(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1電圧制御処理にて算出された電圧値と前記第2電圧制御処理にて算出された電圧値とのうち大きい方の電圧値を、前記誘導モータに供給される交流電力の電圧値として決定することを特徴とする請求項2に記載の作業車の走行制御装置。
前記第2電圧制御処理において、前記実回転速度が予め設定された所定回転速度よりも小さく、且つ、前記指令回転速度と実回転速度との間に回転速度差が生じている場合に、当該回転速度差の大きさに応じて前記誘導モータに供給される交流電力の電圧値を増加させることを特徴とする請求項3に記載の作業車の走行制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。
図1に本発明に係る走行制御装置を適用した高所作業車1を示しており、まず、この図を参照して高所作業車1の全体構成について説明する。
【0018】
高所作業車1は、いわゆる垂直昇降式の高所作業車であり、前後左右に設けられた4つのタイヤ車輪11を有して走行可能な走行体10と、走行体10の上部に設けられたシザースリンク機構20と、シザースリンク機構20に支持された作業者搭乗用の作業台30とを主体として構成される。
【0019】
走行体10に設けられた前後左右のタイヤ車輪11のうち、走行体10の前側に配置された左右一対のタイヤ車輪11a,11b(以下、「左側の前輪11a」、「右側の前輪11b」ともいう)が駆動輪且つ操舵輪として構成されている。以下では、説明の便宜上、前輪を「駆動輪」又は「操舵輪」と呼称する場合がある。走行体10は、左右の前輪11a,11bを各々独立に駆動する2つの走行モータ12a,12b(
図2を参照)を内蔵しており、走行モータ12a,12bにより前輪11a,11bをそれぞれ駆動するとともに、これら前輪11a,11bを後述のステアリング装置を介して操舵することにより、所望位置へと走行ができるようになっている。これらの走行モータ12a,12bには、該モータの回転軸を制動ロックする、いわゆるネガティブブレーキ14が一体的に取り付けられている。一方、走行体10の後側に配置された左右一対のタイヤ車輪11c,11d(以下、「左側の後輪11c」、「右側の後輪11d」ともいう)は非駆動輪であり、走行体10の左右の側面より各々突設された軸19(
図3参照)に回転自在に取り付けられている。
【0020】
シザースリンク機構20は、互いの中央部において枢結ピン20bにより枢結されてX字形を形成する2本のリンク部材20aが上下方向及び左右方向(走行体10の車幅方向)に複数組ずつ配設された構成をなしている。上記2本のリンク部材20aのうち、上側に位置するリンク部材20aの下端部と、下側に位置するリンク部材20aの上端部とが
枢結ピン20bにより枢結されており、これらリンク部材の枢結部は左右方向(走行体10の車幅方向)に延びた連結棒20dに連結されている。シザースリンク機構20を構成する最下方のリンク部材20aのうち、走行体10の前方に位置する側の下端部は、走行体10の上部に枢結されており、シザースリンク機構20を構成する最下方のリンク部材20aのうち、走行体10の後方に位置する側の下端部は、走行体10の上部に設けられたレール(図示せず)の上面を転動するローラ20eに連結されている。また、シザースリンク機構20を構成する最上方のリンク部材20aのうち、走行体10の前方に位置する側の上端部は、作業台30の下部に枢結されており、シザースリンク機構20を構成する最上方のリンク部材20aのうち、走行体10の後方に位置する側の上端部は、作業台30の下面に設けられたレール(図示せず)の下面を転動するローラ20fに連結されている。このような構成のシザースリンク機構20は、該リンク機構20と走行体10との間に跨設された昇降シリンダ(油圧シリンダ)21により上下方向に伸縮作動して、その上部に配設された作業台30を昇降移動させることが可能となっている。
【0021】
作業台30には、作業者の転落防止用に設置された手摺り31に、搭乗した作業者が操作する操作装置40が取り付けられている。操作装置40には、走行体10の発進停止及び前進後退の切り替え等を行うための走行操作レバー41と、走行体10の舵取り(すなわち、操舵輪である前輪11a,11bの操舵)操作を行うための操舵ダイヤル42と、作業台30の昇降操作を行うための昇降操作レバー43等が設けられている。作業台30に搭乗した作業者は、走行操作レバー41、操舵ダイヤル42及び昇降操作レバー43等を操作して、走行体10の走行、操舵及び作業台30の昇降を行うことにより、任意の作業位置に移動して所要の作業ができるようになっている。
【0022】
左右の操舵輪(前輪11a,11b)と操舵ダイヤル42とは、
図3に示すように、ステアリング装置を介して連動連結されている。このステアリング装置は、前輪11a,11bに接続された転舵機構13と、この転舵機構13を駆動して前輪11a,11bの舵角γ
L,γ
R(走行体10の前後中心軸に対する前輪11a,11bの偏向角)を変化させる操舵シリンダ(油圧シリンダ)17と、前輪11a,11bの舵角を検出する舵角検出器(例えばポテンショメータ)61と、前輪11a,11bの目標舵角を設定する上記の舵角ダイヤル42と、この舵角ダイヤル42の操作に応じて操舵シリンダ17の作動制御を行うコントローラ50とを備えて構成されている。
【0023】
転舵機構13は、
図3に示すように、前輪11a,11bをキングピン軸15の回りに揺動可能に支持する一対のナックルアーム14と、一対のナックルアーム14に一対の連結ピンP1を介して連結するタイロッド16とを有して構成される。舵角検出器61は、
図3では省略しているが、ナックルアーム14に取り付けられており、キングピン軸15を中心とする回転角から、前輪11a,11bの舵角を検出する。操舵シリンダ17は、一端部が左側のナックルアーム14に連結ピンP2を介して連結され、他端部が走行体10に連結ピンP3を介して連結されている。
【0024】
そのため、上記のステアリング装置では、操舵シリンダ17を伸縮作動させることにより、左側の前輪11aを左側のキングピン軸15の回りに揺動させるとともに、タイロッド16を介して右側の前輪11bを右側のキングピン軸15の回りに左側の前輪11aと同時且つ同方向に揺動させ、前輪(操舵輪)11a,11bの舵角を変化させることができる。つまり、操舵シリンダ17を伸長作動させることにより左右の前輪11a,11bを右方向に偏向させることができ、操舵シリンダ17を収縮作動させることにより左右の前輪11a,11bを左方向に偏向させることができる。
【0025】
このとき、左右の前輪11a,11bは、転舵機構13による走行体10の旋回時に、左側の前輪11aの舵角と右側の前輪11bの舵角とに差が生じるように設定されている
