(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1連設板と前記補強板、及び、前記第2連設板と前記補強板の少なくとも一方が溶接することで接合された溶接部を備えることを特徴とする請求項1に記載の土砂構造物の受圧部材。
前記第2底板における前記第2連設板とは反対側の端部に配設され、前記第1底板の厚さ方向のうち前記天板に近付く向きに突出し、前記補強板に係止する規制部を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の土砂構造物の受圧部材。
前記基準方向に見たときに、前記補強板が前記第1底板の厚さ方向に対して傾斜していることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の土砂構造物の受圧部材。
前記杭が挿入された挿入孔が形成され、前記杭の前記突部と前記楔との間、及び、前記天板と前記楔との間、の少なくとも一方に配設された隙間板を有することを特徴とする請求項11に記載の土砂構造物の補強構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の受圧部材は、プレキャストコンクリートで形成されているため、重く(質量が大きく)なる。このため、受圧部材を人力で施工するのに多大な労力を要するという問題がある。
【0008】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、土砂構造物を確実に補強しつつ軽くすることができる土砂構造物の受圧部材、この土砂構造物の受圧部材を用いた土砂構造物の補強構造、及びこの土砂構造物の補強構造を用いた土砂構造物の補強方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の土砂構造物の受圧部材は、土砂構造物を補強する土砂構造物の受圧部材であって、基準面上に配設されるとともに前記基準面に沿う基準方向に並べて配設された第1底板及び第2底板と、前記基準面上とは異なる位置に配設されるとともに、前記基準方向において前記第1底板と第2底板との間に配設された天板と、前記第1底板の端部と前記天板の端部とにそれぞれ連なる第1連設板と、前記第2底板の端部と前記天板の端部とにそれぞれ連なる第2連設板と、前記第1連設板に形成された第1スリット及び前記第2連設板に形成された第2スリットにそれぞれ挿入された補強板と、を備えることを特徴としている。
【0010】
この発明によれば、第1底板、天板、及び第2底板は、第1底板の厚さ方向に互い違いに位置をずらして配設されているとともに、第1底板、天板、及び第2底板に第1連設板及び第2連設板が連なっている。このため、底板、天板、及び連設板は、基準方向に沿う軸線周りの曲げ剛性(断面二次モーメント)は比較的大きいが、基準方向及び厚さ方向にそれぞれ直交する直交方向に沿う軸線周りの曲げ剛性は比較的小さい。各連設板のスリットに補強部材が挿入されていることで、土砂構造物の受圧部材全体としての直交方向に沿う軸線周りの曲げ剛性が大きくなる。
【0011】
また、上記の土砂構造物の受圧部材において、前記第1連設板と前記補強板、及び、前記第2連設板と前記補強板の少なくとも一方が溶接することで接合された溶接部を備えてもよい。
また、上記の土砂構造物の受圧部材において、前記第2底板における前記第2連設板とは反対側の端部に配設され、前記第1底板の厚さ方向のうち前記天板に近付く向きに突出し、前記補強板に係止する規制部を備えてもよい。
【0012】
また、上記の土砂構造物の受圧部材において、前記基準方向に見たときに、前記補強板が前記第1底板の厚さ方向に対して傾斜していてもよい。
また、上記の土砂構造物の受圧部材において、前記第1底板及び前記第2底板は、前記基準方向に間隔を空けて配設されていてもよい。
【0013】
また、本発明の土砂構造物の補強構造は、上記のいずれかに記載の土砂構造物の受圧部材と、前記土砂構造物に打ち込まれる杭と、前記土砂構造物の受圧部材と前記杭との間に配設され、前記土砂構造物の受圧部材を前記土砂構造物に向かって押圧する押圧手段と、を有することを特徴としている。
また、上記の土砂構造物の補強構造において、前記杭の端部には雄ネジ部が形成され、前記押圧手段は、前記雄ネジ部に嵌め合う雌ネジ部を備えてもよい。
【0014】
また、上記の土砂構造物の補強構造において、前記押圧手段は、前記土砂構造物の受圧部材と前記杭との間に打ち込まれている楔であってもよい。
また、上記の土砂構造物の補強構造において、前記押圧手段は、ジャッキであってもよい。
また、上記の土砂構造物の補強構造において、前記杭は管状に形成され、前記杭の側面に側孔が形成されていてもよい。
【0015】
また、本発明の他の土砂構造物の補強構造は、上記のいずれかに記載の土砂構造物の受圧部材と、前記土砂構造物に打ち込まれる杭と、を有し、前記天板には、前記杭が挿入された天孔が形成され、前記杭は、前記天孔に挿入された杭本体と、前記杭本体の端部の外周面に設けられ、前記天板に対する前記土砂構造物の側面とは反対側に配設された突部と、を備え、前記杭の前記突部と前記天板との間に配設され、前記杭と前記天板とを固定する楔を有することを特徴としている。
