(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1クラッチ機構における前記摩擦板群である第1摩擦板群は、前記第1クラッチ機構における前記ピストンである第1ピストンに対し、前記クラッチ軸の他端側に配置されており、
前記第1ピストン油室は、前記第1ピストンに対し、前記クラッチ軸の一端側に配置されており、
前記第1クラッチ機構における前記付勢部材である第1付勢部材は、前記第1ピストンに対し、前記クラッチ軸の他端側に配置されており、
前記第2クラッチ機構における前記摩擦板群である第2摩擦板群は、前記第2クラッチ機構における前記ピストンである第2ピストンに対し、前記クラッチ軸の一端側に配置されており、
前記第2ピストン油室は、前記第2ピストンに対し、前記クラッチ軸の他端側に配置されており、
前記第2付勢部材は、前記第2ピストンに対し、前記クラッチ軸の一端側に配置されており、
前記配置空間は、前記クラッチ軸の径方向で前記第2摩擦板群と前記クラッチ軸との間に形成されており、
前記第2作動油路における前記圧抜き油路である第2圧抜き油路は、前記配置空間に接続している請求項3に記載の動力伝達装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような動力伝達装置を製造する際には、ドリル等を用いてクラッチ軸に穴を開けることにより作動油路を形成することができる。そして、このような手段で作動油路を形成する場合には、一般に、エアブロー等を用いて、作動油路の内部の切りくずを取り除く作業が行われる。
【0008】
ところで、特許文献1における上記の2つの作動油路のうち、緩旋回クラッチに接続している作動油路においては、主油路が、クラッチ軸の一端から他端に亘って形成されている。また、供給油路及び圧抜き油路は、何れも、主油路の中途部からクラッチ軸の外周側へ延びている。そして、圧抜き油路は、供給油路よりもクラッチ軸の他端側(油圧ユニットとは反対側)に形成されている。
【0009】
ここで、圧抜き油路が主油路におけるクラッチ軸の他端側の端部から延びるように構成することが考えられる。この構成では、主油路が、クラッチ軸の一端から圧抜き油路まで形成されることとなる。言い換えれば、この構成では、クラッチ軸において、圧抜き油路よりもクラッチ軸の他端側の部分には主油路が形成されないこととなる。
【0010】
この構成であれば、クラッチ軸において、圧抜き油路よりもクラッチ軸の他端側の部分の強度を確保しやすくなる。
【0011】
しかしながら、この構成では、上述のようにドリル等を用いてクラッチ軸に穴を開けることにより作動油路を形成した後、エアブロー等を用いて、作動油路の内部の切りくずを取り除く作業を行った場合、主油路において、供給油路の接続している箇所から圧抜き油路の接続している箇所までの部分には、エアブロー等の風が通りにくい。これは、エアブロー等の風が、圧抜き油路の有する絞り部を通りにくいためである。
【0012】
これにより、主油路において、供給油路の接続している箇所から圧抜き油路の接続している箇所までの部分に、切りくずが残ってしまう事態が想定される。従って、この構成では、作動油路の内部の切りくずを確実に除去するために、エアブロー等を用いた作業に加えて、内視鏡等を用いた精密作業が必要となる。これにより、製造コストが増大しがちである。
【0013】
本発明の目的は、クラッチ軸における全ての作動油路の内部の切りくずを容易に取り除くことが可能な動力伝達装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の特徴は、複数の油圧式クラッチ機構が配置されたクラッチ軸を備え、前記クラッチ軸の内部には、複数の作動油路が形成されており、前記複数の作動油路は、それぞれ、主油路と、供給油路と、圧抜き油路と、を有しており、前記主油路は、前記クラッチ軸の一端から、前記クラッチ軸の軸芯に沿って延びており、前記供給油路は、前記主油路から前記クラッチ軸の外周側へ延び、前記油圧式クラッチ機構に接続しており、前記圧抜き油路は、前記主油路から前記クラッチ軸の外周側へ延び、前記クラッチ軸の外部に接続していると共に、絞り部を有しており、前記クラッチ軸の一端側から各前記主油路に作動油を供給可能な油圧ポンプを備え、前記クラッチ軸における何れの前記作動油路においても、前記供給油路が前記主油路における前記クラッチ軸の他端側の端部から前記クラッチ軸の外周側へ延びており、且つ、前記圧抜き油路が前記供給油路よりも前記クラッチ軸の一端側に形成されていることにある。
【0015】
本発明であれば、クラッチ軸における何れの作動油路においても、供給油路が主油路におけるクラッチ軸の他端側の端部からクラッチ軸の外周側へ延びており、且つ、圧抜き油路が供給油路よりもクラッチ軸の一端側に形成されている。
【0016】
従って、クラッチ軸における何れの作動油路においても、主油路が、クラッチ軸の一端から供給油路まで形成されることとなる。言い換えれば、クラッチ軸において、供給油路よりもクラッチ軸の他端側の部分には主油路が形成されないこととなる。そして、圧抜き油路は、主油路の中途部からクラッチ軸の外周側へ延びる。
【0017】
これにより、クラッチ軸における何れの作動油路においても、主油路の全長に亘って、エアブロー等の風を良好に通すことが可能となる。従って、本発明であれば、クラッチ軸における全ての作動油路の内部の切りくずを容易に取り除くことが可能となる。
