(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両に設けられリクエスト信号を送信する車両側装置と、前記リクエスト信号に応答してアンサー信号を送信する携帯機とを有し、前記車両側装置が前記アンサー信号に応じてドアロックを駆動するキーレスエントリーシステムであって、
前記車両側装置は、
異なる位置に配置された複数のアンテナと、
前記携帯機に対して、前記複数のアンテナのそれぞれから第1の送信順序で第1のリクエスト信号を送信させた後、前記複数のアンテナのそれぞれから前記第1の送信順序と異なる第2の送信順序で第2のリクエスト信号を送信させる送信部と、を備え、
前記携帯機は、
前記複数のアンテナからの前記第1のリクエスト信号および前記第2のリクエスト信号を受信する受信部と、
前記第1の送信順序と前記第2の送信順序を記憶する記憶部と、
前記第1の送信順序と前記第2の送信順序に基づいて、前記複数のアンテナが送信した前記第1のリクエスト信号および前記第2のリクエスト信号から、同じアンテナが送信した第1のリクエスト信号および第2のリクエスト信号を特定し、前記同じアンテナが送信した前記第1のリクエスト信号と前記第2のリクエスト信号の信号判別情報が一致するか否かを判定する判定部と、を備えることを特徴とする、キーレスエントリーシステム。
前記携帯機は、異なる軸線方向を向き、それぞれが前記車両側装置の複数のアンテナからの前記第1のリクエスト信号および前記第2のリクエスト信号を受信する複数の受信アンテナを備え、
前記信号判別情報は、前記携帯機の複数の受信アンテナが受信する前記第1のリクエスト信号および前記第2のリクエスト信号の、各軸の受信強度比もしくは角度またはこれらの組み合わせであることを特徴とする請求項1記載のキーレスエントリーシステム。
前記信号判別情報は、複数のアンテナのそれぞれが送信する前記第1のリクエスト信号および前記第2のリクエスト信号の電界強度であることを特徴とする請求項1または2記載のキーレスエントリーシステム。
前記車両側装置は、前記第1のリクエスト信号および第2のリクエスト信号を送信した後、前記第2の送信順序を変更する送信順序変更部を備えることを特徴とする請求項6記載の車両側装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るキーレスエントリーシステムの概要図である。
図1に示すように、キーレスエントリーシステムは、車両Vに設けられた車両側装置1と、車両Vの使用者が所持する携帯機30とを有する。車両側装置1と携帯機30は、無線通信を行って、車両Vと携帯機30の対応関係の認証を行う。
【0014】
車両側装置1は携帯機30にリクエスト信号Sを送信し、携帯機30はリクエスト信号Sに応答するアンサー信号Aを送信する。車両側装置1は、アンサー信号Aを用いて車両と携帯機30の対応関係の認証を行い、ドアロックの施錠または開錠の制御を行う。車両側装置1は、リクエスト信号Sを、例えば125−135KHzのLF信号として送信する。携帯機30は、例えばUHF帯のRF信号をアンサー信号Aとして送信する。なお、キーレスエントリーシステムの制御対象としては、ドアロックのほかエンジン始動やステアリングロック等もあるが詳細な説明は省略する。ここではドアロックの制御について、特に開錠の制御について説明する。
【0015】
図2は車両側装置1の構成を示すブロック図である。
図2に示すように、車両側装置1は、リクエストスイッチ5、キーレスコントローラ10、送信アンテナ7、受信アンテナ8およびドアロックアクチュエータ9を備える。
【0016】
リクエストスイッチ5は車体のドアに設置され、使用者のドアの開錠要求を受け付ける。リクエストスイッチ5は、車体の複数のドアのそれぞれ設置し、各ドアに対する開錠要求を受け付けるようにしても良い。例えば、
図1に示すように、リクエストスイッチ5は、DRドアリクエストスイッチ(DRSW)5a、ASドアリクエストスイッチ(ASSW)5b、およびBKドアリクエストスイッチ(BKSW)5cを備える。DRSW5aは運転席ドアに設置する。ASSW5bは助手席ドアに設置する。BKSW5cはバックドアに設置する。リクエストスイッチ5は、例えばスイッチボタンとすることができる。スイッチボタンは、使用者がプッシュするまたは触れる等の操作を行うことによって、開錠要求を受け付ける。
【0017】
送信アンテナ7はリクエストスイッチ5の近傍に設置され、リクエスト信号SをLF信号として送信する。例えば、車両側装置1は、送信アンテナ7として、DRSW5a近傍にDRドア送信アンテナ7a、ASSW5b近傍にASドア送信アンテナ7b、およびBKSW近傍にBKドア送信アンテナ7cを備える。以下、DRドア送信アンテナ7a、ASドア送信アンテナ7bおよびBKドア送信アンテナ7cは、送信アンテナ7a、送信アンテナ7b、送信アンテナ7cという。なお、送信アンテナ7の設置位置および設置数はこの例に限られず、例えば車内中央やラゲッジルーム内に設置しても良い。
【0018】
図2に戻り、受信アンテナ8は、携帯機30が送信するアンサー信号Aを受信するものである。ドアロックアクチュエータ9は、運転席ドア、助手席ドアおよびバックドアを開錠および施錠する。
【0019】
キーレスコントローラ10は、リクエストスイッチ5、送信アンテナ7、受信アンテナ8およびドアロックアクチュエータ9のそれぞれに接続する。キーレスコントローラ10は、リクエストスイッチ5の操作に応じてリクエスト信号Sを生成し、送信アンテナ7から携帯機30に送信させる。キーレスコントローラ10は、受信アンテナ8を介して、リクエスト信号Sに対するアンサー信号Aを受信して認証を行う。キーレスコントローラ10は、アンサー信号Aの認証結果に応じて、ドアロックアクチュエータ9の駆動を制御して、ドアの開錠を行う。
【0020】
キーレスコントローラ10は、CPU11、LF送信部13、RF受信部14、メモリ12およびアクチュエータ駆動回路15を備える。LF送信部13は、送信アンテナ7に接続し、CPU11で生成したリクエスト信号SをLF電波として送信アンテナ7から送信させる。RF受信部14は、受信アンテナ8に接続し、アンサー信号Aを受信させる。アクチュエータ駆動回路15は、CPU11の入力に従って、ドアロックアクチュエータ9を駆動させる回路である。
