(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6887427
(24)【登録日】2021年5月20日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】低エネルギー放射線量子及び高エネルギー放射線量子の組み合わされた検出のための放射線検出器
(51)【国際特許分類】
G01T 1/20 20060101AFI20210603BHJP
A61B 6/03 20060101ALI20210603BHJP
G01T 1/161 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
G01T1/20 B
G01T1/20 C
G01T1/20 D
G01T1/20 E
G01T1/20 G
G01T1/20 L
A61B6/03 320R
A61B6/03 377
G01T1/161 C
【請求項の数】18
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-519822(P2018-519822)
(86)(22)【出願日】2016年10月14日
(65)【公表番号】特表2018-537658(P2018-537658A)
(43)【公表日】2018年12月20日
(86)【国際出願番号】EP2016074647
(87)【国際公開番号】WO2017067846
(87)【国際公開日】20170427
【審査請求日】2019年7月11日
【審判番号】不服2020-13149(P2020-13149/J1)
【審判請求日】2020年9月18日
(31)【優先権主張番号】15190722.7
(32)【優先日】2015年10月21日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】ヤコブス ヨハネス ウィルヘルムス マリア
(72)【発明者】
【氏名】ヨリッツマ ヨリト
(72)【発明者】
【氏名】ステインハウセル ヘイドラム
(72)【発明者】
【氏名】ウィメールス オンノ ヤン
(72)【発明者】
【氏名】アルフィンフ ペーター レックス
(72)【発明者】
【氏名】ステヘフイス ヘルマン
(72)【発明者】
【氏名】ウィクゾレック ヘルフリート カール
【合議体】
【審判長】
井上 博之
【審判官】
野村 伸雄
【審判官】
松川 直樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−113061(JP,A)
【文献】
特開2012−26932(JP,A)
【文献】
特開2013−37011(JP,A)
【文献】
特表2015−529793(JP,A)
【文献】
特開2011−163966(JP,A)
【文献】
特開2010−127630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/20
A61B 6/03
G01T 1/161
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低エネルギー放射線量子であるX線及び高エネルギー放射線量子であるガンマ線の同時検出のための放射線検出器であって、前記放射線検出器は多層構造を有し、
前記多層構造が、
高エネルギー放射線量子が後方シンチレータ層によって吸収されることに応じてシンチレーションフォトンのバーストを放出する後方シンチレータ層と、
後方シンチレータ層の後側に取り付けられた後方フォトセンサ層であって、前記後方シンチレータ層において生成されるシンチレーションフォトンを検出する後方フォトセンサ層と、
前記後方フォトセンサ層と反対側の、前記後方シンチレータ層の前方に光学反射体をはさんで配された前方シンチレータ層であって、前記低エネルギー放射線量子が前記前方シンチレータ層によって吸収されることに応じてシンチレーションフォトンのバーストを放出する前方シンチレータ層と、
前記後方シンチレータ層と反対側の、前記前方シンチレータ層の前側に取り付けられた前方フォトセンサ層であって、前記前方シンチレータ層において生成されるシンチレーションフォトンを検出する前方フォトセンサ層と、
を有し、前記高エネルギー放射線量子がガンマ線であり、前記低エネルギー放射線量子がX線であり、
前記高エネルギー放射線量子は、前記後方シンチレータ層によって吸収される前に、前記前方フォトセンサ層及び前記前方シンチレータ層を通過し、
前記後方フォトセンサ層は、2次元の各次元において後方フォトセンサ層ピクセルピッチを有するピクセルの2次元アレイを有し、前記前方フォトセンサ層は、前記2次元の各次元において前方フォトセンサ層ピクセルピッチを有するピクセルの2次元アレイを有し、前記後方フォトセンサ層ピクセルピッチが、前記前方フォトセンサ層ピクセルピッチに等しくない、放射線検出器。
【請求項2】
前記X線は、20keV乃至120keVのレンジのエネルギーを有し、前記ガンマ線は、120keV乃至2MeVのレンジのエネルギーを有する、請求項1に記載の放射線検出器。
【請求項3】
前記前方フォトセンサ層は、前記放射線検出器の照射側に配され、前記放射線検出器の照射側は、低エネルギー放射線量子及び/又は高エネルギー放射線量子を受け取るように構成される、請求項1又は2に記載の放射線検出器。
【請求項4】
