特許第6887347号(P6887347)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6887347
(24)【登録日】2021年5月20日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】酢酸刺激臭抑制方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/01 20060101AFI20210603BHJP
【FI】
   A61L9/01 K
   A61L9/01 H
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-167098(P2017-167098)
(22)【出願日】2017年8月31日
(65)【公開番号】特開2019-41994(P2019-41994A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2020年4月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100202430
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 千香子
(72)【発明者】
【氏名】中村 岳史
【審査官】 長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−258487(JP,A)
【文献】 特開2007−282533(JP,A)
【文献】 国際公開第00/048475(WO,A1)
【文献】 特開2016−111936(JP,A)
【文献】 特開2015−137240(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01163852(EP,A1)
【文献】 特開2004−049889(JP,A)
【文献】 特開2016−034242(JP,A)
【文献】 特開2008−017795(JP,A)
【文献】 特開2002−003886(JP,A)
【文献】 特開2013−000118(JP,A)
【文献】 特開2007−014219(JP,A)
【文献】 特開平9−187176(JP,A)
【文献】 特表2000−504340(JP,A)
【文献】 特開2010−47489(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00− 9/22
A01N 37/00−37/52
A01N 25/00−25/34
A01M 21/00−21/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(a)、(b)から選択される何れか1種以上の成分を酢酸と、重量比で100:1〜1:100の範囲で併用することを特徴とする、酢酸を有効成分とする除草剤の酢酸刺激臭を抑制する方法。
(a)アミノ酸
(b)炭素数2以上10以下の有機酸の金属塩
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酢酸刺激臭を抑制する方法に関する。さらに詳しくは、本発明の成分(a)アミノ酸、(b)炭素数2以上10以下の有機酸の金属塩から選択される何れか1種以上の成分を酢酸と併用することにより、酢酸刺激臭を抑制する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
雑草は、その生育を制御しないと繁茂し美観を損ねるばかりでなく、土壌中の養分を吸収してしまい、雑草以外の植物(例えば、農作物や園芸植物等)が生育障害や品質低下を引き起こし大きな損害を与える。また、雑草の繁茂は、農業害虫や不快害虫等の住処を提供することになり、生活環境が悪化するなどの悪影響が懸念される。これら雑草を制御する方法として、様々な除草剤が使用されてきた。グリホサート等のアミノ酸系やベンタゾン等のスルホニルウレア系に代表される、化学合成系除草成分を含有する製剤が汎用されているが、使用者の安全志向の向上により、天然成分由来の除草剤のニーズも高まっている。天然由来成分の除草剤として、ペラルゴン酸に代表される脂肪酸及びその塩(特許文献1)や酢酸(特許文献2)などが利用されている。しかし、これらの除草活性成分は、散布した植物の接触部位にのみ枯死反応を起こすため、付着が不十分な部位から再生を生じやすく、根部まで枯死させることが難しいという問題がある。また、除草効果を高めるために有効成分量を多くする方法や、植物への付着量を高めるために散布粒子を微細にする方法は、目、鼻孔、粘膜、皮膚に対する刺激や刺激性のある臭気による問題を発生させる。しかも、これら除草剤は、散布した場所一帯に刺激臭が漂うことになるので、散布する人への安全性の確保や、近隣への臭気対策も考慮する必要があり、刺激臭を抑制する方法の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表平05−502216号公報