【0021】
メモリ12は、キーレスコントローラ10の制御プログラムや、キーレスコントローラ10の処理に必要な情報を格納する。メモリ12はまた、CPU11の処理において生成される諸データを一時的に記憶する。メモリ12は、一例として、携帯機30のID51と、リクエスト信号Sの送信順序情報52とを格納する。
【0022】
図3は、メモリ12が記憶する送信順序情報52の例を示す図である。
実施の形態において、キーレスコントローラ10は、リクエスト信号Sを、複数の送信アンテナ7a〜7cのそれぞれから、送信順序を変えて複数回送信する。送信順序情報52は、リクエスト信号Sの各回の送信における送信順序を示すものである。リクエスト信号Sの送信回数は特定の数に限定されないが、ここでは2回の場合を説明する。以降、1回目に送信するリクエスト信号Sを、第1のリクエスト信号SAと言い、2回目に送信するリクエスト信号Sを第2のリクエスト信号SBと言う。送信順序情報52は、第1のリクエスト信号SAの送信順序を示す送信順序O1(第1の送信順序)と、第2のリクエスト信号SBの送信順序を示す送信順序O2を含んでいる。送信順序O1は、第1のリクエスト信号SAを送信アンテナ7a、7b、7cの順序で送信することを示している。送信順序O2は、第2のリクエスト信号SBを送信アンテナ7b、7c、7aの順序で送信することを示している。実施の形態では、送信順序O1、O2は予め定められたの順序である。
【0023】
図2に示すように、CPU11は、制御部20、スイッチ判別部21、リクエスト信号生成部22、および暗号処理部23を備える。制御部20は、不図示のタイマを備える。
特に記載しないが、CPU11の各部は、処理結果を一時的にメモリ12に記憶させ、必要なデータや処理対象をメモリ12から読み出し、処理終了後に一時的に記憶させたデータをリセットする。
【0024】
スイッチ判別部21はリクエストスイッチ5a、5b、5cのいずれが操作されたかを判別し、判別結果を制御部20に入力する。
制御部20はCPU11全体の制御を行う。制御部20は、リクエスト信号Sの送信に関して、乱数などの暗号を生成する。制御部20は、生成した暗号を、処理指令と共に暗号処理部23に入力する。制御部20は、また、生成した暗号を、信号生成指令と共にリクエスト信号生成部22に入力する。制御部20は、メモリ12の送信順序情報52を参照し、信号生成指令に、第1および第2のリクエスト信号SA、SBの送信順序O1、O2を含める。
【0025】
暗号処理部23は、制御部20の処理指令に従って、制御部20が生成した暗号を、所定の計算プロセスで計算処理する。所定の計算プロセスは、メモリ12に記憶させた携帯機30のID51を組み込んでいる。暗号処理部23は、処理結果を車両側処理結果としてメモリ12に記憶させる。この車両側処理結果は、携帯機30からアンサー信号Aを受信したときに使用する。
【0026】
リクエスト信号生成部22は、制御部20の信号生成指令に従って、リクエスト信号Sを生成し、LF送信部13に出力する。リクエスト信号生成部22は、信号生成指令が含む送信順序O1、O2に従って、送信アンテナ7a〜7cからリクエスト信号Sを出力するようにLF送信部13を制御する。
【0027】
図4の(a)は、第1のリクエスト信号SAの送信を示す図であり、(b)は、第2のリクエスト信号SBの送信を示す図である。
図4の(a)に示すように、リクエスト信号生成部22は、送信順序O1に従って送信アンテナ7a、7b、7cの順で第1のリクエスト信号SA1、SA2、SA3をLF送信部13に送信させる。
図4の(b)に示すように、リクエスト信号生成部22は、次に、送信順序O2に従って、送信アンテナ7b,7c,7aの順で第2のリクエスト信号SB1、SB2、SB3をLF送信部13に送信させる。LF送信部13は、合計で6つのリクエスト信号SA1〜SA3、SB1〜SB3を順次携帯機30に送信する。
【0028】
リクエスト信号生成部22は、6つのリクエスト信号SA1〜SA3、SB1〜SB3の中で1番目に送信する第1のリクエスト信号SA1には、ウエイクアップ信号と、制御部20で生成した暗号とを含める。
【0029】
ウエイクアップ信号は、第1のリクエスト信号SAの送信完了時間T1と、第2のリクエスト信号SBの送信完了時間T2を示すデータを含む。この送信完了時間T1、T2のデータは、予め決定してメモリ12に記憶しておく。なお、第1のリクエスト信号SA1以降に送信する信号には、ウエイクアップ信号と暗号は不要である。
【0030】
制御部20は、アンサー信号Aの受信に関して、アンサー信号Aの認証を行う。詳細は後述するが、アンサー信号Aは、リクエスト信号Sが含む暗号の、携帯機30側での処理結果(以降、「携帯機処理結果」という)を含む。制御部20は、携帯機処理結果を、メモリ12に記憶させた車両側処理結果と照合する。携帯機30は車両側装置1の暗号処理部23と同じ計算プロセスで計算処理を行っているため、アンサー信号Aが対応する携帯機30から送信されたものであれば、処理結果は同一となる。携帯機処理結果と車両側処理結果が同一であれば、制御部20はアンサー信号Aが対応する携帯機30からのものである旨を認証する。制御部20はアンサー信号Aを認証すると、駆動指令をアクチュエータ駆動回路15に出力する。アクチュエータ駆動回路15はドアロックアクチュエータ9を駆動させ、リクエストスイッチ5が操作されたドアを開錠する。
【0031】
図5は携帯機30の構成を示すブロック図である。
携帯機30は、リモートコントローラ31、受信アンテナ32および送信アンテナ33を備えている。
【0032】
受信アンテナ32は、車両側装置1が送信するリクエスト信号S(SA1〜SA3、SB1〜SB3)を受信し、送信アンテナ33は、アンサー信号AをRF信号として送信する。受信アンテナ32は、いわゆる3軸アンテナであり、3つの受信アンテナ32a、32bおよび32cを備える。受信アンテナ32a、32bおよび32cは、それぞれ、x軸、y軸およびz軸と、異なる軸線方向(
図1参照)を向くように配置する。受信アンテナ32a、32bおよび32cは、受信したリクエスト信号Sについて、それぞれ配置された軸線方向の磁界成分を検出する。