また、本発明の土砂構造物の補強方法は、上記のいずれかに記載の土砂構造物の補強構造を用いた土砂構造物の補強方法であって、前記土砂構造物に、前記土砂構造物の外面から凹み、上下方向に沿う側面を有する段部を形成する工程と、前記段部の前記側面に、前記杭を打込む工程と、前記段部の前記側面に前記第1底板及び前記第2底板が接触するように、前記側面に前記土砂構造物の受圧部材を配設する工程と、前記天板に対する前記側面とは反対側に配設された前記突部と前記天板との間に、前記楔を配設し、前記杭と前記天板とを固定する工程と、を行うことを特徴としている。
【0016】
また、上記の土砂構造物の補強構造において、前記杭が挿入された挿入孔が形成され、前記杭の前記突部と前記楔との間、及び、前記天板と前記楔との間、の少なくとも一方に配設された隙間板を有してもよい。
また、上記の土砂構造物の補強構造において、前記土砂構造物の受圧部材は、前記補強板を複数備え、前記楔及び前記隙間板の少なくとも一方は、前記第1底板の厚さ方向に見たときに、前記杭を挟むように配置された少なくとも一対の前記補強板に重なってもよい。
【0017】
また、上記の土砂構造物の補強構造において、前記隙間板は、前記突部に対して前記杭の軸線周りの第1の向きに配設されたときに、前記突部に挿入可能であり、前記突部に対して、前記杭の軸線周りの前記第1の向きとは異なる第2の向きに配設されたときに、前記突部に係止してもよい。
ここで言う、AはBに挿入可能であるとは、B内にAを差し入れることができることを意味するだけでなく、AをBに外側から被せるように移動させることができることも意味する。
【0018】
また、上記の土砂構造物の補強構造において、前記挿入孔は、円形状に形成され、前記突部が配設されない前記杭本体が挿入可能であって前記突部が配設された前記杭本体が挿入不能な挿入孔本体と、前記隙間板における前記挿入孔本体の開口周縁部から径方向外側に向かって延び、前記挿入孔本体の周方向の一部に形成され、前記突部が挿入可能な補助孔と、を有し、前記挿入孔本体に対する前記補助孔の向き、及び前記杭本体に対する前記突部の向きが、互いに同等であるときに、前記隙間板は前記突部に挿入可能であり、前記挿入孔本体に対する前記補助孔の向き、及び前記杭本体に対する前記突部の向きが、互いに異なるときに、前記隙間板は前記突部に係止してもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明において、請求項1に記載の土砂構造物の受圧部材によれば、板材で形成されることで軽くても、基準方向に沿う軸線周りの曲げ剛性、及び直交方向に沿う軸線周りの曲げ剛性がそれぞれ大きくなり、土砂構造物を確実に補強することができる。
請求項2に記載の土砂構造物の受圧部材によれば、第1連設板及び第2連設板の少なくとも一方と補強板とを溶接部により確実に接合し、土砂構造物の受圧部材の曲げ剛性をより大きくすることができる。
【0020】
請求項3に記載の土砂構造物の受圧部材によれば、基準方向に沿って第2底板に対する第2連設板とは反対側に補強板が外れるのを抑制することができる。
請求項5に記載の土砂構造物の受圧部材によれば、第1底板及び第2底板により基準方向のより広い範囲にわたって土砂構造物を補強することができる。
【0021】
請求項6に記載の土砂構造物の補強構造によれば、押圧手段により、土砂構造物の受圧部材を土砂構造物に向かって押圧した状態に保持することができる。
請求項7に記載の土砂構造物の補強構造によれば、杭の雄ネジ部に押圧手段の雌ネジ部に嵌め合わせて、押圧手段を土砂構造物の受圧部材に向かって締め込むことで、土砂構造物の受圧部材を土砂構造物に向かって押圧することができる。
【0022】
請求項8に記載の土砂構造物の補強構造によれば、土砂構造物の受圧部材と杭との間に楔を打ち込むことで、土砂構造物の受圧部材を土砂構造物に向かって押圧することができる。
請求項9に記載の土砂構造物の補強構造によれば、ジャッキにより、土砂構造物の受圧部材を土砂構造物に向かって容易に押圧することができる。
請求項10に記載の土砂構造物の補強構造によれば、杭の側孔を通して土砂構造物中の水を土砂構造物の外部に排出することができる。
【0023】
請求項11に記載の土砂構造物の補強構造、及び請求項16に記載の土砂構造物の補強方法によれば、杭の突部と天板との間の距離が変化しても、変化した距離に応じて突部と天板との間に打ち込む楔の深さを調節することで、杭と天板とを確実に固定することができる。
請求項12に記載の土砂構造物の補強構造によれば、杭の突部と天板との隙間が大きい場合でも、この隙間に楔とともに隙間板を配設することで、杭と天板とを確実に固定することができる。
【0024】
請求項13に記載の土砂構造物の補強構造によれば、杭が引っ張られたときに、この引っ張り力を、楔及び隙間板の少なくとも一方を介して、杭を挟むように配置された少なくとも一対の補強板により効果的に支持することができる。
請求項14に記載の土砂構造物の補強構造によれば、突部に対する挿入孔の向きに基づいて、隙間板を突部に挿入させたり突部に係止させたりすることができる。
