特許第6887372号(P6887372)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6887372
(24)【登録日】2021年5月20日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
   A01D 67/00 20060101AFI20210603BHJP
   A01D 41/12 20060101ALI20210603BHJP
   A01D 57/22 20060101ALI20210603BHJP
   B60Q 1/04 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   A01D67/00 C
   A01D67/00 K
   A01D41/12 Z
   A01D57/22 Z
   B60Q1/04 A
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-244442(P2017-244442)
(22)【出願日】2017年12月20日
(65)【公開番号】特開2019-110764(P2019-110764A)
(43)【公開日】2019年7月11日
【審査請求日】2019年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】山内 一樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 洋也
【審査官】 佐藤 智子
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第2015−0139186(KR,A)
【文献】 特開2010−200710(JP,A)
【文献】 特開2012−055247(JP,A)
【文献】 特開2014−200220(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 67/00
A01D 41/00
A01D 57/00−57/30
A01D 63/00−65/08
A01D 67/00−69/12
B60Q 1/00−1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体前部に設けられて圃場の植立穀稈を刈り取る刈取部が備えられたコンバインであって、
前記刈取部に、植立穀稈を引き起こす引起装置と、
前記引起装置を支持する刈取フレームと、
前記引起装置の左右両側のそれぞれに設けられたサイドカバーと、
前記各サイドカバーに設けられたカバー用開口部に配置される前照灯カバーと、
前記前照灯カバーに設けられた前照灯用開口部に配置される前照灯を構成するライトユニットと、
前記前照灯カバー及びライトユニットが個別に着脱可能な前照灯ブラケットと、が備えられ、
前記前照灯ブラケットが、前記刈取フレームに支持されているコンバイン。
【請求項2】
前記前照灯カバーにおける上下方向に離間した位置に、複数の前記前照灯用開口部が設けられ、
各前記前照灯用開口部に、前記ライトユニットが一つずつ配置され、
前記前照灯ブラケットは、各前記ライトユニットを個別に着脱可能である請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記前照灯用開口部の開口寸法は、前記ライトユニットの外径寸法よりも大きいように構成されている請求項1又は2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記前照灯カバーは、前記カバー用開口部の周縁部の裏面に係止可能なフランジ部を有する請求項1から3のいずれか一項に記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体前部に設けられて圃場の植立穀稈を刈り取る刈取部が備えられたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