前記後方シンチレータ層は、ヨウ化ナトリウム、ガドリニウムオキシオルトシリケート、ルテチウムガドリニウムオキシオルトシリケート、ルテチウムオキシオルトシリケート、ルテチウムイットリウムオキシオルトシリケート、ルテチウムオアイロシリケート、ビスマスゲルマネート、臭化ランタンのグループから選択される少なくとも1つの材料を含み、及び/又は、前記前方シンチレータ層は、ヨウ化セシウム、オキシ硫化ガドリニウム、タングステン酸カルシウム、及びタングステン酸カドミウムのグループから選択される少なくとも1つの材料を含む、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の放射線検出器。
【請求項5】
前記後方シンチレータ層及び前記前方シンチレータ層が同一材料を含む、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の放射線検出器。
【請求項6】
前記後方シンチレータ層及び/又は前記前方シンチレータ層が、モノリシックシンチレータを有する、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の放射線検出器。
【請求項7】
前記後方シンチレータ層及び/又は前記前方シンチレータ層が、ピクセル化されたシンチレータを有する、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の放射線検出器。
【請求項8】
前記後方シンチレータ層と前記前方シンチレータ層との間に配される光学反射体として光学デカップリング層を更に有する、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の放射線検出器。
【請求項9】
前記光学デカップリング層が、前記高エネルギー放射線量子に対し透明である、請求項8に記載の放射線検出器。
【請求項10】
前記後方フォトセンサ層が、光電子増倍管、アバランシェフォトダイオード又はシリコン光電子増倍管を有し、及び/又は前記前方フォトセンサ層が、薄膜トランジスタ検出器、CMOS能動ピクセルセンサ又はシリコン光電子増倍管を有する、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の放射線検出器。
【請求項11】
X線源と、
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の放射線検出器と、
を有するイメージングシステム。
【請求項12】
前記放射線検出器は、前記前方フォトセンサ層がX線源と前記前方シンチレータ層との間にあるように構成される、請求項11に記載のイメージングシステム。
【請求項13】
低エネルギーのX線放射線及び高エネルギーのガンマ放射線の同時検出のための放射線検出器であって、前記放射線検出器は多層構造を有し、
前記多層構造が、
X線放射線量子が前方シンチレータ層によって吸収されることに応じてシンチレーションフォトンのバーストを放出する前方シンチレータ層と、
前記前方シンチレータ層の前側に取り付けられた前方フォトセンサ層であって、前記前方シンチレータ層において生成されるシンチレーションフォトンを検出する前方フォトセンサ層と、
前記前方シンチレータ層の後方に配され、ガンマ放射線量子が後方シンチレータ層によって吸収されることに応じてシンチレーションフォトンのバーストを放出する後方シンチレータ層と、
前記前方シンチレータ層と反対側の、前記後方シンチレータ層の後側に取り付けられた後方フォトセンサ層であって、前記後方シンチレータ層において生成されるシンチレーションフォトンを検出する後方フォトセンサ層と、
前記前方シンチレータ層と前記後方シンチレータ層との間に配される光学デカップリング層であって、前記後方シンチレータ層又は前記前方シンチレータ層と一体的に形成されている光学反射体層である、光学デカップリング層と、
を有する、放射線検出器。
【請求項14】
前記後方フォトセンサ層は、前記2次元の各次元において後方フォトセンサ層ピクセルピッチを有するピクセルの2次元アレイを有し、前記前方フォトセンサ層は、前記2次元の各次元において前方フォトセンサ層ピクセルピッチを有するピクセルの2次元アレイを有し、前記後方フォトセンサ層ピクセルピッチが、前記前方フォトセンサ層ピクセルピッチに等しくない、請求項13に記載の放射線検出器。
【請求項15】
前記前方フォトセンサ層及び/又は前記後方フォトセンサ層がフォイル基板を有する、請求項13に記載の放射線検出器。
【請求項16】
前記後方フォトセンサ層が、光ガイド層を介して前記後方シンチレータ層の後側に取り付けられ、及び/又は、前記前方フォトセンサ層が、光ガイド層を介して前記前方シンチレータ層の前側に取り付けられる、請求項13項に記載の放射線検出器。
【請求項17】
前記放射線検出器は、低エネルギー放射線量子及び高エネルギー放射線量子をコリメートするコリメータ層を更に有し、前記コリメータ層は、前記前方シンチレータ層と反対側の、前記前方フォトセンサ層の前に配置される、請求項16に記載の放射線検出器。
【請求項18】
