【0062】
本発明の例示的な態様は、以下のサブパラグラフの1つまたは複数によって表され得る。
1. メタクリロイル置換ゼラチン(ゼラチンメタクリロイル)、可視光活性化光開始剤、および薬学的に許容される担体を含む、角膜再建用組成物。
2. メタクリロイル置換ゼラチンが、30%〜85%のメタクリロイル置換度を有する、パラグラフ1の組成物。
3. メタクリロイル置換ゼラチンが、60%〜85%のメタクリロイル置換度を有する、パラグラフ1または2の組成物。
4. メタクリロイル置換ゼラチンが、70%〜80%のメタクリロイル置換度を有する、パラグラフ1〜3のいずれか1つの組成物。
5. メタクリロイル置換ゼラチンがメタクリルアミド置換およびメタクリレート置換を含み、メタクリルアミド置換対メタクリレート置換の比が80:20〜99:1である、パラグラフ1〜4のいずれか1つの組成物。
6. メタクリルアミド置換対メタクリレート置換の比が90:10〜98:2である、パラグラフ5の組成物。
7. メタクリルアミド置換対メタクリレート置換の比が92:8〜97:3である、パラグラフ5または6の組成物。
8. ゼラチンメタクリロイルが、5%〜25%(w/v)の濃度で存在する、パラグラフ1〜7のいずれか1つの組成物。
9. ゼラチンメタクリロイルが、17%〜25%(w/v)の濃度で存在する、パラグラフ1〜8のいずれか1つの組成物。
10. ゼラチンメタクリロイルが、17%〜23%(w/v)の濃度で存在する、パラグラフ1〜9のいずれか1つの組成物。
11. ゼラチンメタクリロイルが、約20%の濃度で存在する、パラグラフ1〜10のいずれか1つ記載の組成物。
12. ゼラチンメタクリロイルが、8%〜12%(w/v)の濃度で存在する、パラグラフ1〜8のいずれか1つの組成物。
13. ゼラチンメタクリロイルが、約10%(w/v)の濃度で存在する、パラグラフ12の組成物。
14. 可視光活性化光開始剤が、エオシンY、トリエタノールアミン、ビニルカプロラクタム、dl-2,3-ジケト-1,7,7-トリメチルノルカンファン(CQ)、1-フェニル-1,2-プロパジオン(PPD)、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド(TPO)、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)-(4-プロピルフェニル)ホスフィンオキシド(Ir819)、4,4'-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4'-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2-クロロチオキサンテン-9-オン、4-(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、フェナントレンキノン、フェロセン、ジフェニル(2,4,6 トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド/2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(50/50ブレンド)、ジベンゾスベレノン、(ベンゼン)トリカルボニルクロム、レザズリン、レゾルフィン、ベンゾイルトリメチルゲルマン、それらの誘導体、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、パラグラフ1〜13のいずれか1つの組成物。
15. 可視光活性化光開始剤が、エオシンY、トリエタノールアミン、およびビニルカプロラクタムを含む混合物を含む、パラグラフ1〜14のいずれか1つの組成物。
16. エオシンYの濃度が0.0125〜0.5 mMであり、および/またはトリエタノールアミンの濃度が0.1〜2% (w/v)であり、および/またはビニルカプロラクタムの濃度が0.05〜1.5% (w/v)である、パラグラフ15の組成物。
