(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
旅客案内システムは、列車の運行が乱れた場合、計画ダイヤ情報と現在の運行状況に基づいた案内をする際に、計画出発時刻、列車の在線位置および計画出発時刻からの遅延時間を案内することになる。
上記案内では、旅客が、乗車予定の列車をこのまま待つか迂回路へ迂回するかを判断するために必要となる今後の運行見込みに関する情報が不足している。
【0005】
このため、乗車予定の列車を待っていても来なかったケース、計画出発時刻に対する現在の遅延時間を見てホームを離れたところその後早く遅延が回復してホームに戻って来た時には出発した後であったケース、乗車した列車が目的地手前で遅延したため迂回路へ迂回した方が早かったケースなどが発生するに至っている。
【0006】
鉄道事業者は、これらの対応策として、現在の運行状況や運行見込みを駅構内でマイク放送したり、個別に乗客に対して説明したりして対応しているが、駅員等の業務の大きな負担となっている。
そこで、本発明は、列車の運行が乱れた状況下であっても、旅客に対して今後の運行見込みを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、現在の運行状況を反映し今後の運行状況を予測した予測ダイヤ情報と計画ダイヤ情報とを受信して、以下の案内に係る情報を編集して旅客(乗客)に案内表示情報として提供する。
案内1:予測発時刻案内
運行支障が発生した場合、運転再開見込み時刻が確定した時点で、自駅を出発する見込み時分を案内表示装置により案内する。
案内2:運転見合わせ案内
運行支障が発生した場合、運転再開見込み時刻が確定した時点で、自駅より始発方向側の駅に列車が停車していること、およびその列車の出発見込みを、案内表示装置にスクロールメッセージ等により案内する。
案内3:運転抑止予定駅案内
運行支障が発生した場合、運転再開見込み時刻が確定した時点で、自駅より終着方向側の駅に列車が停車する見込みを、案内表示装置にスクロールメッセージ等により案内する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、列車の運行が乱れた際の効率的な経路選択により、目的地までの到着所要時間の短縮を図ること、および、運行乱れ時における鉄道事業者の案内対応業務の負荷を軽減すること、ができることになる。
上述した以外の課題、構成および効果については、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するための形態として、実施例1〜3について、図面を用いて以下に説明する。
【0011】
図1は、本発明に係る旅客案内システムの処理およびデータ関連の構成を示すブロック図である。当該構成は、実施例1〜3において共通するものである。また、本発明に係る旅客案内システムの設置は、駅側でも中央(センター)でもよい。
旅客案内システム50は、
図1に示すとおり、計画ダイヤ情報入力部51から案内表示情報出力部58の各機能部により構成される。
【0012】
計画ダイヤ情報入力部51は、自動進路制御装置10から計画ダイヤ情報20を入力し、計画ダイヤ情報記憶部52に記憶し、また、計画ダイヤ情報20を基に作成した出発順序情報を、出発順序情報記憶部53に記憶する。ここで、自動進路制御装置10は、駅または中央に設置されるもので、駅に設置される場合には、計画ダイヤ情報を、中央の例えばダイヤ管理装置等から受け取るか、駅側で手動や機械による入力等により作成する。
【0013】
予測ダイヤ情報入力部54は、中央の予測ダイヤ配信装置30から一定周期で送信される予測ダイヤ情報40を入力し、予測ダイヤ情報記憶部55に記憶する。
【0014】
計画ダイヤ情報記憶部52は、前日、当日および翌日の計画ダイヤを記憶し、計画に変更があった場合は、その都度変更後の計画ダイヤ情報を受信して反映する。計画ダイヤ情報には、各列車の列車番号と列車種別および各駅の発時刻と着時刻が含まれる。
【0015】
出発順序情報記憶部53は、当日の計画ダイヤから作成され、列車を出発時刻の順に並べた情報を記憶する。
【0016】