前記コリメータ層が、相互に直交する方向に延在するアパーチャの2次元アレイを有する、請求項17に記載の放射線検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低エネルギー放射線量子及び高エネルギー放射線量子の組み合わされた検出のための放射線検出器の分野に関する。本発明は、X線イメージングシステム及び臨床スタディ又は研究スタディのためのハイブリッドX線/核イメージングシステムのような医療イメージングシステムに特定の用途を見出す。このようなシステムの例は、とりわけ、スペクトルX線コンピュータトモグラフィスキャナ、介入X線及びシンチグラフィイメージングシステム、ハイブリッドシングルフォトンエミッションコンピュータトモグラフィ/X線(SPECT/X線)スキャナ、ハイブリッドシングルフォトンエミッションコンピュータトモグラフィ/X線コンピュータトモグラフィ(SPECT/CT)スキャナ、ハイブリッドシングルフォトンエミッションコンピュータトモグラフィ/X線コーンビームコンピュータトモグラフィ(SPECT/CBCT)スキャナ、及びハイブリッドポジトロンエミッショントモグラフィ/X線コンピュータトモグラフィ(PET/CT)スキャナを含む。
【背景技術】
【0002】
複数の異なるエネルギーの放射線量子を検出することができるイメージングシステムは、一般に、イメージング被検体の解剖学的情報及び機能情報を取得するために使用される。例えば、SPECTは、器官及び細胞の機能情報及び代謝情報に基づく疾患プロセスの評価を可能にする。X線コンピュータトモグラフィをSPECTに組み込むことによって、解剖学的情報は、機能情報及び代謝情報と組み合わせられることができる。SPECT/CTスキャナは、腫瘍学において価値があることが分かっており、近年、画像ガイドされる治療における新規用途のために注目されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
X線及びガンマ光線の組み合わされた検出のための放射線検出器は、米国特許第6448559B1号公報に記述されている。検出器は、ある層の後ろに別の層が配置される複数の層をもつ多層構造を有する。検出器は、X線を検出するための前方シンチレータ層と、前方シンチレータ層の後ろに配置され、ガンマ線を検出する後方シンチレータ層とを有する。多層構造は更に、前方及び後方シンチレータ層において生成されるシンチレーション光子を検出するように、前方シンチレータ層と反対側の、後方シンチレータ層の後側に配置されるフォトセンサ層を有する。X線は、それらの比較的低いエネルギーのため、X線源と向き合って配置される前方シンチレータ層によって一般に吸収される。
【0004】
前方シンチレータ層におけるX線の吸収によって生成されるシンチレーション光は、フォトセンサによって検出される前に、後方シンチレータ層を通過する。こうして、前方シンチレータ層から発するシンチレーション光は、大きい領域にわたって拡散され、それにより、例えば変調伝達関数(MTF)の減少によって、X線CT画像の空間解像度を低減させる。
【0005】
欧州特許出願公開第2180342A1号公報は、低エネルギーレンジのX線を吸収し光を放出するシンチレータ層、及び高エネルギーレンジのX線を吸収し光を放出するシンチレータ層が互いに接触するようにされたX線ラインセンサを開示している。
【0006】
米国特許出願公開第2008/011960A1号公報は、対象のX線画像を取得するためのX線イメージング装置を開示している。さまざまな2パネルX線イメージング装置構成において、前パネル及び後パネルは、基板、信号検知素子及び読出し装置のアレイ、及び不活化層を有する。前パネル及び後パネルは、物体を通過するX線に応答して光を生成するシンチレーション蛍光体層を有し、光は、信号検出素子を照射してX線画像を表す信号を提供する。
【0007】
米国特許出願第2002/070365号公報は、選択された組織をイメージングするためにシンチレーションスクリーン及び電荷結合デバイス(CCD)が使用される身体組織の分光イメージングのシステムを開示している。X線源は、被検体の身体の領域を通過するX線を生成し、それによりシンチレーションスクリーンに到達するX線画像を形成する。
【0008】
米国特許出願第2013/126743号公報は、シンチレータ層、第1の光電変換層、第2の光電変換層、及び1枚のボード又は2枚のボードを有する放射線検出器を開示している。第1の光電変換層は、少なくとも第1の波長の光を吸収し、光を電荷に変換する。第2の光電変換層は、第2の波長の光を、第1の波長の光より多く吸収し、光を電荷に変換する。
【0009】
多層構造を有する放射線検出器によって取得される低エネルギー放射線画像の空間分解能を改善することが有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この問題により良く対処するために、本発明の第1の見地において、低エネルギー放射線量子と高エネルギー放射線量子の組み合わされた検出のための放射線検出器であって、放射線検出器は多層構造を有し、多層構造が、高エネルギー放射線量子が後方シンチレータ層によって吸収されることに応じて、シンチレーション光子のバーストを放出するように構成された後方シンチレータ層と、後方シンチレータ層の後側に取り付けられた後方フォトセンサ層であって、後方シンチレータ層において生成されたシンチレーション光子を検出するように構成された後方フォトセンサ層と、後方フォトセンサ層と反対側の、後方シンチレータ層の前側に配置される前方シンチレータ層であって、低エネルギー放射量子が前方シンチレータ層によって吸収されることに応じて、シンチレーション光子のバーストを放出するように構成された前方シンチレータ層と、後方シンチレータ層と反対側の、前方シンチレータ層の前側に取り付けられる前方フォトセンサ層であって、前方シンチレータ層において生成されるシンチレーション光子を検出するように構成される前方フォトセンサ層と、を有する、放射線検出器が提示される。