17. エオシンYの濃度が0.025〜0.15 mMであり、および/またはトリエタノールアミンの濃度が0.2〜1.6% (w/v)であり、および/またはビニルカプロラクタムの濃度が0.09〜0.8% (w/v)である、パラグラフ15または16の組成物。
18. エオシンYの濃度が0.025〜0.15 mMであり、および/またはトリエタノールアミンの濃度が0.2〜1.6% (w/v)であり、および/またはビニルカプロラクタムの濃度が0.09〜0.8% (w/v)である、パラグラフ15〜17のいずれかの組成物。
19. エオシンYの濃度が0.05〜0.08 mMであり、および/またはトリエタノールアミンの濃度が0.4〜0.8% (w/v)であり、および/またはビニルカプロラクタムの濃度が0.18〜0.4% (w/v)である、パラグラフ15〜18のいずれかの組成物。
20. エオシンYの濃度が約0.05 mMであり、および/またはトリエタノールアミンの濃度が約0.4% (w/v)であり、および/またはビニルカプロラクタムの濃度が約0.4% (w/v)である、パラグラフ15〜19のいずれかの組成物。
21. エオシンYの濃度が0.5〜0.5 mMであり、および/またはトリエタノールアミンの濃度が0.5〜2% (w/v)であり、および/またはビニルカプロラクタムの濃度が0.5〜1.5% (w/v)である、パラグラフ15または16の組成物。
22. エオシンYの濃度が約0.1 mMであり、トリエタノールアミンの濃度が約0.5% (w/v)であり、およびビニルカプロラクタムの濃度が約0.5% (w/v)である、パラグラフ15、16または21のいずれかの組成物。
23. 角膜細胞をさらに含む、パラグラフ1〜12のいずれか1つの組成物。
24. 角膜細胞が、上皮細胞、内皮細胞、角膜実質細胞、またはそれらの組み合わせを含む、パラグラフ23の組成物。
25. 治療剤をさらに含む、パラグラフ1〜24のいずれか1つの組成物。
26. 治療剤が、抗菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗アカントアメーバ剤、抗炎症剤、免疫抑制剤、抗緑内障剤、抗VEGF、成長因子、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、パラグラフ25の組成物。
27. 架橋ゼラチンメタクリロイルヒドロゲルおよび薬学的に許容される担体を含む、角膜再建用組成物であって、架橋メタクリロイル置換ゼラチン(ゼラチンメタクリロイル)ヒドロゲルが、30%〜85%のメタクリロイル置換度および薬学的に許容される担体中5%〜25%(w/v)の濃度を有する、前記組成物。
28. 濃度が、5%〜15%(w/v)である、パラグラフ27の組成物。
29. 架橋ゼラチンメタクリロイルヒドロゲルが、60%〜85%のメタクリロイル置換度および8%〜12%(w/v)の濃度を有する、パラグラフ27または28の組成物。
30. 架橋ゼラチンメタクリロイルヒドロゲルが、70%〜8%のメタクリロイル置換度および約10%(w/v)の濃度を有する、パラグラフ27〜29のいずれかの組成物。
31. 濃度が、17%〜25%である、パラグラフ27の組成物。
32. 架橋ゼラチンメタクリロイルヒドロゲルが、60%〜85%のメタクリロイル置換度および/または17%〜23%(w/v)の濃度を有する、パラグラフ27または28の組成物。
33. 架橋ゼラチンメタクリロイルヒドロゲルが、70%〜80%のメタクリロイル置換度および/または約20%(w/v)の濃度を有する、パラグラフ27〜29のいずれかの組成物。
34. 190〜260 kPaまたは250〜350 kPaのヤング係数を有する、パラグラフ27〜33のいずれか1つの組成物。
35. 110〜140 kPaまたは100〜150 kPaのヤング係数を有する、パラグラフ27〜33のいずれか1つの組成物。
36. 5〜50 kPaの弾性係数を有する、パラグラフ27〜35のいずれか1つの組成物。
37. 5〜320 kPaまたは10〜250 kPaの圧縮係数を有する、パラグラフ27〜36のいずれか1つの組成物。