請求項15に記載の土砂構造物の補強構造によれば、挿入孔本体に対する補助孔の向きと、杭本体に対する突部の向きと、の関係に基づいて、隙間板を突部に挿入させたり突部に係止させたりすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る受圧部材及び土砂構造物の補強構造(以下、補強構造と略して言う)の第1実施形態を、
図1から
図28を参照しながら説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の厚さや寸法の比率を調整している。
図1及び
図2に示すように、本実施形態の補強構造1は、傾斜面(外面)G1が形成された土砂構造物Gを補強するためのものである。
ここで言う土砂構造物Gは、盛土、切土、地盤等のことを意味し、土砂構造物Gの傾斜面G1は、盛土等に形成された、水平面に対して斜めに傾斜した面のことを意味する。土砂構造物Gには、傾斜面G1から凹む小段部(段部)G2が、傾斜面G1に沿って複数形成されている。なお、
図1では、複数の小段部G2のうち1つのみを示している。小段部G2には、上下方向に沿う側面G3と、水平面に沿う底面G4と、が形成されている。
ここで言う上下方向に沿う側面G3とは、傾斜面G1と上下方向とのなす角度よりも、側面G3と上下方向とのなす角度の方が小さいことを意味する。
【0027】
補強構造1は、本実施形態の受圧部材11と、杭31と、楔部材36と、隙間板41と、を有している。
図3及び
図4に示すように、受圧部材11は、受圧本体部12と、受圧本体部12の後述する第1スリット16a及び第2スリット17aにそれぞれ挿入された一対の補強板26と、を備えている。
受圧本体部12は、第1底板13と、第2底板14と、天板15と、第1連設板16と、第2連設板17と、を備えている。受圧本体部12は、第1連設板16、天板15、第2連設板17、及び第2底板14を有する山形形状12Aを1つ備えている。
第1底板13及び第2底板14は、第1基準面(基準面)P1上に配設されるとともに基準面P1に沿う基準方向Xに間隔を空けて並べて配設されている。
【0028】
天板15は、第1基準面P1上とは異なる位置に配設されている。天板15は、第1基準面P1とは平行な第2基準面P2上に配設されている。すなわち、底板13,14と天板15とは、平行である。天板15は、基準方向Xにおいて第1底板13と第2底板14との間に配設されている。天板15には、天板15を厚さ方向Zに貫通する天孔15aが形成されている。なお、天板15の厚さ方向Zは、底板13,14の厚さ方向Zと一致する。
例えば、天孔15aは正面視で楕円形に形成されている(
図4参照)。天孔15aは、厚さ方向Z及び基準方向Xにそれぞれ直交する直交方向Yが長径、基準方向Xが短径になるように配設されている。すなわち、天孔15aは、基準方向Xの長さよりも直交方向Yの長さの方が長い。
天孔15aには、杭31の後述する杭本体32が挿入されている。
【0029】
第1連設板16は、第1底板13の天板15側の端部と天板15の第1底板13側の端部とにそれぞれ連なっている。第1連設板16には、厚さ方向Z(基準方向X)に延びる第1スリット16aが一対形成されている。各第1スリット16aは、第1連設板16の厚さ方向Zのほぼ全長にわたり形成されている。第1スリット16aは、厚さ方向Zの位置によらず直交方向Yの位置が変わらない。一対の第1スリット16aは、直交方向Yに間隔を空けて、直交方向Yにおいて天板15の天孔15aを挟むように配設されている。
第2連設板17は、第2底板14の天板15側の端部と天板15の第2底板14側の端部とにそれぞれ連なっている。第2連設板17には、厚さ方向Zに延びる第2スリット17aが一対形成されている。各第2スリット17aは、第2連設板17の厚さ方向Zのほぼ全長にわたり形成されている。第2スリット17aは、厚さ方向Zの位置によらず直交方向Yの位置が変わらない。一対の第2スリット17aは、直交方向Yに間隔を空けて、直交方向Yにおいて天板15の天孔15aを挟むように配設されている。第2スリット17aと第1スリット16aとは、基準方向Xに対向している。
第1連設板16及び第2連設板17は、厚さ方向Zにおいて天板15から離間するに従い漸次、互いの間隔が広がるように傾斜して配設されている。
【0030】
本実施形態では、基準方向Xにおいて第1底板13における第1連設板16とは反対側の端部に、補強部19が配設されている。補強部19は、厚さ方向Zのうち天板15から離間する向きに突出している。
基準方向Xにおいて第2底板14における第2連設板17とは反対側の端部には、規制部20が配設されている。規制部20は、厚さ方向Zのうち天板15に近付く向きに突出している。規制部20は、補強板26を基準方向Xに係止する。受圧本体部12に補強部19及び規制部20が形成されていることで、受圧本体部12の基準方向Xに沿う軸線周りの曲げ剛性が大きくなり、局部座屈の発生が抑えられる。
底板13,14、天板15、連設板16,17、補強部19、及び規制部20は、直交方向Yにそれぞれ延びている。
【0031】
例えば、底板13,14、天板15、連設板16,17、補強部19、及び規制部20は、鋼板等を折り曲げること等により一体に形成されている。なお、1枚の鋼板から第1底板13及び第1連設板16を形成する際に、第1底板13と第1連設板16との接続部分の曲げ角度を90°よりも小さくしている。この理由は、接続部分の曲げ角度を抑えて、鋼板が割れたり、鋼板の耐力が低下したりするのを抑制するためである。第1連設板16と天板15との接続部分等に付いても、同様である。
