特許第6887288号(P6887288)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6887288
(24)【登録日】2021年5月20日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 11/10 20060101AFI20210603BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   B05C11/10
   B05C5/00 101
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-68927(P2017-68927)
(22)【出願日】2017年3月30日
(65)【公開番号】特開2018-167242(P2018-167242A)
(43)【公開日】2018年11月1日
【審査請求日】2019年11月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森山 恵多
(72)【発明者】
【氏名】岡部 正文
【審査官】 市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−319640(JP,A)
【文献】 特公昭49−029727(JP,B1)
【文献】 特開2013−017945(JP,A)
【文献】 特開2004−160314(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00432082(EP,A1)
【文献】 中国実用新案第206794039(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B1/00−3/18
7/00−9/08
B05C5/00−21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを供給するディスペンサと、
前記ディスペンサと接続され、前記ディスペンサから供給される前記インクを吐出する吐出ノズルと、
前記吐出ノズルを移動させる駆動部と、を含み、
前記吐出ノズルは、
前記吐出ノズルの内部に配置され、前記インクの吐出を許容する許容位置と、前記インクの吐出を阻止する阻止位置との間で移動可能に設けられた液だれ阻止部材と、
前記吐出ノズルの吐出口が印刷する媒体に接近した位置にある場合、前記液だれ阻止部材を許容位置とし、前記吐出口を前記媒体から離間した位置にある場合、前記液だれ阻止部材を阻止位置とする移動部材と、
を含み、
前記液だれ阻止部材は、鉛直方向回りの回転動作により、前記許容位置と前記阻止位置との間を移動可能であることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記液だれ阻止部材を、前記阻止位置に付勢する付勢部材と、をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記移動部材は、前記媒体に接触することで、前記付勢部材に抗して前記液だれ阻止部材を前記許容位置に移動させることを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記移動部材と前記液だれ阻止部材とは、物理的に連結していることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記液だれ阻止部材と前記移動部材とは、鉛直方向に連接されていること特徴とする請求項4に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットヘッドでは吐出が困難なインクを用いて印刷する方法として、ディスペンサを用いてインクを供給し、吐出ノズルよりインクを吐出して印刷する方法が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−147241号公報
【特許文献2】特開2004−154741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1を含む従来技術では、ディスペンサがインクの供給を停止した場合、すなわちディスペンサがインクを供給している状態からインクを供給しない状態に切り替えた場合、ディスペンサから吐出ノズルまでの間にあるインクは、止まることができずに、吐出ノズルから漏れてしまう、すなわち液だれを起こしてしまう可能性があった。また、特許文献1を含む従来技術では、ディスペンサを用いて印刷する場合、インクジェットヘッドでは吐出が困難なインク、すなわち、比較的粘度が高いインクを用いて印刷することが多い。このため、ディスペンサから吐出ノズルまでの間にあるインクは、ディスペンサがインクの供給を停止してから、遅れて、吐出ノズルから漏れてしまう可能性があった。これらのため、液だれしてしまったインクにより、印刷品質が低下するという問題があった。
【0005】
そこで、特許文献2には、液だれしてしまうことを低減するために、ディスペンサがインクの供給を停止させる時に、吐出ノズルの上流側の圧力を負圧にすることで、吐出ノズルの内部のインクをサックバックする構成が提案されている。しかしながら、特許文献2を含む従来技術では、吐出ノズルの内部のインクをサックバックする際に、吐出ノズルから吐出されたインクを吸引してしまう可能性があるとともに、吐出されたインクに付着した埃等の異物を吸引してしまう。このため、吸引してしまった埃等の異物により、吐出ノズルからのインクの吐出の不良を起こしてしまい、印刷不良を引き起こしてしまうという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ディスペンサを用いて印刷する場合において、ディスペンサがインクの供給を停止した際のディスペンサから吐出ノズルまでの間にあるインクに関連した印刷品質の低下及び印刷不良を低減させた印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の印刷装置は、インクを供給するディスペンサと、前記ディスペンサと接続され、前記ディスペンサから供給される前記インクを吐出する吐出ノズルと、前記吐出ノズルを移動させる駆動部と、を含み、前記吐出ノズルは、前記吐出ノズルの内部に配置され、前記インクの吐出を許容する許容位置と、前記インクの吐出を阻止する阻止位置との間で移動可能に設けられた液だれ阻止部材と、前記吐出ノズルの吐出口が印刷する媒体に接近した位置にある場合、前記液だれ阻止部材を許容位置とし、前記吐出口を前記媒体から離間した位置にある場合、前記液だれ阻止部材を阻止位置とする移動部材と、を含むことを特徴とする。