自脱型コンバインは、機体の下部に備えられた左右一対のクローラ式の走行装置と、機体の前端部に支持された刈取部と、機体の上部に搭載された脱穀部とを備えており、機体を走行させながら刈取作業を行うが、この作業はしばしば薄暮時に及ぶことがあって、操縦席における機台の操向が困難となるので、前方を照射するために前照灯が設けられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、刈取部の両端に前照灯を設けたコンバインが開示されている。このコンバインにおいては、刈取部に備えられた引起装置の左右にサイドカバーが設けられ、両サイドカバーの上部のそれぞれに上下に並んで二つの前照灯が設けられている。これらの前照灯は、光源としてのハロゲンライトと、ハロゲンライトからの投光を反射するリフレクタ部と、がサイドカバーの所定位置に設けられた前照灯用開口部に組み込まれ、この前照灯用開口部を覆うように大きな透光カバー部が設けられて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−006319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなコンバインは、サイドカバーに前照灯が支持されるとともに、サイドカバーを刈取フレームに取り付けたあとに前照灯の配線をする構成であるため、サイドカバーの着脱のたびに、前照灯の配線をしなおす必要があり、作業が煩雑であるという問題があった。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、刈取部のメンテナンス性が良いコンバインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するための、本発明に係るコンバインの特徴構成は、機体前部に設けられて圃場の植立穀稈を刈り取る刈取部が備えられたコンバインであって、前記刈取部に、植立穀稈を引き起こす引起装置と、前記引起装置を支持する刈取フレームと、前記引起装置の左右両側のそれぞれに設けられたサイドカバーと、前記各サイドカバーに設けられたカバー用開口部に配置される前照灯カバーと、前記前照灯カバーに設けられた前照灯用開口部に配置される前照灯を構成するライトユニットと、前記前照灯カバー及びライトユニットが個別に着脱可能な前照灯ブラケットと、が備えられ、前記前照灯ブラケットが、前記刈取フレームに支持されている点にある。
【0008】
上述の構成によると、前照灯を構成するライトユニット及び前照灯カバーがサイドカバーに支持されるのではなく、前照灯を構成するライトユニット及び前照灯カバーが取り付けられた状態の前照灯ブラケットが刈取フレームに取り付けられる構成であるため、ライトユニットを配線したまま、サイドカバーのみを着脱することができるため、メンテナンス性が良い。
【0009】
なお、本発明における、「開口」とは、広義の意味に用いられるものであり、「穴」や「切欠」などを含むものとする。
【0010】
本発明においては、前記前照灯カバーにおける上下方向に離間した位置に、複数の前記前照灯用開口部が設けられ、各前記前照灯用開口部に、前記ライトユニットが一つずつ配置され、前記前照灯ブラケットは、各前記ライトユニットを個別に着脱可能であると好適である。
【0011】
上述の構成によると、複数あるライトユニットが前照灯ブラケットに対して個別に着脱可能であることから、一部のライトユニットのみを交換することができる。
【0012】
本発明においては、前記前照灯用開口部の開口寸法は、前記ライトユニットの外径寸法よりも大きいように構成されていると好適である。
【0013】
上述の構成によると、前照灯ブラケットを刈取フレームに取り付けた状態のまま、ライトユニットのみを前照灯用開口部を介して着脱することができるため、ライトユニットの交換作業がしやすい。前照灯用開口部の開口寸法は、ライトユニットの外径寸法よりも、ライトユニットを通し得る分だけ大きいと好ましい。
【0014】
本発明においては、前記前照灯カバーは、前記カバー用開口部の周縁部の裏面に係止可能なフランジ部を有すると好適である。
【0015】
