(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6887344
(24)【登録日】2021年5月20日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】成形品取出機
(51)【国際特許分類】
B29C 33/44 20060101AFI20210603BHJP
B22D 17/32 20060101ALI20210603BHJP
B22D 46/00 20060101ALI20210603BHJP
B22D 17/20 20060101ALI20210603BHJP
B22D 29/00 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
B29C33/44
B22D17/32 Z
B22D46/00
B22D17/20 Z
B22D29/00 Z
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-162646(P2017-162646)
(22)【出願日】2017年8月25日
(65)【公開番号】特開2019-38199(P2019-38199A)
(43)【公開日】2019年3月14日
【審査請求日】2020年6月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000138473
【氏名又は名称】株式会社ユーシン精機
(74)【代理人】
【識別番号】100091443
【弁理士】
【氏名又は名称】西浦 ▲嗣▼晴
(74)【代理人】
【識別番号】100130720
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼見 良貴
(74)【代理人】
【識別番号】100130432
【弁理士】
【氏名又は名称】出山 匡
(72)【発明者】
【氏名】城 聡
(72)【発明者】
【氏名】浜畑 光晴
【審査官】
坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−001378(JP,A)
【文献】
特開2017−105190(JP,A)
【文献】
特許第5142242(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/44,45/40
B22D 17/20,17/32,29/00,46/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定された横行フレームと、
サーボモータを用いる第1の位置決めサーボ装置によって制御されて前記横行フレーム上を移動する引き抜きフレームと、
サーボモータを用いる第2の位置決めサーボ装置によって制御されて前記引き抜きフレーム上を移動すると共にサーボモータを用いる第3の位置決めサーボ装置によって前記引き抜きフレームと交差する方向に移動する進入フレームと、
前記進入フレームの装着されたアタッチメントと、
前記第1の位置決めサーボ装置、前記第2の位置決めサーボ装置及び前記第3の位置決めサーボ装置に、予め定めたシーケンスに従って前記引き抜きフレーム及び前記進入フレームを移動させるための制御信号を与える制御信号発生装置を備え、
前記制御信号発生装置が発生する制御信号は、少なくとも前記アタッチメントが該アタッチメントの主要動作をするために前記アタッチメントの移動方向を変える際に、前記アタッチメントの移動軌跡が弧の移動軌跡となるように定められており、しかも前記アタッチメントの前記移動軌跡が前記弧の移動軌跡を描いているときの前記アタッチメントの合成移動速度の最高移動速度が、前記弧の移動軌跡を描くために前記第1の位置決めサーボ装置、前記第2の位置決めサーボ装置及び前記第3の位置決めサーボ装置から選択される少なくとも2つの前記位置決めサーボ装置によりそれぞれ単独で前記引き抜きフレーム及び前記進入フレームを移動させるときの前記アタッチメントの最高移動速度よりも速くなるように定められている成形品取出機であって、
前記制御信号発生装置は、前記主要動作以外の動作をするときで前記アタッチメントの移動方向を変える際に、選択的に前記アタッチメントの前記移動軌跡が前記弧の移動軌跡となるように前記制御信号を発生するように構成され、
