特許第6887394号(P6887394)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6887394スルホニウム塩、光酸発生剤、それを含む組成物、及び、デバイスの製造方法
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  • 特許6887394-スルホニウム塩、光酸発生剤、それを含む組成物、及び、デバイスの製造方法 図000026
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6887394
(24)【登録日】2021年5月20日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】スルホニウム塩、光酸発生剤、それを含む組成物、及び、デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 335/16 20060101AFI20210603BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20210603BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20210603BHJP
   G03F 7/039 20060101ALI20210603BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   C07D335/16CSP
   C09K3/00 K
   G03F7/004 503A
   G03F7/039 601
   G03F7/20 521
【請求項の数】5
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2018-15623(P2018-15623)
(22)【出願日】2018年1月31日
(65)【公開番号】特開2019-131512(P2019-131512A)
(43)【公開日】2019年8月8日
【審査請求日】2020年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222691
【氏名又は名称】東洋合成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】榎本 智至
(72)【発明者】
【氏名】内藤 倫哉
【審査官】 高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−165290(JP,A)
【文献】 特開平10−212286(JP,A)
【文献】 特開2009−075284(JP,A)
【文献】 特開2014−063160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)又は一般式(2)で表されるスルホニウム塩。
【化1】
(前記式(1)中、R及びRは独立して各々に、置換基を有していてもよい直鎖、分岐又は環状の炭素原子数1〜12のアルキル基;置換基を有していてもよい直鎖、分岐又は環状の炭素原子数1〜12のアルケニル基;置換基を有していてもよい炭素原子数6〜14のアリール基;及び、置換基を有していてもよい炭素原子数4〜12のヘテロアリール基;からなる群より選択されるいずれかであり、
前記R1及びR2中の少なくとも1つのメチレン基が2価のヘテロ原子含有基で置換されていてもよく、
前記R1及びR2は、単結合で直接に、又は、酸素原子、硫黄原子及びメチレン基からなる群より選択されるいずれかを介して、これらが結合する硫黄原子と共に環構造を形成してもよく、
3は、置換基を有していてもよい直鎖、分岐又は環状の炭素原子数1〜12のアルキル基;置換基を有していてもよい直鎖、分岐又は環状の炭素原子数1〜12のアルケニル基;置換基を有していてもよい直鎖、分岐又は環状の炭素原子数1〜12のアルコキシ基;置換基を有していてもよい炭素原子数6〜12のアリールオキシ基;置換基を有していてもよい炭素原子数4〜12のヘテロアリールオキシ基;置換基を有していてもよい直鎖、分岐又は環状の炭素原子数1〜12のアルキルスルファニル基;置換基を有していてもよい炭素原子数6〜12のアリールスルファニル基;置換基を有していてもよい炭素原子数4〜12のヘテロアリールスルファニル基;置換基を有していてもよい直鎖、分岐又は環状の炭素原子数1〜12のアルキルスルホニル基;置換基を有していてもよい炭素原子数6〜12のアリールスルホニル基;及び、置換基を有していてもよい炭素原子数4〜12のヘテロアリールスルホニル基;からなる群より選択されるいずれかであり、
及びRは独立して各々に、水素原子;ヒドロキシル基;置換基を有していてもよい直鎖、分岐又は環状の炭素原子数1〜12のアルキル基;置換基を有していてもよい直鎖、分岐又は環状の炭素原子数1〜12のアルケニル基;置換基を有していてもよい炭素原子数6〜14のアリール基;及び、置換基を有していてもよい炭素原子数4〜12のヘテロアリール基;置換基を有していてもよい分岐又は環状の炭素原子数1〜12のアルキルカルボニルオキシ基;置換基を有していてもよい直鎖、分岐又は環状の炭素原子数1〜12のアルケニルカルボニルオキシ基;置換基を有していてもよい炭素原子数6〜12のアリールカルボニルオキシ基;置換基を有していてもよい炭素原子数4〜12のヘテロアリールカルボニルオキシ基;からなる群より選択されるいずれかであり、
はハロゲン原子;ヒドロキシル基;ニトロ基;置換基を有していてもよい直鎖、分岐又は環状の炭素原子数1〜12のアルキル基;置換基を有していてもよい直鎖、分岐又は環状の炭素原子数1〜12のアルケニル基;置換基を有していてもよい炭素原子数6〜14のアリール基;置換基を有していてもよい炭素原子数4〜14のヘテロアリール基;置換基を有していてもよい直鎖、分岐又は環状の炭素原子数1〜12のアルコキシ基;置換基を有していてもよい炭素原子数1〜12のアリールオキシ基;置換基を有していてもよい直鎖、分岐又は環状の炭素原子数1〜12のアルキルスルファニル基;置換基を有していてもよい炭素原子数1〜12のアリールスルファニル基;置換基を有していてもよい直鎖、分岐又は環状の炭素原子数1〜12のアルキルスルホニル基;置換基を有していてもよい炭素原子数6〜12のアリールスルホニル基;及び、置換基を有していてもよい炭素原子数4〜12のヘテロアリール基;置換基を有していてもよい直鎖、分岐又は環状の炭素原子数1〜12のアルキルカルボニルオキシ基;置換基を有していてもよい直鎖、分岐又は環状の炭素原子数1〜12のアルケニルカルボニルオキシ基;置換基を有していてもよい炭素原子数6〜12のアリールカルボニルオキシ基;置換基を有していてもよい炭素原子数4〜12のヘテロアリールカルボニルオキシ基;からなる群より選択されるいずれかであり、
前記R、R及びR中の少なくとも1つのメチレン基が2価のヘテロ原子含有基で置換されていてもよく、
nは0〜4の整数であり、
上記R1〜R5の少なくとも2つは単結合で直接に、又は、酸素原子、硫黄原子及びメチレン基からなる群より選択されるいずれかを介して、これらが結合する硫黄原子と共に環構造を形成してもよく、
2つ以上のRの少なくとも2つは単結合で直接に、又は、酸素原子、硫黄原子及びメチレン基からなる群より選択されるいずれかを介して環構造を形成してもよく、
X-は1価の対アニオンを示す。
前記式(2)中、R〜R、R、X及びnは、前記式(1)のR〜R、R、X及びnの選択肢と同様である。
【請求項2】
請求項1に記載のスルホニウム塩を含有する光酸発生剤。
【請求項3】
請求項2に記載の光酸発生剤と、酸反応性化合物と、を含む組成物。
【請求項4】
ヒドロキシアリール基含有ユニットを有するポリマーをさらに含む請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
請求項〜4のいずれか一項に記載の組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜に活性エネルギー線を照射する工程と、
前記レジスト膜を現像する工程と、を含むデバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明のひとつの態様は、新規なスルホニウム塩に関する。また、本発明の別の態様は、上記スルホニウム塩を含む光酸発生剤、該光酸発生剤を含む組成物、及び、該組成物を用いたデバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス、例えば、DRAM等に代表される高集積回路素子では、一層の高密度化、高集積化、あるいは高速化の要望が高い。それに伴い、各種電子デバイス製造分野では、ハーフミクロンオーダーの微細加工技術の確立、例えば、微細パターン形成のためのフォトリソグラフィ技術開発に対する要求がますます厳しくなっている。
【0003】
フォトリソグラフィ技術において、露光光として波長365nmのi線が現在広く用いられている。その理由に、照射光源として、廉価でありながら良好な発光強度を示す中圧・高圧水銀灯が利用できることがある。また、i線領域(360nm〜390nm)に発光波長があるLEDランプが近年普及しつつあることも挙げられる。したがって、酸の作用により脱保護又は架橋し、極性変換して現像液に対する溶解性を変化させて現像することでパターニング形成するフォトレジストに添加する光酸発生剤、及び、酸の作用によるカチオン重合により硬化する樹脂に添加する光酸発生剤のうち、i線に対し高い感応性を示す光酸発生剤の必要性は、今後更に高まって行くと考えられる。
【0004】
また、パッケージング用途等の半導体向けi線リソグラフィは、例えばメッキ工程によるバンプ及びメタルポストの形成等のため厚膜での利用が多い。そのため、レジスト溶剤への高い溶解性を確保しつつ高感度であることが好ましいが、合成コストの点から両立するには課題がある。