。つまり、左右一対の前輪11a,11bのうち、内輪の舵角が外輪の舵角よりも常に一定の比率で大きくなるように設定されている。この舵角の関係を、
図4を用いて具体的に説明する。以下では、左右の前輪11a,11bが右方向に偏向した状態での舵角の符号を「正」と定義し、左右の前輪11a,11bが左方向に偏向した状態での舵角の符号を「負」と定義する。まず、
図4(A)に示すように、操舵シリンダ17の伸縮量Δが零(Δ=0)のときは、左右の前輪11a,11bの舵角γ
L,γ
Rは共に零となる。
図4(B)に示すように、操舵シリンダ17の伸縮量Δが正値(Δ>0)のとき、すなわち、操舵シリンダ17が伸長作動したときは、左右の前輪11a,11bの舵角γL,γRは正値(γL>0,γR>0)となり、転舵機構13の特性により、左側の前輪11aの舵角γLと右側の前輪11bの舵角γRとの関係は|γL|<|γR|となる。
図4(C)に示すように、操舵シリンダ17の伸縮量Δが負値(Δ<0)のとき、すなわち、操舵シリンダ17が収縮作動したときは、左右の前輪11a,11bの舵角γL,γRは負値(γL<0,γR<0)となり、操舵機構13の特定により、左側の前輪11aの舵角γLと右側の前輪11bの舵角γRとの関係は|γL|>|γR|となる。
【0026】
なお、高所作業車1における旋回中心は、
図6(A)に示すように、後輪11c,11dのほぼ軸線上にあり、前輪11a,11bの舵角に応じて無限遠(舵角ゼロ=直進時)から後輪11c,11d側へ移動する。そして、舵角が最大となったとき、
図6(B)に示すように、右旋回が行われていれば右側の非駆動輪(後輪)11dが旋回中心がとなり、
図6(C)に示すように、左旋回が行われていれば左側の非駆動輪(後輪)11cが旋回中心となるように構成されている。
【0027】
続いて、上記構成の高所作業車1において、操作装置40におけるレバー操作及びダイヤル操作に対応した走行制御、操舵制御及び昇降制御について、
図2及び
図5などを用いて説明する。なお、
図2には、走行体10の走行作動・操舵作動及び作業台30の昇降作動に関する信号及び動力の伝達経路などを示している。
【0028】
操作装置40に備えられた走行操作レバー41は、非操作状態において中立位置(
図5に示す垂直姿勢の位置)にあり、この中立位置を基準として前方或いは後方へ傾動操作することが可能となっている。走行操作レバー41は、上記のように傾動操作された状態から操作者の手が離されると内蔵されたバネの復元力によって中立位置に復帰するようになっている。走行操作レバー41の操作状態(上記の中立位置を基準とする操作方向及び操作量)は、操作装置40内に設けられたポテンショメータ等からなる走行操作検出器41aにより検出され、その検出信号が走行操作レバー41の操作状態に対応した操作指令信号(操作指令情報)として走行体10に設けられたコントローラ50に入力される。
【0029】
走行操作レバー41の中立位置から前方への傾動操作は、走行体10の前進走行指令に相当し、中立位置からの傾動操作量が大きいほど、コントローラ50において前進走行時の指令速度値が高い値に設定される。走行操作レバー41の中立位置から後方への傾動操作は、走行体10の後進走行指令に相当し、中立位置からの傾動操作量が大きいほど、コントローラ50において後進走行時の指令速度値が高い値に設定される。このとき、走行操作レバー41が前方及び後方のいずれの方向に傾動操作される場合においても(すなわち、前進走行指令及び後進走行指令のいずれであっても)、コントローラ50の制御により左右の駆動輪(前輪)11a,11bは無段階に変速するようになっている。なお、走行操作レバー41の中立位置への復帰操作は、走行体10の停止指令(又は減速指令)に相当する。
【0030】
操舵ダイヤル42は、非操作状態において中立位置(
図5に示す如く、操舵ダイヤル41に表示されたマークM1と操作装置40に表示されたマークM2とが一致する位置)にあり、この中立位置を基準として右回り(時計回り)或いは左回り(反時計回り)に捻り
操作することが可能となっている。操舵ダイヤル42は、上記のように捻り操作された状態から作業者の手が離されると、内蔵されたバネの復元力によって中立位置に復帰するようになっている。操舵ダイヤル42の操作状態(上記の中立位置を基準とする操作方向及び操作量)は、操作装置40内に設けられたポテンショメータ等からなる操舵操作検出器42aにより検出され、その検出信号が操舵ダイヤル42の操作状態に対応した操作指令信号(操作指令情報)としてコントローラ50に入力される。
【0031】
操舵ダイヤル42の右回り方向への捻り操作は、前輪11a,11bの右方向への操舵指令に相当し、中立位置からの捻り操作量が大きいほど、コントローラ50において右方向への目標舵角が大きい値に設定される。操舵ダイヤル42の左回り方向への捻り操作は、前輪11a,11bの左方向への操舵指令に相当し、中立位置からの捻り操作量が大きいほど、コントローラ50において左方向への目標舵角が大きい値に設定される。なお、操舵ダイヤル42の中立位置への復帰操作は、左右の前輪11a,11bの舵角を零の状態(γ
L=γ
R=0)に戻す指令、すなわち、走行体10の走行方向を直進方向に戻す指令に相当する。
【0032】
昇降操作レバー43は、非操作状態において中立位置(
図5に示す垂直姿勢の位置)にあり、この中立位置を基準として前方或いは後方へ傾動操作することが可能となっている。昇降操作レバー43は、上記のように傾動操作された状態から操作者の手が離されると内蔵されたバネの復元力によって中立位置に復帰するようになっている。昇降操作レバー43の操作状態(上記の中立位置を基準とする操作方向及び操作量)は、操作装置40内に設けられたポテンショメータ等からなる昇降操作検出器43aにより検出され、その検出信号が昇降操作レバー43の操作状態に対応した操作指令信号(操作指令情報)としてコントローラ50に入力される。
【0033】
昇降操作レバー43の中立位置よりも前方への傾動操作は、作業台30を下方へ移動させる下降指令に相当し、中立位置からの傾動操作量が大きいほど、コントローラ50において作業台30の目標下降速度が高い値に設定される。昇降操作レバー43の中立位置よりも後方への傾動操作は、作業台30を上方へ移動させる上昇指令に相当し、中立位置からの傾動操作量が大きいほど、コントローラ50において作業台30の目標上昇速度が高い値に設定される。なお、昇降操作レバー43の中立位置への復帰操作は、作業台30の停止指令(又は減速指令)に相当する。
【0034】
