特許第6887291号(P6887291)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6887291
(24)【登録日】2021年5月20日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】電気コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/629 20060101AFI20210603BHJP
   H01R 13/639 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   H01R13/629
   H01R13/639 Z
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-75459(P2017-75459)
(22)【出願日】2017年4月5日
(65)【公開番号】特開2018-181469(P2018-181469A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2019年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231822
【氏名又は名称】日本端子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 巧
【審査官】 山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0160824(US,A1)
【文献】 特開2009−032554(JP,A)
【文献】 特開2000−082538(JP,A)
【文献】 実開平06−036242(JP,U)
【文献】 特開平08−298160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/629
H01R 13/639
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタハウジングの後端から外方へ少なくとも一つのリード線が延出した電気コネクタであって、
前記コネクタハウジングの後端に着脱可能に装着され、側部に設けられた前記リード線を導き出すための開口及び後端側に設けられた外壁と備えて前記リード線を収納する収納室を画定する押圧補助部材を有し、
前記コネクタハウジングは、前記リード線を接続されるコネクタ端子を保持する端子保持部と、両端部を前記端子保持部の外壁に結合され、前記両端部間に前記端子保持部の前記外壁との間に空隙を画定する中間部を含むロック用片部とを有し、
前記ロック用片部は、前記中間部に設けられ、前記コネクタハウジングの接続対象部材に形成された被係合部と係脱可能に係合することにより前記接続対象部材との接続状態を保持する係合部と、前記係合部から前記ロック用片部の一方の端部の側に離れた位置に設けられ、押圧されることにより前記端子保持部の側に変位して前記係合部を前記被係合部との係合より離脱させるロック解除操作部を含み、
前記押圧補助部材は、前記コネクタハウジングに装着された状態において、前記ロック解除操作部と前記端子保持部との間の前記空隙に進入して前記ロック解除操作部の前記端子保持部の側への変位を禁止するロック解除禁止部を含んでおり、
前記係合部は、前記ロック解除禁止部が前記空隙に挿入された状態においても、前記ロック用片部の前記中間部の弾性変形のもとに前記被係合部と係合可能である電気コネクタ。
【請求項2】
前記押圧補助部材が、後壁と、左右1対の側壁と、上壁とを有し、前記上壁及び又は前記両側壁の端面が前記コネクタハウジングの後端面に衝当する衝当面し、前記上壁から前記ロック解除操作部が延出している請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項3】
前記両側壁に、前記コネクタハウジングに設けられた被係合部に係脱可能に弾発係合して前記押圧補助部材を前記コネクタハウジングに固定する係合部が設けられている請求項2に記載の電気コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気コネクタに関し、更に詳細には、プラグ、ジャックのようにリード線を接続された電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