【0005】
既存の光酸発生剤のうち、従来i線の吸収を向上させる目的でフェニルスルファニル基を有するスルホニウム塩に、アルキルケトン、アリールケトン、アントラキノン及びチオキサントンのうち少なくとも1つを付加することに加えて、様々な置換基を付加することで長波長化するが検討されて来た(特許文献1〜3)。しかし、従来の光酸発生剤はいずれもi線領域における吸収が十分でないか、吸収が大きい場合でもi線の吸収が高い構造に直接スルホニウムが付加したのではなくフェニルスルファニル基を介した状態のために光利用効率が低く感度が十分でない。また、1つのスルホニウムに対して複数のi線に吸収が高い構造を付加することで1つの発生酸に必要なi線吸収が大きくなり、透過率を求められる使用方法ではデメリットとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011―180586号
【特許文献2】特開2013―043864号
【特許文献3】特開WO2011―052327号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明のいくつかの態様は、このような事情に鑑み、i線領域に高い吸収を有するチオキサントン骨格を有するスルホニウム塩を提供することを課題とする。また、本発明のいくつかの態様は、上記スルホニウム塩を含む光酸発生剤、該光酸発生剤を含む組成物、及び、該組成物を用いたデバイスの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、チオキサントン骨格を有するスルホニウム塩の3位に特定の置換基を導入することで、3位に当該特定の置換基を有しないスルホニウム塩に比べてi線領域に高い吸収を有することを見出した。
【0009】
上記課題を解決するための本発明のひとつの態様は、下記一般式(1)又は一般式(2)で表されるスルホニウム塩である。
【化1】
【0010】
上記式(1)及び(2)中、R及びRは独立して各々に、置換基を有していてもよい直鎖、分岐又は環状の炭素原子数1〜12のアルキル基;置換基を有していてもよい直鎖、分岐又は環状の炭素原子数1〜12のアルケニル基;置換基を有していてもよい炭素原子数6〜14のアリール基;及び、置換基を有していてもよい炭素原子数4〜12のヘテロアリール基;からなる群より選択されるいずれかである。
上記R1及びR2中の少なくとも1つのメチレン基が2価のヘテロ原子含有基で置換されていてもよい。
また、上記R1及びR2は、単結合で直接に、又は、酸素原子、硫黄原子及びメチレン基からなる群より選択されるいずれかを介して、これらが結合する硫黄原子と共に環構造を形成してもよい。
【0011】
3は独立して各々に、置換基を有していてもよい直鎖、分岐又は環状の炭素原子数1〜12のアルキル基;置換基を有していてもよい直鎖、分岐又は環状の炭素原子数1〜12のアルケニル基;置換基を有していてもよい直鎖、分岐又は環状の炭素原子数1〜12のアルコキシ基;;置換基を有していてもよい炭素原子数1〜12のアリールオキシ基;置換基を有していてもよい炭素原子数4〜12のヘテロアリールオキシ基;置換基を有していてもよい直鎖、分岐又は環状の炭素原子数1〜12のアルキルスルファニル基;置換基を有していてもよいアリールスルファニル基;置換基を有していてもよい炭素原子数4〜12のヘテロアリールスルファニル基;置換基を有していてもよい直鎖、分岐又は環状の炭素原子数1〜12のアルキルスルホニル基;置換基を有していてもよい炭素原子数1〜12のアリールスルホニル基;置換基を有していてもよい炭素原子数4〜12のヘテロアリールスルホニル基;等である。
【0012】
4及びRは独立して各々に、水素原子;ヒドロキシ基;置換基を有していてもよい直鎖、分岐又は環状の炭素原子数1〜12のアルキル基;置換基を有していてもよい直鎖、分岐又は環状の炭素原子数1〜12のアルケニル基;置換基を有していてもよい炭素原子数6〜14のアリール基;及び、置換基を有していてもよい炭素原子数4〜12のヘテロアリール基;;置換基を有していてもよい分岐又は環状の炭素原子数1〜12のアルキルカルボニルオキシ基;置換基を有していてもよい直鎖、分岐又は環状の炭素原子数1〜12のアルケニルカルボニルオキシ基;置換基を有していてもよい炭素原子数6〜12のアリールカルボニルオキシ基;置換基を有していてもよい炭素原子数4〜12のヘテロアリールカルボニルオキシ基;からなる群より選択されるいずれかである。
【0013】
は特に制限はないが、ハロゲン原子;ヒドロキシル基;ニトロ基;置換基を有していてもよい直鎖、置換基を有していてもよい直鎖、分岐又は環状の炭素原子数1〜12のアルキル基;置換基を有していてもよい直鎖、分岐又は環状の炭素原子数1〜12のアルケニル基;置換基を有していてもよい炭素原子数6〜14のアリール基;置換基を有していてもよい炭素原子数4〜14のヘテロアリール基;置換基を有していてもよい直鎖、分岐又は環状の炭素原子数1〜12のアルコキシ基;置換基を有していてもよい炭素原子数1〜12のアリールオキシ基;置換基を有していてもよい直鎖、分岐又は環状の炭素原子数1〜12のアルキルスルファニル基;置換基を有していてもよい炭素原子数1〜12のアリールスルファニル基;置換基を有していてもよい直鎖、分岐又は環状の炭素原子数1〜12のアルキルスルホニル基;置換基を有していてもよい炭素原子数6〜12のアリールスルホニル基;及び、置換基を有していてもよい炭素原子数4〜12のヘテロアリールスルホニル基;置換基を有していてもよい直鎖、分岐又は環状の炭素原子数1〜12のアルキルカルボニルオキシ基;置換基を有していてもよい直鎖、分岐又は環状の炭素原子数1〜12のアルケニルカルボニルオキシ基;置換基を有していてもよい炭素原子数6〜12のアリールカルボニルオキシ基;置換基を有していてもよい炭素原子数4〜12のヘテロアリールカルボニルオキシ基;からなる群より選択されるいずれかである。
【0014】
上記R、R及びR中の少なくとも1つのメチレン基が2価のヘテロ原子含有基で置換されていてもよい。
nは0〜4の整数である。
【0015】
上記R1〜R5の少なくとも2つは単結合で直接に、又は、酸素原子、硫黄原子及びメチレン基からなる群より選択されるいずれかを介して、これらが結合する硫黄原子と共に環構造を形成してもよい。
【0016】
上記式(1)中、2つ以上のRの少なくとも2つは単結合で直接に、又は、酸素原子、硫黄原子及びメチレン基からなる群より選択されるいずれかを介して環構造を形成してもよい。
【0017】
X-は1価の対アニオンを示す。
【0018】
本発明の他の態様は、上記スルホニウム塩を含む光酸発生剤である。
本発明の他の態様は、上記スルホニウム塩を含む光酸発生剤と、酸反応性化合物と、を含む組成物である。
また、本発明の他の態様は、上記組成物を基板上に塗布しレジスト膜を形成する工程と、
上記レジスト膜に活性エネルギー線を照射する工程と、
上記レジスト膜を現像する工程と、を含むデバイスの製造方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、i線領域に高い吸収を有するチオキサントン骨格を有するスルホニウム塩を提供できる。また、本発明のひとつの態様におけるスルホニウム塩は、2量体カチオンの含有量が少なく、乳酸エチル等の特定のレジスト溶媒に高い溶解性を有する。それにより、i線領域に高い感度を有する光酸発生剤、組成物、及び、デバイスの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、実施例及び比較例で用いたスルホニウム塩のUVスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
<1>スルホニウム塩
本発明のひとつの態様に係るスルホニウム塩は、上記一般式(1)で表される。
【0022】
1及びR2における直鎖状の炭素原子数1〜12のアルキル基として具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等が挙げられる。
1及びR2における分岐状の炭素原子数1〜12のアルキル基として具体的には、イソプロピル基、t−ブチル基等が挙げられる。
1及びR2における環状の炭素原子数1〜12のアルキル基として具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンタン−1−イル基、アダマンタン−2−イル基、ノルボルナン−1−イル基及びノルボルナン−2−イル基等が挙げられる。
【0023】
1及びR2がメチレン基を有する場合、少なくとも1つのメチレン基に代えて、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−O−CO−O−、−NHCO−、−CONH−、−NH−CO−O−、−O−CO−NH−、−NH−、−N(R)−、−N(Ar1)−、−S−、−SO−及び−SO2−からなる群より選ばれる1種のヘテロ原子含有基を骨格に含んでいてもよい。ただし、−O−O−及び−S−S−等の同じヘテロ原子の連続した繋がりを有しないことが好ましい。
なお、−NHCO−、−CONH−、−NH−CO−O−、−O−CO−NH−及び−NH−等における窒素原子に結合する水素原子は、R又はAr1で置換されていても良い。R及びAr1については後述する。
ただし、硫黄原子(S)はヘテロ原子含有基に直接結合せずに、メチレン基等の2価の炭化水素基を介してヘテロ原子含有基と結合していることが好ましい。
1及びR2のアルケニル基は、上記アルキル基の少なくとも1つの炭素−炭素一重結合が、炭素−炭素二重結合に置換されたものが挙げられる。
【0024】
1及びR2の炭素原子数6〜14のアリール基として具体的には、単環芳香族炭化水素基、及び、該単環芳香族炭化水素が少なくとも2環縮合した縮合多環芳香族炭化水素基等を挙げることができる。これらアリール基は、置換基を有していてもよい。
上記単環芳香族炭化水素基としては、フェニル基が挙げられる。