【0008】
この構成において、前記液だれ阻止部材を、前記阻止位置に付勢する付勢部材と、をさらに含むことが好ましい。
【0009】
液だれ阻止部材を阻止位置に付勢する付勢部材をさらに含む構成において、前記移動部材は、前記媒体に接触することで、前記付勢部材に抗して前記液だれ阻止部材を前記許容位置に移動させることが好ましい。
【0010】
これらの構成において、前記移動部材と前記液だれ阻止部材とは、物理的に連結していることが好ましい。
【0011】
移動部材と液だれ阻止部材とが物理的に連結している構成において、前記液だれ阻止部材と前記移動部材とは、鉛直方向に連接されていることが好ましい。
【0012】
これらの構成において、前記液だれ阻止部材は、鉛直方向の動作または鉛直方向回りの回転動作により、前記許容位置と前記阻止位置との間を移動可能であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ディスペンサを用いて印刷する場合において、ディスペンサがインクの供給を停止した際のディスペンサから吐出ノズルまでの間にあるインクに関連した印刷品質の低下及び印刷不良を低減させた印刷装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施形態1に係る印刷装置の概略構成を表す概略構成図である。
図2図2は、実施形態1に係る印刷装置の吐出ノズルにおいて、液だれ阻止部材が阻止位置にある場合の概略構成を表す概略構成断面図である。
図3図3は、実施形態1に係る印刷装置の吐出ノズルにおいて、液だれ阻止部材が許容位置にある場合の概略構成を表す概略構成断面図である。
図4図4は、実施形態1に係る印刷装置の吐出ノズルにおける液だれ阻止部材の概略構成を表す概略構成断面図である。
図5図5は、実施形態2に係る印刷装置の吐出ノズルにおいて、液だれ阻止部材が阻止位置にある場合の概略構成を表す概略構成断面図である。
図6図6は、実施形態2に係る印刷装置の吐出ノズルにおいて、液だれ阻止部材が許容位置にある場合の概略構成を表す概略構成断面図である。
図7図7は、実施形態2に係る印刷装置の吐出ノズルにおいて、液だれ阻止部材が阻止位置にある場合の概略構成を表す概略構成断面図である。
図8図8は、実施形態2に係る印刷装置の吐出ノズルにおいて、液だれ阻止部材が許容位置にある場合の概略構成を表す概略構成断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能であり、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせることも可能である。
【0016】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る印刷装置10の概略構成を表す概略構成図である。印刷装置10は、図1に示すように、ディスペンサ12と、媒体保持部13と、三次元方向駆動部14と、キャリッジ16と、を含む。ディスペンサ12は、制御に応じて、高圧力で液体を押し出すことで、一定の容量の液体を供給する液体定量供給装置であり、印刷装置10に用いられるインクを供給する。
【0017】
ディスペンサ12によって供給されるインクは、いかなるインクでもよいが、紫外線が照射されて露光することで硬化度が変化する紫外線硬化型インクが例示される。ディスペンサ12によって供給されるインクは、インクジェットヘッドで供給することが困難な高粘度インク、例えば、粘度が20mPa・sより高いインクを用いることが好ましく、粘度が50mPa・s以上のインクを用いることがより好ましく、粘度が100mPa・s以上のインクを用いることがさらに好ましい。ディスペンサ12によって供給されるインクは、ディスペンサ12の機種や性能等に応じて、粘度の上限が決まる。
【0018】
また、ディスペンサ12によって供給されるインクは、フィラーを含んでもよい。フィラーは、一般的なインクジェットヘッドで供給することが困難なサイズのもの、例えば、一般的なインクジェットヘッドのノズルよりも大きなものが例示される。フィラーは、具体的には、直径が1mm以上のものが例示される。ここで、直径が1mm以上のフィラーを含むとは、設計上のサイズが1mm以上であるフィラーを含むことを指す。
【0019】
図1では、ディスペンサ12が1つのみ描かれているが、本発明はこれに限定されず、ディスペンサが複数設けられていてもよい。例えば、M(マゼンタ)、C(シアン)、Y(イエロー)、K(ブラック)のインクを別々に供給するディスペンサが設けられていてもよい。また、その他の色の組み合わせのインクを別々に供給するディスペンサが設けられていてもよい。
【0020】
フィラーは、具体的には、光沢性の粒子及び蛍光粒子が例示される。光沢性の粒子は、メタリック顔料及びパール顔料等が例示される。蛍光粒子は、インクに添加されることで、蓄光インクとするものである。また、フィラーの形状は、いかなる形状であってもよく、球状、多角形状、楕円状、リーフ状及び鱗片状等が例示される。
【0021】
媒体保持部13は、水平面方向、すなわち図1に示すXY平面方向に沿って延びる板状の部材である。媒体保持部13は、印刷装置10によって印刷される被印刷体としての媒体Wを、被印刷面を鉛直方向の上側、すなわち図1に示す+Z方向に向けて、+Z方向に向けられた面で保持する。媒体保持部13は、具体的には、媒体保持部の鉛直方向の下側、すなわち図1に示す−Z方向から真空引きをして、媒体Wを−Z方向に吸着することで、媒体Wを吸着保持し、固定する形態が例示される。媒体保持部13は、この形態に限定されず、媒体Wを保持して固定する形態であれば、いかなる形態であってもよい。