38. 5〜160 kPaまたは125〜175 kPaの圧縮係数を有する、パラグラフ27〜37のいずれか1つの組成物。
39. ≧40 kPaの創傷閉鎖強度を有する、パラグラフ27〜38のいずれか1つの組成物。
40. ≧45 kPaの創傷閉鎖強度を有する、パラグラフ27〜38のいずれか1つの組成物。
41. ≧10 kPaまたは≧15 kPaの破裂圧力を有する、パラグラフ27〜40のいずれか1つの組成物。
42. 治療剤をさらに含む、パラグラフ27〜41のいずれか1つの組成物。
43. 治療剤が、抗菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗アカントアメーバ剤、抗炎症剤、免疫抑制剤、抗緑内障剤、抗VEGF、成長因子、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、パラグラフ42の組成物。
44. 角膜細胞をさらに含む、パラグラフ27〜43のいずれか1つの組成物。
45. 角膜細胞が、上皮細胞、内皮細胞、角膜実質細胞、またはそれらの組み合わせを含む、パラグラフ44の組成物。
46. 実質的に透過性である、パラグラフ27〜45のいずれか1つの組成物。
47. 実質的な平滑な表面を有する、パラグラフ27〜46のいずれか1つの組成物。
48. (a) メタクリロイル置換ゼラチン、可視光活性化光開始剤、および薬学的に許容される担体を含む組成物を角膜欠損部に適用する工程、ならびに
(b) 該組成物を可視光に暴露する工程
を含む、角膜再建のための方法。
49. メタクリロイル置換ゼラチンが、30%〜85%のメタクリロイル置換度を有する、パラグラフ48の方法。
50. メタクリロイル置換ゼラチンが、60%〜85%のメタクリロイル置換度を有する、パラグラフ48または49の方法。
51. メタクリロイル置換ゼラチンが、70%〜80%のメタクリロイル置換度を有する、パラグラフ48〜50のいずれか1つの方法。
52. メタクリロイル置換ゼラチンがメタクリルアミド置換およびメタクリレート置換を含み、メタクリルアミド置換対メタクリレート置換の比が80:20〜99:1である、パラグラフ48〜51のいずれか1つの方法。
53. メタクリルアミド置換対メタクリレート置換の比が90:10〜98:2である、パラグラフ52の方法。
54. メタクリルアミド置換対メタクリレート置換の比が92:8〜97:3である、パラグラフ52または53の方法。
55. メタクリロイル置換ゼラチンが、5%〜25%(w/v)の濃度で存在する、パラグラフ48〜54のいずれか1つの方法。
56. メタクリロイル置換ゼラチンが、17%〜25%(w/v)の濃度で存在する、パラグラフ48〜55のいずれか1つの方法。
57. メタクリロイル置換ゼラチンが、17%〜23%(w/v)の濃度で存在する、パラグラフ48〜56のいずれか1つの方法。
58. メタクリロイル置換ゼラチンが、約20%の濃度で存在する、パラグラフ48〜57のいずれか1つ記載の方法。
59. メタクリロイル置換ゼラチンが、8%〜12%(w/v)の濃度で存在する、パラグラフ48〜55のいずれか1つの方法。
60. メタクリロイル置換ゼラチンが、約10%(w/v)の濃度で存在する、パラグラフ59の方法。
61. 可視光活性化光開始剤が、エオシンY、トリエタノールアミン、ビニルカプロラクタム、dl-2,3-ジケト-1,7,7-トリメチルノルカンファン(CQ)、1-フェニル-1,2-プロパジオン(PPD)、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド(TPO)、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)-(4-プロピルフェニル)ホスフィンオキシド(Ir819)、4,4'-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4'-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2-クロロチオキサンテン-9-オン、4-(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、フェナントレンキノン、フェロセン、ジフェニル(2,4,6 トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド/2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(50/50ブレンド)、ジベンゾスベレノン、(ベンゼン)トリカルボニルクロム、レザズリン、レゾルフィン、ベンゾイルトリメチルゲルマン、それらの誘導体、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、パラグラフ48〜60のいずれか1つの方法。
62. 可視光活性化光開始剤が、エオシンY、トリエタノールアミン、およびビニルカプロラクタムの混合物を含む、パラグラフ48〜61のいずれか1つの方法。
63. エオシンYの濃度が0.0125〜0.5 mMであり、および/またはトリエタノールアミンの濃度が0.1〜2% w/vであり、および/またはビニルカプロラクタムの濃度が0.05〜1.5% w/vである、パラグラフ62の方法。
64. エオシンYの濃度が0.025〜0.15 mMであり、および/またはトリエタノールアミンの濃度が0.2〜1.6% w/vであり、および/またはビニルカプロラクタムの濃度が0.09〜0.8% w/vである、パラグラフ62または63の方法。
65. エオシンYの濃度が0.025〜0.15 mMであり、および/またはトリエタノールアミンの濃度が0.2〜1.6% w/vであり、および/またはビニルカプロラクタムの濃度が0.09〜0.8% w/vである、パラグラフ62〜64のいずれかの方法。
66. エオシンYの濃度が0.05〜0.08 mMであり、および/またはトリエタノールアミンの濃度が0.4〜0.8% w/vであり、および/またはビニルカプロラクタムの濃度が0.18〜0.4% w/vである、パラグラフ62〜65のいずれかの方法。
67. エオシンYの濃度が約0.05 mMであり、および/またはトリエタノールアミンの濃度が約0.4% w/vであり、および/またはビニルカプロラクタムの濃度が約0.4% w/vである、パラグラフ62〜66のいずれかの組成物。
68. エオシンYの濃度が0.5〜0.5 mMであり、および/またはトリエタノールアミンの濃度が0.5〜2% w/vであり、および/またはビニルカプロラクタムの濃度が0.5〜1.5% w/vである、パラグラフ62または63の方法。
69. エオシンYの濃度が約0.1 mMであり、および/またはトリエタノールアミンの濃度が約0.5% w/vであり、および/またはビニルカプロラクタムの濃度が約0.5% w/vである、パラグラフ62、63または68のいずれかの方法。
70. 組成物が、450〜550 nmの範囲の波長を有する可視光に暴露される、パラグラフ48〜69のいずれか1つの方法。
71. 組成物が、20〜120秒間の期間、可視光に暴露される、パラグラフ48〜70のいずれか1つの方法。
72. 組成物が、30〜60秒間の期間、可視光に暴露される、パラグラフ48〜71のいずれか1つの方法。
73. 組成物が治療剤をさらに含む、パラグラフ48〜72のいずれか1つの方法。
74. 治療剤が、抗菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗アカントアメーバ剤、抗炎症剤、免疫抑制剤、抗緑内障剤、抗VEGF、成長因子、またはそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、パラグラフ73の方法。
75. 組成物が角膜細胞をさらに含む、パラグラフ48〜74のいずれか1つの方法。
76. 角膜細胞が、上皮細胞、内皮細胞、角膜実質細胞、またはそれらの組み合わせを含む、パラグラフ75の方法。
77. 組成物が実質的に透過性である、パラグラフ48〜76のいずれか1つの方法。
