【文献】
廣石恒二 ほか,「現地地震計を用いた地震防災システムの開発」,大成建設技術センター報,2013年,No.46,Page.31-1〜31-5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記S波予測部は、受信したP波データと、前記S波予測関数データベースに記憶されるS波予測関数と、前記距離減衰関数データベースに記憶される距離減衰関数と、に基づいてS波の強度を予測することを特徴とする請求項3に記載の地震警報システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のシステムにおいては、各地震計は、相当程度の距離が離れて分散設置されていることが想定されているので、これらの地震計からの情報をセンターサーバーなどに集約したとしても、初期微動(P波)を迅速かつ精度高く検出することが難しい、という問題があった。
【0005】
また、複数の地震計からの情報をセンターサーバーに集約し、複数の地震計からの情報に基づいて、当該センターサーバーで主要振動(S波)の到来を予測したとしても、膨大な地震計のデータ処理に時間を要してしまい、緊急警報を発することができるようなものではない、という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記課題を解決するものであって、本発明に係る地震警報システムは、建物や事業所内の敷地内に設けられる3つ以上の地震計と、前記3つ以上の地震計
によって計測された波形データの間の相関係数を算出する算出部と、前記算出部によって算出された相関係数に基づいてP波を検出したことを判定するP波検出判定部と、前記P波検出判定部でP波を検出判定したとき、ネットワークを介してP波データを外部に送信すると共に、
外部のP波検出判定部でP波を検出判定したとき、外部からP波データを、ネットワークを介して受信する通信部と、前記通信部で外部からP波データを受信すると、受信したP波データに基づいてS波の強度を予測するS波予測部と、前記S波予測部で予測されるS波の強度が所定値以上であるとき報知を行う報知部と、
を有するメインシステムを含むことを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る地震警報システムは、複数の前記メインシステムを有し、一の前記メインシステムが前記P波検出判定部でP波を判定すると、一の前記メインシステムの前記地震計で計測したP波データを、他の前記メインシステムに対してネットワークを介して送信することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る地震警報システムは、複数の前記メインシステムは、全てのメインシステムが所在する地点のS波予測関数が格納されるS波予測関数データベースと、一の前記メインシステムが所在する地点と、他の前記メインシステムが所在する地点との間の距離減衰関数が格納される距離減衰関数データベースと、を記憶する記憶部をさらに有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る地震警報システムは、前記S波予測部は、受信したP波データと、前記S波予測関数データベースに記憶されるS波予測関数と、前記距離減衰関数データベースに記憶される距離減衰関数と、に基づいてS波の強度を予測することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る地震警報システムは、前記S波予測部は、前記地震計で計測したP波データと、前記S波予測関数データベースに記憶されるS波予測関数と、に基づいてS波の強度を予測し、前記S波予測部で予測されるS波の強度が所定値以上であるとき、予測されたS波の強度のレベルを、前記通信部からネットワークを介して外部に配信を行うことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る地震警報システムは、前記配信を受信する通信部と、前記通信部で受信したS波の強度のレベルを報知する報知部と、を有するサブシステムを含むことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る地震警報システムは、前記配信を受信する通信部と、前記通信部で受信したS波の強度のレベルに応じて点灯するパトランプと、を有する簡易警報表示システムを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る地震警報システムは、建物や事業所内の敷地内に設けられる3つ以上の地震計に基づいてP波の検出判定を行うと共に、P波の検出地点から受信したP波データに基づいてS波の強度を予測し、これに基づいて報知を行うように構成されているので、このような本発明に係る地震警報システムによれば、初期微動(P波)を迅速かつ精度高く検出することが可能となると共に、データ処理に膨大な時間を要することもなく、主要振動(S波)に関する緊急警報を発することができるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の実施形態に係る地震警報システム1のメインシステム100の設置例を示す図である。