【0018】
さらに、本発明において、前記複数の油圧式クラッチ機構は、それぞれ、摩擦板群と、ピストンと、ピストン油室と、付勢部材と、を有しており、前記摩擦板群は、前記ピストンに対し、前記ピストン油室とは反対側に配置されており、前記ピストンは、前記ピストン油室及び前記付勢部材の間に配置されると共に、前記付勢部材により前記ピストン油室側へ付勢されており、前記ピストンは、前記ピストン油室に供給される作動油によって作動し、前記付勢部材の付勢力に抗して前記摩擦板群を押圧可能に構成されており、前記クラッチ軸における何れの前記作動油路においても、前記供給油路は、前記ピストン油室に接続しており、且つ、前記圧抜き油路は、前記ピストン油室よりも前記クラッチ軸の一端側に形成されていると好適である。
【0019】
この構成によれば、油圧ポンプによって、クラッチ軸の一端側から各主油路へ個別に作動油を供給することにより、各ピストンを個別に作動させることができる。そして、作動したピストンに対応する油圧式クラッチ機構は入状態となる。
【0020】
また、各主油路への作動油の供給を個別に停止することにより、各圧抜き油路から個別に作動油が抜けることとなる。これにより油圧の低下したピストン油室に対応するピストンは、付勢部材の付勢力によって摩擦板群から離間する方向に押し戻される。そして、押し戻されたピストンに対応する油圧式クラッチ機構は切状態となる。
【0021】
即ち、この構成によれば、各油圧式クラッチ機構の入切状態を個別に切り替えることが可能となる。
【0022】
さらに、本発明において、前記複数の油圧式クラッチ機構は、第1クラッチ機構及び第2クラッチ機構を含んでおり、前記複数の作動油路は、第1作動油路及び第2作動油路を含んでおり、前記第1作動油路における前記供給油路である第1供給油路は、前記第1クラッチ機構における前記ピストン油室である第1ピストン油室に接続しており、前記第2作動油路における前記供給油路である第2供給油路は、前記第2クラッチ機構における前記ピストン油室である第2ピストン油室に接続しており、前記第1クラッチ機構は、前記第2クラッチ機構よりも前記クラッチ軸の他端側に配置されており、前記第2クラッチ機構における前記付勢部材である第2付勢部材は、前記クラッチ軸に径方向で隣接する配置空間に配置されており、前記第1作動油路における前記圧抜き油路である第1圧抜き油路は、前記配置空間に接続していると好適である。
【0023】
複数の油圧式クラッチ機構が配置されたクラッチ軸の周囲には、一般に、軸受やピストンやギア等、多くの部材が密集する状態で配置されることとなる。そのため、クラッチ軸の周囲に、第1圧抜き油路の接続先として専用の空間を確保すると、動力伝達装置のサイズが比較的大きくなりがちである。
【0024】
ここで、上記の構成によれば、第2付勢部材の配置のために形成されている配置空間を、第1圧抜き油路の接続先として有効利用することができる。即ち、クラッチ軸の周囲に、第1圧抜き油路の接続先として専用の空間を確保する必要がない。
【0025】
従って、上記の構成によれば、動力伝達装置のサイズが比較的大きくなってしまう事態を回避しやすい。
【0026】
さらに、本発明において、前記第1クラッチ機構における前記摩擦板群である第1摩擦板群は、前記第1クラッチ機構における前記ピストンである第1ピストンに対し、前記クラッチ軸の他端側に配置されており、前記第1ピストン油室は、前記第1ピストンに対し、前記クラッチ軸の一端側に配置されており、前記第1クラッチ機構における前記付勢部材である第1付勢部材は、前記第1ピストンに対し、前記クラッチ軸の他端側に配置されており、前記第2クラッチ機構における前記摩擦板群である第2摩擦板群は、前記第2クラッチ機構における前記ピストンである第2ピストンに対し、前記クラッチ軸の一端側に配置されており、前記第2ピストン油室は、前記第2ピストンに対し、前記クラッチ軸の他端側に配置されており、前記第2付勢部材は、前記第2ピストンに対し、前記クラッチ軸の一端側に配置されており、前記配置空間は、前記クラッチ軸の径方向で前記第2摩擦板群と前記クラッチ軸との間に形成されており、前記第2作動油路における前記圧抜き油路である第2圧抜き油路は、前記配置空間に接続していると好適である。
【0027】
第2摩擦板群が第2ピストンに対してクラッチ軸の他端側に配置され、第2ピストン油室が第2ピストンに対してクラッチ軸の一端側に配置され、第2付勢部材が第2ピストンに対してクラッチ軸の他端側に配置されている場合、配置空間は、第2ピストン油室よりもクラッチ軸の他端側に形成されることとなる。
【0028】
ここで、第2圧抜き油路を配置空間に接続すれば、第2圧抜き油路の接続先として専用の空間を確保する必要はなくなる。しかしながら、第2圧抜き油路を配置空間に接続するためには、第2圧抜き油路を第2供給油路よりもクラッチ軸の他端側に形成する必要がある。即ち、この構成では、第2圧抜き油路を配置空間に接続することと、第2作動油路において第2圧抜き油路を第2供給油路よりもクラッチ軸の一端側に形成することと、を同時に満たすことはできない。従って、この構成では、配置空間とは別に、第2圧抜き油路の接続先として専用の空間を確保する必要がある。
【0029】