【0022】
媒体保持部13に保持される媒体Wは、インクを浸透させやすい性質を持つために、高粘度インクで印刷されることが好ましいもの、例えば繊維製品が例示される。媒体Wは、繊維製品である場合、具体的には、スチレン製のボードに着せられて、糊をつけてのばされたTシャツ等の衣類が例示される。媒体Wは、この形態に限定されず、いかなる形態であってもよい。
【0023】
三次元方向駆動部14は、キャリッジ16を三次元方向に移動させる駆動部であり、副走査方向駆動部14xと、主走査方向駆動部14yと、鉛直方向駆動部14zと、回転駆動部14rと、を含む。回転駆動部14rは、キャリッジ16を、図1に示すZ軸に沿う方向の回りの回転方向rに回転可能に支持する。回転駆動部14rは、キャリッジ16を、回転方向rに回転させることができる。鉛直方向駆動部14zは、回転駆動部14rを、印刷装置10の鉛直方向、すなわち図1に示すZ軸方向に沿う方向に移動可能に支持する。鉛直方向駆動部14zは、回転駆動部14rを介して、キャリッジ16をZ軸方向に沿う方向に移動させることができる。主走査方向駆動部14yは、鉛直方向駆動部14zを、印刷装置10の主走査方向、すなわち図1に示すY軸方向に沿う方向に移動可能に支持する。主走査方向駆動部14yは、鉛直方向駆動部14z及び回転駆動部14rを介して、キャリッジ16をY軸方向に沿う方向に移動させることができる。副走査方向駆動部14xは、主走査方向駆動部14yを、印刷装置10の副走査方向、すなわち図1に示すX軸方向に沿う方向に移動可能に支持する。副走査方向駆動部14xは、主走査方向駆動部14y、鉛直方向駆動部14z及び回転駆動部14rを介して、キャリッジ16をX軸方向に沿う方向に移動させることができる。このように、三次元方向駆動部14は、キャリッジ16を、副走査方向、主走査方向及び鉛直方向の各方向に沿う方向に移動可能に支持し、鉛直方向に沿う方向の回りの回転方向に回転可能に支持する。
【0024】
キャリッジ16は、紫外線照射器18と、吐出ノズル20と、を支持している。吐出ノズル20は、吐出部20aを有する。吐出部20aは、吐出口20bを有する。吐出部20aの吐出口20bは、媒体保持部13の+Z方向に向けられた面に対向して設けられている。吐出ノズル20は、供給路21によりディスペンサ12と接続されており、ディスペンサ12からインクの供給を受ける。吐出ノズル20は、ディスペンサ12から供給されたインクを、媒体保持部13に保持された媒体Wに向けて、鉛直方向下側に沿う方向に、すなわち図1に示す−Z軸方向に沿う方向に、吐出部20aの吐出口20bより吐出する。紫外線照射器18は、吐出ノズル20から吐出された紫外線硬化型インクに紫外線を照射することで、紫外線硬化型インクを硬化させ、媒体W上の印刷模様として固定化させる。
【0025】
紫外線照射器18及び吐出ノズル20は、キャリッジ16に支持されているため、互いの位置関係を変えることなく、キャリッジ16を介して、三次元方向駆動部14により、副走査方向、主走査方向及び鉛直方向の各方向に沿う方向に移動可能に支持され、鉛直方向に沿う方向の回りの回転方向に回転可能に支持されている。すなわち、三次元方向駆動部14は、キャリッジ16を介して、紫外線照射器18及び吐出ノズル20を、互いの位置関係を変えることなく、キャリッジ16を介して、副走査方向、主走査方向及び鉛直方向に移動させる。また、三次元方向駆動部14は、キャリッジ16を介して、紫外線照射器18及び吐出ノズル20を、互いの位置関係を変えることなく、鉛直方向の回りに回転させて向きを変更させることができる。
【0026】
供給路21は、ディスペンサ12の鉛直方向下側と、吐出ノズル20の鉛直方向上側と、を接続する。供給路21は、ディスペンサ12から吐出ノズル20へのインクの供給を可能にする。供給路21は、分岐21aが設けられており、分岐21aには、循環路22が接続されている。循環路22は、供給路21に設けられた分岐21aと、ディスペンサ12の鉛直方向上側と、を接続する。循環路22は、分岐21aからディスペンサ12の鉛直方向上側にある入口へのインクの循環を可能にする。循環路22は、ディスペンサ12の周囲でインクの循環を可能にすることで、インクが凝集しやすい性質を持つ場合でも、インクの凝集を有効に抑制することができるため、印刷装置10による印刷品質の低下を抑制することができる。なお、供給路21及び循環路22は、途中に流量制御をするためのレギュレータ及びポンプ等が設けられても良い。
【0027】
図1では、吐出ノズル20が1つのみ描かれているが、本発明はこれに限定されず、ディスペンサの設けられている個数に応じて、吐出ノズルが複数設けられていてもよい。例えば、M(マゼンタ)、C(シアン)、Y(イエロー)、K(ブラック)のインクを別々に供給するディスペンサにそれぞれ接続された吐出ノズルが設けられていてもよい。また、その他の色の組み合わせのインクを別々に供給するディスペンサにそれぞれ接続された吐出ノズルが設けられていてもよい。
【0028】
印刷装置10は、また、図1に示すように、制御部24と、入力部26と、を含む。制御部24は、ディスペンサ12、三次元方向駆動部14及び紫外線照射器18を制御する。具体的には、制御部24は、ディスペンサ12において、インクを押し出す機構における駆動部分を制御することで、インクを供給するか否かを制御する。制御部24は、ディスペンサ12からインクを供給する場合、インクを押し出す圧力、及び、供給する液体量等を制御することで、吐出ノズル20から吐出するインクの吐出量、吐出のタイミング、吐出期間等を制御する。また、制御部24は、三次元方向駆動部14を制御することで、キャリッジ16の位置、向き、移動速度等を制御する。また、制御部24は、紫外線照射器18を制御することで、紫外線の照射をするか否かを制御する。制御部24は、紫外線を照射する場合、紫外線の照射強度、紫外線の照射のタイミング、照射期間等を制御する。また、制御部24は、供給路21及び循環路22において途中に流量制御をするためのレギュレータ及びポンプ等が設けられている場合、これらのレギュレータ及びポンプ等を制御する。
【0029】
