される筋肉にヒラメ筋が含まれていないと判定し、ステップST67へ進む。
【0219】
ステップST66において、負荷設定部17は、推定された足位置において歩行時に使用される筋肉にかける負荷を増加する。具体的には、負荷設定部17は、ユーザの進行方向にかかるハンドル荷重を減算する。
【0220】
例えば、ユーザが直進している場合、負荷設定部17は、Fy
+方向にかかっているハンドル荷重を減算する。ハンドル荷重を減算することによって、ロボット61の移動を抑えることができ、ユーザの直進方向への負荷を増加させることができる。即ち、負荷を増加させた場合、ユーザは、ロボット61を移動させるために、ハンドル荷重を減算していないときよりも大きいハンドル荷重をかけることになる。
【0221】
ステップST67において、負荷設定部17は、推定された足位置において歩行時に使用される筋肉にかける負荷を減少する。具体的には、負荷設定部17は、ユーザの進行方向にかかるハンドル荷重を増加する。
【0222】
例えば、ユーザが直進している場合、負荷設定部17は、Fy
+方向にかかっているハンドル荷重を増加する。ハンドル荷重を増加することによって、ロボット61を移動しやすくし、ユーザの直進方向への負荷を減少させることができる。即ち、負荷を減少させた場合、ユーザは、ハンドル荷重を増加していないときよりも小さいハンドル荷重でロボット61を移動させることができる。
【0223】
このように、負荷対象判定部27は、足位置の情報と身体情報とに基づいて、負荷を与えるべき対象を判定することできる。また、負荷設定部17は、判定された対象に応じて足位置毎に負荷を設定している。
【0224】
[効果]
実施の形態3に係る歩行支援ロボット61によれば、以下の効果を奏することができる。
【0225】
ロボット61によれば、足位置の情報と身体情報とに基づいて、負荷を与えるべき対象を判定し、判定した対象に応じて足位置毎に負荷を設定することができる。これにより、身体能力を効率良く向上させることができる。
【0226】
なお、実施の形態3では、負荷を与えるべき対象として、歩行時に使用される股部、膝部、及び足部の筋肉の例を説明したが、これに限定されない。負荷を与えるべき対象は、身体能力を向上させるべき対象であればよい。
【0227】
実施の形態3では、負荷対象判定部27によって、歩行時に使用する筋肉に負荷を与えるべき筋肉が含まれていると判定された場合、負荷設定部17がユーザの進行方向にかかるハンドル荷重を減算する例について説明したが、これに限定されない。例えば、ステップST66において、負荷設定部17がユーザの進行方向にかかるハンドル荷重を増加してもよい。これにより、ロボット61が移動しやすくなり、ユーザの歩幅を長くなるため、負荷を増加させることができる。
【0228】
実施の形態3では、負荷対象判定部27によって、歩行時に使用する筋肉に負荷を与えるべき筋肉が含まれていないと判定された場合、負荷設定部17がユーザの進行方向にかかるハンドル荷重を増加する例について説明したが、これに限定されない。例えば、ステップST67において、負荷設定部17が負荷を設定しなくてもよい。
【0229】
(実施の形態4)
本開示の実施の形態4に係る歩行支援ロボットについて説明する。なお、実施の形態4では、主に実施の形態1と異なる点について説明する。実施の形態4においては、実施の形態1と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態4では、実施の形態1と重複する記載は省略する。
【0230】
実施の形態4では、旋回負荷を設定する旋回負荷設定部を備える点が実施の形態1と異なる。
【0231】
[歩行支援ロボットの制御構成]
図23は、実施の形態4に係る歩行支援ロボット71(以下、「ロボット71」と称する)における主要な制御構成の一例を示す制御ブロック図を示す。
図24は、ロボット71の歩行支援の制御構成の一例を示す制御ブロック図を示す。
【0232】
図23及び
図24に示すように、実施の形態4では、ロボット71が旋回負荷設定部28を備える。
【0233】
旋回負荷設定部28は、旋回負荷を設定する。具体的には、旋回負荷設定部28は、身体情報と足位置の情報とに基づいて、ロボット71の旋回半径を設定する。例えば、旋回負荷設定部28は、身体情報より右足の筋力が左足の筋力より弱いと判定すると、歩行時において右足に重心があるときの旋回半径を、左足に重心があるときの旋回半径よりも小さく設定する。ロボット71の旋回半径が小さくなることによって、ロボット71が急旋回することになり、旋回時のユーザの負荷が増加する。実施の形態4では、負荷の設定はユーザに応じて異なる設定にしている。
