特許第6887387号(P6887387)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6887387高収量および高力価でラムノリピッドを生産するための半連続方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6887387
(24)【登録日】2021年5月20日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】高収量および高力価でラムノリピッドを生産するための半連続方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 19/44 20060101AFI20210603BHJP
【FI】
   C12P19/44
【請求項の数】13
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-557995(P2017-557995)
(86)(22)【出願日】2016年5月4日
(65)【公表番号】特表2018-514222(P2018-514222A)
(43)【公表日】2018年6月7日
(86)【国際出願番号】US2016030721
(87)【国際公開番号】WO2016179249
(87)【国際公開日】20161110
【審査請求日】2019年4月26日
(31)【優先権主張番号】62/157,101
(32)【優先日】2015年5月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591066100
【氏名又は名称】ステパン カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100181168
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 智裕
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ロヒサーン,ナッタポーン
【審査官】 関 景輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−211884(JP,A)
【文献】 特開平06−070754(JP,A)
【文献】 米国特許第04628030(US,A)
【文献】 特開2007−308514(JP,A)
【文献】 特開2003−052368(JP,A)
【文献】 特表2013−537411(JP,A)
【文献】 特開2014−201589(JP,A)
【文献】 特開平10−075796(JP,A)
【文献】 特公昭48−043879(JP,B1)
【文献】 特開2011−244826(JP,A)
【文献】 特開昭64−013998(JP,A)
【文献】 特開2000−050861(JP,A)
【文献】 特開昭62−032893(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/142286(WO,A1)
【文献】 特開昭63−255293(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/045962(WO,A1)
【文献】 Orathai Pornsunthorntawee et al.,Bioresource Technology,2008年 7月30日,Vol.100,p.812-818
【文献】 Nelly Christova et al.,Journal of Biosciences,2013年 1月24日,Vol.68c,p.47-52
【文献】 ZHU Lingqing et al,Enhanced rhamnolipids production by Pseudomonas aeruginosa based on a pH stage-controlled fed-batch fermentation process,Bioresource Technology,2012年 4月23日,117,208-213
【文献】 CHEN Shan‐Yu et al.,Applied Microbiology and Biotechnology,2007年 4月25日,Vol.76, No.1,p.67-74
【文献】 大宮 邦雄,ルーメン細菌によるセルロースの有用物質への変換,ニューフードインダストリー,1984年,Vol.26 No.7,p.1-9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 19/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数のラムノリピッドを含む複数の発酵物を生産する半連続方法であって、
(a)(i) 少なくとも1つの炭素源、(ii) 少なくとも1つの窒素源、(iii) 少なくとも1つのリン源、(iv) 少なくとも1つのマグネシウム源、(v) 少なくとも1つのカリウム源、(vi)少なくとも1つの硫黄源、(vii) 少なくとも1つの塩化物源、(viii) 少なくとも1つのナトリウム源、ならびに(ix) 乳化剤を含む培養培地で、2から5日間、ラムノリピッドを生産する緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)を培養して、1つまたは複数のラムノリピッドを含む第1の発酵培地を得ること、
(b)(a)で得られた1つまたは複数のラムノリピッドを含む前記第1の発酵培地の少なくとも70%を除去すること、
(c)(b)で除去された1つまたは複数のラムノリピッドを含む前記第1の発酵培地を、ステップ(a)に記載の組成を有する培養培地で置き換えること、
(d)ステップ(a)〜(c)を少なくとも1回反復し、1つまたは複数のラムノリピッドを含む次の発酵物を得ること
を含み、
少なくとも45g/Lのラムノリピッドが生産される、
半連続方法。
【請求項2】
前記方法が、前記培養培地に、
(x) 1つまたは複数の微量栄養素を、20mg総微量栄養素/L培養培地以下の濃度で、微量栄養素組成物の形態で添加すること、および/または
(xi) 消泡剤を添加すること