上記縮合多環芳香族炭化水素基としては、インデン、ナフタレン、アズレン、アントラセン及びフェナントレン等の骨格を有する基が挙げられる。
【0025】
1及びR2の炭素原子数4〜12のヘテロアリール基としては、上記アリール基の少なくとも1つの炭素原子に代えて、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子から選択される少なくともいずれかを骨格に含むものが挙げられる。
【0026】
上記ヘテロアリール基としては、単環芳香族複素環基、及び、該単環芳香族複素環の少なくとも1つが上記芳香族炭化水素基又は脂肪族複素環基等と縮合した縮合多環芳香族複素環基等を挙げることができる。これら芳香族複素環基は、置換基を有していてもよい。
上記単環芳香族複素環基としては、フラン、チオフェン、チアゾール、ピロール、イミダゾール、ピリジン、ピリミジン及びピラジン等の骨格を有する基が挙げられる。
【0027】
縮合多環芳香族複素環基としては、インドール、プリン、キノリン、イソキノリン、クロメン、フェノキサジン、キサンテン、アクリジン、フェナジン及びカルバゾール等の骨格を有する基が挙げられる。
【0028】
1及びR2が有してもよい置換基(以下、「第1置換基」ともいう)としては、ヒドロキシ基、シアノ基、メルカプト基、カルボキシ基、アルコキシ基(−OR)、アルキルスルファニル基(−CSR)、アルキルカルボニル基(−COR)、アルコキシカルボニル基(−COOR)、アリール基(−Ar1)、アリールオキシ基(−OAr1)、アリールスルファニル基(−CSAr1)、アミノ基、アルキルアミノ基(−NHR7)、ジアルキルアミノ基(−N(R)、アリールアミノ基(−NHAr1)、ジアリールアミノ基(−N(Ar1)、N−アルキル−N−アリールアミノ基(−NRAr)ホスフィノ基、シリル基、ハロゲン原子、トリアルキルシリル基(−Si−(R)、該トリアルキルシリル基のアルキル基の少なくとも1つがAr1で置換されたシリル基、アルキルスルファニル基(−SR)及びアリールスルファニル基(−SAr1)等を挙げることができるが、これらに制限されない。
これらの中でも、第1置換基としてヒドロキシ基、メルカプト基、アルキルスルファニル基、アリールスルファニル基及びシアノ基等の極性基を有すると、リソグラフィ特性が良好となることから好ましい。
また、第1置換基として(メタ)アクリロイル基等の重合性基を有していてもよい。
【0029】
上記R1及びR2は、単結合で直接に、又は、酸素原子、硫黄原子及びメチレン基からなる群より選択されるいずれかを介して、これらが結合する硫黄原子と共に環構造を形成してもよい。
【0030】
上記第1置換基中の上記Rは、炭素数1以上のアルキル基であることが好ましい。炭素数1以上のアルキル基としては、上記R1及びR2としてのアルキル基と同じ選択肢から選択できる。また、上記R1のとしてのアルキル基の水素の1つがトリメチルシリル基、トリエチルシリル基又はジメチルエチルシリル基等のトリアルキルシリル基で置換されたシリル基置換アルキル基;これらの水素原子の少なくとも1つがシアノ基又はフルオロ基等で置換されたアルキル基;等も好ましく挙げられる。
【0031】
上記第1置換基中のAr1は、アリール基又はヘテロアリール基であることが好ましい。Ar1としては、上記R1及びR2としてのアリール基及びヘテロアリール基と同じ選択肢から選択できる。
なお、本発明の一つの態様におけるスルホニウム塩は、ポリマーの一部に結合したポリマー成分であってもよく、また、ポリマーユニットとして含まれるポリマー成分であってもよい。
本発明において、低分子化合物とは重量平均分子量が2000未満のものであり、ポリマー成分とは重量平均分子量が2000以上のものとする。
【0032】
1及びR2としては、i線領域での高い吸収と安定性の向上の点からアリール基が好ましい。
【0033】
3におけるアルキル基及びアルケニル基は、それぞれ上記R1及びR2としてのアルキル基及びアルケニル基と同じ選択肢から選択できる。
3におけるアルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルスルファニル基及びアリールスルファニル基は、それぞれ上記第1置換基のアルコキシ基、上記アリールオキシ基、上記アルキルスルファニル基及び上記アリールスルファニル基と同じ選択肢から選択できる。
3におけるアルキルスルホニル基は及びアリールスルホニル基は、スルホニル基が上記第1置換基としてのアルキル基又はアリール基を有するものが挙げられる。
3は置換基(以下、「第2置換基」ともいう)を有しても良い。上記第2置換基は上記第1置換基と同様の選択肢から選択できる。
【0034】
3として好ましくは、吸収のシフトにより365nmのモル吸光係数を向上させる点からアルキルオキシ基又はアリールオキシ基であることが好ましい。
【0035】
及びRとしてのアルキル基、アルケニル基、アリール基及びヘテロアリール基は、それぞれ上記記R1及びR2としてのアルキル基、アルケニル基、アリール基及びヘテロアリール基と同じ選択肢から選択できる。
及びRとしてのアルキルカルボニルオキシ基、アルケニルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基及びヘテロアリールカルボニルオキシ基は、カルボニルオキシ基が第1置換基としてのアルキル基又はアリール基を有するものが挙げられる。
及びRは置換基(以下、「第3置換基」ともいう)を有しても良い。上記第3置換基としては、上記第1置換基と同様のものが挙げられる。
【0036】
4及びR5としては、365nmのモル吸光係数を高くする点からアルキル、アルケニル又はアラルキル基が好ましい。
【0037】
のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられる。
のアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルスルファニル基、アリールスルファニル基、アルキルスルホニル基;アリールスルホニル基、ヘテロアリールスルホニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルケニルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基及びヘテロアリールカルボニルオキシ基は、R及びRと同じ選択肢から選択できる。
【0038】
上記R、R及びR中の少なくとも1つのメチレン基が上記2価のヘテロ原子含有基で置換されていてもよい。
nは0〜4の整数である。
上記R1〜R5の少なくとも2つは単結合で直接に、又は、酸素原子、硫黄原子及びメチレン基からなる群より選択されるいずれかを介して、これらが結合する硫黄原子と共に環構造を形成してもよい。
2つ以上のRの少なくとも2つは単結合で直接に、又は、酸素原子、硫黄原子及びメチレン基からなる群より選択されるいずれかを介して環構造を形成してもよい。
【0039】
なお、本発明の一つの態様におけるスルホニウム塩は、ポリマーの一部に結合したポリマー成分であってもよく、また、ポリマーユニットとして含まれるポリマー成分であってもよい。ポリマー成分であるときは、上記第2置換基としてはポリマーの主鎖が挙げられ、R1〜R6の各炭素原子数は、ポリマー全体で重量平均分子量が2000〜200000となるように調整することが好ましい。
【0040】
本発明のいくつかの態様において、スルホニウムオニウムカチオンとして例えば下記に示すものが挙げられるが、本発明はこれに限定されない。
【0041】
【化2】
【0042】
上記Xは1価の対アニオンである。
【0043】
上記アニオンとしては特に制限はなく、スルホン酸アニオン、カルボン酸アニオン、イミドアニオン、メチドアニオン、カーボアニオン、ボレートアニオン、ハロゲンアニオン、リン酸アニオン、アンチモン酸アニオン、ヒ酸アニオン等のアニオンが挙げられる。
より詳しくは、アニオンとして、ZAa−、(Rf)PF(6-b)、R10BA(4−c)、R10GaA(4−c)、R11SO、(R11SO又は(R11SOで表されるアニオンが好ましく挙げられる。Rfの2個、R10及びR11の2個はそれぞれ、互いに結合して環を形成してもよい。
【0044】
Zは、リン原子、ホウ素原子又はアンチモン原子を表す。Aはハロゲン原子(フッ素原子が好ましい。)を表す。
Pはリン原子、Fはフッ素原子、Bはホウ素原子、Gaはガリウム原子を表す。
Sはイオウ原子、Oは酸素原子、Cは炭素原子、Nは窒素原子を表す。
【0045】
Rfは、水素原子の80モル%以上がフッ素原子で置換されたアルキル基が好ましく、アルキル基としては炭素原子数1〜8のアルキル基が好ましい。フッ素置換によりRfとするアルキル基としては、直鎖アルキル基(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル及びオクチル等)、分枝鎖アルキル基(イソプロピル、イソブチル、s−ブチル及びt−ブチル等)及びシクロアルキル基(シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシル等)等が挙げられる。Rfにおいてこれらのアルキル基の水素原子がフッ素原子に置換されている割合は、もとのアルキル基が有していた水素原子のモル数に基づいて、80モル%以上が好ましく、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは100%である。
フッ素原子による置換割合がこれら好ましい範囲にあると、スルホニウム塩の光感応性がさらに良好となる。特に好ましいRfとしては、CF、CFCF、(CFCF、CFCFCF、CFCFCFCF、(CFCFCF、CFCF(CF)CF及び(CFが挙げられる。b個のRfは、相互に独立であり、従って、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0046】