電気コネクタとして、コネクタハウジングの接続対象部材に対する接続方向とは反対の端面(以降、後端面と云う)から外方へリード線が延出した電気コネクタが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−200649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コネクタハウジングを接続対象部材に対して接続する際には、コネクタハウジングの後端面に指や工具を当ててコネクタハウジングを接続対象部材に対して押すことが、作業性がよく、完全な接続が行われ易い。
【0005】
しかし、上述の電気コネクタのように、コネクタハウジングの後端面から外方へリード線が延出していると、リード線が邪魔になってコネクタハウジングの後端面に指や工具を当てることができず、接続対象部材に対する電気コネクタの接続を作業性よく行うことができない。特に、工具が用いられた機械押しによる電気コネクタの接続は、リード線が破損する虞があることにより、実施することができない。このような問題は、小型の電気コネクタで、コネクタハウジングが小さいものほど顕著になる。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、コネクタハウジングの後端面から外方へリード線が延出している電気コネクタでも、リード線に邪魔されることなく接続対象部材に対する接続が作業性よく行われ得るように改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの実施形態による電気コネクタは、コネクタハウジング(52)の後端から外方へ少なくとも一つのリード線(64)が延出した電気コネクタであって、前記コネクタハウジング(52)の後端に着脱可能に装着され、側部に設けられた前記リード線を導き出すための開口(73)及び後端側に設けられた後壁(74)と備えて前記リード線(64)を収納する収納室(82)を画定する押圧補助部材(72)を有する。
【0008】
この構成によれば、押圧補助部材(72)の後壁(74)がコネクタ接続時の押圧部として用いられることにより、リード線(64)に邪魔されることなくコネクタハウジング(52)の接続対象部材(10)に対する接続が作業性よく行われる。
【0009】
上記の電気コネクタにおいて、好ましくは、前記押圧補助部材が、前記後壁(74)と、左右1対の側壁(78、80)と、上壁(76)とを有し、前記上壁(76)及び又は前記両側壁(78、80)の端面(72A)が前記コネクタハウジング(52)の後端面(52B)に衝当する衝当面をなしている。
【0010】
この構成によれば、コネクタ接続時の押圧力が押圧補助部材(72)からコネクタハウジング(52)に良好に伝達される。
【0011】
上記の電気コネクタにおいて、好ましくは、前記両側壁(78、80)に、前記コネクタハウジング(52)に設けられた被係合部(88)に係脱可能に弾発係合して前記押圧補助部材(72)を前記コネクタハウジング(52)に固定する係合部(86)が設けられている。
【0012】
この構成によれば、コネクタハウジング(52)に対する押圧補助部材(72)の着脱が簡便に行われ得るようになる。
【0013】
上記の電気コネクタにおいて、好ましくは、前記コネクタハウジング(52)が接続対象に対する接続状態を保持するための係合部(68)及び前記係合部(68)の前記接続状態を解除するためのロック解除操作部(70)を有し、前記押圧補助部材(72)は、前記コネクタハウジング(52)に装着された状態において、前記ロック解除操作部(70)の変位を禁止するロック解除禁止部(90)を含んでいる。
【0014】
この構成によれば、ロック解除禁止部(90)の付加だけで、ロック解除の禁止が行われる。
【0015】
上記の電気コネクタにおいて、好ましくは、前記コネクタハウジング(52)は、前記リード線(64)を接続されるコネクタ端子(56)を保持する端子保持部(53)と、前記端子保持部(53)の外部に設けられて前記コネクタハウジング(52)の接続対象部材(10)に形成された被係合部(28)と係脱可能に係合して前記接続対象部材(10)との接続状態を保持する係合部(68)及び押圧されることにより変位して前記係合部(68)を前記被係合部(28)との係合より離脱させるロック解除操作部(70)とを含み、前記押圧補助部材(72)は、前記コネクタハウジング(52)に装着された状態において、前記ロック解除操作部(70)と前記端子保持部(53)との間に進入して前記ロック解除操作部(70)の変位を禁止するロック解除禁止部(90)を含んでいる。
【0016】
この構成によれば、ロック解除禁止部(90)の付加だけで、ロック解除の禁止が行われる。
【0017】