また制御信号発生装置は、前記主要動作以外の動作をするときで前記アタッチメントの前記移動軌跡が前記弧の移動軌跡を描いているときの前記アタッチメントの合成移動速度の最高移動速度が、前記弧の移動軌跡を描くために前記第1の位置決めサーボ装置、前記第2の位置決めサーボ装置及び前記第3の位置決めサーボ装置から選択される少なくとも2つの前記位置決めサーボ装置によりそれぞれ単独で前記引き抜きフレーム及び前記進入フレームを移動させるときの前記アタッチメントの最高移動速度以下となるように、制御信号を定めるように構成されていることを特徴とする成形品取出機。
【請求項2】
前記制御信号発生装置は、前記弧の移動軌跡の曲率を選択できるように構成されている請求項1に記載の成形品取出機。
【請求項3】
前記制御信号発生装置は、前記主要動作以外の動作をするときで前記アタッチメントの移動軌跡が前記弧の移動軌跡を描く移動範囲と該移動範囲における前記合成移動速度を選択的に設定する設定部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の成形品取出機。
【請求項4】
前記アタッチメントが成形機の型から成形品を取り出す取出ヘッドであり、
前記主要動作以外の動作が、前記型から前記成形品を取り出す際の取出動作以外の動作である請求項1に記載の成形品取出機。
【請求項5】
前記アタッチメントの変位振動を検出する変位振動検出部と、前記変位振動検出部が検出した変位振動と逆位相の振動を電動アクチュエータから前記アタッチメントに加えて前記アタッチメントの変位振動を抑制するアクティブ制御を行うアクティブ振動抑制装置を更に備えており、
前記アクティブ振動抑制装置は、少なくとも前記弧の移動軌跡の終了時点において前記アタッチメントに発生している振動を抑制することを特徴とする請求項1に記載の成形品取出機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、進入フレームに取り付けられたアタッチメントの移動軌跡が弧の移動軌跡になる成形品取出機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許第2979404号公報(特許文献1)及び特許第5142242号(特許文献2)には、進入フレームに取り付けられた取出ヘッド(アタッチメント)で取出動作を行う際に、取出ヘッドの移動軌跡が弧の移動軌跡になる成形品取出機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2979404号公報
【特許文献2】特許第5142242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術は、取出動作時に取出ヘッド(アタッチメント)を速く移動させることを目的にしている。成形品取出機において、取出動作以外の動作では、成形機の成形動作との関係でみると、時間的に余裕があるために、サイクルタイムを積極的に短縮することは検討されていないのが現状である。このような現状ではあるが、発明者は、サイクルタイムを積極的に短縮するために、成形品取出機の主要動作以外の動作をするときにも移動方向を変える際に、移動軌跡が弧の移動軌跡になる動作制御を行うことを研究した。そしてこの研究において、アタッチメントが弧の移動軌跡を描いて移動しているときに、必要以上に速度を速くすることが、動作中のアタッチメントの振動を大きくする場合があることを発明者は見出した。そして振動が大きくなると、機械的なストレスが大きくなって、ベアリング等の部品の寿命が短くなる問題が発生する。
【0005】