78. 角膜を縫合する工程を含まない、パラグラフ48〜77のいずれか1つの方法。
【実施例】
【0066】
本開示は、以下の実施例によってさらに例証されるが、これらは限定であるとみなされるべきでない。実施例は、例示を目的としたものにすぎず、いかなる様式においても、本明細書に記載される任意の局面を限定することは意図されていない。以下の実施例は、いかなる様式においても、本発明を限定するものではない。
【0067】
実施例1:Gel-COREの利点および用途
Gel-CORE生体接着剤は、以下の用途で使用され得る点で有利である。
【0068】
角膜欠損の充填:Gel-COREは、物理的損傷によってのみならず、様々な角膜炎症障害、例えば細菌性角膜炎および免疫介在性角膜融解の後にも起こる、角膜欠損および角膜菲薄化障害を埋め合わせすることができる。そのような例において、この生体接着剤は、危機的状況下で構造的サポートを提供するために使用される。加えて、長期的に見て、これは、生体接着剤内での角膜細胞の再生を可能にし、伝統的な処置様式、例えば角膜移植および組織パッチ移植の使用を必要としない間質置換技術として機能する。
【0069】
角膜の間質欠損および菲薄化の修復のための現在の標準治療は、組織/パッチ移植またはのりの適用を含む。角膜移植およびパッチ移植は、ドナー組織を必要とし、これらは入手可能でない場合がある。加えて、同種組織を移植に使用することは、免疫反応の危険を伴う。
【0070】
現時点で、角膜欠損を充填するための承認された接着剤はない。シアノアクリレートのりが、現時点で、多くの切迫した眼科的状況、例えば角膜穿孔、近い将来の穿孔および進行性角膜菲薄化障害を処置するために「認可外品」として使用されているが、それは、以下を含む、様々な大きな欠点を有している。
【0071】
i. 角膜および他の眼球組織に対する細胞傷害性を伴う、低い生体適合性(眼に侵入した場合、白内障形成および網膜症の危険がある)、
ii. 透過性の欠如、良好な視力の妨害および角膜後面構造の視界の悪化、
iii. 高い空隙率に起因する二次感染の危険、
iv. その適用の制御の困難さ、のりの予期せぬ剥離の可能性、
v. さらなる感染の危険を付加するコンタクトレンズ装着を必要とする粗い表面、ならびに
vi. 角膜組織と融合しないこと。
【0072】
これに対して、Gel-COREは、角膜修復および封鎖のために現在利用可能な接着剤と比較して様々な利点を有する。
【0073】
1. バイオセーフティー:Gel-COREは、その原材料が様々な医学的用途で使用されているコラーゲン由来の天然由来バイオポリマーであるゼラチンであるため、優れた生体適合性を有し、他の材料(例えば、シアノアクリレート製品)と比べて安全性の懸念をほとんど生じない。加えて、可視光活性化光開始剤を選択することによって、以前の配合におけるUV暴露に付随する潜在的ダメージが回避されるであろう。
【0074】
2. 調整可能な特性:Gel-COREの物理的特性(分解および機械的特性等)は、異なる目的に対して異なる生体接着剤組成物 - 異なる臨床状況に適した短いまたは長い保持時間を有する生体接着剤が製造され得るよう調整され得る。例えば、眼内物質、例えば虹彩が押し出された角膜外傷の場合、損傷した眼の一時的な封鎖のためにGel-COREを適用することが望まれ得る。これに対して、構造的欠損または重度の菲薄化を示す角膜の場合、Gel-COREは、長期間保持されるように配合され得る。現在利用可能なシーラント技術(例えば、シアノアクリレート)は、最終製品の特徴に関してそのような制御を提供しない。
【0075】
3. 透過性:ウサギ角膜を用いたエクスビボ実験において、Gel-COREは、50%深度の角膜損傷に対する投与および光重合の後に透過性であり、正常な角膜の輪郭を保持することができる平滑かつ凸状の表面を有することが示された(
図1A〜1E)。
【0076】
4. 可逆性:適用すると直ちに硬化するシアノアクリレートと異なり、Gel-COREは、硬化のために光の適用を必要とし、したがって必要な場合、誤った適用をやり直すことができる。
