(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6887294
(24)【登録日】2021年5月20日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】燃焼装置
(51)【国際特許分類】
F24H 9/02 20060101AFI20210603BHJP
F23L 17/02 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
F24H9/02 301D
F23L17/02 602B
F23L17/02 603B
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-83706(P2017-83706)
(22)【出願日】2017年4月20日
(65)【公開番号】特開2018-179464(P2018-179464A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2019年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】寺西 章吾
【審査官】
礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−203558(JP,A)
【文献】
実開昭51−017846(JP,U)
【文献】
実開昭49−150945(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0315780(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 9/02 − 9/14
F23L 17/00 − 17/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケースと、前記本体ケースに収容されたバーナと、前記本体ケース内部に設けられて、前記バーナの燃焼排気が通過する位置に配設された熱交換器と、前記本体ケースの一側に設けられて、前記熱交換器を通過した燃焼排気を前記本体ケースの外部に排出する筒状の排気口部とを備える燃焼装置であって、
燃焼排気がファンによって強制的に流動されるものにおいて、
前記排気口部は、該排気口部の内部を流れる燃焼排気の流動方向に延びる整流部と、前記排気口部へ向かって流れる風を突き当てるべく前記排気口部の軸線に交差する風突き当て面と、前記風突き当て面を越えて下流に流れた前記燃焼排気を集合させる排気集合案内部とを備え、
前記風突き当て面は、前記整流部の下流端に設けられ、
前記排気集合案内部は、その上流端が前記風突き当て面よりも下流側に位置することを特徴とする燃焼装置。
【請求項2】
請求項1記載の燃焼装置において、
前記排気口部の前記排気集合案内部は、前記燃焼排気を該排気口部の軸線に沿った方向にのみ案内する形状とされていることを特徴とする燃焼装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の燃焼装置において、
前記整流部は、前記排気口部の軸線に沿った平坦な一対の整流面を備え、
前記風突き当て面は、前記両整流面の下流端に連設され、
前記両整流面は、上流端から互いに離反する方向に傾斜する一対の傾斜面のそれぞれに連続して形成されていることを特徴とする燃焼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯器等の燃焼装置に関し、特に、燃焼排気を本体ケースの外部に排出する筒状の排気口部を備える燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の給湯器等の燃焼装置においては、本体ケースに収容したバーナの燃焼排気を外部に放出するために、本体ケースの前面側に筒状の排気口部が設けられる。この排気口部に強風が吹きつけると、例えば、冬季に冷風が排気口部を逆流して本体ケース内部へ侵入し、本体ケースに収容されている熱交換器やバーナが極度に冷却されて損傷に至るおそれがある。
【0003】
従来、燃焼排気を排気口部の先端側(排気口部における燃焼排気の流動方向の下流端側)で排気口部の軸線に交差する側方に屈曲させて放出するように構成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
これによれば、排気口部に対してその軸線方向外側から強風が吹きつけても、排気口部の内部への風の侵入を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−47402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来のように、排気口部の側方に燃焼排気を出すようにすると、排気口部内部における燃焼排気の急激な屈曲により、燃焼排気の円滑な放出を阻害されるおそれがある。しかも、排気口部から燃焼装置側に向かう風を受けた燃焼排気が燃焼装置側に流れやすく、燃焼装置の本体ケース表面で結露し、本体ケースに汚染や腐食が発生するおそれがある。
【0007】
上記の点に鑑み、本発明は、排気口部からの燃焼排気の円滑な放出を阻害することなく、風の侵入による悪影響を防止することができる燃焼装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、本発明は、本体ケースと、前記本体ケースに収容されたバーナと、前記本体ケース内部に設けられて、前記バーナの燃焼排気が通過する位置に配設された熱交換器と、前記本体ケースの一側に設けられて、前記熱交換器を通過した燃焼排気を前記本体ケースの外部に排出する筒状の排気口部とを備える燃焼装置
