(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
さらに、通路の出口端部から、壁長さの10%〜50%の範囲にある深さにわたって伸びる白金族金属を含む酸化触媒ウォッシュコートを有する、請求項1記載の触媒式パティキュレートフィルタ。
選択触媒還元触媒が、Cu、Fe、Co、Ni、La、Ce、Mn、V、Agおよびこれらの組み合わせから選択される金属で促進されたゼオライト骨格材料である、請求項1記載の触媒式パティキュレートフィルタ。
選択触媒還元触媒が、Cu、Feおよびこれらの組み合わせから選択される金属で促進されたCHA骨格のゼオライトである、請求項1記載の触媒式パティキュレートフィルタ。
白金族金属被覆が、アプリケータから、端部プラグ端面および多孔質壁の出口端部表面へと移る時に、白金族金属被覆が、この被覆が多孔質壁の軸長に沿って移行することを防止する粘度を有する、請求項19記載の方法。
さらに、通路の出口端部から、壁長さの10%〜50%の範囲の長さにわたって伸びる白金族金属を含有する酸化触媒ウォッシュコートをウォッシュコートすることを含む、請求項19記載の方法。
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に、触媒物品、排出物処理システムおよび排気ガス処理法に関する。本発明は特に、このような物品、システム、およびディーゼルエンジン排ガスを処理するための方法に関する。
【0002】
背景技術
エンジン排気、特にディーゼルエンジン排気は、異成分から成る混合物であり、この混合物は、気体状の排出物、例えば一酸化炭素(「CO」)、燃焼しなかった炭化水素(「HC」)、および窒素酸化物(「NO
x」)だけでなく、凝縮相物質(液体および固体)、一般的には微粒子または微粒子状物質と呼ばれるものも含有する。排気排出物の規制種は、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NO
x)、炭化水素(HC)および微粒子状物質(PM)を含む。
【0003】
ディーゼルエンジン排気システムには、これらの排気成分の一定量または全てを無害な成分に転化するために、触媒組成物、およびこの触媒組成物が配置される基材がしばしば設けられている。例えば、ディーゼル排気システムは、1種以上のディーゼル酸化触媒、スートフィルタ、およびNO
xを還元するための触媒を有することができる。
【0004】
白金族金属、卑金属およびこれらの組み合わせを含有する酸化触媒が、ディーゼルエンジン排気の処理を容易にするために知られており、この触媒によって、気体状汚染物質であるHCとCOの双方、および微粒子状物質のいくらかの割合の転化が促進され、これらの汚染物質を酸化することにより二酸化炭素と水にする。このような触媒は一般的に、ディーゼル酸化触媒(DOC)と呼ばれるユニットに含まれており、この触媒はディーゼルエンジンの排気内に置かれて排気を処理し、それから大気中に放出する。気体状のHC、COおよび微粒子状物質の転化に加えて、白金族金属を含有する酸化触媒(これは通常、難燃性酸化物担体に配置されている)はまた、窒素酸化物(NO)の、NO
2への酸化を促進する。
【0005】
ディーゼル排気の微粒子状物質全体(TPM)の排出物は、主に3つの成分から構成される。1つの成分は、乾燥した固体の炭素フラクション、または煤煙フラクションである。この乾燥した炭素物質は、ディーゼル排気と一般的に関連する、目に見える煤煙排出物をもたらす。微粒子状物質の第二の成分は、可溶性有機フラクション(「SOF」)である。可溶性有機フラクションは時々、揮発性有機フラクション(「VOF」)として言及され、ここでもこの用語が用いられるだろう。VOFは、ディーゼル排気の温度次第で、ディーゼル排気中で蒸気として、またはアエロゾル(液状凝縮物の微細な液滴)として存在し得る。これは一般的に、52℃という標準的な粒子収集温度で、希釈された排気中では、凝縮液体として存在する(標準測定試験、例えばU.S. Heavy Duty Transient Federal Test Procedureに記載されている)。これらの液体は、2つの供給源から生じる:(1)ピストンが上下する度にエンジンのシリンダ壁から拭き取られる潤滑油、および(2)燃焼していない、または一部燃焼したディーゼル燃料。微粒子状物質の第三の成分は、いわゆる硫酸塩フラクションである。硫酸塩フラクションは、ディーゼル燃料および潤滑油中に存在する少量の硫黄成分から形成される。燃焼の間、ディーゼル燃料および油の硫黄成分は、気体状のSO
2およびSO
3を形成する。排気が冷却されると、SO
3は迅速に水と結合して、硫酸(H
2SO
4)を形成する。硫酸は炭素粒子ともに、凝縮相として集められるアエロゾルを形成するか、または他の微粒子成分上に吸着され、これによってTPMの質量に加わる。
【0006】
微粒子状物質を高度に削減するための用途において鍵となる後処理技術は、ディーゼルパティキュレートフィルタである(DPF)。微粒子状物質をディーゼル排気から除去するために効果的なフィルタ構造は数多く知られており、それは例えばハニカムウォールフローフィルタ、巻取り状または充填状繊維フィルタ、連続気孔発泡体、焼結金属フィルタなどである。しかしながら、以下に記載するセラミックウォールフローフィルタが、最も注目を集めている。このフィルタは、ディーゼル排気から固体状炭素の微粒子状物質を90%超、除去することができる。このフィルタは、排気から粒子を除去するための物理的な構造物であり、蓄積された粒子は、エンジンでフィルタからの背圧を増加させるだろう。このため、蓄積された粒子を連続的に、または周期的にフィルタから燃焼除去して、許容可能な背圧を維持しなければならない。残念ながら炭素煤煙粒子は、酸素リッチ(リーン)な排気条件で燃焼させるためには、500℃を超える温度を必要とする。この温度は、通常ディーゼル排気に存在する温度よりも高い。
【0007】
従って一般的には、フィルタを活性に再生するため、排気温度を上昇させることに労力が注がれている。フィルタと関連する触媒の存在は、フィルタ内におけるCO、HCおよびNO酸化に役立ち、煤煙燃焼率を向上させる。このようにして、触媒式スートフィルタ(CSF)、または触媒式ディーゼルパティキュレートフィルタ(CDPF)は、蓄積された煤煙の活性燃焼とともに、>90%の微粒子状物質削減をもたらすために効果的である。
【0008】
粒子を除去するための別のメカニズムは、排気流中でNO
2を酸化剤として使用することである。こうして、300℃超の温度で酸化剤としてNO
2を用いた酸化によって、微粒子を除去することができる。エンジンからの排気中に既にあるNO
2は、上流でDOC酸化触媒を用いることによりNO(これも排気中にある)を酸化することによって、補うことができる。この受動的な再生メカニズムは、フィルタ中の煤煙担持量をさらに減少させることができ、また活性再生サイクル数を減少させることができる。
【0009】
将来的に世界中で採用される排出物の基準は、ディーゼル排気からのNO
x削減も表明するだろう。欧州では2006年以来、米国では2010年以来、ヘビーデューティ自動車の排出物システムで適用され、実証されたNO
x削減技術は、選択触媒還元(SCR)である。この方法では、通常は卑金属から構成される触媒上でNO
xをアンモニア(NH
3)で還元して窒素(N
2)にする。この技術は、NO
xを90%超、削減することができ、このため意欲的なNO
x削減目標を達成するための最良のアプローチの1つを提示している。自動車適用のためのSCRは、アンモニア供給源として尿素(通常は水溶液中に存在)を使用する。SCRは、排気温度が触媒の活性温度範囲にある限り、NO
xの効率的な転化をもたらす。
【0010】
排気の個別の成分を配するための触媒をそれぞれ含有する別個の基材を、排気システム内に設けることができる一方で、システムのサイズ全体を削減するため、システムの組み立てを容易にするため、そしてシステムのコスト全体を削減するためには、より少ない基材を使用することが望ましい。この目標を達成するための1つのアプローチが、スートフィルタを、NO
xを転化して無害な成分にするために効果的な触媒組成物で被覆することである(「SCR触媒式スートフィルタ」が得られる)。SCR触媒式スートフィルタは、2つの触媒機能を有すると想定される:排気流の微粒子状成分を除去すること、および排気流のNO
x成分を転化して、N
2にすること。
【0011】
NO
x還元目標を達成可能な被覆スートフィルタには、スートフィルタ上にSCR触媒組成物を充分に担持させる必要がある。排気流の特定の有害成分にさらされることにより、組成物の触媒効果が時間とともに次第に失われていくため、SCR触媒組成物の触媒担持量をより多くする必要性が高まる。しかしながら、より高い触媒担持量で被覆されたスートフィルタの製造は、排気システム内において許容できないほど高い背圧につながることがある。従って、ウォールフローフィルタにおいてより高い触媒担持量を可能にし、それでもなお許容可能な背圧を達成する流れ特性を維持するためのフィルタを可能にする被覆技術が、望まれている。