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記乳化剤が0.1〜20重量%の量で存在し、前記炭素源が6〜12重量%の濃度で存在し、前記窒素源が1〜4g/Lの量で存在し、前記リン源が1〜3g/Lの量で存在し、前記マグネシウムが0.001〜0.2g/Lの量で存在し、前記カリウムが0.1から1g/Lの量で存在し、前記ナトリウムが1〜10g/Lの量で存在し、前記塩化物が0.1〜1g/Lの量で存在し、前記硫黄が0.1〜1g/Lの量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記微量栄養素組成物が、Fe塩、Mn、Zn塩、Na塩、またはCu塩を含む、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記Cu塩が微量栄養素組成物において0.5〜3g/Lの量で存在し、前記Mnが微量栄養素組成物において0.1〜1.5g/Lの量で存在し、前記Zn塩が微量栄養素組成物において0.5〜3g/Lの量で存在し、前記Fe塩が微量栄養素組成物において0.1〜1g/Lの量で存在し、および/または前記ナトリウム塩が微量栄養素組成物において1〜5g/Lの量で存在する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記微量栄養素組成物を連続的に添加する、請求項2または4に記載の方法。
【請求項7】
前記微量栄養素組成物を毎日添加する、請求項2または4に記載の方法。
【請求項8】
前記緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)を30〜37℃の温度および/または6〜8.6のpHで培養する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(d)を少なくとも30日間反復する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記微量栄養素組成物が溶液である、請求項2または4に記載の方法。
【請求項11】
(i) 前記少なくとも1つの炭素源が、グルコース、脂肪アルコール、脂肪酸、または植物油であり、前記植物油が、オリーブ油、菜種油、トウモロコシ油、ヒマワリ油、キャノーラ油または大豆油であり、
(ii) 前記少なくとも1つの窒素源が、NaNO、尿素またはNHClであり、
(iii) 前記少なくとも1つのリン源が、HPOまたはKHPOであり、
(iv) 前記少なくとも1つのマグネシウム源が、MgSO*7HOまたはMgClであり、
(v) 前記少なくとも1つのカリウム源が、KClまたはKOHであり、
(vi) 前記少なくとも1つの硫黄源が、HSOであり、
(vii) 前記少なくとも1つの塩化物源が、KClまたはNaClであり、
(viii) 前記少なくとも1つのナトリウム源が、NaCl、NaNO、またはNaOHであり、かつ/または、
(ix) 前記乳化剤が、アラビアゴムまたはグアーゴムである、
請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記Fe塩がFeCl*6HOまたはFeSOであり、
前記Mn塩がMnSO*HOまたはMnCl*4HOであり、
前記Zn塩がZnSO*7HOまたはZnClであり、
前記Na塩がNa*2HO、NaCまたはNaであり、かつ/または、
前記Cu塩がCuCl*2HOまたはCuSO*5HOである、
請求項4に記載の方法。
【請求項13】
前記消泡剤が、炭素ベースまたはシリコンベースの消泡剤である、請求項2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ラムノリピッドを生産するための、ラムノリピッド生産微生物の半連続発酵法が提供される。発酵はバッチプロセスで行ってよいが、発酵の最後に1つまたは複数のラムノリピッドを含む発酵培地の少なくとも約70%を抜き取り、新しい培養培地(原料)を代わりに供給する。
【背景技術】
【0002】
異なる2つの液体間の表面張力を下げる特性を有する、界面活性糖脂質タイプのバイオサーファクタントであるラムノリピッド(RL)は、乳化剤、洗浄剤および発泡剤として幅広く用いられている[1〜3]。ラムノリピッドは、汚染土壌から原油を効率的に除去し、その乳化特性によって油流出のバイオレメディエーションを手助けする、いわゆる「増進回収法(EOR)」が可能であることが示されている[4]。それらは、抗菌性および抗真菌性の特性から、農業にも用いられている。ラムノリピッドは、現在、ZONIXとして販売されている農業用抗真菌製品および保存タンクから油を洗浄するための工業用洗浄製品、RECOで入手可能である。
【0003】
シュードモナス属(Pseudomonas)および大腸菌(E. coli)は、さまざまな炭素源および窒素源からラムノリピッド(RL)を生産できることが示されている[5]。シュードモナス属(Pseudomonas)は大腸菌(E. coli)より高いRL収量および力価を生じるが[5、6]、RL濃度は、発酵プロセスを商業的に実現可能にするほど高くない。さまざまな炭素源、遺伝子組換え株、および達成するために最も効果的な経路であると思われる発酵戦略を含む、RL生産能を増加するためのいくつかの取り組みが行われてきた。
【0004】
バッチおよびフェッドバッチ発酵は、シュードモナス属(Pseudomonas)を用いた最も一般的な発酵プロセスである[7〜11]。バッチ発酵は、最も簡便な培養方法であり[7、8]、原料(炭素源)は開始時に接種材料と共に発酵槽に添加される。発酵は、微生物によって原料がすべて利用されるまで行われ、次いで発酵槽は閉鎖され、新しいバッチが開始される[9]。他方、フェッドバッチは、バッチ発酵であるが、原料が十分に利用された後、発酵の間、原料(炭素源)が添加される[9〜11]。最良の最新の報告されたRL力価(生産能)は、緑膿菌(P. aeruginosa)のフェッドバッチ発酵から得られた、約0.58〜0.72g/L/hである[10]。しかし、このプロセスは、90〜120時間後、新しいフェッドバッチの開始前に発酵槽の閉鎖を必要とする。同様に、米国特許第5,658,973号は、167時間後に78g/Lのラムノリピッドを生産したと報告し[8]、これは操作には長すぎる。
【0005】
【表1】
【発明の概要】
【0006】
本明細書では、1つまたは複数のラムノリピッドを含む複数の発酵物を生産する半連続発酵法であって、