上記の電気コネクタにおいて、好ましくは、前記コネクタハウジング(52)は前記端子保持部(53)の外壁(53A)から離れて延在して両端を前記外壁(53A)に結合されたロック用片部(66)を含み、前記ロック用片部(66)に前記係合部(68)が設けられ、前記ロック用片部(66)の一部が前記ロック解除操作部(70)をなしており、前記外壁(53A)と前記ロック用片部(66)との間に前記端面(52B)の側に開口して前記ロック解除禁止部(70)が挿入可能な空隙(67)が画定されている
【0018】
この構成によれば、簡単な構成のもとに、ロック解除の禁止が確実に行われる。
【0019】
上記の電気コネクタにおいて、好ましくは、前記係合部(68)は、前記ロック解除禁止部(70)が前記空隙(67)に挿入される状態において、前記ロック用片部(66)の弾性変形のもとに慣性ロック式に前記被係合部(28)と係合可能である。
【0020】
この構成によれば、コネクタハウジとング(52)に押圧補助部材(72)が装着された状態で、コネクタハウジング(52)と接続対象部材(10)との接続を行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
本実施形態による電気コネクタによれば、コネクタハウジングの後端面から外方へリード線が延出している電気コネクタでも、リード線に邪魔されることなく接続対象部材に対する接続が作業性よく行われる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一つの実施形態による電気コネクタの斜視図
図2】本実施形態による電気コネクタの部分断面の斜視図
図3】本実施形態による電気コネクタの押圧補助部材を取り外した状態の斜視図
図4】本実施形態による電気コネクタの断面図
図5】本実施形態による電気コネクタの押圧補助部材を取り外した状態の断面図
図6】本実施形態による電気コネクタの雌側コネクタハウジングの斜視図
図7】本実施形態による電気コネクタの雌側コネクタハウジングの部分断面の斜視図
図8】本実施形態による電気コネクタの押圧補助部材の斜面図
図9】本実施形態による電気コネクタの雌側コネクタハウジング及びサイドリテーナの斜視図
図10】本実施形態による電気コネクタの雌側コネクタハウジングのサイドリテーナの配置部の断面図
図11】同サイドリテーナの配置部の要部の拡大断面図
図12】同サイドリテーナの配置部の要部の拡大正面図(図11のA矢視図)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明による電気コネクタの一つの実施形態を、図1図12を参照して説明する。
【0024】
本実施形態の電気コネクタは、中継用コネクタであり、図1図5に示されているように、互いに接続される雄側コネクタ10及び雌側コネクタ50を有する。
【0025】
雄側コネクタ10は合成樹脂の成形品による雄側コネクタハウジング12を有する。雄側コネクタハウジング12は長方体状の端子保持部13及び端子保持部13の前側(図4で見て右側)に連続するコネクタ差込み筒状部15を有する。端子保持部13は上下2段5列の複数の端子室14を画定している。コネクタ差込み筒状部15はコネクタ差込み室16を画定している。コネクタ差込み室16は、矩形の横断面形状による長方体状の空間であり、雄側コネクタハウジング12の前端面12A(図4で見て右側の端面)に開口している。各端子室14は、端子保持部13を左右方向に延在し、一方において雄側コネクタハウジング12の後端面12B(図4で見て左側の端面)に開口し、他方においてコネクタ差込み室16に向けて開口している。
【0026】
各端子室14には金属製の雄型コネクタ端子18が配置されている。各雄型コネクタ端子18は端子保持部13に端子毎に形成された係止爪20及び端子保持部13に形成されたリテーナ孔22に挿入された合成樹脂製の共通のサイドリテーナ24との係合によって雄側コネクタハウジング12に係止されている。各雄型コネクタ端子18は端子室14に位置する芯線バレルによるリード線接続部18A及び端子室14からコネクタ差込み室16に延出した雄側コネクト部18Bを含む。
【0027】
リード線接続部18Aには雄側コネクタハウジング12の後端面12B側から各端子室14に挿入されたリード線26の芯線が導通状態で接続されている。これにより、各リード線26は雄側コネクタハウジング12の接続相手(接続対象部材)である雌側コネクタ50に対する接続方向(右方向)とは反対の端面、つまり後端面12Bから外方(後方)へ延出している。
【0028】
コネクタ差込み筒状部15には、コネクタ差込み室16を画定する壁部(図4で見て上壁部)からコネクタ差込み室16に向けて下方に突出した固定側ロック用突部(被係合部)28が形成されている。固定側ロック用突部28は、コネクタ差込み室16の開口端の近傍にあり、コネクタ差込み室16の奥側に向く面がコネクタ差込み室16に対する雌側コネクタ50の差込み方向(接続方向)に直交する方向に延在する係止面28Aになっている。