上述の構成によると、前照灯カバーに被せるようにサイドカバーを取り付けると、フランジ部がカバー用開口部の周縁部の裏面に係止され、前照灯カバーは、サイドカバーのカバー用開口部に対して自動的に位置決めされる。なお、カバー用開口部と前照灯カバーとの間に大きな隙間があると、この隙間からサイドカバー内に穀稈が入る虞があるが、フランジ部を設けたことによりこれを防止することができる。フランジ部は、前照灯カバーの全周に亘って備えられていてもよいし、一部に備えられていてもよい。また、前照灯カバーは、カバー用開口部の周縁部の裏面に係止する構成であることから、サイドカバーは前照灯カバーの外に備えられる。したがって、前照灯カバーを取り付けた状態のまま、サイドカバーを取り外すことで、第一前照灯や第二前照灯の周囲を広くあけることができるため、メンテナンスの作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】コンバインの側面図
図2】コンバインの平面図
図3】コンバインの正面図
図4】刈取部の正面図
図5】刈取部の側面図
図6】前照灯の正面図
図7】前照灯の斜視図
図8】側面視における前照灯ブラケットの説明図
図9】平面視における前照灯ブラケットの説明図
図10】背面視における前照灯ブラケットの説明図
図11】側面視における前照灯の照射範囲を示す説明図
図12】平面視における前照灯の照射範囲を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の説明において、図1における矢印Fで示す方向が「前」であり、矢印Bで示す方向が「後」である。図2の矢印Rで示す方向が「右」であり、矢印Lで示す方向が「左」である。機体幅方向とは機体1の左右に沿った方向である。
【0018】
図1から図3に示すように、穀稈などを収穫するコンバインは、機体1の下部にクローラ式の走行装置2が設けられ、機体1の右前部に運転座席3aなどが装備された搭乗型の運転部3が設けられ、機体1の内部には、運転座席3aの下方に原動機4が設けられ、機体前方に植立穀稈を刈り取る刈取部10が設けられ、機体1の後部に刈取穀稈を脱穀する脱穀装置5と、脱穀された穀粒を貯留する穀粒タンク6が設けられている。
【0019】
刈取部10に、刈取フレーム11が備えられており、刈取フレーム11に刈取対象条の植立穀稈を分草案内する複数の分草具12と、分草具12の後方において刈取対象条の植立穀稈を刈り取るために引き起こす引起装置13と、引き起こされた植立穀稈の株元を切断する刈取刃14を有する切断装置と、刈取穀稈を機体後方に向けて搬送する搬送装置15などが支持されている。
【0020】
刈取部10の刈取フレーム11は、機体1に対して、水平軸心まわりに揺動自在に連結されている。刈取部10は、リフトシリンダ(図示せず)を伸縮操作することによって刈取フレーム11を昇降させ、作業姿勢と非作業姿勢とに姿勢変更が可能である。作業姿勢は、図1において実線で示すように、分草具12や刈取刃14などが圃場から1cmから数cm程度の高さに位置された姿勢であり、非作業姿勢は、図1において二点鎖線で示すように、分草具12や刈取刃14などが作業姿勢における圃場からの高さよりも高くに位置された姿勢である。
【0021】
刈取部10を作業姿勢にしたまま機体1を前進させると、複数の分草具12によって植立穀稈が刈り取り対象と非刈り取り対象とに分草され、かつ植立穀稈が条毎に分草され、刈り取り対象の植立穀稈が引起し経路に導入される。本実施形態においては、図2に示すように、刈取部10は、七つの分草具12と、六つの引起装置が備えられ、六条刈りが可能である。ただし、刈取部10は、六条刈りに限らず、何条刈りであってもよい。
【0022】
各分草具12からの植立穀稈は、各条に対応する引起装置13によって引起し処理されるとともに刈取刃14によって刈り取られ、刈取穀稈が搬送装置15によって機体後方の脱穀装置5に搬送される。
【0023】
脱穀装置5は、脱穀フィードチェーン(図示せず)によって刈取穀稈の株元側を機体後方側に挟持搬送しながらその植立穀稈の穂先側を扱室(図示せず)に供給して脱穀処理する。穀粒タンク6は、脱穀装置5からの脱穀粒を回収して貯留していく。
【0024】
〔サイドカバー〕
図4及び図5に示すように、刈取部10の刈取フレーム11の刈幅方向の左右両側のそれぞれにサイドカバー20が着脱自在に設けられている。左右いずれのサイドカバー20も、機械的強度と耐候性を有する樹脂、例えばPP、PE、又はABS樹脂等を所定形状に形成されている。
【0025】
左右いずれのサイドカバー20の前向き面も、引起装置13の機体前方向きの前面に沿うように、上端ほど機体後方に位置するように傾斜した傾斜面になっている。
【0026】
