(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
鉄道車両(以下、「車両」ということがある。)が積雪地帯を走行する際には、降雪や走行により舞い上がった雪が鉄道車両に付着(着雪)する場合がある。着雪が問題となる事象として、車両下部に着雪した雪が塊となり、道床に落下する事象が挙げられる。道床に落下する雪の塊が跳ね飛ばした道床上の砕石や砂利などが、車両の床下機器や窓ガラスなどを損傷する被害を生じる可能性がある。
【0003】
雪の塊を道床上に落下させない方法として、車両の走行速度を制限する方法が挙げられる。速度が大きくなればなるほど着雪量が増えるため、速度を制限することにより、着雪を低減することができる。しかし、この方法は通常のダイヤよりも遅い速度で走行するため、列車の遅れが発生することが課題である。
【0004】
走行速度の制限の他に、車両側に着雪防止の対策を施す方法もある。車両側の着雪防止対策としては、例えば、特許第4275397号(特許文献1)では、台車及び車輪が配置されるための台車空隙部において、台車空隙部を形成するため車両進行方向前後に設けられるフサギ板のうち、上記進行方向後側フサギ板を鉛直面と傾斜面とから構成し、上記鉛直面と傾斜面の接合部を、上記台車空隙部の内部における空気流れのよどみ点に設けたことを特徴とした構造がある。
【0005】
また、特許第4614745号(特許文献2)に記載のように、高速鉄道車両の台車空隙部前後の床下フサギ板に、台車空隙部に侵入する空気の速度あるいは圧力を低下させる障壁として機能するダミー部材が設けられている構造も提案されている。
【0006】
さらに、特許第4873741号(特許文献3)に記載のように、車両の側面に沿って着雪の予測される領域に向かう気流を前記領域の側方に誘導する気流誘導部を備えることを特徴とする構造も提案されている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されることなく、本発明の技術的な概念の中で種々の変形例や応用例をもその範囲に含むものである。まず、本発明の説明に供される各方向を、レール(長手)方向100、高さ(上下)方向110、枕木方向(幅方向)120とする。以下、単に、レール方向100、高さ方向110、枕木方向120と記す。
【0013】
はじめに、本発明が適用される鉄道車両と、鉄道車両の端部フサギ板の一般的な構成を説明する。鉄道車両、特に旅客を輸送することを想定している在来線や新幹線向けの鉄道車両は、主に、旅客や乗務員が乗車する空間を有する車両構体と、車両構体を支持する台車から構成されている。台車は車輪を有しており、車輪はレールに接している。車輪がレール上を転がることにより、鉄道車両はレールに沿って走行する。レールと車両構体に高さ方向110に挟まれる形で台車が存在するため、レールと車両構体の間には空間が生じる。
この空間には、台車の他、車両下部に配置された機器などが配置されている。ここでは、台車の周辺に生じる空間を台車空隙部と定義する。車両下部に配置される機器は、車両構体に懸架されているが、走行中に飛来物が衝突し、機器が損傷する場合があるため、機器を覆うカバーを設置することがある。このカバーについて、台車空隙部を挟んでレール方向100に配置するカバーを端部フサギ板と定義する。端部フサギ板により、台車空隙部に入り込む飛来物から機器を保護することができる。
【0014】
次に、車両走行時の端部フサギ板3を含む台車空隙部Sの周辺の空気の流れを、
図1を用いて説明する。
図1は或る1ヶ所の台車の台車空隙部Sの周辺の側面図であるが、簡単のため台車2の記載は省略している。車両が
図1中のR方向に向かって走行するとき、車外から見ると、空気の主流Wは、
図1の左側(上流側)から右側(下流側)に向かって流れる。
このとき、主流Wから分流した一部の流れWaは下流側の端部フサギ板3に衝突する。下流側の端部フサギ板3に衝突した流れWaは、下流側の端部フサギ板3の下方に向かう流れWb1と上方に向かう流れWb2に分流する。下流側の端部フサギ板3の下方に向かう流れWb1は、車両の床下を流れる主流Wと合流し、流下する。