【0234】
[旋回負荷の設定]
旋回負荷の設定について、
図25を用いて説明する。
図25は、ロボット71の旋回負荷設定処理の例示的なフローチャートを示す。
【0235】
図25に示すように、ステップST71において、旋回負荷設定部28が、身体情報取得部15から身体情報を取得する。
【0236】
ステップST72において、旋回負荷設定部28が、足位置推定部16によって足位置が推定されたか否かを判定する。足位置推定部16によって足位置が推定されている場合、ステップST73へ進む。足位置推定部16によって足位置が推定されていない場合、ステップST72を繰り返す。
【0237】
ステップST73において、旋回負荷設定部28が、ロボット71が旋回しているか否かを判定する。具体的には、旋回負荷設定部28は、アクチュエータ制御部22から回転体18の回転量の情報を取得し、回転量の情報に基づいてロボット71が旋回動作中であるか否かを判定する。例えば、旋回負荷設定部28は、左側の回転体18の回転量が右側の回転体18の回転量よりも少ない場合、ロボット71が右方向に旋回していると判定する。また、旋回負荷設定部28は、左側の回転体18の回転量と右側の回転体18の回転量とが等しい場合、ロボット71が旋回していないと判定する。
【0238】
ステップST73において、ロボット71が旋回していると判定された場合、ステップST74へ進む。ロボット71が旋回していないと判定された場合、ステップST73を繰り返す。
【0239】
ステップST74において、旋回負荷設定部28は、ステップST71で取得した身体情報と、ステップST72で推定された足位置の情報とに基づいて、旋回負荷量を設定する。
【0240】
図26は、旋回負荷設定の一例を示す。
図26に示すように、負荷情報は、身体情報として、足部の前脛骨筋に注目し、足位置毎に旋回半径を設定している。
図26に示す例では、旋回負荷設定部28は、右足の前脛骨筋が左足よりも弱いと判定する。この場合、旋回負荷設定部28は、歩行時において左足に重心があるときよりも、右足に重心があるときの旋回半径を小さくするように、旋回負荷を設定している。
【0241】
[効果]
実施の形態4に係る歩行支援ロボット71によれば、以下の効果を奏することができる。
【0242】
ロボット71によれば、ロボット71の旋回時において、旋回半径を変更することによって、身体能力を効率良く向上させることができる。
【0243】
なお、実施の形態4では、旋回負荷として、旋回半径を説明したが、これに限定されない。例えば、旋回負荷は、旋回速度、ハンドル荷重などであってもよい。
【0244】
実施の形態4では、旋回負荷量の設定は、ユーザ毎に設定されている例について説明したが、これに限定されない。例えば、旋回負荷量の設定は、いずれのユーザにも共通する一律の値であってよい。
【0245】
実施の形態4では、身体情報として、足部の筋肉を例として用いたが、これに限定されない。身体情報は、例えば、歩行速度、歩行率、身体の傾き、身体の揺れ、歩幅、筋力などであってもよい。
【0246】
実施の形態4では、旋回負荷設定部28は、身体情報に基づいて、旋回負荷を設定する例について説明したが、これに限定されない。例えば、旋回負荷設定部28は、ユーザの移動意図、負荷対象の筋肉、現在の移動速度、加速度の加速、定速、減速に応じて旋回負荷を設定してもよい。
【0247】
実施の形態4では、ステップST73において、旋回負荷設定部28は、アクチュエータ制御部22から回転体18の回転量の情報を取得し、回転量の情報に基づいてロボット71が旋回動作中であるか否かを判定する例について説明したが、これに限定されない。例えば、旋回負荷設定部28は、ユーザ移動意図推定部20からユーザの移動方向の情報を取得し、ユーザの移動方向の情報に基づいて旋回しているか否かを判定してもよい。あるいは、旋回負荷設定部28は、駆動力算出部21から駆動力の情報を取得し、駆動力の情報に基づいて旋回しているか否かを判定してもよい。
【0248】
(実施の形態5)
本開示の実施の形態5に係る歩行支援ロボットについて説明する。なお、実施の形態5では、主に実施の形態1と異なる点について説明する。実施の形態5においては、実施の形態1と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態5では、実施の形態1と重複する記載は省略する。