(a)少なくとも1つの炭素源、少なくとも1つの窒素源、少なくとも1つのリン源、少なくとも1つのマグネシウム源、少なくとも1つのカリウム源、少なくとも1つの硫黄源、少なくとも1つの塩化物源、および少なくとも1つのナトリウム源を含む培養培地で、約2から約5日間、ラムノリピッド生産微生物を培養して、1つまたは複数のラムノリピッドを含む第1の発酵培地を得ること、
(b)(a)で得られた1つまたは複数のラムノリピッドを含む発酵培地の少なくとも約70%、より特定すると約70%から約80%の間、または代わりに、約70から約90%の間を除去すること、
(c)(b)で除去された1つまたは複数のラムノリピッドを含む前記発酵培地を、ステップ(a)に記載の組成を有する培養培地で置き換えること、
(d)ステップ(a)〜(c)を少なくとも1回反復し、ラムノリピッドを含む次の発酵物を得ること
を含み、
前記ステップ(a)〜(c)は、少なくとも約30日間反復可能である、半連続発酵法が提供される。
【0007】
特定の実施形態において、前記ラムノリピッド生産微生物は、約25〜40℃の温度、より特定すると約30〜37℃の温度、および/または約5.5から約9のpH、より特定すると約6〜8.6のpHで培養してもよい。ステップ(c)で、新しい培養培地で置き換えた後、発酵開始時のpHは、特定の実施形態において、約6〜7、好ましくは6.2〜6.5であってよい。発酵のpHは、発酵の間、制御する必要はない。
【0008】
別の特定の実施形態において、前記方法は1つまたは複数の微量栄養素を含む組成物を添加することをさらに含む。特定の実施形態において、前記微量栄養素は、約20mg/L以下で存在する。特定の実施形態において、前記微量栄養素は、約1mg/Lから約14mg/Lの間で存在する。前記組成物は、1日あたり全発酵物体積の0.1%v/vで、毎日または連続的のいずれかで添加してもよい。
【0009】
上記記載の方法は、消泡剤を添加することをさらに含んでもよい。前記消泡剤は、炭素またはシリコンベースの消泡剤であってよい。
【0010】
上記記載のプロセスは、発酵をバッチプロセスで行うことを可能にするが、発酵の最後に1つまたは複数のラムノリピッドを含む発酵培地の少なくとも約70%を抜き取り、新しい培養培地(原料)を代わりに供給する。このプロセス(ステップ(d))は、RL収量および力価を犠牲にしないで、少なくとも約1カ月間、別の実施形態においては、約180日まで反復可能である。バッチおよびフェッドバッチ発酵戦略と比較して、クリーンアップのためのより少ない休止時間とより高い能力で発酵槽を利用できるようにする。上記のように、前記プロセス、ステップ(d)は少なくとも1回反復する。特定の実施形態において、前記プロセス、ステップ(d)は少なくとも5回反復する。
【0011】
特定の実施形態において、前記方法は、少なくとも約45g/L、より特定すると約60〜80g/Lのラムノリピッド濃度を、約1.6g/L/hに達するラムノリピッド生産能(力価)で生産する。特定の実施形態において、炭素源が油である場合、約0.8%w/v以下の残留油組成物のみがステップ(b)で検出される。
【0012】
定義
数値の範囲が提供される場合、文脈上明らかに他の意味で示されていなければ、下限値の単位の十分の一までの、その範囲の上限と下限との間に存在する各値、および、その規定の範囲の任意の他の規定の値または間に存在する値は、本発明の範囲内に包含されると理解される。これらのより小さい範囲の上限および下限は、より小さい範囲に独立して含まれる場合があり、本発明の範囲内にも包含され、規定の範囲の特に除外された任意の限界値となる場合もある。規定の範囲が境界の一方または両方を含む場合、これらの含まれた境界のいずれかまたは両方を除外する範囲も、本発明に含まれる。
【0013】
別段に定義されない限り、本明細書に用いられるすべての専門用語および科学用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解されることと同義である。本明細書に記載のものと類似のまたは同等な任意の方法および材料も、本発明の実施または試験において用いることができるが、好ましい方法および材料が記載されている。
【0014】
本開示に引用されるすべての出版物および特許は、その内容全体が参照により組み込まれている。本明細書中で、本発明が先行発明のためにそのような開示に先行する権利を認められていないという承認として理解されるべきものは何もない。参照により組み込まれる材料が本明細書と相反するまたは一貫性がない範囲では、本明細書は任意のそのような材料に取って代わることになる。
【0015】
本明細書および添付の請求項において使用する場合、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈上明らかに他の意味で示されていなければ、複数の参照を含むことに注意しなければならない。
【0016】
別段の指示がない限り、一連の要素に先行する「少なくとも(at least)」という用語は、一連のすべての要素を表すことが理解されなければならない。当業者であれば、単なる日常的実験を使用して、本明細書に記載する本発明の具体的な実施形態の多くの均等物を認識し、または確認することができる。そのような均等物は、本発明によって包含されることを意図する。本明細書および添付の特許請求の範囲を通して、文脈上別段の要求がなければ、「含む(comprise)」という言葉、ならびに「含む(comprises)」および「含んでいる(comprising)」などの変形は、記載する整数もしくはステップ、または整数もしくはステップの群を含むことを含意するが、あらゆる他の整数もしくはステップ、または整数もしくはステップの群を除外するものではないことが理解されよう。したがって、「含んでいる(comprising)」、「含んでいる(including)」、「含有する(containing)」、「有する(having)」などの用語は、拡張的にまたはオープンエンドで制限なく読み取られるものとする。本明細書で用いられる場合、「含んでいる(comprising)」という用語は、「含有する(containing)」という用語、または場合によっては、本明細書で用いられる場合、「有する(having)」という用語に置き換えることができる。
【0017】