【0011】
本発明の別の見地によれば、イメージングシステムであって、X線源と、低エネルギー放射線量子及び高エネルギー放射線量子の組み合わされた検出のための放射線検出器とを有し、放射線検出器が多層構造を有し、多層構造が、高エネルギー放射線量子が後方シンチレータ層によって吸収されることに応じてシンチレーション光子のバーストを放出するように構成された後方シンチレータ層と、後方シンチレータ層の後側に取り付けられる後方フォトセンサ層であって、後方シンチレータ層において生成されるシンチレーション光子を検出するように構成される後方フォトセンサ層と、後方フォトセンサ層と反対側の、後方シンチレータ層の前側に配置される前方シンチレータ層と、低エネルギー放射線量子が前方シンチレータ層によって吸収されことに応じて、シンチレーション光子のバーストを放出するように構成される前方シンチレータ層と、後方シンチレータ層と反対側の、前方シンチレータ層の前側に取り付けられる前方フォトセンサ層であって、前方シンチレータ層において生成されるシンチレーション光子を検出するように構成される前方フォトセンサ層と、を有する、イメージングシステムが提示される。
【0012】
本発明によれば、放射線検出器は多層構造を有し、多層構造の複数の層、すなわち、前方フォトセンサ層、前方シンチレータ層、後方シンチレータ層及び後方フォトセンサ層は、好適には、入射放射線の方向において或る層の後ろに別の層が配置される。入射放射線は、低エネルギー放射線量子及び高エネルギー放射線量子を含むことができ、低エネルギー放射線量子は、高エネルギー放射線量子より低いエネルギーを有する。例えば、入射放射線は、低エネルギーX線及び高エネルギーX線を有することができ、低エネルギーX線は、高エネルギーX線より低いエネルギーを有する。本発明の放射線検出器によって検出可能な入射放射線の別の例は、X線及びガンマ光線を含み、X線は、ガンマ光線より低いエネルギーを有する。この後者の例において、X線量子は、20keV乃至120keVのレンジのエネルギーを有することができる、ガンマ光線量子は、120keV乃至2MeVのレンジのエネルギーを有することができる。
【0013】
入射放射線の低エネルギー放射線量子は、前方シンチレータ層において吸収され、入射放射線の高エネルギー放射線量子は、後方シンチレータ層において止められる前に、前方シンチレータ層を通過する。後方シンチレータ層において生成されるシンチレーション光子は、後方シンチレータ層の近くに配置される後方フォトセンサ層によって検出されることができる。前方シンチレータ層において、低エネルギー放射線量子によって生成されるシンチレーション光子の最大密度は、前方フォトセンサ層の感受性表面近くの前方シンチレータ層の周辺領域に生じる。本発明によれば、低エネルギー放射線量子によって生成されるシンチレーション光子は、それらが生成された位置の近くの位置において検出されることができ、こうして、例えばMTFに関して、低エネルギー放射線の空間解像度を改善する。
【0014】
本発明の好適な実施形態によれば、高エネルギー放射線量子はガンマ線であり、低エネルギー放射線量子はX線である。ガンマ線は、一般に、放射性同位元素からガンマ崩壊によって生成され、X線は、例えばX線管のようなX線源によって一般に生成され、X線管において、電子は、金属ターゲットと衝突し、それによってX線を生成する。一般に、特定の放射性同位元素のガンマ線より高いエネルギーを有するX線が生成されることができることに留意すべきである。しかしながら、本発明の上述した好適な実施形態のために、X線は、ガンマ線より低いエネルギーを有する。本発明の代替の好適な実施形態によれば、高エネルギー放射線量子は、高エネルギーX線であり、低エネルギー放射線量子は、低エネルギーX線であり、高エネルギーX線は、低エネルギーX線より高いエネルギーを有する。
【0015】
本発明の好適な実施形態によれば、前方フォトセンサ層は、放射線検出器の照射側に配置され、放射線検出器の照射側は、低エネルギー放射線量子及び/又は高エネルギー放射線量子を受け取るように構成される。
【0016】
本発明の別の好適な実施形態によれば、後方シンチレータ層は、ヨウ化ナトリウム(NAI)、ガドリニウムオキシオルトシリケート(GSO)、ルテチウムガドリニウムオキシオルトシリケート、ルテチウムオキシオルトシリケート(LSO)、ルテチウムイットリウムオキシオルトシリケート(LYSO)、ルテチウムパイロシエイケート(LPS)、ビスマスゲルマネート(BGO)、臭化ランタン(LaBr)を含み、及び/又は前面シンチレータ層が、ヨウ化セシウム(CsI)、ガドリニウムオキシサルファイド(GOS)、タングステン酸カルシウム又はタングステン酸カドミウム(CWO)を含む。X線の検出のために前方シンチレータ層を最適化し、ガンマ線を検出するための後方シンチレータ層を最適化するように、前方シンチレータ層及び後方シンチレータ層に異なるシンチレータ材料を選択することが可能である。前方シンチレータ層の厚さは、後方シンチレータ層の厚さと比較して、前方シンチレータ層の主平面に対して垂直な方向に測定して、より薄い厚さを有することができる。企図される1つの構成において、前方シンチレータ層は、100−700ミクロンのレンジの厚さを有することができ、後方シンチレータは、800−30000ミクロン、又は1mm−30mmのレンジの厚さを有することができる。この配置を使用して、例えば、前方シンチレータ層により、X線、すなわち低エネルギー放射線量を検出し、及び後方シンチレータにより、ガンマ線、すなわち高エネルギー放射線量を検出することができ、高エネルギー放射線量子は、低エネルギー放射線量子よりもエネルギーが高い。この構成では、ガンマ線は、例えば、Tc−99mからの140keV放射線量子、又はI−123(159keV)、I−131(365keV)、Y−90(広い制動放射、1MeVにピーク)、Ho−166(81keV)又はLu−177(208keV)からの放射線量子である。