【0012】
ウォールフローフィルタを被覆する際にさらに考えるべき側面は、適切なSCR触媒組成物を選択することである。第一に触媒組成物は、フィルタ再生に特徴的な高温に長くさらされた後であってもSCR触媒活性が維持されるように、耐久性がなければならない。例えば、微粒子状物質の煤煙フラクションの燃焼はしばしば、700℃超の温度を伴う。このような温度によって、一般的に使用される多くのSCR触媒組成物、例えばバナジウムおよびチタンの混合酸化物の触媒効果は下がる。第二に、SCR触媒組成物は好ましくは、充分に幅広い稼動温度を有するため、こうした触媒組成物は、乗用車が稼動する可変温度範囲を調整することができる。300℃を下回る温度は通常、例えば低い担持量条件、またはエンジンスタートアップで起こる。SCR触媒組成物は好ましくは、NO
x削減目標を達成するため、さらにはこれをより低い排気温度で達成するために、排気のNO
x成分の還元を触媒することができる。
【0013】
アンモニアは、SCR触媒組成物で被覆されたフィルタを通り抜ける(slip)ことがあり、このため、このような通り抜けたアンモニア(slipped ammonia)を酸化させるための下流触媒をもたらすことが、しばしば必要となる。白金族金属を含有するアンモニア酸化触媒は、アンモニアを酸化させるために、ウォッシュコートとして、ウォールフローフィルタの出口端部上に置くことができる。ウォールフローフィルタへの被覆は、ウォールフロー基材を垂直に、液体中の固体粒子の触媒スラリー中に含浸することによって適用され、ウォールフローフィルタの壁要素によって担持された(carried)ウォッシュコートが得られる。様々な要因に応じて、ウォッシュコートは壁に侵入する。これはつまり、ウォッシュコートが、壁厚内にある中空領域の少なくとも大部分に侵入しており、かつ壁厚にわたって内部表面上に堆積されていることを意味する。あるいはウォッシュコートは、壁の外部表面上に担持されていてよい。いずれの場合も、ウォールフローモノリスをスラリー中に含浸させた時のスラリーの毛管作用が、ウォールフローフィルタに適用された被覆の長さを厳密に制御することを困難にしている。触媒組成物によってフィルタ全体を被覆すべき場合、これは問題にはならない。しかしながら、2種以上の触媒組成物をウォールフローフィルタに適用する場合、被覆がウォールフローフィルタの端部から伸びる程度に厳密に制御して、触媒成分の否定的な相互作用を最小限にすることが望ましくあり得る。例えば、フィルタの入口から伸びるSCR触媒組成物、およびフィルタの出口端部から伸びる酸化触媒組成物を有するウォールフローフィルタをもたらすことが望ましいことがあり、ここでは、SCR触媒成分と酸化触媒成分との相互作用を最小限にするために、2つの被覆が適用される。
【0014】
ディーゼルエンジンからの一酸化炭素、窒素酸化物、炭化水素および微粒子状物質を、効果的かつ安価なやり方で処理すると同時に、排気システムにおいて必要とされる空間が最小化された触媒物品、方法およびシステムに対する必要性が、当技術分野において存在する。また、異なる被覆組成物の間の否定的な相互作用を最小限にする触媒物品、方法およびシステムを提供する必要性が存在する。
【0015】
発明の概要
様々な実施形態を、以下に列挙する。以下に列挙した実施形態は、以下に列挙したものとしてだけではなく、本発明の範囲に従ってその他の適切な組み合わせで、組み合わせ可能なことが理解されるだろう。
【0016】
本発明の実施形態は、単一の触媒物品を用いて、排気中における主な排出物(すなわち、CO、HC、NO
x、煤煙、NH
3およびH
2S)の1種以上を減少させるための、ディーゼル排気排出物を制御するための触媒式パティキュレートフィルタに関する。幾つかの実施形態において、本開示は、マルチゾーン触媒物品、マルチゾーン触媒物品の製造方法、およびリーン燃焼(例えばディーゼル)エンジン排気流における排出物を、マルチゾーン触媒物品により制御するための方法をもたらす。幾つかの実施形態では、単一のマルチゾーン触媒物品を用いて、ディーゼルエンジン排気を効果的に処理可能な排出物処理システムを、もたらすことができる。
【0017】
第一の実施形態は、
長手方向に伸びて、入口端部から出口端部へと伸びる平行な複数の通路を形成する複数の多孔質壁、ここで多数の通路が、入口端部で開いており、かつ出口端部で出口プラグにより閉じられた入口通路であり、多数の通路が、入口端部で入口プラグにより閉じられ、かつ出口端部で開いている出口通路であり、出口プラグは、深さおよび出口プラグ端面を有し、出口端部は、出口プラグおよび出口プラグ端面を含む出口通路の出口端部表面を規定し、
パティキュレートフィルタの多孔質壁に適用された選択触媒還元(SCR)触媒、および
出口端部表面およびプラグの出口端面を覆う白金族金属(PGM)端部被覆、白金族金属被覆(PGM)端部は、出口端部表面から出口プラグの深さの1.5倍に満たない距離で伸び、白金族金属(PGM)の局所的な担持量を、約20〜約200g/ft
3の範囲で有する、
を有する触媒式パティキュレートフィルタに関する。第二の実施形態において、第一の実施形態の触媒式パティキュレートフィルタは、出口端部におけるプラグが、約3mm〜約8mmの範囲の長さを有するように変形されている。
【0018】
第三の実施形態において、第一および第二の実施形態の触媒式パティキュレートフィルタは、白金族金属端部被覆が、アプリケータによって出口端部表面およびプラグの出口端面のみに適用された端面であるように変形されている。第四の実施形態において、第三の実施形態の触媒式パティキュレートフィルタは、アプリケータが、刷毛、ローラ、スキージおよびスタンプパッドから成る群から選択されるように変形されている。第五の実施形態において、第二および第三の実施形態の触媒式パティキュレートフィルタは、アプリケータが、ローラであるように変形されている。
【0019】
第六の実施形態において、第一〜第五の実施形態の触媒式パティキュレートフィルタは、白金族金属端部被覆が、出口端部表面から出口プラグの深さの距離と同じまたはそれに満たない距離で伸びるように変形されている。第七の実施形態において、第一〜第六の実施形態の触媒式パティキュレートフィルタは、白金族金属端部被覆の担持量が、約20g/ft
3〜約150g/ft
3の範囲にあるように変形されている。第八の実施形態において、第一〜第七の実施形態の触媒式パティキュレートフィルタは、端部被覆のための白金族金属が、パラジウムであるように変形されている。
【0020】
第九の実施形態において、第一〜第八の実施形態の触媒式パティキュレートフィルタは、フィルタがさらに、通路の出口端部から、壁長さの約10%超〜約50%の範囲にある深さにわたって伸びる白金族金属を含む酸化触媒ウォッシュコートを有するように変形されている。第十の実施形態において、第一〜第九の実施形態の触媒式パティキュレートフィルタは、選択触媒還元触媒被覆が、多孔質壁の長さ全体に伸びるように変形されている。
【0021】
第十一の実施形態において、第一〜第十の実施形態の触媒式パティキュレートフィルタは、選択触媒還元触媒被覆が、多孔質壁に侵入するように変形されている。第十二の実施形態において、第一〜第十一の実施形態の触媒式パティキュレートフィルタは、選択触媒還元触媒が、酸化触媒ウォッシュコートと重なるように変形されている。第十三の実施形態において、第一〜第十二の実施形態の触媒式パティキュレートフィルタは、酸化触媒ウォッシュコートが、選択触媒還元触媒と重なるように変形されている。
【0022】
第十四の実施形態において、第一〜第十三の実施形態の触媒式パティキュレートフィルタは、選択触媒還元触媒が、卑金属で促進されたモレキュラーシーブを有するように変形されている。第十五の実施形態において、第一〜第十四の実施形態の触媒式パティキュレートフィルタは、選択触媒還元触媒が、Cu、Fe、Co、Ni、La、Ce、Mn、V、Agおよびこれらの組み合わせから選択される金属で促進されたゼオライト骨格材料であるように変形されている。第十六の実施形態において、第一〜第十五の実施形態の触媒式パティキュレートフィルタは、選択触媒還元触媒が、Cu、Feおよびこれらの組み合わせから選択される金属で促進されたCHA骨格のゼオライトであるように変形されている。第十七の実施形態において、第一〜第十六の実施形態の触媒式パティキュレートフィルタは、白金族金属端部被覆が、触媒式パティキュレートフィルタ上にある白金族金属被覆のみであるように変形されている。
【0023】
第十八の実施形態において、リーン燃焼エンジン排気システムは、第一〜第十七の実施形態のいずれかの触媒式パティキュレートフィルタから上流にディーゼル酸化触媒を有する。第十九の実施形態において、リーン燃焼エンジン排気システムは、第一〜第十七の実施形態のいずれかの触媒式パティキュレートフィルタから上流にリーンNO
xトラップを有する。
【0024】
第二十の実施形態において、触媒式スートフィルタを製造する方法は、