本明細書に定義されるように、「ラムノリピッド」は、1つまたは複数の一般的に直鎖状の飽和または不飽和β−ヒドロキシ−カルボン酸部分を含む脂質部分および1つまたは複数の単位のラムノースの糖部分を有する糖脂質を表す。
【0018】
糖部分と脂質部分は、糖部分のラムノース部分の1−OH基と脂質部分のβ−ヒドロキシ−カルボン酸の3−OH基との間のβ−グリコシド結合を介して結合している。したがって、1つのカルボン酸部分のカルボキシル基が、ラムノリピッド末端を画定する。2つ以上のラムノース部分がラムノリピッドに含まれる場合、脂質部分に結合していないラムノース部分の各々は、1,4β−グリコシド結合を介して別のラムノース部分へ結合している。2つ以上のβ−ヒドロキシ−カルボン酸がラムノリピッドに存在する実施形態において、β−ヒドロキシ−カルボン酸部分は、互いに独立して選択される。それぞれの複数のβ−ヒドロキシカルボン酸部分のβ−ヒドロキシカルボン酸部分は、一部の実施形態では同一であってもよい。一部の実施形態では、それらは互いに異なる。
【0019】
本明細書に定義されるように、「微量栄養素組成物」は、約20mg/L以下の量で存在する微量栄養素を含む組成物である。
【0020】
「培養培地」、「発酵培地」という用語は同意語であり、同じ意味で用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】ラムノリピッドを生産する半連続発酵法の概略図である。
図2】実施例4において、ステップ(a)〜(c)を31日以上反復した発酵の間のpH変化を示す図である。
図3】実施例5において、接種後または新しい培養培地で充填後の発酵の間のpH変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
1つまたは複数のラムノリピッドを含む複数の発酵物を生産する半連続発酵法が本明細書で提供される。特定の実施形態において、ラムノリピッドは、構造(I)
【0023】
【化1】
を有してもよく、式中、m=2、1または0、特に、1または0であり、n=1もしくは0、または特に1であり、RおよびRは独立して、2〜24個、好ましくは5〜13個の炭素原子を有する互いに同一または異なる有機基であり、特に、場合により分岐状であり、場合により置換されており、特に、ヒドロキシル置換されており、場合により不飽和であり、特に、場合によりモノ不飽和、ジ不飽和またはトリ不飽和のアルキル基であり、好ましくはペンテニル、ヘプテニル、ノネニル、ウンデセニルおよびトリデセニル、ならびにo=1〜23、好ましくは4〜12である(CH2)o−CHからなる群から選択される基である。
【0024】
主鎖ならびに分枝の両者は、例えばN、O、S、SeもしくはSiなどのヘテロ原子をさらに含んでいてもよく、または炭素原子がこれらのヘテロ原子の1つによって置き換えられていてもよい。脂肪族部分は、1つまたは複数の官能基で置換されていても非置換であってもよい。置換基は、任意の官能基、例えばアミノ、アミド、カルボニル、カルボキシル、ヒドロキシル、ニトロ、チオおよびスルホニルとしてもよいが、これらに限定されない。
【0025】
ラムノリピッド生産微生物
上記のように、方法は、ラムノリピッド生産微生物を培養することを含む。ラムノリピッド生産微生物は、ラムノリピッドを生産する宿主細胞であってもよい。ラムノリピッドを生産する組換え宿主細胞は、RhlA遺伝子もしくはそのオーソログ、および/またはRhlB遺伝子もしくはそのオーソログ、および/またはRhlC遺伝子もしくはそのオーソログ、および/またはRhlR遺伝子もしくはそのオーソログ、および/またはRhlI遺伝子もしくはそのオーソログ、および/またはRhlG遺伝子もしくはそのオーソログ、ならびにその他を発現する細菌細胞などの宿主細胞であってもよい。
【0026】
あるいは、「ラムノリピッド生産微生物」は、適した条件下でラムノリピッドを合成/生産する能力を有する細菌などの任意の微生物であってもよく、放線菌門(Actinobacteria)、フィルミクテス門(Fimicutes)およびプロテオバクテリア門(Proteobacteria)の細菌を含むがこれに限定されない。特定の実施形態においては、ラムノリピッド生産微生物は、ガンマプロテオバクテリア綱(Gammaproteobacteria)の細菌である。さらなる実施形態においては、ラムノリピッド生産微生物は、シュードモナス目(Pseudomonadales)の細菌である。さらに別のさらなる実施形態においては、ラムノリピッド生産微生物は、シュードモナス科(Pseudomonadacae)の細菌である。さらなる実施形態においては、ラムノリピッド生産微生物は、シュードモナス・アルカリゲネス(P. alcaligenes)、緑膿菌(P. aeruginosa)、シュードモナス・クロロラフィス(P. chlororaphis)、シュードモナス・クレマンシー(P. clemancea)、シュードモナス・コリエレア(P. collierea)、シュードモナス・フルオレッセンス(P. fluorescens)、シュードモナス・ルテオラ(P. luteola)、シュードモナス・プチダ(P. putida)、シュードモナス・スタッツェリ(P. stutzeri)およびシュードモナス・テッシデア(P. teessidea)などのシュードモナス属(Pseudomonas)の細菌である。さらなる実施形態においては、ラムノリピッド生産微生物は緑膿菌(P. aeruginosa)である。
【0027】
培養培地
ラムノリピッド含有微生物は、培養培地で培養する。前記培養培地は、少なくとも1つの炭素源、少なくとも1つの窒素源、少なくとも1つのリン源、少なくとも1つの硫黄源、少なくとも1つのナトリウム源、少なくとも1つのマグネシウム源、少なくとも1つのカリウム源、少なくとも1つの硫黄源および少なくとも1つの塩化物源を含む。
【0028】
炭素源は、単糖、例えばグルコース、二糖、例えばスクロース、糖アルコール、例えばグリセロール、長鎖アルカン、例えばn−ヘキサデカン、カプリル酸(オクタン酸とも命名される)などの脂肪酸、植物油(新しいまたは廃棄されたもの、例えば大豆油)またはそれらの混合物、有機酸(例えば乳酸、酢酸、クエン酸、プロピオン酸)、アルコール(例えばエタノール)、およびこれらの混合物であってもよい。特定の実施形態において、炭素源は、オリーブ油、菜種油、オリーブ油、トウモロコシ油、ヒマワリ油、キャノーラ油および大豆油からなる群から選択される植物油である。炭素源は、約6%〜約12%w/wの量で存在してもよい。