10は、水素原子の一部が少なくとも1個のハロゲン原子又は電子求引基で置換されたフェニル基を表す。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子等が挙げられる。電子求引基としては、トリフルオロメチル基、ニトロ基及びシアノ基等が挙げられる。これらのうち、1個の水素原子がフッ素原子又はトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基が好ましい。c個のR10は相互に独立であり、従って、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0047】
11は炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のパーフルオロアルキル基又は炭素原子数6〜20のアリール基を表し、アルキル基及びパーフルオロアルキル基は直鎖、分枝鎖状又は環状のいずれでもよく、アリール基は無置換であっても、置換基を有していてもよい。
【0048】
aは4〜6の整数を表す。bは1〜5の整数を表し、好ましくは2〜4、特に好ましくは2又は3である。cは、1〜4の整数を表し、好ましくは4である。
【0049】
ZAで表されるアニオンとしては、SbF、PF及びBFで表されるアニオン等が挙げられる。
【0050】
(Rf)PF(6−b)で表されるアニオンとしては、(CFCFPF、(CFCFPF、((CFCF)PF、((CFCF)PF、(CFCFCFPF、(CFCFCFPF、((CFCFCFPF、((CFCFCFPF、(CFCFCFCFPF及び(CFCFCFCFPFで表されるアニオン等が挙げられる。これらのうち、(CFCFPF、(CFCFCFPF、((CFCF)PF、((CFCF)PF、((CFCFCFPF及び((CFCFCF
PFで表されるアニオンが好ましい。
【0051】
10BA(4−c)で表されるアニオンとしては、(C、((CF、(CF、(CBF、CBF及び(Cで表されるアニオン等が挙げられる。これらのうち、(C及び((CFで表されるアニオンが好ましい。
【0052】
10GaA(4−c)で表されるアニオンとしては、(CGa、((CFGa、(CFGa、(CGaF、CGaF及び(CGaで表されるアニオン等が挙げられる。これらのうち、(CGa及び((CFGaで表されるアニオンが好ましい。
【0053】
11SOで表されるアニオンとして、WO2011/093139号公報に記載のものが挙げられる。感放射線性酸発生剤として具体的には下記式(a1)に示すアニオン構造を有するスルホン酸誘導体が好ましいが、これに限定されない。
【0054】
11aCOOCHCHCFHCFSO (a1)
上記式(a1)において、R11aは、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20の1価の有機基を示す。上記有機基として、好ましくは、炭素原子数1〜20の下記式で表される基が挙げられる。
11b−(L−R11c− (a2)
【0055】
上記式(a2)において、R11bは、直鎖状、分岐状又は環状の1価の脂肪族炭化水素基;1価の芳香族炭化水素基;並びに、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−O−CO−O−、−NHCO−、−CONH−、−NH−CO−O−、−O−CO−NH−、−NH−、−N=、−S−、−SO−及び−SO2−からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を骨格に含む1価の脂肪族複素環基又は1価の芳香族複素環基;から選ばれるいずれかの1価の基である。
また、Lは、各々独立に、直接結合;又は−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−O−CO−O−、−NHCO−、−CONH−、−NH−CO−O−、−O−CO−NH−、−NH−、−S−及び−CO−O−CH−CO−O−からなる群より選ばれる
いずれかの基である。
11cは、各々独立に、直鎖状、分岐状又は環状の2価の脂肪族炭化水素基;2価の芳香族炭化水素基;並びに、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−O−CO−O
−、−NHCO−、−CONH−、−NH−CO−O−、−O−CO−NH−、−NH−、−N=、−S−、−SO−及び−SO2−からなる群より選ばれる少なくとも1種の基
を骨格に含む2価の脂肪族複素環基又は2価の芳香族複素環基;より選ばれるいずれかの2価の基である。
【0056】
また、上記式(a2)において、mは0又は1〜10の整数である。ただし、mが0のときR11aが前記ヒドロキシル基を有し、mが1以上のときR11b及びR11cのうち少なくともいずれかが上記ヒドロキシル基を有する。mは0〜5が好ましく、0〜3がより好ましい。
なお、R11aが置換基を有している場合、その置換基の炭素原子数も含めて、炭素原子数1〜200であることが好ましく、炭素原子数1〜100であることがより好ましく、炭素原子数1〜30であることがさらに好ましく、炭素原子数3〜30であることが特に好ましい。また、R11aが置換基を有していることが好ましく、すなわち、R11b及びR11cが有する少なくとも1つの水素が該置換基で置換されていることが好ましい。
11aが有していてもよい上記置換基としては、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリール基、アリーロキシ基、ホスフィノ基、アルキルチオ基及びアリールチオ基等を挙げることができるが、これらに制限されない。
11SOで表されるアニオンとしては、上記式(a1)に示すアニオン以外に、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ペンタフルオロエタンスルホン酸アニオン、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸アニオン、ノナフルオロブタンスルホン酸アニオン、ペンタフルオロフェニルスルホン酸アニオン、p−トルエンスルホン酸アニオン、ベンゼンスルホン酸アニオン、カンファースルホン酸アニオン、メタンスルホン酸アニオン、エタンスルホン酸アニオン、プロパンスルホン酸アニオン及びブタンスルホン酸アニオン等が挙げられる。これらのうち、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ノナフルオロブタンスルホン酸アニオン、メタンスルホン酸アニオン、ブタンスルホン酸アニオン、ベンゼンスルホン酸アニオン及びp−トルエンスルホン酸アニオン等が挙げられる。
【0057】
(R11SOで表されるアニオンとしては、(CFSO、(CSO、(CSO及び(CSOで表され
るアニオン等が挙げられる。
【0058】
(R11SOで表されるアニオンとしては、(CFSO、(CSO、(CSO及び(CSOで表され
るアニオン等が挙げられる。また、2つの(R11SO)に対応する部分が互いに結合して環構造を形成した環状イミドも(R11SOで表されるアニオンとして挙げられる。
【0059】
一価のアニオンとしては、上記アニオン以外に、過ハロゲン酸イオン(ClO、BrO等)、ハロゲン化スルホン酸イオン(FSO、ClSO等)、硫酸イオン(CHSO、CFSO、HSO等)、炭酸イオン(HCO、CHCO等)、アルミン酸イオン(AlCl、AlF等)、ヘキサフルオロジマス酸イオン(BiF)、カルボン酸イオン(CHCOO、CFCOO、CCOO、CHCOO、CCOO、CFCOO等)、アリールホウ酸イオン(B(C、CHCHCHCHB(C等)、チオシアン酸イオン(SCN)及び硝酸イオン(NO)等が使用できる。
【0060】
これらのアニオンのうち、スルホン酸アニオン等が好ましい。
【0061】
<2>上記スルホニウム塩の製造方法
本発明のひとつの態様におけるスルホニウム塩の合成方法について説明する。本発明においてはこれに限定されない。
目的とするスルホニウム塩の合成法は、例えばChemistry - A European Journal, 14(21), 6490-6497, 2008に記載されるような下記に示す方法が挙げられる。以下では上記式(1)で表される合成方法を例示するが、本発明はこれに限定されない。
まず、チオサリチル酸(必要により置換基R6を有していてもよい)とR3の置換基を有するブロモベンゼン(必要によりR4及び/又はR5置換基を有していてもよい)にCuとKIとKCOとを混合し10時間反応させ、2−フェニルスルファニル安息香酸誘導体(下記式(3))を得る。次いで、塩化チオニル処理にて酸塩化物にした後にルイス酸触媒存在下で環化させチオキサントン誘導体(以下、スルホニウム基を導入する前の下記式(4)で示される化合物を「チオキサントン誘導体」という)を得る。該チオキサントン誘導体にR1及びR2の置換基を有するスルホキシドとメタンスルホン酸と五酸化二リンとを混合し反応させ、チオキサントン骨格を有するスルホニウム塩(下記式(1))を得る。
1〜R及びnは上記と同様のものが挙げられる。
【0062】
【化3】
【0063】
上記反応は、0価の銅の代わりに1又は2価のCuを用いることもでき、環化反応において酸塩化物の代わりに酸無水物又はカルボン酸を用いてルイス酸の代わりにブレンステッド酸を用いることも出来る。
【0064】
上記スルホニウム塩の合成において、チオキサントン誘導体にスルホニウム基を導入する際、チオキサントン誘導体の反応選択性とジカチオンの生成抑制を考慮してチオキサントン誘導体の3位に特定の置換基R3を有することが好ましい。また、チオキサントン誘導体(上記式(4))の置換基R5が置換基R3と異なる置換基であることがより好ましく、置換基R5が水素原子であることがさらに好ましい。そうすることで、反応選択性が向上しジカチオンが生成されにくく、効率よくモノカチオンが得られる。