【0033】
リモートコントローラ31は、受信アンテナ32を介して受信したリクエスト信号Sに対して後述する処理を行い、アンサー信号Aを生成する。リモートコントローラ31は、生成したアンサー信号Aを送信アンテナ33から車両側装置1に送信させる。
【0034】
リモートコントローラ31は、CPU35、LF受信部37、強度検出部38、RF送信部39、およびメモリ36を備える。
【0035】
LF受信部37は、受信アンテナ32に接続してリクエスト信号Sを受信する。
【0036】
強度検出部38は、LF受信部37が受信した第1および第2のリクエスト信号SA1〜SA3、SB1〜SB3について、それぞれx軸、y軸およびz軸の各軸における受信強度を検出する。前記したように、第1および第2のリクエスト信号SA1〜SA3、SB1〜SB3の送信元である送信アンテナ7a〜7cは、車両の異なる位置に設置されている。そのため、各送信アンテナと携帯機30との距離は異なる。距離が大きいほど信号の強度は減衰する。したがって、第1のリクエスト信号SA1〜SA3は、同じ内容であってもそれぞれ強度が異なる。第2のリクエスト信号SB1〜SB3も、同様にそれぞれ強度が異なる。強度検出部38は、検出した信号の各軸の受信強度を、信号の受信時刻と共にメモリ36に格納する。
【0037】
RF送信部39は、アンサー信号AをRF信号として送信アンテナ33から出力させる。メモリ36は、リモートコントローラ31の制御プログラムや、リモートコントローラ31の処理に必要な情報を格納する。メモリ36は、一例として、携帯機30のID51、リクエスト信号Sの送信順序情報52を格納する。送信順序情報52は、車両側装置1のメモリ12が記憶している送信順序情報52(
図3参照)と同じものを記憶する。すなわち、送信順序情報52は、予め定められた順序である、第1のリクエスト信号SAの送信順序O1と、第2のリクエスト信号SBの送信順序O2を含んでいる。
【0038】
CPU35は、制御部40、暗号処理部41、およびアンサー信号生成部42を備える。制御部40は、不図示のタイマを備える。
【0039】
車両側装置1と同様に、CPU35の各部は、処理結果を一時的にメモリ36に記憶させ、必要なデータや処理対象をメモリ36から読み出し、処理終了後に一時的に記憶させたデータをリセットする。例えば、前記したようにメモリ36には強度検出部38が検出した受信強度が格納されるが、受信したリクエスト信号Sに応答するアンサー信号Aの送信が完了すると、CPU35は受信強度をメモリ36から消去する。
【0040】
なお、詳細な説明は省略するが、携帯機30はコントロールスイッチを備えるようにしても良い。使用者がコントロールスイッチを操作することで、遠隔から車両のドアを施錠または開錠させたり、エンジンを始動させたりすることができる。
【0041】
制御部40は、CPU35全体の制御を行う。制御部40は、リクエスト信号Sの受信に関して、判定部として、以下の(i)〜(iii)の処理を行う。
(i)第1のリクエスト信号SAの比較
制御部40は、強度検出部38が検出した受信強度を用いて、第1のリクエスト信号SA1〜SA3のそれぞれについて、各軸の受信強度比(以下、単に「強度比」ともいう)を算出する。制御部40は、算出した信号SA1〜SA3の強度比を比較して、互いに異なるかを判定する。
(ii)第2のリクエスト信号SBの比較
制御部40は、強度検出部38が検出した受信強度を用いて、第2のリクエスト信号SB1〜SB3のそれぞれについて、各軸の強度比を算出する。制御部40は、算出した信号SB1〜SB3の強度比を比較して、互いに異なるかを判定する。
(iii)送信元が同じリクエスト信号の比較
制御部40は、送信順序情報52を参照して、第1および第2のリクエスト信号SA1〜SA3、SB1〜SB3の中で、同じ送信アンテナが送信したリクエスト信号を特定する。制御部40は、同じ送信アンテナが送信したリクエスト信号同士の強度比を比較して、強度比がすべて一致するかを判定する。
【0042】
制御部40は、前記(i)〜(iii)の処理によって、リクエスト信号Sが適正なものであるか、すなわち、リレーアタックを試みる中継器によって送信されたものでないかを判定する。すなわち、(i)〜(iii)の処理で用いる、リクエスト信号Sの強度比は、リクエスト信号Sが車両側装置1から直接的に送信されたものであるか、それとも中継器によって中継されたものであるかを判別する情報(信号判別情報)である。制御部40は、リクエスト信号Sが適正であると判定した場合にのみ、車両側装置1にアンサー信号Aを送信するように制御を行う。前記(i)〜(iii)の処理の詳細については後述する。
【0043】
制御部40は、リクエスト信号Sが適正であると判定した場合、第1のリクエスト信号SA1が含む暗号を取得する。制御部40は、取得した暗号を処理指令と共に暗号処理部41に入力する。
【0044】
暗号処理部41は制御部40が入力した暗号を、所定の計算プロセスで計算処理する。所定の計算プロセスは、携帯機30のID51を組み込んだものであり、車両側装置1の暗号処理部23と同じ計算プロセスである。暗号処理部41は、処理結果を携帯機処理結果として制御部40に入力する。制御部40は、携帯機処理結果を、信号生成指令と共にアンサー信号生成部42に入力する。
【0045】
アンサー信号生成部42は、携帯機処理結果を含むアンサー信号Aを生成して、RF送信部39に送る。RF送信部39は、アンサー信号AをRF信号として送信アンテナ33から出力する。
【0046】
以下、キーレスエントリーシステムの処理を説明する。
図6は、車両側装置1の処理を示すフローチャートである。
図6に示すように、使用者によりリクエストスイッチ5が操作されると(ステップS101)、
スイッチ判別部21が、リクエストスイッチ5a、5b、5cのうちのどれが操作されたのかを判別して、メモリ12に記憶させる。
【0047】
制御部20は、リクエスト信号Sに含ませる暗号を生成し、またメモリ12の送信順序情報52を参照して送信順序O1、O2を取得する(ステップS102)。制御部20は、生成した暗号と共に処理指令を暗号生成部に入力する。制御部20は、暗号と共に、送信順序O1、O2を含む信号生成指令をリクエスト信号生成部22に入力する。