第1底板13、天板15、及び第2底板14は、厚さ方向Zに互い違いに位置をずらして配設されているとともに、第1底板13、天板15、及び第2底板14に連設板16,17が連なっている。このため、受圧本体部12は、基準方向Xに沿う軸線周りの曲げ剛性は比較的大きいが、直交方向Yに沿う軸線周りの曲げ剛性は比較的小さい。
【0032】
受圧本体部12に用いる鋼板としては、例えば、スーパーダイマ(登録商標、新日鐵住金株式会社製)の、厚さ2.3mm又は3.2mmの鋼板を好適に用いることができる。スーパーダイマは、高耐食性めっき鋼板である。
例えば、正面視における(厚さ方向Zに見たときの)受圧本体部12の大きさは、300mm×300mm以上、1000mm×1000mm以下程度である。
例えば、受圧本体部12の質量は、30kg以下であることが好ましい。受圧本体部12の質量がこの程度であれば、受圧本体部12を人力で運搬し、設置することができる。
【0033】
なお、
図5に示すように、複数の受圧本体部12を厚さ方向Zに重ねることができる。このとき、厚さ方向Zに隣り合う受圧本体部12を基準方向Xにずらして、厚さ方向Zに隣り合う受圧本体部12において、補強部19同士を基準方向Xに係合させたり、規制部20同士を基準方向Xに係合させたりすることができる。すなわち、補強部19及び規制部20が、受圧本体部12における基準方向Xへのストッパーの役割をする。
これにより、厚さ方向Zに複数重ねた受圧本体部12が、基準方向Xに位置ズレするのを抑制することができる。
【0034】
図3及び
図4に示すように、補強板26は、表裏面が直交方向Yに向く。すなわち、補強板26の厚さ方向が直交方向Yであり、補強板26は基準方向X及び厚さ方向Zにそれぞれ延びている。補強板26の基準方向Xの長さは、受圧本体部12の基準方向Xの長さと同等である。補強板26の厚さ方向Zの長さは、底板13,14と天板15との距離と同等である。一対の補強板26は、直交方向Yに杭31を挟むように、直交方向Yに並べて配置されている。
例えば、補強板26は受圧本体部12と同一の材料で形成されている。一対の補強板26は、杭31を直交方向Yに挟むように配設されている(
図2参照)。連設板16,17のスリット16a,17aに挿入された各補強板26は、底板13,14及び天板15にそれぞれ接触することが好ましい。
補強板26は、基準方向X及び厚さ方向Zにそれぞれ延びているため、直交方向Yに沿う軸線周りの曲げ剛性が比較的大きい。一対の補強板26が連設板16,17のスリット16a,17aに挿入されていることで、受圧部材11全体としての直交方向Yに沿う軸線周りの曲げ剛性が大きくなる。
【0035】
図1に示すように、杭31は、土砂構造物Gに打ち込まれる。
図6及び
図7に示すように、杭31は、杭本体32と、羽部33と、一対のコマ(突部)34と、を備えている。
例えば、杭本体32は、鋼材等で円柱状に形成されている。杭本体32の外径は、受圧本体部12の天孔15aの短径よりも小さい。杭本体32は、受圧本体部12の天孔15aに挿入されている。
羽部33は、杭本体32の第1端部の外周面に設けられている。羽部33は螺旋状に形成され、杭本体32が土砂構造物Gに打ち込まれたときに、土砂構造物Gから抜けにくい。
【0036】
コマ34は、側面視において杭本体32の長手方向に長い矩形状である。一対のコマ34は、杭本体32の第2端部の外周面に設けられている。例えば、コマ34は鋼板等で形成され、杭本体32に溶接等により接合されている。一対のコマ34は、杭本体32を挟んで対向するように配設されている。
図1に示すように、一対のコマ34は、天板15に対する土砂構造物Gの側面G3とは反対側に配設されている。一対のコマ34は、楔部材36及び隙間板41を間に挟んで、天板15に対向している。
杭31を土砂構造物Gに打ち込むときには、杭31を杭本体32の軸線周りに回転させながら打ち込む。一対のコマ34は、杭31を軸線周りに回転させやすくするために用いられてもよい。
【0037】
図8に示すように、楔部材36は、一対の楔37と、連結部材38と、を備えている。楔37は、楔37の厚さ方向Zに見た正面視において矩形状に形成されている。楔37は、第1端部から第2端部に向かうに従い漸次、厚くなる。一対の楔37は、互いに間隔を空けて平行に配設されている。一対の楔37の間の距離は、杭31の杭本体32の外径よりも長い。
連結部材38は、各楔37の第2端部同士を接続している。楔部材36は、
図8(a)に示す正面視において、C字状に形成されている。
図1及び
図3に示すように、楔部材36の各楔37は、隙間板41を介して杭31のコマ34と受圧本体部12の天板15との間に配設され、杭31と受圧本体部12(天板15)とを固定している。
【0038】
図9に示すように、隙間板41は、正面視で矩形の板状に形成されている。隙間板41の厚さは一定である。隙間板41の中央部には、隙間板41を厚さ方向Zに貫通する挿入孔41aが形成されている。挿入孔41aは正面視で楕円形に形成されている。