【特許文献2】特開平05−051302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、酢酸を有効成分とする除草剤や洗浄剤等の薬剤において、酢酸が有する除草活性や洗浄効果を維持したまま、酢酸刺激臭を抑制する方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、酢酸と、成分(a)アミノ酸、(b)炭素数2以上10以下の有機酸の金属塩から選択される何れか1種以上の成分とを併用することにより、酢酸刺激臭を抑制することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明は、具体的には次の事項を要旨とする。
1.下記成分(a)、(b)から選択される何れか1種以上の成分を酢酸と併用することを特徴とする、酢酸刺激臭を抑制する方法。
(a)アミノ酸
(b)炭素数2以上10以下の有機酸の金属塩
【発明の効果】
【0007】
本発明は、酢酸が有する刺激臭に対して優れた抑制効果を発揮する方法を提供するものである。酢酸は除草活性を有するため除草剤として使用されるほか、浴室や台所周辺の洗浄剤としても使用される化合物である。本発明の酢酸刺激臭を抑制する方法は、これら酢酸を使用する場面において適用することができ、優れた効果を発揮するものである。特に、酢酸を除草剤として使用する場合は、広範囲に多量の酢酸を散布等により処理する必要があることから、本発明の効果をより体感することができる。詳しくは、酢酸を除草剤として使用する場合においては、散布者が酢酸刺激臭をほとんど感じることは無く、また、散布した場所一帯に刺激臭が漂うこともないので、酢酸刺激臭を気にすることなく使用することができる。しかも、酢酸が有する除草活性は維持されているので、望む場所において刺激臭を気にすることなく除草活動を行えるという特徴を有する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の酢酸刺激臭抑制方法について詳細に説明する。
本発明は、酢酸と、成分(a)アミノ酸、(b)炭素数2以上10以下の有機酸の金属塩から選択される何れか1種以上の成分とを併用することにより、酢酸刺激臭を抑制する方法である。
酢酸は、分子式Cと表されるカルボン酸であり、食酢に含まれる弱酸で、強い酸味と刺激臭を持つ化合物として公知であり、上述の除草剤のみならず静菌・殺菌剤としても汎用される化合物である。本発明の酢酸は、純粋な酢酸の水による希釈物の他、醸造酢である食酢、通常の食酢より酢酸濃度の高い高濃度醸造酢、さらに粉末醸造酢の水による希釈物などが該当する。これらは市販されている、例えば、穀物酢や特濃酢、高濃度醸造酢、粉末食酢(酢酸とデキストリン等の混合物)などのほか、ワインビネガーやアップルビネガーといった果実酢も本発明の酢酸に含まれる。
【0009】
<成分(a)について>
本発明の成分(a)はアミノ酸である。
アミノ酸とは、1つの化学構造中に陰イオンになるカルボキシル基と、陽イオンになるアミノ基の両方を併せ持つ双性イオン構造を取る化合物である。本発明で使用されるアミノ酸は特に限定されず、上記化学構造を有する化合物であれば何れでも良い。本発明の成分(a)として具体的には、例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、メチオニン、システイン、トリプトファン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、チロシン、リシン、アルギニン、ヒスチジン等が挙げられる。
本発明の成分(a)の中でも、炭素数2以上10以下のアミノ酸が好ましく、炭素数2以上6以下のアミノ酸がより好ましい。また、その化学構造中に硫黄原子を有する含硫アミノ酸は、それ自体不快臭を有することから、使用目的等に応じて事前の検討が必要である。本発明の成分(a)の中でも、グルタミン酸とグリシンが特に好ましい。
本発明の成分(a)は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0010】
<成分(b)について>
本発明の成分(b)は、炭素数2以上10以下の有機酸の金属塩である。
本発明の成分(b)に含まれる有機酸の具体的としては、例えば酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸等の飽和脂肪酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸等のジカルボン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸等のヒドロキシカルボン酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸等の芳香族カルボン酸等が挙げられる。
また、これらの金属塩としては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。
本発明の成分(b)の中では、炭素数2以上6以下の有機酸の金属塩が好ましく、炭素数2以上6以下の有機酸の脂肪酸の金属塩またはヒドロキシカルボン酸の金属塩がより好ましく、酢酸、クエン酸、乳酸それぞれの金属塩が特に好ましい。
本発明の成分(b)は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0011】
本発明は、酢酸と特定の成分(a)、(b)から選択される1種以上の成分を、重量比で1:100〜100:1の範囲で併用することにより、酢酸刺激臭を抑制することができる。上記重量比の中でも、1:10〜10:1の範囲が好ましく、1:5〜5:1の範囲がより好ましい。