【0016】
本発明の実施形態に係る地震警報システム1は、少なくとも3つの地震計が、建物や事業所内の敷地内に設けられ、これらの3つの地震計からの計測データに基づいて、P波の検出判定などを実行するものである。
【0017】
本実施形態では、
図1に示すように第1地震計101、第2地震計102、第3地震計103からなる3つの地震計が設置される例を示しているが、設ける地震計の数は3つ以上であれば、任意である。
【0018】
また、本実施形態では、第1地震計101及び第2地震計102が建物内に設置され、また、第3地震計103が、建物が属する敷地に設置される例を示しているが、設置方法はこれに限らず、任意とすることができる。ただし、地震計同士は、建物が属する敷地内(建物内も含む)にある程度の距離を離しつつ設置されていることが好ましい。地震計を近接させて配置してしまうと、例えば、近隣道路を走行するトラックなどの振動を計測してしまい、複数の地震計が共に計測してしまい、P波検出に支障をきたすからである。
【0019】
ここで、地震計同士の間の適切な距離は、地震計を設置する建物や敷地に応じてケースバイケースであるが、例えば、30m〜100m程度が想定される。
【0020】
本発明に係る地震警報システム1では、第1地震計101、第2地震計102、第3地震計103で計測されるデータを1次処理するシステムをメインシステム100と称している。
図2は本発明の実施形態に係る地震警報システム1のメインシステム100の設置イメージを説明する図である。
図2は、メインシステム100がA地点、B地点、C地点、・・・・に設置されているイメージを示すものである。
【0021】
本発明に係る地震警報システム1は、メインシステム100が上記のように各地に配置され、メインシステム100相互がネットワークを介して情報通信行うことができるように構成され、P波を検出したメインシステム100が、計測したP波データを、他のメインシステム100に送信する構成となっている。このとき、各メインシステム100では、少なくとも3つの地震計で計測される計測データでP波検出判定を行うので、迅速で精度の高いP波到来の検出を行うことが可能となる。
【0022】
本発明に係る地震警報システム1において、例えば、
図2のように設置されているメインシステム100をブロック図としたものが
図3である。
図3は本発明の実施形態に係る地震警報システム1の概要を示す図である。
図3において、各地点に設置されているメインシステム100の構成は同様のものであるので、1つのメインシステム100についてのみ説明する。
【0023】
本発明に係る地震警報システム1で用いられるメインシステム100においては、これまで説明したように1つの地点において、適切な距離離間されて設置されてなる地震計(第1地震計101、第2地震計102、第3地震計103)を有している。
【0024】
第1地震計101、第2地震計102、第3地震計103によって計測されたデータ(それぞれの地震計の計測データ信号をS
1,S
2,S
3と称する)は、データ処理部110に送信される。メインシステム100におけるデータ処理部110は、CPUとCPU上で動作するプログラムを保持するROMとCPUのワークエリアであるRAMなどからなる汎用の情報処理装置である。第1地震計101、第2地震計102、第3地震計103によって計測されたデータは、データ処理部110によって解析処理することができるようになっている。
【0025】
データ処理部110は、図示されているデータ処理部110と接続される各構成と協働・動作する。また、本発明に係る地震警報システム1における種々の制御処理は、データ処理部110内のROMやRAMなどの記憶手段に記憶保持されるプログラムをCPUが実行することによって実現されるものである。
【0026】
データ処理部110には、不揮発性で書き換え可能な記憶部120がデータ通信可能に接続されており、この記憶部120には、特に後述する各データベースが記憶されており、データ処理部110がデータベースを参照することができるようになっている。
【0027】
また、通信部150はデータ処理部110から転送されるデータを、外部のネットワークNに対して送信することで、自機ではないメインシステム100にデータ送信を行うことができるようになっている。また、通信部150は、外部のネットワークNから自機ではないメインシステム100から送信されてくるデータ受信を行い、当該受信データをデータ処理部110に送信することができるようになっている。
【0028】
地震警報システム1を構成する全てのメインシステム100における記憶部120には、少なくとも2種類のデータベースが記憶されている。
図4は本発明の実施形態に係る地震警報システム1で用いる各データベースのデータ構造の一例を示す図である。
【0029】
図4(A)は、P波の計測データに基づいて、S波の波形の強度を導く関数(S波予測関数F)が格納されてなるデータベースである。このような予測関数Fは各地点に依存するものであるので、このデータベースには、各地点でのそれぞれのS波予測関数Fが格納されている。例えば、A地点であれば、A地点における予測関数F