【0029】
窒素源は、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、尿素、酵母エキス、食肉抽出物、ペプトン、およびコーンスティープリカーであってもよい。特定の実施形態において、窒素源はNaNOである。さらに別の実施形態においては、窒素は約1〜10g/Lの量で存在してもよい。
【0030】
リン源は、特定の実施形態においてHPOまたはKHPOであってもよい。さらに別の特定の実施形態においては、前記リンは、約1〜10g/Lの量で存在する。
【0031】
マグネシウムイオンは、特定の実施形態においてMgSO*7H2Oおよび/またはMgClであってもよい。特定の実施形態において、マグネシウムは、約0.01〜1g/Lの量で存在する。
【0032】
カリウムは、KClおよび/またはKOHであってもよい。特定の実施形態において、カリウムは、約0.1〜約2g/Lの量で存在する。
【0033】
ナトリウムは、NaCl、NaNO、およびNaOHであってもよい。特定の実施形態において、前記ナトリウムイオンは、約1〜15g/Lの量で存在する。
【0034】
塩化物はKClおよびNaClであってもよい。特定の実施形態において、前記塩化物イオンは、約0.1〜1g/Lの量で存在する。
【0035】
硫黄は、HSOであってもよい。特定の実施形態において、前記硫黄イオンは、約0.1〜1g/Lの量で存在する。
【0036】
硫黄源、塩化物源および窒素源は、出願番号第14/992,995号に記載された手順を用いて入手可能な発酵培地を含む、酸処理し熟成させた微生物の水層、または水性液相もしくは水相とも呼ばれるものから得られてもよい。具体的な実施形態においては、1つまたは複数のラムノリピッドを含む発酵培地または培養培地は、少なくとも約1日および約24〜72時間の間、約0〜30℃の間でインキュベートすることによって熟成させてもよい。特定の実施形態において、熟成させた水性培地は、酸で処理してもよく、そのため、培養培地は約1.5〜2.5、優先的には約2.05〜約2.15のpHに調整される。酸は、酢酸または鉱酸などの有機酸であり得る。好ましい実施形態においては、酸は、鉱酸、例えばHCl、HSO、HNO、またはHClOである。結果として、水性液相、油相および固相が生成される。水性液相は当技術分野で既知の手順を用いて、および具体的な実施形態においては、上記の方法(例えば、濾過、またはデカンテーションと組み合わせた遠心分離もしくは沈殿)を用いて除去する。
【0037】
培養培地は乳化剤をさらに含んでもよい。特定の実施形態において、乳化剤は、アラビアゴム、グアーゴムおよびラムノリピッドからなる群から選択される。さらに別の特定の実施形態においては、前記培養培地中で乳化剤の炭素源に対する割合は、約0.1%〜約20%w/wの間である。さらに別の特定の実施形態においては、前記乳化剤は、約5〜10重量%の量で存在してもよい。
【0038】
特定の実施形態において、培養培地または発酵培地は当技術分野で既知の方法を用いて滅菌する。これらの方法は、濾過、加熱、化学または紫外線放射に基づくものとしてもよい。特定の実施形態において、加熱に基づく処理は、湿熱滅菌、特にオートクレーブによるものとしてもよい。
【0039】
一実施形態においては、水性培地(例えば発酵培地)は、上記手順の1つによって滅菌してもよい。別の実施形態においては、発酵培地は、上記手順の2つ以上によって滅菌してもよく、これらの滅菌は、任意の順序であり得る。発酵の第1サイクルの間、発酵中に滅菌してもよいが、その後のサイクルでは別の容器で滅菌するべきである。
【0040】
微量栄養素組成物
上記のように、前記方法は、微量栄養素溶液または組成物を添加することをさらに含んでもよい。前記微量栄養素は、微量のFe、Mn、Zn、Cu、Naとしてもよい。特定の実施形態において、前記微量栄養素はFe、Mn、Zn、NaまたはCuの塩である。より特定の実施形態においては、前記微量栄養素組成物は、Fe、Mn、Zn、NaおよびCuの塩を含む。組成物は、濾過によって滅菌してもよい。
【0041】
特定の実施形態においては、前記Cu塩は、少なくともCuCl*2HOおよびCuSO*5HOの1つであり、微量栄養素溶液において約0.5〜3g/Lの量で存在してもよく、前記Mn塩は、少なくともMnSO4*HOおよびMnCl・4HOの1つであり、微量栄養素溶液において約0.1〜1.5g/Lの量で存在してもよく、前記Zn塩は、ZnSO*7HOまたはZnClであり、微量栄養素溶液において約0.5〜3g/Lの量で存在してもよく、前記Fe塩は少なくともFeCl*6HOまたはFeSOの1つであり、微量栄養素溶液において約0.1〜1g/Lの量で存在してもよく、前記ナトリウム塩はNa*2HOであり、微量栄養素溶液において約1〜5g/Lの量で存在してもよい。
[実施例]
【実施例1】
【0042】
培養培地の調製
ラムノリピッド生産のための緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の発酵用の培養培地中の8%大豆油の組成を以下の表2に示す。アラビアゴムは、大豆油の10%w/wで用いられる。
【0043】
【表2】
【0044】
培養培地を作製するために、アラビアゴムを最初に脱イオン水に溶解し、別々の容器にて40〜45℃で毎分150〜250回転で撹拌し、5%w/wアラビアゴム溶液を得る。すべてのアラビアゴムを水に溶解させるために、このステップには少なくとも30分かかる。2番目に、キッチンブレンダーなどのブレンダーを用いて、大豆油および5%アラビアゴム溶液を脱イオン水と混合する。十分に混合され、エマルション(すなわち溶液がミルク様の白色になる)が得られたことを確認する。大豆油のエマルションが得られた後、撹拌しながらHPOをエマルションに添加し、HPOが十分に溶解した後で次の化学物質NaOHを添加する。次の化学物質、MgSO次いでKCl次いでNaNOおよび最後がHSO、を撹拌しながらエマルションに添加する。次の化学物質を添加する前に、エマルション中で十分に溶解したことを確認する。培養培地を次いで蒸気滅菌できる(オートクレーブ)。
【実施例2】
【0045】
微量栄養素組成物の調製
微量栄養素の組成を表3に示す。各々の塩濃度は、g/L(微量栄養素溶液)であることに注意されたい。