図10に示すように、挿入孔41aの短径は、杭本体32の外径よりも長い。杭本体32の外径と一対のコマ34の合計の外径L1は、挿入孔41aの短径よりも長く、挿入孔41aの長径よりも短い。
図1及び
図3に示すように、隙間板41は、杭31のコマ34と楔部材36との間に配設されている。挿入孔41aには、杭31の杭本体32が挿入されている。
なお、隙間板41は、コマ34と楔部材36との間、及び、天板15と楔部材36との間、の少なくとも一方に配設されてもよい。
【0039】
挿入孔41aは、コマ34に対する挿入孔41aの軸線周りの向きによって、コマ34が挿入孔41aに挿入可能か否かが切り替わる。
具体的には、
図11に示すように、一対のコマ34が杭本体32を挟む向きと挿入孔41aの長径とが一致する杭本体32(杭31)の軸線C1周りの挿入孔41a(隙間板41)の向きを、第1の向きD1とする。挿入孔41aの向きは、楕円形の挿入孔41aの長径の向きで表す。一方で、
図10に示すように、一対のコマ34が杭本体32を挟む向きと挿入孔41aの短径とが一致する軸線C1周りの挿入孔41aの向きを、第2の向きD2とする。第2の向きD2は、第1の向きD1とは軸線C1周りに約90°異なる。
図11に示すように、隙間板41は、一対のコマ34に対して第1の向きD1に配設されたときに、一対のコマ34に挿入可能である。一方で、
図10に示すように、隙間板41は、一対のコマ34に対して第2の向きD2に配設されたときに、一対のコマ34に係止する。
【0040】
なお、隙間板41は、一対のコマ34に対する向きにより一対のコマ34に挿入可能であったり一対のコマ34に係止したりするものであれば、その形状は限定されない。隙間板41における挿入孔41aの縁部の形状は、矩形状等でもよい。
図1及び2に示すように、隙間板41及び楔部材36は、一対の補強板26が直交方向Yに並ぶ全範囲よりも狭い範囲にわたって延びている。
【0041】
次に、以上のように構成された補強構造1を用いた本実施形態の土砂構造物の補強方法(以下、補強方法と略して言う)について説明する。
図12は、本発明の第1実施形態の補強方法Sを示すフローチャートである。
まず、小段部G2の形成工程(
図12のステップS11、小段部G2を形成する工程)において、
図13に示すように、土砂構造物Gの傾斜面G1を部分的に掘削することで、側面G3及び底面G4が形成された小段部G2を形成する。小段部G2は、傾斜面G1に沿って、断続又は連続するように複数形成されることが好ましい。
小段部G2の側面G3は、上下方向に沿う高さ、及び幅が、受圧部材11と同等以上の高さ、及び幅となるように形成される。
小段部G2の形成工程S11が終了すると、ステップS12に移行する。
【0042】
次に、杭31の打込工程S12(杭31を打込む工程)において、
図14に示すように、小段部G2の側面G3に、杭31を打込む。このとき、例えば羽部33を側面G3に向けた状態で、一対のコマ34に図示しない回転装置を取付ける。回転装置を駆動して杭31を杭本体32の軸線周りに回転させると、羽部33により推進力を得ながら小段部G2に杭31が打込まれる。杭31を、羽部33が土砂構造物G内に挿入するとともに、一対のコマ34が小段部G2の側面G3から土砂構造物Gの外部に突出した状態になるまで打込む。杭31を打込んだら、一対のコマ34から回転装置を取外す。
小段部G2が複数形成されている場合には、傾斜面G1に沿って杭31を複数回打込む。各杭31は、水平面に沿うよう配設するか、後端側(一対のコマ34側)が水平面よりも下り勾配となるように配設する。
杭31の打込工程S12が終了すると、ステップS13に移行する。
【0043】
次に、受圧部材11の配設工程S13(受圧部材11を配設する工程)において、
図15に示すように、小段部G2の側面G3に第1底板13と第2底板14が接触するように、側面G3に受圧本体部12を配設する。このとき、杭31に受圧本体部12の天孔15aを外挿する。受圧本体部12の天板15に対して側面G3とは反対側に一対のコマ34が位置するようにする。
なお、杭31(側面G3)に対する受圧本体部12の向きに、方向性は無い。すなわち、受圧本体部12を杭本体32の軸線周りの任意向きに配設してよい。
【0044】
図16に示すように、受圧本体部12のスリット16a,17a(第2スリット17aは不図示)に一対の補強板26を挿入する。受圧本体部12と一対の補強板26とで、受圧部材11が構成される。
このとき、
図17に示すように、各補強板26を補強部19側から、第1スリット16a、第2スリット17aの順で挿入し、規制部20に係止させる。補強板26が規制部20に係止すると、補強板26をこれ以上挿入できなくなる。受圧本体部12及び補強板26はそれぞれ板材で形成されているため、軽くて人力で施工することができる。
小段部G2が複数形成されている場合には、傾斜面G1に沿って受圧部材11を複数配設する。
なお、予め受圧本体部12に一対の補強板26を挿入して受圧部材11としたうえで、小段部G2の側面G3に受圧部材11を配設してもよい。受圧部材11の配設工程S13が終了すると、ステップS14に移行する。
【0045】
次に、杭31と天板15との固定工程S14(杭31と天板15とを固定する工程)において、
図18から