本発明の目的は、主要動作以外の動作において、進入フレームに取り付けられたアタッチメントの移動軌跡が弧の移動軌跡になる動作を行わせたときに、アタッチメントに発生する振動を抑制することができる成形品取出機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明が改良の対象とする成形品取出機は、固定された横行フレームと、サーボモータを用いる第1の位置決めサーボ装置によって制御されて横行フレーム上を移動する引き抜きフレームと、サーボモータを用いる第2の位置決めサーボ装置によって制御されて引き抜きフレーム上を移動すると共にサーボモータを用いる第3の位置決めサーボ装置によって引き抜きフレームと交差する方向に移動する進入フレームと、進入フレームに装着されたアタッチメントと、第1の位置決めサーボ装置、第2の位置決めサーボ装置及び第3の位置決めサーボ装置に、予め定めたシーケンスに従って引き抜きフレーム及び進入フレームを移動させるための制御信号を与える制御信号発生装置を備えている。そして制御信号発生装置が発生する制御信号は、少なくともアタッチメントが主要動作をするためにアタッチメントの移動方向を変える際に、アタッチメントの移動軌跡が弧の移動軌跡となるように定められている。しかも制御信号は、アタッチメントの移動軌跡が前記弧の移動軌跡を描いているときのアタッチメントの合成移動速度の最高移動速度が、弧の移動軌跡を描くために第1の位置決めサーボ装置、第2の位置決めサーボ装置及び第3の位置決めサーボ装置から選択される少なくとも2つの位置決めサーボ装置によりそれぞれ単独で引き抜きフレーム及び進入フレームを移動させるときのアタッチメントの最高移動速度よりも速くなるように定められている。
なお本願明細書において、「アタッチメントが主要動作をするためにアタッチメントの移動方向を変える際に、アタッチメントの移動軌跡が弧の移動軌跡となる」とは、特許第2979404号公報の特許請求の範囲及び図4で特定され「直線域(S)とこれに続く曲線域(R)」として特定され、また特許第5142242号(特許文献2)の図8に「曲線移動」として特定されているように、アタッチメントの移動方向を変える際に、アタッチメントの移動軌跡が弧状の曲線の移動軌跡になることを意味する。また本願明細書において「移動方向を変えるとは」、三次元方向で言えば、X方向からY方向またはY方向からZ方向のように、角度が異なる方向に移動する方向を変えることを意味し、例えばX方向で方向転換をするだけの変更は含まない。
【0007】
本発明においては、制御信号発生装置は、主要動作以外の動作をするときでアタッチメントの移動方向を変える際に、選択的にアタッチメントの移動軌跡が弧の移動軌跡となるように制御信号を発生するように構成される。ここで「選択的にアタッチメントの移動軌跡が弧の移動軌跡となるように制御信号を発生する」とは、アタッチメントが移動方向を変える複数の場所の中から任意に選択した場所で、弧の移動軌跡を描くようにアタッチメントを移動させる制御信号を発生することを意味する。また制御信号発生装置は、主要動作以外の動作をするときでアタッチメントの移動軌跡が弧の移動軌跡を描いているときのアタッチメントの合成移動速度の最高移動速度が、弧の移動軌跡を描くために第1の位置決めサーボ装置、第2の位置決めサーボ装置及び第3の位置決めサーボ装置から選択される少なくとも2つの位置決めサーボ装置によりそれぞれ単独で引き抜きフレーム及び進入フレームを移動させるときのアタッチメントの最高移動速度以下となるように、制御信号を定めるように構成されている。
【0008】
アタッチメントの移動速度が速くなって、発生する振動が大きくなると、その振動が機械的ストレスを増大させ、ベアリング等の各部品の寿命を短くする可能性が高い。本発明によれば、速度を速める必要性のある主要動作以外の動作において、移動方向を変える際に、アタッチメントの移動軌跡が弧の移動軌跡となるように定める場合において、弧の移動軌跡を描いているときのアタッチメントの合成移動速度の最高移動速度が、弧の移動軌跡を描くために第1の位置決めサーボ装置、第2の位置決めサーボ装置及び第3の位置決めサーボ装置から選択される2つの位置決めサーボ装置によりそれぞれ単独で引き抜きフレーム及び進入フレームを移動させるときのアタッチメントの最高移動速度以下になるため、主要動作以外の動作において弧の移動軌跡を描くようにアタッチメントを移動させても、アタッチメントに加わる振動を抑制することができる。その結果、振動による部品の寿命低下を抑制することができる。
【0009】