【0029】
雌側コネクタ50は合成樹脂の成形品による雌側コネクタハウジング52を有する。尚、雌側コネクタ50の説明では、前後方向が雄側コネクタ10の説明とは反転し、図4で見て左側が前側で、右側が後側になる。雌側コネクタハウジング52はコネクタ差込み室16に差込み可能な長方体状の端子保持部53を有する。端子保持部53は上下2段5列の複数の端子室54を画定している。各端子室54は、端子保持部53を左右方向に延在し、一方において雌側コネクタハウジング52の後端面52B(図4で見て右側の端面)に開口し、他方において雌側コネクタハウジング52の前端面52A(図4で見て左側の端面)に開口している。
【0030】
各端子室54には金属製の雌型コネクタ端子56が配置されている。各雌型コネクタ端子56は雌側コネクタハウジング52に端子毎に形成された係止爪58及び雌側コネクタハウジング52のリテーナ孔60に挿入された合成樹脂製の共通のサイドリテーナ62との係合によって雌側コネクタハウジング52に係止されている。各雌型コネクタ端子56は端子室54に位置する芯線バレルによるリード線接続部56A及び雄側コネクト部18Bを差し込まれる雌側コネクト部56Bを含む。
【0031】
リード線接続部56Aには雌側コネクタハウジング52の後端面52B側から各端子室54に挿入されたリード線64の芯線が導通状態で接続されている。これにより、各リード線64は雌側コネクタハウジング52の接続相手である雄側コネクタ10に対する接続方向(左方向)とは反対の端面、つまり後端面52Bから外方(後方)へ延出している。
【0032】
雌側コネクタハウジング52は、端子保持部53の上壁(外壁)53Aから上方に離れて左右方向に延在し、両端を上壁53Aに固定された両持ち片によるロック用片部66を含む。上壁53Aとロック用片部66との間には当該両者によって空隙67が画定されている。
【0033】
ロック用片部66の中間部にはロック用片部66から上方に突出した逆止形状の可動側ロック用突部(係合部)68が形成されている。可動側ロック用突部68は、雌側コネクタハウジング52のコネクタ差込み室16に対する差込み方向(接続方向)とは反対側に向く面がコネクタ差込み室16に対する雌側コネクタ50の差込み方向(接続方向)に直交する方向に延在する係止面68Aになっている。
【0034】
本実施形態では、図4及び図5に示されているように、雌側コネクタハウジング52の前端面52Aが当該前端面52Aに対向するコネクタ差込み室16の奥面16Aに当接する位置にまで雌側コネクタハウジング52がコネクタ差込み室16に差し込まれた状態をコネクタの完全接続状態と云う。この完全接続状態では、雄側コネクト部18Bと雌側コネクト部56Bとが大きい電気抵抗を生じない所定の接触長をもって導通状態で接触する。
【0035】
この完全接続状態では、図4及び図5に示されているように、可動側ロック用突部68が、ロック用片部66の弾性変形のもとに、固定側ロック用突部28を乗り越えて固定側ロック用突部28よりコネクタ差込み室16の奥側に位置し、固定側ロック用突部28の係止面28Aと可動側ロック用突部68の係止面68Aとが互に対向する係合(係止)状態になる。これにより、雌側コネクタハウジング52がコネクタ差込み室16から抜き出ることを阻止されたロック状態になり、完全接続状態が保持される。
【0036】
ロック用片部66は、後端面52Bの側に、上述の完全接続状態においてコネクタ差込み室16外に位置する部分を含み、当該部分がロック解除操作部70をなす。ロック解除操作部70は、平らな上面70Aを下方に向けて押圧されることにより、図5に仮想線によって示されているように、ロック用片部66の弾性変形のもとに、端子保持部53の上壁53Aの側に変位し、これに伴って可動側ロック用突部68が下方に変位して固定側ロック用突部28との係合より離脱する。ロック解除操作部70の上面70Aとは反対の下面70Bは空隙67の上側の面をなす。
【0037】
この状態では、可動側ロック用突部68の係止面68Aが固定側ロック用突部28の係止面28Aに対して下方に変位していて、両係止面28A、68Aが相対向することがなく、可動側ロック用突部68が固定側ロック用突部28と干渉することなく雌側コネクタハウジング52がコネクタ差込み室16から抜き出ることができるロック解除の状態になる。
【0038】