図20に示すように、隙間板41を一対のコマ34に挿入する。このとき、隙間板41を一対のコマ34に対して第1の向きD1に配設して挿入する。一対のコマ34を、天板15に対する土砂構造物Gの側面G3とは反対側に配設する。隙間板41が天板15と一対のコマ34との間に配設されたら、隙間板41を軸線C1周りに約90°回転させ、隙間板41を第2の向きD2に配設する。これにより、隙間板41が一対のコマ34に係止する。
なお、天板15と一対のコマ34との間に配設する隙間板41の枚数は、天板15と一対のコマ34との隙間に応じて決められる。天板15と一対のコマ34との間に隙間板41を配設しなくてもよいし、隙間板41を2枚以上配設してもよい。
【0046】
次に、
図1に示すように、杭31の一対のコマ34と天板15との間に、隙間板41を介して楔部材36を配設する(打ち込む)。このとき、
図10に示すように、一対の楔37のうち第1端部から天板15と隙間板41の間に挿入し、楔部材36の一対の楔37の間に杭本体32を挟む。なお、楔部材36を挿入する向きに 、方向性は無い。
楔部材36を打ち込むのにしたがって、一対のコマ34と天板15とが杭本体32の長手方向に押し広げられ、羽部33と一対のコマ34とにより杭本体32が長手方向に引っ張られる(緊張状態になる)。杭31により、受圧部材11が小段部G2の側面G3に押付けられ、土砂構造物Gが補強される。
【0047】
なお、杭本体32が引っ張られたときに、受圧本体部12は厚さ方向Zに圧縮されて基準方向Xに広がろうとする。しかし、受圧本体部12のスリット16a、17aに補強板26が挿入されているため、底板13,14と天板15とが厚さ方向Zに接近しにくくなり、受圧本体部12が厚さ方向Zに圧縮されるのが抑制される。
【0048】
以上説明したように、本実施形態の受圧部材11によれば、第1底板13、天板15、及び第2底板14は、厚さ方向Zに互い違いに位置をずらして配設されているとともに、第1底板13、天板15、及び第2底板14に連設板16,17が連なっている。このため、受圧本体部12は、基準方向Xに沿う軸線周りの曲げ剛性は比較的大きいが、直交方向Yに沿う軸線周りの曲げ剛性は比較的小さい。補強板26は直交方向Yに沿う軸線周りの曲げ剛性が比較的大きいため、受圧部材11全体としての直交方向Yに沿う軸線周りの曲げ剛性が大きくなる。
受圧部材11は板材で形成されることで軽くても、基準方向Xに沿う軸線周りの曲げ剛性、及び直交方向Yに沿う軸線周りの曲げ剛性がそれぞれ大きくなり、傾斜面G1が形成された土砂構造物Gを確実に補強することができる。
【0049】
受圧部材11が、規制部20を備える。これにより、基準方向Xに沿って第2底板14に対する第2連設板17とは反対側に補強板26が外れるのを抑制することができる。
第1底板13及び第2底板14は、基準方向Xに間隔を空けて配設されている。このため、第1底板13及び第2底板14により基準方向Xのより広い範囲にわたって土砂構造物Gを補強することができる。
受圧部材11が直交方向Yに並べられた一対の補強板26を備えることで、補強板26により底板13,14を押える範囲が直交方向Yに広がり、受圧部材11の剛性を大きくすることができる。
【0050】
また、本実施形態の補強構造1及び補強方法Sによれば、杭31のコマ34と天板15との間の距離が変化しても、変化した距離に応じて一対のコマ34と天板15との間に打ち込む楔37の深さを調節することで、杭31と受圧本体部12とを確実に固定することができる。
補強構造1が、隙間板41を有する。杭31のコマ34と天板15との隙間が大きい場合でも、この隙間に楔部材36とともに隙間板41配設することで、杭31と受圧本体部12とを確実に固定することができる。
【0051】
隙間板72は、一対のコマ34に対して第1の向きD1に配設されたときに一対のコマ34が挿入可能であり、一対のコマ34に対して第2の向きD2に配設されたときに、一対のコマ34に係止する。したがって、一対のコマ34に対する挿入孔41aの向きに基づいて、隙間板72を一対のコマ34に挿入したり、隙間板72を一対のコマ34に係止させたりすることができる。
【0052】
なお、本実施形態の受圧部材11及び補強構造1は、以下に説明するようにその構成を様々に変形させることができる。
補強板26は連設板16,17のスリット16a,17aに挿入されているとしたが、さらに受圧部材11は、第1連設板16と補強板26が溶接することで接合された第1溶接部(溶接部)、及び、第2連設板17と補強板26が溶接することで接合された第2溶接部(溶接部)の少なくとも一方を備えていてもよい。このように構成することで、第1連設板16及び第2連設板17の少なくとも一方と補強板26とを溶接部により確実に接合し、受圧部材11の直交方向Yに沿う軸線周りの曲げ剛性をより大きくすることができる。
なお、連設板16,17と補強板26とは、溶接部に代えてネジ等で固定されてもよい。
【0053】
図21及び
図22に示すように、補強構造2は、本実施形態の補強構造1の楔部材36及び隙間板41に代えて、楔部材46及び隙間板51を備えている。
楔部材46は、一対の楔47(一方の楔47は不図示)と、連結部材48と、を備えている。楔47、連結部材48は、前述の楔47、連結部材38よりも直交方向Yにそれぞれ長い。楔部材46は、厚さ方向Zに見た