なお主要動作の如何を問わずに、アタッチメントの移動方向を変える際に、選択的にアタッチメントの移動軌跡が弧の移動軌跡となるように制御信号を発生するように制御信号発生装置を構成してもよい。この場合においても、制御信号発生装置を、アタッチメントの移動軌跡が弧の移動軌跡を描いているときのアタッチメントの合成移動速度の最高移動速度が、弧の移動軌跡を描くために第1の位置決めサーボ装置、第2の位置決めサーボ装置及び第3の位置決めサーボ装置から選択される少なくとも2つの位置決めサーボ装置によりそれぞれ単独で引き抜きフレーム及び進入フレームを移動させるときのアタッチメントの最高移動速度以下となるように、制御信号を定めるように構成する。このようにするとアタッチメントの移動軌跡が弧の移動軌跡となる全ての場合において、アタッチメントの合成移動速度の最高移動速度を低減できるので、振動による部品の寿命低下を抑制することができる。
【0010】
制御信号発生装置は、弧の移動軌跡の曲率を選択できるように構成されているのが好ましい。このようするとアタッチメントを移動させる経路または移動範囲の周囲に障害物がある場合に、障害物との衝突を避ける設定を簡単に行える。
【0011】
制御信号発生装置は、例えば、ティーチングの際に、ティーチング後の試験運転の際にまたは運転中に、主要動作以外の動作をするときでアタッチメントの移動軌跡が弧の移動軌跡を描く移動範囲と該移動範囲における合成移動速度を選択的に設定する設定部を備えているのが好ましい。このようにするとアタッチメントの移動軌跡が弧の移動軌跡を描く移動範囲の設定と合成移動速度の設定と選択を簡単に行えるので、設定の利便性が高いという利点がある。
【0012】
アタッチメントの代表例は、成形機の型から成形品を取り出す取出ヘッドであり、この場合、主要動作以外の動作は、型から成形品を取り出す際の取出動作以外の動作である。成形品の生産性向上の観点からは、取出動作の動作時間は、できるだけ短くすることが望まれるので、この場合には、多少振動が大きくなっても、速度を優先することが必要とされる。
【0013】
アタッチメントの変位振動を検出する変位振動検出部と、変位振動検出部が検出した変位振動と逆位相の振動を電動アクチュエータからアタッチメントに加えてアタッチメントの変位振動を抑制するアクティブ制御を行うアクティブ振動抑制装置を更に備えていてもよい。この場合、アクティブ振動抑制装置は、少なくとも弧の移動軌跡の終了時点においてアタッチメントに発生している振動を抑制する。このようにすると弧の移動軌跡を描く際の合成移動速度を制限することで移動中の振動を抑制した上で、移動軌跡の終了時の振動をさらに抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態の成形品取出機の全体構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1の成形品取出機の制御装置の主要部の構成を示すブロック図である。
【
図3】成形機の型の内部から成形品を取出して、取出した成形品を開放位置で開放する場合の単純なシーケンスを示す図である。
【
図5】(A)乃至(C)は、従来と本発明の実施の形態の動作を説明するために用いる図である。
【
図6】移動方向を変更する場合において、弧の移動軌跡を描く場合(アークモーションあり)と、弧の移動軌跡を描かない場合(アークモーションなし)の引き抜き方向に発生する振動の相違を示す波形図である。
【
図7】アクティブ制御と併用する本発明の第2の実施の形態の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の成形品取出機の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本実施の形態の成形品取出機1の全体構成を角度を変えて見た斜視図である。成形品取出機1は、トラバース型の成形品取出機であり、図示されていない成形機の固定プラテンに基部が支持される。
図1に示す成形品取出機1は、横行フレーム3と、制御ボックス5と、引き抜きフレーム7と、ランナ用昇降ユニット9と、成形品吸着用昇降ユニット11とを備えている。横行フレーム3は、図示しない成形機の長手方向に水平に直交したX軸方向に延設される片持ビーム構造を有している。制御ボックス5は、横行フレーム3に支持されており、走行体6はサーボ機構に含まれるACサーボモータ(図示していない)を駆動源として横行フレーム3に沿ってX軸方向に進退する。可動フレームである引き抜きフレーム7は、走行体6に基部が取り付けられており、図示しない成形機の長手方向と平行なY軸方向に延びている。引き抜きフレーム7には、ランナ用昇降ユニット9及び成形品吸着用昇降ユニット11がサーボ機構に含まれるACサーボモータ(図示しない)を駆動源としてY軸方向に移動可能に支持されている。引き抜きフレーム7の基部には、制御ボックス8が装着されている。