であって、燃焼排気がファンによって強制的に流動されるものにおいて、前記排気口部は、
該排気口部の内部を流れる燃焼排気の流動方向に延びる整流部と、前記排気口部へ向かって流れる風を突き当てるべく前記排気口部の軸線に交差する風突き当て面と、前記風突き当て面を越えて下流に流れた前記燃焼排気を集合させる排気集合案内部とを
備え、前記風突き当て面は、前記整流部の下流端に設けられ、前記排気集合案内部は、その上流端が前記風突き当て面よりも下流側に位置することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、排気口部からの燃焼排気の排出が行われていないとき(即ち、排気口部内に燃焼排気の排出方向への流れがないとき)、外部から排気口部の内部に風が侵入しようとしても、前記風突き当て面に風が突き当たって排気口部の内部への侵入が阻止される。これにより、例えば冬季に、本体ケース内部への冷気の侵入が抑制され、風の侵入による悪影響を防止することができる。
【0010】
更に、排気口部から燃焼排気の排出が行われているとき、排気集合案内部により排気口部の内部の燃焼排気の圧力が高くなって流速が高くなる。これにより、外部から排気口部の内部に侵入しようとする風に対抗して燃焼排気を円滑に排出することができる。
【0011】
また、本発明において、前記排気口部の前記排気集合案内部は、前記燃焼排気を該排気口部の軸線に沿った方向にのみ案内する形状とされていることを特徴とする。
【0012】
これによれば、排気口部から排出された燃焼排気が、風によって排気方向の反対側に位置する本体ケース側に流されにくくなり、本体ケース表面での結露が抑制され、本体ケースの汚染や腐食等の発生を防止することができる。
【0013】
また、本発明において、
前記整流部は、前記排気口部の軸線に沿った平坦な一対の整流面を備え、前記風突き当て面は、
前記両整流面の下流端に連設され、
前記両整流面は、上流端から互いに離反する方向に傾斜する一対の傾斜面のそれぞれに連続して形成されていることを特徴とする。
【0014】
一対の傾斜面の案内によって2つの流れに分けられた燃焼排気は、両整流面に沿って流れることにより、十分に整流された状態で風突き当て面を越える。これにより、排気集合案内部によって燃焼排気が集合されるときに生じる燃焼排気の乱流を少なくすることができ、排気口部から放出される燃焼排気の流速低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】本実施形態の給湯器の構成を模式的に示す説明図。
【
図3】本実施形態における排気口部の説明的断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。本実施形態の燃焼装置である給湯器1は、
図1に示すように、本体ケース2の前面パネル3の上側位置に排気口部4が設けられ、図示しないが、家屋の外壁面、マンション等においてはバルコニーや通路に取り付けられて屋外に設置される。
【0017】
本体ケース2の内部には、
図2に示すように、給湯用熱源機5が収容されている。この給湯用熱源機5は、バーナ6を内蔵する燃焼筐7(燃焼室)を備えている。燃焼筐7には、下方から燃焼ファン8により燃焼空気が供給される。燃焼筐7内の上部には、バーナ6の燃焼排気中の顕熱を回収する顕熱熱交換器9が配置されている。
【0018】
顕熱熱交換器9は、多数の吸熱フィン10と、これら吸熱フィン10を貫通する複数の吸熱管11とを備えている。そして、これら吸熱管11を直列に接続して一連の熱交換水路(給水路)を構成し、この熱交換水路に流れる給湯用水が燃焼排気中の顕熱を吸収して加熱されるようになっている。
【0019】
燃焼筐7の上方には、顕熱熱交換器9を通過した燃焼排気が燃焼筐7の上面後部に設けた連通部12を介して流入する排気筐13が設けられている。排気筐13内には、燃焼排気中の潜熱を回収する潜熱熱交換器14が配設されている。
【0020】
潜熱熱交換器14は、排気筐13内に横設した複数の吸熱管15を備えている。そして、これら吸熱管15に未加熱の給湯用水を流して、燃焼排気中の水蒸気を吸熱管15の外面で凝縮させるようにしている。これにより、潜熱熱交換器14に流れる給湯用水が潜熱を吸収して加熱される。潜熱熱交換器14で加熱された給湯用水は顕熱熱交換器9に送られる。
【0021】
排気筐13の前側面には、潜熱熱交換器14の側面に臨む位置で横向き且つ横長に開口する排気通過部16が形成されており、排気口部4は排気通過部16に連通する位置に取り付けられている。
【0022】
これにより、潜熱熱交換器14を通過した燃焼排気は排気通過部16に向い、排気通過部16を通過した燃焼排気は排気口部4を介して機外に排出される。なお、給湯運転中に生成される燃焼排気は、前記燃焼ファン8により強制的に流動されて排気通過部16へ向う。
【0023】
排気口部4は、
図1に示すように、支持部17を介して前面パネル3に支持されている。
図3に示すように、排気口部4の内部には、上壁部材18と下壁部材19とが取り付けられており、上壁部材18と下壁部材19とにより上下に平坦面が形成されている。更に、上壁部材18と下壁部材19との間には、仕切り整流部20が設けられている。
【0024】