【0046】
【表3】
【0047】
すべての化学物質は、ACSグレード(入手可能な最高純度)である。撹拌しながら、Na*2HOを脱イオン水へ最初に添加する。すべてが溶解した後、次の化学物質であるFeCl*6HOを添加することができる。表に列挙したすべての化学物質を、FeCl*6HO、次いでZnSO*7HO、次いでCuCl*2HO、次いでCuSO*5HO、最後にMnSO*HOの順序で溶液に添加するまで、このステップを反復する。微量栄養素は、0.2ミクロン滅菌濾過を用いて滅菌可能である。微量栄養素を蒸気オートクレーブ滅菌してはならない。
【実施例3】
【0048】
緑膿菌(P. aeruginosa(Schroeter)Migula(R4株))の種培養
ATCC#55734から入手したR4株を、最初に40g/L Tryptic Soy Agar含有寒天プレートに、32℃で18〜24時間、接種する。R4コロニーが形成された後、次いで、単一コロニーを振盪チューブ内の、5mlの20g/L LBブロス(Lennox)中37℃で20〜24時間培養する。最終OD600は約3〜5であり、振盪チューブ内のLBブロス(Lennox)溶液は黄色から緑色へ変化する。次いで振盪チューブから得られたR4培養物を、20g/L LBブロス(Lennox)含有振盪フラスコに1%の接種で接種し、37℃で20〜24時間インキュベートする。発酵に必要なR4の十分な接種材料を生じさせるために、このプロセスを必要に応じて反復する。LBブロス(Lennox)は、Sigma Aldrich #3022から入手し、10g/L Tryptone、5g/L酵母エキスおよび5g/L NaClを含む。
【実施例4】
【0049】
脱イオン水および大豆油に対して10%w/wのアラビアゴム(乳化剤として)を用いたラムノリピッドの半連続発酵
ATCC#55734(R4)から入手した緑膿菌(P. aeruginosa(Schroeter)Migula)の発酵を、10Lバイオリアクターで行い、図1に図式的に記載する。発酵槽10内に、8%大豆油および大豆油に対して10%w/wのアラビアゴムの8Lの培養培地の調製から開始する。実施例1において培養培地に用いられる化学物質は、ACSグレード(入手可能な最高純度)である。培養培地の滅菌後、循環水方式加熱ジャケットを用いて、温度を37℃へ冷却し、撹拌を開始する(毎分250回転)。温度が37℃で安定したら、0.2ミクロン濾過空気を、通気ライン(#4)を通して発酵槽へ1.5L/分で供給し、ライン#1を通して発酵槽に、実施例3で得られたR4の2.5%(200ml)接種材料を接種する。次いで、実施例2で調製したフィルター滅菌された8mlの微量栄養素をライン#2を通して発酵槽へ1日1回添加する。微量栄養素を毎日添加することができない場合、ペリスタポンプを用いて発酵槽に40ml/日で連続的に添加するために、8mlの微量栄養素を32mlの脱イオン水(1日あたり)中に希釈する。シリコンベースの消泡剤(Sigma Aldrich #85390)を、発酵の間、泡を消すために、ライン#3を通して自動的に添加する。
【0050】
発酵は、37℃の温度で、培養培地の最初のpHは6.2で、発酵の間のpHは制御せずに行う。%溶存酸素(%DO)を15%〜20%に保つために、必要に応じて撹拌速度を自動的に上げる。増殖速度の間、微生物の酸素消費量に対応するために、接種の40〜48時間後に空気流量が1.5から3.5L/分へ増加する前に、撹拌速度を毎分500回転に上げる。接種の60時間後、pHがわずかに下がった(または安定した)後で、pHは増加する。さらに、撹拌および空気流量は最低値(それぞれ毎分250回転および1.5L/分)であるにもかかわらず%DOは増加し、72時間で発酵が完了したことを示す。このことは、1つまたは複数のラムノリピッドを含む発酵培地中の残留大豆油が0.8%未満であることで確認することができる。
【0051】
次いで、ペリスタポンプを開始して、1つまたは複数のラムノリピッドを含む6L(全量の75%)の発酵培地をライン#5を通して除去する。いわゆる「抜き取り#1」である6Lのブロスを除去したら、滅菌タンク20で調製した、滅菌したばかりの6Lの8%大豆油培養培地を、重力送りを用いて発酵槽10へ供給する。発酵開始のpHは6.5である。上記段落に記載された発酵パラメータを用いる。この場合、48時間後、発酵は完了し、1つまたは複数のラムノリピッドを含む発酵培地の75%を抜き取る準備ができている(抜き取り#2)。続いて、滅菌した大豆油培養培地の次のバッチを、滅菌タンク20から供給する。ラムノリピッド収量および力価に損失の兆候なく、プロセスを6週間反復した後、発酵槽を洗浄のために閉鎖する。抜き取りと各々の抜き取りの間の発酵中のpH変化を図2に示す。ラムノリピッド(RL)濃度および力価を以下の表4に示す。12回すべての抜き取りのラムノリピッド(RL)濃度は、少なくとも62g/L、最大79g/Lである。RL生産能(力価)は、0.92〜1.61g/L/hである。
【0052】
【表4】
【実施例5】
【0053】
連続的に微量栄養素添加し、大豆油に脱イオン水および5%w/wアラビアゴムを用いたラムノリピッドの半連続発酵
使用する培養培地の組成を表5に示す。大豆油に対して5%w/wのアラビアゴムを含む、7.3Lの8%大豆油を実施例1の記載と同様に調製する。本実施例で用いられるすべての化学物質は、不純物含有の工業グレードである。
【0054】
【表5】
【0055】
発酵槽に接種するために5%(360ml)のR4接種材料を用いること、および1つまたは複数のラムノリピッドを含む77%の発酵培地(5.6L)を抜き取ること、および新しい培養培地が大豆油に対して5%w/wのアラビアゴムを含むことを除き、発酵は実施例4と同様に行う。微量栄養素は、実施例2の記載と同様に調製する。7.3mlの微量栄養素を32.7mlの脱イオン水(1日あたり)中に希釈することによって、ペリスタポンプを用いて40ml/日の流量で連続的に添加する。シリコンベースの消泡剤(DOW AFE−1510)を、発酵の間、泡を消すために、自動的に添加した。%溶存酸素(%DO)を15%〜20%に保つために、1.5L/分の空気流量を用い、必要に応じて撹拌速度を自動的に上げる。撹拌を遅いままにし、それによって泡立ちの問題を減らすために、純粋酸素を0.005〜0.1L/分で発酵槽にさらに添加する。接種後または新しい培養培地で充填後の発酵中の代表的なpH変化を図3に示す。ラムノリピッド(RL)濃度および力価を以下の表6に示す。