制御部24は、記憶部と処理部とを含む。記憶部は、例えばRAM、ROM及びフラッシュメモリー等の記憶装置を有し、処理部により処理されるソフトウェア・プログラム及びこのソフトウェア・プログラムにより参照されるデータ等を記憶する。具体的には、記憶部は、処理部に後述する本実施形態に係る印刷方法を実行させるためのプログラムを記憶する。また、記憶部は、処理部が処理結果等を一時的に記憶する記憶領域としても機能する。処理部は、記憶部からソフトウェア・プログラム等を読み出して処理することで、ソフトウェア・プログラムの内容に応じた機能を発揮する。具体的には、処理部は、記憶部に記憶されたプログラムを読み出して処理することで、本実施形態に係る印刷方法を実行するための制御部24として機能し、本実施形態に係る印刷方法を実行する。制御部24は、これらの各部の処理条件を記憶部に記憶させたり、制御部24に設けられた表示部に表示したりすることができる。制御部24は、コンピュータが例示される。
【0030】
制御部24は、ディスペンサ12からインクを供給させて媒体Wに印刷をする場合、鉛直方向駆動部14zを制御することで、吐出ノズル20の吐出口20bを媒体Wと接触させるか、または、吐出口20bを媒体Wと所定のクリアランス以下の間隔を有するまで接近させてから、ディスペンサ12を制御して、ディスペンサ12からインクを供給させて、印刷をする。制御部24は、ディスペンサ12からインクの供給を停止させて媒体Wに印刷をしない場合、ディスペンサ12を制御して、ディスペンサ12からインクの供給を停止させてから、鉛直方向駆動部14zを制御することで、吐出口20bを媒体Wと所定のクリアランス以上の間隔を有するまでに離間させることを可能にする。ここで、所定のクリアランスとは、吐出ノズル20の吐出口20bから媒体Wへ向けてインクを吐出した際に、インクが媒体Wの所望の場所に吐出される最大距離のことである。
【0031】
制御部24は、紫外線照射器18に対して吐出ノズル20が設けられている側が、キャリッジ16の進行方向、すなわち印刷装置10によって印刷する方向となるように、キャリッジ16の向き及び進行方向を制御する。このため、吐出ノズル20のすぐ後方を進行する紫外線照射器18は、吐出ノズル20の吐出口20bから吐出されたインクに対してすぐに紫外線を照射して、硬化させることができる。
【0032】
制御部24は、入力部26と有線又は無線等で接続されており、入力部26から入力される入力情報を受信し、この入力情報に応じて、上記したように各部を制御する。入力部26は、制御部24に有線又は無線等で接続されるPC、種々の端末等であり、インクの吐出制御量や紫外線の照射制御量等の設定に関する情報を入力情報として受け付ける。入力部26は、入力された入力情報を制御部24に送信する。
【0033】
入力部26が入力を受け付ける入力情報は、絵や柄等の印刷模様及び媒体Wに関する情報等が例示される。制御部24は、入力部26よりこの入力情報を取得すると、絵や柄等の印刷模様を、印刷の線及び書き順(ルート)に変換し、さらに、ディスペンサ12によるインクの供給の制御、吐出ノズル20の鉛直方向の昇降及びXY平面方向の移動の制御、及び紫外線照射器18の紫外線照射の制御等のシーケンスに変換する。
【0034】
図2は、実施形態1に係る印刷装置10の吐出ノズル20において、液だれ阻止部材36が阻止位置にある場合の概略構成を表す概略構成断面図である。図3は、実施形態1に係る印刷装置10の吐出ノズル20において、液だれ阻止部材36が許容位置にある場合の概略構成を表す概略構成断面図である。図2及び図3は、吐出ノズル20の中心を通過するYZ平面における断面図である。図4は、実施形態1に係る印刷装置10の吐出ノズル20における液だれ阻止部材36の概略構成を表す概略構成断面図である。図4は、吐出ノズルの、固定板34と液だれ阻止部材36との間を通過するXY平面において鉛直方向の上側から、すなわち+Z方向から見た断面図である。
【0035】
吐出ノズル20は、図2及び図3に示すように、ノズルケース32と、固定板34と、液だれ阻止部材36と、移動部材37と、付勢部材38と、を含む。ノズルケース32は、図2図3及び図4に示すように、側面部32aと、底面部32bと、底面孔32cと、突状部32dと、を含む。側面部32aは、円筒状であり、吐出ノズル20における鉛直方向の上側に、円柱状の空間を形成する。ノズルケース32は、鉛直方向の上側で供給路21と接続されており、側面部32aによって形成された空間で、ディスペンサ12から供給されるインクを受け付ける。底面部32bは、側面部32aの鉛直方向の下側の端部の内側に設けられており、側面部32aによって形成された空間の底面を形成する。底面部32bは、この底面で、ディスペンサ12により鉛直方向の上側から供給されるインクを受け止めて、側面部32aによって形成された空間で一時的に貯留することを可能にする。底面孔32cは、底面部32bの中央部分に設けられた円形状の貫通孔である。底面孔32cは、鉛直方向の下側に、吐出部20aが隙間なく接続されている。底面孔32cは、底面部32bで一時的に貯留したインクの流路である。底面孔32cを通過したインクは、吐出部20aへ供給される。突状部32dは、側面部32aの鉛直方向の下側の部分の領域の内側の3箇所に等間隔に設けられている。突状部32dは、後述する液だれ阻止部材36の溝部36eと、相対的に鉛直方向、すなわちZ軸方向に沿う方向に移動可能に、嵌め合わせられている。突状部32dは、液だれ阻止部材36を、水平方向、すなわちXY面に対して傾斜しないように、支持している。
【0036】
固定板34は、ノズルケース32の側面部32aの内側に固定して設けられている。固定板34は、図2及び図3に示すように、中央部34aと、外周部34bと、貫通孔34dと、を含む。固定板34は、平面形状が、後述する液だれ阻止部材36と概ね同じである。中央部34aは、概ね円板状であり、鉛直方向の下側、すなわち−Z方向の側の面に、付勢部材38の一方の端が接続して設けられている。外周部34bは、概ねドーナツ板状であり、側面部32aの内側の、突状部32dが設けられている領域より鉛直方向の上側、すなわち+Z方向の側の領域に固定されている。中央部34aと外周部34bとは、3本の接続部によって物理的に接続されており、一体に形成されている。貫通孔34dは、中央部34aと外周部34bとの間の領域に設けられている。貫通孔34dは、円周方向に等間隔に3箇所に設けられている。貫通孔34dは、ディスペンサ12により鉛直方向の上側から供給されるインクの、ノズルケース32の内部における流路である。