これによって、上壁部材18と仕切り整流部20とで流路断面が矩形の第1排気流路21が形成され、下壁部材19と仕切り整流部20とで流路断面が矩形の第2排気流路22が形成され、燃焼排気は、第1排気流路21と第2排気流路22との上下2つの流れに分けられて排気口部4の内部を流動する。
【0025】
仕切り整流部20は、排気口部4の軸線に沿った平坦な一対の整流面23,24を備えている。両整流面23,24の上流端には、一対の傾斜面25,26が連続して設けられている。両傾斜面25,26は上流端から互いに離反する方向に湾曲しつつ傾斜している。これにより燃焼排気を円滑に分流する。なお、本実施形態においては、両傾斜面25,26はその上流端の相互の境界部分も明瞭でない湾曲形状に形成されている。しかし、これに限らず、図示しないが、本発明における一対の傾斜面は、平坦に形成されて上流端の境界角部を起点として下流に向かって次第に離反するように形成されていてもよい。
【0026】
図3に示すように、仕切り整流部20の下流端には風突き当て面27が設けられている。風突き当て面27は、排気口部4の軸線に直交する方向に広がる面であり、排気口部4の下流端から所定距離を存する位置に配置されている。
【0027】
風突き当て面27よりも更に下流側には、排気合流案内部28(排気集合案内部)が設けられている。
【0028】
排気合流案内部28は、排気口部4の先端(下流端)外周に装着する環状の装着部材29と、一対の案内片30,31を備えている。両案内片30,31は、装着部材29の先端(下流端)に支持されて、仕切り整流部20によって上下2つに分けられた流れを、風突き当て面27の下流側正面で一つに合流させる。両案内片30,31は、燃焼排気を合流させるだけでなく、流れを一つに収束させることにより流速を速めて排気口部4の軸線に沿った方向にのみ案内する。
【0029】
以上の構成による排気口部4によれば、バーナ6が燃焼していないために排気口部4から燃焼排気が排出されていないとき(燃焼ファン8が停止しているとき)、排気口部4の外部から内部への風の吹き込みが風突き当て面27により抑制される。
【0030】
また、バーナ6が燃焼していて燃焼排気が排気口部4から排出されているとき(燃焼ファン8が回転しているとき)、排気合流案内部28による燃焼排気の集合に伴い排気口部4の内部の燃焼排気の圧力が上昇し、排気口部4への外部からの風の侵入が確実に防止される。
【0031】
これにより、例えば冬季に、本体ケース2内部への冷気の侵入が抑制され、風の侵入による悪影響を防止することができる。
【0032】
また、排気合流案内部28によって燃焼排気が排気口部4の軸線に沿った方向にのみ案内されるので、排気口部4の排気方向に対して左右方向に位置する家屋の壁や、排気口部4の排気方向の反対に位置する本体ケース2に燃焼排気が接触することがなく、家屋の壁や本体ケース2の汚染や腐食等の発生を防止することができる。
【0033】
また、仕切り整流部20が備える平坦な一対の整流面23,24により、燃焼排気の整流作用が得られ、燃焼排気の合流時の流れが乱れにくい。
【0034】
なお、本実施形態においては、排気口部4の先端部に排気合流案内部28を取り外し可能に設けている。これによれば、排気合流案内部28を取り外して排気口部4の掃除がしやすい。しかし、本発明においては、これに限るものではなく、図示しないが、排気口部4の先端部に排気合流案内部28を一体に設けてもよい。
【0035】
また、本実施形態においては、排気口部4の内部で2つに分かれた流れを排気合流案内部28で1つに合流させるものを示したが、これ以外に、
図4に示す構成の排気口部32を挙げることができる。
【0036】
即ち、
図4に示すように、排気口部32は、その中央部に、軸線に沿って延設された円柱状の案内部材33が設けられている。案内部材33は複数本の支持部材34によって排気口部32の内部に支持されている。案内部材33は、排気口部32の内部を仕切ってはおらず、その外周面で燃焼排気を案内する。
【0037】
案内部材33の下流端には円形の風突き当て面35が設けられている。風突き当て面35は排気口部32の下流端から上流側へ所定距離を存した位置に配置されている。
【0038】
更に、風突き当て面35よりも下流側には排気集合案内部36が設けられている。排気集合案内部36は、排気口部32の軸線方向外側に向かって突出して風突き当て面35に対向する部分が開口するテーパ状に形成されている。
【0039】
以上の構成の排気口部32によれば、排気口部32から燃焼排気が排出されていないとき、排気口部32の外部から内部への風の吹き込みが風突き当て面35により抑制される。
【0040】
また、排気口部32から燃焼排気が排出されているとき、排気集合案内部36による燃焼排気の集合に伴い排気口部32の内部の燃焼排気の圧力が上昇し、排気口部32への外部からの風の侵入が確実に防止される。
【0041】
また、排気集合案内部36によって燃焼排気が排気口部32の軸線に沿った方向にのみ案内されるので、排気口部32の排気方向に対して左右方向に位置する家屋の壁や、排気口部32の排気方向の反対に位置する本体ケースに燃焼排気が接触することがなく、家屋の壁や本体ケースの汚染や腐食等の発生を防止することができる。
【符号の説明】
【0042】
1…給湯器(燃焼装置)、2…本体ケース、4,32…排気口部、6…バーナ、14…潜熱熱交換器(熱交換器)、
8…燃焼ファン、20…仕切り整流部、23,24…整流面、25,26…傾斜面、27,35…風突き当て面、28…排気合流案内部(排気集合案内部)、36…排気集合案内部。