一方で、端部フサギ板3の上方に向かう流れWb2は、下流側の端部フサギ板3の上端部と車両構体1をなす床面の下面との間の開口部Aに向かう流れWc1と、上流側の端部フサギ板4の上端部と車両構体1をなす床面の下面との間の開口部Bに向かう流れWc2に分流する。流れWc2の一部は、端部フサギ板4に沿って流下して主流Wに合流する。つまり、台車空隙部Sにおいて、流れWa、流れWb2、流れWc2からなるレール(長手)方向100と高さ(上下)方向110を含む面内に交差する軸周りの反時計回りの循環流が形成される。
【0015】
主流Wに雪が混入している場合には、流れWa(Wb2)とともに雪も台車空隙部Sの内部に流入し、端部フサギ板3の上方に誘引される。このため、端部フサギ板3の下方のよどみ点(流れWaが端部フサギ板3に衝突する点)の近傍から、端部フサギ板3の上方の開口部Aの近傍に至る広い範囲に雪が付着する。
したがって、台車空隙部Sに生じる反時計回りの循環流を台車空隙部Sの下方に押し下げて、よどみ点位置を端部フサギ板3より下方に下げることができれば、端部フサギ板3のよどみ点近傍の着雪量を低減できる。さらに、端部フサギ板3の上方の開口部Aに向かう流れWb2と上流側の端部フサギ板4の上方の開口部Bに向かう流れWc2を抑制することができれば、上方に誘引される流れが抑制されることから、端部フサギ板3の開口部Aの近傍の着雪量を低減できる。
【0016】
端部フサギ板3の上方の開口部Aと端部フサギ板4の上方の開口部Bを封止することができれば、端部フサギ板の着雪範囲を小さくすることができる。しかしながら、端部フサギ板3、4の上方の開口部Aと開口部Bには、機器類のケーブル類6(
図3参照)を引き通す隙間としての機能を有して
いるため、開口部Aと開口部Bを封止するためには、ケーブル類の径に合わせたフサギ板を新たに設置することや、充填材で詰めることなどが必要となる。
しかし、ケーブル類の引き通し方法が変更となった場合に、新たなフサギ板を製作することや、充填材などを撤去する必要があるなど、多大なコストが発生してしまう。本発明の端部フサギ板は開口部A、Bを維持したまま、端部フサギ板3、4への着雪範囲を減らそうとするものであり、以下のその具体的な実施例を詳細に説明する。
【0017】
(実施例1)
図2は本発明の第1の実施形態を示す鉄道車両の側面図であり、
図3は本発明の第1の実施形態を示す端部フサギ板とその周辺を台車空隙部側から見た正面図である。
台車2を挟んで、下流側の端部フサギ板3と上流側の端部フサギ板4が車両のレール方向100に沿って対向して配置されている。そして、車両の枕木方向120に延在し、一辺が下流側の端部フサギ板3に固着される固着部と、固着部から連続するとともに他辺が上流側の台車空隙部に向けてレール方向100に略水平方向に張り出す張出部とからなる抑制部材10が設置されている。
同様に、上流側の端部フサギ板4も、一辺が端部フサギ板4に固着され、下流側の台車空隙部に向けてレール方向100に略水平方向に張り出す張出部と、張出部に接続する固着部とを有する抑制部材11が設置されている。
端部フサギ板3、4の枕木方向120の一方の端部から他方の端部(全幅)に至る範囲に備えられる抑制部材10、11は、抑制部材内を空気が通過しない素材で形成されている。また、抑制部材10、11は
図3に示すように、側カバー5で挟まれる範囲内で、車両の枕木方向120に延在しており、かつ端部フサギ板の上方の開口部A、Bの下方に配置されている。さらに、抑制部材10、11の張出部は台車2と干渉しないレール方向100長さ寸法を有する。
【0018】
図2において、台車空隙部Sの周辺の空気の流れを説明する。車両が
図2中のR方向に向かって走行するとき、車外から見ると、下流側の端部フサギ板3に衝突する流れWaは、下流側の端部フサギ板3の下方に流れる流れWb1と上方に流れる流れWb2に分流する。このとき、下流側の端部フサギ板3の上方に流れる流れWb2は、開口部Aに到達する前に、抑制部材10により流れの方向が開口部Aから遠ざかる方向に変化する。
このため、台車空隙部Sに生じる反時計回りの循環流は下方に押し下げられて、端部フサギ板3のよどみ点の位置も下方へ移動する。さらに、開口部Aに向かう流れWc1(
図1参照)も少なくなり、併せて、方向を変えて端部フサギ板4に向かう流れWb2も減少する。
【0019】