ロック用片部66の後端面52B側における端子保持部53に対する接続は、図3及び図7に示されているように、柱部69によって左右端のみにおいて行われている。このことにより、空隙67は、図3に示されているように、左右の柱部69間に矩形の開口67Aをもって後端面52Bの側に開口しており、開口67Aの周囲には後端面52Bと面一の平らな補助押圧面71が形成される。
【0039】
雌側コネクタハウジング52の後端面52Bの側の外部には合成樹脂の成形品による押圧補助部材72が着脱可能に装着される。押圧補助部材72は、コネクタの接続方向に直交する方向に延在する矩形の後壁74と、後壁74の上辺、左辺及び右辺に沿って後壁74から前方に延出した矩形の上壁76、左壁78及び右壁80とを有して、これらの壁部の内側にリード線64を収納する収納室82を画定し、下側がリード線64の取り出しのために開口73によって開放された箱状をなしている。押圧補助部材72は、図8に示されているように、左壁78及び右壁80から各々前方に延出した脚片84を有し、各脚片84に端部86を有する開口(係合部)85が2個ずつ形成されている。
【0040】
押圧補助部材72は、図1図2図4及び図5に示されているように、上壁76、左壁78及び右壁80による前端面72Aが雌側コネクタハウジング52の補助押圧面71に衝当するように配置され、前端面72Aが衝当面をなしている。
【0041】
押圧補助部材72は左右の各端部86が雌側コネクタハウジング52の左右の各壁面に形成されている係止突部88(図2図3図6参照)に弾発係合することにより雌側コネクタハウジング52に固定される。これにより、雌側コネクタハウジング52に対する押圧補助部材72の着脱が簡便に行われる。
【0042】
押圧補助部材72が上述のように雌側コネクタハウジング52に取り付けられた状態では、後壁74の外壁面75は、コネクタの接続方向に直交する方向に延在し、前端面72Aと平行な平面をなす。
【0043】
押圧補助部材72は、図4及び図8に示されているように、上壁76から前方に延出した突出片状のロック解除禁止部90を有する。ロック解除禁止部90は、開口67Aからロック解除操作部70と端子保持部53との間の空隙67に進入可能であり、押圧補助部材72が雌側コネクタハウジング52に装着されることにより、空隙67に進入してロック解除操作部70の下面70Bに当接し、ロック解除操作部70が端子保持部53の側に変位することを禁止する。このように、ロック解除禁止部90の付加だけで、簡単な構成のもとに、ロック解除の禁止が確実に行われる。
【0044】
これにより、押圧補助部材72が雌側コネクタハウジング52に装着された状態では、ロック解除状態になることがなく、不用意に、雄側コネクタ10と雌側コネクタ50との接続が解除されることがない。つまり、不用意に、雌側コネクタハウジング52がコネクタ差込み室16から抜き出ることがなく、コネクタの接続の安全性及び信頼性が向上する。
【0045】
押圧補助部材72が雌側コネクタハウジング52に装着された状態では、全てのリード線64は、収納室82に納められた状態で下方に折り曲って、不規則に「ばらける」ことなく、押圧補助部材72の下方に取り出される。これにより、押圧補助部材72が複数のリード線64の結束体をなし、雌側コネクタハウジング52からの複数のリード線64の取り出しが下方側にまとめられ、複数のリード線64の取扱性がよくなる。
【0046】
雄側コネクタ10と雌側コネクタ50との分離は、押圧補助部材72が雌側コネクタハウジング52から取り外され、ロック解除禁止部90によってロック解除操作部70が端子保持部53の側に変位することを禁止されていない状態で行われる。
【0047】
雄側コネクタ10と雌側コネクタ50との接続は、押圧補助部材72が雌側コネクタハウジング52に装着された状態で、雌側コネクタハウジング52を図4で見て右側からコネクタ差込み室16に差し込むことにより行われる。雌側コネクタハウジング52を完全接続状態までコネクタ差込み室16に差し込む作業は、外壁面75を図4で見て左側に押すことによって行われることにより、リード線64が邪魔になることがなく且つリード線64に押圧力を与えることなく作業性よく行われ、工具が用いられた機械押しによって行われることも可能になる。
【0048】
押圧補助部材72の前端面72Aが雌側コネクタハウジング52の補助押圧面(後端面)71に衝当する衝当面をなしているから、コネクタ接続時の押圧力が押圧補助部材72から雌側コネクタハウジング52に良好に伝達される。
【0049】
押圧補助部材72が雌側コネクタハウジング52に装着された状態では、ロック解除操作部70が端子保持部53の側に変位することが禁止されているが、可動側ロック用突部68は、可動側ロック用突部68の前側が雌側コネクタハウジング52の後端面52Bに押し付けられることに伴ってロック用片部66が下方に弾性変形することにより、慣性ロック式に固定側ロック用突部28を乗り越えることができ、完全接続状態において係止面68Aが固定側ロック用突部28の係止面28Aに正対する。これにより、雄側コネクタ10と雌側コネクタ50との接続が抜け止めされたロック状態になる。