【0017】
本発明の別の好適な実施形態によれば、後方シンチレータ層及び前方シンチレータ層は、同じ材料、具体的には、ヨウ化ナトリウム(NaI)、ガドリニウムオキシオルトシリケート(GSO)、ルテチウムガドリニウムオキシオルトシリケート、ルテチウムオキシオルトシリケート(LSO)、ルテチウムイットリウムオキシオルトシリケート(LYSO)、ルテチウムオパイロシリケート(LPS)、ゲルマン酸ビスマス(BGO)、臭化ランタン(LaBr)、ヨウ化セシウム(CsI)、オキシ硫化ガドリニウム(GOS)、タングステン酸カルシウム又はタングステン酸カドミウム(CWO)のような同じ材料を含む。同一の材料によって後方シンチレータ層及び前方シンチレータ層を実現することは、放射線検出器の製造を容易にする。
【0018】
好適には、後方シンチレータ層及び/又は前方シンチレータ層は、モノリシックシンチレータを有する。後方及び/又は前方シンチレータ層がモノリシックシンチレータを有し、好適にはモノリシックシンチレータで構成される場合、シンチレータ結晶を鋸具で切断してそれらを別個にマウントする必要がなくなり、製造コストを削減することができる。
【0019】
本発明の代替の好適な実施形態によれば、後方シンチレータ層及び/又は前方シンチレータ層は、ピクセル化されたシンチレータを有する。ピクセル化されたシンチレータは、ピクセル化されたシンチレータの隣接するシンチレーション結晶から光学的に分離されることができる多数の別個のシンチレーション結晶を有することができ、それによってピクセル間の光の共有を低減する。
【0020】
本発明の別の好適な実施形態によれば、放射線検出器は更に、後方シンチレータ層と前方シンチレータ層の間に配置される光学減結合層を有する。光学デカップリング層は、シンチレーション光子を反射するように構成される2つの対向する面を含むことができる。換言すれば、光学デカップリング層は、後方シンチレータ層において生成されたシンチレーション光子を後方シンチレータ層に反射し戻し、前方シンチレータ層において生成されたシンチレーション光子を前方シンチレータ層に反射し戻すように構成することができる。前方シンチレータ層と後方シンチレータ層の間に光学デカップリング層を配置することにより、前方シンチレータ層と後方シンチレータ層との間のシンチレーション光の共有が抑制されることができる。
【0021】
光学デカップリング層は、特にガンマ線のような高エネルギー放射線量子にとって透明であるように構成され、それにより、後方シンチレータ層及び後方フォトセンサによる高エネルギー放射線量子、特にガンマ線の検出に影響を与えないようにすることが好ましい。こうして、光学デカップリング層は、スペクトル判別を改善するために使用されることができる。光学デカップリング層は、例えばアルミニウムなどの金属を含むことができるが、他の金属もこの目的に適している。光学デカップリング層は、1mm未満、好適には0.5mm未満の厚さを有する。
【0022】
本発明の別の好適な実施形態によれば、光学デカップリング層は、後方シンチレータ層と一体的に形成され又は前方シンチレータ層と一体的に形成されている。シンチレータ層の1つと一体的に形成された光学デカップリング層を有することにより、製造努力が一層低減される。デカップリング層は、特に、前方シンチレータ層又は後方シンチレータ層と共に組み合わされた製造プロセスで成長させることができる。代替として、デカップリング層は、コーティングの形で後方シンチレータ層又は前方シンチレータ層に適用されることができる。別の代替例として、前方シンチレータ層と後方シンチレータ層との間に、特に金属を含むフォイルの形の別個のデカップリング層を配置することもできる。
【0023】
本発明の別の好適な実施形態によれば、前方フォトセンサ層は、フォイル基板を含む。フォイル基板を有する前方フォトセンサ層を用いることにより、前方フォトセンサ層における放射線量子の低減される吸収により、放射線検出器の検出効率が向上されることができる。更に、前方フォトセンサ層は、曲がった形で実現されることができる。好適には、フォイル基板は、0.5mm未満の厚さ、具体的には0.1mm未満の厚さを有する。付加的に又は代替として、後方フォトセンサ層は、フォイル基板を含むことができる。好適には、前方フォトセンサ層及び/又は後方フォトセンサ層は、フォイル基板上に薄膜トランジスタ検出器を有することができる。
【0024】
本発明の別の好適な実施形態によれば、後方フォトセンサ層は、光電子増倍管、アバランシェフォトダイオード、薄膜トランジスタ検出器又はシリコン光電子増倍管を有し、及び/又は前方フォトセンサ層は、薄膜トランジスタ検出器、CMOSイメージセンサ又はシリコン光電子増倍管を有する。薄膜トランジスタ検出器が使用される場合、薄膜トランジスタ検出器が使用される場合、薄膜トランジスタ検出器は、好適には、ガラス又はプラスチックフォイル基板上にフォトダイオードを有する大面積の薄膜トランジスタバックプレーン2次元ピクセルアレイを含む。シリコン光電子増倍管が使用される場合、それらはアナログシリコン光電子増倍管又はデジタルシリコン光電子増倍管のいずれかとすることができる。デジタルシリコン光電子増倍管は、ガイガーモードアバランシェフォトダイオード(GM−APD)としても知られているシングルフォトンアバランシェダイオードのアレイを、読み出し回路と共に1つのチップに集積する。前方及び後方フォトセンサ層が、複数のフォトセンサ、特にフォトセンサのアレイを有することが好ましい。