長手方向に伸びて、入口端部から出口端部へと伸びる平行な複数の通路を形成する複数の多孔質壁を含む触媒式スートフィルタを被覆する工程、ここで多数の通路が、入口端部で開いており、かつ出口端部で出口プラグにより閉じられた入口通路であり、多数の通路が、入口端部で入口プラグにより閉じられ、かつ出口端部で開いている出口通路であり、出口プラグは、深さおよび出口プラグ端面を有し、出口端部は、出口プラグ端面を含む出口端部表面を規定し、ここで触媒式スートフィルタを被覆することは、選択触媒還元触媒ウォッシュコートをパティキュレートフィルタの多孔質壁上にウォッシュコートすることを含み、および
出口プラグ端面および出口端部表面を、白金族金属被覆を含有するアプリケータと接触させる工程、これによって白金族金属被覆が、アプリケータから出口プラグ端面および出口端部表面に移る、
を有する。
【0025】
第二十一の実施形態において、第二十の実施形態は、白金族金属被覆が、出口端部表面から出口プラグの深さの1.5倍に満たない距離で伸びるように変形されている。第二十二の実施形態において、第二十の実施形態は、白金族金属被覆が、出口プラグの深さと同じまたはこれに満たない距離で伸びるように変形されている。第二十三の実施形態において、第二十〜第二十二の実施形態は、白金族金属被覆がアプリケータから、端部プラグ端面および多孔質壁の出口端部表面へと移る時に、白金族金属被覆が、この被覆が多孔質壁の軸長に沿って移行することを防止する粘度を有するように変形されている。第二十四の実施形態において、第二十〜第二十三の実施形態は、アプリケータが、刷毛、ローラ、スキージおよびスタンプパッドから成る群から選択されるように変形されている。第二十五の実施形態において、第二十〜第二十四の実施形態は、アプリケータがローラであるように変形されている。第二十六の実施形態において、第二十〜第二十五の実施形態は、前記方法がさらに、通路の出口端部から、壁長さの約10%超〜約50%の範囲の長さにわたって伸びる白金族金属を含有する酸化触媒ウォッシュコートをウォッシュコートすることを含むように変形されている。
【0026】
本発明の実施形態のさらなる特徴、その性質および様々な利点は、以下の詳細な説明を考慮し、添付の図面との関連でより明らかになるが、これらは出願人が考える最良の形態の説明に過ぎず、ここで同様の参照番号は、全体にわたって同様の部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、入口端部および出口端部を有するウォールフローフィルタ基材の実施形態の外観を示す。
【
図2】
図2は、ウォールフローフィルタ基材の入口端部から出口端部へと長手方向に伸びる複数の多孔質壁の例示的な実施形態の断面図を示す。
【
図3】
図3は、複数の被覆によって形成された複数のゾーンを有するウォールフローフィルタ基材の複数の多孔質壁の別の例示的な実施形態の拡大断面図を示す。
【
図4】
図4は、複数の被覆によって形成された複数のゾーンを有するウォールフローフィルタ基材の複数の多孔質壁の別の例示的な実施形態の拡大断面図を示す。
【
図5】
図5は、排出物処理システムおよび尿素注入器を有するエンジンシステムの例示的な実施形態を示す。
【
図6】
図6は、排出物処理システム、尿素注入器およびその他のエンジン構成要素を有するエンジンシステムの別の例示的な実施形態を示す。
【0028】
発明の詳細な説明
本発明の幾つかの例示的な実施形態を記載する前に、本発明が、以下の記載で規定する構成または方法工程の詳細に限定されないことが理解されるべきである。本発明は、別の実施形態で、また様々なやり方で実行または行うことができる。
【0029】
本明細書を通じて、「1つの実施形態」、「特定の実施形態」、「様々な実施形態」、「1つ以上の実施形態」または「ある実施形態」という言葉は、実施形態との関連で記載された特定の特徴、構造、材料または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれ得るということを意味する。よって、本明細書を通じて様々な場所に現れる表現、例えば「1つ以上の実施形態で」、「特定の実施形態で」、「様々な実施形態で」、「1つの実施形態で」または「ある実施形態で」は、本発明の同一の実施形態を指すとは限らない。さらに、特定の特徴、構造、材料または特性は、1つ以上の実施形態においてあらゆる適切なやり方で組み合わせることができる。
【0030】
様々な実施形態において、ここに開示する被覆されたフィルタ基材は、「ゾーン分け」されている、例えば「マルチゾーン化」されている。これらの用語は、少なくとも2つの異なる触媒組成物が、特定の領域(ゾーン)に(例えば基材の長さに沿って)配置されている基材を説明すると理解される。複数のゾーンは、一般的には複数の被覆によって形成され、ここで触媒被覆は、基材の多孔質壁の表面上に、かつ/または基材の多孔質壁の細孔内にあり得る。このようなゾーンを独立して変更して、各ゾーン内で1つ以上の特定の触媒作用をもたらすことができる。被覆された基材の入口端部から出口端部へと通過する排気ガス流は、被覆された基材の1つのゾーンからもう1つのゾーンへと通る際に、異なる触媒組成物(例えば層)、または触媒組成物の異なる組み合わせと遭遇する。「第一」ゾーンは通常、基材の入口に最も近いゾーンであり、さらなるゾーン(例えば第二、第三など)は、その下流にある。
【0031】
ここで使用するように「侵入する(permeate)」という用語は、フィルタ基材の多孔質壁へのSCR触媒および/または酸化触媒の分散を記載するために使用する場合、特定の組成物が、壁厚内にある中空領域の少なくとも大部分に入り込み(penetrate)、かつ壁厚にわたって内部表面上に堆積されていることを意味する。このようにして材料は、フィルタの壁全体に分散されている。
【0032】
ここで使用するように「局所的な担持量(local loading)」という用語は、多孔質壁内または多孔質壁上に存在する触媒材料(例えば、PGM、SCR触媒、または酸化触媒)の量を記載するために使用する場合、特定のゾーンまたは複数のゾーン内にある壁上に堆積された触媒材料の平均量を意味する。すなわち、示された担持量は、基材の長さ全体にわたって平均化されていない。
【0033】
ここで使用するように「触媒材料担持量」とは、触媒物品の壁上にかつ/またはその中に配置された1種以上の触媒活性成分を含有する材料の質量を言い、ここで触媒活性成分は、白金族金属(例えばPt、Pd、Rh)、および/または遷移金属(例えばCu、Fe、Co、Ni、La、V、Mo、W、Mn、Ce、Ag)であり得る。触媒材料はさらに、担体材料(この上に(複数の)触媒活性成分を分散させ、かつ/またはその中に(複数の)触媒活性成分を含浸させる)を含有することができ、ここで担体材料は、アルミナ、チタニア、ジルコニア、シリカ、シリカ/アルミナ、またはこれらの組み合わせであり得る。
【0034】
ここで使用するように、ウォッシュコート担持量はg/in
3で、モノリス基材の単位体積当たりについて、全てのウォッシュコート成分(すなわち、PGM、耐火性金属酸化物担体、ゼオライト、卑金属、OSCなど)の合計質量として規定される。PGM担持量は、g/ft
3で、モノリス基材の単位体積当たりについて、触媒における全てのPGM金属(例えばPt+Pd+Rh)の合計質量として規定される。従って、PGMを使用するTWC、DOC、CSFおよびLNT触媒は、ウォッシュコート担持量およびPGM担持量の両方によって独自に記載することができ、その一方でPGM成分を有さないSCR触媒は、ウォッシュコート担持量のみによって記載することができる。SCR触媒材料とPGMの両方を有するAMO
x触媒は、両方の基準によって記載することができる。ここで使用するように、PGM触媒について「担持量(loading)」とは、ウォッシュコートが適用された後のフィルタ基材の(複数の)多孔質壁の内部表面および外部表面に付着したPGMの実際の質量であり、これに対してSCR触媒材料について「担持量」とは、ウォッシュコートが適用された後のフィルタ基材の(複数の)多孔質壁の内部表面および外部表面に付着した金属促進剤とモレキュラーシーブ材料とを組み合わせた実際の質量である。加えて、局所化されたPGMまたはウォッシュコート担持量は、特定の触媒ゾーンにおける触媒成分の質量/体積を具体的に記載するために使用することができる。
【0035】
1つ以上の実施形態において、PGM端部被覆は、出口端部表面およびウォールフローフィルタの出口プラグの出口端面を覆う。ここで使用するように「白金族金属(PGM)」とは、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、オスミウムおよびイリジウム、またはこれらの組み合わせ、およびこれらの酸化物を言う。
【0036】
1つ以上の実施形態において、PGM端部被覆は、出口端部表面から出口プラグの深さの1.5倍に満たない距離で伸びる。ここで使用する深さとは、出口プラグが基材(フィルタ)の通路内へと突出する距離である。すなわち、出口プラグの出口端面から、(フィルタ内にある)出口プラグの反対側の端部への距離である。1つ以上の実施形態によれば、出口プラグは、3mm〜8mmの範囲の深さを有し、3mm、4mm、5mm、6mm、7mmおよび8mmの深さを含むことができる。1つ以上の実施形態においてPGM端部被覆は、約20〜約200g/ft