【0077】
5. 高い接着性および保持性:Gel-COREは、創傷閉鎖、重ねせん断、破裂圧力よびエクスビボ接着試験に基づき、組織に対して高い接着性を有する。加えて、エクスビボデータは、一貫して、Gel-COREが数日間保持され、本来の状態でかつ角膜に完全に付着した状態で維持されることを示している。
【0078】
6. 角膜組織の再生:角膜の封鎖に使用される他の接着剤(例えば、シアノアクリレート)と異なり、Gel-COREは、組織の封鎖および再生の両方を実現する。ヒト角膜実質細胞は、Gel-CORE内で成長することができる。Gel-COREは、角膜に強く付着し、組織が生理学的修復/再生を行っている間保持されるであろう。
【0079】
角膜、角膜縁または強膜の創傷の封鎖:そのような創傷に対する伝統的な処置は、縫合を含む。しかし、縫合は、以下を含む大きな欠点を伴うものである:1. 縫合糸は、微生物の侵入および感染、炎症ならびに新血管形成の危険因子となり得る外来物質であること、2. 角膜縫合糸は、多くの場合、規則的または不規則な乱視を誘導し、それにより視力が損なわれること。これらの欠点を回避するため、シーラントが創傷の封鎖に使用されている。唯一の承認されているシーラントであるReSure(登録商標)(米国)およびOcuSeal(登録商標)(欧州)は、白内障手術の角膜切開部を封鎖するためのものである。しかし、それらはすぐに剥がれ落ちてしまう。これに対して、角膜、角膜縁または強膜の創傷を強固に封鎖するGel-COREは、望まれるより長い期間の封鎖を提供するよう調整することができる。Gel-COREは、角膜創傷の封鎖のための接着性を提供し得る。そのような条件下で、それは、縫合を必要とせずに創傷を封鎖することができる。Gel-COREは、角膜縁または強膜創傷の閉鎖のための接着性を提供し得る。そのような条件下で、それは、縫合を必要とせずに創傷を封鎖することができる。
【0080】
角膜上皮欠損の被覆:角膜上皮欠損を有する患者に対する伝統的な処置は、眼帯、包帯コンタクトレンズおよびときに侵襲的手法を含む。しかし、これらの選択肢は、それらが患者にとって邪魔者となり得、かつ角膜感染の危険を高め得るという事実によって制限される。これらの例に対しては、対照的に、我々は、角膜上皮自体を再生しつつ角膜を保護する高速分解性のGel-CORE配合物を使用することができる。
【0081】
角膜または強膜の裂傷および眼内構造物の逸脱の例における眼内構造物の一時的保護:そのような例に対する唯一の利用可能な処置上の選択肢は、創傷を縫合すると同時に眼内構造物を外科的に位置直しすることであるが、これは設備を有する施設において熟練の外科医によって行われるべきものである。しかし、これは、外科的手順を遅らせることになり、それは患者を眼内感染にかかりやすくするであろう。これに対して、Gel-COREの使用は、感染を防ぎつつ角膜/強膜および眼内構造物のための一時的サポートを提供する。恒久的な修復は、その後、眼内感染の高い危険にさらすことなく行うことができる。Gel-COREは、治療剤(例えば、抗生物質等)を含有する生物製剤パッチが眼内構造物を被覆するため、虹彩/脈絡膜-網膜逸脱を伴う大規模な角膜/強膜損傷の例で使用することができる。そのような例において、それは、恒久的外科的手順が行われる前に眼内構造物を保護し、感染を防ぐ。
【0082】
深刻な菲薄化を伴うまたは伴わない角膜感染:角膜感染に対する現在の標準治療は、目薬の高頻度の点眼を含み、これは患者にとって面倒なことである。この欠点を回避するために、現在、徐放性の抗生物質を含むコンタクトレンズを用いたいくつかの研究が行われている。しかし、そのような技術は、角膜に対して構造的なサポートを提供しない。これに対して、Gel-COREは、抗生物質の長期的放出を提供するだけでなく、感染性角膜炎を伴う角膜に対する構造的サポートも提供することができる。Gel-COREは、角膜に対する構造的サポートに加えて抗生物質の長期的放出を提供する抗生物質含有パッチとして、深刻な菲薄化を伴うまたは伴わない角膜感染の例において使用することができる。