左右いずれのサイドカバー20も、下部カバー21と、この下部カバー21とは別部品である上部カバー22とから構成されている。
【0027】
刈取フレーム11の下部カバー21に対応する部分には、刈取部10の各部の潤滑油の注油タンク16や注油ポンプ(図示せず)などが設けられており、下部カバー21は、注油タンク16等に対するメンテナンス性を向上させるために、刈取フレーム11及び下部カバー21のそれぞれに設けられた一対の係合部材を係合状態と係合解除状態とに切換え操作するだけで容易に着脱することができるように構成されている。
【0028】
上部カバー22は、下部に、下部カバー21の外側面よりも内側にへこんだ凹部22aが、下部カバー21の上端に沿って、後ろ上がりの状態で備えられている。また、上部カバー22のうち凹部22aよりも上側部分は、下部カバー21の外側面よりも外側に向けて膨出している。
【0029】
この上部カバー22の膨出部22bに第一前照灯31及び第二前照灯32が設けられている。したがって、第一前照灯31及び第二前照灯32は、サイドカバー20の上部に設けられている。
【0030】
具体的には、図6から図10に示すように、上部カバー22の膨出部22bは、平面視において内側から外側にかけて機体1の斜め後方に向かう傾斜面を有し、この傾斜面に縦長のカバー用開口部23が設けられている。
【0031】
このカバー用開口部23に前照灯カバー24が配置され、前照灯カバー24における上下方向に離間した位置に、上側に位置する第一前照灯用開口部25及び下側に位置する第二前照灯用開口部26が設けられている。前照灯カバー24は、機械的強度と耐候性を有する樹脂、例えばPP、PE、又はABS樹脂等を所定形状に加工することによって形成されている。
【0032】
第一前照灯用開口部25及び第二前照灯用開口部26は、第一前照灯用開口部25及び第二前照灯用開口部26の開口寸法が、第一前照灯31や第二前照灯32の外径寸法よりも、第一前照灯31や第二前照灯32を通し得る分だけ大きいように構成されている。
【0033】
〔前照灯〕
第一前照灯用開口部25に第一前照灯31が配置され、第二前照灯用開口部26に第二前照灯32が配置されている。したがって、第一前照灯31及び第二前照灯32は、第一前照灯31が第二前照灯32の上方に位置する状態で上下に離間した位置に並べて個別に配置されている。
【0034】
第一前照灯31及び第二前照灯32はそれぞれ、光を発光する光源部(図示せず)と、該光源部から照射された光を反射するリフレクタ部(図示せず)と、前記光源及び前記リフレクタ部を収容する第一ハウジング部31A及び第二ハウジング部32A、該リフレクタ部を第一透光カバー部31B及び第二透光カバー部32Bとを一体的に有するライトユニットから構成されている。第一透光カバー部31B及び第二透光カバー部32Bは透光性を有する樹脂、例えばポリカーボネートを所定形状に加工することによって形成されている。
【0035】
上部カバー22には、カバー用開口部23の全面を覆うような透光カバー部が備えられないため、第一前照灯31及び第二前照灯32は、投光部、すなわち第一透光カバー部31B及び第二透光カバー部32Bが機体前方に露出する状態で配置される。
【0036】
なお、第一前照灯31及び第二前照灯32に備えられた光源部は、LEDモジュールであり、距離25mにおいて1lx照度(すなわち輝度625cd)程度、かつ、光軸31C,32Cから左右に30〜35度程度、例えば32度、かつ、上下に20〜25度程度、例えば22度の照射角度を有するものが好ましく用いられる。
【0037】
第一前照灯31及び第二前照灯32は、上述の範囲内において輝度625cdを満足するように照明するのであるが、上記範囲のみを照明するわけではなく、上記範囲の周囲も上記範囲内に劣るが照明する。図11及び図12においては、第一前照灯31の光軸31C及び第二前照灯32の光軸32Cを実線で示し、輝度625cdを満足する範囲を二点鎖線で示し、その範囲の周囲であっても第一前照灯31及び第二前照灯32によって照明される範囲を薄い網掛けで示している。
【0038】
図8に示すように、第一前照灯31を構成するライトユニットが有する第一透光カバー部31B及び第二前照灯32を構成するライトユニットが有する第二透光カバー部32Bは、それぞれが、前照灯カバー24の第一前照灯用開口部25の第一開口縁25A及び第二前照灯用開口部26の第二開口縁26Aよりも、光の照射方向の前方に突出するように配置されている。したがって、前照灯カバー24が、第一前照灯31及び第二前照灯32からの投光を遮らないようになっている。