【0037】
液だれ阻止部材36は、吐出ノズル20の内部に配置されている。詳細には、液だれ阻止部材36は、ノズルケース32の側面部32aの内側に、鉛直方向に移動可能に、嵌め合わせられて設けられている。液だれ阻止部材36は、図2図3及び図4に示すように、中央部36aと、外周部36bと、接続部36cと、貫通孔36dと、溝部36eと、を含む。中央部36aは、概ね円板状であり、鉛直方向の上側の面に、付勢部材38の他方の端が接続して設けられている。中央部36aは、鉛直方向の下側の面に、移動部材37の一方の端が接続して設けられている。外周部36bは、概ねドーナツ板状であり、側面部32aの内側の、突状部32dが設けられている領域の円周部分に、鉛直方向に沿う方向に移動可能に、内接して設けられている。接続部36cは、中央部36aと外周部36bとの間に3本設けられており、中央部36aと外周部36bとを一体に形成している。貫通孔36dは、中央部36aと外周部36bと接続部36cとによって囲まれた領域に設けられている。貫通孔36dは、円周方向に等間隔に3箇所に設けられている。貫通孔36dは、ディスペンサ12により鉛直方向上側から供給され、固定板34の貫通孔34dを通過したインクの、ノズルケース32の内部における流路である。溝部36eは、外周部36bの外周に、円周方向に等間隔に3箇所に設けられている。溝部36eは、突状部32dと、相対的に鉛直方向に沿う方向に移動可能に、嵌め合わせられている。
【0038】
液だれ阻止部材36は、図2に示すように、鉛直方向の下側の面が、ノズルケース32の底面部32bの鉛直方向の上側の面と接する位置である阻止位置にあるとき、中央部36aにより、貫通孔34d及び貫通孔36dを含むノズルケース32の内部のインクの流路と、吐出部20aの内部のインクの流路と、の間を断絶する。このため、液だれ阻止部材36は、阻止位置にあるとき、吐出ノズル20からのインクの吐出を阻止する、すなわち、印刷を停止した状態にする。
【0039】
液だれ阻止部材36は、図3に示すように、鉛直方向の下側の面が、ノズルケース32の底面部32bの鉛直方向の上側の面に対して離間した位置である許容位置にあるとき、貫通孔34d及び貫通孔36dを含むインクの流路と、吐出部20aの内部のインクの流路と、が繋がり、吐出ノズル20の内部に、断絶していない一連のインクの流路f1が形成される。このため、液だれ阻止部材36は、許容位置にあるとき、吐出ノズル20からのインクの吐出を許容する、すなわち、印刷を可能にする。
【0040】
このように、液だれ阻止部材36は、吐出ノズル20からのインクの吐出を許容する許容位置と、吐出ノズル20からのインクの吐出を阻止する阻止位置との間で、移動可能に設けられている。
【0041】
移動部材37は、棒状の部材であり、鉛直方向の上側に位置する一方の端には、液だれ阻止部材36の中央部36aに接続されている。移動部材37は、他方の端である先端37aが、鉛直方向の下側に向けられ、媒体保持部13の鉛直方向の上側の面、または媒体保持部13に保持された媒体Wの鉛直方向の上側の面に対向して設けられている。移動部材37は、先端37aが、吐出口20bよりも鉛直方向の下側に突き出して設けられている。
【0042】
付勢部材38は、一方の端が、固定板34の中央部34aの鉛直方向の下側の面に、接続されている。付勢部材38は、他方の端が、液だれ阻止部材36の鉛直方向の上側の面に、接続されている。付勢部材38は、液だれ阻止部材36を、鉛直方向の下側に向けて、すなわち、阻止位置に向けて、付勢している。付勢部材38は、バネが例示される。
【0043】
移動部材37は、吐出ノズル20からインクを吐出して印刷するために、吐出ノズル20の吐出口20bを媒体Wに接近させることで、先端37aが鉛直方向の下側に沿った方向に媒体Wに押し付けられる。移動部材37は、先端37aが鉛直方向の下側に沿った方向に媒体Wに押し付けられることに伴い、媒体Wからの反作用を受けることで、付勢部材38に抗して、鉛直方向の上側に沿った方向に移動する。移動部材37は、鉛直方向の上側に沿った方向に移動することで、付勢部材38に抗して、移動部材37の一方の端に接続された液だれ阻止部材36を許容位置に移動させる。このように、移動部材37は、吐出ノズル20の吐出口20bが媒体Wに接近した位置にある場合、液だれ阻止部材36を許容位置とする。
【0044】
移動部材37は、吐出ノズル20からのインクの吐出を停止して印刷を停止するために、吐出ノズル20の吐出口20bを媒体Wから離間させることで、付勢部材38の付勢する力に従って、移動部材37の一方の端に接続された液だれ阻止部材36を阻止位置に移動させる。このように、移動部材37は、吐出ノズル20の吐出口20bが媒体Wから離間した位置にある場合、液だれ阻止部材36を阻止位置とする。
【0045】
吐出ノズル20では、液だれ阻止部材36と移動部材37とは、物理的に連結している。このため、吐出ノズル20が媒体Wに接近することに応じて、移動部材37を吐出ノズル20の吐出方向である鉛直方向に移動させることができ、移動部材37の鉛直方向の移動に応じて、液だれ阻止部材36を移動させることができる。
【0046】
吐出ノズル20では、液だれ阻止部材36と移動部材37とは、さらに鉛直方向に連接されている。このため、より好ましく、移動部材37の鉛直方向の移動に応じて、液だれ阻止部材36を移動させることができる。
【0047】
吐出ノズル20では、液だれ阻止部材36は、鉛直方向の動作により、許容位置と阻止位置との間を移動可能である。このため、吐出ノズル20では、液だれ阻止部材36が移動可能である阻止位置を、液だれをより確実に阻止することが可能な位置とし、許容位置を、より確実にインクの吐出をすることが可能な位置とすることができる。
【0048】