【0083】
炎症性角膜菲薄化:炎症性角膜菲薄化に対する現在の標準治療は、局所的または全身的抗炎症薬の使用を含む。深刻な菲薄化の場合、角膜間質欠損に関して上記されたような外科的手順が行われる。これに対して、Gel-COREは、角膜欠損に関して上記されたような構造的サポートを提供するだけでなく、抗炎症薬を徐々に放出する薬物リザーバとして機能し得、それによって追加の局所的または全身的治療薬の必要性を取り除くまたは減らす。したがって、Gel-COREは、この生体接着剤が透明であり、治療利用により数週間の間保持され得ることから、薬物送達のためのプラットフォームとして使用することができる。Gel-COREは、角膜に対する構造的サポートの提供に加えて、抗炎症薬の長期的放出を提供する抗炎症薬含有パッチとして、炎症性角膜菲薄化の例において使用することができる。
【0084】
屈折性角膜モデリング:角膜の屈折性モデリングのために、PermaVision(ReVision Optics)、Kamra(AcoFocus)、Flexivue Microlens(Presbia)およびRaindropインレー(Revision Optics)を含む様々な角膜内インプラントがこれまでに使用されてきたが、それらはすべて、角膜組織に対する完全な生体適合性の欠如に起因する沈着物形成またはかすみ発生を伴う。これに対して、Gel-COREは、これらの合併症を防ぐ高度の生体適合性を有する。加えて、Gel-COREでは、角膜細胞とこの生体材料の融合が起こり、これは他のインレーでは見られないことである。Gel-COREは、屈折異常(近視、遠視、乱視および老眼)を有する患者において角膜の屈折力を変化させる角膜モデリングのための角膜内インプラントとして使用することができる。
【0085】
移植における角膜組織の置換物:移植により角膜組織を交換するために、Boston Keratoprosthesis、オステオオデントケラトプロテーゼ(osteoodentokeratoprosthesis)、AlphaCorを含む様々な人工角膜が以前から使用されているが、それらは、これらの人工角膜に角膜細胞が融合されないという事実に悩まされている。これに対して、Gel-COREは、この生体材料へのネイティブ角膜細胞の高度の遊走および融合を示す。Gel-COREは、ドナー角膜組織の使用に代わる、表層角膜移植における角膜移植の置換物として使用することができる。Gel-COREはまた、(人工角膜と同様に)全層角膜移植における角膜組織の置換物として使用することもできる。
【0086】
実施例2:ゼラチンメタクリロイル(GelMA)プレポリマーの合成
GelMAは、以前に記載されたようにして合成した
14。ゼラチンおよびメタクリル酸無水物の濃度は、本明細書に開示される範囲のメタクリロイル置換を有するGelMAを製造するよう変更され得る。例えば、10%(w/v)ブタゼラチン(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO, USA)を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に溶解させ、60℃で20分間加熱した。50℃で3時間、継続的攪拌下で8%(v/v)メタクリル酸無水物(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO, USA)を滴下し、その後にPBSで希釈し、40〜50℃で7日間、脱イオン水に対して透析した。滅菌ろ過および4日間の凍結乾燥の後、実験に使用するまでGelMAを-80℃で保管した。
【0087】
メタクリルアミド基の定量。生体材料、例えばGelMA中でのアミン基の変換は、従来通りプロトン核磁気共鳴(
1H NMR)スペクトルを用いて決定した
13〜14。しかし、ゼラチンは複雑な組成を有するポリペプチドの混合物なので、
1H NMRスペクトルからメタクリルアミドおよびメタクリレート基の共鳴ピークを検出し区別することは実行可能でない場合がある。代替法として、フルオロアルデヒドアッセイ