ここで、上記の構成によれば、配置空間は、第2ピストン油室よりもクラッチ軸の一端側に形成される。この構成であれば、第2圧抜き油路を配置空間に接続することと、第2作動油路において第2圧抜き油路を第2供給油路よりもクラッチ軸の一端側に形成することと、を同時に満たすことが可能となる。これにより、配置空間を、第1圧抜き油路の接続先としてだけではなく、第2圧抜き油路の接続先としても有効利用することができる。即ち、クラッチ軸の周囲に、第2圧抜き油路の接続先として専用の空間を確保する必要がない。
【0030】
従って、上記の構成によれば、動力伝達装置のサイズが比較的大きくなってしまう事態を回避しやすい。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明を実施するための形態について、図面に基づき説明する。なお、以下の説明においては、特に断りがない限り、
図1から
図3、
図5に示す矢印Lの方向を「左」、矢印Rの方向を「右」とする。
【0033】
〔全体構成〕
稲や麦などを収穫対象とする普通型のコンバインの機体には、左右の走行装置、機体に対して昇降可能に設けられるとともにコンバインの前進に伴って圃場の穀物を引き起こして刈り取る刈取部、刈取部から送られてきた穀物を受け取り、こぎ胴によって脱穀する脱穀部、脱穀部から送られてきた脱穀処理物を、比重選別等の選別方式によって、選別の目的物であるモミと、排わら等の排出物とに分別する選別部、選別部から送られてきたモミを貯留する貯留部、貯留部に貯留されているモミをコンバインの外部に排出する排出部等の各作業部、各作業部の動力源としてのエンジン、エンジンの動力を各作業部に伝達する収穫機用伝動装置、作業員が搭乗して運転操作を行う操縦部等が備えられている。
【0034】
収穫機用伝動装置には、エンジンの動力が入力されるベルト式伝達機構、ベルト式伝達機構から出力された動力を無段変速する静油圧式の無段変速装置、該無段変速装置から出力された動力を左右の走行装置に伝達可能に構成され、左右の走行装置の速度差によって機体を旋回させることが可能な動力伝達装置10(
図1参照)等が備えられている。
【0035】
〔動力伝達装置〕
図1に示すように動力伝達装置10は、本体ケーシング11の上部に、無段変速装置の出力軸12がスプライン結合可能な動力入力部13が備えられている。動力入力部13は、本体ケーシング11に軸支された動力入力軸14と、動力入力軸14にスプライン結合された高速ギア15と低速ギア16とから構成されている。
【0036】
動力伝達経路における動力入力軸14の下流には、本体ケーシング11に軸支された副変速用伝動軸17が備えられている。副変速用伝動軸17に、高速ギア18と低速ギア19とが相対回転可能に配置されている。高速ギア15と高速ギア18とが噛み合い、低速ギア16と低速ギア19とが噛み合っている。
【0037】
高速ギア18と低速ギア19との間に、スプライン結合により副変速用伝動軸17と一体回転可能であるとともに、副変速用伝動軸17の軸芯方向に沿ってスライド可能なシフタ20が備えられている。シフタ20は、副変速用伝動軸17の軸芯方向に沿った位置に応じて高速ギア18や低速ギア19にスプライン結合可能に構成されている。
【0038】
シフタ20を高速ギア18側にスライドさせ、シフタ20と高速ギア18とをスプライン結合させると、動力入力軸14の回転が高速ギア15、高速ギア18及びシフタ20を介して副変速用伝動軸17に伝達される。
【0039】
シフタ20を低速ギア19側にスライドさせ、シフタ20と低速ギア19とをスプライン結合させると、動力入力軸14の回転が低速ギア16、低速ギア19及びシフタ20を介して副変速用伝動軸17に伝達される。
【0040】
このように、シフタ20の位置を、高速ギア18に噛み合う状態と、低速ギア19に噛み合う状態とに切り換えることにより、動力入力軸14の動力が高低二段(高速及び低速)に変速されて、副変速用伝動軸17に伝達される。
【0041】
副変速用伝動軸17には、直進用伝動ギア21がスプライン結合により一体回転可能に配置されている。なお、副変速用伝動軸17には、駐車ブレーキ機構23が備えられている。
【0042】
動力伝達経路における副変速用伝動軸17の下流には、本体ケーシング11に軸支されたサイドクラッチ軸30と旋回クラッチ軸60(本発明に係る「クラッチ軸」に相当)とが備えられている。
【0043】
図1に示すように、旋回クラッチ軸60の内部には、第1作動油路62(本発明に係る「作動油路」に相当)、第2作動油路64(本発明に係る「作動油路」に相当)、冷却油路66が形成されている。また、サイドクラッチ軸30の内部には、左側油路34、右側油路35、返送油路36が形成されている。
【0044】
また、サイドクラッチ軸30及び旋回クラッチ軸60は、何れも、左右方向に延びている。
【0045】
〔サイドクラッチ軸〕
副変速用伝動軸17に配置された直進用伝動ギア21は、サイドクラッチ軸30にスプライン結合したサイドクラッチ軸入力ギア31と噛み合っている。そして、動力入力軸14の回転は、副変速用伝動軸17、直進用伝動ギア21及びサイドクラッチ軸入力ギア31を介してサイドクラッチ軸30に伝達される。
【0046】
サイドクラッチ軸30には、動力入力軸14から出力された動力を、左右の走行装置のうち左側走行装置に伝達可能な左サイドクラッチ機構40、及び、左右の走行装置のうち右側走行装置に伝達可能な右サイドクラッチ機構50が配置されている。なお、
図1において動力伝達装置10は、手前側が機体の正面となるように描かれている。
