特許第6887424号(P6887424)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6887424メチルメタクリレートの精製のためのプロセス
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  • 特許6887424-メチルメタクリレートの精製のためのプロセス 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6887424
(24)【登録日】2021年5月20日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】メチルメタクリレートの精製のためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   C07C 67/54 20060101AFI20210603BHJP
   C07C 69/54 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   C07C67/54
   C07C69/54 Z
【請求項の数】10
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-515445(P2018-515445)
(86)(22)【出願日】2016年9月28日
(65)【公表番号】特表2018-531928(P2018-531928A)
(43)【公表日】2018年11月1日
(86)【国際出願番号】US2016054043
(87)【国際公開番号】WO2017065969
(87)【国際公開日】20170420
【審査請求日】2019年9月24日
(31)【優先権主張番号】62/241,345
(32)【優先日】2015年10月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デニス・ダブリュ・ジュウェル
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ジー・ペンダーガスト
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・ジー・ウォーリー
【審査官】 中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−239564(JP,A)
【文献】 特開平08−268938(JP,A)
【文献】 特開平11−314002(JP,A)
【文献】 特開2005−000860(JP,A)
【文献】 特開昭60−237032(JP,A)
【文献】 米国特許第02471134(US,A)
【文献】 Q.−K.Le et al.,Dividing wall columns for heterogeneous azeotropic distillation,Chemical Engineering Research and Design,2015年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチルメタクリレートを精製するためのプロセスであって、(a)メチルメタクリレート、メタノール、水及びメチルメタクリレートのオリゴマーを含む生成物混合物を、蒸留カラムの内部の一部を垂直に二分して分割セクションを形成する隔壁を備える蒸留カラムの分割セクションに供給することと;(b)前記蒸留カラムからオーバーヘッドストリーム及び底部ストリームを除去し、前記蒸留カラムから中間側部引出しストリームを除去することであって、ここで、前記中間側部引出しストリームの除去が行われる分割セクションとは前記隔壁の反対側にある分割セクションに、前記生成物混合物が入ることと;(c)前記隔壁より上及び前記蒸留カラムの頂部より下の点から、上側部引出しストリームを除去し、前記上側部引出しストリームから水の一部を分離して、脱水上側部引出しストリームを生成し、前記脱水上側部引出しストリームを前記蒸留カラムに戻すことと、を含むプロセス。
【請求項2】
前記隔壁が、全カラム高さの45〜65%の高さを有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記隔壁が、前記カラムを2つの側に分離し、そのいずれも、前記カラムの断面積の60%を超える断面積を有さない、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記隔壁の垂直中心が、前記カラムの底部から、前記カラムの高さの40〜60%の距離にある、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記脱水上側部引出しストリームが、10モル%以下の水を含有する、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記上側部引出しストリームの体積が、それが除去されるカラム段内の液体の体積の少なくとも90%である、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
記生成物混合物が、前記カラムの底部から、前記カラムの高さの40〜60%の距離で前記カラムに入る、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記上側部引出しストリームが、前記カラムの前記分割セクションのすぐ上の段で前記カラムから除去される、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記脱水上側部引出しストリームが、前記分割セクションの頂部より1段低い高さで前記カラムに戻される、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記脱水上側部引出しストリームが、9モル%以下の水を含有する、請求項9に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタノール、水及びメチルメタクリレートのオリゴマーも含有する、メチルメタクリレートの調製からの反応生成物の精製のためのプロセスに関する。