【0039】
第一前照灯31及び第二前照灯32は、ライトユニットから構成されているため、上部カバー22にライトユニット毎に個別に着脱可能に構成することができることからメンテナンス性がよい。また、第一前照灯31及び第二前照灯32にそれぞれ第一透光カバー部31B及び第二透光カバー部32Bが備えられた構成であるため、第一透光カバー部31B及び第二透光カバー部32Bの面積を狭くすることができるので、植立穀稈の穂先が接触したり、稈屑や土埃が付着する虞が少ない。
【0040】
なお、第一前照灯31及び第二前照灯32は、第一前照灯31及び第二前照灯32が点灯する両灯火状態と、第一前照灯31又は第二前照灯32のいずれか一方のみが点灯する片灯火状態とが、切り替え自在に構成されている。
【0041】
例えば、刈り取り作業時には、第一前照灯31及び第二前照灯32によって広範囲に亘って照明することで作業性を向上させ、路上走行時には、第一前照灯31又は第二前照灯32のいずれか一方のみによって照明することで省エネを図ることができるといった運用が可能となっている。なお、第一前照灯31及び第二前照灯32は両方とも消灯させることもできるように構成されている。
【0042】
〔照射方向及び照射範囲〕
図11及び図12に示すように、第一前照灯31の光軸31Cは、第二前照灯32の光軸32Cよりも、機体幅方向の内側を向くように構成され、第二前照灯32の光軸32Cは、第一前照灯31の光軸31Cよりも、機体幅方向の外側を向くように構成されている。また、作業状態において、第二前照灯32は、第二前照灯32の光軸32Cが第一前照灯31の光軸31Cよりも下側を向くように配置されている。第二前照灯32よりも高い位置にある第一前照灯31によって機体前方の遠方を照明することができ、第一前照灯31よりも圃場に近い位置にある第二前照灯32によって、しっかりと機体に近い部分を明るく照明できる。
【0043】
具体的には、第一前照灯31の光軸31Cは、機体前方に対して5度の傾斜角度で機体幅方向の内側を向き、機体前方に対して3度の傾斜角度で機体1の下側を向いた姿勢となるように備えられている。
【0044】
第二前照灯32の光軸32Cは、機体前方に対して16度の傾斜角度で機体幅方向の外側を向き、機体前方に対して19.5度の傾斜角度で機体1の下側を向いた姿勢となるように備えられている。
【0045】
第一前照灯31は、機体前方よりも機体幅方向の内側を主に照明し、第二前照灯32は、機体前方よりも機体幅方向の外側を主に照明することができるので、第一前照灯31と第二前照灯32との照明範囲の重なりが少なく、広範囲に亘って照明することができる。
【0046】
図6に示すように、第一前照灯31は、第一前照灯31の投光部、すなわち第一透光カバー部31Bが、第二前照灯32の投光部、すなわち第二透光カバー部32Bよりも機体幅方向の内側に位置するように配置されている。作物が長稈であっても、第二前照灯32よりも高い位置に設けられ、植立穀稈の影になりにくい第一前照灯31によって内側を照明し、かつ、第一前照灯31よりも低い位置に設けられ、正面を照明すると、長稈の影になりかねない第二前照灯32によって外側を照明することで、第一前照灯31と第二前照灯32との高さが上下に異なることを上手く利用して、圃場をまんべんなく、かつ効率よく照明できる。
【0047】
光軸31Cがより機体幅方向の内側を向くように構成された第一前照灯31のほうが、第二前照灯32よりも上方に配置されているため、第一前照灯31からの投光が植立穀稈の穂先によって遮られにくく、刈り取り対象となる、刈取部の直前の植立穀稈の生育状態や圃場の状態を視認しやすい。また、第一前照灯31の照明範囲31Dは、第二前照灯32の照射範囲32Dよりも広くなることから、刈り取り対象となる植立穀稈や圃場をより照明することができる。
【0048】
左右の第一前照灯31は、両照明範囲31Dによって、機体前方を刈取部10の刈幅の全幅に亘るように配置されている。左右の第一前照灯31によって、機体前方が刈取部10の刈幅の全幅に亘って照明されるため、刈幅内の植立穀稈の生育状態や圃場の状態を視認しやすい。