3の範囲の局所的な担持量で存在する。1つ以上の実施形態において、白金族金属端部被覆は、約25〜約200g/ft
3、約30〜約200g/ft
3、約35〜約200g/ft
3、約40〜約200g/ft
3、約45〜約200g/ft
3、または約50〜約200g/ft
3の範囲の担持量で存在する。
【0037】
1つ以上の実施形態によれば、このようなPGM端部被覆がウォールフローフィルタである場合、このフィルタはまた、選択触媒還元(SCR)触媒によって触媒化されている。1つ以上の実施形態において、PGM被覆のペーストを適用するためのアプリケータによりPGM端部被覆を厳密に適用することによって、被覆が、出口端部からウォールフローフィルタの多孔質壁に沿って軸方向に伸びることが制限または防止される。このため、SCR触媒組成物とPGM端部被覆との間で重複部および/または接触部が回避され、SCR触媒組成物とPGM触媒組成物との間での否定的な相互作用が回避される。1つ以上の実施形態において、PGM端部被覆は、アプリケータによって出口端部表面およびプラグの出口端面にのみ適用される端面である。特定の実施形態においてアプリケータは、刷毛、ローラ、スキージまたはスタンプパッドであり得る。極めて特定の実施形態において、アプリケータはローラアプリケータである。適切なローラアプリケータは、塗布で使用するローラに似た構成を有することができる。
【0038】
1つ以上の実施形態において、ローラアプリケータは、円筒形芯部に固定されたパイル繊維カバーを有する円筒形の芯部を有することができる。あるいは、ローラアプリケータの円筒形芯部は、発泡ラバーから構築されていてよい。ローラは、材料(すなわち、PGM触媒組成物)をローラからウォールフローフィルタの端面へと移すために使用可能なことが評価されるだろう。パイル繊維を備える円筒形芯部を有するローラについては、パイル繊維の毛羽長さは、PGM被覆が、出口端面からウォールフローフィルタに沿って軸方向に伸びるであろう深さを特定することができる。ローラにおけるパイル繊維のより長い毛羽長さが、ウォールフローフィルタ内へとより深く伸びる白金族金属被覆をもたらすであろうことが評価されるだろう。同様に、発泡ラバーローラを使用する場合、より軟らかい発泡ラバーは、白金族金属をフィルタの出口端部に適用する際にローラにより高い圧力をかけることによって、出口端部から壁内へと、被覆をより深く入り込ませることができる。
【0039】
PGM端部被覆がフィルタ内へと出口端面から軸方向に伸びる深さの程度を変更可能な別のやり方は、フィルタの出口端部に適用する際に、PGM端部被覆の粘度を変えることである。一般的に、PGM端部被覆が毛管作用によって多孔質フィルタ壁に入り込むことを最小限にするまたは防止するために、PGM被覆は、例えばディップコートによりウォッシュコートを適用するために使用されるスラリーと比べて、比較的高い粘度を有するべきである。ペーストの粘度は、フィルタの多孔質壁におけるPGM端部被覆の毛管移動を最小限にするまたは排除することが望ましい。
【0040】
1つ以上の実施形態において、フィルタ内に含まれるSCR触媒および/または他の触媒材料(例えば酸化触媒)は(以下でより詳細に説明する)、多孔質フィルタ壁の表面上に実質的に残り得る。ここで使用するように、「実質的に表面上に」という用語は、多孔質壁上にあるSCR触媒および/または酸化触媒の分散を記載するために使用する場合、特定の組成物の触媒粒子の少なくとも大部分が、壁厚内にある領域に入り込まず、かつ壁厚にわたって内部表面上に堆積していることを意味する。その代わり、触媒材料は、壁の外部表面上に堆積されており、触媒粒子の少数派は、約50%以下、壁厚内の中空領域内に侵入するか、または約33%以下、壁厚内の中空領域内に入り込むか、または約10%以下、壁厚内の中空領域内に入り込む。1つ以上の実施形態において、入り込み深さ(penetration depth)は、別個のウォッシュコート段階で適用されるフィルタ背圧および触媒成分との相互作用を最適化するために変えることができ、ここでSCR触媒および/または酸化触媒の入り込み深さは、多孔質壁厚の約5%〜約50%の範囲、または約10%〜約40%の範囲、または約5%〜約20%の範囲、または約20%〜約35%の範囲にあり得る。
【0041】
幾つかの競合反応についてバランスを取るという問題には、排気流において触媒材料および成分を賢明に選択および配置することによって取り組むことができ、ここで微粒子状物質(PM)は、多孔質壁パティキュレートフィルタの使用によって削減することができ、窒素酸化物(NO
x)は、還元剤(例えば尿素、NH
3)を用いた選択触媒還元(SCR)触媒によって削減することができ、アンモニアスリップ(ammonia slip)は、アンモニア酸化触媒(AMO
x)(ここで開示するシステム内に任意で含まれていてよい)によって削減することができる。本発明の特定の原理および実施形態は一般的に、マルチゾーン触媒式フィルタ物品、マルチゾーン触媒式フィルタ物品の製造方法、ならびにガソリンおよびディーゼルエンジン排気流における排出物をマルチゾーン触媒式フィルタ物品により制御するための方法に関し、ここでは様々な実施形態の排出物処理システムが、ディーゼルエンジン排気を一つのマルチゾーン触媒式フィルタ物品によって効果的に処理する。
【0042】
煤煙を除去するために、マルチゾーン触媒式フィルタ物品は、高いろ過性能を有する。フィルタ上にある触媒被覆について、考慮すべき2つの重要事項は、背圧の最小化と、フィルタ内/フィルタ上に配置された触媒の周囲で排気が迂回することを防止することである。背圧の最小化は、燃料の節約、および場合によってはエンジン寿命にも直接つながる。NH
3によりNO
xを、そしてO
2によりCOおよびHCを除去するための、別個のSCR触媒材料および酸化触媒材料を使用するマルチゾーン触媒式フィルタ物品について、排気はまず、SCR触媒(すなわち「第一ゾーン」として)を通過し、それから酸化触媒(すなわち「第二ゾーン」として)にわたって通過する。排気がSCR触媒を迂回し、まず酸化機能にさらされる場合、還元剤(例えばNH
3)は酸化されてNO
xになり、還元剤としてNH
3が添加される前に、触媒に入った量よりも多いNO
xが放出される点まで、NO
x低減機能が損なわれる。
【0043】
ここに開示するように、NO
x削減および微粒子除去機能を、1つの触媒物品に統合することは、SCR触媒組成物で被覆されたウォールフロー基材を使用することによって達成される。特に、SCR触媒組成物をウォールフロー基材に適用して、高いろ過効率が必要とされる適用において使用可能な基材を形成する独特な方法が、ここに記載されている。例えば、この方法によって形成される基材は、本発明の実施形態の排出物処理システムにおいて、排気ガスから微粒子状物質を効果的に除去するために適している(例えば80%超、または90%超、または99%超)。ここに開示された被覆法によって、排出物処理システムに搭載する際に、ウォールフロー基材を、被覆された物品にわたり過剰な背圧を引き起こすことなく、SCR触媒の実用レベルで担持することが可能になる。1つ以上の実施形態においてSCR触媒は、フィルタの壁にわたって、全長に沿って配置されており、壁の断面全体に侵入している。これによってSCR触媒は、全てのフィルタ細孔に侵入することができ、最大フィルタ体積にわたって広がることができ、これによって背圧が最小化され、SCR触媒に対する迂回が起こらないことが保証される。
【0044】
1つ以上の実施形態では、白金族金属の端部被覆に加えて、酸化触媒のウォッシュコートが、フィルタの壁にわたって、フィルタの長さの少なくとも一部に沿って分散されており、壁の断面全体に侵入している。これによって酸化触媒は、フィルタ細孔に侵入することができ、最大フィルタ体積にわたって広がることができ、これによって背圧が最小化され、酸化触媒に対する迂回が起こらないことが保証される。
【0045】
1つ以上の実施形態において酸化触媒は、フィルタの壁にわたって、フィルタの長さの少なくとも一部に沿って分散され、ここで酸化触媒は、壁の断面全体に侵入しており、酸化触媒は、フィルタの壁の表面上で、フィルタの長さの少なくとも一部に沿って分散され、ここで酸化触媒は、壁の断面全体に侵入していない。これによって酸化触媒の大部分は、主にフィルタ表面上に存在し、触媒粒子の少数派は、フィルタ壁の長さの一部に沿って、約50%以下、壁厚内に入り込むか、または約33%以下、壁厚内に入り込むか、または約10%以下、壁厚内に入り込む。
【0046】
様々な実施形態において、フィルタの多孔質壁の長さに沿って軸方向に観察した場合、ここに開示する触媒式フィルタの異なるゾーンは、触媒被覆の組成における変化、触媒被覆の担持量における変化、またはこれらの両方によって区別される。
【0047】