上記チオキサントン誘導体にスルホニウム基を導入する際に、得られるスルホニウム塩においてジカチオンが生成しにくくするため、上記チオキサントン誘導体が有するR3としては、アルキルオキシ基及びアリールオキシ基等が好ましい。
【0065】
なお、チオキサントン誘導体へのスルホニウム基の導入は、2位体又は4位体の混合となることがある。本発明のひとつの態様において、2位体及び4位体をそれぞれ単離して用いてもよいが、混合物として用いることも可能である。混合物として用いるときの2位体と4位体の比率は特に制限はないが、2位体が多い方が酸発生効率の点から好ましい。具体的には2位体:4位体の割合は、7:3〜5:5であることが好ましい。
【0066】
<3>光酸発生剤
本発明のいくつかの態様は、上記スルホニウム塩を含有する光酸発生剤である。
【0067】
上述したように、本発明のいくつかの態様におけるスルホニウム塩はポリマー成分であってもよい。その際、分子内にアリール基以外の不飽和結合を有するスルホニウム塩を、ポリマーのユニットを構成するモノマーとして用いることも好ましい態様である。ポリマーのユニットを構成するモノマーとして用いる場合、上記ポリマーは、ホモポリマーでもよいが、他のユニットを有するコポリマーであってもよい。コポリマーであるとき他のユニットとしては、酸反応性化合物として作用するもの、及び、ヒドロキシアリール基含有ユニット等が挙げられる。上記酸反応性化合物として作用するもの、及び、ヒドロキシアリール基含有ユニット等については、後述する。
【0068】
<4>組成物
本発明のひとつの態様は、上記光酸発生剤と、酸反応性化合物と、を含む組成物に関する。
(光酸発生剤)
本発明のひとつの態様の組成物中の上記光酸発生剤の含有量は、該光酸発生剤を除くレジスト組成物成分100質量部に対し0.1〜50質量部であることが好ましく、1〜30質量部であることがより好ましく、3〜15質量部であることがさらに好ましい。
上記光酸発生剤の含有量の算出において、有機溶剤はレジスト組成物成分100質量部中に含まないこととする。
上記光酸発生剤がポリマーである場合は、ポリマー主鎖を除いた質量基準とする。また、上記光酸発生剤が、後述のヒドロキシアリール基含有ユニット及び酸反応性化合物からなる群より選択される少なくとも1つと共に同一ポリマーのユニットとして含まれる場合、上記光酸発生剤として作用するユニットは、ポリマー全ユニット中、0.1〜40モル%であることが好ましく、1〜30モル%であることがより好ましく、3〜20モル%であることがさらに好ましい。
【0069】
(酸反応性化合物)
上記酸反応性化合物は、酸により脱保護する保護基を有する化合物、酸により重合する重合性基を有する化合物、及び、酸により架橋作用を有する架橋剤からなる群より選択される少なくともいずれかであることが好ましい。
【0070】
酸により脱保護する保護基を有する化合物とは、酸によって保護基が脱保護することにより極性基を生じ、現像液に対する溶解性が変化する化合物である。例えばアルカリ現像液等を用いる水系現像の場合、アルカリ現像液に対して不溶性であるが、露光により上記光酸発生剤から発生する酸によって露光部において上記保護基が上記化合物から脱保護することにより、アルカリ現像液に対して可溶となる化合物である。
【0071】
本発明においては、アルカリ現像液に限定されず、水系中性現像液又は有機溶剤現像液であってもよい。そのため、有機溶剤現像液を用いる場合は、酸により脱保護する保護基を有する化合物は、露光により上記光酸発生剤から発生する酸によって露光部において上記保護基が上記化合物から脱保護して極性基を生じ、有機溶剤現像液に対して溶解性が低下する化合物である。
上記極性基としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基及びスルホ基等が挙げられる。これらの中でも構造中に−OHを有する極性基が好ましく、ヒドロキシ基又はカルボキシ基が好ましい。
【0072】
酸で脱保護する保護基の具体例としては、カルボキシ基と第3級アルキルエステル基を形成する基;アルコキシアセタール基;テトラヒドロピラニル基;シロキシ基及びベンジロキシ基等が挙げられる。該保護基を有する化合物として、これら保護基がペンダントしたスチレン骨格、メタクリレート又はアクリレート骨格を有する化合物等が好適に用いられる。
【0073】
酸により脱保護する保護基を有する化合物は、保護基含有低分子化合物であっても、保護基を有するユニット含有ポリマー成分であってもよい。
【0074】
酸により重合する重合性基を有する化合物とは、酸によって重合することにより現像液に対する溶解性を変化させる化合物である。例えば水系現像の場合、水系現像液に対して可溶である化合物に対して作用し、重合後に該化合物を水系現像液に対して溶解性を低下させるものである。具体的には、エポキシ基、ビニルオキシ基及びオキセタニル基等を有する化合物が挙げられる。
酸により重合する重合性基を有する化合物は、重合性低分子化合物であっても、重合性基を有するユニット含有ポリマー成分であってもよい。
【0075】
酸により架橋作用を有する架橋剤とは、酸によって架橋することにより現像液に対する溶解性を変化させる化合物である。例えば水系現像の場合、水系現像液に対して可溶である化合物に対して作用し、重合後又は架橋後に該化合物を水系現像液に対して溶解性を低下させるものである。具体的には、エポキシ基、ビニルオキシ基、1−アルコキシアミノ基及びオキセタニル基等の架橋性基を有する架橋剤が挙げられる。該化合物が架橋作用を有する架橋剤であるとき、架橋する相手の化合物、つまり架橋剤と反応して現像液に対する溶解性が変化する化合物としては、フェノール性水酸基を有する化合物等が挙げられる。
酸により架橋作用を有する化合物は、架橋性低分子化合物であっても、架橋性基を有するユニット含有ポリマー成分であってもよい。
【0076】
上記酸反応性化合物がポリマー成分であるとき、上記脱保護基を含有するユニットに加えて、レジスト組成物において通常用いられているその他のユニットを該ポリマー成分に含有させてもよい。その他のユニットとしては、例えば、ラクトン骨格、スルトン骨格及びラクタム骨格等からなる群より選択される少なくともいずれかの骨格を有するユニット;エーテル結合、エステル結合及びアセタール結合を有する基、並びに、ヒドロキシ基等からなる群より選択される少なくともいずれかの基を有するユニット;ヒドロキシアリール基含有ユニット;等が挙げられる。さらに、上記光酸発生剤をユニットとして含有しても良い。
上記酸反応性化合物が、上記光酸発生剤及び後述のヒドロキシアリール基含有ユニットからなる群より選択される少なくとも1つと共に同一ポリマーのユニットとして含まれる場合、上記酸反応性化合物として作用するユニットは、ポリマー全ユニット中、3〜40モル%であることが好ましく、5〜35モル%であることがより好ましく、7〜30モル%であることがさらに好ましい。
【0077】
(ヒドロキシアリール基含有ユニットを有するポリマー)
本発明のひとつの態様においては、組成物が、ヒドロキシアリール基含有ユニットを有するポリマーをさらに含むことが好ましい。上記ヒドロキシアリール基含有ユニットは、上記酸発生剤及び/又は酸反応性化合物がユニットとして含まれるポリマー中に含まれていてもよく、また、別のポリマーのユニットであってもよい。
【0078】
ヒドロキシアリール基含有ユニットを有するポリマーを用いた場合、上記光酸発生剤が分解する際の水素源となり得、酸発生効率をより向上させ、高感度となるため好ましい。
上記ヒドロキシアリール基含有ユニットとしては、下記式に示されるユニットが好ましく挙げられるが、これに限定されない。上記ヒドロキシアリール基含有ユニットのベンゼン骨格にはヒドロキシ基以外の置換基を有しても良い。上記ヒドロキシ基以外の置換基としては、アルキル基、アリール基等が挙げられる。
【0079】
【化4】
【0080】
上記ヒドロキシアリール基含有ユニットが、上記光酸発生剤及び上記酸反応性化合物からなる群より選択される少なくとも1つと共に同一ポリマーのユニットとして含まれる場合、上記ヒドロキシアリール基含有ユニットは、水系現像のポジ型レジスト組成物用ではポリマー全ユニット中、3〜90モル%であることが好ましく、5〜80モル%であることがより好ましく、7〜70モル%であることがさらに好ましい。水系現像のネガ型レジスト組成物用ではポリマー全ユニット中、60〜99モル%であることが好ましく、70〜98モル%であることがより好ましく、75〜98モル%であることがさらに好ましい。
【0081】
(含フッ素はっ水ポリマー)
本発明のひとつの態様の組成物は、含フッ素はっ水ポリマーを含んでいても良い。
上記含フッ素はっ水ポリマーとしては、特に制限はないが液浸露光プロセスに通常用いられるものが挙げられ、上記ポリマーよりもフッ素原子含有率が大きい方が好ましい。それにより、組成物を用いてレジスト膜を形成する場合に、含フッ素はっ水ポリマーのはっ水性に起因して、レジスト膜表面に上記含フッ素はっ水ポリマーを偏在化させることができる。
【0082】
フッ素はっ水ポリマーのフッ素含有率としては、フッ素はっ水ポリマー中の炭化水素基における水素原子の25モル%以上がフッ素化されていることが好ましく、50モル%以上フッ素化されていることがより好ましい。
【0083】
組成物中のフッ素はっ水ポリマーの含有量としては、本発明のひとつの態様の上記ポリマー(該フッ素はっ水ポリマーでないもの)100質量部に対し、0.5〜10質量部であることが、レジスト膜の疎水性が向上する点から好ましい。フッ素はっ水ポリマーは単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0084】
(その他の成分)
本発明のひとつの態様の組成物には、上記成分以外に必要により任意成分としてさらに、通常のレジスト組成物で用いられる酸拡散制御剤、界面活性剤、有機カルボン酸、有機溶剤、溶解抑制剤、安定剤及び色素、増感剤、上記以外のポリマー、更には他の光酸発生剤等を組み合わせて含んでいてもよい。