【0047】
サイドクラッチ軸30には、左側出力ギア32及び右側出力ギア33がそれぞれ相対回転可能に配置されている。左側出力ギア32は、左側走行装置へ動力を出力する左側伝動ギア24と噛み合っており、右側出力ギア33は、右側走行装置へ動力を出力する右側伝動ギア25と噛み合っている。
【0048】
〔左サイドクラッチ機構〕
左サイドクラッチ機構40は噛合クラッチから構成されている。サイドクラッチ軸30には、左側出力ギア32の左方に、スプライン結合によりサイドクラッチ軸30と一体回転可能であるとともに、サイドクラッチ軸30の軸芯方向に沿ってスライド可能な左噛合部41が備えられている。
【0049】
左噛合部41は、バネ42により左側出力ギア32と噛み合うように付勢されている。左噛合部41が左側出力ギア32と噛み合うことにより、サイドクラッチ軸30の回転が左噛合部41、左側出力ギア32を介して左側走行装置へ伝達される。このとき、左サイドクラッチ機構40は係合状態(動力伝達状態)という。
【0050】
本体ケーシング11の左側面に取り付けられたバルブユニット90から、サイドクラッチ軸30の内部に形成された左側油路34を介して左側出力ギア32と左噛合部41との間に形成された左側油室43の内部に作動油を供給することによって左側ピストン44が左方へ動き、左噛合部41がバネ42の付勢力に抗して左方へ動くので、左側出力ギア32と左噛合部41との噛み合いが解除される。このとき、サイドクラッチ軸30の回転は左噛合部41を介しては左側出力ギア32へ伝達されない。このとき、左サイドクラッチ機構40は係合解除状態(遮断状態)という。なお、左側油室43に供給された所定量以上の作動油は、サイドクラッチ軸30の内部に形成された返送油路36を介してバルブユニット90に返送される。
【0051】
左側油室43への作動油の供給を停止すると、バネ42の付勢力により左噛合部41が右方へ移動させられ、左噛合部41と左側出力ギア32とが噛み合う。これに伴って、左側ピストン44も右方へ移動させられるので、作動油は左側油室43から排出される。この作動油は左側油路34を介してバルブユニット90に返送される。
【0052】
〔右サイドクラッチ機構〕
右サイドクラッチ機構50は噛合クラッチから構成されている。サイドクラッチ軸30には、右側出力ギア33の右方に、スプライン結合によりサイドクラッチ軸30と一体回転可能であるとともに、サイドクラッチ軸30の軸芯方向に沿ってスライド可能な右噛合部51が備えられている。
【0053】
右噛合部51は、バネ52により右側出力ギア33と噛み合うように付勢されている。右噛合部51が右側出力ギア33と噛み合うことにより、サイドクラッチ軸30の回転が右噛合部51、右側出力ギア33を介して右側走行装置へ伝達される。このとき、右サイドクラッチ機構50は係合状態(動力伝達状態)という。
【0054】
バルブユニット90から、サイドクラッチ軸30の内部に形成された右側油路35を介して右側出力ギア33と右噛合部51との間に形成された右側油室53の内部に作動油を供給することによって右側ピストン54が右方へ動き、右噛合部51がバネ52の付勢力に抗して右方へ動くので、右側出力ギア33と右噛合部51との噛み合いが解除される。このとき、サイドクラッチ軸30の回転は右噛合部51を介しては右側出力ギア33へ伝達されない。このとき、右サイドクラッチ機構50は係合解除状態(遮断状態)という。なお、右側油室53に供給された所定量以上の作動油は、サイドクラッチ軸30の内部に形成された返送油路36を介してバルブユニット90に返送される。
【0055】
右側油室53への作動油の供給を停止すると、バネ52の付勢力により右噛合部51が左方へ移動させられ、右噛合部51と右側出力ギア33とが噛み合う。これに伴って、右側ピストン54も左方へ移動させられるので、作動油は右側油室53から排出される。なお、この作動油は右側油路35を介してバルブユニット90に返送される。
【0056】
左サイドクラッチ機構40及び右サイドクラッチ機構50がともに動力伝達状態であれば、機体は直進走行する。左サイドクラッチ機構40又は右サイドクラッチ機構50のいずれかが遮断状態であれば、以下に説明するように機体は旋回走行する。
【0057】
〔旋回クラッチ軸〕
旋回クラッチ軸60には、サイドクラッチ軸30に備えられた右噛合部51の外周部に配置された入力中継ギア37と噛み合うソフトクラッチ入力ギア61が相対回転可能に配置されている。
【0058】
〔ソフトクラッチ機構〕
動力伝達経路における旋回クラッチ軸60とソフトクラッチ入力ギア61との間には、動力入力軸14から出力された動力を減速してサイドクラッチ軸30に伝達可能な湿式多板式のソフトクラッチ機構70(本発明に係る「油圧式クラッチ機構」及び「第1クラッチ機構」に相当)が配置されている。
【0059】
図2に示すように、ソフトクラッチ機構70は、スプライン結合により旋回クラッチ軸60と一体回転可能なクラッチハウジング71、ソフトクラッチ入力ギア61に一体的に設けられ、旋回クラッチ軸60とクラッチハウジング71との間に位置する筒軸72、クラッチハウジング71と相対回転不能に係合された複数の外側摩擦板と筒軸72と相対回転不能に係合された複数の内側摩擦板とが交互に配置されて構成される第1摩擦板群73と、第1摩擦板群73を押圧操作する第1ピストン74、第1ピストン74を第1摩擦板群73から離れる方向に付勢する第1付勢部材75、クラッチハウジング71の内部に形成された第1ピストン油室76等が備えられている。