酢酸と特定の成分(a)、(b)から選択される1種以上の成分を組み合わせることにより、酢酸刺激臭を抑制する作用機構についての詳細は不明であるが、2つの成分を組み合わせることにより、溶液中でのpHが変化すること、および酢酸の蒸気圧が下がることに起因するものと推測される。この酢酸刺激臭抑制効果は、酢酸と特定の成分(a)、(b)から選択される1種以上の成分を組み合わせることにより初めて得られる効果であり、これは本発明者が実験を行い初めて当該効果を確認した格別顕著な効果である。
本発明において、酢酸を除草剤の有効成分として使用する場合には、特定の成分(a)、(b)から選択される1種以上の成分を組み合わせる酢酸は、除草剤全体の0.1重量%以上20重量%以下の範囲で含有することが好ましく、0.2重量%以上15重量%以下含有することがより好ましく、0.3重量%以上10重量%以下含有することがさらに好ましい。
【0012】
本発明は、酢酸と特定の成分(a)、(b)から選択される1種以上の成分を併用することにより、酢酸刺激臭を抑制するものであるが、酢酸を含有する除草剤については、本発明の効果を妨げない限り、製剤型や製剤助剤等の添加剤については制限なく公知のものを採用することができる。
酢酸を含有する除草剤や洗浄剤等の製剤型としては、例えば油剤、乳剤、水和剤、フロアブル剤(水中懸濁剤、水中乳濁剤等)、マイクロカプセル剤、粉剤、粒剤、錠剤、液剤、スプレー剤、エアゾール剤等が挙げられる。その中でも、スプレー剤やエアゾール剤等の噴霧用製剤や、液剤をジョウロヘッド付き容器に充填した散布剤等が好適である。
1つの製剤型製造例として、酢酸と特定の成分(a)、(b)から選択される1種以上の成分を、必要に応じて界面活性剤を用いて、溶剤に溶かして溶液(A液)を調製し、このA液を適量の水に混合、撹拌することにより使用時に希釈する必要がない除草剤や洗浄剤等とする方法を挙げることができる。水としては、水道水、イオン交換水、蒸留水、ろ過処理した水、滅菌処理した水、地下水などが用いられる。
【0013】
酢酸を含有する除草剤や洗浄剤等の製剤化の際に用いられる液体担体としては、例えばアルコール類(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール等)、エーテル類(ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル、ミリスチン酸イソプロピル、乳酸エチル等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、芳香族または脂肪族炭化水素類(キシレン、トルエン、アルキルナフタレン、フェニルキシリルエタン、ケロシン、軽油、ヘキサン、シクロヘキサン等)、ハロゲン化炭化水素類(クロロベンゼン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン等)、ニトリル類(アセトニトリル、イソブチロニトリル等)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)、ヘテロ環系溶剤(スルホラン、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−オクチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン)、酸アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、炭酸アルキリデン類(炭酸プロピレン等)、植物油(大豆油、綿実油等)、植物精油(オレンジ油、ヒソップ油、レモン油等)、及び水が挙げられる。
【0014】
製剤化の際に用いられる界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、及び陽イオン性界面活性剤を用いることができる。非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルホルムアルデヒド縮合物、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマーアルキルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル(例、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンラウレート)、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリエチレングリコール脂肪酸エーテルなどが挙げられる。