走行体10には、電動モータMによって駆動される油圧ポンプPが設けられている。その油圧ポンプPから吐出された作動油(圧油)は、操舵制御バルブ71を経由して操舵シリンダ17に供給される。コントローラ50の操舵制御部52は、操舵ダイヤル42の操作方向及び操作量に応じた駆動方向及び駆動量にて操舵制御バルブ71のスプールを電磁駆動させてバルブ開度を変化させ、油圧ポンプPから操舵シリンダ17に供給される作動油の供給方向及び供給量を制御し、操舵シリンダ17の駆動方向及び駆動速度を制御する。
【0035】
同じく、油圧ポンプPから吐出された作動油(圧油)は、昇降制御バルブ72を経由して昇降シリンダ21に供給される。コントローラ50の昇降制御部51は、昇降操作レバー43の操作方向及び操作量に応じた駆動方向及び駆動量にて昇降制御バルブ72のスプールを電磁駆動させてバルブ開度を変化させ、油圧ポンプPから昇降シリンダ21に供給される作動油の供給方向及び供給量を制御し、昇降シリンダ21の駆動方向及び駆動速度を制御する。
【0036】
ここで、各制御バルブ71,72のスプールの駆動方向は、対応する油圧シリンダ(操舵シリンダ17、昇降シリンダ21)の駆動方向に関係し、各制御バルブ71,72のス
プールの駆動量(バルブ開度)は、対応する油圧シリンダ(操舵シリンダ17、昇降シリンダ21)に供給される作動油の流量(単位時間当たりの流量)、すなわち、該油圧シリンダの駆動速度に関係する。そのため、各制御バルブ71,72のスプールの駆動方向が逆になると、対応する油圧シリンダ17,21の駆動方向も逆になり、各制御バルブ71,72のスプールの駆動量が大きくなると、対応する油圧シリンダ17,21の駆動速度も大きくなる。
【0037】
走行体10には、左右の駆動輪11a,11bをそれぞれ独立に駆動する左右の走行モータ12a,12bと、左右の走行モータ12a,12bの実回転速度(実回転数)を検出する回転検出器60,60と、直流電力を蓄電するバッテリBと、バッテリBからの直流電力を交流電力に変換して各走行モータ12a,12bに供給することで各走行モータ12a,12bを駆動するインバータIVとが設けられている。走行モータ12a,12bには、インバータIVにて変換される交流電力により駆動する誘導モータが用いられる。回転検出器60は、例えばロータリエンコーダ等から構成される。バッテリBは、本作業車1の動力源であり、複数の二次電池(例えばリチウムイオン系やニッケル水素系の二次電池)を相互に直列又は並列に接続することで構成されている。インバータIVは、コントローラ50からの指令信号に基づき動作して、当該指令信号(指令周波数及び指令電圧値)に応じた交流電力を各走行モータ12a,12bに供給することで、左右の走行モータ12a,12bを駆動する。また、インバータIVは、左右の走行モータ12a,12bの回生により出力された交流電力を逆変換して、バッテリBに供給する。つまり、バッテリBは、左右の走行モータ12a,12bの力行により放電される一方で、左右の走行モータ12a,12bの回生により充電される。なお、以下の説明において、左側の走行モータ12aと右側の走行モータ12bとを特に区別しない場合は、単に「走行モータ12」と総称する。
【0038】
また、走行体10には、左右の前輪11a,11bのキングピン軸15回りの回動角から前輪11a,11bの舵角を検出する舵角検出器61と、水平面に対する走行体10の前後方向の傾斜角を検出する傾斜角検出器62と、バッテリBの電圧を検出するバッテリ電圧検出器63と、走行モータ12a,12bの巻線温度を検出するモータ温度検出器64と、走行モータ12a,12bの電流を検出するモータ電流検出器65とが設けられている。また、シザースリンク機構20には、昇降シリンダ21の作動速度等から作業台30の昇降速度を検出する昇降速度検出器66と、該リンク機構20が走行体10上に格納された状態であるか否かを検出する格納検出器67とが設けられている。これらの検出器61〜67により検出された各種情報は、いずれもコントローラ50に入力されるようになっている。
【0039】
コントローラ50は、
図2に示すように、昇降制御部51と、操舵制御部52と、走行制御部53とを備えて構成されている。
【0040】
昇降制御部51は、昇降操作検出器43aにより検出された昇降操作レバー43の操作状態(操作方向及び操作量)に対応した操作指令情報が入力されると、その操作指令情報に応じた目標昇降速度を算出し、昇降速度検出器66により検出される作業台30の昇降速度が目標昇降速度と一致するように昇降制御バルブ72のスプールを電磁駆動し、昇降シリンダ21の作動速度をコントロールする。
【0041】
操舵制御部52は、操舵操作検出器42aにより検出された操舵ダイヤル42の操作状態(操作方向及び操作量)に対応した操作指令情報が入力されると、その操作指令情報に応じた方の前輪(操舵輪)11a,11bの目標舵角を設定し、この前輪(操舵輪)11a,11bに設けられた舵角検出器61により検出される舵角が目標舵角と一致するように操舵制御バルブ71のスプールを電磁駆動し、操舵シリンダ17の伸縮量をコントロー
ルする。
【0042】
走行制御部53は、走行操作検出器41aにより検出された走行操作レバー41の操作状態(操作方向及び操作量)に対応した操作指令情報が入力されると、その操作指令情報に応じた回転速度及び回転方向で左右の走行モータ12a,12bが共通して回転駆動するように、インバータIVに対して周波数指令と電圧値指令とを行い、インバータIVの作動を制御する。ここで、本実施形態では、2基の走行モータ12a,12bを1台のインバータIVで駆動する、いわゆる1インバータ−2モータ式の制御を実現している。そのため、左右の走行モータ12a,12bは、1台のインバータIVの制御によって、同一周波数及び同一印加電圧のもとで駆動する。なお、前述のとおり、左右の走行モータ12a,12bには回転検出器60,60がそれぞれ取り付けられ、各走行モータ12a,12bの実回転速度(実回転数)をそれぞれ検出可能となっているが、本実施形態では、左側の走行モータ12aの実回転速度と右側の走行モータ12bの実回転速度とのうち、低速の方の実回転速度に基づき、高所作業車1の走行制御(指令周波数制御及び指令電圧値制御)が行われる。従って、以下において、「実回転速度」とは、左側の走行モータ12aの実回転速度と右側の走行モータ12bの実回転速度とのうち、低速の方の実回転速度を意味する。そして、走行制御部53は、指令回転速度と実回転速度との間の回転速度差(以下、「回転偏差」という)を算出して、これを指令周波数制御(指令回転速度制御)及び指令電圧値制御のパラメータとして用いる。
【0043】
走行制御部53は、V/f制御方式に従って、指令周波数及び指令電圧値を同時に可変制御する。走行制御部53は、指令周波数(指令回転速度)を制御する周波数制御部54と、指令電圧値を制御する電圧制御部55とを備えており、周波数制御部54において算出された指令周波数と、電圧制御部55において算出された指令電圧値とを、インバータIVに出力する。