【0056】
【表6】
【実施例6】
【0057】
連続的に2×微量栄養素添加し、脱イオン水および大豆油に対して5%w/wのアラビアゴムを用いたラムノリピッドの半連続発酵
本実施例において、培養培地および発酵パラメータは、用いる微量栄養素の量が2倍であることを除いて、実施例5に示したものと同一である。14.6mlの微量栄養素(実施例2において調製した)を26.4mlの脱イオン水(1日あたり)中に希釈することによって、ペリスタポンプを用いて40ml/日の流量で連続的に添加する。%溶存酸素(%DO)を15%〜20%に保つために、1.5L/分の空気流量を用い、必要に応じて撹拌速度を自動的に上げる。撹拌を遅いままにし、それによって泡立ちの問題を減らすために、空気流の10〜30%で純粋酸素を発酵槽にさらに添加し全流量を一定の1.5L/分に保つ。ラムノリピッド(RL)濃度および力価を以下の表7に示す。
【0058】
【表7】
【実施例7】
【0059】
8%大豆油と、冷水道水85%/1つまたは複数のラムノリピッドを含む発酵培地からの廃水流水性上層15%とを用いたラムノリピッドの半連続発酵
本実施例で用いた培養培地組成を表8に示す。
【0060】
【表8】
【0061】
廃水流水性上層は、2016年1月11日に出願された、米国特許出願第14992995号(前記出願の実施例3を参照)に記載された手順を用いて得ることができる。簡潔に言えば、廃水流水性上層は、浄化された発酵ブロスから得られる。浄化されたブロスは、pH6.0〜6.5で停止している緑膿菌(P. aeruginosa)含有発酵培地を周囲条件下で約2日間熟成させることによって作製する。バイオマスはこの熟成プロセスに用いた容器の底部に沈殿し、透明な上清は、除去後、浄化されたブロスである。プロセスの次のステップは、pHが約2.1になるまで濃硫酸などの酸を添加することである。ラムノリピッドは溶液から沈殿し、本ステップに用いる容器の底部に、固相および油性の液相を形成する。固相および油性の液相の分離は、遠心分離によって加速することができる。固相および油性の液相を、水性上相または上層から分離し、廃棄またはリサイクルすることができる。上記に言及した水性の層は、HSOおよび微量栄養素の源であり、この水性の層15%w/wを、残部である冷水道水中の8%大豆油と共に培養培地に用いる。廃水流水性上層を最初に1ミクロンで濾過して、使用前に大粒子を除去する。
【0062】
15%の廃水流水性上層および冷水道水と共に8%大豆油を含有する7.3Lの培養培地を、大豆油、水性上層および冷水道水を最初にキッチンブレンダーを用いて混合することによって調製する。すべてを十分に混合した後、HPO、NaOH、MgSO、KClおよびNaNOを、撹拌しながら、この順序で、溶液へ添加する。培養培地を次いで蒸気滅菌できる(オートクレーブ)。本実施例で用いられるすべての化学物質は、不純物含有の工業グレードである。
【0063】
発酵は、実施例5と同一のパラメータで行う。微量栄養素組成物を連続的に添加する。撹拌を遅いままにし、それによって泡立ちの問題を減らすために、空気流の10〜30%で純粋酸素を発酵槽にさらに添加し全流量を一定の1.5L/分に保つ。ラムノリピッド(RL)濃度および力価を以下の表9に示す。
【0064】
【表9】
【実施例8】
【0065】
100Lスケールにおけるラムノリピッドの半連続発酵
100Lの培養培地(実施例5などの組成)を実施例1と同様に調製し、120Lバイオリアクターにおいて滅菌する。その組成を表10に示す。R4株の種培養は、実施例2に従って調製する。振盪フラスコ内の20g/LのLBブロスLennox中で37℃で24時間インキュベートした2.9LのR4株を100Lの発酵槽に接種する。
【0066】
発酵は、37℃の温度で、培養培地の最初のpHは6.2で、発酵の間のpHは制御せずに行う。シリコンベースの消泡剤(DOW AFE−1510)を50%の脱イオン水で希釈し、次いで使用前にオートクレーブ滅菌する。発酵の間、泡を消すために、消泡剤を自動的に添加する。撹拌は、17L/分の空気と共に、毎分150回転である。%溶存酸素(%DO)を15%〜20%に保つために、必要に応じて撹拌速度を自動的に上げる。実施例2と同様に組成が調製された800mlの微量栄養素を2.2Lの脱イオン水で希釈し、したがって、それを連続的に375ml/日で8日間供給する。
【0067】
9%大豆油(以下の表10の組成)含有の70Lの培養培地を実施例1と同様に調製し、抜き取りより1日前に、異なる100Lのバイオリアクターで滅菌する。接種の105時間後、pHは約7で一定のままであった後、上昇し始める。発酵は115時間、pH7.3で完了する。
【0068】
【表10】
【0069】
接種115時間後に、次いで、ペリスタポンプを開始して、1つまたは複数のラムノリピッドを含む発酵培地を70L(全量の70%)除去する。いわゆる「抜き取り#1」である70Lのブロスを除去したら、滅菌したばかりの70Lの9%大豆油培養培地を、ペリスタポンプを用いて発酵槽へ供給する。発酵開始のpHは6.5である。上記段落に記載された発酵パラメータを用いる。この場合、70時間後、発酵はpH7.14で完了する。ラムノリピッド(RL)濃度および力価を以下の表11に示す。
【0070】
【表11】
【実施例9】
【0071】
微量栄養素なしの振盪フラスコ実験
50mlの培養培地(以下の組成)を、250ml振盪フラスコで実施例1と同様に調製する。その組成を表12に示す。オートクレーブ滅菌し、室温まで冷却した後、振盪フラスコに5%のR4株の凍結保存物を接種する。凍結保存物は、OD600が3〜4の70%R4試験管培養物を30%グリセロールと混合し、−80℃で保存することによって得る。インキュベーションは、37℃で92時間、シェーカーで、微量栄養素を添加せずに行う。接種の92時間後、ラムノリピッド濃度は、5個の振盪フラスコの平均で47±3g/Lである。
【0072】
【表12】
【0073】
参考文献
[1] Randhawa et al. (2014) “Rhamnolipid biosurfactants-past, present, and future scenario of global market”, Frontiers in Microbiology 5:1-7.