【0085】
上記酸拡散制御剤は、光酸発生剤から生じる酸のレジスト膜中における拡散現象を制御し、非露光領域における好ましくない化学反応を制御する効果を奏する。そのため、得られるレジスト組成物の貯蔵安定性がさらに向上し、またレジストとしての解像度がさらに向上するとともに、露光から現像処理までの引き置き時間の変動によるレジストパターンの線幅変化を抑えることができ、プロセス安定性に優れたレジスト組成物が得られる。
酸拡散制御剤としては、例えば、同一分子内に窒素原子を1個有する化合物、2個有する化合物、窒素原子を3個有する化合物、アミド基含有化合物、ウレア化合物、含窒素複素環化合物等が挙げられる。また、酸拡散制御剤として、露光により感光し弱酸を発生する光崩壊性塩基を用いることもできる。光崩壊性塩基としては、例えば、露光により分解して酸拡散制御性を失うオニウム塩化合物、ヨードニウム塩化合物等が挙げられる。
具体的には、特許3577743号、特開2001−215689号、特開2001−166476号、特開2008−102383号、特開2010−243773号、特開2011−37835号及び特開2012−173505号に記載の化合物が挙げられる。
酸拡散制御剤の含有量は、レジスト組成物成分100質量部に対して0.01〜10質量部であることが好ましく、0.03〜5質量%であることがより好ましく、0.05〜3質量%であることがさらに好ましい。
【0086】
上記界面活性剤は、塗布性を向上させるために用いることが好ましい。界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマー等が挙げられる。
界面活性剤の含有量は、レジスト組成物成分100質量部に対して0.0001〜2質量部であることが好ましく、0.0005〜1質量%であることがより好ましい。
【0087】
上記有機カルボン酸としては、脂肪族カルボン酸、脂環式カルボン酸、不飽和脂肪族カルボン酸、オキシカルボン酸、アルコキシカルボン酸、ケトカルボン酸、安息香酸誘導体、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−ナフトエ酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸等を挙げることができる。電子線露光を真空化で行う際にはレジスト膜表面より揮発して描画チャンバー内を汚染してしまう恐れがあるので、好ましい有機カルボン酸としては、芳香族有機カルボン酸、その中でも例えば安息香酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸が好適である。
有機カルボン酸の含有量は、レジスト組成物成分100質量部に対し、0.01〜10質量部が好ましく、より好ましくは0.01〜5質量部、更により好ましくは0.01〜3質量部である。
【0088】
有機溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3 − メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、β−メトキシイソ酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸イソアミル、乳酸エチル、トルエン、キシレン、酢酸シクロヘキシル、ジアセトンアルコール、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート等が好ましい。これらの有機溶剤は単独又は組み合わせて用いられる。
レジスト組成物成分は、上記容器溶剤に溶解し、固形分濃度として、1〜40質量%で溶解することが好ましい。より好ましくは1〜30質量%、更に好ましくは3〜20質量%である。このような固形分濃度の範囲とすることで、上記の膜厚を達成できる。
【0089】
本発明のひとつの態様のレジスト組成物がポリマーを含む場合、ポリマーは、重量平均分子量が2000〜200000であることが好ましく、2000〜50000であることがより好ましく、2000〜15000であることがさらに好ましい。上記ポリマーの好ましい分散度(分子量分布)(Mw/Mn)は、感度の観点から、1.0〜1.7であり、より好ましくは1.0〜1.2である。上記ポリマーの重量平均分子量及び分散度は、GPC測定によるポリスチレン換算値として定義される。
【0090】
本発明のひとつの態様の組成物は、上記組成物の各成分を混合することにより得られ、混合方法は特に限定されない。
【0091】
<5>デバイスの製造方法
本発明のひとつの態様は、上記レジスト組成物を基板上に塗布する等してレジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、活性エネルギー線を用いて上記レジスト膜を露光するフォトリソグラフィ工程と、露光されたレジスト膜を現像してフォトレジストパターンを得るパターン形成工程と、を含むデバイスの製造方法である。
【0092】
フォトレジストパターンを厚膜として、厚膜フォトレジストパターンの非レジスト部に、例えばメッキ等によって金属等の導体を埋め込むことにより、メタルポストやバンプ等の接続端子を形成することができる。なお、メッキ処理方法はとくに限定されず、公知の各種方法を用いることができる。
【0093】
本発明のひとつの形態は、上記レジスト組成物を用いて、レジスト膜形成工程とフォトリソグラフィ工程とパターン形成工程とを含み、個片化チップを得る前のパターンを有する基板の製造方法であってもよい。
本発明のひとつの形態は、上記光硬化性組成物を用いて基板上に塗布膜を形成する塗布膜形成工程と、
活性エネルギー線を用いて上記塗布膜露光し、層間絶縁膜を得る工程を含むデバイスの製造方法であってもよい。
【0094】
フォトリソグラフィ工程において露光に用いる活性エネルギー線としては、本発明のスルホン酸誘導体が活性化して酸を発生させ得る光であればよく、KrFエキシマレーザ光、ArFエキシマレーザ光、F2エキシマレーザ光、電子線、UV、可視光線、X線、電子線、イオン線、i線、EUV等を意味する。
【0095】
上記基板としては、特に限定されず公知のものを用いることができる。例えば、シリコン、窒化シリコン、チタン、タンタル、パラジウム、銅、クロム、アルミニウム等の金属製の基板;ガラス基板;等が挙げられる。特に、本発明のひとつの態様におけるスルホニウム塩が構造中にヒドロキシ基、メルカプト基、アルキルスルファニル基、アリールスルファニル基又はシアノ基を有し、該スルホニウム塩を含む組成物をレジスト組成物として用いる場合、本発明のひとつの態様におけるスルホニウム塩を銅等の金属製基板表面に偏在させることが出来るため、良好にレジストパターンを形成することができる。
本発明のひとつの態様において、フォトリソグラフィ工程又は層間絶縁膜を得る工程の露光に用いる活性エネルギー線としては、i線が好ましく挙げられる。
【0096】
光の照射量は、光硬化性組成物中の各成分の種類及び配合割合、並びに塗膜の膜厚等によって異なるが、1J/cm以下又は1000μC/cm以下であることが好ましい。
【0097】
本発明のひとつの態様において、上記レジスト組成物により形成されたレジスト膜の膜厚は10〜200nmであることが好ましい。上記レジスト組成物は、スピンコート、ロールコート、フローコート、ディップコート、スプレーコート、ドクターコート等の適当な塗布方法により基板上に塗布され、60〜150℃で1〜20分間、好ましくは80〜120℃で1〜10分間プリベークして薄膜を形成する。この塗布膜の膜厚は10〜200nmであり、20〜150nmであることが好ましい。
【実施例】
【0098】
以下、本発明を実施例によって、さらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら制限されるものではない。
【0099】
<スルホニウム塩1の合成>
(合成例1)2−(3−メトキシフェニルスルファニル)安息香酸の合成
チオサリチル酸6.7gと3−ブロモアニソール8.1gと銅0.8gと炭酸カリウム6.0gとN、N―ジメチルホルムアミドとを混合し、140℃で20時間撹拌する。25℃へ冷却後、水添加にて晶析する。結晶をろ別後、アセトンに溶解し、再度水添加にて晶析し、結晶をろ別することで2−(3−メトキシフェニルスルファニル)安息香酸を7.4g得る。
【0100】
【化5】
【0101】
(合成例2)2−(3−メトキシフェニルスルファニル)ベンゾイルクロリドの合成
合成例1で得られる2−(3−メトキシフェニルスルファニル)安息香酸5.0gをトルエン25g中に添加して、塩化チオニル4.3gを滴下し、25℃で6時間反応する。反応後に溶媒留去することで目的物の2−(3−メトキシフェニルスルファニル)ベンゾイルクロリドを5.1g得る。
【0102】
【化6】
【0103】
(合成例3)3-メトキシチオキサンテン−9-オンの合成
塩化メチレン30g中に塩化アルミニウム2.5gを添加しいて0℃とするこれに合成例2で得られる2−(3−メトキシフェニルスルファニル)ベンゾイルクロリド5.0gを塩化メチレン10gで希釈して滴下する。滴下後、25℃で1時間撹拌する。撹拌後、0℃とし、純水20gを加えて反応停止後、25℃で5%炭酸ナトリウム水溶液10gで2回洗浄後、純水20gで2回洗浄後、塩化メチレンを留去する。得られた固体をエタノールで再結晶することで3−メトキシチオキサンテン−9−オンを3.5g得る。
【0104】
【化7】
【0105】
(合成例4)(3−メトキシ−9−オキソ−9H−チオキサンテン‐2−イル)ジフェニルスルホニウム ノナフルオロブタンスルホネート及び(3−メトキシ−9−オキソ−9H−チオキサンテン‐2−イル)ジフェニルスルホニウム ノナフルオロブタンスルホネートの混合物(スルホニウム塩1)の合成