【0044】
ここで、走行モータ12(12a,12b)の回転速度は、指令周波数(インバータIVで変換される交流電力の周波数)に比例する。また、走行モータ12の出力トルクは、走行モータ12に供給する交流電力の電圧値(又は電流値)に比例する。そのため、本実施形態では、V/f制御方式に従って、インバータIVに出力する指令周波数及び指令電圧値を制御することで、走行モータ12の回転速度及び出力トルクを任意に調節することが可能である。
【0045】
<指令周波数制御/指令回転速度制御>
周波数制御部54は、走行操作検出器41aからの操作指令情報に基づき、その操作指令情報(走行操作レバー41の操作量)に応じた指令回転速度(指令周波数)を算出する。ここで、走行モータ(誘導モータ)12は、そのモータ固有の特性に応じて、指令回転速度と実回転速度との間の回転偏差が一定範囲(0〜300rpm)以内にあるときにモータ効率(運転効率)が良い。そこで、周波数制御部54は、その回転偏差が予め設定された規定値(本実施形態では300rpm)以内にある場合は、走行操作レバー41による操作指令情報に応じた回転速度を指令回転速度として設定する。一方、周波数制御部54は、その回転偏差が規定値(300rpm)を超過した場合は、フィードバック制御として、回転偏差が上記規定値に収束するように指令回転速度(操作指令情報に応じた回転速度)を補正する。すなわち、周波数制御部54は、実回転速度が指令回転速度よりも規定値を超過して遅れた場合又は速くなった場合には、当該周波数制御部54に記憶された回転速度補正テーブルTNを参照して、指令回転速度を操作指令情報に応じた回転速度よりも遅い回転速度に補正していく。
【0046】
このとき、周波数制御部54は、回転速度補正テーブルTNを参照して、指令回転速度の補正値を算出する。
図7は、回転速度補正テーブルTNを示す模式図である。回転速度
補正テーブルTNには、回転偏差と補正値との対応関係が規定されている。
図7において、横軸は回転偏差であり、縦軸は指令回転速度の補正値である。
図7に示すように、指令回転速度と実回転速度との回転偏差が規定値ΔN
K(300rpm)以内にあるときは、
指令回転速度の補正値は零である。一方、回転偏差が規定値ΔN
K(300rpm)を超
過した場合には、指令回転速度の補正値として、一定の補正値H
N(300rpm)が設
定される。そのため、周波数制御部54は、回転偏差が規定値ΔN
K(300rpm)を
超過した場合には、実回転速度に一定の補正値H
N(300rpm)を加算して得た回転
速度を、指令回転速度として決定することで、指令回転速度と実回転速度との間の回転偏差を規定値ΔN
K(300rpm)に維持する。つまり、補正後の指令回転速度は、実回
転速度に補正値H
N(300rpm)を加算した回転速度となる。但し、上記補正後の指
令回転速度が予め設定された限界値(例えば100rpm)を超える場合は、回転偏差が更に増大する場合であっても、指令回転速度を限界値で維持する。その理由としては、回転速度が限界値を超えると、現在の指令電圧値に係るトルク線図のアウトラインから動作点が低トルク側へと外れていき、それに伴い出力トルクも低下してしまう虞があるからである。なお、周波数制御部54は、上記のように指令回転速度(指令周波数)を補正した結果、実回転速度が上昇して、その回転偏差が規定値ΔN
K(300rpm)以内に復帰
してきた場合は、指令回転速度を操作指令情報に応じた回転速度に徐々に戻していく。
【0047】
ここで、
図8は、走行モータ12の回転速度と出力トルクとの関係を示すトルク線図である。
図8において、横軸は回転速度(周波数)であり、縦軸は出力トルクである。なお、説明の便宜上、ここでは指令電圧値の補正については説明を省略するが、実際には指令回転速度(指令周波数)の補正と同時に、指令電圧値の補正も行われる。
図8に示すように、まず、指令回転速度がN
1(例えば2500rpm)となる動作線C
1上において、走行モータ12は出力トルクと負荷トルクとが一致した適切な動作点(点a)で駆動している。この動作点(点a)において、指令回転速度と実回転速度(点aでの実回転速度)との回転偏差は規定値ΔN
K(300rpm)以内を推移している。ここで、例えば、平坦
路から傾斜路に進入するなどして、走行モータ12の負荷トルクが増大すると、走行モータ12の実回転速度が低下して、動作線C
1上において動作点が点aから低速側(高トル
ク側)へと移動する。このとき、従来の回転速度制御では、高所作業車1が傾斜路にて逸走又は停止しないように、走行モータ12の動作線及び動作点を最大トルクが出せる動作線及び動作点まで移動させていたため、走行速度が急激に落ちるとともに、無駄な電力を消費していた。これに対して、本実施形態では、指令回転速度と実回転速度との間の回転偏差が規定値ΔN
K(300rpm)を超過した場合に、指令回転速度を補正するように
なっている。つまり、回転偏差が規定値ΔN
K(300rpm)を超過した場合には、実
回転速度に一定の補正値H
N(300rpm)を加算して得た指令回転速度に補正するこ
とで、該指令回転速度を徐々に遅くしていき(操作指令に応じた回転速度よりも遅くしていき)、回転偏差が規定値ΔN
K(300rpm)に収束するようにフィードバック制御
を行うようになっている。それにより、図示省略するが、補正後の指令回転速度に応じた動作線に順次切り替わり、その動作線上でより高い出力トルクが得られる動作点に移動する。従って、走行モータ12のモータ特性を最大限に発揮した細やかな走行制御が実現できる。そして、指令回転速度がN
2となる動作線C
2に切り替わり、走行モータ12の出力トルクが負荷トルクと一致した適切な動作点(点b)に移動することで、指令回転速度と実回転速度(点bでの実回転速度)との回転偏差が規定値ΔN
Kまで回復することになる
。このような回転速度補正を行うことにより、無駄な電力を消費することなく、且つ、走行速度を急激に落とすことなく、上記傾斜路で高所作業車1を走行させることが可能となる。
【0048】
<指令電圧値制御>
電圧制御部55は、予め設定されたV/fパターンを参照して、上記決定した指令周波数(指令回転速度)に応じた指令電圧値を算出する。ここで、電圧制御部55には、指令
周波数(指令回転速度)と指令電圧値との関係を規定した複数種のV/fパターン(V/fパターンテーブル)が記憶されている。電圧制御部55は、後述の電圧制御処理にて算出したV/f特性比率に応じて、複数種のV/fパターンの中からいずれかのV/fパターンを選択する。そして、電圧制御部55は、選択したV/fパターンを参照して、指令周波数に応じて算出した電圧値を指令電圧値として決定する。
【0049】
ここで、電圧制御部55には、指令周波数(指令回転速度)に対して、電圧値の使用範囲(最大電圧値V
max、最小電圧値V