【0025】
好適には、後方フォトセンサは、後方シンチレータ層の後側に直接取り付けられ、前方フォトセンサ層は、前方シンチレータ層の前側に直接取り付けられる。本発明の代替の好適な実施形態によれば、後方フォトセンサ層は、光ガイド層を介して後方シンチレータ層の後側に取り付けられ、及び/又は、前方フォトセンサ層は、光ガイド層を介して前方シンチレータ層の前側に取り付けられる。光ガイドは、個々のフォトセンサのより大きい又はより小さい感受性領域上に、シンチレーション光が拡散されることを可能にすることができる。
【0026】
本発明の別の好適な実施形態によれば、放射線検出器の後方フォトセンサ層のピクセルピッチは、前方フォトセンサ層のピクセルピッチに関して規定される。この実施形態において、後方フォトセンサ層は、2次元の各次元において後方フォトセンサ層ピクセルピッチを有するピクセルの2次元アレイを有し、前方フォトセンサ層は、2次元の各次元において前方フォトセンサ層ピクセルピッチを有するピクセルの2次元アレイを有する。更に、後方フォトセンサ層ピクセルピッチは、前方フォトセンサ層ピクセルピッチと等しくない。これは、異なる解像度の個々の画像が前方及び後方フォトセンサ層によって生成されることを可能にし、それにより、画像処理負荷を低減することができる。好適には、後方フォトセンサ層ピクセルピッチは、前方フォトセンサ層ピクセルピッチの整数(N)倍であり、整数倍の倍数は1ではない。そのようにすることで、後方フォトセンサ層と比較して前方フォトセンサ層によってより高い解像度の画像が提供されることができる。従って、後方フォトセンサ層からの画像処理が簡略化される。更に、整数倍は、共通コリメータが、後方フォトセンサ層によって提供される画像と前方フォトセンサ層によって提供される画像との両方に使用されることを可能にする。
【0027】
本発明の別の好適な実施形態によれば、放射線検出器は、入射低エネルギー放射線量子及び高エネルギー放射線量子をコリメートするためのコリメータ層を更に有し、コリメータ層は、前方シンチレータ層と反対側の、前方フォトセンサ層の前方で配置される。コリメータ層は、低エネルギー放射線及び高エネルギー放射線散乱、特にX線及びガンマ線散乱を低減する。ガンマ線散乱を低減するために使用される場合、相互に直交する方向に延在する複数アパーチャの2次元アレイを有するコリメータ層が好ましい。このような構成は、X線散乱のみを低減するために通常使用される1次元アレイより好ましく、なぜなら、アパーチャの2次元アレイを規定する隔壁又は壁の2次元アレイが、相互に直交する方向の散乱を低減するからである。
【0028】
本発明の別の好適な実施形態によれば、イメージングシステムは、臨床スタディ又は研究スタディのためのX線イメージングシステム又はハイブリッドX線/核イメージングシステムのような医用イメージングシステムである。特に好適なイメージングシステムは、スペクトルX線コンピュータトモグラフィスキャナ、介入X線及びシンチグラフィイメージングシステム、ハイブリッドシングルフォトンエミッションコンピュータトモグラフィ/X線(SPECT/X線)スキャナ、ハイブリッドシングルフォトンエミッションコンピュータトモグラフィ/X線コンピュータトモグラフィ(SPECT/CT)スキャナ、ハイブリッドシングルフォトンエミッションコンピュータトモグラフィ/X線コーンビームコンピュータトモグラフィ(SPECT/CBCT)スキャナ、又は、ハイブリッドポジトロンエミッショントモグラフィ/X線コンピュータトモグラフィ(PET/CT)スキャナ、である。
【0029】
本発明の別の好適な実施形態によれば、放射線検出器は、前方フォトセンサ層がX線源と前方シンチレータ層との間にあるように構成され、それにより前方シンチレータ層の表面近くで吸収されるX線の検出を改善する。
【0030】
本発明のこれらの及び他の見地は、以下に記述される実施形態から明らかになり、それらを参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の一実施形態によるイメージングシステムの概略的な断面図。
【
図2】
図1のイメージングシステムの別の概略的な部分断面図。
【
図3】本発明の第1の実施形態による放射線検出器の概略図。
【
図4】本発明の第2の実施形態による放射線検出器の概略図。
【
図5】本発明の第3の実施形態による放射線検出器の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1及び
図2は、SPECT/CT医用イメージングシステムの形のイメージングシステム10の一実施形態を示す。イメージングシステム10は、画像ガイドされる治療アプリケーションにおいて、特に介入腫瘍学(例えば選択的な内部放射線治療)において用いられることができる。イメージングシステム10は、X線透過画像及びガンマ線エミッション画像の両方を生成するようにX線イメージング及びガンマ線イメージングを実施することができる。画像取得は、同時に又は逐次的に行われることができる。
【0033】