【0048】
暗号処理部23は、処理指令に従い、暗号を所定の計算プロセスで計算処理し、車両側処理結果をメモリ12に記憶させる(ステップS103)。
【0049】
リクエスト信号生成部22は、信号生成指令に従ってリクエスト信号Sを生成する。リクエスト信号生成部22は、LF送信部13を制御して、送信アンテナ7a、7b、7cの順で第1のリクエスト信号SA1、SA2、SA3をそれぞれ送信させる(ステップS104)。
【0050】
リクエスト信号生成部22は、次に、LF送信部13を制御して、送信アンテナ7b、7c、7aの順で第2のリクエスト信号SB1、SB2、SB3をそれぞれ送信させる(ステップS105)。なお、リクエスト信号生成部22は、全体で第1番目に送信する第1のリクエスト信号SA1には、ウエイクアップ信号と暗号を含める。
【0051】
制御部20は、すべてのリクエスト信号Sの送信が完了すると、制御部20は、携帯機30からのアンサー信号Aを待ち受ける(ステップS106)。なお、制御部20は、タイマを参照して、あらかじめ設定した応答待ち時間が経過してもアンサー信号Aを受信しなかった場合は、処理を終了する。
【0052】
制御部20は、アンサー信号Aを受信すると(ステップS106:Yes)アンサー信号Aが含む携帯機処理結果をメモリ12に記憶させておいた車両側処理結果と照合する(ステップS107)。制御部20は、携帯機処理結果と車両側処理結果が一致しなかった場合は(ステップS107:No)、処理を終了する。制御部20は、携帯機処理結果と車両側処理結果が一致した場合(ステップS107:Yes)、アクチュエータ駆動回路15に駆動指令を出力する。アクチュエータ駆動回路15はドアロックアクチュエータ9を駆動させ(ステップS108)、ドアロックを開錠する。
【0053】
図7は、携帯機30の処理を示すフローチャートである。
携帯機30のリモートコントローラ31は、コントロールスイッチが操作されたときを除き、リクエスト信号Sを受信するまではスリープモードにある。
図7に示すように、リモートコントローラ31は、リクエスト信号Sを受信すると(ステップS201:Yes)、スリープモードを解除する。具体的には、携帯機30が最初に受信するリクエスト信号は、ウエイクアップ信号を含む第1のリクエスト信号SA1である。リモートコントローラ31は、このウエイクアップ信号に応答してスリープモードを解除する。携帯機30は、第1のリクエスト信号SA1に続いて、第1のリクエスト信号SA2、SA3および第2のリクエスト信号SB1〜SB3も順次受信する。
【0054】
リモートコントローラ31の制御部40は、第1のリクエスト信号SA1のウエイクアップ信号が含む送信完了時間T1および送信完了時間T2を取得して、タイマのカウントを開始する(ステップS202)。
【0055】
強度検出部38は、第1および第2のリクエスト信号SA1〜SA3、SB1〜SB3の各軸の受信強度を順次検出して(ステップS203)、メモリ36に受信時刻と共に記憶させる。
【0056】
(i)第1のリクエスト信号SAの比較
制御部40は、ウエイクアップ信号に含まれる第1のリクエスト信号SAの送信完了時間T1が経過すると(ステップS204:Yes)、第1のリクエスト信号SA1〜SA3の受信強度を用いて各軸の強度比を算出する(ステップS205)。具体的な処理としては、制御部40は、メモリ36に順次記憶される各受信強度の受信時刻を参照する。制御部40は、カウントを開始してから送信完了時間T1が経過するまでに受信時刻が記録されている受信強度を選択して、それらの強度比を算出する。制御部40は、算出した第1のリクエスト信号SA1〜SA3の強度比を比較し、互いに異なるかを判定する(ステップS206)。
【0057】
この強度比の比較は、リクエスト信号Sが中継器によって送信されたものでないか、すなわちリレーアタックを受けていないかを判定するために行う。
図8は、車両側装置1が携帯機30に直接的に送信したリクエスト信号Sの強度比を示す図である。
図9の(a)は、単一の送信アンテナを備える中継器がリクエスト信号を中継する態様を説明する図である。
図9の(b)は、
図9の(a)の場合において、携帯機が受信するリクエスト信号の強度比を示す図である。
【0058】
リレーアタックを受けていない状態では、車両側装置1が送信したリクエスト信号Sを、携帯機30が直接的に受信する(
図4の(a)および(b)参照)。車両側装置1は、第1のリクエスト信号SA1〜SA3を、異なる位置に設置された送信アンテナ7a〜7cにより送信する。そのため、携帯機30が車両側装置1から直接的に第1のリクエスト信号SA1〜SA3を受信した場合、
図8に示すように、信号SA1〜SA3の各軸の強度比は全て異なったものとなる。同様に、第2のリクエスト信号SB1〜SB3も、各軸の強度比が全て異なったものとなる。
【0059】
一方、キーレスエントリーシステムがリレーアタックを受けている場合は、
図9の(a)に示すように、車両側装置1と携帯機30の間に複数の中継器が存在する。車両側装置1が送信したリクエスト信号Sを、複数の中継器が中継して、車両の遠方にある携帯機30に受信させる。ここで、
図9の(a)は、全ての中継器が単一の送信アンテナを備えたものである例を示している。このような場合、
図9の(b)に示すように、第1のリクエスト信号SA1〜SA3の各軸の強度比は全て同じとなる。したがって、第1のリクエスト信号SA1〜SA3の強度比に互いに一致するものがある場合は、リレーアタックの可能性がある。なお、同様に、第2のリクエスト信号SB1〜SB3も、各軸の強度比が全て異なったものとなる。
【0060】
制御部40は、
図7に示すように、第1のリクエスト信号SA1〜SA3の強度比で互いに一致するものがある場合は(ステップS206:No)、リレーアタックと判断して、アンサー信号Aの生成を行わずに処理を終了する。なお、3つの信号SA1〜SA3の全てが一致していなくても、二つが一致すれば、処理を終了するようにしても良い。
【0061】
(ii)第2のリクエスト信号SBの比較