min)が設定されている。最大電圧値V
maxとは、モ
ータの設計値で決まる定常電圧値であり、最小電圧値V
minとは、指令回転速度で走行す
るのに必要となる最小の電圧値である。この電圧値の使用範囲(最大電圧値V
max、最小
電圧値V
min)は、指令周波数(指令回転速度)に応じて異なり得るものとなっている。
【0050】
図9はV/fパターンの一例を示す模式図である。V/fパターンは、指令周波数と指令電圧値との関係を示す関数であり、読み出し又は参照するのに適した形式で、数値化、テーブル化、或いはマップ化されて保持されている。V/fパターンは、所定周波数に達するまではV/f(電圧/周波数)が一定となり、所定周波数以上になるとV(電圧)が一定となる。本実施形態では、最小電圧値V
minをV/f特性比率として「0%」、最大
電圧値V
maxをV/f特性比率として「100%」と定義し、上記電圧値の使用範囲(V
min〜V
max)内において各電圧値に対応するV/f特性比率を設定している。
【0051】
本実施形態では、V/f特性比率に応じた複数種のV/fパターンが用意されている。具体的には、V/f特性比率として0%〜100%のV/fパターンが用意されており、後述の電圧制御処理(第1電圧制御処理、第2電圧制御処理)にてV/f特性比率が算出されると、このV/f特性比率に応じたV/fパターンが選択されるようになっている。つまり、V/f特性比率とV/fパターンとが1対1の対応関係で記憶されており、後述の電圧制御処理(第1電圧制御処理、第2電圧制御処理)にて算出されたV/f特性比率に応じてV/fパターンが一義的に決定される。そして、後述の電圧制御処理では、V/f特性比率をパラメータとして指令電圧値の設定又は補正を行う。なお、上記の複数種のV/fパターンにおいては、V/f特性比率の大きいV/fパターンが選択されるほど、同一の指令周波数に対応する指令電圧値が大きくなるように設定されている。そのため、同一の指令周波数のもとでは、V/f特性比率を大きくするほど指令電圧値も大きくすることができ、V/f特性比率を小さくするほど指令電圧値も小さくすることができる。よって、V/f特性比率を増減することは、指令電圧値(出力電圧値)を増減することと同義である。
【0052】
電圧制御部55は、第1電圧制御処理と第2電圧制御処理とを同時並行して行い、現在の走行状態に適合した最適な指令電圧値を決定する。この電圧制御部55には、上記の電圧制御処理においてV/f特性比率を算出するための複数種の電圧制御テーブルTV
1〜
TV
5が記憶されている。電圧制御部55は、該高所作業車1に設けられた各種の検出器
からの検出情報に基づき、これらの電圧制御テーブルTV
1〜TV
5を参照して、個々の電圧制御処理ごとにV/f特性比率を算出する。そして、電圧制御部55は、第1電圧制御処理にて算出したV/f特性比率と、第2電圧制御処理にて算出したV/f特性比率とを比較した結果、大きい方のV/f特性比率を最適値として選択する。
【0053】
≪第1電圧制御処理≫
第1電圧制御処理は、主として通常走行時に適した電圧制御処理である。電圧制御部55は、第1電圧制御処理として、傾斜角検出器62において検出された走行体10の傾斜角度と、指令回転速度と実回転速度との間の回転偏差と、をパラメータ(変数)として、V/f特性比率を算出する。
【0054】
まず、電圧制御部55は、電圧制御テーブルTV
1を参照して、V/f特性比率の補正
値(以下「補正値A」という)を算出する。
図10は、電圧制御テーブルTV
1を示す模
式図である。電圧制御テーブルTV
1には、傾斜角度と補正値Aとの対応関係が規定され
ている。
図10において、横軸は傾斜角度であり、縦軸はV/f特性比率の補正値Aである。この補正値Aは、傾斜角検出器62にて検出される走行体10の傾斜角度に応じて算出される。具体的には、
図10に示すように、傾斜角度がθ
A以下であるときは、傾斜角
度と補正値Aとが比例関係となり、傾斜角度に比例した大きさの補正値Aが設定される。傾斜角度がθ
Aを超えたときは、常に、補正値AとしてH
A(例えば100%)が設定される。なお、傾斜角度θ
Aは適宜に設定が可能であるが、例えば、θ
Aは「10度」である。
【0055】
続いて、電圧制御部55は、電圧制御テーブルTV
2を参照して、V/f特性比率の補
正値(以下「補正値B」という)を算出する。
図11は、電圧制御テーブルTV
2を示す
模式図である。電圧制御テーブルTV
2には、回転偏差と補正値Bとの対応関係が規定さ
れている。
図11において、横軸は回転偏差であり、縦軸はV/f特性比率の補正値Bである。このとき、走行モータ(誘導モータ)12は、前述したとおり、そのモータ固有の特性に応じて、指令回転速度と実回転速度との回転偏差が一定範囲(本実施形態では0〜300rpm)以内にあるときにモータ効率が良く、特に、回転偏差が最適値(本実施形態では200rpm)と一致するときにモータ効率が最良となる。そのため、電圧制御部55は、回転偏差と最適値(200rpm)との差分に基づき、V/f特性比率の補正値Bを算出する。具体的には、
図11に示すように、回転偏差とV/f特性比率の補正値Bとは比例関係にあり、回転偏差と最適値ΔN
Aとの差分に比例した大きさの補正値B(H
B1〜H
B2)が設定される。補正値Bの一例として、H
B1は「−50%」であり、H
B2は「
50%」である。このとき、回転偏差が最適値ΔN
Aと一致する場合は、補正値Bは零と
なる。一方、回転偏差が最適値ΔN
Aよりも小さい(モータ負荷が小さい)ときは、その
差分に応じた負の補正値B(電圧を下げる方向に作用する補正値)が設定される。反対に、回転偏差が最適値ΔN
Aよりも大きい(モータ負荷が大きい)ときは、その差分に応じ
た正の補正値B(電圧を上げる方向に作用する補正値)が設定される。なお、回転偏差が所定値ΔN
B(例えば500rpm)を超えると、常に、補正値BはH
B2となる。
【0056】
そして、電圧制御部55は、第1電圧制御処理の結果値として、V/f特性比率の補正値Aと補正値Bとを加算して、V/f特性比率の累計値(以下「V/f特性比率α」という)を算出する。例えば、V/f特性比率の補正値Aが「30%」、V/f特性比率の補正値Bが「10%」である場合は、その累計値(V/f特性比率α)は「40%」となる。但し、本実施形態では、V/f特性比率αの上限値を「100%」に設定しており、V/f特性比率αが該上限値(100%)を超過した場合には、その超過分は切り捨てる。
【0057】