【0049】
少なくとも第一前照灯31又は第二前照灯32のいずれかによって、分草具12の一部、好ましくは先端部が照明されるため、刈り取り対象である植立穀稈と既刈地との境界や、刈り取り対象である植立穀稈と未刈地の植立穀稈との境界を視認しやすい。
【0050】
〔前照灯カバー〕
図6から図8に示すように、前照灯カバー24は、第一前照灯用開口部25の前方下方に、第一前照灯31の光軸31Cの方向よりも前下がりの第一傾斜面27Aが設けられている。同様に、前照灯カバー24は、第二前照灯用開口部26の前方下方に、第二前照灯32の光軸32Cの方向よりも前下がりの第二傾斜面28Aが設けられている。第一前照灯31及び第二前照灯32の前方において、前下がりの傾斜面を設けたことにより、前照灯カバー24に稈屑や土埃が積もりにくい。第二傾斜面28Aは、第一傾斜面27Aよりも前下がりであるため、第二前照灯32の光軸32Cを、第一前照灯31の光軸31Cよりも下側に向けることができて、第一前照灯31よりも圃場に近い位置にある第二前照灯32によって、しっかりと機体に近い部分を明るく照明できる。
【0051】
前照灯カバー24は、前照灯カバー24における第一前照灯用開口部25の前方上方に、第一前照灯31の投光部、すなわち第一透光カバー部31Bよりも機体前方へ突出する第一庇状部27Bが設けられ、前照灯カバー24における第二前照灯用開口部26の前方上方に、第二前照灯32の投光部、すなわち第二透光カバー部32Bよりも機体前方へ突出する第二庇状部28Bが設けられている。第一庇状部27B及び第二庇状部28Bの存在によって第一前照灯31及び第二前照灯32は前方上方が覆われるため、雨水やサイドカバーについた水分が第一透光カバー部31Bや第二透光カバー部32Bにかかりにくくいため、濡れた第一透光カバー部31Bや第二透光カバー部32Bに穀稈が触れて稈屑や土埃が付着する事態を防止できる。
【0052】
第一庇状部27B及び第二庇状部28Bは、第一庇状部27Bや第二庇状部28Bは、第一前照灯31や第二前照灯32の前方上方を覆って保護しながらも、第一前照灯31や第二前照灯32からの投光を遮ることがないように、機体幅方向の内側部分から外側部分にかけて機体後方かつ上方に向けて延びる形状に構成されている。穀稈は、第一庇状部27B及び第二庇状部28Bに沿って機体後方の上方へとスムーズに案内されるため、脱粒の虞が低減される。
【0053】
さらに、前照灯カバー24は、前照灯カバー24における第一前照灯用開口部25の機体幅方向の内側に、上部カバー22の表面に沿って上下に延びて第一庇状部27Bの機体幅方の内側部分に連なる第一縦壁部27Cが設けられ、前照灯カバー24における第二前照灯用開口部26の機体幅方向の内側に、上部カバー22の表面に沿って上下に延びて第二庇状部28Bの機体幅方の内側部分に連なる第二縦壁部28Cが設けられている。
【0054】
第一前照灯31は、第一傾斜面27Aと第一庇状部27Bと第一縦壁部27Cとに連続的に囲まれ、第二前照灯32は、第二傾斜面28Aと第二庇状部28Bと第二縦壁部28Cとに連続的に囲まれるため、植立穀稈の穂先が接触する虞が低減されている。植立穀稈の穂先は、第一庇状部27B及び第一縦壁部27C、第二庇状部28B及び第二縦壁部28Cに沿って機体後方の上方へとスムーズに案内されるため、脱粒の虞が低減されている。
【0055】
〔前照灯ブラケット〕
図8から図10に示すように、前照灯カバー24や、第一前照灯31及び第二前照灯32は、前照灯ブラケット40を介して刈取フレーム11のブラケットステー17に取り付けられる。
【0056】
前照灯ブラケット40は、第一前照灯31や第二前照灯32を個別に着脱可能なライトステー41,42や、前照灯カバー24が着脱可能なカバーステー43を有する部材である。前照灯ブラケット40、ライトステー41,42及びカバーステー43は、ステンレス鋼のような耐食性のある金属から構成された形材を所定形状に加工することによって形成されている。なお、ライトステー41,42は、第一前照灯31や第二前照灯32の投光の方向調節が可能に支持する構成であってもよい。
【0057】
前照灯カバー24や、第一前照灯31及び第二前照灯32が取り付けられた状態の前照灯ブラケット40を、刈取フレーム11に取り付ける構成であるため、第一前照灯31及び第二前照灯32を配線したまま、上部カバー22のみを着脱することができるように構成されている。