第1のリクエスト信号SA1〜SA3の強度比が互いに異なる場合は(ステップS206:Yes)、制御部40は続いて第2のリクエスト信号SB1〜SB3の強度比も同様に比較を行う。単一の送信アンテナを備えた中継器であっても、例えば、中継器を持った第三者がすばやく動いた場合等に、偶然に第1のリクエスト信号SA1〜SA3の強度比が異なる場合もある。よって、制御部40は、第1のリクエスト信号SA1〜SA3および第2のリクエスト信号SB1〜SB3の双方で、強度比の比較を行う。
【0062】
制御部40は、送信完了時間T1の経過後、第2のリクエスト信号SBの送信完了時間T2が経過すると(ステップS207:Yes)、第2のリクエスト信号SB1〜SB3の受信強度を用いて各軸の強度比を算出する(ステップS208)。具体的な処理としては、制御部40は、メモリ36に順次記憶される各受信強度の受信時刻を参照する。制御部40は、送信完了時間T1が経過してから送信完了時間T2が経過するまでに受信時刻が記録されている受信強度を選択して、それらの強度比を算出する。
【0063】
制御部40は、算出した第2のリクエスト信号SB1〜SB3の強度比を比較し、互いに異なるかを判定する(ステップS209)。制御部40は、第2のリクエスト信号SB1〜SB3の強度比で互いに一致するものがある場合は(ステップS209:No)、リレーアタックと判断して、アンサー信号Aの生成を行わずに処理を終了する。なお、3つの信号SB1〜SB3の全てが一致していなくても、二つが一致すれば、処理を終了するようにしても良い。
【0064】
このように、中継器が単一の送信アンテナのみを備えている場合は、前記(i)および(ii)の処理によってリレーアタックが判断される。
【0065】
ここで、中継器が、車両側装置1と同様に異なる位置に設置した3つの送信アンテナを備えている場合を説明する。
図10の(a)は、3つの送信アンテナを備える中継器がリクエスト信号を中継する場合を説明する図である。ここでは、複数の中継器のうち、携帯機30にリクエスト信号Sを直接的に送信する中継器が、3つの送信アンテナを備える例を説明する。なお、複数の中継器の全てが3つの送信アンテナを備えている場合も同様である。
図10の(b)は、
図10の(a)の場合において携帯機が受信するリクエスト信号の強度比を示す図である。
【0066】
3つの送信アンテナを備える中継器は、中継する信号ごとに、使用する送信アンテナを切り替える。そのため、
図10の(a)に示すように、携帯機は、第1のリクエスト信号SA1〜SA3を、それぞれ中継器の異なる送信アンテナから受信する。これによって、
図10の(b)に示すように、第1のリクエスト信号SA1〜SA3の強度比は全て異なったものとなる。第2のリクエスト信号SB1〜SB3の強度比も同様に、全て異なったものとなる。この場合、前記(i)および(ii)の処理では、リレーアタックが判断されない。実施の形態では、このような複数の送信アンテナを備えた中継器に対応して、更なる比較処理を行う。
【0067】
(iii)送信元が同じリクエスト信号の比較
制御部40は、第2のリクエスト信号SB1〜SB3の強度比が互いに異なる場合は(ステップS209:Yes)、第1および第2のリクエスト信号SA1〜SA3、SB1〜SB3から送信元アンテナ(以下、単に「送信元」という)が同じリクエスト信号を特定する(ステップS210)。制御部40は、メモリ36に記憶させた送信順序情報52(
図3参照)と、各信号について記録されている受信時刻を参照して、送信元の特定を行う。送信順序情報52において、送信順序O1の1番目と、送信順序O2の3番目が送信アンテナ7aである。制御部40は、受信時刻が最初の信号SA1と最後の信号SB3を、送信元が同じ信号として特定する。制御部40は、同様に、受信時刻が2番目の信号SA2と4番目の信号SB1を送信元が同じ(送信アンテナ7b)と特定し、受信時刻が3番目の信号SA3と5番目の信号SB2を送信元が同じ(送信アンテナ7c)と特定する。
【0068】
制御部40は、送信元が同じリクエスト信号同士を比較して、強度比が全て一致するかを判定する(ステップS211)。
【0069】
図8に示すように、車両側装置1が携帯機30に直接的に送信した場合は、送信元が同じリクエスト信号の強度比は一致する。
【0070】
一方、3つの送信アンテナを備える中継器は、中継する信号ごとに送信アンテナを切り替えているが、その切り替え順序は送信順序O1とO2に従ったものではない。中継器は、例えば、第1のリクエスト信号SA1〜SA3と第2のリクエスト信号SB1〜SB3を、同じ切り替え順序で中継する。そのため、
図10の(b)に示すように、送信元が同じリクエスト信号(SA1とSB3、SA2とSB1,SA3とSB2)の強度比が全て一致しない。すなわち、実施の形態では、車両側装置1がリクエスト信号Sを異なる送信順序で複数回送信し、携帯機30が、送信元が同じリクエスト信号の強度比を比較する。これによって、リクエスト信号Sが、複数の送信アンテナ備えた中継器で中継された場合でも、リレーアタックを判断することができる。
【0071】
制御部40は、送信元が同じリクエスト信号の強度比が全て一致しない場合(ステップS211:No)は、リレーアタックを判断して、アンサー信号Aの生成を行わずに処理を終了する。制御部40は、送信元が同じリクエスト信号の強度比が全て一致する場合(ステップS211:Yes)は、リクエスト信号Sが適正であると判定し、第1のリクエスト信号SA1が含む暗号を処理指令と共に暗号処理部41に入力する。
【0072】
暗号処理部41は、処理指令に従い、暗号を所定の計算プロセスで計算処理し(ステップS212)、算出した携帯機処理結果を制御部40に入力する。制御部40は、携帯機処理結果を、信号生成指令と共にアンサー信号生成部42に入力する。アンサー信号生成部42は、携帯機処理結果を含むアンサー信号Aを生成する。アンサー信号生成部42は、RF送信部39を制御して、アンサー信号Aを送信アンテナ33から送信させる(ステップS213)。
【0073】
リモートコントローラ31は、アンサー信号Aの返信後、通常動作状態からスリープ状態に戻り、処理を終了する。
【0074】
以上の通り、実施の形態に係るキーレスエントリーシステムは、