Aが、また、B地点であれば、A地点における予測関数F
Bが、・・・といった具合にデータベースが準備されている。
【0030】
また、
図4(B)は、第1のメインシステム100と、これとは異なる第2のメインシステム100と間の、距離減衰関数Dが格納されてなるデータベースである。このような距離減衰関数Dは、
第1のメインシステム100が設置されている地点と、第2のメインシステム100が設置されている地点との組み合わせによってそれぞれ異なるものであるので、このデータベースには、各地点間の組み合わせによってそれぞれ異なる距離減衰関数Dが格納されている。例えば、A地点とB地点間であれば、距離減衰関数D
ABが、また、A地点とC地点間であれば、距離減衰関数D
ACが、・・・といった具合にデータベースが準備されている。
【0031】
次に、以上のように構成される本発明に係る地震警報システム1における処理について説明する。
図5は本発明の実施形態に係る地震警報システム1の判定処理のフローチャートを示す図である。本フローチャートは、本発明に係る地震警報システム1を構成する全てのメインシステム100によって実行されるものある。
【0032】
図5において、ステップS100で判定処理が開始されると、続いて、ステップS101に進む。過去T秒間のS
1、S
2、S
3から、S
1、S
2との間の相関係数r
12を、S
2、S
3との間の相関係数r
23を、また、S
3、S
1との間の相関係数r
31を算出する。
図6は本発明の他の実施形態に係る地震警報システム1の各地震計で計測されるデータの一例を示す図である。ステップS101では、
図6に示すように、第1地震計101、第2地震計102、第3地震計103によって計測されたデータを、時間幅Tでの相関係数r
12、r
23、r
31を算出している。
【0033】
前記のように所定の距離間隔を置いて設置されている3台の第1地震計101、第2地震計102、第3地震計103のそれぞれの波形データS
1、S
2、S
3は、地震が発生していない時には、それぞれ異なる振動(例えば、周辺を走行する車両による振動など)を検出しており、相関性が低い。一方、地震が発生すると、全ての地震計が共通の地震による振動を検出することとなるので、波形データS
1、S
2、S
3同士の相関関係が高くなる。
【0034】
そこで、ステップS102では、相関係数r
12、r
23、r
31のうち、1つ以上の相関係数r
ijが予め定められている所定値r
C以上であるか否かが判定される。ステップS103の判定がNOである場合には、再びステップS101に戻る。一方、ステップS103の判定がYESである場合には、ステップS103に進み、P波を検出したものと判定を下す。
【0035】
ここで、仮にメインシステム100で採用される地震計が2台であり、得られる波形データが2つだけであるとすると、1台の地震計が故障したような場合、2つのデータによる相関関係で地震発生を検出判定することが困難であることがわかる。従って、本発明に係る地震警報システム1においては、システムをフェイルセーフとするために、3台以上の地震計を用いることが重要となる。
【0036】
ステップS103で、P波を検出したものと判定されると、続いて、ステップS104に進み、計測したP波データを、ネットワークを介して自機以外の全てのメインシステム100に送信し、ステップS105で、判定処理を終了する。
【0037】
以上のように、本発明に係る地震警報システム1では、3台以上の地震計で計測される波形データの互いの相関係数を算出し、いち早くP波検出判定を行うことで、迅速で精度の高い検出を行い、検出されたP波の計測データを、他のメインシステム100に送信し、他のメインシステム100での地震到来予測に資するようにしている。
【0038】
それでは、次に、他のメインシステム100での地震到来予測に関する処理について説明する。
図7は、他のメインシステム100が実行する本発明の実施形態に係る地震警報システム1の報知処理のフローチャートを示す図である。ここでは、
図2に示すA地点に設置されたメインシステム100がP波検出判定を行い、P波の計測データを、ネットワークNを介してB地点に設置されたメインシステム100が受信したときの処理を例に挙げて説明する。
【0039】
図7において、ステップS200で報知処理が開始され、続いて、ステップS201で、他のメインシステム100(A地点設置)からP波データを受信すると、続いて、ステップS202に進み、P波検出地点(本例では、A地点)の予測関数(本例では、F
A)を記憶部120から取得する。
【0040】
ステップS203では、取得した予測関数(本例では、F
A)に基づいて、P波検出地点(A地点)でのS波の強度S
Aを予測する。
【0041】
このようにまず、A地点で主要振動であるS波の強度を把握し、続いて、そのS波がどのようにA地点に影響するかを、A地点からB地点に向かう振動の距離減衰をみて把握する。
【0042】