【0058】
なお、前照灯カバー24は、カバー用開口部23の周縁部の裏面に係止可能なフランジ部24Aを有する。前照灯カバー24に被せるように上部カバー22を取り付けると、フランジ部24Aがカバー用開口部23の周縁部の裏面に係止され、前照灯カバー24は、上部カバー22のカバー用開口部23に対して自動的に位置決めされる。前照灯カバー24の位置決めのために螺子を用いる必要がない。
【0059】
なお、カバー用開口部23と前照灯カバー24との間に大きな隙間があると、この隙間から上部カバー22内に穀稈が入る虞があるが、フランジ部24Aを設けたことによりこれを防止することができる。なお、フランジ部24Aは、前照灯カバー24の全周に亘って備えられていてもよいし、一部に備えられていてもよい。
【0060】
上部カバー22は、第一前照灯31及び第二前照灯32が取り付けられた状態のままで着脱できるため、上部カバー22を刈取フレーム11から取り外すと、ライトステー41,42がむき出しになり、第一前照灯31や第二前照灯32を交換することができるため、メンテナンス性が良い。
【0061】
第一前照灯用開口部25の開口寸法及び第二前照灯用開口部26は、第一前照灯31や第二前照灯32の外径寸法よりも大きいように構成されてあり、前照灯カバー24を前照灯ブラケット40に取り付けたままの状態であっても、第一前照灯31や第二前照灯32は個別に着脱することができるように構成されている。第一前照灯31や第二前照灯32の交換作業が容易である。なお、交換作業は、上部カバー22が取り外された状態で行われる。
【0062】
第一前照灯31及び第二前照灯32を刈取部10に取り付ける際には、前照灯ブラケット40のライトステー41,42に第一前照灯31や第二前照灯32を取り付け、その後、カバーステー43に前照灯カバー24を取り付ける。この一体化された前照灯ブラケット40を、刈取フレーム11に設けられたブラケットステー17に取り付け、最後に上部カバー22を取り付ける。分解は逆の手順で行われる。
【0063】
なお、前照灯カバー24に、第一前照灯31及び前記第二前照灯32に並んで、車幅灯や方向指示器が配置されていてもよい。車幅灯や方向指示器も前照灯ブラケット40に支持される。
【0064】
〔別実施形態〕
上述した実施形態においては、第一前照灯31の光軸31Cは、機体前方よりも機体幅方向の内側を向くように構成され、第二前照灯32の光軸32Cは、機体前方よりも機体幅方向の外側を向くように構成されている場合について説明下が、これに限らない。第一前照灯31の光軸31Cは、機体前方よりも機体幅方向の外側を向くように構成され、第二前照灯32の光軸32Cは、機体前方よりも機体幅方向の内側を向くように構成されていてもよい。
【0065】
上述下実施形態においては、第一前照灯31は、第一前照灯31の投光部が第二前照灯32の投光部よりも機体幅方向の内側に位置するように配置されている場合について説明したが、これに限らない。第一前照灯31は、第一前照灯31の投光部が第二前照灯32の投光部よりも機体幅方向の外側に位置するように配置されてもよいし、第一前照灯31の投光部が第二前照灯32の投光部の直上に位置するように配置されてもよい。
【0066】
上述の実施形態においては、第二前照灯32は、第二前照灯32の光軸32Cが第一前照灯31の光軸31Cよりも下側を向くように配置されている場合について説明したが、これに限らない。第一前照灯31が、第一前照灯31の光軸31Cが第二前照灯32の光軸32Cよりも下側を向くように配置されていてもよいし、第一前照灯31の光軸31Cと第二前照灯32の光軸32Cが平行であってもよい。
【0067】
上述の実施形態においては、少なくとも第一前照灯31又は第二前照灯32のいずれかは、少なくとも分草具12の一部を照明するように構成されている場合について説明したが、これに限らない。少なくとも第一前照灯31又は第二前照灯32のいずれかは、少なくとも分草具12の全部を照明してもよいし、第一前照灯31及び第二前照灯32は、分草具12を照明しなくてもよい。
【0068】
上述の実施形態においては、左右の第一前照灯31は、機体前方を刈取部10の刈幅の全幅に亘って照明するように配置されている場合について説明したが、これに限らない。左右の第一前照灯31は、機体前方を刈取部10の刈幅の一部を照明するように配置されていてもよい。