【0060】
図2に示すように、第1作動油路62は、第1主油路1(本発明に係る「主油路」に相当)と、第1供給油路2(本発明に係る「供給油路」に相当)と、第1圧抜き油路3(本発明に係る「圧抜き油路」に相当)と、を有している。
【0061】
第1主油路1は、旋回クラッチ軸60の左端から、旋回クラッチ軸60の軸芯に沿って延びている。第1供給油路2は、第1主油路1から旋回クラッチ軸60の外周側へ延び、ソフトクラッチ機構70における第1ピストン油室76に接続している。第1圧抜き油路3は、第1主油路1から旋回クラッチ軸60の外周側へ延び、旋回クラッチ軸60の外部に接続していると共に、第1絞り部3a(本発明に係る「絞り部」に相当)を有している。
【0062】
なお、第1絞り部3aは、第1供給油路2よりも流路断面積が小さくなるように形成されている。
【0063】
そして、第1作動油路62において、第1供給油路2が第1主油路1における右側の端部から旋回クラッチ軸60の外周側へ延びており、且つ、第1圧抜き油路3が第1供給油路2よりも左側に形成されている。また、第1圧抜き油路3は、第1ピストン油室76よりも左側に形成されている。
【0064】
また、
図1及び
図2に示すように、第1摩擦板群73は、第1ピストン74に対し、第1ピストン油室76とは反対側に配置されている。第1ピストン74は、第1ピストン油室76及び第1付勢部材75の間に配置されると共に、第1付勢部材75により第1ピストン油室76側へ付勢されている。また、第1ピストン74は、第1ピストン油室76に供給される作動油によって作動し、第1付勢部材75の付勢力に抗して第1摩擦板群73を押圧可能に構成されている。
【0065】
より具体的には、第1摩擦板群73は、第1ピストン74に対し、右側に配置されている。また、第1ピストン油室76は、第1ピストン74に対し、左側に配置されている。また、第1付勢部材75は、第1ピストン74に対し、右側に配置されている。
【0066】
図2に示すように、第1付勢部材75は、第1配置空間77に配置されている。第1配置空間77は、旋回クラッチ軸60に径方向で隣接している。また、第1配置空間77は、旋回クラッチ軸60の径方向で第1摩擦板群73と旋回クラッチ軸60との間に形成されている。
【0067】
バルブユニット90から、旋回クラッチ軸60の内部に形成された第1作動油路62を介して第1ピストン油室76の内部に作動油を供給することによって第1ピストン74が右方へ動き、第1摩擦板群73が押圧されて外側摩擦板と内側摩擦板との間の滑りが規制されるため、クラッチハウジング71と筒軸72とは相対回転が規制された動力伝達状態となる。ソフトクラッチ入力ギア61の回転は筒軸72、第1摩擦板群73、クラッチハウジング71を介して旋回クラッチ軸60に伝達される。
【0068】
第1ピストン油室76への作動油の供給を停止すると、第1付勢部材75の付勢力により第1ピストン74が左方へ移動させられ、第1摩擦板群73の押圧が解除されて外側摩擦板と内側摩擦板との間の滑りが許容され、クラッチハウジング71と筒軸72とは相対回転が許容された遮断状態となる。なお、第1ピストン74の左方への移動により、作動油は第1ピストン油室76から排出される。なお、この作動油は第1作動油路62を介して本体ケーシング11の内部に排出される。
【0069】
〔旋回用ブレーキ機構〕
図1及び
図2に示すように、円板状部63が、旋回クラッチ軸60に相対回転可能に配置されている。そして、動力伝達経路における旋回クラッチ軸60と円板状部63との間には、旋回クラッチ軸60を制動状態とすることが可能な湿式多板式の旋回用ブレーキ機構80(本発明に係る「油圧式クラッチ機構」及び「第2クラッチ機構」に相当)が配置されている。なお、ソフトクラッチ機構70は、旋回用ブレーキ機構80よりも右側に配置されている。
【0070】
図2に示すように、旋回用ブレーキ機構80は、スプライン結合により旋回クラッチ軸60と一体回転可能なブレーキハウジング81、円板状部63に一体的に設けられ、旋回クラッチ軸60とブレーキハウジング81との間に位置する筒軸82、ブレーキハウジング81と相対回転不能に係合された複数の外側摩擦板と筒軸82と相対回転不能に係合された複数の内側摩擦板とが交互に配置された第2摩擦板群83と、第2摩擦板群83を押圧操作する第2ピストン84、第2ピストン84を第2摩擦板群83から離れる方向に付勢する第2付勢部材85、ブレーキハウジング81の内部に形成された第2ピストン油室86等が備えられている。
【0071】
図3に示すように、円板状部63の外周部には、外歯ギア部63aが形成されている。また、連結部材88が、本体ケーシング11にボルト固定されている。連結部材88は、旋回クラッチ軸60の軸芯方向視で円環を半分に割った略半円環状に形成されている。連結部材88の内周部には、内歯ギア部88aが形成されている。そして、円板状部63は、外歯ギア部63aと内歯ギア部88aとが噛み合う状態で配置されている。
【0072】
この構成により、円板状部63及び筒軸82は、本体ケーシング11に対して相対回転不能となっている。
【0073】
図2に示すように、第2作動油路64は、第2主油路4(本発明に係る「主油路」に相当)と、第2供給油路5(本発明に係る「供給油路」に相当)と、第2圧抜き油路6(本発明に係る「圧抜き油路」に相当)と、を有している。