1つ以上の実施形態において酸化触媒(「第二ゾーン」としての)は、(複数の)出口流路の壁の上部に分散されている。幾つかの実施形態において酸化触媒は、壁の上部で、壁全体に分散されたSCR触媒(「第一ゾーン」としての)の上方で層を形成する。酸化触媒により、幾つかのガス通路は、そのすぐ下にある壁にわたって通ることができるが、その条件は、酸化触媒と交わるガスより前に、NO
xを除去するため、壁内に充分なSCR触媒があることである。
【0048】
本発明の1つ以上の実施形態は、長手方向に伸びる多孔質壁によって形成された長手方向に伸びる複数の通路を有する触媒式パティキュレートフィルタに関し、この多孔質壁は通路と、入口端部および出口端部との間に伸びる軸長さとを区分けし、かつ規定する。この通路は、入口端部で開いており、かつ出口端部で閉じられた入口通路と、入口端部で閉じられており、かつ出口端部で開いている出口通路とを有する。ここで使用するように、「入口端部」と「出口端部」という用語は、触媒物品を通じた排気ガスの経路について述べることが意図されており、かつ受け入れられ、ここで未処理の排気ガスは、出口端部で触媒物品内を通過し、処理された排気ガスは、触媒物品の出口端部から出る。様々な実施形態において触媒物品の出口端部は、入口端部とは反対側にある。
【0049】
様々な実施形態において、SCR触媒組成物は、ウォールフローフィルタの多孔質壁内に、かつ/または入口端部から、ウォールフローフィルタの全軸長さ未満に伸びる入口通路の壁上に配置されていてよく、ここでSCR触媒組成物はモレキュラーシーブおよび遷移金属を有し、PGMを含有する酸化触媒は、ウォールフローフィルタの多孔質壁内におよび/または出口端部から、ウォールフローフィルタの全軸長さ未満に伸びる出口通路の壁上に配置されている。1つ以上の実施形態において酸化触媒の一部は、フィルタ壁内に侵入することができ、SCR触媒と混じり合っていてよい。幾つかの実施形態において、入口流路または出口流路に適用された触媒は、入口流路または出口流路内で、入口プラグまたは出口プラグの上方に薄いウォッシュコート層を形成することができる。
【0050】
本発明の原理および実施形態は、多孔質壁と、多孔質壁の長さに沿って少なくとも3つの触媒ゾーンとを有する基材を備える触媒式パティキュレートフィルタに関し、ここで少なくとも3つの触媒ゾーンはそれぞれ、第一のSCR触媒、酸化触媒(例えばPGM触媒)および第二のSCR触媒を有することができる。
【0051】
本発明の原理および実施形態はまた一般的に、リーン燃焼エンジンからの排気ガスを減少させる方法に関し、ここで排気ガスは、ここに記載する触媒式パティキュレートフィルタの実施形態を通じて流れ、ここでCO、HC、NO
x、煤煙、NH
3およびH
2Sのうち少なくとも5種、好ましくはCO、HC、NO
x、煤煙、NH
3およびH
2Sの6種全てが、触媒式パティキュレートフィルタによって、排気ガスから部分的に除去される。本発明の原理および実施形態はまた一般的に、NO
x削減および微粒子除去機能を、1つの触媒物品に統合することに関し、これはSCR触媒組成物で被覆されたウォールフロー基材を使用することによって達成される。
【0052】
パティキュレートフィルタ
1つ以上の実施形態において、パティキュレートフィルタは、長手方向に伸びて、入口端部から出口端部へと伸びる平行な複数の通路を形成する長さを有する複数の多孔質壁を有し、ここで多数の通路は、入口端部で開いており、かつ出口端部で閉じられた入口通路であり、入口通路とは異なる多数の通路は、入口端部で閉じられ、かつ出口端部で開いている出口通路である。様々な実施形態において、これらの通路は、プラグで閉じられており、ここでプラグは、約1/4’’の長さ(およびフィルタとの関連で記載する場合には、相応する「深さ」)を有することができる。開口面積率(open frontal area)は、表面積の50%〜85%を有することができ、セルの壁厚さは4〜20ミルであり、ここで1ミルは、0.001インチである。1つ以上の実施形態において、パティキュレートフィルタは、ガスが入口通路へと入ることができる入口端部、およびガスが出口通路を出ることができる出口端部を有し、ここでガスは、平行な通路を形成する多孔質壁を通って移動することにより、入口通路から出口通路へと通過する。
【0053】
1つ以上の実施形態において多孔質壁は、約40%〜約75%の範囲、または約40%〜約60%の範囲、または約50%〜約70%の範囲、または約50%〜約65%の範囲、または約60%〜約70%の範囲、または約55%〜約65%の範囲の多孔性を有する。様々な実施形態において多孔質壁は、約60%〜約65%の範囲にある多孔性を有する。1つ以上の実施形態において多孔質壁の平均細孔サイズは、約10μm〜約30μm、約10μm〜約25μm、または約20μm〜約25μmの範囲にある。様々な実施形態において多孔質壁の平均細孔サイズは、約15μm〜約25μmの範囲にある。
【0054】
様々な実施形態において、入口端部または出口端部「から伸びる」被覆とは、被覆が、壁の一方の端部で始まり、反対側の端部に向かって壁長さに沿って進むことを示す。またはここで、例えば表面上にある被覆の特徴は、実際の入口開口部からの距離で始まることができ、入口端部または出口端部「から伸びる」という被覆特徴は、被覆特徴が壁長さに沿って、反対側の端部に向かって進むことを示す。例えば、第一ゾーンと第三ゾーンとの間にある第二ゾーンは、入口端部または出口端部からの壁長さのパーセンテージにわたって伸びるが、入口端部または出口端部では始まらない、表面上にある被覆を含むことができ、被覆が伸びる方向を示すことができる。
【0055】
選択触媒還元(SCR)触媒
1つ以上の実施形態においてSCR触媒は、モレキュラーシーブを含有する。様々な実施形態においてモレキュラーシーブは、ゼオライト骨格を有することができ、ゼオライト骨格は、12以下の環サイズを有することができる。1つ以上の実施形態において、ゼオライト骨格材料は、二重6員環(d6r)単位を有する。1つ以上の実施形態においてゼオライト骨格材料は、AEI、AFT、AFX、CHA、EAB、EMT、ERI、FAU、GME、JSR、KFI、LEV、LTL、LTN、MOZ、MSO、MWW、OFF、SAS、SAT、SAV、SBS、SBT、SFW、SSF、SZR、TSC、WEN、およびこれらの組み合わせから選択されていてよい。様々な実施形態においてゼオライト骨格材料は、AEI、CHA、AFX、ERI、KFI、LEV、およびこれらの組み合わせから選択されていてよい。様々な実施形態においてゼオライト骨格材料は、AEI、CHA、およびAFXから選択されていてよい。様々な実施形態においてゼオライト骨格材料は、CHAである。
【0056】
様々な実施形態において、SCR触媒はさらに、金属(これは卑金属であり得る)を含有する。様々な実施形態においてSCR触媒は、Cu、Fe、Co、Ni、La、Ce、Mn、V、Agおよびこれらの組み合わせから選択される金属によって促進されている。様々な実施形態においてSCR触媒は、Cu、Fe、Agおよびこれらの組み合わせから選択される金属によって促進されている。様々な実施形態において選択触媒還元触媒は、Cuおよび/またはFeによって促進されている。
【0057】
1つ以上の実施形態においてゼオライト骨格材料は、銅または鉄で促進されたCHAである。1つ以上の実施形態において、銅または鉄で促進されたCHA構造型モレキュラーシーブを、アルミナおよび/またはシリカ/アルミナ粒子で含浸された複数の白金族金属と混合して、スラリーを形成することができる。
【0058】
1つ以上の実施形態において、SCR触媒は、第一の担持量(例えば入口におけるゾーンでの)、および任意の第二の担持量(例えばここでSCR触媒は、PGMと混合されている、および/または出口におけるゾーンで)で存在していてよく、ここで第一の担持量は、約0.5g/in
3〜約3g/in
3の範囲にあってよく、第二の担持量は、約0.5g/in
3〜約2.5g/in
3の範囲にあってよく、ここで第二の担持量は、第一の担持量と同じであるか、または異なっていてよい。様々な実施形態において、重なるゾーンにおいてあり得る担持量は、約1.0g/in
3〜約5.0g/in
3の範囲にあり得る。
【0059】
SCR触媒の非限定的な例は、約10〜約100、特に約10〜約75、さらに約10〜約60の範囲にあるシリカ対アルミナのモル比の値を有する銅で促進されたCHAゼオライト骨格材料である。様々な実施形態において、少なくとも約0.5g/in
3のSCR組成物、特に約1.0〜約2.0g/in
3のSCR組成物を、フィルタの多孔質壁上に配置することができる。様々な実施形態において、第二触媒ゾーンにおけるSCR触媒の第一の担持量は、約0.5g/in
3〜約2g/in
3の範囲にあり得る。
【0060】
酸化触媒
本発明の原理および実施形態は、触媒式パティキュレートフィルタの少なくとも1つのゾーン上/その中に配置されたPGMを含有する酸化触媒に関する。1つ以上の実施形態において、酸化触媒のPGMは、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、オスミウムおよびイリジウム、またはこれらの組み合わせから選択されていてよい。様々な実施形態において、酸化触媒のPGMは、白金、パラジウム、またはこれらの組み合わせから選択されていてよい。