【0050】
尚、雄側コネクタ10と雌側コネクタ50との接続は、押圧補助部材72が雌側コネクタハウジング52から取り外された状態で行うこともできる。この場合には、雌側コネクタハウジング52の補助押圧面71を用いて雌側コネクタハウジング52をコネクタ差込み室16に差し込む作業が行われればよい。
【0051】
次に、雌側コネクタ50に設けられるサイドリテーナ62によるリテーナ構造の詳細を、図9図12を参照して説明する。
【0052】
雌側コネクタハウジング52に形成されたリテーナ孔60は、上下2段の端子室54の境界部(図4及び図5参照)を端子室54の左右の配列方向に延在し、雌側コネクタハウジング52を貫通して両端が開口した貫通孔である。
【0053】
サイドリテーナ62はロッド状のリテーナ本体100及びリテーナ本体100の外端に形成されたエンドフランジ部102を含む。エンドフランジ部102は、リテーナ本体100の軸線方向に直交する方向に延在する平板状をなし、リテーナ本体100がリテーナ孔60に挿入された状態において、雌側コネクタハウジング52の外方に露呈し、外部から作業者によって視認され得る。
【0054】
リテーナ本体100は、上下に設けられた当接部100Aを有し、リテーナ孔60に挿入されることにより、図4及び図5に示されているように、各当接部100Aが各端子室54に露呈して各列の上下の各雌型コネクタ端子56の雌側コネクト部56Bの後側の端部56Cに当接する。この当接により、各雌型コネクタ端子56が、雌側コネクタハウジング52に係止され、端子室54から後方に抜け出すことが阻止される。
【0055】
リテーナ本体100は下側にのみ凹部100B(図4及び図5参照)を有する。リテーナ孔60の入口部の下側には凹部100Bがスライド可能に係合する突部60A(図6及び図9参照)が形成されている。この構造により、リテーナ本体100が上下に反転してリテーナ孔60に挿入されることを禁止するフールプルーフ作用が得られる。
【0056】
エンドフランジ部102には後縁近傍を後縁に沿って上下に延在する長孔102A及び後縁を上下に延在する切欠部102Bが形成されており、長孔102Aと切欠部102Bとによって両持ち梁状のブリッジ片による弾性変形部104が画定されている。弾性変形部104には当該弾性変形部104から内方に向けて延出する突片105が一体成形されている。突片105の遊端には長孔下方に突出した係合爪106(図11参照)が一体成形されている。
【0057】
雌側コネクタハウジング52はリテーナ孔60の入口部の側に、エンドフランジ部102の全体が嵌り込み且つエンドフランジ部102の厚さと同じ深さによる拡張凹部61が形成されている。雌側コネクタハウジング52は拡張凹部61に突出して係合爪106が係合する係合突部63が形成されている。
【0058】
係合爪106は、図11(A)〜(C)に示されているように、リテーナ孔60に対するリテーナ本体100の挿入によって、サイドリテーナ62がリテーナ孔60の正規の挿入位置(所定の挿入位置)まで挿入される過程、つまり、リテーナ本体100の全体がリテーナ孔60に挿入される過程で、弾性変形部104の弾性変形のもとに係合突部63を乗り越え、係合突部63を乗り越えてリテーナ本体100の全体がリテーナ孔60に挿入された所定の挿入位置において係合突部63に弾発係合することにより、サイドリテーナ62を雌側コネクタハウジング52に係止する。
【0059】
これにより、弾性変形部104は、図11(A)〜(C)及び図12(A)〜(C)に示されているように、サイドリテーナ62がリテーナ孔60の正規の挿入位置まで挿入される手前で、係合爪106が係合突部63を乗り越える際に直線状から円弧状(弓状)に弾性変形し、係合爪106が係合突部63を乗り越えた後には弾発力によって円弧状から直線状の元の形状に戻る。
【0060】
この弾性変形部104の形状の変化は、エンドフランジ部102が雌側コネクタハウジング52の外方に露呈していることから、外部から作業者によって視認される。これにより、作業者は弾性変形部104の形状を見ることにより、サイドリテーナ62がリテーナ孔60の正規の挿入位置まで挿入されたことを的確に確認することができ、このことはサイドリテーナ62のリテーナ孔60に対する挿入が不完全であることを未然に回避することに寄与する。
【0061】