そこで、ステップS204では、P波検出地点との間の距離減衰関数(本例では、D
AB)を取得し、ステップS205では、取得した距離減衰関数(本例では、D
AB)と、強度S
Aとに基づいて、当地点(本例では、B地点)でのS波の強度S
Bを算出することで、予測を行う。
【0043】
ステップS206では、得られた強度S
Bが予め定められた所定値以上であるか否かが判定される。ここで、ステップS206の判定結果がNOであれば、ステップS208に進み、報知処理を終了するが、ステップS206の判定結果がYESであれば、ステップS207に進み、算出された強度S
Bのレベルに応じて警報を報知部130で報知する。
【0044】
本発明に係る地震警報システム1は、建物や事業所内の敷地内に設けられる3つ以上の地震計に基づいてP波の検出判定を行うと共に、P波の検出地点から受信したP波データに基づいてS波の強度を予測し、これに基づいて報知を行うように構成されているので、このような本発明に係る地震警報システム1によれば、初期微動(P波)を迅速かつ精度高く検出することが可能となると共に、データ処理に膨大な時間を要することもなく、主要振動(S波)に関する緊急警報を発することができるようになる。
【0045】
次に本発明の他の実施形態について説明する。
図8は本発明の他の実施形態に係る地震警報システム1の概念的模式図である。地震計を3つ以上有するこれまで説明したメインシステム100で取得される地震情報は、
図8に示すように、例えばA地点から数km圏内のA地点周辺であれば共有することが可能となる。
【0046】
そこで、A地点周辺には、A地点設置のメインシステム100からネットワークNを介して配信される情報を取得して、この情報に応じて、警報を行うサブシステム200や、簡易警報表示システム300を設置する。
【0047】
図9は本発明の他の実施形態に係る地震警報システム1の概要を示す図である。サブシステム200としては、自機に地震計を備えない第1種サブシステム(例、a地点設置)と、自機に地震計201を備え、自機の地震計201でも計測を行う第2種サブシステム(例、b地点設置)とを準備し得る。また、パトランプ360によって、簡易な警報を行う簡易警報表示システム300なども用いることができる。
【0048】
基本的にサブシステム200は、メインシステム100からの配信データを通信部250で受信し、配信データに含まれる警報のレベルに応じて、報知部230で報知を行う構成とする。一方、簡易警報表示システム300は、メインシステム100からの配信データを通信部250で受信し、配信データに含まれる警報のレベルに応じて、パトランプ360を点灯する構成とする。ここで、パトランプ360は、複数の点灯態様を取ることで、報知レベルを変更することができるように構成されている。
【0049】
以上のようなサブシステム200や簡易警報表示システム300に警報データを配信するためのメインシステム100の処理について説明する。
図10は本発明の他の実施形態に係る地震警報システム1の配信処理のフローチャートを示す図である。
【0050】
図10において、ステップS300で判定処理が開始されると、続いて、ステップS301に進む。過去T秒間のS3、S
2、S
3から、S3、S
2との間の相関係数r
12を、S
2、S
3との間の相関係数r
23を、また、S
3、S3との間の相関係数r
31を算出する。
【0051】
続いて、ステップS302では、相関係数r
12、r
23、r
31のうち、1つ以上の相関係数r
ijが予め定められている所定値r
C以上であるか否かが判定される。ステップS303の判定がNOである場合には、再びステップS301に戻る。一方、ステップS303の判定がYESである場合には、ステップS303に進み、P波を検出したものと判定を下す。
【0052】
P波検出判定が下されると、続いて、ステップS304に進み、本例では、A地点の予測関数(本例では、F
A)を記憶部120から取得する。ステップS305では、取得した予測関数(本例では、F
A)に基づいて、A地点でのS波の強度S
Aを予測する。
【0053】
ステップS306では、得られた強度S
Aが予め定められた所定値以上であるか否かが判定される。ここで、ステップS306の判定結果がNOであれば、ステップS308に進み、配信処理を終了するが、ステップS306の判定結果がYESであれば、ステップS307に進み、算出された強度S
Aのレベルに応じた警報データを、簡易警報表示システム300、サブシステム200に送信する。
【0054】
上記のような警報データを受信したサブシステム200では、配信データに含まれる警報のレベルに応じて、報知部230で報知を行う。また、上記のような警報データを受信した簡易警報表示システム300では、配信データに含まれる警報のレベルに応じて、パトランプ360を点灯する。
【0055】
以上のような他の実施形態においては、先の実施形態と同様の効果を享受することが可能となると共に、メインシステム100設置地点の周辺で、メインシステム100の地震計により得られる地震情報を共有することが可能な地点においても、確度の高い緊急警報を発することができる。