【0016】
ランナ用昇降ユニット9は、引き抜きフレーム7に移動可能に支持された走行体15にZ軸方向に昇降する昇降フレーム即ち進入フレーム17を備えた構造を有している。走行体15は、ACサーボモータ(図示しない)により駆動されてY軸方向に移動する。進入フレーム(昇降フレーム)17は、ACサーボモータ19によって上下方向(Z軸方向)に昇降する。昇降フレーム17は、廃棄されるランナを保持するアタッチメントとしてのチャック21を備えている。
【0017】
また成形品吸着用昇降ユニット11に含まれる走行体23は、ACサーボモータ(図示しない)により引き抜きフレーム7上をY軸方向に移動する。成形品吸着用昇降ユニット11は上下方向(Z軸方向)に昇降する進入フレーム(昇降フレーム)25と、進入フレーム25の下端に設けられた姿勢制御装置を構成する反転ユニット27とを備えている。反転ユニット27には、破線で示したアタッチメント(取出ヘッド)28が装着される。
【0018】
引き抜きフレーム7は、
図1に示すように、横方向(X軸方向)に延びる横行フレーム3に沿って横方向に移動する。そして引き抜きフレーム7には、上下方向(Z軸方向)及び横方向と直交する前後方向(Y軸方向)に移動する進入フレーム(昇降フレーム)17,25が、前後方向に移動可能に装着されている。
【0019】
本実施例においては、引き抜きフレーム7は、鉄系材料によって形成された中空構造を有しており、引き抜きフレーム7の外壁は一方の側壁29と、一方の側壁29に対向する他方の側壁31と、一方の側壁29と他方の側壁31とを上下側でそれぞれ連結する上側連結板33及び下側連結板35とが相互に溶接されて、4面の側面を形成する。引き抜きフレーム7の自由端である先端71は閉塞板37により閉塞され、固定端(基部)である後端には制御ボックス8が装着されている。
【0020】
引き抜きフレーム7の一方の側壁29は、進入フレーム(昇降フレーム)17,25が前後方向に移動することを許容するように、平坦な一方の側面を有している。また他方の側壁31の他方の側面は、途中から先端71に向かうに従って一方の側壁29の一方の側面30に近付くように傾斜する傾斜面39を有している。そして一方の側壁29の平坦な側面30の上下の縁に沿って、進入フレーム(昇降フレーム)17,25の移動をガイドするための一対のガイドレール41,41が設けられている。ガイドレール41,41の間には、昇降フレーム17,25を引き抜きフレーム7に沿って移動させるベルト43を用いた直線移動機構が配置されている。ベルト43は、ベルトカバー45によって一部が覆われている。
【0021】
図2は、
図1の成形品取出機の制御装置の主要部の構成を示すブロック図である。なお
図2には、説明を簡略化するために、取出ヘッド28が装着される進入フレーム17だけを示してある。
図2に示すように、この制御装置では、引き抜きフレーム7を横行フレーム3上で移動させるためのサーボモータSB1を駆動する第1の位置決めサーボ装置SS1と、進入フレーム17を引き抜きフレーム7上に移動させるためのサーボモータSB2を駆動する第2の位置決めサーボ装置SS2と、引き抜きフレーム17と直交する方向(交差する方向)に進入フレーム17を移動させるサーボモータSB3を駆動する第3の第3の位置決めサーボ装置SS3を備えている。またこの制御装置では、第1の位置決めサーボ装置SS1、第2の位置決めサーボ装置SS2及び第3の位置決めサーボ装置SS3に、予め定めたシーケンスに従って引き抜きフレーム7及び進入フレーム17を移動させるための制御信号を与える制御信号発生装置CSSを備えている。
【0022】
制御信号発生装置CSSは、シーケンスを記憶するシーケンス記憶部SMと、シーケンス記憶部SMに記憶されているシーケンスに従って、第1の位置決めサーボ装置SS1、第2の位置決めサーボ装置SS2及び第3の位置決めサーボ装置SS3にそれぞれ制御信号CS1乃至CS3を出力する制御信号発生部CSGと、シーケンスの設定や、各種の動作の設定を行う設定部SUと、設定部SUの一部としても用いられる表示部DPとを備えている。