このように、抑制部材10、11を設置したことにより、循環流が下方へ移動することに伴ってよどみ点の位置が下がるので、端部フサギ板3の下方(よどみ点近傍)の着雪量を低減できる。さらに、開口部Aに向かう流れWc1および開口部Bに向かう流れWc2の流量が減少するため、端部フサギ板3の上方(開口部Aの近傍)への着雪量を低減できる。
なお、図は実施例の一例として示したものであり、端部フサギ板3の枕木方向120及び高さ方向110の寸法が変化しても、本実施例で示した抑制部材10、11を備える構造により、効果を得ることが可能である。
【0020】
(実施例2)
次に、本発明の第2の実施形態を
図4と
図5を用いて説明する。第2の実施例においては、抑制部材10、11と抑制部材12、13を端部フサギ板3、4の異なる高さ位置に設け、それぞれ端部フサギ板上方の開口部端に沿って配置している。
一般に、車両構体1の床面の下方に備えられるケーブル類6は、車体構体1の床面の枕木方向120の両端部に備えられる。このケーブル類6に端部フサギ板3、4の上端部が干渉しないように、端部フサギ板3、4の枕木方向120の両端部における上端部の高さは端部フサギ板3、4の枕木方向120の中央部の高さより低く設定されている。
端部フサギ板3、4の形状に合わせて、端部フサギ板3、4の枕木方向120の両端部に備えられる抑制部材10、11と、端部フサギ板3、4の枕木方向120の中央部に備えられる抑制部材12、13は、すべて端部フサギ板3、4の上端部に配置されている。
【0021】
図4において、台車空隙部Sの周辺の空気の流れを説明する。下流側の端部フサギ板3付近において、上方に流れる流れWb2は、開口部Aに到達する前に、抑制部材10、12により流れの方向が開口部Aから遠ざかる方向に変化するため、開口部Aに流入する空気の流量は抑制される。また、前記Wb2が上流側の端部フサギ板4に到達した場合には、抑制部材11、13により上流側の端部フサギ板4の下方に向かって流れが誘導される。
抑制部材10(11)、12(13)を設置したことにより、台車空隙部Sに生じる反時計回りの循環流は下方に押し下げられて、端部フサギ板3のよどみ点の位置も下方へ移動する。さらに、開口部Aに向かう流れWc1(
図1参照)も少なくなり、併せて、方向を変えて端部フサギ板4に向かう流れWb2も減少する。この結果、循環流が下方へ移動することに伴ってよどみ点の位置が下がるので、端部フサギ板3の下方(よどみ点近傍)の着雪量を低減できる。さらに、開口部Aに向かう流れWc1および開口部Bに向かう流れWc2の流量が減少するため、端部フサギ板3の上方(開口部Aの近傍)への着雪量を低減できる。
【0022】
続いて、抑制部材12、13を端部フサギ板上方の開口部A、Bの端に設置する効果について
図5を用いて説明する。開口部Aは車両構体1の枕木方向120の中央部と端部でその高さ寸法が異なる。本実施例のように、抑制部材10(11)、12(13)を開口部の形状に合わせて、端部フサギ板3(4)の上端部にその全幅(枕木方向120の一方の端部から他方の端部)に渡って配置することにより、着雪の要因となる、車両下部から開口部に向かう空気の流れの開口部への誘引を効果的に抑制することができる。
さらに、図示はしないが、開口部端部に設置される高さ違いの抑制部材同士(抑制部材10と12、抑制部材11と13)の間に、これらを接続するとともに高さ方向110に沿って備えられる抑制部材を設けてもよい。
【0023】
なお、実施例2においては、抑制部材10、11、12、13は、いずれも端部フサギ板の上端部に配置されたものとなっていることから、これらを形成するに際して、端部フサギ板に別の部材を取り付けるのではなく、端部フサギ板の一部を折り曲げ加工によって形成してもよい。このように、端部フサギ板3、4に別に部材を取り付けるのではなく、端部フサギ板の一端を折り曲げて形成することにすれば、端部フサギ板の製造工程を効率化できるとともに、コスト削減の効果を得ることができる。
【0024】
(実施例3)
次に、本発明の第3の実施形態について
図6を用いて説明する。実施例3においては、
図6に示すように、鉄道車両の枕木方向120の中央部付近の高さ寸法の小さい開口部A(B)の部分に設置される抑制部材12(13)は、端部フサギ板3(4)から台車空隙部Sに向けて略水平方向に張り出す張出部を有しており、張出部の途中において下方に折り曲げられた屈曲部14、15を有している。