図21に示すように、直交方向Yにおいて、杭31を挟むように配置された一対の補強板26に重なる。楔部材46は、一対の補強板26よりも直交方向Yの外側にそれぞれ突出している。
図21及び
図22に示すように、隙間板51は、隙間板41よりも直交方向Yに長い。隙間板51及び楔部材46の直交方向Yに長さは、互いに同等である。楔部材46、隙間板51は、楔部材46、隙間板41よりもそれぞれ厚くて、剛性が高いことが好ましい。
【0054】
補強構造2をこのように構成することで、杭31が引っ張られたときに、この引っ張り力を、楔部材46及び隙間板51を介して、杭31を挟むように配置された一対の補強板26により効果的に支持することができる。杭31を直交方向Yに挟む一対の補強板26で引っ張り力を支持するため、この力を支持する直交方向Yのバランスが向上する。
なお、補強構造2において、楔部材46は前述の楔部材36であってもよいし、隙間板51は前述の隙間板41であってもよい。楔部材46及び隙間板51の少なくとも一方が、厚さ方向Zに見たときに、直交方向Yにおいて杭31を挟むように配置された3枚以上の補強板26に重なるようにしてもよい。
【0055】
図23及び
図24に示すように、受圧部材61において、基準方向Xに見たときに、補強板26が厚さ方向Zに対して傾斜していてもよい。この変形例では、一対の補強板26は、天板15に近付くに従い、直交方向Yの内側に向かうように傾斜している。なお、スリット16a,17aは、補強板26に対応して斜めに形成されている。
受圧部材61をこのように構成することで、一対の補強板26が底板13,14を押える範囲が直交方向Yに広がり、土砂構造物Gを確実に補強することができる。
なお、一対の補強板26は、天板15に近付くに従い、直交方向Yの外側に向かうように傾斜していてもよい。
【0056】
図25に示すように、受圧部材66が3枚以上の補強板26を備えてもよい。この変形例では、受圧部材66は4枚の補強板26を備えている。4枚の補強板26は、直交方向Yに互いに間隔を空けて配設されているとともに、
図25に示す正面視において天板15の天孔15aを挟むように2枚ずつ配設されている。
なお、受圧部材66が備える補強板26の数は、1枚でもよい。
【0057】
図26に、本変形例の補強構造に用いられる隙間板72を示す。隙間板72に形成された挿入孔73は、挿入孔本体73aと、一対の補助孔73bと、を有している。
挿入孔本体73aは、正面視で円形状に形成され、隙間板72を貫通している。挿入孔本体73aには、一対のコマ34が配設されない杭本体32が挿入可能である。挿入孔本体73aには、一対のコマ34が配設された杭本体32が挿入不能である。
補助孔73bは、隙間板72における挿入孔本体73aの開口周縁部から径方向外側に向かって延びている。補助孔73bは、挿入孔本体73aの周方向の一部に形成されている。一対の補助孔73bは、挿入孔本体73aを挟んで対向するように配設されている。補助孔73bは、隙間板72を貫通している。正面視において補助孔73bとコマ34とは互いに同等の形状であり、補助孔73bにコマ34が挿入可能である。
【0058】
図27に示すように、本変形例の補強構造3は、本実施形態の補強構造1の隙間板41に代えて、前述の隙間板72を備えている。
図12に示すように、このように構成された補強構造3を用いた補強方法S1は、杭31と天板15との固定工程S16において、以下の工程を行う。
すなわち、
図27に示すように、隙間板72を杭31の杭本体32に挿入する。このとき、挿入孔本体73aに対する補助孔73bの向き、及び杭本体32に対するコマ34の向きを、互いに同等にすることで、隙間板72を一対のコマ34に挿入可能になる。隙間板72をコマ34よりも土砂構造物Gの側面G3側まで外挿したら、
図28に示すように、隙間板72を杭31周りに約90°回転させる。挿入孔本体73aに対する補助孔73bの向き、及び杭本体32に対するコマ34の向きが約90°ずれている(互いに異なる)ため、隙間板72が一対のコマ34に係止する。
【0059】
この後で、杭31の一対のコマ34と天板15との間に楔部材36を打ち込み、杭31と天板15とを固定する。
補強構造3をこのように構成することで、挿入孔本体73aに対する補助孔73bの向きと、杭本体32に対するコマ34の向きと、の関係に基づいて、隙間板72を一対のコマ34に挿入させたり一対のコマ34に係止させたりすることができる。
この変形例の補強構造3では、挿入孔本体73aに対する補助孔73bの向き、及び杭本体32に対するコマ34の向きが、互いに同等でない任意の状態で、杭31に作用する引っ張り力を、隙間板72を介して受圧部材11に伝達することができる。
【0060】
本実施形態の補強方法S,S1では、土砂構造物Gの傾斜面G1を掘削することで小段部G2を形成し、この小段部G2の側面G3に受圧部材11を配設した。しかし、土砂構造物Gの傾斜面G1に小段部を突出形状に形成し、この小段部における上下方向に沿う側面に受圧部材11を配設してもよい。
具体的には、まず、小段部の形成工程において、傾斜面G1における小段部の形成予定部位に、上下方向に沿うように配設した補助板の下端部を打込む。