【0023】
図3には、成形機の型の内部から成形品を取出して、取出した成形品を開放位置で開放する場合の単純なシーケンスを示している。単純なシーケンスとは、第1の位置決めサーボ装置SS1、第2の位置決めサーボ装置SS2及び第3の位置決めサーボ装置SS3にそれぞれ単独で制御信号CS1乃至CS3を与えてアタッチメントを直線移動だけで移動させるシーケンスである。このシーケンスで符合1の位置が待機位置であり、符合2〜4が取出動作の移動範囲であり、符合7と9が開放位置を示している。このシーケンスにおいて、動作方向が変わる移動範囲が、アタッチメントの移動軌跡を弧の移動軌跡にすることが可能な範囲である。
【0024】
本実施の形態では、制御信号発生装置CSSが発生する制御信号は、少なくともアタッチメント28が主要動作(アタッチメント28が取出ヘッドの場合には、取出動作)をするためにアタッチメント28の移動方向を変える移動範囲において、アタッチメント28の移動軌跡が弧の移動軌跡となるように定められている。
図3のシーケンスで見れば、符合2で示した位置の前後の移動範囲MR1と符合4で示した位置の前後の移動範囲MR2において、アタッチメント28の移動軌跡が弧の移動軌跡となるように、第2の位置決めサーボ装置SS2への制御信号CS2と第3の位置決めサーボ装置SS3への制御信号CS3が定められている。具体的には、取出動作において、アタッチメント(取出ヘッド)28の移動軌跡が弧の移動軌跡となるようにするためには、進入フレーム17をY方向に移動させる第2の位置決めサーボ装置SS2と進入フレームをZ方向に移動させる第3の位置決めサーボ装置SS3への制御信号CS2及びCS3を同時に徐々に変えることになる。2つの位置決めサーボ装置を同時に動作させるとアタッチメント28の速度は、2つのサーボモータによる移動速度の合成移動速度となる。本実施の形態では、主要動作(取出動作のためにアタッチメントを成形機の型の内部に進入させて且つ型の内部の成形品に近付けて離す動作)を行う際、すなわち主要動作においてアタッチメント28の移動軌跡が弧の移動軌跡を描いているときのアタッチメントの合成移動速度の最高移動速度が、弧の移動軌跡を描くために第2の位置決めサーボ装置SS2及び第3の位置決めサーボ装置SS3によりそれぞれ単独で進入フレーム17を移動させるときのアタッチメントの最高移動速度よりも速くなるように定められている。これによって取出動作が速くなり、取出時間が短縮される。
【0025】
本実施の形態では、制御信号発生装置CSSが、主要動作以外の動作をするときでアタッチメント28の移動方向を変える際に、すなわち
図3に示すシーケンスで見ると、符合2で示した位置の前後の移動範囲MR1と符合4で示した位置の前後の移動範囲MR2を除くその他の移動範囲MR3〜MR8において、アタッチメント28の移動方向を変える際に、選択的にアタッチメント28の移動軌跡が弧の移動軌跡となるように、制御信号発生部CSGが制御信号CS1乃至CS3を発生する。本実施の形態では、制御信号発生装置CSSは、主要動作以外の動作をするとき(
図4の移動範囲MR3〜MR8を含む動作)で、アタッチメント28の移動軌跡が弧の移動軌跡を描いているときのアタッチメント28の合成移動速度の最高移動速度が、弧の移動軌跡を描くために第1の位置決めサーボ装置SS1、第2の位置決めサーボ装置SS2及び第3の位置決めサーボ装置SS3から選択される少なくとも2つの位置決めサーボ装置によりそれぞれ単独で引き抜きフレーム及び進入フレームを移動させるときのアタッチメント28の最高移動速度以下となるように、制御信号CS1〜CS3を定めるように構成されている。
【0026】
本実施の形態では、選択的にアタッチメントの移動軌跡が弧の移動軌跡となるように制御信号を発生させるために、
図4に示すインタフェイス(
図2の設定部SUで利用する表示部DPに用いるタッチパネルに表示する)を採用して、アタッチメント28が移動方向を変える複数の場所の中から弧の移動軌跡でアタッチメントを移動させることを選択できるようにしている。