(1)車両に設けられリクエスト信号Sを送信する車両側装置1と、リクエスト信号Sに応答してアンサー信号Aを送信する携帯機30とを有し、車両側装置1がアンサー信号Aに応じてドアロックを駆動するキーレスエントリーシステムであって、
車両側装置1は、
異なる位置に配置された送信アンテナ7a〜7c(複数のアンテナ)と、
携帯機30に対して、送信アンテナ7a〜7cのそれぞれから送信順序O1(第1の送信順序)で第1のリクエスト信号SA1〜SA3を送信させた後、送信アンテナ7a〜7cのそれぞれから送信順序O1と異なる送信順序O2(第2の送信順序)で第2のリクエスト信号SB1〜SB3を送信させるLF送信部13(送信部)と、を備え、
携帯機30は、
送信アンテナ7a〜7cからの第1のリクエスト信号SA1〜SA3および第2のリクエスト信号SB1〜SB3を受信するRF受信部14(受信部)と、
送信順序O1と送信順序O2を記憶するメモリ36(記憶部)と、
送信順序O1と送信順序O2に基づいて、送信アンテナ7a〜7cが送信した第1のリクエスト信号SA1〜SA3および第2のリクエスト信号SB1〜SB3から、同じアンテナが送信したリクエスト信号を特定し、同じアンテナが送信したリクエスト信号の信号判別情報が一致するか否かを判定する制御部40(判定部)と、を備える。
具体的には、携帯機30に、異なる軸線方向を向き、それぞれが車両側装置1の送信アンテナ7a〜7cからの第1のリクエスト信号SA1〜SA3および第2のリクエスト信号SB1〜SB3を受信する複数の受信アンテナ32a〜32cを備えるようにし、信号判別情報を、携帯機30の複数の受信アンテナ32a〜32cが受信する第1のリクエスト信号SA1〜SA3および第2のリクエスト信号SB1〜SB3の、各軸の受信強度比とした。
【0075】
車両側装置1が異なる位置に設置した複数の送信アンテナ7a〜7cからそれぞれリクエスト信号Sを送信すると、携帯機30が受信するリクエスト信号Sの強度比が異なる。そこで、携帯機30がリクエスト信号Sの強度比を比較し、強度比が同じリクエスト信号に対してはアンサー信号Aを送信しないようにすることで、リレーアタックを回避する。ただし、中継器が車両側装置1と同様に複数の送信アンテナを備えるようにし、中継する信号ごとに送信アンテナを切り替えた場合、リクエスト信号Sの強度比は同じとならない。このような場合、携帯機30がリレーアタックを判断できず、アンサー信号Aを返信するおそれがある。
【0076】
実施の形態では、車両側装置1は、異なる位置に設置した3つの送信アンテナ7a〜7cから、送信順序を変更して、第1及び第2のリクエスト信号SA1〜SA3、SB1〜SB3を送信する。携帯機30には車両側装置1の送信順序を記憶させておく。携帯機30は、記憶した送信順序に基づいて、送信元が同じ送信アンテナのリクエスト信号の各軸の受信強度比を比較する。車両側装置1が直接送ったリクエスト信号は、受信強度比が同じとなる。一方、中継器が中継したリクエスト信号は、送信順序に基づいたものではないため、受信強度比は同じにならない。携帯機30は、受信強度比が異なるリクエスト信号に対してアンサー信号Aを送信しないようにする。これによって、キーレスエントリーシステムは、リレーアタックに対するセキュリティを向上させることができる。
【0077】
なお、実施の形態では、第1及び第2のリクエスト信号SA1〜SA3、SB1〜SB3として2回のリクエスト信号Sを送信したが、リクエスト信号Sの送信回数はこれに限られず、例えば3回以上、送信順序を変更して送信しても良い。
【0078】
(2)送信順序O1および送信順序O2は、予め定められた順序である。携帯機30の記憶部に、予め決定した車両側装置1の送信順序を記憶させておくことによって、車両側装置1が送信順序を携帯機30に送信する必要がなく、データ送信の負荷を低減することができる。
【0079】
[変形例1]
前記の実施の形態では、携帯機30は、第1および第2のリクエスト信号SA1〜SA3、SB1〜SB3の信号判別情報として、各軸の受信強度比を用いたが、これに限られない。例えば、信号判別情報として、第1および第2のリクエスト信号SA1〜SA3、SB1〜SB3の角度を用いても良い。
【0080】
図11は、第1のリクエスト信号SA1〜SA3の角度の一例を示す図である。前記したように、車両側装置1の送信アンテナ7a〜7cは、異なる位置に設置されている。そのため、携帯機30が送信アンテナ7a〜7cから受信する第1のリクエスト信号SA1〜SA3は、強度だけでなく角度もそれぞれ異なる。図示はしていないが、第2のリクエスト信号SB1〜SB3も、同様に、角度がそれぞれ異なる。一方、第1および第2のリクエスト信号SA1〜SA3、SB1〜SB3の中で、送信元が同じ信号は、角度が同じとなる。
【0081】
変形例1では、携帯機30の制御部40は、強度検出部38が検出したx軸、y軸およびz軸の各軸における受信強度を用いて、第1および第2のリクエスト信号SA1〜SA3、SB1〜SB3の角度を算出する。制御部40は、算出した角度を用いて、実施の形態と同様に比較処理を行う。すなわち、制御部40は、第1のリクエスト信号SA1〜SA3のそれぞれの角度を比較して、互いに異なるかを判定する。制御部40は、また、第2のリクエスト信号SB1〜SB3のそれぞれの角度を比較して、互いに異なるかを判定する。制御部40は、さらに、送信順序情報52を参照して、第1および第2のリクエスト信号SA1〜SA3、SB1〜SB3の中で、同じ送信アンテナが送信したリクエスト信号同士の角度を比較して、角度がすべて一致するかを判定する。
【0082】
[変形例2]
第1および第2のリクエスト信号SA1〜SA3、SB1〜SB3の信号判別情報の他の例として、例えば、電界強度を用いても良い。その場合は、車両側装置1のリクエスト信号生成部22は、携帯機30に送信する第1および第2のリクエスト信号SA1〜SA3、SB1〜SB3に、バースト波等の電界強度測定用信号を含ませる。前記したように、携帯機30の送信アンテナ7a〜7cは異なる位置に設置されているため、各送信アンテナと携帯機30との距離も異なる。電界強度は車両側装置1の送信アンテナ7a〜7cからの距離に応じて減衰する。よって、リクエスト信号の送信アンテナ7a〜7cからの出力強度が同一であっても、携帯機30が受信するリクエスト信号SA1〜SA3、SB1〜SB3の電界強度は、送信元によって異なる。