イメージングシステム10は、X線源9と、X線及びガンマ線の組み合わされた検出のための放射線検出器8を有する。検査領域が、X線源9と放射線検出器8との間に規定される。X線源9及び検出器8は、X線源9及び検出器8を支持するガントリ(図示せず)上に配置されることができる。ガントリは、任意に、さまざまな異なる方向において検査領域の透過及び/又はエミッション画像を取得するためにX線源9及び検出器8を同時に回転することができる。
【0034】
患者11は、患者支持体12上に位置する。放射性微小球の形のヨウ素−123、テクネチウム99又はイットリウム90などの放射性トレーサが、患者11に投与される。放射性トレーサは、ガンマ線を放出し、ガンマ線は、X線源9によって生成されるX線に加えて、放射線検出器8により検出される。
【0035】
図3は、本発明による、X線の形の低エネルギー放射線量子及びガンマ線の形の高エネルギー放射線量子の組み合わされた検出のための放射線検出器8の第1の実施形態を表す。検出器8は、ある層の後ろに別の層が配置されている4つの層2、3、5、6を有する多層構造を有する。放射線検出器8は、X線源9と向き合う照射表面7を有する。こうして、動作中、X線及びガンマ線は、放射線検出器8の照射側に配置される照射表面7を介して放射線検出器に入射する。
【0036】
前方フォトセンサ層2は、X線源9と向き合って配置される。前方フォトセンサ層2の光感受性表面は、前方シンチレータ層3に結合される。好適には、前方フォトセンサ層2は、前方シンチレータ層3に直接結合される。しかしながら、光ガイドは、前方フォトセンサ層2と前方シンチレータ層3の間に任意に配置されることができる。前方フォトセンサ層2は、薄膜トランジスタ検出器を有する。前方フォトセンサ層2は、前方シンチレータ層3において生成されるシンチレーションフォトンを検出するように構成される。
【0037】
前方シンチレータ層3は、X線が前方シンチレータ層3によって吸収されることに応答して、シンチレーションフォトンのバーストを放出するように構成される。前方シンチレータ層は、好適にはCsIシンチレータである。しかしながら、他のシンチレータ材料もまた代替として企図されることができる。前方シンチレータ層3は、モノリシックでありえ又はピクセル化されることができる。前方シンチレータ層3は、前方シンチレータ層3において生成されたシンチレーションフォトンを前方フォトセンサ層2が、検出することを可能にするように、前方フォトセンサ層2の光感受性側に取り付けられる。
【0038】
前方フォトセンサ層2と反対側の、前方シンチレータ層3の後方には、後方シンチレータ層5が配置される。後方シンチレータ層5は、X線と比較して一般により高いエネルギーを有するガンマ線を止めるように最適化される。後方シンチレータ層5は、ガンマ線が後方シンチレータ層によって吸収されることに応じてシンチレーションフォトンのバーストを放出するように構成される。好適には、後方シンチレータ層5は、モノリシックガドリニウムオキシオルトシリケートシンチレータとして実現される。しかしながら、他のシンチレータ材料及びピクセル化されたシンチレータが、代替として、企図されることができる。
【0039】
後方フォトセンサ層6が、後方シンチレータ層5の後側に取り付けられ、前記後方フォトセンサ層6は、後方シンチレータ層5において生成されるシンチレーションフォトンを検出するように構成される。後方フォトセンサ層6の光感受性表面は、後方シンチレータ層5に結合される。こうして、後方フォトセンサ層6及び前方フォトセンサ層2の光感受性表面は、互いに他方の表面を向く。好適には、後方フォトセンサ層6は、後方シンチレータ層5に直接結合される。しかしながら、光ガイドが、後方フォトセンサ層6と後方シンチレータ層5との間に任意に配置されることができる。後方フォトセンサ層6は、デジタルシリコン光電子増倍管のアレイを有する。後方フォトセンサ層6は、後方シンチレータ層5において生成されるシンチレーションフォトンを検出するように構成される。
【0040】
上述した放射線検出器8の多層構造において、X線により生成されるシンチレーションフォトンの最も高い密度が、前方フォトセンサ層2の光感受性表面近くの前方シンチレータ層3の周辺領域に生じる。X線により生成されたシンチレーションフォトンは、それらが生成された位置により近い位置で検出されることができ、こうして例えばMTFに関してX線画像の空間解像度を改善する。特定の多層構造の他の利点は、前方シンチレータ層3及び後方シンチレータ層5が、共通のシーリング構造によって封止されることができることである。これは、多くの適切なシンチレータ材料が吸湿性であり、従って湿気に対して封止される必要があるので、重要性が増している。
【0041】
第1の実施形態による放射線検出器8において、後方フォトセンサ層6は、後方シンチレータ層5から発するシンチレーションフォトンだけでなく、前方シンチレータ層3において生成されるシンチレーションフォトンであって、後方シンチレータ層5を通って後方フォトセンサ層6の感受性表面に向かって伝播するシンチレーションフォトンをも検出する。反対に、前方フォトセンサ層2は、後方シンチレータ層5において生成されるシンチレーションフォトンであって、前方シンチレータ層3を通って前方フォトセンサ層2に向かうシンチレーションフォトンを検出する。これは、X線画像の一部によるガンマ線画像の相互汚染のリスクを示し、逆もまた同様である。相互汚染のリスクは、X線画像及びガンマ画像を逐次に取得するように前方フォトセンサ層2及び後方フォトセンサ層6を逐次に活性化にすることによって軽減されることができる。例えば、後方フォトセンサ層6は、X線曝射及び前方フォトセンサ層2によるX線画像の検出後にのみガンマ画像取得を開始することができる。