【0249】
実施の形態5では、ユーザを誘導する誘導情報を生成する誘導情報生成部を備え、誘導情報に基づいて負荷を設定する点が実施の形態1と異なる。
【0250】
[歩行支援ロボットの制御構成]
図27は、実施の形態5に係る歩行支援ロボット81(以下、「ロボット81」と称する)における主要な制御構成の一例を示す制御ブロック図を示す。
図28は、ロボット81の歩行支援の制御構成の一例を示す制御ブロック図を示す。
【0251】
図27及び
図28に示すように、実施の形態5では、ロボット81が誘導情報生成部29を備える。また、ロボット81は、誘導情報生成部29によって生成された誘導情報に基づいて自律的に移動することによって、ユーザを目的地まで誘導する。
【0252】
本明細書において、誘導情報とは、ロボット81がユーザを目的地まで誘導するための情報であり、例えば、誘導速度、誘導方向、誘導距離などの情報を含む。
【0253】
誘導情報生成部29は、ユーザを目的地まで誘導する誘導情報を生成する。誘導情報生成部29は、誘導情報算出部30、インタラクション部31、自己位置推定部32、及び環境センサ33を備える。なお、実施の形態5において、インタラクション部31及び環境センサ33は、必須の構成ではない。
【0254】
誘導情報算出部30は、ユーザを目的地まで誘導する誘導意図を算出する。誘導情報算出部30は、行き先情報と、ロボット81の自己位置情報と、地図情報と、に基づいて、誘導意図を算出する。誘導情報算出部30によって算出された誘導情報は、駆動力算出部21に送信される。
【0255】
なお、行き先情報は、例えば、目的地、到着時間、歩行ルート、及び目的(例えば、食事、就寝など)などを含む。行き先情報は、例えば、インタラクション部31でユーザから入力することによって取得される。また、ロボット81の自己位置は、自己位置推定部32によって推定される。また、地図情報は、例えば、ロボット81の記憶部(図示なし)に記憶されている。地図情報は、例えば、記憶部に予め格納されていてもよいし、環境センサ33を用いて作成されてもよい。なお、地図情報の作成は、SLAM技術を用いて行うことができる。
【0256】
インタラクション部31は、ユーザが目的地などの行き先情報を入力する装置であり、例えば、音声入力機器、タッチパネルなどで構成される。インタラクション部31で入力された行き先情報は、誘導情報算出部30に送信される。
【0257】
自己位置推定部32は、ロボット81の自己位置を推定する。自己位置推定部32は、例えば、環境センサ33で取得した情報に基づいてロボット81の自己位置を推定する。自己位置推定部32によって推定された自己位置の情報は、誘導情報算出部30に送信される。
【0258】
環境センサ33は、ロボット81の周辺環境についての情報を検出するセンサである。環境センサ33は、例えば、距離センサ、LRF(Laser Range Finder)、LIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)、カメラ、深度カメラ、ステレオカメラ、ソナー、RADARなどのセンサ、GPS(Global Positioning System)もしくはこれらの組合せによって構成され得る。環境センサ33によって取得された情報は、自己位置推定部32に送信される。
【0259】
実施の形態5において、駆動力算出部21は、誘導情報算出部30から取得した誘導情報に基づいて、ロボット81を自律的に駆動するための駆動力を算出する。次に、駆動力算出部21で算出された駆動力の情報に基づいて、アクチュエータ制御部22がアクチュエータ23の駆動制御を行う。アクチュエータ23により回転体18の駆動が行われ、ロボット81が自律的に移動する。ロボット81が自律的に移動することによって、ユーザを目的地まで誘導する。
【0260】
負荷設定部17は、身体情報と、足位置の情報と、誘導情報とに基づいて、ユーザに与える負荷を設定する。例えば、負荷設定部17は、右足のヒラメ筋が左足よりも弱いと判定すると、右足の位置が初期接地及び荷重応答期にあるとき、誘導距離を長くするように負荷を設定する。
【0261】
また、負荷設定部17は、ロボット81が誘導しているか否かを判定し、誘導している場合に負荷を設定する。具体的には、負荷設定部17は、ユーザがロボット81の誘導に従って歩行しているか否かを判定し、ユーザがロボット81の誘導に従って移動している場合に、負荷を設定する。