図4のインタフェイスでは、「アークモーション」の選択欄に弧の曲率を選択する数字を入れることにより、弧の移動軌跡で移動させる場所と弧の曲率が選択される。「アークモーション」の選択欄に「−」のマークを入れている部分は、選択していないか、選択できない場所である。「5 反転位置」における「アークモーション」中の数字「3」は、反転位置を含む移動範囲において、最も大きな曲率半径で弧の移動軌跡を描くことが設定されていることを示している。本実施の形態では、曲率を1〜3のレベルで選択できるようにしており、数が大きくなるほど曲率半径は大きくなる。また
図4中の「速度(%)」は、アタッチメントの合成移動速度の最高移動速度の制限を示している。取出動作(
図3の移動範囲MR1及びMR2を含む動作)をする際には、取出時間を速くするために速度は最高の100%となっているが、他の移動範囲では速度が合成移動速度の最高移動速度が制限されている。
【0027】
図4のインタフェイスを備えた設定部SUを用いた設定は、例えば、ティーチングの際に、ティーチング後の試験運転の際にまたは運転中に実施することができる。このような設定部SUを用いると、アタッチメントの移動軌跡が弧の移動軌跡を描く移動範囲の設定と合成移動速度の設定と選択を簡単に行えるので、設定の利便性が高いという利点がある。
【0028】
図5(A)は、従来通り、アタッチメント28の移動方向を変更する際に、移動軌跡が弧の移動軌跡を描かないように、すなわち移動軌跡が直角の移動軌跡を描くように、制御信号CS2及びCS3を時間的に重ねない制御をした場合のアタッチメント(取出ヘッド)の先端速度の変化を示している。この場合には、制御信号CS2及びCS3の切り替わりの際に比較的大きな振動が発生する。
図5(B)は、本実施の形態において、取出動作を行っているときに、アタッチメント28の移動方向を変更する際に、移動軌跡が弧の移動軌跡を描くようにするが、合成移動速度の最高移動速度を第2の位置決めサーボ装置SS2及び第3の位置決めサーボ装置SS3によりそれぞれ単独で進入フレーム17を移動させるときのアタッチメント28の最高移動速度よりも速くなるように定めたときの、取出ヘッドの先端速度を示している。この場合には、合成移動速度の最高移動速度が、第2の位置決めサーボ装置SS2及び第3の位置決めサーボ装置SS3によりそれぞれ単独で進入フレーム17を移動させるときのアタッチメント28の最高移動速度よりも速くなっている。
図5(C)は、本実施の形態において、取出動作以外の動作を行っているときに、アタッチメント28の移動方向を変更する際に、移動軌跡が弧の移動軌跡を描くようにするが、合成移動速度の最高移動速度を第2の位置決めサーボ装置SS2及び第3の位置決めサーボ装置SS3によりそれぞれ単独で進入フレーム17を移動させるときのアタッチメント28の最高移動速度以下になるように定めたときの、取出ヘッドの先端速度を示している。この場合には、合成移動速度の最高移動速度が、第2の位置決めサーボ装置SS2及び第3の位置決めサーボ装置SS3によりそれぞれ単独で進入フレーム17を移動させるときのアタッチメント28の最高移動速度以下になっているので、
図5(B)の場合よりも、アタッチメント(取出ヘッド)の速度及びその変化が小さい。
【0029】
アタッチメント28の移動速度が速くなって、発生する振動が大きくなると、その振動が機械的ストレスを増大させ、ベアリング等の各部品の寿命を短くする可能性が高い。本実施の形態によれば、速度を速める必要性のある主要動作(取出動作)以外の動作において、移動方向を変える際に、アタッチメント28の移動軌跡が弧の移動軌跡となるように定める場合において、弧の移動軌跡を描いているときのアタッチメントの合成移動速度の最高移動速度が、弧の移動軌跡を描くために第1の位置決めサーボ装置SS1、第2の位置決めサーボ装置SS2及び第3の位置決めサーボ装置SS3から選択される2つの位置決めサーボ装置によりそれぞれ単独で引き抜きフレーム7及び進入フレーム17を移動させるときのアタッチメント28の最高移動速度以下になるようにしている。そのため、主要動作以外の動作において弧の移動軌跡を描くようにアタッチメント28を移動させても、アタッチメント28に加わる振動を抑制することができる。その結果、振動による部品の寿命低下を抑制することができる。
【0030】