ここで、第1電圧制御処理では、回転偏差が最適値(200rpm)を超過した場合に、電圧補正を行い、走行モータ12の出力トルクを調節する。一方、前述の周波数制御処理(回転速度制御処理)では、回転偏差が規定値(300rpm)を超過した場合に、周波数補正(回転速度補正)を行い、走行モータ12の出力トルクを調節する。すなわち、走行モータ12の出力トルクを調節するために、電圧補正は回転偏差が最適値(200rpm)を超えた時点で行われるが、その時点では周波数補正は行われず、該周波数補正は回転偏差が規定値(300rpm)を超えたときに行われる。つまり、本実施形態では、周波数補正よる出力トルクの調節よりも、電圧補正による出力トルクの調節を優先している。その理由としては、指令周波数を補正すると、それに伴い該作業車1の走行速度(走行モータ12の回転速度)も変化してしまうため、先ずは指令周波数を変えずに指令電圧値を優先して補正することで、これに搭乗した作業者に何の違和感を与えることなく該作業車1を走行させることができるからである。
【0058】
≪第2電圧制御処理≫
第2電圧制御処理は、主として段差の走行時に適した電圧制御処理である。ここで、上り段差では高い出力トルクを確保する必要があり、また、下り段差では車両が加速するのを制動するとともに十分な回生トルクを確保する必要がある。しかしながら、路面上における段差の存在は走行体10の傾斜角度では判断できない場合があり(特に、路面上に段差が存在していても、その路面自体が平坦地の場合には走行体の傾斜角度は微小となるため)、前述の第1電圧制御処理では段差の走行において十分な出力電圧(出力トルク)を確保できないおそれがある。このとき、上り段差を進めない場合には、実回転速度が指令回転速度に追従できず、実回転速度が小さく且つ回転偏差が大きくなる傾向にある。また、下り段差を走行する際(走り出し時)は、低速操作やインチング操作などにより、指令回転速度が小さく且つ実回転速度も小さくなる傾向にある。そこで、電圧制御部55は、これらの特性を利用し、第2電圧制御処理として、実回転速度、指令回転速度及び回転偏差をパラメータ(変数)として、V/f特性比率を算出する。
【0059】
電圧制御部55は、走行モータ12の実回転速度が低速域にある場合に、電圧制御テーブルTV
3を参照して、V/f特性比率の補正値(以下「補正値C」という)を算出する
。
図12は、電圧制御テーブルTV
3を示す模式図である。電圧制御テーブルTV
3には、実回転数と補正値Cとの対応関係が規定されている。
図12において、横軸は実回転速度であり、縦軸はV/f特性比率の補正値Cである。この補正値Cは、回転検出器60にて検出される実回転速度に応じて算出される。具体的には、
図12に示すように、実回転速度がN
A(例えば250rpm)に達するまでは、常に、補正値CとしてH
C(例えば50%)が設定される。また、実回転速度がN
A以上且つN
B以下となる場合は、実回転速度の大きさに比例した補正値Cが設定される。そして、実回転速度がN
B(例えば500rp
m)を超えると、常に、補正値Cは零となる。
【0060】
電圧制御部55は、走行モータ12の指令回転速度が低速域にある場合(走行操作レバー41の操作量が微小である場合)に、電圧制御テーブルTV
4を参照して、V/f特性
比率の補正値(以下「補正値D」という)を算出する。
図13は、電圧制御テーブルTV
4を示す模式図である。電圧制御テーブルTV
4には、指令回転速度と補正値Dとの対応関係が規定されている。
図13において、横軸は指令回転速度であり、縦軸はV/f特性比率の補正値Dである。この補正値Dは、走行操作レバー41の操作状態(操作量)に応じて設定される指令回転速度に応じて算出される。具体的には、
図13に示すように、指令回転速度がN
A(例えば250rpm)に達するまでは、常に、補正値DとしてH
D(例えば50%)が設定される。また、指令回転速度がN
A以上且つN
B以下となる場合は、指令回転速度の大きさに比例した補正値Dが設定される。そして、指令回転速度がN
B(例え
ば500rpm)を超えると、常に、補正値Dは零となる。
【0061】
電圧制御部55は、指令回転速度と実回転速度との間に回転偏差が生じている場合に、電圧制御テーブルTV
5を参照して、V/f特性比率の補正値(以下「補正値E」という
)を算出する。
図14は、電圧制御テーブルTV
5を示す模式図である。電圧制御テーブ
ルTV
5には、回転偏差と補正値Eとの対応関係が規定されている。
図14において、横
軸は回転偏差であり、縦軸はV/f特性比率の補正値Eである。V/f特性比率の補正値Eは、走行操作レバー41の操作状態(操作量)に応じて設定される指令回転速度と、回転検出器60にて検出される実回転速度との間の回転偏差に応じて算出される。具体的には、
図14に示すように、回転偏差が所定値ΔN
Cに達するまでは、回転偏差と補正値E
とは比例関係にあり、回転偏差に比例した大きさの補正値Eが設定される。一方、回転偏差が所定値ΔN
C以上になると、常に、補正値EはH
E(例えば100%)となる。本実施形態では、所定値ΔNcとして、走行モータ12の定格回転速度(3500rpm)と同一の値(3500rpm)が設定されている。そのため、この電圧制御テーブルTV
5は
、指令回転速度が定格回転速度で実回転速度が零である場合(回転偏差=3500rpm)をも想定した設計となっている。なお、この第2電圧制御処理では、走行モータ12の
運転効率よりも走破性を優先するため、回転偏差が上記の最適値(200rpm)と一致する場合であっても、V/f特性比率の補正値Eとして一定の値が加算されるようになっている。
【0062】
電圧制御部55は、第2電圧制御処理の結果値として、V/f特性比率の補正値C〜補正値Eを合算して、V/f特性比率の累計値(以下「V/f特性比率β」という)を算出する。例えば、V/f特性比率の補正値Cが「10%」、V/f特性比率の補正値Dが「40%」、V/f特性比率の補正値Eが「30%」である場合は、その累計値としてV/f特性比率βは「80%」となる。但し、本実施形態では、V/f特性比率βの上限値を「100%」に設定しており、V/f特性比率βが該上限値(100%)を超過した場合には、その超過分は切り捨てる。
【0063】
電圧制御部55は、第1電圧制御処理にて算出したV/f特性比率αと、第2電圧制御処理にて算出したV/f特性比率βとを比較して、その大きい方のV/f特性比率を適正値として決定し、この適正値(V/f特性比率=0〜100%)に対応したV/fパターンを選択する。そして、電圧制御部55は、選択したV/fパターンを参照して、周波数制御部54にて算出した指令周波数に対応した電圧値を指令電圧値として決定する。具体的に、指令電圧値は、上記算出したV/f特性比率と、指令周波数(指令回転速度)に応じて設定された最小電圧値V
min及び最大電圧値V
maxとに基づき、下記の式(1)により算出される。
指令電圧値=(V
max−V
min)×V/f特性比率+V
min・・・(1)
【0064】