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[12] Camilios et al (2009) “Production of rhamnolipids in solid-state cultivation: characterization downstream processing and application in the cleaning of contaminated soil” Biotechnol J 4: 748-755.
【符号の説明】
【0074】
10 発酵槽
20 滅菌タンク

本発明は次の実施態様を含む。
[1]1つまたは複数のラムノリピッドを含む複数の発酵物を生産する半連続方法であって、
(a)グルコース、脂肪アルコール、脂肪酸、または植物油、例えばオリーブ油、菜種油、オリーブ油、トウモロコシ油、ヒマワリ油、キャノーラ油および大豆油などの少なくとも1つの炭素源、NaNO、尿素およびNHClなどの少なくとも1つの窒素源、HPOおよびKHPOなどの少なくとも1つのリン源、MgSO*7HOおよびMgClなどの少なくとも1つのマグネシウム源、KClおよびKOHなどの少なくとも1つのカリウム源、HSOなどの少なくとも1つの硫黄源、KClおよびNaClなどの少なくとも1つの塩化物源、ならびにNaCl、NaNO、およびNaOHなどの少なくとも1つのナトリウム源、ならびに場合によりアラビアゴム、グアーゴムおよびラムノリピッドなどの乳化剤を含む培養培地で、約2から約5日間、ラムノリピッド生産微生物を培養して、ラムノリピッドを含む第1の発酵培地を得ること、
(b)(a)で得られた1つまたは複数のラムノリピッドを含む前記発酵培地の少なくとも約70%を除去すること、
(c)(b)で除去された1つまたは複数のラムノリピッドを含む前記発酵培地を、ステップ(a)に記載の組成を有する培養培地で置き換えること、
(d)ステップ(a)〜(c)を少なくとも1回反復し、ラムノリピッドを含む次の発酵物を得ること
を含み、
前記ステップ(a)〜(c)は、少なくとも約30日間反復可能であり、
前記方法が、ステップ(a)の前記培養培地に、(1)1日あたり全発酵物体積の0.1%v/vで、微量栄養素溶液において20mg/L以下の濃度で1つまたは複数の微量栄養素を含む組成物を添加すること、および/または(2)炭素ベースまたはシリコンベースの消泡剤などの消泡剤を場合により添加することをさらに含む、半連続方法。
[2]前記ラムノリピッド生産微生物が、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)などのシュードモナス属(Pseudomonas)微生物である、上記[1]に記載の方法。
[3]前記乳化剤が約0.1〜20重量%の量で存在し、前記炭素源が約6〜12重量%の濃度で存在し、前記窒素源が約1〜4g/Lの量で存在し、前記リン源が約1〜3g/Lの量で存在し、前記マグネシウムイオンが約0.001〜0.2g/Lの量で存在し、前記カリウムイオンが約0.1から約1g/Lの量で存在し、前記ナトリウムイオンが約1〜10g/Lの量で存在し、前記塩化物イオンが約0.1〜1g/Lの量で存在し、前記硫黄イオンが約0.1〜1g/Lの量で存在する、上記[1]〜[2]に記載の方法。
[4]前記微量栄養素が、FeCl*6HOもしくはFeSOなどのFe塩、MnSO*HOおよびMnCl・4HOなどのMn塩、ZnSO*7HOもしくはZnClなどのZn、Na*2HO、NaCおよびNaなどのNa塩、またはCuCl*2HOおよびCuSO*5HOなどのCu塩である、上記[1]〜[3]に記載の方法。
[5]前記Cu塩が微量栄養素溶液において約0.5〜3g/Lの量で存在し、前記Mnが微量栄養素溶液において約0.1〜1.5g/Lの量で存在し、前記Zn塩が微量栄養素溶液において約0.5g/Lの量で存在し、前記Fe塩が微量栄養素溶液において約0.1〜1g/Lの量で存在し、および/または前記ナトリウム塩が微量栄養素溶液において約1〜5g/Lの量で存在する、上記[4]に記載の方法。
[6]前記微量栄養素組成物を連続的に添加する、上記[1]〜[5]に記載の方法。
[7]前記微量栄養素組成物を毎日添加する、上記[1]〜[6]に記載の方法。
[8]前記シュードモナス属(Pseudomonas)を約30〜37℃の温度および/または約6〜8.6のpHで培養する、上記[1]〜[7]に記載の方法。
[9]ステップ(d)を少なくとも約30日間反復する、上記[1]〜[8]に記載の方法。
図1
図2
図3