予測ダイヤ情報記憶部55は、複数回分として例えば3回分の予測ダイヤ情報を記憶する。ここで、複数回分としたのは、予測ダイヤ情報の受信周期に依存する面もあるところ、受信するデータの確実性を担保するためである。また、予測ダイヤ情報には、運転再開見込み時刻、予測対象列車の予測発時刻と予測着時刻および予測発時刻案内対象列車種別が含まれる。当該情報が無い場合は、情報無を示す「0」が設定される。
【0017】
予測情報編集部56は、予測ダイヤ情報記憶部55から入力した予測ダイヤ情報と計画ダイヤ情報記憶部52から入力した計画ダイヤ情報を基に、予測発時刻案内、運転見合わせ案内および運転抑止予定駅案内情報を作成して、案内表示情報編集部57へ出力する。
【0018】
案内表示情報編集部57は、出発順序情報記憶部53から入力した出発順序情報と予測情報編集部56から入力した予測発時刻案内、運転見合わせ案内および運転抑止予定駅案内情報に基づいて、また必要に応じて予測ダイヤ情報記憶部55から入力した予測ダイヤ情報と計画ダイヤ情報記憶部52から入力した計画ダイヤ情報も用いて、案内表示装置毎の案内表示情報を編集して案内表示情報出力部58へ出力する。
【0019】
案内表示情報出力部58は、案内表示情報編集部57から入力した案内表示装置毎の案内表示情報を、案内表示装置70で表示可能な案内表示情報60に編集して出力する。
【0020】
案内表示装置70は、1台以上の構成を想定し、複数台の場合には、全ての案内表示装置に同一編集内容を出力表示してもよいし、案内表示装置毎にレイアウトや編集内容を変更してもよい。また、案内表示装置70としては、駅構内に設置した表示装置以外にも、旅客者等が所持する携帯情報機器を対象に含めることができる。
【実施例1】
【0021】
実施例1として、予測発時刻案内に係る実施形態について以下に説明する。
図2は、予測発時刻案内の処理手順の一例を示すフローチャートを示す図である。この予測発時刻案内の処理は、予測情報編集部56によって実行される。
【0022】
図2のフローチャートに基づく処理動作について、以下に順に示す。なお、予測情報編集部56が当該処理動作の主体であるところ、以下では主体の表記を省略する。
ステップ100:予測発時刻案内の決定処理を開始する。
【0023】
ステップ120:案内対象の列車の列車番号に対応する計画ダイヤ情報の列車の列車種別を取得し、予測ダイヤ情報記憶部55に記憶している予測発時刻案内対象の列車種別と比較して一致する場合には(YES)、案内対象の列車と判断してステップ130に進み、一致しない場合には(NO)、ステップ170に進む。
【0024】
ステップ130:案内対象の列車の列車番号が予測ダイヤ情報に含まれるか否かを判定し、含まれれば(YES)、ステップ140に進み、含まれなければ(NO)、ステップ170に進む。
【0025】
ステップ140:予測ダイヤ情報において運転再開見込み時刻が決定していない場合、刻々と予測出発時刻が変化してしまい混乱を招くため、予測ダイヤ情報に基づいた案内については、運転再開見込み時刻が決まった場合とする。そこで、予測ダイヤ情報に運転再開見込み時刻が有れば(YES)、ステップ150に進み、無ければ(NO)、ステップ170に進む。
【0026】
ステップ150:現時刻が、運転再開見込み時刻より前であるか否かを判定し、前であれば(YES)、ステップ160に進み、以降であれば(NO)、ステップ170に進む。
【0027】
ステップ160:予測発時刻案内の条件を満たしたため、案内表示装置70に表示する時刻を予測発時刻に決定する。
ステップ170:予測発時刻案内の条件を満たさないため、案内表示装置70に表示する時刻を計画発時刻に決定する。
ステップ180:予測発時刻案内の決定処理を終了する。
【0028】
図3は、案内表示装置の予測発時刻案内表示の一形態を示す図である。
時刻表示領域200は、案内表示する時刻を、予測発時刻に決定した場合に予測発時刻を、計画発時刻に決定した場合に計画発時刻を、表示する。
【0029】
予測表示領域210および220は、案内表示する時刻が予測発時刻に決定した場合に、時刻表示領域200に表示中の時刻が予測発時刻であることを示す(識別する)ための画像を表示する。一例として、表示する画像が、英語表示の場合には時刻表示領域の前に、日本語表示の場合には時刻表示領域の後に、それぞれ表示言語に合わせた表示を行う。
図3に示す例の場合、英語表示は、時刻表示領域の前に「Around」を、日本語表示は、時刻表示領域の後に「頃」を、それぞれ表示する。