合成例3で得られる3−メトキシチオキサンテン−9−オン 5.0gとジフェニルスルホキシド2.8gと五酸化リン1.0gとをメタンスルホン酸18gに溶解し40℃で3時間撹拌する。撹拌後、純水25gを加えてさらに10分撹拌し、ノナフルオロブタンスルホン酸カリウム4.5gと塩化メチレン30gとを加えて1時間撹拌する。これを分液して純水20gで3回洗浄後に塩化メチレンを留去することでジカチオン不純物を11%(HPLC Area%)含むオイルを得る。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(塩化メチレン/メタノールン=90/10(体積比))により精製することで(3−メトキシ−9−オキソ−9H−チオキサンテン‐2−イル)ジフェニルスルホニウム ノナフルオロブタンスルホネート及び(3−メトキシ−9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イル)ジフェニルスルホニウム ノナフルオロブタンスルホネートの混合物(スルホニウム塩1)を7.2g得る。
なお、得られるスルホニウム塩1は、4位体:2位体=6:4である。
【0106】
【化8】
【0107】
<スルホニウム塩2の合成>
(合成例5)(3−メチルスルファニル−9−オキソ−9H−チオキサンテン‐2−イル)ジフェニルスルホニウム ノナフルオロブタンスルホネート及び(3−メチルスルファニル−9−オキソ−9H−チオキサンテン‐2−イル)ジフェニルスルホニウム ノナフルオロブタンスルホネートの混合物(スルホニウム塩2)の合成
3−メトキシチオキサンテン−9−オンに代わりに3−メチルスルファニルチオキサンテン−9−オンを用いる以外は上記合成例4と同様に合成を行い、ジカチオン不純物14%を含むオイルをカラムクロマトグラフィーにより精製する事で(3−メチルスルファニル−9−オキソ−9H−チオキサンテン‐2−イル)ジフェニルスルホニウム ノナフルオロブタンスルホネート及び(3−メチルスルファニル−9−オキソ−9H−チオキサンテン‐2−イル)ジフェニルスルホニウム ノナフルオロブタンスルホネートの混合物(スルホニウム塩2)を得る。 3−メチルスルファニルチオキサンテン−9−オンは合成例1〜3に倣って合成可能である。また、得られるスルホニウム塩2は、4位体:2位体=6:4である。
【0108】
【化9】
【0109】
<スルホニウム塩3の合成>
(合成例6)(1−ヒドロキシ−3−メトキシ−9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イル)ジフェニルスルホニウム ノナフルオロブタンスルホネート及び(1−ヒドロキシ−3−メトキシ−9−オキソ−9H−チオキサンテン‐2−イル)ジフェニルスルホニウム ノナフルオロブタンスルホネートの混合物(スルホニウム塩3)の合成
3−メトキシチオキサンテン−9−オンに代わりに1,3−ジメトキシチオキサンテン−9−オンを用いる以外は合成例4と同様に行い、ジカチオン不純物18%(HPLC Area%)を含むオイルをカラムクロマトグラフィーにより精製する事で(1ヒドロキシ‐3−メトキシ−9−オキソ−9H−チオキサンテン‐2−イル)ジフェニルスルホニウム ノナフルオロブタンスルホネート及び(1−ヒドロキシ−3−メトキシ−9−オキソ−9H−チオキサンテン‐2−イル)ジフェニルスルホニウム ノナフルオロブタンスルホネートの混合物(スルホニウム塩3)を得る。
3−ジメトキシチオキサンテン−9−オンは合成例1〜3に倣って合成可能である。また、得られるスルホニウム塩3は、4位体:2位体=6:4である。
【0110】
【化10】
【0111】
<スルホニウム塩4の合成>
(合成例7)(3−メチル−9−オキソ−9H−チオキサンテン‐2−イル)ジフェニルスルホニウム ノナフルオロブタンスルホネート及び(3−メチル−9−オキソ−9H−チオキサンテン‐2−イル)ジフェニルスルホニウム ノナフルオロブタンスルホネートの混合物(スルホニウム塩4)の合成
3−メトキシチオキサンテン−9−オンに代わりに3−メチルチオキサンテン−9−オンを用いる以外は合成例4と同様に行い、ジカチオン不純物28%(HPLC Area%)を含むオイルをカラムクロマトグラフィーにより精製する事で(3−メチル−9−オキソ−9H−チオキサンテン‐2−イル)ジフェニルスルホニウム ノナフルオロブタンスルホネート及び(1,3−ジメトキシ−9−オキソ−9H−チオキサンテン‐2−イル)ジフェニルスルホニウム ノナフルオロブタンスルホネートの混合物(スルホニウム塩4)を得る。
3−メチルチオキサンテン−9−オンは合成例1〜3に倣って合成可能である。また、得られるスルホニウム塩4は、4位体:2位体=6:4である。
【0112】
【化11】
【0113】
<スルホニウム塩5の合成>
(合成例8)(3−メチルスルホニル−9−オキソ−9H−チオキサンテン‐2−イル)ジフェニルスルホニウム ノナフルオロブタンスルホネート及び(3−メチルスルホニル−9−オキソ−9H−チオキサンテン‐2−イル)ジフェニルスルホニウム ノナフルオロブタンスルホネートの混合物(スルホニウム塩5)の合成
合成例5で得られる(3−メチルスルファニル−9−オキソ−9H−チオキサンテン‐2−イル)ジフェニルスルホニウム ノナフルオロブタンスルホネート及び(3−メチルスルファニル−9−オキソ−9H−チオキサンテン‐2−イル)ジフェニルスルホニウム ノナフルオロブタンスルホネートの混合物(スルホニウム塩2)3gと35質量%過酸化水素水0.9gを酢酸15gに溶解して40℃で3時間撹拌する。撹拌後、純水30gを加えてさらに10分撹拌し、塩化メチレン30gを加えて10分撹拌する。これを分液して純水20gで3回洗浄後に塩化メチレンを留去し、これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(塩化メチレン/メタノールン=90/10(体積比))により精製することで(3−メチルスルホニル−9−オキソ−9H−チオキサンテン‐2−イル)ジフェニルスルホニウム ノナフルオロブタンスルホネート及び(3−メチルスルホニル−9−オキソ−9H−チオキサンテン‐2−イル)ジフェニルスルホニウム ノナフルオロブタンスルホネートの混合物(スルホニウム塩5)を得る。
なお、得られるスルホニウム塩5は、4位体:2位体=6:4である。
【0114】
【化12】
【0115】
<スルホニウム塩6の合成>
(合成例9)(1−アシルオキシ−3−メトキシ−9−オキソ−9H−チオキサンテン‐2−イル)ジフェニルスルホニウム ノナフルオロブタンスルホネート及び(1−アシルオキシ−3−メトキシ−9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イル)ジフェニルスルホニウム ノナフルオロブタンスルホネートの混合物(スルホニウム塩6)の合成
合成例6で得られる(1−ヒドロキシ−3−メトキシ−9−オキソ−9H−チオキサンテン‐2−イル)ジフェニルスルホニウム ノナフルオロブタンスルホネート及び(1−ヒドロキシ−3−メトキシ−9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イル)ジフェニルスルホニウム ノナフルオロブタンスルホネートの混合物(スルホニウム塩3)の混合物3gと無水酢酸0.5gとを塩化メチレン15gに溶解してトリエチルアミン0.5gを滴下して2時間撹拌する。
撹拌後、1%塩酸水30gを加えてさらに10分撹拌し、塩化メチレン30gを加えて10分撹拌する。これを分液して純水20gで3回洗浄後に塩化メチレンを留去し、これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(塩化メチレン/メタノールン=90/10(体積比))により精製することで(1‐アシルオキシ−3−メトキシ−9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イル)ジフェニルスルホニウム ノナフルオロブタンスルホネート及び(1−アシルオキシ−3−メトキシ−9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イル)ジフェニルスルホニウム ノナフルオロブタンスルホネートの混合物(スルホニウム塩6)を得る。
なお、得られるスルホニウム塩6は、4位体:2位体=6:4である。
【0116】
【化13】
【0117】
<比較スルホニウム塩1の合成>
(比較合成例1)(4−メトキシ−9−オキソ−9H−チオキサンテン−1−イル)ジフェニルスルホニウム ノナフルオロブタンスルホネート (比較スルホニウム塩1)の合成
3−メトキシチオキサンテン−9−オンに代わりに4−メトキシチオキサンテン−9−オンを用いる以外は合成例4と同様に行い、ジカチオン不純物1%未満(HPLC Area%)を含むオイルをカラムクロマトグラフィーにより精製する事で(4−メトキシ−9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イル)ジフェニルスルホニウム ノナフルオロブタンスルホネートを得る。
【0118】
【化14】
【0119】
<比較スルホニウム塩2の合成>
(比較合成例2)(7−フルオロ−9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イル)ジフェニルスルホニウム ノナフルオロブタンスルホネート(比較スルホニウム塩2)の合成
3−メトキシチオキサンテン−9−オンに代わりに2−フルオロチオキサンテン−9−オンを用いる以外は合成例4と同様に行い、ジカチオン不純物41%を含むオイルをカラムクロマトグラフィーにより精製する事で(7−フルオロ−9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イル)ジフェニルスルホニウム ノナフルオロブタンスルホネート(比較スルホニウム塩2)を得る。
【0120】
【化15】