【0262】
[負荷の設定]
負荷の設定について、
図29を用いて説明する。
図29は、ロボット81の負荷設定処理の例示的なフローチャートを示す。
【0263】
図29に示すように、ステップST81において、負荷設定部17が、身体情報取得部15から身体情報を取得する。
【0264】
ステップST82において、負荷設定部17が、足位置推定部16によって足位置が推定されたか否かを判定する。足位置推定部16によって足位置が推定されている場合、ステップST83へ進む。足位置推定部16によって足位置が推定されていない場合、ステップST82を繰り返す。
【0265】
ステップST83において、負荷設定部17は、ユーザ移動意図推定部20からユーザの移動意図の情報を取得する。
【0266】
ステップST84において、負荷設定部17は、誘導情報算出部30から誘導情報を取得する。
【0267】
ステップST85において、負荷設定部17は、ロボット81が誘導しているか否かを判定する。具体的には、負荷設定部17は、ステップST83で取得したユーザの移動意図(移動方向、移動速度)と、ステップST84で取得した誘導情報(誘導方向、誘導速度)とに基づいて、ユーザがロボット81の誘導に従って歩行しているか否かを判定する。
【0268】
ロボット81が誘導していると判定された場合、ステップST86へ進む。ロボット81が誘導していないと判定された場合、ステップST85を繰り返す。
【0269】
ステップST86において、負荷設定部17は、ステップST81で取得した身体情報と、ステップST82で取得した足位置の情報と、ステップST84で取得した誘導情報とに基づいて、負荷を設定する。
【0270】
図30は、旋回負荷設定の一例を示す。
図30に示すように、負荷情報は、身体情報として、足部の前脛骨筋に注目し、足位置毎に誘導距離を設定している。
図30に示す例では、負荷設定部17は、右足の前脛骨筋が左足よりも弱いと判定する。この場合、負荷設定部17は、歩行時において左足に重心があるときよりも、右足に重心があるときの誘導距離を長くするように、負荷を設定している。
【0271】
[効果]
実施の形態5に係る歩行支援ロボット81によれば、以下の効果を奏することができる。
【0272】
ロボット81によれば、ユーザを誘導しつつ、誘導距離を変更することによってユーザに負荷を与えることができる。このため、ユーザを誘導しながら、身体能力を効率良く向上させることができる。
【0273】
なお、実施の形態5では、負荷として、誘導距離を説明したが、これに限定されない。例えば、負荷は、誘導速度、ハンドル荷重などであってもよい。
【0274】
実施の形態5では、負荷量の設定は、ユーザ毎に設定されている例について説明したが、これに限定されない。例えば、負荷量の設定は、いずれのユーザにも共通する一律の値であってよい。
【0275】
実施の形態5では、身体情報として、足部の筋肉を例として用いたが、これに限定されない。身体情報は、例えば、歩行速度、歩行率、身体の傾き、身体の揺れ、歩幅、筋力などであってもよい。
【0276】
実施の形態5では、負荷設定部17は、身体情報に基づいて、負荷を設定する例について説明したが、これに限定されない。例えば、負荷設定部17は、ユーザの移動意図、負荷対象の筋肉、現在の移動速度、加速度の加速、定速、減速に応じて負荷を設定してもよい。
【0277】
負荷設定部17は、身体情報に基づかず、足位置の情報と、誘導情報とに基づいて、誘導時の負荷を設定してもよい。
【0278】
実施の形態5では、ロボット81が自律的に移動を行い、ユーザを目的地まで誘導する例について説明したが、これに限定されない。例えば、ロボット81は、環状ループ、8の字ループなどのループ状の経路、即ち、目的地を有さないルートにユーザを誘導してもよい。目的地を有さないルートは、所定のエリア内で壁又は障害物などに近づくと任意の角度で旋回するように設定されたルートであってもよい。あるいは、目的地を有さないルートは、カーブの数及び種類、直進の数などだけが設定されており、歩行方向はユーザによって決定されるルートであってもよい。
【0279】
本開示をある程度の詳細さをもって各実施形態において説明したが、これらの実施形態の開示内容は構成の細部において変化してしかるべきものである。また、各実施形態における要素の組合せや順序の変化は、本開示の範囲及び思想を逸脱することなく実現し得るものである。