【0083】
信号判別情報として電界強度を用いる場合は、携帯機30の受信アンテナ32は3軸アンテナでなく1軸アンテナであっても良い。強度検出部38は、第1および第2のリクエスト信号SA1〜SA3、SB1〜SB3が含む電界強度測定用信号から、電界強度を検出する。
【0084】
制御部40は、強度検出部38が検出した電界強度を用いて、実施の形態と同様に比較処理を行う。すなわち、制御部40は、第1のリクエスト信号SA1〜SA3のそれぞれの電界強度を比較して、互いに異なるかを判定する。制御部40は、また、第2のリクエスト信号SB1〜SB3のそれぞれの電界強度を比較して、互いに異なるかを判定する。制御部40は、さらに、送信順序情報52を参照して、第1および第2のリクエスト信号SA1〜SA3、SB1〜SB3の中で、同じ送信アンテナが送信したリクエスト信号同士の電界強度を比較して、すべて一致するかを判定する。
【0085】
なお、受信強度比、角度、電界強度の複数の信号判別情報の全部または一部を組み合わせて使用するようにしても良い。
【0086】
[変形例3]
前記の実施の形態では、第1のリクエスト信号SAの送信順序O1と、第2のリクエスト信号SBの送信順序O2は、予め定められた順序としたが、これに限られない。例えば、リクエストスイッチ5の操作に応じたリクエスト信号Sの送信ごとに、第2のリクエスト信号SBの送信順序O2を異ならせるようにしても良い。
【0087】
変形例3において、車両側装置1のキーレスコントローラ10の制御部20は、送信順序変更部として、リクエスト信号Sの送信ごとに、第2のリクエスト信号の送信順序O2を変更する。すなわち、変形例3では、第1のリクエスト信号の送信順序O1は、実施の形態と同様に予め定められた順序を用いるが、送信順序O2については、リクエスト信号Sの送信ごとに異なったものを使用する。車両側装置1のキーレスコントローラ10のメモリ12と、携帯機30のリモートコントローラ31のメモリ36は、初期状態では送信順序情報52として、送信順序O1のみを記憶している。
【0088】
制御部20は、リクエストスイッチ5の操作に応じて、暗号を生成するとともに、使用する送信順序O2を決定する。制御部20は、送信順序O2を、送信順序O1と異なり、かつ前のリクエスト信号の送信において使用した送信順序O2とは異なるように決定する。これによって、制御部20は、リクエスト信号Sの送信ごとに送信順序O2を変更する。
【0089】
送信順序O1が、例えば、送信アンテナ7a、7b、7cの送信順序である場合は、制御部20は、送信順序O2として、以下の送信順序O2A〜O2Eのいずれかを決定する。制御部20は、送信順序O2A〜O2Eからランダムで決定しても良く、あるいは送信順序O2A〜O2Eを決まった順番で使用するようにしても良い。
送信順序O2A:送信アンテナ7b、7c、7a
送信順序O2B:送信アンテナ7b、7a、7c
送信順序O2C:送信アンテナ7c、7a、7b
送信順序O2D:送信アンテナ7c、7b、7a
送信順序O2E:送信アンテナ7a、7c、7b
【0090】
制御部20は、決定した送信順序O2を送信順序情報52としてメモリ12に記憶させる。初期状態から2回目以降のリクエスト信号Sの送信の際には、先のリクエスト信号Sの送信の際に記憶させた送信順序O2を、決定した送信順序O2で上書きする。
【0091】
制御部20は、リクエスト信号生成部22に入力する信号生成指令に、送信順序O1と、決定した送信順序O2を含める。リクエスト信号生成部22は、信号生成指令にしたがってリクエスト信号Sを生成する。リクエスト信号生成部22は、送信順序O1、O2が示す送信順序で、第1および第2のリクエスト信号SA1〜SA3、SB1〜SB3をLF送信部13に送信させる。前記したように、リクエスト信号生成部22は、6つのリクエスト信号SA1〜SA3、SB1〜SB3の中で1番目に送信する第1のリクエスト信号SA1に、ウエイクアップ信号を含める。変形例3では、リクエスト信号生成部22は、ウエイクアップ信号に、制御部20が決定した送信順序O2を、変更通知として含めるようにする。
【0092】
携帯機30のリモートコントローラ31の制御部40は、送信順序変更部として、リクエスト信号Sの受信ごとに、送信順序O2を変更する。具体的には、制御部40は第1のリクエスト信号SA1を受信すると、ウエイクアップ信号が含む送信順序O2を取得する。制御部40は、取得した送信順序O2をメモリ36に記憶させる。初期状態から2回目以降のリクエスト信号Sの受信の際には、制御部40は先のリクエスト信号Sの受信の際に記憶させた送信順序O2を、取得した送信順序O2で上書きする形で変更する。
【0093】
制御部40は、予め定められた送信順序O1と、変更した送信順序O2を参照して、実施の形態と同様に、第1および第2のリクエスト信号SA1〜SA3、SB1〜SB3の中で、同じ送信アンテナが送信したリクエスト信号を特定する。制御部40は、同じ送信アンテナが送信したリクエスト信号同士の強度比を比較して、強度比がすべて一致するかを判定する。
【0094】
以上の通り、変形例3では、
車両側装置1は、第1および第2のリクエスト信号SA1〜SA3、SB1〜SB3を送信するごとに、送信順序O2を変更する制御部20(送信順序変更部)を備え、送信部は、変更後の送信順序O2を、変更通知として、第1のリクエスト信号SA1に含めて携帯機30に送信し、携帯機30は、変更後の送信順序に基づいて、メモリ36に記憶させた送信順序O2を変更する制御部40(送信順序変更部)を備える。
【0095】
リクエスト信号Sの送信ごとに使用する送信順序O2を変更することで、セキュリティをさらに向上させることができる。
【0096】
なお、ここでは、第1のリクエスト信号SAの1番目に送信する信号SA1に、第2のリクエスト信号SBの送信順序O2を含めるようにしたが、第2のリクエスト信号SBの1番目に送信する信号SB1に送信順序O2を含めても良い。
【0097】