図3では、表示言語に応じて時刻表示領域の前後に予測発時刻であることを示す表示態様を採ったが、これに限定されるものではない。
【0030】
設備の故障、旅客の線路への転落事故等により、ある駅で列車の運行が支障した場合に列車の運行に乱れが発生する。支障要因の復旧の目処が立ち、運転再開見込み時刻が決定すると、予測ダイヤ配信装置30から一定周期で配信する予測ダイヤ情報に運転再開見込み時刻を反映した予測ダイヤ情報が配信される。これらの情報を受けて、
図2のフローチャートに従い予測発時刻案内の要否判断を行う。この判断により、予測発時刻案内が要となった場合は、案内表示装置70に対して、自駅の出発見込みである予測発時刻を、遅延回復、遅延拡大および運転再開等が反映された案内として表示する。
【実施例2】
【0031】
実施例2として、運転見合わせ案内に係る実施形態について以下に説明する。
図4は、運転見合わせ案内の処理手順の一例を示すフローチャートを示す図である。この運転見合わせ案内の処理は、予測情報編集部56によって実行される。
【0032】
図4のフローチャートに基づく処理動作について、以下に順に示す。なお、予測情報編集部56が当該処理動作の主体であるところ、以下では主体の表記を省略する。
ステップ300:運転見合わせ案内の決定処理を開始する。
【0033】
ステップ320:計画ダイヤ情報に基づいて、案内対象の列車が、運転見合わせ案内の対象とする列車種別か否かを判定し、対象であれば(YES)、ステップ330に進み、対象でなければ(NO)、ステップ380に進む。
【0034】
ステップ330:案内対象の列車が、予測ダイヤ情報に含まれるか否かを判定し、含まれれば(YES)、ステップ340に進み、含まれなければ(NO)、ステップ380に進む。
【0035】
ステップ340:自駅から始発方向側の駅を自駅から近い順に検索し、まだ検索対象駅が残っていれば(YES)、ステップ342に進み、検索対象駅が残っていなければ(NO)、ステップ380に進む。
【0036】
ステップ342:ステップ340で検索対象となっている駅の停車時間が、既定の停車時間以下か否かを判定し、既定時間以下であれば(YES)、ステップ340に戻り、既定時間より大きければ(NO)、ステップ350に進む。
【0037】
ステップ350:予測ダイヤ情報において運転再開見込み時刻が決定していない場合、支障駅の停車見込み時間が決定しないため、予測ダイヤ情報に基づいた案内については、運転再開の見込みが決まった場合とする。そこで、運転再開見込み時刻が、決定していれば(YES)、ステップ360に進み、決定して無ければ(NO)、ステップ380に進む。
【0038】
ステップ360:現時刻が、運転再開見込み時刻より前であるか否かを判定し、前であれば(YES)、ステップ370に進み、以降であれば(NO)、ステップ380に進む。
【0039】
ステップ370:運転見合わせ案内の条件を満たしたため、案内表示装置70に運転見合わせ案内のスクロールメッセージを出力することに決定する。
ステップ380:運転見合わせ案内の条件を満たさないため、案内表示装置70に運転見合わせ案内のスクロールメッセージを出力しないことに決定する。
ステップ390:運転見合わせ案内の決定処理を終了する。
【0040】
設備の故障、旅客の線路への転落事故等により、自駅より始発方向側の駅で列車の運行に支障が予定される場合、列車の運行が乱れる。支障要因の復旧の目処が立ち、運転再開見込み時刻が決定すると、予測ダイヤ配信装置30から運転再開予定時刻とそれを反映した予測ダイヤ情報が配信される。これらの情報を受けて、
図4のフローチャートに従い運転見合わせ案内の要否判断を行う。この判断により、運転見合わせ案内が要となった場合は、案内表示装置70に対して、自駅から出発する列車が自駅より手前で運転見合わせ中または運転を見合わせる見込みであるかを、スクロールメッセージ等により表示する。
【実施例3】
【0041】
実施例3として、運転抑止予定駅案内に係る実施形態について説明する。
図5は、運転抑止予定駅案内の処理手順の一例を示すフローチャートを示す図である。この運転抑止予定駅案内の処理は、予測情報編集部56によって実行される。
【0042】
図5のフローチャートに基づく処理動作について、以下に順に示す。なお、予測情報編集部56が当該処理動作の主体であるところ、以下では主体の表記を省略する。