吐出ノズル20を含む印刷装置10は、以上のような構成を有するため、吐出ノズル20において、吐出口20bが媒体Wから離間した位置にある場合、移動部材37が液だれ阻止部材36を阻止位置とするため、ディスペンサ12からのインクの供給の停止に関わらず、吐出ノズル20から液だれが起きることを低減することができる。このため、吐出ノズル20を含む印刷装置10は、ディスペンサ12から吐出ノズル20までの間にあるインクに関連した印刷品質の低下及び印刷不良を低減することができる。
【0049】
吐出ノズル20を含む印刷装置10は、液だれ阻止部材36を阻止位置に付勢する付勢部材38をさらに含むので、付勢部材38により、液だれ阻止部材36をより確実に阻止位置に移動させるため、ディスペンサ12からのインクの供給の停止に関わらず、吐出ノズル20から液だれが起きることをより確実に低減することができる。このため、吐出ノズル20を含む印刷装置10は、ディスペンサ12から吐出ノズル20までの間にあるインクに関連した印刷品質の低下及び印刷不良をより確実に低減することができる。
【0050】
吐出ノズル20を含む印刷装置10は、移動部材37が媒体Wに接触することで、付勢部材38に抗して液だれ阻止部材36を許容位置に移動させる。このため、吐出ノズル20を含む印刷装置10は、吐出ノズル20からインクの吐出が可能な状態に限定して、移動部材37が液だれ阻止部材36を許容位置とするので、ディスペンサ12からのインクの供給の停止に関わらず、吐出ノズル20から液だれが起きることをさらに確実に低減することができる。このため、吐出ノズル20を含む印刷装置10は、ディスペンサ12から吐出ノズル20までの間にあるインクに関連した印刷品質の低下及び印刷不良をさらに確実に低減することができる。
【0051】
吐出ノズル20を含む印刷装置10は、液だれ阻止部材36と移動部材37とが物理的に連結している。このため、吐出ノズル20を含む印刷装置10は、吐出ノズル20が媒体Wに接近することに応じて、移動部材37を吐出ノズル20の吐出方向である鉛直方向に移動させることができ、移動部材37の鉛直方向の移動に応じて、液だれ阻止部材36を移動させることができる。吐出ノズル20を含む印刷装置10は、液だれ阻止部材36と移動部材37とがさらに鉛直方向に連接されている。このため、吐出ノズル20を含む印刷装置10は、より好ましく、移動部材37の鉛直方向の移動に応じて、液だれ阻止部材36を移動させることができる。したがって、吐出ノズル20を含む印刷装置10は、吐出ノズル20が媒体Wに接近しているか否かに基づいて、吐出ノズル20からインクの吐出が可能な状態にあるか否かを実質的に判別し、液だれ阻止部材36を許容位置に移動させるため、ディスペンサ12からのインクの供給の停止に関わらず、吐出ノズル20から液だれが起きることをさらに確実に低減することができる。このため、吐出ノズル20を含む印刷装置10は、ディスペンサ12から吐出ノズル20までの間にあるインクに関連した印刷品質の低下及び印刷不良をさらに確実に低減することができる。
【0052】
吐出ノズル20を含む印刷装置10は、液だれ阻止部材36が、鉛直方向の動作により、許容位置と阻止位置との間を移動可能であるので、阻止位置を、液だれをより確実に阻止することが可能な位置とし、許容位置を、より確実にインクの吐出をすることが可能な位置とすることができる。
【0053】
[実施形態2]
図5は、実施形態2に係る印刷装置の吐出ノズル40において、液だれ阻止部材46が阻止位置にある場合の概略構成を表す概略構成断面図である。図6は、実施形態2に係る印刷装置の吐出ノズル40において、液だれ阻止部材46が許容位置にある場合の概略構成を表す概略構成断面図である。図5及び図6は、吐出ノズル40の中心を通過するYZ平面における断面図である。図7は、実施形態2に係る印刷装置の吐出ノズル40において、液だれ阻止部材46が阻止位置にある場合の概略構成を表す概略構成断面図である。図8は、実施形態2に係る印刷装置の吐出ノズル40において、液だれ阻止部材46が許容位置にある場合の概略構成を表す概略構成断面図である。図7及び図8は、吐出ノズルの、液だれ阻止部材46より鉛直方向の上側を通過するXY平面において鉛直方向の上側から、すなわち+Z方向から見た断面図である。
【0054】
実施形態2に係る印刷装置は、実施形態1に係る印刷装置10において、吐出ノズル20に代えて吐出ノズル40を設けたものである。実施形態2の説明では、実施形態1の説明と同様の構成に実施形態1と同様の符号群を用い、その詳細な説明を省略する。
【0055】
吐出ノズル40は、図5及び図6に示すように、吐出部40aを有する。吐出部40aは、吐出口40bと、移動部材支持部40cと、を有する。吐出部40aの吐出口40bは、媒体保持部13の+Z方向に向けられた面に対向して設けられている。吐出ノズル40は、供給路21によりディスペンサ12と接続されており、ディスペンサ12からインクの供給を受ける。吐出ノズル40は、ディスペンサ12から供給されたインクを、媒体保持部13に保持された媒体Wに向けて、鉛直方向下側に沿う方向に、すなわち−Z軸方向に沿う方向に、吐出部40aの吐出口40bより吐出する。
【0056】
移動部材支持部40cは、図5及び図6に示すように、吐出部40aの内側側面に固定して設けられている。移動部材支持部40cは、後述する棒状の移動部材44を、棒状の延びる方向に沿って、すなわち鉛直方向に沿って移動可能に支持する。移動部材支持部40cの一方は、鉛直方向の下側の面に付勢部材45の一方の端が接続して設けられている。
【0057】