【0002】
隔壁カラムは、3成分混合物の分離におけるその増加した効率でよく知られている。いくつかの場合において、隔壁カラムは、カラムの頂部で水分離器と組み合わされるが、例えば、Q.−K.Le et al.,Chemical Engineering Research and Design(2015),http://dx.doi.org/10.1016/j.cherd.2015.03.022を参照されたい。メチルメタクリレートの調製から生じる反応生成物の成分を分離するためのより効率的なプロセスが必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
本発明の方法は、メチルメタクリレートを精製するためのプロセスであって、(a)メチルメタクリレート、メタノール、水及びメチルメタクリレートのオリゴマーを含む生成物混合物を、隔壁を備える蒸留カラムに供給することと;(b)蒸留カラムからオーバーヘッドストリーム及び底部ストリームを除去し、蒸留カラムから中間側部引出しストリームを除去することであって、粗生成物が、中間側部引出しストリームから隔壁の反対側の隔壁蒸留カラムに進入する、除去することと;(c)隔壁より上及び蒸留カラムの頂部より下の点から、上側部引出しストリームを除去し、上側部引出しストリームから水の一部を分離して、脱水上側部引出しストリームを生成し、脱水上側部引出しストリームを蒸留カラムに戻すことと、を含むプロセスに関する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】図は、隔壁カラムを使用した本発明のプロセスの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
別段に指定されない限り、全てのパーセンテージの組成は、重量パーセンテージ(重量%)であり、全ての温度は℃である。メチルメタクリレートのオリゴマーは、メチルメタクリレートの二量体、及びより少量の、例えば三量体を含むより高次のオリゴマーを含む。「段」は、トレイ塔の場合のトレイ、または充填塔の場合の平衡段である。
【0006】
隔壁蒸留カラムは、隔壁を備える。隔壁は、蒸留カラムの内部の一部を垂直に二分し、分割セクションを形成するが、カラムの頂部または底部セクションまでは延在せず、したがって、カラムは、従来のカラムと同様に還流及び再沸騰が可能である。隔壁は、カラムを2つの側に分離し、そのいずれも、カラムの断面積の60%を超えず、好ましくは、いずれの側も55%を超えず、好ましくは、側は実質的に等しい、すなわちいずれの側も51%を超えない。隔壁は、流体不透過性の邪魔板を提供し、カラムの内部を分離している。カラムへの供給物入口は、隔壁の1つの側に位置し、一方1つ以上の側部引出しが反対側に位置している。隔壁により、入口を有さないカラムの側はより安定に機能することができ、入口流速、条件または組成の変動からの影響は最小限である。この増加した安定性により、オーバーヘッドストリームまたは底部ストリームのいずれかからの異なる組成を有する1つ以上の側部引出しストリームがカラムから除去され得るようにカラムを設計及び操作することができる。好ましくは、隔壁は、全カラム高さの70%を超えて垂直に延在せず、好ましくは65%以下、好ましくは60%以下である。好ましくは、隔壁は、カラム高さの少なくとも40%、好ましくは少なくとも45%、好ましくは少なくとも50%垂直に延在する。好ましくは、隔壁の垂直中心は、カラムの底部から、カラムの高さの40〜60%、好ましくは45〜55%の距離にある。好ましくは、分割セクションにおける段数は、6〜15、好ましくは8〜13、好ましくは9〜12である。
【0007】
好ましくは、隔壁の上のカラムのセクションは、2個〜6個、好ましくは3個〜5個の段を有する。好ましくは、隔壁の下のカラムのセクションは、2個〜6個、好ましくは3個〜5個の段を有する。好ましくは、隔壁の下のセクションからの蒸気は、蒸気の60%以下、好ましくは55%以下、好ましくは52%以下がいずれかの側を通過するように、分割セクションの間で分割される。
【0008】
蒸留カラム内の温度及び圧力は、蒸留されている材料の組成に依存する。本発明の一実施形態において、カラムは、約1〜約50mmHg、または5〜10mmHg等の減圧下で操作される。リボイラ温度は、有利には120〜195℃である。
【0009】
単一カラムから3つ以上の生成物ストリームを生成する能力は、より少ない蒸留カラム及びおそらくは低減された資本コストでの成分分離を可能にし得る。隔壁蒸留カラムは、単一の蒸留カラムとして使用されてもよく、または、複数の隔壁蒸留カラムが直列もしくは並列構成で使用されてもよい。隔壁蒸留カラムはまた、1つ以上の従来の蒸留カラムまたは分離デバイスと併せて使用されてもよい。本発明の実施形態は、カラムへの最適な供給場所が最適な側部引出し場所の上である場合に特に適用され得る。供給場所が従来の蒸留カラムにおける側部引出し場所の上である場合、カラム内の液体供給物の下方の流れは、側部引出し流組成に対して大きな影響を有する。供給物流速、条件または供給物ストリームの組成の変動は、側部引出し流組成を改変し、この従来の蒸留カラムの構成において安定な側部引出しストリームの生成を達成するのが非常に困難となる。
【0010】