【0061】
1つ以上の実施形態において酸化触媒は、複数の粒子上にある少なくとも1種の白金族金属を含有し、酸化触媒の複数の粒子は、アルミナ、チタニア、ジルコニア、シリカ、シリカ/アルミナの組成物、またはこれらの組み合わせを有することができる。1つ以上の実施形態においてPGMは、アルミナ、チタニア、ジルコニア、シリカ、および/またはシリカ/アルミナ粒子内に、インシピエントウェットネス(incipient wetness)技術によって含浸されていてよく、続いて400℃〜600℃で熱処理される。様々な実施形態において、酸化触媒スラリーが侵入する多孔質壁の長さ上へのPGMの担持量は、約0.1g/ft
3〜約50g/ft
3の範囲にある。様々な実施形態において、スラリーが侵入する多孔質壁の長さ上へのPGMの担持量は、約0.1g/ft
3〜約50g/ft
3の範囲、または約1g/ft
3〜約50g/ft
3の範囲にある。1つ以上の実施形態において、第二触媒ゾーンにおけるPGM担持量は、約0.1g/ft
3〜約50g/ft
3の範囲、または約1g/ft
3〜約50g/ft
3の範囲にあり得る。
【0062】
1つ以上の実施形態において酸化触媒は、D90<3ミクロン、またはD90<5ミクロン、またはD90<10ミクロン、またはD90≒5〜7ミクロンを有するPGMスラリーである。様々な実施形態において、銅または鉄で促進されたCHA構造型モレキュラーシーブは、酸化触媒スラリーと混合されていてよい。
【0063】
PGM端部被覆
1つ以上の実施形態において、出口端部表面およびウォールフローフィルタプラグの出口端面を覆う白金族金属端部被覆をもたらすことができ、この被覆は、出口端部表面から出口プラグの長さの1.5倍に満たない距離で伸び、かつ20〜200g/ft
3の範囲の局所的な白金族金属担持量を有する。1つ以上の実施形態において、白金族金属端部被覆は、被覆を移すためのアプリケータを用いてPGMを端面塗布することにより、出口端部表面およびプラグの出口端面にのみ適用される。1つ以上の実施形態によれば、アプリケータは、刷毛、ローラ、スキージまたはスタンプパッドから選択される。1つ以上の実施形態によれば、PGM端部被覆は、ウォッシュコートを適用するために用いられる従来のスラリーよりも高い粘度を有する被覆として適用される。1つ以上の実施形態において、PGM端部被覆は、適用される時に、被覆が、フィルタの多孔質壁に沿って軸方向に移行することを防止する粘度でペーストの粘稠度を有する。
【0064】
製造方法
本発明の原理および実施形態は、少なくとも2つの触媒ゾーンまたは少なくとも3つの触媒ゾーンを有する触媒式パティキュレートフィルタの製造方法にも関し、ここで触媒ゾーンはそれぞれ、少なくとも2つまたは少なくとも3つの触媒被覆を用いて形成されている。
【0065】
1つ以上の実施形態において酸化触媒は、出口端部とは反対側の入口端部にあるプラグによって閉じられた複数の多孔質壁によって形成された複数の平行な通路の出口端部内へと導入することができ、ここで酸化触媒の粒子は、多孔質壁にわたって侵入しており、ここで酸化触媒が侵入する多孔質壁の長さは、通路の出口端部から伸びる壁長さの約10〜約80%の範囲、または約10%〜約70%の範囲、または約60%〜約70%の範囲にある。
【0066】
1つ以上の実施形態において、複数の粒子を含有するSCR触媒は、入口側とは反対にある出口側のプラグによって閉じられた複数の多孔質壁によって形成される複数の平行な通路の入口端部内へと導入することができ、ここでSCR触媒の粒子は、多孔質壁にわたって侵入しており、ここでSCR触媒の粒子が侵入する多孔質壁の長さは、通路の入口端部から伸びる壁長さの約20%〜約100%、約50%〜約100%、約50%〜約80%、または約60%〜約70%の範囲にある。
【0067】
様々な実施形態において酸化触媒は、複数の粒子を、例えばPGMで被覆かつ/または含浸された無機担体材料のスラリーとして、含有することができ、ここで酸化触媒は、アンモニア酸化触媒であり得る。
【0068】
1つ以上の実施形態において酸化触媒は、SCR触媒が複数の平行な通路の入口端部内へと導入される前に、複数の平行な通路の出口端部内へと導入される。様々な実施形態においてSCR触媒は、酸化触媒が複数の平行な通路の出口端部内へと導入される前に、複数の平行な通路の入口端部内へと導入される。
【0069】
1つ以上の実施形態において酸化触媒の粒子は、SCR触媒の粒子とともに、複数の多孔質壁の少なくとも一部内に点在しており、ここでSCR触媒および酸化触媒の粒子は、表面上、および/または多孔質壁のデッドスペース内に点在している。そこで幾つかの実施形態では、SCR触媒のみを含有するゾーンと、多孔質壁上および/または多孔質壁内に点在しているSCR触媒および酸化触媒(例えばPGM金属)を有するゾーンとを有する基材が用意される。様々な実施形態において多孔質壁の多孔性は、約60%〜約65%の範囲にある。
【0070】
1つ以上の実施形態においてPGM端部被覆は、平行な通路の出口側にあるプラグの外部表面上に位置していてよい。様々な実施形態においてPGM端部被覆は、多孔質壁の表面上で、出口通路の出口端部から伸びる壁長さの約5%の範囲、または約5%以下、約3%以下、約2%以下、または約1%以下、または出口プラグ長さの二倍以下の範囲で、被覆されていてよい。
【0071】
ウォールフロー基材をSCR触媒組成物および/または酸化触媒で被覆するための方法の非限定的な例において、基材は固体粒子の触媒スラリーの一部において液体中に垂直に、基材の上部がスラリー表面のちょうど上方に位置しているように、浸漬されていてよい。この試料をスラリー中に約30秒間、放置する。基材をスラリーから取り出し、余剰なスラリーを、流路から排水し、それから(スラリー浸透方向に反して)圧縮空気を吹き付けることによって、ウォールフロー基材から除去する。フィルタの細孔サイズに応じて、SCR触媒スラリーの平均細孔サイズ、および加工工程前に、SCR触媒スラリーは、過度な背圧が最終的な基材内で発生するほど細孔が妨げられないように、フィルタの多孔質上に堆積、かつ/またはその中に侵入することができる。様々な実施形態において酸化触媒スラリーは、フィルタの多孔質壁上に堆積、かつ/またはその中に侵入させることができる。
【0072】
様々な実施形態において第二のSCR触媒は、入口流路または出口流路に適用して、フィルタの多孔質壁上に堆積、かつ/またはその中に侵入させることができる。様々な実施形態において第二酸化触媒は、入口流路および/または出口流路に適用して、フィルタの多孔質壁の表面上に堆積させることができる。
【0073】
1つ以上の実施形態において、触媒式スートフィルタを製造する方法は、
長手方向に伸びて、入口端部から出口端部へと伸びる平行な複数の通路を形成する複数の多孔質壁を含む触媒式スートフィルタを被覆する工程、ここで多数の通路が、入口端部で開いており、かつ出口端部で出口プラグにより閉じられた入口通路であり、多数の通路が、入口端部で入口プラグにより閉じられ、かつ出口端部で開いている出口通路であり、出口プラグは、深さおよび出口プラグ端面を有し、出口端部は、出口プラグ端面を含む出口端部表面を規定する、
を含む。触媒式スートフィルタを被覆することは、SCR触媒ウォッシュコートをパティキュレートフィルタの多孔質壁上にウォッシュコートすること、および出口プラグ端面および出口端部表面を、PGM被覆を有するアプリケータと接触させることを含み、これによってPGM被覆が、アプリケータから出口プラグ端面および出口端部表面へと移る。SCRウォッシュコートは、最初に適用することができ、それからアプリケータによって適用される白金族金属被覆を、二番目に適用することができる。あるいは、被覆適用の順序を、逆にすることができる。
【0074】
1つ以上の実施形態において、PGM端部被覆は、出口端部表面から出口プラグの深さの1.5倍に満たない距離で伸びる。1つ以上の実施形態において、PGM端部被覆は、出口プラグの深さと同じ、またはこれに満たない距離で伸びる。1つ以上の実施形態において、PGM端部覆は、アプリケータから、出口プラグ端面および多孔質壁の出口端部表面へと移る時に、PGM端部被覆が、この被覆が多孔質壁の軸長に沿って移行することを防止する粘度を有する。1つ以上の実施形態において、アプリケータは、刷毛、ローラ、スキージおよびスタンプパッドからなる群から選択される。1つ以上の実施形態においてこの方法は、壁長さの約10%超〜約50%の範囲の長さにわたり、通路の出口端部から伸びるPGMウォッシュコートを、ウォッシュコートすることを含むこともできる。
【0075】
触媒排気システムおよび排出物の低減方法
本発明の原理および実施形態はまた、ここに記載するような、少なくとも1つの触媒式パティキュレートフィルタを有する触媒排気システムに関する。様々な実施形態において触媒排気システムは、本開示による触媒式パティキュレートフィルタと、複数のガス状汚染物質および微粒子状物質のいくらかの割合を低減させるための1つ以上のさらなる構成要素とを有することができる。