吐出ノズル40は、図5図6図7及び図8に示すように、ノズルケース42と、移動部材44と、付勢部材45と、液だれ阻止部材46と、付勢部材48と、を含む。ノズルケース42は、図5図6図7及び図8に示すように、側面部42aと、底面部42bと、底面孔42cと、を含む。側面部42aは、円筒状であり、吐出ノズル40における鉛直方向の上側に、円柱状の空間を形成する。ノズルケース42は、鉛直方向の上側で供給路21と接続されており、側面部42aによって形成された空間で、ディスペンサ12から供給されるインクを受け付ける。底面部42bは、側面部42aの鉛直方向の下側の端部の内側に設けられており、側面部42aによって形成された空間の底面を形成する。底面部42bは、この底面で、ディスペンサ12により鉛直方向の上側から供給されるインクを受け止めて、側面部42aによって形成された空間で一時的に貯留することを可能にする。底面孔42cは、底面部42bの中央部分に設けられた円形状の貫通孔である。底面孔42cは、鉛直方向の下側に、吐出部40aが隙間なく接続されている。底面孔42cは、底面部42bで一時的に貯留したインクの流路である。底面孔42cを通過したインクは、吐出部40aへ供給される。
【0058】
移動部材44は、図5図6図7及び図8に示すように、棒状の部材であり、鉛直方向の上側に位置する一方の端である先端44bと鉛直方向の下側に位置する他方の端である先端44aとの間に、棒状に延びる方向に交差する方向に沿って延びて設けられた突起部44cを含む。突起部44cは、鉛直方向の上側の面に、付勢部材45の他方の端が接続して設けられている。移動部材44は、先端44bが、後述する液だれ阻止部材46のテーパ状溝部46cに、相対的に移動可能に嵌め合わせられて設けられている。移動部材44は、先端44aが、鉛直方向の下側に向けられ、媒体保持部13の鉛直方向の上側の面、または媒体保持部13に保持された媒体Wの鉛直方向の上側の面に対向して設けられている。移動部材44は、先端44aが、吐出口40bよりも鉛直方向の下側に突き出して設けられている。
【0059】
付勢部材45は、図5及び図6に示すように、一方の端が、移動部材支持部40cの一方の鉛直方向の下側の面に、接続されている。付勢部材45は、他方の端が、移動部材44の突起部44cの鉛直方向の上側の面に、接続されている。付勢部材45は、突起部44cを介して移動部材44を、鉛直方向の下側に向けて、付勢している。すなわち、付勢部材45は、移動部材44を、先端44bがテーパ状溝部46cに嵌め合わされる深さが浅くなる方向に、付勢している。付勢部材45は、バネが例示される。
【0060】
液だれ阻止部材46は、図5図6図7及び図8に示すように、吐出ノズル40の内部に配置されている。詳細には、液だれ阻止部材46は、平板部46aと、棒状部46bと、テーパ状溝部46cと、を含む。液だれ阻止部材46は、平板部46aの鉛直方向の下側の面が、底面部42bの鉛直方向上側の面と接触するように設けられている。平板部46aは、概ね円板状である。平板部46aは、水平方向の端部に、棒状部46bの一方の端が接続されている。平板部46aは、鉛直方向の下側の面に、テーパ状溝部46cが設けられている。棒状部46bは、一方の端が、平板部46aの水平方向の端部に接続されている。棒状部46bは、他方の端が、ノズルケース42の側面部42aの内側の鉛直方向の下側の端部付近の面に、後述する付勢部材48を介して、接続されている。テーパ状溝部46cは、一様な深さの傾斜をもつ溝部である。テーパ状溝部46cは、移動部材44の先端44bが、相対的に移動可能に嵌め合わせられて設けられている。テーパ状溝部46cは、棒状部46bの他方の端を中心とした円弧状に設けられている。テーパ状溝部46cは、平板部46aが底面孔42cを完全に塞ぐ位置にあるときに移動部材44の先端44bが嵌め合わせられる部分が、一方の端に形成されており、最も浅く形成されている。テーパ状溝部46cは、最も浅くなっている一方の端から、他方の端に向かうにつれて、徐々に深くなるように、形成されている。
【0061】
付勢部材48は、一方の端が、ノズルケース42の側面部42aの内側の鉛直方向の下側の端部付近の面に、接続されている。付勢部材48は、他方の端が、液だれ阻止部材46の棒状部46bの他方の端の面に、接続されている。付勢部材48は、回転方向に付勢する付勢部材であり、回転バネが例示される。付勢部材48は、平板部46aが底面孔42cを完全に塞ぐ位置である阻止位置に向けて、液だれ阻止部材46を付勢している。
【0062】
液だれ阻止部材46は、図5及び図7に示すように、平板部46aが底面孔42cを完全に塞ぐ位置である阻止位置にあるとき、平板部46aにより、ノズルケース42の内部のインクの流路と、吐出部40aの内部のインクの流路と、の間を断絶する。このため、液だれ阻止部材46は、阻止位置にあるとき、吐出ノズル40からのインクの吐出を阻止する、すなわち、印刷を停止した状態にする。
【0063】
液だれ阻止部材46は、図6及び図8に示すように、平板部46aが底面孔42cを完全に塞ぐ位置から離れて、底面孔42cの少なくとも一部を開放する位置である許容位置にあるとき、ノズルケース42の内部のインクの流路と、吐出部40aの内部のインクの流路と、が繋がり、吐出ノズル40の内部に、断絶していない一連のインクの流路f2が形成される。このため、液だれ阻止部材46は、許容位置にあるとき、吐出ノズル40からのインクの吐出を許容する、すなわち、印刷を可能にする。
【0064】
このように、液だれ阻止部材46は、吐出ノズル40からのインクの吐出を許容する許容位置と、吐出ノズル40からのインクの吐出を阻止する阻止位置との間で、移動可能に設けられている。
【0065】
移動部材44は、吐出ノズル40からインクを吐出して印刷するために、吐出ノズル40の吐出口40bを媒体Wに接近させることで、先端44aが鉛直方向の下側に沿った方向に媒体Wに押し付けられる。移動部材44は、先端44aが鉛直方向の下側に沿った方向に媒体Wに押し付けられることに伴い、媒体Wからの反作用を受けることで、付勢部材45に抗して、鉛直方向の上側に沿った方向に移動する。移動部材44は、鉛直方向の上側に沿った方向に移動することで、先端44bを、鉛直方向の上側に沿った方向に、液だれ阻止部材46のテーパ状溝部46cに押し付ける。移動部材44は、先端44bをテーパ状溝部46cの傾斜に沿って押し付けることで、テーパ状溝部46cに対し、付勢部材48に抗う方向に回転動作をする力を与える。移動部材44は、先端44bでテーパ状溝部46cに回転動作をする力を与えることで、付勢部材48に抗して、液だれ阻止部材46を許容位置に移動させる。このように、移動部材44は、吐出ノズル40の吐出口40bが媒体Wに接近した位置にある場合、液だれ阻止部材46を許容位置とする。