【0069】
上述の実施形態においては、第一前照灯31及び第二前照灯32は、それぞれの透光カバー部31B,32Bが機体前方に露出する状態で配置されている場合について説明したが、これに限らない。第一前照灯31及び第二前照灯32の前面が一つの透光カバー部によって覆われる構成であってもよい。
【0070】
上述した実施形態においては、第一前照灯31及び第二前照灯32が有する光源部はそれぞれLEDモジュールである構成について説明したが、これに限らない。第一前照灯31又は第二前照灯32の少なくともいずれか一方の光源部がハロゲンライトであってもよい。
【0071】
上述した実施形態においては、上部カバー22の膨出部22bは、平面視において内側から外側にかけて機体1の斜め後方に向かう傾斜面を有し、この傾斜面に縦長のカバー用開口部23が設けられている構成について説明したが、これに限らない。上部カバー22は機体1の前方を向いた面と、側方を向いた面を有し、これらの面の角部にカバー用開口部23が設けられていてもよい。また、カバー用開口部23は、上部カバー22に設けられた機体1の前方を向いた面に設けられてもよい。さらに、カバー用開口部23は、上部カバー22に上方を向いて設けられていてもよい。
【0072】
上述した実施形態においては、サイドカバー20は、下部カバー21と、下部カバー21とは別部材の上部カバー22とから構成されていたが、これに限らない。サイドカバー20は下部カバー21と上部カバー22が一体的に構成されていてもよい。
【0073】
上述した実施形態においては、前照灯用開口部25,26の開口寸法は、第一前照灯31及び第二前照灯32の外径寸法よりも大きいように構成されている場合について説明したが、これに限らない。前照灯用開口部25,26の開口寸法が、第一前照灯31及び第二前照灯32の外径寸法より小さくてもよい。
【0074】
上述した実施形態においては、前照灯カバー24は、カバー用開口部23の周縁部の裏面に係止可能なフランジ部24Aを有する場合について説明したが、これに限らない。前照灯カバー24は、フランジ部24Aを有していなくてもよい。
【0075】
上述した実施形態においては、第一透光カバー部31B及び第二透光カバー部32Bは、第一前照灯用開口部25の第一開口縁25A、及び、第二前照灯用開口部26の第二開口縁26Aよりも、光の照射方向の前方に突出するように配置されている場合について説明したが、これに限らない。
【0076】
上述した実施形態においては、前照灯カバー24に第一傾斜面27A及び第二傾斜面28Aが設けられている場合について説明したが、これに限らない。また、第二傾斜面28Aは、第一傾斜面27A及びよりも前下がりである場合について説明したが、これに限らない。これらは第一前照灯31の光軸31C及び第二前照灯32の光軸32Cの方向に応じて適宜設定される。
【0077】
上述した実施形態においては、前照灯カバー24に、機体幅方向の内側部分から外側部分にかけて機体後方かつ上方に向けて延びる形状の第一庇状部27B及び第二庇状部28Bが設けられ場合について説明したが、これに限らない。
【0078】
上述した実施形態においては、前照灯カバー24に第一縦壁部27C及び第二縦壁部28Cが設けられている場合について説明したが、これに限らない。
【0079】
上述した実施形態においては、第一前照灯31及び第二前照灯32の二つのライトユニットを備える場合について説明したが、ライトユニットは、単数、又は三つ以上の複数であってもよい。
【0080】
上述した実施形態は、いずれも本発明の一例であり、該記載により本発明が限定されるものではなく、各部の具体的構成は本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能である。
【符号の説明】
【0081】
1 :機体
10 :刈取部
11 :刈取フレーム
13 :引起装置
20 :サイドカバー
22 :上部カバー
23 :カバー用開口部
24 :前照灯カバー
24A :フランジ部
25 :第一前照灯用開口部
26 :第二前照灯用開口部
40 :前照灯ブラケット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12