走行制御部53は、周波数制御部54において決定された指令周波数情報(指令回転速度情報)と、電圧制御部55において決定された指令電圧値情報とをインバータIVに出力する。そして、インバータIVは、走行制御部53からの指令情報(指令周波数情報、指令電圧値情報)に基づきスイッチング制御されることで、その指令周波数及び指令電圧値に応じた交流電力を生成して、これを左右の走行モータ12a,12bに供給する。
【0065】
このように本実施形態では、高所作業車1の走行状態に応じて、V/f特性比率α,βのうちの一方がV/f特性比率の適正値として決定される。上記の電圧制御テーブルTV
1〜TV
5の設定値は、基本的に、通常の走行時等においてはV/f特性比率αの方がV/f特性比率βよりも大きくなり、段差の走行時や走行操作の開始時等においてはV/f特性比率βの方がV/f特性比率αよりも大きくなるように設定されている。
【0066】
例えば、高所作業車1が或る程度の走行速度(中速域、高速域)で定常走行している場合、基本的には、低速域での電圧補正を対象とする補正値C,Dは共に零又は微小値となり、加えて、回転偏差も小さければ(ほぼ操作指令通りに走行できていれば)、補正値Eも小さくなることで、V/f特性比率αの方がV/f特性比率βよりも大きくなる。その場合は、走行体10の傾斜角度に応じて設定される補正値Aに、回転偏差と最適値との差分に応じて算出される補正値Bが加算されることで、常にモータ効率が最適となる動作点で走行モータ12を駆動することができる。
【0067】
また、高所作業車1が上り段差に進入する際に、指令回転速度を上げていっても段差を乗り越えることができない場合には、実回転速度が指令回転速度に追従できずに、その回転偏差が増大していくことで、補正値C,Eが大きくなっていくため、V/f特性比率βの方がV/f特性比率αよりも大きくなる。このとき、V/f特性比率αについては、平坦地において走行体10の傾斜角度が変化しなければ補正値Aも変わらず、また、回転偏差が所定値(ΔN
2=500rpm)を超えてしまうと補正値Bも常に一定となるので、
走行モータ12の出力トルクがそれ以上増加する見込みはない。一方、V/f特性比率βについては、操作者が走行操作レバー41の操作量を大きくするほど、指令回転速度に実
回転速度が追従できず、その回転偏差が増していくため、該回転偏差が上限値(定格回転速度に相当する回転偏差)に達するまで、補正値Eが漸次増加していく。従って、上記のとおり、V/f特性比率βの方がV/f特性比率αよりも大きくなり、操作者の操作意図に対応した電圧補正が可能となる。それにより、操作レバー41の操作量に応じて走行モータ12の出力トルクも増大していき、最終的には、上記の上り段差を乗り越えることが可能となる。
【0068】
また、高所作業車1が下り段差に進入する際に、走行操作を開始した場合やインチング操作を行った場合には、指令回転速度及び実回転速度が低速域にあるため、補正値C,Dが大きくなり、V/f特性比率βの方がV/f特性比率αよりも大きくなる。このとき、V/f特性比率αについては、平坦地において走行体10の傾斜角度が変化しなければ補正値Aは変わらず、また、この操作開始の状況ではモータ負荷も軽く、回転偏差が小さければ補正値Bも小さくなるため、走行モータ12の出力トルクがそれ以上増加する見込みはない。一方、V/f特性比率βについては、指令回転速度及び実回転速度が低速域にあるため、補正値C,Dは常に上限の値(例えば50%)に維持される。従って、上記のと
おり、V/f特性比率βの方がV/f特性比率αよりも大きくなるため、走行モータ12の出力トルクを通常時よりも高めて、下り段差において高所作業車1の自重により走行モータ12が加速してしまうのを効果的に制動することが可能となる。
【0069】
また、上りの傾斜面で高所作業車1が動き出す場合、例えば10度以上の急傾斜であれば、V/f特性比率の補正値Aが最大値(例えば100%)となるため、V/f特性比率αの方がV/f特性比率βよりも大きくなる。他方、路面が緩い傾斜であれば、高所作業車1の動き出し時には、指令回転速度及び実回転速度が低速域にあり、補正値C,Dが共に上限値(例えば50%)となるため、V/f特性比率βの方がV/f特性比率αよりも大きくなる。このように、高所作業車1の動き出し時には、その路面の傾斜角度によらず、常に、走行モータ12の出力トルクを高めることができるため、高所作業車1が傾斜面で逸走してしまう事態を防止することができる(走行モータ12が操作指令方向に対して逆転してしまう事態を防止することができる)。
【0070】
次に、本実施形態における高所作業車1の走行制御処理の手順について説明する。
図15は、本実施形態における高所作業車1の走行制御処理の手順を示すフローチャートである。
【0071】
まず、高所作業車1において、作業台30に搭乗した作業者により走行操作レバー41が傾動操作されると、その操作指令情報がコントローラ50の走行制御部53に入力される(ステップS1)。コントローラ50の周波数制御部54は、入力された操作量に応じた指令回転速度(指令周波数)を算出する(ステップS2)。
【0072】
ここで、高所作業車1の走行中は、走行モータ12の実回転速度(実回転数)が回転検出器60により検出されており、この実回転速度情報が走行制御部53に入力される(ステップS3)。走行制御部53は、上記ステップS1にて算出された指令回転速度と、上記ステップS3にて入力された実回転速度との差分を回転偏差として算出する(ステップS4)。
【0073】
続いて、周波数制御部54は、回転速度制御テーブルTNを参照して、上記ステップS4にて算出された回転偏差と予め設定された規定値(300rpm)とを比較して、その回転偏差が規定値を超過する場合には、指令回転速度の補正値として、一定の補正値H
N
を設定する(ステップS5)。そして、周波数制御部54は、回転偏差が規定値を超過している場合は、上記ステップS3にて入力した実回転速度に、上記S5にて設定した補正値を加算して得た回転速度を、インバータIVに指示する最終的な指令回転速度として決
定する(ステップS6)。なお、回転偏差が規定値を超過していない場合は、上記ステップS2にて算出した指令回転速度をそのまま維持する(ステップS6)。
【0074】
また、走行制御部53は、傾斜角検出器62により検出された走行体10の傾斜角度を入力する(ステップS7)。電圧制御部55は、電圧制御テーブルTV
1を参照して、上
記ステップS7にて入力した走行体10の傾斜角度に基づき、V/f特性比率の補正値Aを算出する(ステップS8)。次いで、電圧制御部55は、電圧制御テーブルTV
2を参
照して、上記ステップS4にて算出した回転偏差と、予め設定された最適値(200rpm)とを比較して、その差分に応じたV/f特性比率の補正値Bを算出する(ステップS9)。そして、電圧制御部55は、上記ステップS8にて算出したV/f特性比率の補正値Aに、上記ステップS9にて算出したV/f特性比率の補正値Bを加算する(ステップS10)。電圧制御部55は、上記加算した結果、その累計値をV/f特性比率αとして算出する(ステップS11)。