また、ここでは、ウエイクアップ信号に含める送信順序O2の変更通知として、変更後の送信順序O2自体を送信したが、これに限られない。例えば、車両側装置1と携帯機30側のメモリ36に送信順序O2の複数の変更のパターンを識別番号と共に予め記憶させておき、変更通知として変更後のパターンの識別番号のみをリクエスト信号Sに含めるようにしても良い。
【0098】
また、ここでは、第2のリクエスト信号SBの送信順序O2のみを変更する例を説明したが、第1のリクエスト信号SAの送信順序O1も変更しても良い。その場合、車両側装置1の制御部20は、送信順序O1と送信順序O2を、互いに異なり、かつ前のリクエスト信号Sの送信において使用した送信順序O1と送信順序O2の組み合わせとは異なるように変更する。制御部20は、送信順序O1、O2を、送信順序の組み合わせからランダムに選択しても良く、あるいは決まった順番で用いるようにしても良い。制御部20は、あるいは、単に先の送信で使用した送信順序O1、O2を入れ替える形で変更しても良い。
【0099】
[変形例4]
前記の実施の形態では、携帯機30のリモートコントローラ31の制御部40が、第1および第2のリクエスト信号SA1〜SA3、SB1〜SB3の受信強度比を用いた前記(i)〜(iii)の比較処理を行う例を説明したが、これに限られない。変形例4では、前記(iii)の比較処理を、携帯機30ではなく車両側装置1で行う例を説明する。携帯機30では前記(iii)の比較処理を行わないため、変形例4において、携帯機30のメモリ36は送信順序情報52を記憶していない。
【0100】
図12は、変形例4に係る車両側装置1の処理を示すフローチャートである。
図13は、変形例4に係る携帯機30の処理を示すフローチャートである。
まず、携帯機30の処理から説明する。
図13のステップS251〜S259までの処理は、実施の形態で説明した
図7のステップS201〜S209までの処理と同じであるため、説明は省略する。変形例4では、携帯機30の制御部40が第2のリクエスト信号SB1〜SB3の強度比が互いに異なるとを判定した場合(ステップS259:Yes)、前記(iii)の比較処理は行わずに、アンサー信号Aの生成に進む。
すなわち、暗号処理部41は、制御部40が入力した処理指令に従って、暗号を所定の計算プロセスで計算処理し(ステップS260)、算出した携帯機処理結果を制御部40に入力する。制御部40は、携帯機処理結果を、信号生成指令と共にアンサー信号生成部42に入力する。アンサー信号生成部42は、携帯機処理結果を含むアンサー信号Aを生成する。
【0101】
ここで、アンサー信号生成部42は、ステップS255およびステップS258で算出した第1および第2のリクエスト信号SA1〜SA3、SB1〜SB3の強度比と、各信号の受信時刻の情報を、アンサー信号Aに含める。アンサー信号生成部42は、RF送信部39を制御して、アンサー信号Aを送信アンテナ33から送信させる(ステップS261)。
【0102】
次に、車両側装置1の処理を説明する。
図12のステップS151からステップS157までの
図6のステップS101〜S107までの処理と同じであるため、説明は省略する。
変形例4では、車両側装置1の制御部20は、アンサー信号Aが含む携帯機処理結果とメモリ12に記憶させた車両側処理結果が一致すると判定した場合(ステップS157:Yes)、前記(iii)の比較処理を行う。すなわち、制御部20は、メモリ12に記憶させた送信順序情報52とアンサー信号Aが含む各信号の受信時刻を用いて、同じ送信アンテナが送信したリクエスト信号を特定する(ステップS158)。制御部20は、同じ送信アンテナが送信したリクエスト信号同士の強度比を比較して、強度比がすべて一致するかを判定する(ステップS159)。
【0103】
制御部20は、送信元が同じリクエスト信号同士で強度比が一致しないものがあれば(ステップS159:No)、リレーアタックの可能性があるため、ドアロックを駆動せずに処理を終了する。制御部20は、送信元が同じリクエスト信号同士で強度比が全て一致する場合は(ステップS159:Yes)、アクチュエータ駆動回路15に駆動指令を出力する。アクチュエータ駆動回路15はドアロックアクチュエータ9を駆動させ(ステップS160)、ドアロックを開錠する。
【0104】
以上の通り、変形例4に係る車両側装置1は、車両に設けられ、携帯機30にリクエスト信号Sを送信し、携帯機30からリクエスト信号Sへの応答であるアンサー信号Aを受信するものであって、
異なる位置に配置された送信アンテナ7a〜7c(複数のアンテナ)と、
携帯機30に対して、送信アンテナ7a〜7cのそれぞれから送信順序O1(第1の送信順序)で第1のリクエスト信号SA1〜SA3を送信させた後、送信アンテナ7a〜7cのそれぞれから送信順序O1と異なる送信順序O2(第2の送信順序)で第2のリクエスト信号SB1〜SB3を送信させるLF送信部13(送信部)と、
携帯機30から、送信アンテナ7a〜7cが送信した第1および第2のリクエスト信号SA1〜SA3、SB1〜SB3それぞれの受信強度比(信号判別情報)を含むアンサー信号Aを受信するRF受信部14(受信部)と、
送信順序O1と送信順序O2に基づいて、送信アンテナ7a〜7cが送信した第1のリクエスト信号および第2のリクエスト信号SA1〜SA3、SB1〜SB3から、同じ送信アンテナが送信したリクエスト信号を特定し、同じ送信アンテナが送信したリクエスト信号の強度比が一致するか否かを判定する制御部20(判定部)と、
制御部20の判定結果に基づいて、ドアロックを駆動する駆動部と、を備える。
【0105】
変形例4においては、実施の形態と同様に、リレーアタックに対するセキュリティを向上させることができる。さらに、車両側装置1で送信元が同じリクエスト信号の強度比の比較を行うため、携帯機30が送信順序情報52を記憶させておく必要がない。そのため、携帯機30のメモリ36に必要とされる記憶容量を低減することができる。
【0106】
変形例4では、前記(i)〜(iii)の比較処理のうち、(iii)の処理のみを車両側装置1で行うようにしたが、(i)および(ii)の比較処理も、車両側装置1で行うようにしても良い。
【0107】
変形例4は、変形例1〜3に適用することもできる。変形例3に適用する場合には、車両側装置1は、リクエスト信号Sに送信順序O2の変更通知を含める必要がないため、データ送信の負荷を低減することができる。