図6は、移動方向を変更する場合において、弧の移動軌跡を描く場合(アークモーションあり)と、弧の移動軌跡を描かない場合(アークモーションなし)の引き抜き方向に発生する振動の相違を示す波形図である。特に、期間Tが制御信号CS2と制御信号CS3の切り替わり点を含む期間を示している。この期間では、弧の移動軌跡を描かない場合(アークモーションなし)よりも、弧の移動軌跡を描く場合(アークモーションあり)のほうが、振動が小さいことが判る。
【0031】
[異なる実施の形態]
上記実施の形態では、主要動作(取出動作)では合成移動速度の最高移動速度の制限を行っていないが、主要動作の如何を問わずに、アタッチメントの移動方向を変える際に、選択的にアタッチメントの移動軌跡が弧の移動軌跡となるように制御信号を発生するように制御信号発生装置を構成してもよい。この場合においても、制御信号発生装置CSSを、アタッチメント28の移動軌跡が弧の移動軌跡を描いているときのアタッチメント28の合成移動速度の最高移動速度が、弧の移動軌跡を描くために第1の位置決めサーボ装置SS1、第2の位置決めサーボ装置SS2及び第3の位置決めサーボ装置SS3から選択される少なくとも2つの位置決めサーボ装置によりそれぞれ単独で引き抜きフレーム及び進入フレームを移動させるときのアタッチメントの最高移動速度以下となるように、制御信号CS1〜CS3を定めるように構成する。このようにするとアタッチメント28の移動軌跡が弧の移動軌跡となる全ての場合において、アタッチメント28の合成移動速度の最高移動速度を低減できるので、振動による部品の寿命低下を抑制することができる。
【0032】
図7は、アクティブ制御と併用する本発明の第2の実施の形態の構成を示すブロック図である。
図7において、
図2に示した第1の実施の形態の構成と同じ部分には、
図2に付した符合と同じ符合を付して説明を省略する。本実施の形態においては、アタッチメント28の変位振動を検出する変位振動検出部VSと、変位振動検出部VSが検出した変位振動と逆位相の振動を電動アクチュエータEAからアタッチメント28に加えてアタッチメントの変位振動を抑制するアクティブ制御を行うアクティブ振動抑制装置ACSを更に備えている。本実施の形態の場合、アクティブ振動抑制装置ACSは、少なくとも弧の移動軌跡の終了時点においてアタッチメント28に発生している振動を抑制する。このようにすると弧の移動軌跡を描く際の合成移動速度を制限することで移動中の振動を抑制した上で、移動軌跡の終了時の振動をさらに抑制することができる。アクティブ制御についても、
図4に示すように、アクティブ制御の実施の設定を任意に行えるようにするのが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明によれば、移動方向を変える際に、アタッチメントの移動軌跡が弧の移動軌跡となるように定める場合において、弧の移動軌跡を描いているときのアタッチメントの合成移動速度の最高移動速度を、弧の移動軌跡を描くために第1の位置決めサーボ装置SS1、第2の位置決めサーボ装置SS2及び第3の位置決めサーボ装置SS3から選択される少なくとも2つの位置決めサーボ装置によりそれぞれ単独で引き抜きフレーム7及び進入フレーム17を移動させるときのアタッチメント28の最高移動速度以下にするため、弧の移動軌跡を描くようにアタッチメントを移動させても、アタッチメントに加わる振動を抑制することができる。その結果、振動による部品の寿命低下を抑制することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 成形品取出機
3 横行フレーム
5 制御ボックス
6 走行体
7 引き抜きフレーム
8 制御ボックス
9 ランナ用昇降ユニット
11 成形品吸着用昇降ユニット
13 ACサーボモータ
15 走行体
17 進入フレーム(昇降フレーム)
19 ACサーボモータ
21 チャック
25 進入フレーム(昇降フレーム)
28 アタッチメント(取出ヘッド)
SS1 第1の位置決めサーボ装置
SS2 第2の位置決めサーボ装置
SS3 第3の位置決めサーボ装置
SB1〜SB3 サーボモータ
CSS 制御信号発生装置
SM シーケンス記憶部
CSG 制御信号発生部
SU 設定部
DP 表示部