【0075】
また、電圧制御部55は、電圧制御テーブルTV
3を参照して、上記ステップS3にて
入力した実回転速度に基づき、V/f特性比率の補正値Cを算出する(ステップS12)。また、電圧制御部55は、電圧制御テーブルTV
4を参照して、上記ステップS2にて
算出した指令回転速度に基づき、V/f特性比率の補正値Dを算出する(ステップS13)。さらに、電圧制御部55は、電圧制御テーブルTV
5を参照して、上記ステップS4
にて算出した回転偏差に基づき、V/f特性比率の補正値Eを算出する(ステップS14)。そして、電圧制御部55は、上記ステップS12〜S14にて算出したV/f特性比率の補正値C,D,Eを加算する(ステップS15)。電圧制御部55は、上記加算した結果、その累計値をV/f特性比率βとして算出する(ステップS16)。
【0076】
続いて、電圧制御部55は、第1電圧制御処理(上記ステップS8〜S11)にて算出したV/f特性比率αと、第2電圧制御処理(上記ステップS12〜S16)にて算出したV/f特性比率βとを比較する(ステップS17)。そして、電圧制御部55は、上記ステップS17での比較の結果、V/f特性比率α,βのうち、大きい方のV/f特性比率を適正値として決定する(ステップS18)。
【0077】
次いで、電圧制御部55は、上記ステップS18にて決定したV/f特性比率(0〜100%)に応じたV/fパターンを選択し、その選択したV/fパターンを参照して、上記ステップS6にて決定した指令周波数(指令回転速度)に応じた指令電圧値を決定する(ステップS19)。
【0078】
走行制御部53は、上記ステップS6にて決定した指令周波数(f)と、上記ステップS19にて決定した指令電圧値(V)とを、インバータIVに出力する(ステップS20)。以降、所定の周期ごとに、上記ステップS1〜S20の動作処理が繰り返し実行されることで、高所作業車1の走行制御処理が適切に行われ、作業者の操作意図に合致した違和感のない、安全且つ優れた走行性能を実現している。
【0079】
以上、本実施形態によれば、走行操作レバー41の操作により設定される指令回転速度と、回転検出器60により検出される実回転速度との回転偏差を算出し、該回転偏差と予め設定された最適値との差分に応じて走行モータ12に供給される交流電力の電圧値を補正することで、走行モータ12を常に効率の良い動作点で駆動することができるため、高所作業車1の走行性能を維持しつつ、走行モータ12及びインバータIVの発熱を抑制して、バッテリBの消費電力を低減することが可能となる。
【0080】
また、本実施形態によれば、指令回転速度と実回転速度との間の回転偏差が予め設定された規定値を超過した場合に、従来のように走行モータの指令回転速度を最大トルクを出
力し得る回転速度まで落とすことなく、回転偏差が規定値に維持されるように、指令回転速度を補正するフィードバック制御を行うため、走行モータ12の特性を最大限に発揮したかたちで、高所作業車1の走破性を向上させることが可能となる。
【0081】
さらに、本実施形態によれば、互いに電圧制御のパラメータを異にする第1電圧制御処理及び第2電圧制御処理を選択的に実行することで、高所作業車1の走行状態に応じた電圧制御として、路面状況に適した電圧制御を成立させることが可能となる。
【0082】
加えて、本実施形態によれば、第1電圧制御処理にて算出されるV/f特性比率αと、第2電圧制御処理にて算出されるV/f特性比率βとを比較して、その大きい方のV/f特性比率に基づき走行モータ12に供給される交流電力の電圧値を決定することで、高所作業車1の走行状態に応じた最適な出力電圧を走行モータ12に供給することが可能となる。
【0083】
また、本実施形態によれば、高所作業車1が路面上の段差で進むことができず、作業者が操作量を増やしているにも関わらず、実回転速度が指令回転速度に追従していかない場合(実回転速度が小さく、且つ、回転偏差が大きくなる場合)には、この作業者の操作意図を反映した電圧補正が行われるため(指令電圧値を上記操作量に応じて増加させるため)、その高出力トルクのもとで高所作業車1が段差を適格に乗り越えることができるようになり、高所作業車1の走破性を一層向上させることが可能となる。
【0084】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば適宜改良可能である。
【0085】
上記実施形態では、走行体に設けられた前側の車輪を駆動輪として構成したが、この構成に限定されるものではなく、後側の車輪を駆動輪として構成してもよい。同じく、上記実施形態では、前側の車輪を操舵輪として構成したが、この構成に限定されるものではなく、後側の車輪を操舵輪として構成してもよい。なお、必ずしも駆動輪と操舵輪とが一致している必要はなく、例えば、前側の車輪が駆動輪で後側の車輪が操舵輪であってもよく、また、前側の車輪が操舵輪で後側の車輪が駆動輪であってもよい。
【0086】
上記実施形態では、左右の走行モータの各々に回転検出器が設けられているが、この構成に限定されるものではなく、左右の走行モータのいずれか一方のみに回転検出器が設けられていてもよい。
【0087】
上記実施形態では、2基の走行モータを1台のインバータで駆動する1インバータ−2モータ式の制御を行っているが、この構成に限定されるものではなく、2基の走行モータを2台のインバータで駆動する2インバータ−2モータ式の制御を採用してもよい。
【0088】
上記実施形態では、第1電圧制御処理にて算出したV/f特性比率αと、第2電圧制御処理にて算出したV/f特性比率βとを比較し、その大きい方のV/f特性比率に対応したV/fパターンを参照して指令電圧値を算出したが、この構成に限定されるものではなく、例えば、V/f特性比率αに対応したV/fパターンを参照して算出した指令電圧値αと、V/f特性比率βに対応したV/fパターンを参照して算出した指令電圧値βと比較して、その大きい方の指令電圧値を採用するように構成してもよい。
【0089】
上記実施形態では、油圧駆動機器の作動制御において各制御バルブのバルブ開度を変化させて作動油の供給量を制御していたが、この構成に限定されるものではなく、各制御バルブのバルブ開度を一定とし、油圧ポンプの回転数を変化させて作動油の供給量を制御してもよい。
【0090】
上記実施形態では、高所作業車の走行体上に設けられる昇降装置として、作業台を垂直昇降させるシザースリンク式の昇降装置を例示して説明したが、この構成に限定されるものではなく、例えば、作業台を垂直昇降させるマスト式の昇降装置や、作業台を三次元的に移動させるブーム式の昇降装置等であってもよい。