ステップ400:運転抑止予定駅案内の決定処理を開始する。
【0043】
ステップ410:実施例2で説明した運転見合わせ案内の実施の有無を判定し、運転見合わせ案内を実施しないのであれば(NO)、ステップ420に進み、運転見合わせ案内を実施するのであれば(YES)、ステップ480に進む。
ここにおいて、ステップ410の判定処理は、実施例2の運転見合わせ案内と実施例3の運転抑止予定駅案内において、両方を同時に表示する態様や時間を前後して両方を表示する態様は、案内表示装置の物理的制約や旅客者への利便性を考慮して対象外とし、その場合に旅客者にとっての情報としては、運転見合わせ案内の方が運転抑止予定駅案内より優先度は高いと想定されることから、組み入れた処理である。技術的には、優先度を逆にして、当該ステップ410の処理を除き、運転抑止予定駅案内の実施の有無の判定を実施例2の運転見合わせ案内のステップ300と301の間に組み込んで処理を行うこと、また、両方の案内を表示させる処理を行うこと、も可能であるのは勿論のことである。
【0044】
ステップ420:案内対象の列車が、運転抑止予定駅案内の対象とする列車種別か否かを判定し、対象であれば(YES)、ステップ430に進み、対象でなければ(NO)、ステップ480に進む。
【0045】
ステップ430:計画ダイヤ情報に基づいて、案内対象の列車が、予測ダイヤ情報に含まれるか否かを判定し、含まれれば(YES)、ステップ440に進み、含まれなければ(NO)、ステップ480に進む。
【0046】
ステップ440:自駅から行先方向側の駅を自駅から近い順に検索し、まだ検索対象駅が残っていれば(YES)、ステップ442に進み、検索対象駅が残っていなければ(NO)、ステップ480に進む。
【0047】
ステップ442:ステップ440で検索対象となっている駅の停車時間が既定の停車時間以下か否かを判定し、既定時間以下であれば(YES)、ステップ440に戻り、既定時間より大きければ(NO)、ステップ450に進む。
【0048】
ステップ450:予測ダイヤ情報において運転再開見込み時刻が決定していない場合、支障駅の停車見込み時間が決定しないため、予測ダイヤ情報に基づいた案内については、運転再開の見込みが決まった場合とする。そこで、運転再開の見込み時刻が、決定していれば(YES)、ステップ460に進み、決定してなければ(NO)、ステップ480に進む。
【0049】
ステップ460:現時刻が、運転再開の見込み時刻より前であるか否かを判定し、前であれば(YES)、ステップ470に進み、以降であれば(NO)、ステップ480に進む。
【0050】
ステップ470:運転抑止予定駅案内の条件を満たしたため、案内表示装置70に運転抑止予定駅案内のスクロールメッセージを出力することに決定する。
ステップ480:運転抑止予定駅案内の条件を満たさないため、案内表示装置70に運転抑止予定駅案内のスクロールメッセージを出力しないことに決定する。
ステップ490:運転抑止予定駅案内の決定処理を終了する。
【0051】
設備の故障、旅客の線路への転落事故等により、自駅より行先方向側の駅で列車の運行に支障が予定される場合、列車の運行が乱れる。支障要因の復旧の目処が立ち、運転再開見込み時刻が決定すると、予測ダイヤ配信装置30から運転再開予定時刻とそれを反映した予測ダイヤ情報が配信される。これらの情報を受けて、
図5のフローチャートに従い運転抑止予定駅案内の要否判断を行う。この判断により、運転抑止予定駅案内が要となった場合は、案内表示装置70に対して、自駅から出発する列車がこの先のどの駅で運転を見合わせる(抑止する)見込みであるかを、スクロールメッセージ等により表示する。
【0052】
以上、実施例1〜3によって本発明の実施形態を説明したが、設備の故障、旅客の線路への転落事故等により列車運行に支障が生じた場合に、実施例1による予測発時刻案内、実施例2による運転見合わせ案内および実施例3による運転抑止予定駅案内を、案内表示装置70に表示する際の表示態様としては、上記支障発生時の状況等によって、上記各案内表示を種々に組み合わせることができる。最も想定されるケースとしては、予測発時刻案内について常時表示を行い、運転見合わせ案内および運転抑止予定駅案内については、上述したように、運転見合わせ案内の方が優先度は高いとして、運転見合わせ案内を優先的に表示し、必要に応じて、運転抑止予定駅案内を表示する。