弾性変形部104の形状変化は、エンドフランジ部102がリテーナ本体100の横断面積より大きい表面積を有することから、弾性変形部104のサイズが大きくなり、作業者によって視認され易い。
【0062】
サイドリテーナ62がリテーナ孔60の正規の挿入位置まで挿入された状態では、エンドフランジ部102の外表面102Cと雌側コネクタハウジング52の一方の外壁52Cとが面一になる。このことによっても、サイドリテーナ62がリテーナ孔60の正規の挿入位置まで挿入された状態を確認でき、異なる複数の確認によってサイドリテーナ62のリテーナ孔60に対する挿入が不完全であることを確実に判別することができる。
【0063】
係合爪106は弾性変形部104から内方に向けて延出した突片105の遊端に設けられているから、係合爪106が外部に露呈することがなく、見栄えがよい。
【0064】
リテーナ本体100の長さ設定により、サイドリテーナ62がリテーナ孔60の正規の挿入位置まで挿入された状態では、図10に示されているように、リテーナ本体100の先端面100Cが雌側コネクタハウジング52の他方の外壁52Dと略面一になる。このことによっても、サイドリテーナ62がリテーナ孔60の正規の挿入位置まで挿入された状態を確認でき、異なる複数の確認によってサイドリテーナ62のリテーナ孔60に対する挿入が不完全であることを確実に判別することができる。また、見栄えもよい。
【0065】
サイドリテーナ62を雌側コネクタハウジング52から取り外す作業は、リテーナ本体100の先端面100Cを押し、係合爪106と係合突部63との係合を解除することによって簡便に行うことができる。
【0066】
なお、雄側コネクタハウジング12のリテーナ孔22に挿入されるサイドリテーナ24による雄側コネクタ10のリテーナ構造は、上述した雌側コネクタ50のリテーナ構造と同じであるので、その説明は省略する。
【0067】
以上、本発明を、その好適な実施形態について説明したが、当業者であれば容易に理解できるように、本発明はこのような実施形態により限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、ロック解除禁止作用が不要の場合には、ロック解除禁止部90の前後長が短縮されるか、ロック解除禁止部90が省略されればよい。雄側コネクタ10及び雌側コネクタ50は横配置に限られることはなく、縦配置や傾斜配置であってもよい。電気コネクタの極数(端子数)は10に限られることはなく、最小は極数1であってもよい。電気コネクタは中継用コネクタに限られることなく、接続対象部材がプリント回路基板や機器に取り付けられた電気コネクタであってもよい。また、上記実施形態に示した構成要素は必ずしも全てが必須なものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
【符号の説明】
【0068】
10 :雄側コネクタ
12 :雄側コネクタハウジング
12A :前端面
12B :後端面
13 :端子保持部
14 :端子室
15 :コネクタ差込み筒状部
16 :コネクタ差込み室
16A :奥面
18 :雄型コネクタ端子
18A :リード線接続部
18B :雄側コネクト部
20 :係止爪
22 :リテーナ孔
24 :サイドリテーナ
26 :リード線
28 :固定側ロック用突部(被係合部)
28A :係止面
50 :雌側コネクタ
52 :雌側コネクタハウジング
52A :前端面
52B :後端面
52C :外壁
52D :外壁
53 :端子保持部
53A :上壁
54 :端子室
56 :雌型コネクタ端子
56A :リード線接続部
56B :雌側コネクト部
56C :端部
58 :係止爪
60 :リテーナ孔
60A :突部
61 :拡張凹部
62 :サイドリテーナ
63 :係合突部(被係合部)
64 :リード線
66 :ロック用片部
67 :空隙
67A :開口
68 :可動側ロック用突部(係合部)
68A :係止面
69 :柱部
70 :ロック解除操作部
70A :上面
70B :下面
71 :補助押圧面
72 :押圧補助部材
72A :前端面(衝当面)
73 :開口
74 :後壁
75 :外壁面
76 :上壁
78 :左壁(側壁)
80 :右壁(側壁)
82 :収納室
84 :脚片
85 :開口
86 :端部(係合部)
88 :係止突部(被係合部)
90 :ロック解除禁止部
100 :リテーナ本体
100A :当接部
100B :凹部
100C :先端面
102 :エンドフランジ部(端部)
102A :長孔
102B :切欠部
102C :外表面
104 :弾性変形部(ブリッジ片)
105 :突片
106 :係合爪(係合部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12