【0074】
第2主油路4は、旋回クラッチ軸60の左端から、旋回クラッチ軸60の軸芯に沿って延びている。第2供給油路5は、第2主油路4から旋回クラッチ軸60の外周側へ延び、旋回用ブレーキ機構80における第2ピストン油室86に接続している。第2圧抜き油路6は、第2主油路4から旋回クラッチ軸60の外周側へ延び、旋回クラッチ軸60の外部に接続していると共に、第2絞り部6a(本発明に係る「絞り部」に相当)を有している。
【0075】
なお、第2絞り部6aは、第2供給油路5よりも流路断面積が小さくなるように形成されている。
【0076】
そして、第2作動油路64において、第2供給油路5が第2主油路4における右側の端部から旋回クラッチ軸60の外周側へ延びており、且つ、第2圧抜き油路6が第2供給油路5よりも左側に形成されている。また、第2圧抜き油路6は、第2ピストン油室86よりも左側に形成されている。
【0077】
このように、旋回クラッチ軸60の内部には、複数の作動油路が形成されている。そして、これら複数の作動油路は、第1作動油路62及び第2作動油路64を含んでいる。
【0078】
また、旋回クラッチ軸60において、本発明に係る「作動油路」に相当する油路は、第1作動油路62及び第2作動油路64以外に存在しない。
【0079】
即ち、旋回クラッチ軸60における何れの作動油路においても、供給油路が主油路における右側の端部から旋回クラッチ軸60の外周側へ延びており、且つ、圧抜き油路が供給油路よりも左側に形成されている。
【0080】
また、旋回クラッチ軸60における何れの作動油路においても、供給油路は、ピストン油室に接続しており、且つ、圧抜き油路は、ピストン油室よりも左側に形成されている。
【0081】
なお、本発明に係る「作動油路」は、「主油路」と、「供給油路」と、「圧抜き油路」と、を有するものである。これに対して、冷却油路66は、「供給油路」及び「圧抜き油路」に相当する油路を有していない。従って、冷却油路66は、本発明に係る「作動油路」に相当しない。
【0082】
また、
図1及び
図2に示すように、第2摩擦板群83は、第2ピストン84に対し、第2ピストン油室86とは反対側に配置されている。第2ピストン84は、第2ピストン油室86及び第2付勢部材85の間に配置されると共に、第2付勢部材85により第2ピストン油室86側へ付勢されている。また、第2ピストン84は、第2ピストン油室86に供給される作動油によって作動し、第2付勢部材85の付勢力に抗して第2摩擦板群83を押圧可能に構成されている。
【0083】
より具体的には、第2摩擦板群83は、第2ピストン84に対し、左側に配置されている。また、第2ピストン油室86は、第2ピストン84に対し、右側に配置されている。また、第2付勢部材85は、第2ピストン84に対し、左側に配置されている。
【0084】
図2に示すように、第2付勢部材85は、第2配置空間87(本発明に係る「配置空間」に相当)に配置されている。第2配置空間87は、旋回クラッチ軸60に径方向で隣接している。また、第2配置空間87は、旋回クラッチ軸60の径方向で第2摩擦板群83と旋回クラッチ軸60との間に形成されている。
【0085】
また、第1圧抜き油路3及び第2圧抜き油路6は、何れも、第2配置空間87に接続している。
【0086】
バルブユニット90から、旋回クラッチ軸60の内部に形成された第2作動油路64を介して第2ピストン油室86の内部に作動油を供給することによって第2ピストン84が左方へ動き、第2摩擦板群83が押圧されて外側摩擦板と内側摩擦板との間の滑りが規制されるため、ブレーキハウジング81と筒軸82との間の相対回転が規制される。これにより、ブレーキハウジング81を介して、旋回クラッチ軸60が制動状態となる。
【0087】
第2ピストン油室86への作動油の供給を停止すると、第2付勢部材85の付勢力により第2ピストン84が右方へ移動させられ、第2摩擦板群83の押圧が解除されて外側摩擦板と内側摩擦板との間の滑りが許容され、ブレーキハウジング81と筒軸82とは相対回転が許容された遮断状態となる。なお、第2ピストン84の右方への移動により、作動油は第2ピストン油室86から排出される。なお、この作動油は第2作動油路64を介して本体ケーシング11の内部に排出される。
【0088】
〔旋回出力ギア〕
図1及び
図2に示すように、旋回クラッチ軸60には、クラッチハウジング71とブレーキハウジング81との間に、スプライン結合により旋回出力ギア65が一体回転可能に配置されている。旋回出力ギア65は、サイドクラッチ軸30にそれぞれ相対回転可能に配置された左側出力ギア32と右側出力ギア33との間に、サイドクラッチ軸30と相対回転可能に配置された出力中継ギア38に噛み合っている。
【0089】
ソフトクラッチ機構70を介して出力された動力は、旋回出力ギア65を介して出力中継ギア38に伝達される。また、旋回用ブレーキ機構80によって旋回クラッチ軸60が制動状態である場合、旋回出力ギア65を介して、出力中継ギア38が制動状態となる。
【0090】
動力伝達経路において、出力中継ギア38と左側出力ギア32との間には左旋回クラッチ機構45が備えられ、出力中継ギア38と右側出力ギア33との間には右旋回クラッチ機構55が備えられている。
【0091】