陰イオン性界面活性剤としては、例えば、硫酸アルキル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンベンジル(またはスチリル)フェニルエーテル硫酸またはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマー硫酸のナトリウム、カルシウムまたはアンモニウムの各塩;スルホン酸アルキル、ジアルキルスルホサクシネート、アルキルベンゼンスルホン酸(例、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウムなど)、モノ−またはジ−アルキルナフタレン酸スルホン酸、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、リグニンスルホン酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルスルホン酸またはポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホサクシネートのナトリウム、カルシウム、アンモニウムまたはアルカノールアミン塩の各塩;ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレン、モノ−またはジ−アルキルフェニルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレンベンジル(またはスチリル)化フェニルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレンベンジル(またはスチリル)化フェニルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマーホスフェートのナトリウムまたはカルシウム塩などの各塩が挙げられる。陽イオン性界面活性剤としては、例えば第4級アンモニウム塩、アルキルアミン塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルオキサイドなどが挙げられる。
【0015】
製剤化の際に用いられるガス状担体としては、例えばブタンガス、フロンガス、(HFO、HFC等の)代替フロン、液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル、及び炭酸ガスが、固体担体としては、例えば粘土類(カオリン、珪藻土、ベントナイト、クレー、酸性白土等)、合成含水酸化珪素、タルク、セラミック、その他の無機鉱物(セリサイト、石英、硫黄、活性炭、炭酸カルシウム、水和シリカ等)、多孔質体等が挙げられる。
酢酸を含有する除草剤は、製剤調製時に用いられている慣用の凍結防止剤、消泡剤、防腐剤、酸化防止剤及び増粘剤等を添加することができる。
【0016】
酢酸を含有する除草剤としては、除草したい場所1平方メートル当たり、酢酸を、好ましくは0.5〜30g、より好ましくは1〜20gとなる量で散布することにより、目的とする除草効果を得ることができるので、酢酸と本発明の成分(a)、(b)から選択される何れか1種以上の成分との合計量は、1平方メートル当たり、好ましくは0.5〜50g、より好ましくは5〜35gの範囲が散布量として好適である。この範囲の散布量であれば、本発明の成分(a)、(b)から選択される何れか1種以上の成分を酢酸と併用することにより酢酸刺激臭を抑制できるので、散布者が酢酸刺激臭をほとんど感じることは無い。また、酢酸を含有する除草剤を使用する場所としては、家庭菜園、花壇、家屋周辺、空き地、芝生地、庭園、駐車場、墓地、樹木地、潅木地、ゴルフ場などが例示できるが、これらに制限されるものではなく、目的に応じて適宜使用することが可能である。本発明の酢酸刺激臭を抑制する方法によれば、これらの散布した場所一帯に刺激臭が漂うこともないので好適である。
【実施例】
【0017】
以下、処方例及び試験例等により、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、これらの例に限定されるものではない。
まず、本発明の除草剤の試験検体例を示す。なお、実施例において、特に明記しない限り、部は重量部を意味する。
【0018】
<酢酸刺激臭抑制効果・屋内確認試験1>
(1)試験検体
実施例1
酢酸7.0重量部、アスパラギン酸1.0重量部およびイオン交換水を使用して、全体量を100重量部として試験検体を調製した。
実施例2〜9及び比較例1は下記表1に示した配合で、実施例1と同様にして試験検体を調製した。
なお、以下の実施例および比較例の試験検体の調製に際し、酢酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシンは和光純薬工業(株)社製の試薬を、dl−イソロイシン、l−メチオニン、dl−フェニルアラニン、dl−アラニン、l−アルギニンは東京化成工業(株)社製の試薬を、dl−システインはシグマアルドリッチ社製の試薬を使用した。
【0019】
(2)酢酸刺激臭抑制効果の確認試験方法
ガラス製サンプル瓶(容量:50mL、口径:40mm、口内径26.5mm、SV−50A、日電理化硝子(株)社製)に、試験検体を40mL入れ、スクリューキャップを閉め室温で保管した。試験時、試験検体入りのサンプル瓶のスクリューキャップを開け、各パネラー(5名)が瓶香を嗅ぎ刺激臭について、次の基準の4段階で点数評価した。各パネラーの評価点数から平均値を求め評価結果とした。
[評価基準]
「4」:刺激臭を感じない
「3」:刺激臭をほとんど感じない
「2」:刺激臭をやや感じる
「1」:刺激臭を感じる
上記試験検体の組成と評価結果をまとめ、表1に示した。
【0020】
【表1】
【0021】
表1の結果から明らかなように、本発明の成分(a)アミノ酸は、酢酸との併用により酢酸刺激臭を抑制する効果に優れていることが明らかとなった。また、本発明の成分(a)アミノ酸は、その種類により酢酸刺激臭の抑制効果に差があることも確認された。そこで、本発明の成分(a)アミノ酸の中から、酢酸刺激臭の抑制効果の高いグルタミン酸とグリシンを選択し、より詳細な試験を行った。