【0066】
移動部材44は、吐出ノズル40からのインクの吐出を停止して印刷を停止するために、吐出ノズル40の吐出口40bを媒体Wから離間させることで、付勢部材45の付勢する力に従って、鉛直方向の下側に沿った方向に移動する。移動部材44は、鉛直方向の下側に沿った方向に移動することで、先端44bを液だれ阻止部材46のテーパ状溝部46cに押し付けている状態を解除する。移動部材44は、先端44bを液だれ阻止部材46のテーパ状溝部46cに押し付けている状態を解除することで、付勢部材48によって阻止位置に付勢された液だれ阻止部材46を阻止位置に移動させる。このように、移動部材44は、吐出ノズル40の吐出口40bが媒体Wから離間した位置にある場合、液だれ阻止部材46を阻止位置とする。
【0067】
吐出ノズル40では、液だれ阻止部材46と移動部材44とは、物理的に連結している。このため、吐出ノズル40が媒体Wに接近することに応じて、移動部材44を吐出ノズル40の吐出方向である鉛直方向に移動させることができ、移動部材44の鉛直方向の移動に応じて、液だれ阻止部材46を移動させることができる。
【0068】
吐出ノズル40では、移動部材44と液だれ阻止部材46とは、さらに鉛直方向に連接されている。このため、より好ましく、移動部材44の鉛直方向の移動に応じて、液だれ阻止部材46を移動させることができる。
【0069】
吐出ノズル40では、液だれ阻止部材46は、鉛直方向回りの回転動作により、許容位置と阻止位置との間を移動可能である。このため、吐出ノズル40では、液だれ阻止部材46が移動可能である阻止位置を、液だれをより確実に阻止することが可能な位置とし、許容位置を、より確実にインクの吐出をすることが可能な位置とすることができる。
【0070】
吐出ノズル40を含む印刷装置は、以上のような構成を有するため、吐出ノズル40において、吐出口40bが媒体Wから離間した位置にある場合、移動部材44が液だれ阻止部材46を阻止位置とするため、ディスペンサ12からのインクの供給の停止に関わらず、吐出ノズル40から液だれが起きることを低減することができる。このため、吐出ノズル40を含む印刷装置は、ディスペンサ12から吐出ノズル40までの間にあるインクに関連した印刷品質の低下及び印刷不良を低減することができる。
【0071】
吐出ノズル40を含む印刷装置は、液だれ阻止部材46を阻止位置に付勢する付勢部材48をさらに含むので、付勢部材48により、液だれ阻止部材46をより確実に阻止位置に移動させるため、ディスペンサ12からのインクの供給の停止に関わらず、吐出ノズル40から液だれが起きることをより確実に低減することができる。このため、吐出ノズル40を含む印刷装置は、ディスペンサ12から吐出ノズル40までの間にあるインクに関連した印刷品質の低下及び印刷不良をより確実に低減することができる。
【0072】
吐出ノズル40を含む印刷装置は、移動部材44が媒体Wに接触することで、付勢部材48に抗して液だれ阻止部材46を許容位置に移動させる。このため、吐出ノズル40を含む印刷装置は、吐出ノズル40からインクの吐出が可能な状態に限定して、移動部材44が液だれ阻止部材46を許容位置とするので、ディスペンサ12からのインクの供給の停止に関わらず、吐出ノズル40から液だれが起きることをさらに確実に低減することができる。このため、吐出ノズル40を含む印刷装置は、ディスペンサ12から吐出ノズル40までの間にあるインクに関連した印刷品質の低下及び印刷不良をさらに確実に低減することができる。
【0073】
吐出ノズル40を含む印刷装置は、液だれ阻止部材46と移動部材44とが物理的に連結している。このため、吐出ノズル40を含む印刷装置は、吐出ノズル40が媒体Wに接近することに応じて、移動部材44を吐出ノズル40の吐出方向である鉛直方向に移動させることができ、移動部材44の鉛直方向の移動に応じて、液だれ阻止部材46を移動させることができる。吐出ノズル40を含む印刷装置は、液だれ阻止部材46と移動部材44とがさらに鉛直方向に連接されている。このため、吐出ノズル40を含む印刷装置は、より好ましく、移動部材44の鉛直方向の移動に応じて、液だれ阻止部材46を移動させることができる。したがって、吐出ノズル40を含む印刷装置は、吐出ノズル40が媒体Wに接近しているか否かに基づいて、吐出ノズル40からインクの吐出が可能な状態にあるか否かを実質的に判別し、液だれ阻止部材46を許容位置に移動させるため、ディスペンサ12からのインクの供給の停止に関わらず、吐出ノズル40から液だれが起きることをさらに確実に低減することができる。このため、吐出ノズル40を含む印刷装置は、ディスペンサ12から吐出ノズル40までの間にあるインクに関連した印刷品質の低下及び印刷不良をさらに確実に低減することができる。
【0074】
吐出ノズル40を含む印刷装置は、液だれ阻止部材46が、鉛直方向回りの回転動作により、許容位置と阻止位置との間を移動可能であるので、阻止位置を、液だれをより確実に阻止することが可能な位置とし、許容位置を、より確実にインクの吐出をすることが可能な位置とすることができる。
【符号の説明】
【0075】
10 印刷装置
12 ディスペンサ
13 媒体保持部
14 三次元方向駆動部
14x 副走査方向駆動部
14y 主走査方向駆動部
14z 鉛直方向駆動部
14r 回転駆動部
16 キャリッジ
18 紫外線照射器
20,40 吐出ノズル
20a,40a 吐出部
20b,40b 吐出口
21 供給路
21a 分岐
22 循環路
24 制御部
26 入力部
32,42 ノズルケース
32a,42a 側面部
32b,42b 底面部
32c,42c 底面孔
32d 突状部
34 固定板
34a,36a 中央部
34b,36b 外周部
34d,36d 貫通孔
36,46 液だれ阻止部材
36c 接続部
36e 溝部
37,44 移動部材
37a,44a,44b 先端
38,45,48 付勢部材
40c 移動部材支持部
44c 突起部
46a 平板部
46b 棒状部
46c テーパ状溝部
f1,f2 流路
W 媒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8