左旋回クラッチ機構45及び右旋回クラッチ機構55はともに湿式多板式のクラッチ機構から構成されている。なお、左旋回クラッチ機構45及び右旋回クラッチ機構55は、複数の摩擦板群が互いに密になるように配置されており、作動油の供給が停止されても動力伝達状態となるように構成されている。
【0092】
〔左旋回〕
バルブユニット90から、サイドクラッチ軸30の内部に形成された左側油路34を介して左側油室43の内部に作動油を供給する際に、左旋回クラッチ機構45に備えられた左旋回油室46にも作動油が供給され、複数の摩擦板群の滑りが規制され、左旋回クラッチ機構45は動力伝達状態となる。
【0093】
このとき、上述のように、左サイドクラッチ機構40は遮断状態であるため、左側出力ギア32には左噛合部41を介した動力の伝達は行われない。
【0094】
しかし、左側出力ギア32には旋回出力ギア65、出力中継ギア38、及び左旋回クラッチ機構45を介してソフトクラッチ機構70からの動力が伝達され得る。また、左側出力ギア32は、旋回用ブレーキ機構80により、旋回出力ギア65、出力中継ギア38、及び左旋回クラッチ機構45を介して制動状態となり得る。したがって、左側出力ギア32に左噛合部41を介して動力が伝達されるときよりも低速の動力が伝達され、又は、左側出力ギア32が制動状態となり、機体は左方向に緩旋回又はブレーキ旋回する。
【0095】
〔右旋回〕
バルブユニット90から、サイドクラッチ軸30の内部に形成された右側油路35を介して右側油室53の内部に作動油を供給する際に、右旋回クラッチ機構55に備えられた右旋回油室56にも作動油が供給され、複数の摩擦板群の滑りが規制され、右旋回クラッチ機構55は動力伝達状態となる。
【0096】
このとき、上述のように、右サイドクラッチ機構50は遮断状態であるため、右側出力ギア33には、右噛合部51を介した動力の伝達は行われない。
【0097】
しかし、右側出力ギア33には旋回出力ギア65、出力中継ギア38、及び右旋回クラッチ機構55を介してソフトクラッチ機構70からの動力が伝達され得る。また、右側出力ギア33は、旋回用ブレーキ機構80により、旋回出力ギア65、出力中継ギア38、及び右旋回クラッチ機構55を介して制動状態となり得る。したがって、右側出力ギア33に右噛合部51を介して動力が伝達されるときよりも低速の動力が伝達され、又は、右側出力ギア33が制動状態となり、機体は右方向に緩旋回又はブレーキ旋回する。
【0098】
本体ケーシング11には、無段変速装置の出力軸12から出力される動力によって駆動する油圧ポンプ26(
図4参照)が取り付けられている。油圧ポンプ26は、本体ケーシング11の内部に貯留された潤滑油を吸引し、バルブユニット90に作動油として供給するように構成されている。
【0099】
図1及び
図4に示すように、油圧ポンプ26は、バルブユニット90を介して、旋回クラッチ軸60の左端側から、第1主油路1及び第2主油路4に作動油を供給可能に構成されている。
【0100】
〔バルブユニット〕
図4に示すように、バルブユニット90は、油圧ポンプ26から吐出された作動油を左サイドクラッチ機構40、右サイドクラッチ機構50、ソフトクラッチ機構70、旋回用ブレーキ機構80、左旋回クラッチ機構45及び右旋回クラッチ機構55のそれぞれに給排する油圧回路92を備えている。
【0101】
油圧回路92に、左サイドクラッチ機構40に対する作動油の給排を制御する左サイドクラッチバルブV1と、右サイドクラッチ機構50に対する作動油の給排を制御する右サイドクラッチバルブV2と、ソフトクラッチ機構70及び旋回用ブレーキ機構80に対する作動油の給排を制御する旋回クラッチバルブV3と、ソフトクラッチ機構70と旋回用ブレーキ機構80とに対する作動油の給排を切り替える切替バルブV4と、油圧回路92の内部の油圧が所定値以上となると油圧回路92を無負荷状態とするアンロードバルブV5と、油圧回路92の内部の油圧を規定値に維持するリリーフバルブV6と、が備えられている。
【0102】
特に、左サイドクラッチバルブV1、右サイドクラッチバルブV2、旋回クラッチバルブV3、切替バルブV4、及び、アンロードバルブV5は、直動式の多ポートソレノイドバルブから構成されている。なお、各バルブの作動は、図示しない制御装置によって制御される。
【0103】
ユニットケーシング91には、油圧ポンプ26から吐出された作動油の入力部99が備えられている。
【0104】
ユニットケーシング91には入力部99から、左サイドクラッチバルブV1、右サイドクラッチバルブV2、アンロードバルブV5、及び、リリーフバルブV6の各入力ポートP1,P2,P5,P6へと作動油を供給する入力通路L1が備えられている。
【0105】
左サイドクラッチバルブV1の給排ポートA1は、サイドクラッチ軸30に形成された左側油路34に作動油を給排する給排通路L2に連通している。左サイドクラッチバルブV1のドレンポートT1は、排出通路L3を介して第一油室C1に連通している。
【0106】
右サイドクラッチバルブV2の給排ポートA2は、サイドクラッチ軸30に形成された右側油路35に作動油を給排する給排通路L4に連通している。右サイドクラッチバルブV2のドレンポートT2は、排出通路L5を介して第一油室C1に連通している。
【0107】
さらに、サイドクラッチ軸30に形成された返送油路36からの作動油を受け入れる供給通路L6が設けられている。供給通路L6は、旋回クラッチバルブV3の入力ポートP3に連通している。なお、供給通路L6にはフィルタ96が備えられている。