【0076】
1つ以上の実施形態において、尿素注入器(還元剤供給システムとも言われる)が、触媒式パティキュレートフィルタの上流に、NO
x還元剤を排気流へと注入して、触媒式パティキュレートフィルタに組み込まれたSCR触媒の稼動を容易にするために、設けられていてよい。米国特許第4,963,332号明細書(U.S. Pat. No. 4,963,332)に開示されているように(全ての目的のためにその全体が、参照により本明細書に組み込まれるものとする)、触媒変換体の上流および下流にあるNO
xを検知することができ、パルス式供給バルブは、上流および/または下流のシグナルによって制御することができる。別の構成、すなわち米国特許第5,522,218号明細書(U.S. Pat. No. 5,522,218)に開示されたシステム(全ての目的のためにその全体が、参照により本明細書に組み込まれるものとする)のように、還元剤注入器のパルス幅は、センサバルブおよび/または排気ガス温度のマップおよびエンジン稼働条件、例えばエンジン回転数(rpm)、トランスミッションギアおよびエンジン速度から制御することができる。例えば米国特許第6,415,602号明細書(U.S. Pat. No. 6,415,602)に記載されたような還元剤パルス秤量システムを用いることもでき、その議論はここで参照により、全ての目的のためにその全体が組み込まれる。
【0077】
様々な実施形態において排気システムは、エキゾーストマニホールド、排気管(または下降管、またはY字管)、マフラーおよびテールパイプを有することができる。触媒排気システムは、大気へのテールパイプを出るガスの前で、内燃エンジンからの排気ガスを処理するために、Y字管および/または排気管で排気システムに挿入されていてよい。
【0078】
1つ以上の実施形態において触媒排気システムは、長さ、幅、高さ、および貴金属担持量を有するモノリス状触媒基材を有する。様々な実施形態においてモノリス状触媒基材は、以下のような形状を有することができる:断面積を規定する直径と長さとを有する円筒形;断面積を規定する長軸および単軸、ならびに長さを有する楕円形の形状;または断面積を規定する主軸および横方向の直径、ならびに長さを有する長円形;ここでモノリス状触媒基材は、意図した触媒活性レベルをもたらすための、貴金属担持量を有する。1つ以上の実施形態において貴金属担持量は、1種以上の白金族金属、1種以上の卑金属、1種以上の貴金属酸化物および/または卑金属酸化物、またはこれらの組み合わせを含有することができる。
【0079】
様々な実施形態において触媒排気システムは、二元触媒、三元触媒(TWC)(化学量論的な燃焼ガソリンエンジンで主に使用される)、ディーゼル酸化触媒(DOC)(リーン燃焼ディーゼルエンジンで主に使用される)、選択触媒還元(SCR)触媒、リーン窒素酸化物触媒(LNC)、アンモニアスリップ触媒(ASC)、アンモニア酸化触媒(AMOx)、NOx吸収剤(NOx貯蔵/放出触媒(NSR)とも言われる)、およびリーンNOxトラップ(LNT)、ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)、ガソリンパティキュレートフィルタ(GPF)、部分酸化触媒(POC)、および触媒式スートフィルタ(CSF)、またこれらの組み合わせを有することができる。様々な実施形態において、触媒排気システムは、ディーゼル酸化触媒(DOC)、リーンNOxトラップ(LNT)、パッシブNOx吸収剤(PNA)、アンモニア注入と関連したSCR触媒、およびアンモニア酸化触媒(AMOx)から選択される1つ以上のさらなる成分を含むことができる(ただし、これらに限られない)。
【0080】
様々な実施形態においてモノリス状触媒基材は、1種以上の触媒材料を含有する少なくとも1つのウォッシュコート層で被覆されていてよく、この触媒材料は、白金族金属、卑金属、および金属酸化物、ならびにケース内に格納された基材から選択されていてよい。1つ以上の実施形態において触媒変換体は、入口および出口を有するケース内にハウジングされたモノリス状触媒基材を有することができ、ここでこのシェルは、動作的に関連していてよく、かつ内燃エンジンの排気システムと流体連通していてよいハウジング内に格納されていてよい。
【0081】
図1および2は、複数の通路12を有する典型的なウォールフローフィルタ基材10(ウォールフローフィルタとも言う)を示す。これらの通路は、フィルタ基材の内壁13によって形成され、管状に取り囲まれている。
図1は、入口端部14および出口端部16を有するウォールフローフィルタ基材の実施形態の外観を示す。代替的な流路は、入口プラグ18(黒で示す)によって入口端部でふさがれ、出口プラグ20により出口端部でふさがれ、基材の入口端部14および出口端部16で対向するチェッカーボード状のパターンを形成する。
【0082】
図2は、ウォールフローフィルタ基材の入口端部から出口端部へと長手方向に伸びる複数の多孔質壁の実施形態の断面図を示す。入口端部14から出口端部16へと長手方向に伸び、かつ複数の平行な通路12を形成する複数の多孔質壁13の実施形態の部分断面図が示されている。ガス流22(矢印として示す)は、開いており、ふさがれていない入口通路24の端部を通じて入り、出口プラグ20によって閉鎖された端部で止まり、出口通路26への通路を形成する多孔質壁13を通じて拡散される。ガス流22は、開いており、ふさがれていない出口通路26の端部を通じて流れることによってフィルタを出て、入口プラグ18によって閉じられた端部で止まる。ガスは、入口プラグ18によって出口通路からフィルタの入口端部へと後方に流れることが防止され、出口プラグ20によって出口端部から入口通路に再度入ることが防止される。このようにして多数の通路は、入口端部で開いており、かつ出口端部で閉じている入口通路であり、多数の通路は、入口端部で閉じ、かつ出口端部で開いている出口通路であり、ここで出口通路は、入口通路とは異なる通路である。
【0083】
図3は、複数のゾーンを有するウォールフローフィルタ基材の複数の多孔質壁の例示的な実施形態の拡大断面図を示す。ここに示された触媒物品は、通路24および26を区分けし、かつ規定する長手方向に伸びる多孔質壁13によって形成された、長手方向に伸びる複数の通路12を有する、ウォールフローフィルタ10を有し、ここでこの壁は、長さ「L
F」を有するウォールフローフィルタの入口端部14および出口端部16の間に伸びる軸長を有する。様々な実施形態において多孔質壁は、実質的に均一な多孔性を全体的に有する。通路24および26は、入口端部14で開いており、かつ出口端部16で閉じられた入口通路24と、入口端部14で閉じられており、かつ出口端部16で開いている出口通路26とを有する。様々な実施形態において、出口プラグ20は、矢印25と出口プラグ端面27との間に深さを有する。壁13の出口端部16は、出口端部表面29を規定する。
【0084】
図4は、少なくともフロントゾーンの壁の表面上に触媒を有するウォールフローフィルタ基材の複数の多孔質壁の別の例示的な実施形態の拡大断面図を示す。1つ以上の実施形態において、排気ガス流22は、入口通路24に入り、ウォールフィルタ10の出口端部16に向かって流れる。ガスは、フィルタ10を通じて多様な経路54、56、および/または58(54多孔質壁13を通じて、入口通路24から、出口通路26へと通過することを含む)を取ることができ、ここでガスは、フィルタの出口端部16を経由して出ることができる。別の流れ経由路56では、排気ガス22の部分量は、SCR触媒40を含有する多孔質フィルタ壁13を通じて経由路54に続くことができ、それからフィルタを出る時に、酸化触媒45と接触する。別の代替的な経由路58については、排気ガス22の部分量を、SCR触媒40を含有する多孔質壁13を通じて、および酸化触媒45を通じて、拡散することができる。
【0085】
様々な実施形態において、入口プラグ18および/または出口プラグ20の深さは、約3mm〜約8mmの範囲、または約6mm〜約7mmの範囲、または約6.35mm(0.25インチ)である。様々な実施形態において、入口プラグ18および/または出口プラグ20は、その全長にわたってそれぞれ入口通路24および/または出口通路26内へと伸び、ここでプラグ18および20の外部表面は、ウォールフローフィルタ10の多孔質壁13の端部により実質的に流される(flush)。
【0086】
1つ以上の実施形態において、PGM端部被覆51は、出口端部表面29およびプラグの出口プラグ端面27上に被覆されていてよい。1つ以上の実施形態において、PGM被覆51は、出口通路26の出口端部内へと、壁長さの約5%以下、または壁長さの約3%以下、または壁長さの1%以下、伸びていてよい。様々な実施形態において、PGM端部被覆51は、出口通路26の出口端部内に、約1mm〜約2.5mmの範囲の長さで、伸びていてよい。様々な実施形態において、PGM端部被覆51は、出口通路26の出口端部内へと、出口プラグの深さの約1.5倍の長さで、または出口プラグの深さの約1倍の長さで伸びていてよい。
【0087】