【0121】
<比較スルホニウム塩3の合成>
(比較合成例3)(9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イル)ジフェニルスルホニウム ノナフルオロブタンスルホネートの合成
3−メトキシチオキサンテン−9−オンに代わりにチオキサンテン−9−オンを用いる以外は合成例4と同様に行い、ジカチオン不純物51%を含むオイルをカラムクロマトグラフィーにより精製する事で(9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イル)ジフェニルスルホニウム ノナフルオロブタンスルホネート(比較スルホニウム塩3)を得る。
【0122】
【化16】
【0123】
上記合成例及び比較合成例に示すように、チオキサントン骨格を有するスルホニウム塩を合成するために、チオキサントン誘導体にスルホニウム基を導入する際、無置換又は2位に置換基を持つチオキサントン誘導体を用いるとジカチオンの生成割合が高く、モノカチオンの収率が低下する傾向がある。モノカチオンを目的物として得るためには、チオキサントン誘導体の3位に特定の置換基を有することでジカチオンの生成を抑制できるため有効である。
【0124】
<ポリマーAの合成>
(合成例10)ポリマーAの合成
エチルシクロペンチルメタクリレート7.0gと、メタクリル酸2−メトキシエチル5.8gと、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(ライトエステル130MA)3.8gと、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.21gと、をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)42gに溶解し、減圧脱気を行った。これをPGMEA15gを還流させたフラスコ中に4時間かけて滴下する。滴下後2時間撹拌した後に25℃まで冷却した。この溶液をヘキサン260g及びPGMEA28gからなる混合溶媒中に滴下することで再沈殿させた。これを濾過してからヘキサン67gで2回分散洗浄し、濾過後に真空乾燥することで目的のポリマーAを白い粉末として12.7g得る。本発明において、ポリマーのユニットのモノマー比は下記に限定されない。
【0125】
【化17】
【0126】
<ポリマーBの合成>
(合成例11)ポリマーBの合成
7.0gのアセトキシスチレン、2.1gのt−ブチルメタクリレート、0.022gのブチルメルカプタン及び0.40gのジメチル−2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(AIBN)を35gのテトラヒドロフラン(THF)に溶解して脱酸素する。これをあらかじめ窒素気流化で還流温度とした20gのTHF中に4時間かけて滴下する。滴下後、2時間撹拌してから室温に冷却する。これを149gのヘキサンと12gのTHFの混合溶媒中に滴下することでポリマーを沈殿させる。これを減圧ろ過で分離して得られた固体を52gのヘキサンで洗浄した後、真空乾燥することで白色固体として下記式に示すポリマーBを10.3g得る。ゲル浸透クロマトグラフィーを用いてポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は9200である。なお、本発明において、ポリマーのユニットのモノマー比は下記に限定されない。
【0127】
【化18】
【0128】
<ポリマーCの合成>
(合成例12)ポリマーCの合成
ポリマーBを6.0g、トリエチルアミン6.0g、メタノール6.0g及び純水1.5gを30gのプロピレングリコールモノメチルエーテルに溶解し還流温度で6時間撹拌する。その後25℃に冷却し、得られた溶液を30gのアセトンと30gの純水の混合液に滴下することでポリマーを沈殿させる。これを減圧ろ過で分離して得られた固体を30gの純水で2回洗浄した後、真空乾燥することで白色固体として下記式に示すポリマーCを4.3g得る。ゲル浸透クロマトグラフィーを用いてポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は9100である。なお、本発明において、ポリマーのユニットのモノマー比は下記に限定されない。
【0129】
【化19】
【0130】
<ポリマーDの合成>
(合成例13)ポリマーDの合成
ポリヒドロキシスチレン(重量平均分子量8000)8.0gと0.010gの35質量%塩酸水溶液とを脱水ジオキサン28gに溶解する。そこに2.73gのシクロヘキシルビニルエーテルを2.80gの脱水ジオキサンに溶解して30分かけてポリヒドロキシスチレン溶液に滴下する。滴下後に40℃として2時間撹拌する。撹拌後、冷却した後に0.014gのジメチルアミノピリジンを添加する。その後、溶液を260gの純水中に滴下することでポリマーを沈殿させる。これを減圧ろ過で分離して得られた固体を純水300gで2回洗浄した後、真空乾燥することで白色固体として下記に示すポリマーDを9.2g得る。なお、本発明において、ポリマーのユニットのモノマー比は下記に限定されない。
【0131】
【化20】
【実施例1】
【0132】
<モル吸光係数測定>
上記スルホニウム塩1及び上記比較スルホニウム塩1〜3をそれぞれ15.0mg採取し、25mlのメスフラスコを用いてクロロホルムで25mlになるように希釈する。各スルホニウム塩含有溶液をホールピペットで0.5ml採取して5mlのメスフラスコを用いてさらにクロロホルムで5mlになるように希釈する。得られた溶液を紫外可視光分光光度計(U−3300、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて吸収スペクトルを測定することで、365nmにおけるモル吸光係数[mol/cm]を求める。また、以下に示す比較スルホニウム塩4(ジカチオン)及び比較スルホニウム塩5に対しても同様にモル吸光係数を求める。
これらの結果を表1及び図1に示す。
【0133】
【化21】
【0134】
【表1】
【0135】
上記実施例、及び比較例の結果から下記のことがわかる。すなわち、実施例1のスルホニウム塩1はチオキサントン骨格の3位に特定の置換基を持つことで3位に特定の置換基を有しない比較スルホニウム塩5と比較して吸収が短波長化する傾向がある。実施例1のスルホニウム塩1は、λmaxが365nm付近となり365nmの吸収が大きくなることで、365nmの照射において酸発生が優位となる。また、本発明の一つの態様であるスルホニウム塩1〜6は合成時のジカチオンが低くモノカチオンの収率が高い。比較スルホニウム4のようにジカチオンとなると吸収が大幅に短波長化してしまい、365nmの吸収が大幅に小さくなる傾向がある。それにより比較スルホニウム4は酸発生に不利となる。そのため、本発明の一つの態様におけるスルホニウム塩は3位に特定の置換基を有することで365nmの吸収が高まる。それに加え、合成においてジカチオン構造が生じにくい構造となるため酸発生剤としてより高い性能を有することが期待できる。
【実施例2】
【0136】
<感度評価>
下記のようにしてサンプル1〜13を調製した。シクロヘキサノン3000mgに、上記ポリマーA、C及びDから選択されるいずれかの樹脂500mgと、光酸発生剤(PAG)として上記スルホニウム塩1、3と比較スルホニウム塩1〜5のいずれかを0.036mmolと、クエンチャーとしてのトリオクチルアミンを0.0012mmolと、フッ素系界面活性剤(製品名:Novac FC−4434、3M社製)を0.3mgと、有機カルボン酸としてのサリチル酸0.0015mmolと、の割合で添加してサンプルを調製した。
調製したサンプルをあらかじめヘキサメチルジシラザン(HMDS処理を行ったSiウェハー上に各評価サンプル1〜13を塗布してスピンコートを行い110℃で加熱することで膜厚500nmのレジスト膜を得た。
次に、評価サンプルを線幅のハーフピッチが50μmの1:1のライン及びスペースパターンマスクを介して365nmの輝線を持つUV露光装置によって露光量を変えて露光した。次いで、ホットプレート上で110℃で1分間加熱した。
加熱後、現像液(製品名:NMD−3、水酸化テトラメチルアンモニウム2.38質量%水溶液、東京応化工業(株)製)を用いて1分間現像して現像を行い、純水でリンスすることでパターンを得た。これを顕微鏡で観察してレジストが完全に剥離されている露光量をEサイズ(最小露光量)とした。最小露光量を感度として評価した結果を表2に示す。
【0137】
【表2】
【0138】
スルホニウム塩1を含むサンプル1、8、10は、3位に特定の置換基を有しない比較スルホニウム塩5よりも高感度であった。3位に代えて、4位にメトキシ基が付加している比較スルホニウム塩1及び2位にフッ素原子が付加している比較スルホニウム塩2、並びにジカチオン構造の比較スルホニウム塩4はいずれも露光により酸発生する事は確認できているが500mJ/cm露光しても不十分であった。比較スルホニウム塩3、5は比較スルホニウム塩1、2、4よりも高感度であるが、本発明のスルホニウム塩より低感度である。さらにこれらの比較スルホニウム塩は合成において3位に特定の置換基を有する構造でないため多量のジカチオンを生成する傾向がある。工業的に酸発生剤を製造する際は反応選択性がある事で目的物の収率が高くなること、感度が低いジカチオンをカラム精製等の除去工程を行わずに使用できる方が好ましい。そのためジカチオンの生成を抑えられる本発明の一つの態様にかかるスルホニウム塩は、精製工程を経ない方法で製造した場合にも高い感度を維持することが出来るため有効である。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明のいくつかの態様により、酸発生効率を向上させ、高感度であるフォトレジストとするための光酸発生剤に好適に用いられるスルホニウム塩、該スルホニウム塩を含むレジスト組成物を提供することができる。
図1