次に、補助板と傾斜面G1との間の空間に土砂を充填して土盛りする。これにより、傾斜面G1において突出形状に小段部を形成する。
【0061】
次に、補助板に形成された孔を通して、前述の杭31の打込工程S12を行う。さらに、前述の受圧部材11の配設工程S13、及び杭31と天板15との固定工程S14,S16を行い、補強構造1,3を配設する。
【0062】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について
図29及び
図30を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図29に示すように、本実施形態の補強構造5は、前述の受圧部材11と、杭76と、ナット(押圧手段)81と、を有している。
杭76は、鋼材等で円柱状に形成されている。杭76の第1端部には、前述の羽部33が設けられていることが好ましい。杭76の第2端部(端部)には、雄ネジ部77が形成されている。杭76の第2端部は、杭76の頭部である。杭76は、第1端部側から土砂構造物Gに打ち込まれている。
ナット81の雌ネジ部82は、杭76の雄ネジ部77に嵌め合っている。ナット81は、受圧部材11(天板15)に対する土砂構造物Gの側面G3とは反対側に配設されている。言い替えれば、ナット81は受圧部材11と杭76の端部との間に配設されている。
【0063】
このように構成された補強構造5では、作業者は、杭76の雄ネジ部77にナット81の雌ネジ部82に嵌め合わせて、ナット81を受圧部材11に向かって締め込む。すると、ナット81が受圧部材11を土砂構造物Gに向かって押圧し、杭76が長手方向に引っ張られる。
【0064】
このように構成された、本実施形態の補強構造5によれば、ナット81により、受圧部材11を土砂構造物Gに向かって押圧した状態に保持することができる。
また、ナット81を受圧部材11に向かって締め込むことで、受圧部材11を土砂構造物Gに向かって押圧することができる。
【0065】
なお、本実施形態では、押圧手段は、受圧部材11と杭76との間に打ち込まれている楔であってもよい。このように構成することで、受圧部材11と杭76との間に楔を打ち込むことで、受圧部材11を土砂構造物Gに向かって押圧することができる。
また、押圧手段は、
図30に示すジャッキ86であってもよい。ジャッキ86は、油圧装置等により駆動される。この場合、杭76の第2端部に平板87を固定し、この平板87と受圧部材11の天板15との間にジャッキ86を配設することが好ましい。この場合、杭76に雄ネジ部77は形成されていない。
そして、油圧装置によりジャッキ86を杭76の長手方向に広げる。このように構成することで、ジャッキ86により、受圧部材11を土砂構造物Gに向かって容易に押圧することができる。
【0066】
以上、本発明の第1実施形態及び第2実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせ、削除等も含まれる。さらに、各実施形態で示した構成のそれぞれを適宜組み合わせて利用できることは、言うまでもない。
例えば、前記第1実施形態では、楔部材36は、一対の楔37と、連結部材38と、を備えているとした。しかし、楔部材36は1つの楔37から構成されてもよい。楔部材46についても同様である。
受圧部材11は、補強部19及び規制部20を備えなくてもよい。隙間板41の挿入孔41aの正面視の形状は、円形でもよい。補強構造1は、隙間板41を有しなくてもよい。
杭31は、羽部33を備えなくてもよい。杭31が備えるコマ34の数は一対(2つ)に限定されず、1つでもよいし、3つ以上でもよい。
杭31は、杭本体32と、羽部33と、一対のコマ34とを備える構成に限られず、アンカーや鉄筋等でもよい。
【0067】
受圧本体部12が、第1連設板16、天板15、第2連設板17、及び第2底板14を有する山形形状12Aを1つ備えるとした。しかし、受圧本体部が備える山形形状12Aの数はこれに限られない。例えば、
図31に示す補強構造6のように、受圧部材91の受圧本体部92が2つの山形形状12Aを備えるとしてもよい。基準方向Xに隣り合う2つの山形形状12Aのうち、一方の山形形状12Aの第2底板14と、他方の山形形状12Aの第1連設板16とが連なる。この変形例の補強構造6は、山形形状12Aに対応して2本の杭31を備えている。
また、
図32に示す補強構造7のように、受圧部材96の受圧本体部97が3つの山形形状12Aを備えるとしてもよい。この変形例の補強構造7は、山形形状12Aに対応して3本の杭31を備えている。
【0068】
天板15に基準方向Xに延びるスリットを形成するとともに、このスリットを連設板16,17のスリット16a,17aにそれぞれ接続してもよい。このように構成することで、受圧本体部に対して補強板26を基準方向Xだけでなく厚さ方向Zに挿入することができる。
第1底板13と第2底板14とは、基準方向Xに間隔を空けずに、互いに接触した状態で配設されてもよい。
杭本体32及び杭76は、鋼管等で形成された排水管であってもよい。この場合、排水管の側面に側孔が形成されていてもよい。このように構成することで、排水管の側孔を通して土砂構造物G中の水を土砂構造物Gの外部に排出することができる。