図3は、複数の被覆によって形成された複数のゾーンを有するウォールフローフィルタ基材の複数の多孔質壁の別の例示的な実施形態の拡大断面図を示し、ここで少なくとも幾つかの触媒被覆は、ウォールフローフィルタの多孔質壁の表面上にあってよい。1つ以上の実施形態において、排気ガス流22は、入口通路24に入り、ウォールフィルタ10の出口端部16に向かって流れる。ガスは、フィルタ10を通じて多様な経路54、56、および/または58(54多孔質壁13を通じて、入口通路24から、出口通路26へと通過することを含む)を取ることができ、ここでガスは、フィルタの出口端部16を経由して出ることができる。特定の流れ経由路54において排気ガスは、第二のSCR触媒43を通じて、多孔質壁13の入口側表面上を流れることができ、かつ多孔質壁13内に含浸された第一のSCR触媒40を通じて、流れることができる。別の流れ経由路56では、排気ガス22の部分量は、第一のSCR触媒40を含有する多孔質フィルタ壁13を通じて経由路54に続くことができ、それからフィルタを出る時に、多孔質フィルタ壁13の出口側表面上にある酸化触媒45と接触する。別の代替的な経由路58については、排気ガス22の部分量を、第一のSCR触媒40を含有する多孔質壁13を通じて、および酸化触媒45を通じて、拡散することができる。
【0088】
1つ以上の実施形態において、各触媒成分は、触媒基材の多孔質壁に侵入しており、触媒成分は、壁内に点在している。様々な実施形態において、第一のSCR触媒は、多孔質壁内で酸化触媒と混じり合っている。様々な実施形態において、SCR触媒は、多孔質壁に侵入しており、酸化触媒の大部分は、SCRで含浸された多孔質壁の表面上に存在する。様々な実施形態において、酸化触媒の大部分は、SCRで含浸された多孔質壁の表面上に存在し、SCR触媒が侵入した多孔質壁と、SCR触媒の上層との間に挟まれている。様々な実施形態において、第二ゾーンにおける酸化触媒被覆は、多孔質壁の表面上にあり、第三ゾーンにおける酸化触媒被覆は、第一のSCR触媒被覆と、第二のSCR触媒被覆との間に挟まれている。
【0089】
図5は、排出物処理システム140と、アンモニア前駆体供給ライン148、空気供給ライン149、および排出物処理システムと流体連通で接続された混合ステーション146を備える尿素注入器とを有するエンジンシステムの例示的な実施形態を示す。
図12から分かるように、気体状汚染物質(燃焼していない炭化水素、一酸化炭素およびNO
xを含む)および微粒子状物質を含有する排気は、ここに記載されるように、エンジン141から接続部142を通じて、触媒式パティキュレートフィルタ143へと運ばれる。触媒式パティキュレートフィルタ143の後、排気ガスは、テールパイプ144を経由してシステムを出る。エンジン141の下流では、還元剤、例えば尿素をスプレーとして、ノズル(図示せず)を介して排気流へと注入することができる。1つのライン148上に示された水性尿素は、混合ステーション146で別のライン149における空気と混合可能なアンモニア前駆体として役立てることができる。バルブ145は、排気流中でアンモニアへと転化される水性尿素の正確な量を秤量するために使用することができる。添加されたアンモニアとともに排気流は、多機能の触媒式パティキュレートフィルタ143へと運ばれ、ここでNH
3は、SCR触媒と相互作用を起こすことができる。
【0090】
接続部142は、触媒式パティキュレートフィルタ143の前でさらなる構成要素を使用しない場合には、必要とならないことがある。これらの実施形態において、触媒式パティキュレートフィルタ143は、エンジン141に直接連結されている。エンジンと触媒との距離は、極めて短くてよく、これによっていわゆる「近接連結」触媒配置が生じる。あるいは、エンジンから触媒への距離はより長くてもよく、これによって「床下(underfloor)」構成が生じる。
【0091】
図6は、排出物処理システム、尿素注入器およびその他のエンジン構成要素を有するエンジンシステムの別の例示的な実施形態を示す。
図6に示すように、処理システムの幾つかの実施形態は、1つ以上の別個の構成要素147を有する。これら任意の構成要素147は、ディーゼル酸化触媒、リーンNO
xトラップ、部分NO
x吸着剤、または三元触媒のうち1つ以上を含むことができる。NO
x除去の所望のレベルに応じて、さらなるSCR触媒150が、多機能触媒式パティキュレートフィルタ143の上流に配置されていてよい。例えば、さらなるSCR触媒が、モノリス状のハニカムフロー上に、基材またはセラミックフォーム基材を通じて、スートフィルタの上流に配置されていてよい。NO
x除去の所望のレベルに応じて、さらなるSCR触媒152が、多機能触媒式パティキュレートフィルタ143の下流に配置されていてよく、さらなるAMO
x触媒を有することもできる。これらの様々な実施形態において、多機能に被覆されたSCRスートフィルタの使用がさらに、NO
x削減目標を満たすために必要な触媒の合計体積削減を達成する。炭化水素除去の所望のレベルに応じて、さらなる酸化触媒を、排気構成要素147の上流に、または排気構成要素152の下流に、配置することができる。様々な実施形態において酸化触媒は、構成要素150を備えないであろう。なぜならばこれは、注入された尿素を酸化して、NO
xにするからである。
【0092】
触媒実施例
ここに開示された非限定的な例は、特定の空間配置、および触媒基材上での(複数の)触媒材料の担持量を説明する。本発明は、言及した配置構成、構造の細部、または本実施例の以下の記載で規定する方法工程に限られないこと、また本発明が他の実施形態で可能なこと、および様々な方法で実行または実施できることが理解されるべきである。
【0093】
試料1〜6についての試料製造:
非限定的な例1〜6が、表1にまとめられている。これらの例のマトリックスは、触媒材料の「端面塗布(face painting)」を伴う。触媒材料がフィルタの多孔質媒体内に入り込むウォッシュコートとは異なり、端面塗布は、フィルタの端面(または露出端部)上にのみ、触媒ペーストを刷毛またはローラで塗布することによって適用する。このため触媒材料は、毛管作用によってフィルタプラグを超えてフィルタに入り込むことが期待されない。基材の端部をウォッシュコートスラリーに浸すことによりウォッシュコートを端部表面に適用する場合、被覆は、毛管力によって端部から基材の内部に向かって軸方向に伸びる。ウォッシュコート技術により適用される被覆の長さを厳密に制御することは困難であり得る。しかしながら、アプリケータ、例えばローラにより端面塗布技術を用い、また粘度(これはペーストの粘稠度であり、ウォッシュコートスラリーの粘度よりも高い)を有する被覆を用いることによって、ウォールフロー基材の出口端部上に適用されるゾーンの深さまたは長さを厳密に制御することができる。例2、4および6について、Pd端面塗布被覆ペーストを、Al
2O
3担体をPd硝酸塩溶液でまず含浸することによって作製して、Pd担持量を5.5質量%にした。Pd/Al
2O
3粉末をその後、5%のアルミナバインダーおよび2.5%のZr酢酸塩を添加した水中に懸濁させた。最終的な被覆ペーストは、9%の固体含分を有する。表8に示された端面塗布のためのPd担持量は、フィルタ体積全体を基準としている。しかしながら、他の被覆についての触媒担持量は、適用されたゾーン(局所的な担持量)を基準としている。乾燥(110℃で1時間)およびか焼(450℃で2時間)は、各被覆(端面塗布を含む)後に行った。
【表1】
【0094】
試料1〜6の性能評価
例1〜6の試料1〜6を、NO 500ppm、NH
3 550ppm、CO 500ppm、O
2 10%、H
2O 5%、CO
2 5%、残分のN
2から成る別のフィードで評価した。このフィードはCOを含有していたので、別個のCO試験は行わなかった。表2は、試料1〜6についてNO
x転化率をまとめている。試料1は、SCRである。試料2および5はSCR参照(試料1)と比べて、全ての温度において同等、またはやや高いNO
x転化率を示す。その他の試料は500℃において、やや低いNO
x転化率を示す。表3は、NH
3転化率を比較している。全ての試料は、SCR参照と比べて、かなり高いNH
3転化率を示し、試料4が、最も活性が高い。表4は、ピークN
2O形成および500℃でのCO転化率を示す。全ての試料についてピークN
2O形成は、SCR参照のピークN
2O形成と同等である(6〜8ppm)。SCR参照のCO転化率は、500℃では0に近く、その一方で試料3、4および6は、CO転化率についてずっと活性が高い(49〜76%)。
【表2】
【表3】
【表4】
【0095】
本発明について、特定の実施形態を参照しながら記載してきたものの、これらの実施形態は、単に本発明の原理および適用の説明に過ぎないことが理解されるべきである。本発明の思想および範囲から外れない限り、様々な変形例およびバリエーションを本発明の方法および装置について行えることは、当業者には明らかである。よって本発明は、添付の請求項およびその等価物の範囲にある変形例およびバリエーションを含むことが意図されている。