【0042】
図4は、本発明の第2の実施形態による放射線検出器8を示す。第2の実施形態による検出器8は、或る層が別の層の後ろに配置される5つの層2、3、4、5、6を有する多層構造を有する。第1の実施形態の放射線検出器8と同様に、放射線検出器8の照射表面7は、X線源9と向き合う。こうして、動作中、X線及びガンマ線は、放射線検出器8の照射側に配置される照射表面7を介して放射線検出器8に入射する。
【0043】
上述した複数の層、すなわち前方フォトセンサ層2、前方シンチレータ層3、後方シンチレータ層5、及び後方フォトセンサ層6に加えて、放射線検出器8は、前方シンチレーション層3と後方シンチレーション層5との間に配置される光学デカップリング層4を有する。前方シンチレータ層3と後方シンチレータ層5との間の光学デカップリング層4によって、シンチレーション光の共有が抑制されることができる。光学デカップリング層は、後方シンチレータ層5におけるガンマ線検出を大きく低減しないように、ガンマ線に対し透明である。
【0044】
光学デカップリング層は、別個の光学反射体層、例えばVikuitiシートでありうる。代替として、光学デカップリング層は、例えばまず個々のシンチレータ層3、5の材料を成長させ、次いで、共通プロセスにおいて光学デカップリング層を成長させることによって、前方シンチレータ層3又は後方シンチレータ層5と一体的に形成されることができる。例えば、前方シンチレータ3は、セシウムヨウ素シンチレータであり、セシウムヨウ素シンチレータの上に、アルミニウムが、デカップリング層4として成長されることができる。
【0045】
図5は、本発明の第3の実施形態による放射線検出器8を示す。第3の実施形態による検出器8は、或る層が別の層の後ろに配置される6つの層1、2、3、4、5、6を有する多層構造を有する。第1及び第2の実施形態の放射線検出器8と同様に、放射線検出器8の照射表面7は、X線源9と向き合う。
【0046】
上述した層、すなわち前方フォトセンサ層2、前方シンチレータ層3、光学デカップリング層4、後方シンチレータ層5及び後方フォトセンサ層6に加えて、放射線検出器8は、コリメータ層1を有する。コリメータ層1は、放射線検出器8の照射側に配置され、こうしてX線源9と向き合い、それによりX線及びガンマ線散乱を低減する。
【0047】
放射線検出器8の上述した実施形態は更に、特にスペクトルCTスキャナ又はスペクトルCBCTスキャナのようなX線スキャナの形のイメージングシステム10における低エネルギーX線及び高エネルギーX線の組み合わされた検出のために使用されることができる。このようなイメージングシステム10において本発明による放射線検出器8を使用する場合、前方フォトセンサ層2及び後方フォトセンサ層6の一方又は両方が、薄膜トランジスタ検出器を有し、特に、ガラス又はプラスチック基板上にフォトダイオードを有する大面積薄膜トランジスタバックプレーン2次元ピクセルアレイを有することが好ましい。
【0048】
放射線検出器8の上述した実施形態はすべてが多層構造を有するとともに、高エネルギー放射線量子が後方シンチレータ層5により吸収されることに応じてシンチレーションフォトンのバーストを放出するように構成される後方シンチレータ層5を有する。更に、上述した実施形態は、後方シンチレータ層5の後側に取り付けられる後方フォトセンサ層6を有し、前記後方フォトセンサ層6は、後方シンチレータ層5において生成されるシンチレーションフォトンを検出するように構成される。前方シンチレータ層3は、後方フォトセンサ層6と反対側の、後方シンチレータ層5の前方に配置され、前記前方シンチレータ層3は、低エネルギー放射線量子が前方シンチレータ層3によって吸収されることに応じてシンチレーションフォトンのバーストを放出するように構成される。最後に、前方フォトセンサ層2は、後方シンチレータ層5と反対側の、前方シンチレータ層3の前側に取り付けられ、前記前方フォトセンサ層2は、前方シンチレータ層3において生成されるシンチレーションフォトンを検出するように構成される。
【0049】
本発明が図面及び上述の記述において詳しく図示され説明されているが、このような図示及び説明は、制限的ではなく、例示的又は例示的なものであると考えられることができる。本発明は、開示される実施形態に制限されない。例えば、イメージングシステムが、PET/CT、SPECT/PET/CTスキャナ、介入X線及びシンチグラフィイメージングシステム、SPECT/X線スキャナ、SPECT/CBCTスキャナ、スペクトルCTスキャナ又はスペクトルCBCTスキャナである一実施形態において、本発明を動作させることが可能である。開示される実施形態に対する他の変更例は、図面、開示及び添付の請求項の検討から、請求項に記載の本発明を実施する際に当業者によって理解され、実現されることができる。請求項において、「有する、含む(comprising)」という語は、他の構成要素又はステップを除外せず、不定冠詞「a」又は「an」は、複数性を除外しない。特定の手段が相互に異なる従属請求項に列挙されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用されることができないことを示さない。請求項における任意の参照符号、請求項の範囲を制限するものとして解釈されるべきでない。