【0022】
<酢酸刺激臭抑制効果・屋内確認試験2>
(1)試験検体
実施例10
酢酸7.0重量部、グルタミン酸0.1重量部およびイオン交換水を使用して、全体量を100重量部として試験検体を調製した。
実施例11〜19及び比較例1〜3は下記表2に示した配合で、実施例10と同様にして試験検体を調製した。各試験検体の調製には、「酢酸刺激臭抑制効果・屋内確認試験1」と同じ試薬を使用した。
(2)酢酸刺激臭抑制効果の確認試験方法
表2に示す組成の試験検体(実施例3〜4、11〜19および比較例1〜3)を使用して、上記「酢酸刺激臭抑制効果・屋内確認試験1」の試験方法と評価基準に従い、パネラー(5名)による評価を行った。
上記試験検体の組成と評価結果をまとめ、表2に示した。
【0023】
【表2】
【0024】
表2の結果から明らかなように、本発明の成分(a)アミノ酸の具体例であるグルタミン酸やグリシンは、酢酸の濃度が3〜7重量%に対して、0.1重量%程度の併用(実施例10、11、13、15、17、19)でも酢酸刺激臭抑制効果が得られることが明らかとなった。特に、酢酸の濃度が3重量%に対して、グルタミン酸またはグリシン0.1重量%の併用(実施例17、19)は、1.0重量%の併用(実施例16、18)と同じ酢酸刺激臭抑制効果が得られることも確認できた。
【0025】
<酢酸刺激臭抑制効果・屋内確認試験3>
(1)試験検体
実施例20
酢酸7.0重量部、乳酸ナトリウム5.0重量部およびイオン交換水を使用して、全体量を100重量部として試験検体を調製した。
実施例21〜29及び比較例1、2は下記表3に示した配合で、実施例20と同様にして試験検体を調製した。以下の実施例および比較例の試験検体の調製に際し、酢酸、乳酸ナトリウム、クエン酸カリウム、酢酸ナトリウムは、全て和光純薬工業(株)社製の試薬を使用した。
(2)酢酸刺激臭抑制効果の確認試験方法
表3に示す組成の試験検体(実施例20〜29および比較例1、2)を使用して、上記「酢酸刺激臭抑制効果・屋内確認試験1」の試験方法と評価基準に従い、パネラー(5名)による評価を行った。
上記試験検体の組成と評価結果をまとめ、表3に示した。
【0026】
【表3】
【0027】
表3の結果から明らかなように、本発明の成分(b)炭素数2以上10以下の有機酸の金属塩は、酢酸との併用により酢酸刺激臭を抑制する効果に優れていることが明らかとなった。また、本発明の成分(b)炭素数2以上10以下の有機酸の金属塩の具体例である酢酸ナトリウムは、酢酸の濃度が5重量%に対して、0.05重量%という極めて低濃度の併用(実施例29)でも酢酸刺激臭抑制効果が得られることが明らかとなった。
【0028】
<酢酸刺激臭抑制効果・屋外確認試験1>
(1)酢酸刺激臭抑制効果の屋外での確認試験方法
上記「酢酸刺激臭抑制効果・屋内確認試験1〜3」で使用した実施例3、4、24、25と比較例1の試験検体を使用し、屋外にてトリガーポンプを使用して試験検体を5mL散布し、散布直後の酢酸刺激臭について、各パネラー(5名)が次の基準の5段階で点数評価した。各パネラーの評価点数から平均値を求め評価結果とした。上記試験検体の組成と評価結果をまとめ、表4に示した。
[評価基準]
「5」;臭気を感じない
「4」:臭気を少し感知できる
「3」:酢酸臭とわかる
「2」:酢酸刺激臭を感知できる
「1」:酢酸刺激臭を強く感じる
【0029】
【表4】
【0030】
表4の結果から明らかなように、本発明の成分(a)アミノ酸や成分(b)炭素数2以上10以下の有機酸の金属塩は、酢酸との併用により、屋外においても酢酸刺激臭を抑制する効果に優れていることが明らかとなった。
【0031】
<酢酸刺激臭抑制効果・屋外確認試験2>
(1)試験検体
実施例30
上記「酢酸刺激臭抑制効果・屋内確認試験3」で使用した実施例24、比較例1、2の試験検体を使用した。また、実施例30は下記表5に示した配合で、実施例24と同様にして試験検体を調製した。
(2)酢酸刺激臭抑制効果の屋外での確認試験方法
シャワーキャップを使用して、屋外畑地に各試験検体を200mL/mで散布し、散布直後の酢酸刺激臭について、各パネラー(5名)が上記「酢酸刺激臭抑制効果・屋外確認試験1」の評価基準に従い5段階で点数評価した。各パネラーの評価点数から平均値を求め評価結果とした。上記試験検体の組成と評価結果をまとめ、表5に示した。
【0032】
【表5】
【0033】
表5の結果から明らかなように、本発明の成分(a)アミノ酸や成分(b)炭素数2以上10以下の有機酸の金属塩は、酢酸との併用により、屋外実用使用場面を想定した使用方法においても、酢酸刺激臭を抑制する効果に優れていることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の酢酸刺激臭を抑制する方法は、酢酸を除草剤や洗浄剤として使用する場面において適用することができ、優れた効果を発揮する。特に、酢酸を除草剤として使用する場合は、広範囲に多量の酢酸を散布等により処理する必要があることから、本発明の実施は好適である。
酢酸を除草剤として使用する場面において本発明を実施する場合は、酢酸が除草活性を示す濃度において、本発明の成分(a)、(b)から選択される何れか1種以上の成分を併用すればよい。本発明により酢酸刺激臭を抑制できるので、散布者が酢酸刺激臭をほとんど感じることは無く、酢酸を含有する除草剤を散布した場所一帯に刺激臭が漂うこともないので、有用である。