つまり、抑制部材12、13は、その一辺側において端部フサギ板3、4に固着し、固着箇所から台車空隙部に向けて略水平に張り出している抑制部材12、13が、張出部の途中で折り曲げられ、端部フサギ板に固着された一辺側の固着部と反対側の他辺側において、屈曲部14、15を有している。
抑制部材12、13は、屈曲部14、15を有することにより次のような効果を奏する。
図6に示すように端部フサギ板3に沿って流れる空気の流れWb2は、屈曲部14によって強制的に流れの方向を下方に変えることができる。つまり、屈曲部を有しない抑制部材に比較して空気の流れWb2を効果的にフサギ板から離れる方向に誘導することにより、端部フサギ板上方の開口部を通過する風量を小さくすることができる。
実施例3においても、開口部A(B)への流れを抑制することと、台車空隙部S内における反時計回りの循環流を下方に押し下げる作用を有しており、これらの作用に伴って、端部フサギ板3(4)への着雪量を低減する効果を奏する。
【0025】
(実施例4)
次に、本発明の第4の実施形態を
図7と
図8を用いて説明する。実施例4は、実施例3で説明した抑制部材の屈曲部を、開口部の大きい部分に設置されている抑制部材10、11にも適用したものである。そして、屈曲部の屈曲方向を、鉄道車両の枕木方向120の端部付近に配置される抑制部材10、11と、鉄道車両の枕木方向120の中央付近に配置される抑制部材12、13とで、異なる方向としている。
具体的には、
図7で示すように、枕木方向120の中央付近に配置される抑制部材12の端部の屈曲部14の屈曲方向は、実施例3で説明したように下方とし、枕木方向120の側端付近に配置される抑制部材10の端部の屈曲部16の屈曲方向は上方としている。
【0026】
枕木方向120の側端付近の開口部Aの高さ方向寸法は、枕木方向120の中央付近の開口部Aのそれよりも大きいため、台車空隙部S内において、より広範囲の流れを誘引する。このため、開口部Aの大きな個所への空気の流れを抑制するためには、開口部Aを塞ぐ方向に屈曲部を形成した方が良い。つまり、抑制部材10の端部の屈曲部16を上方に向けた方が効果的である。
また、上流側の端部フサギ板4に向かう流れについても、抑制部材11の端部の屈曲部17が下方に向いている場合は、屈曲部に衝突した流れは開口部の方向に誘導されることとなり、開口部に流入する流量が多くなる。このため、
図7、
図8に示すように、抑制部材11の端部の屈曲部17を上方に向けることにより、屈曲部に衝突した流れは開口部から離れる方向である下方に誘導され、開口部に流入する流量を少なくすることができる。
このように、抑制部材の屈曲部の屈曲方向を、抑制部材の一辺が固着している端部フサギ板の固着箇所毎に異ならせることにより、開口部への空気の流入を効果的に抑制することができる。実施例4においても、開口部A(B)への流れを抑制することと、台車空隙部S内における反時計回りの循環流を下方に押し下げる作用を有しており、これらの作用に伴って、端部フサギ板3(4)への着雪量を低減する効果を奏する。
【0027】
(実施例5)
次に、本発明の第5の実施形態について
図9を用いて説明する。実施例5は、実施例1から実施例4に記載した抑制部材10、11、12、13の強度を向上させたものである。抑制部材10、11、12、13を板状部材によって構成する場合、抑制部材は、端部フサギ板に、所謂、片持ちはりの状態で取り付けられている状態になる。高速で走行する鉄道車両においては、抑制部材10、11、12、13に高速の気流が当たることや、道床の砕石や砂利が抑制部材10、11、12、13に衝突することが想定される。このため、抑制部材10、11、12、13については、少なくとも2点で支持することが望ましい。
図9で示したように、抑制部材を2点で支持すれば、抑制部材の強度が向上し、砕石などの衝突で壊れにくい端部フサギ板とすることができる。実施例5においても、開口部A(B)への流れを抑制することと、台車空隙部S内における反時計回りの循環流を下方に押し下げる作用を有しており、これらの作用に伴って、端部フサギ板3(4)への着雪量を低減する効果を奏する。