【0108】
旋回クラッチバルブV3の出力ポートA3は、供給通路L7に連通し、供給通路L7を介して切替バルブV4の入力ポートP4に作動油が供給される。旋回クラッチバルブV3のドレンポートT3は、排出通路L8を介して第一油室C1に連通している。
【0109】
切替バルブV4の出力ポートA4は、旋回クラッチ軸60に形成された第1作動油路62に作動油を供給する供給通路L9に連通している。
【0110】
切替バルブV4の出力ポートB4は、旋回クラッチ軸60に形成された第2作動油路64に作動油を供給する供給通路L10に連通している。
【0111】
第一油室C1に、アンロードバルブV5に設けられた出力ポートA5に連通した排出通路L11が接続されている。アンロードバルブV5に設けられたドレンポートT5は、排出通路L12を介して第一油室C1に連通している。
【0112】
リリーフバルブV6に設けられたドレンポートT6は、ユニットケーシング91の外部に連通している。
【0113】
以上で説明した構成であれば、旋回クラッチ軸60における何れの作動油路においても、供給油路が主油路における右側の端部から旋回クラッチ軸60の外周側へ延びており、且つ、圧抜き油路が供給油路よりも左側に形成されている。
【0114】
従って、旋回クラッチ軸60における何れの作動油路においても、主油路が、旋回クラッチ軸60の左端から供給油路まで形成されることとなる。言い換えれば、旋回クラッチ軸60において、供給油路よりも右側の部分には主油路が形成されないこととなる。そして、圧抜き油路は、主油路の中途部から旋回クラッチ軸60の外周側へ延びる。
【0115】
これにより、旋回クラッチ軸60における何れの作動油路においても、主油路の全長に亘って、エアブロー等の風を良好に通すことが可能となる。従って、以上で説明した構成であれば、旋回クラッチ軸60における全ての作動油路の内部の切りくずを容易に取り除くことが可能となる。
【0116】
尚、以上に記載した実施形態は一例に過ぎないのであり、本発明はこれに限定されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0117】
〔その他の実施形態〕
(1)左旋回クラッチ機構45は、
図5に示すような構成であっても良い。この構成においては、左側出力ギア32の右端部に、複数のディスク芯材47が固定されている。また、出力中継ギア38には、複数のセパレータプレート49が固定されている。そして、ディスク芯材47とセパレータプレート49とが交互に配置されている。
【0118】
ディスク芯材47は、根本部47a及び先端部47bを有している。ディスク芯材47における根本部47aが、左側出力ギア32の右端部に固定されている。そして、先端部47bは、根本部47aから、サイドクラッチ軸30の径方向に延びている。また、先端部47bの左側面及び右側面には、摩擦材48が貼り付けられている。
【0119】
ここで、根本部47aは、先端部47bよりも厚く形成されている。この構成によれば、根本部47aと先端部47bとの厚みが同じである場合に比べて、左旋回クラッチ機構45のサイズを増大させることなく、根本部47aの強度を増すことができる。これにより、左旋回クラッチ機構45のサイズを増大させることなく、左旋回クラッチ機構45により伝達されるトルクの許容量を増すことができる。
【0120】
また、
図5に示す構成では、先端部47bと比較して根本部47aが左右に膨出した形状となっている。しかしながら、根本部47aが左方のみに膨出した形状でも良いし、右方のみに膨出した形状でも良い。
【0121】
ただし、根本部47aが左方のみに膨出した形状、または、右方のみに膨出した形状である場合は、ディスク芯材47が左右非対称となるため、ディスク芯材47の組付け方向が限定される。
【0122】
これに対し、根本部47aが左右に膨出した形状であれば、ディスク芯材47が左右対称となるため、ディスク芯材47の組付け方向が限定されない。これにより、ディスク芯材47の組付け作業が容易となる。
【0123】
また、ディスク芯材47における根本部47aに代えて、複数のセパレータプレート49の根本部が厚く形成されていても良い。また、ディスク芯材47における根本部47aと、複数のセパレータプレート49の根本部と、が厚く形成されていても良い。なお、複数のセパレータプレート49の根本部とは、セパレータプレート49において、出力中継ギア38に固定されている部分である。
【0124】
なお、ここで説明した各構成は、右旋回クラッチ機構55にも適用することができる。
【0125】
(2)左右方向は、上記実施形態とは逆でも良い。
【0126】
(3)第1ピストン油室76は、第1摩擦板群73より右側に配置されていても良い。
【0127】
(4)第2ピストン油室86は、第2摩擦板群83より左側に配置されていても良い。
【0128】
(5)第1圧抜き油路3は、第2配置空間87以外の空間または油路に接続していても良い。
【0129】
(6)第2圧抜き油路6は、第2配置空間87以外の空間または油路に接続していても良い。
【0130】
(7)油圧式クラッチ機構の設けられる個数は、3個以上でも良い。
【0131】
(8)油圧式クラッチ機構は、噛合式のクラッチ機構であっても良い。
【0132】
(9)作動油路の形成される個数は、3個以上でも良い。