好ましくは、供給物は、隔壁の底部から、隔壁の高さの35〜65%、好ましくは40〜60%、好ましくは45〜55%の距離でカラムに進入する。好ましくは、中間側部引出しストリームは、隔壁の底部から、隔壁の高さの35〜65%、好ましくは40〜60%、好ましくは45〜55%の距離でカラムから除去される。好ましくは、中間側部引出しストリームの一部、好ましくは70〜90%、好ましくは少なくとも85%、好ましくは少なくとも87%、好ましくは90%以下、好ましくは95%以下がカラムに戻される。
【0011】
好ましくは、上側部引出しストリームは、カラムの分割セクションのすぐ上の段でカラムから除去される。典型的には、上側部引出しストリームは、2つの液相を含む。好ましくは、脱水上側部引出しストリームは、上側部ストリームが除去される段よりも1段低い高さでカラムに戻される。脱水上側部引出しストリームは、好ましくはストリームの60%以下、好ましくは55%以下、好ましくは52%以下がいずれかの側に戻されるように、カラムの分割セクションの間で分割される。好ましくは、脱水側部ストリームは、1つの液相のみを含有する。好ましくは、脱水側部ストリームは、11モル%以下、好ましくは10%以下、好ましくは9.5%以下、好ましくは9%以下の水を含有する。好ましくは、上側部引出しストリームの体積は、それが除去されるカラム段内の液体の体積の少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%である。
【0012】
水は、標準的な方法を用いてストリームからデカンテーションされ得る。1つの好ましい実施形態において、垂直な邪魔板または一連の邪魔板を含有し、有機及び水相が個々の相に分離するのに十分なサイズの槽を用いる。より軽い有機相は、垂直の邪魔板上を進み、より重い水相は、邪魔板の下側を流動する。分離された液体は、各相のオーバーフロー及びアンダーフローを蓄積した槽のセクションから引き出される。
【0013】
蒸留カラムの種類は、当業者に周知の基準に従って選択され得る。例えば、蒸留カラムは、トレイまたは充填材、例えば低圧力損失金網構造充填材を含んでもよい。
【0014】
図は、供給物1がカラムの一方側に導入される隔壁カラム6を描いている。22で示されるカラムのセクションは、充填層またはトレイを含有し、一方8は隔壁である。カラムからの底部流23は分割され、底部生成物5はカラムから除去され、リサイクル流21はリボイラ9を介してカラムに戻される。液体中間側部引出しストリーム16は、スプリッタ13内に入り、生成物ストリーム4はカラムから出て、還流ストリーム17はカラムに戻される。液体上側部引出しストリーム3はカラムから出て、水分離器7に進入し、水に富む液体ストリーム24はカラムから出て、水が枯渇した液体ストリーム20はスプリッタ12に送られ、そこからストリーム18及び19がカラムに戻される。蒸留物14は、頂部でカラムから出て、凝縮器10、次いでスプリッタ11を通過し、頂部引出し流2はカラムから除去され、リサイクルストリーム15はカラムに戻される。
【実施例】
【0015】
ASPEN PLUS Version 8.6ソフトウェアを使用して、厳密なシミュレーションを行った。一緒に隔壁塔を厳密に表す個々の成分は、Aspenパッケージ内のRADFRACと呼ばれるモジュールを使用してシミュレートされる。デカンタは、Aspenフレームワーク内のDECANTERモジュールを使用してシミュレートされる。物理的特性は、液相の活量係数モデル及び気相の状態方程式を使用してモデル化される。
【0016】
水分離器を有する隔壁カラムのシミュレーションに使用されたパラメータは、以下の通りであった:カラムの分割セクションにおいて10段、供給物は5段目で進入;分割セクションの上に4段;分割セクションの下に4段;及び中間に隔壁。この例において、熱は、塔の底部に位置する従来のリボイラにより入力される。
【0017】
水分離器を有さない隔壁カラムをシミュレートするために使用されたパラメータは、分離器が存在しないことを除いて上で使用されたパラメータと同じであった。
【0018】
2カラム構成は、第2のカラムに供給される第1のカラムからの底部流を有し、第2のカラムから生成物ストリームがオーバーヘッドで回収される。シミュレーションに使用されたパラメータは、以下の通りである:
10個の段、塔の上の凝縮器、及びリボイラからなる第1のカラムは、塔の上部トレイで、またはその近くで供給を受ける。第1の塔のオーバーヘッド流からの蒸気は、凝縮器へと進み、凝縮後にデカンタへと進む。デカンタの有機相は、再び塔に供給され、一方水相は、さらなる処理のためにシステム外へと進む。第1の塔からの底部生成物は、8個の段を有するようにシミュレートされた第2の塔へと進む。塔は、塔の中間部で、またはその近くで供給を受け、第2の塔のオーバーヘッド流は、最終生成物であり、これは本明細書に記載の隔壁塔の中間生成物に対応するストリームである。第2の塔の底部流は、重いオリゴマーを含有し、微量のMMA生成物も含有し得る。
【0019】
実施例
請求されたプロセスの結果は、以下の通りである。
【0020】
【表1】
【0021】
同じ段数及びリボイラに対する同じ負荷では、生成物の回収量は、水分離器を有さない隔壁カラムから得られたもの(比較例1を参照されたい)よりもほぼ5%高い純度の約8キログラムモル毎時高い生成物である。
【0022】
同じ段数及びリボイラに対する同じ負荷では、生成物の回収量は、2カラム構成の場合(比較例2を参照されたい)と本質的に同じ純度の約12.2キログラムモル毎時高い生成物である。これは、塔シェル及び基礎が1つ少なく、追加的な負荷及び追加的な段がない場合、1222キログラム毎時(およそ年間8600時間で年間10.5MMキログラム)に相当する。
【0023】
比較例1
水分離器を有さない隔壁カラムの使用における結果は、以下の通りである。
【0024】
【表2】
【0025】
比較例2
2カラムの使用における結果は、以下の通りである。
【0026】
【表3】

図1