【0028】
(実施例6)
次に、本発明の第6の実施形態について
図10を用いて説明する。実施例1から実施例5で説明した通り、端部フサギ板3、4に抑制部材10、11、12、13を設置することにより、端部フサギ板上方の開口部A、Bに向かう気流を抑制することができる。
このため、端部フサギ板に着雪する場合においても、流れが衝突する端部フサギ板3、4のうち抑制部材10、11、12、13の下側のみに着雪し、端部フサギ板への着雪範囲を抑制部材10、11、12、13によって限定することができる。
【0029】
実施例6は、実施例1から実施例5に記載しているような、抑制部材10を有する端部フサギ板3について、端部フサギ板に発熱体51を設置したものである。より具体的には、抑制部材10、11、12、13が固着しているよりも下側の端部フサギ板3、4の面上に発熱体51を設置し、端部フサギ板の着雪を融雪するものである。
【0030】
本実施例は、抑制部材と発熱体を併用することにより、抑制部材で端部フサギ板の特定の範囲に着雪を集中させ、前記範囲について発熱体51の設置し融雪することにより、従来の構造や実施例1から実施例5で示した構造よりも融雪効果を向上させることができる。
なお、発熱体51はどのようなものでも適用可能であるが、発熱体51としては、好ましくはヒータが適用可能である。
【0031】
(実施例7)
上述した通り、実施例1〜6で説明した端部フサギ板を装着した鉄道車両は、端部フサギ板に設置される抑制部材によって、端部フサギ板上方の開口部を空気の流れを通過しにくくすることから、雪を含んだ流れが台車空隙部に舞い上がりにくくなり、端部フサギ板への着雪範囲を抑制することができる。また、着雪範囲を抑制することにより、雪落としや融雪効率の向上が期待される。
また、鉄道車両は、複数の車両を連結して運用されることが多く、この場合、各車両の着雪量は、先頭車が最も多く、後尾に行くにしたがって着雪量が少なくなると考えられる。そして、上流側と下流側の端部フサギ板の着雪量を比較すると、下流側の端部フサギ板の着雪量が多いことが知られている。
【0032】
こうした点に鑑み、
図11に示す本発明の第7の実施形態は、一つの台車空隙部を挟む一対の端部フサギ板の内の一方のみに、前記抑制部材を有する端部フサギ板を装着した鉄道車両である。例えば、複数の車両が連結されて16両編成が組成されるとする。1号車から16号車までほぼ均等に着雪する訳ではなく、先頭側となる1号車から4号車に至る4両程度の範囲において、着雪量が多いことが観察されている。
【0033】
従って、例えば、16両編成の場合、先頭側の1号車から4号車までと、後尾側の13号車から16号車までに、
図11に示したように、台車空隙部Sの内、走行(進行)方向から離れる側の端部フサギ板に前述した抑制部材を備え、16両編成の中間部の5号車から12号車の台車空隙部Sの端部フサギ板には抑制部材を備えない構成を採用しても良い。
このように、鉄道車両がR方向に走行するとき、下流側となる端部フサギ板3のみに抑制部材10や抑制部材12を設置することにより、端部フサギ板に設置する部材の個数を削減することができ、鉄道車両の製造コストを低減することができる。
【0034】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例構成に置き換えることも可能である。更に、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために記載したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
例えば、抑制部材の具体的な寸法や屈曲部の屈曲角度等は、車両の走行環境等に応じて適宜変更しうるものである。また、抑制部材の形成方法や、形成位置についても、台車との位置関係やその他の走行条件等により様々な変形例が含まれうることは当然であり、上記抑制部材は、端部フサギ板の一部を折り曲げ加工によって形成したものであってもよいし、端部フサギ板に別の部材を取り付けることによって形成したものであってもよい。
さらに、本発明は、車両への着雪に起因する障害の回避を中心に説明したが、着雪以外の要因による障害に対しても適用できることも当然である。