43は、アミン基の変換のより容易かつより正確な決定を可能にする。修飾タンパク質/ペプチド試料が、o-フタルアルデヒドおよび2-メルカプトエタノールを含むアッセイ溶液と混合されると、その材料内のすべての残存する一級アミン基が、青色に発光する蛍光種に変換される(
図2A)。反応物に異なる量のMAを添加することによってそれらのメタクリロイル置換度が変化した4つの異なるGelMA配合物を調製した(表1)
14。修飾度に依存して、得られたGelMA配合物を、それぞれ、超GelMA、高GelMA、中GelMAおよび低GelMAと称する。標準としてゼラチンを使用して、残存する一級アミン基の量を容易に取得することができる。得られたGelMA試料のアミン基の変換は、フルオロアルデヒドアッセイを用いて、それぞれ、超GelMAについては約93%、高GelMAについては約84%、中GelMAについては約65%、および低GelMAについては約24%と決定された(
図2B)。アミン基の変換は、一定の反応温度および反応時間の下で添加されたMA量と正の相関関係にあることが明らかである。
【0088】
(表1)異なるGelMA試料の分子パラメータの概要
【0089】
メタクリレート基の定量。GelMAの調製に関する我々の以前の発表
14において、アミン基由来の共鳴ピークの積分面積に基づく計算により、
1H NMRスペクトルを使用してアミン基の変換を決定した。メタクリレート基の定量は、修飾ペプチドまたはタンパク質試料の
1H NMRスペクトル中に識別可能なヒドロキシル基の共鳴ピークが存在しなかったために実施することができなかった。
【0090】
ここでは、Fe(III)-ヒドロキサム酸ベースのアッセイを用いて、異なるGelMA試料中のメタクリレート基の量を決定した(
図3A〜3E)。ヒドロキサム酸は、Fe(III)イオンと赤茶色の錯体を形成し、これがヒドロキサム酸種の定量試験として機能し得る(
図3A)。このクラスの錯体は、約500 nmを中心とする吸収ピークを有する(
図3Bおよび3C)。Fe(III)-ヒドロキサム酸錯体の形成は、ポリ(ビニルアルコール)中のエステル基残基の定量のような他の分析用途
45と共に、リゾチームのアミン基およびヒドロキシル基と様々な異なるカルボン酸無水物の反応を定量するために使用されてきた
44。アセトヒドロキサム酸(AHA)を、標準曲線を作成するための標準として使用し、アセトヒドロキサム酸とFe(III)イオンの錯体(FeAHA)が、N-ヒドロキシメタクリルアミドとFe(III)イオンのそれ(FeHMA)と類似の分光特性を有すると推定される
44。過塩素酸鉄(III)を、希塩酸に溶解させてFe(III)イオン溶液を調製し、これを過剰量でアセトヒドロキサム酸溶液に添加し、1:1錯体を形成させた。Fe(III)およびヒドロキサム酸のモル比が20を超える場合に見かけの吸光係数がその最大に達することが報告されており、これはその比率に非依存的に維持されるであろう
46。1.3 x 10
-4〜2.5 x 10
-3 mol/Lの濃度を網羅する標準FeAHA溶液系列のUV-Vis吸収スペクトルをUV透過性マイクロプレート上で記録した。実際、AHA濃度の関数として吸光度をプロットし、線形最小二乗フィットを用いて分析すると、すばらしい直線性が達成された(
図3D)。
【0091】
GelMA試料中のメタクリレート基の量を決定するため、メタクリレート基を検出可能なN-ヒドロキシメタクリルアミド化合物に変換するアミノ分解反応を用いた。詳細に、50 mg/mLのGelMA試料を、室温で10分間、ヒドロキシルアミン溶液で処理して、N-ヒドロキシメタクリルアミドを生成した。得られた溶液を塩酸で酸性化した後、過剰なFe(III)イオンを添加した。Fe(III)イオンの添加による色変化は、FeHMA錯体の形成を示し、これによりメタクリレート基の存在を確認した。インサイチューで形成されたFeHMA錯体の濃度を、UV-Vis吸収スペクトルから決定し、これを用いてGelMA試料中のメタクリレート基の量を計算することができた(
図3E)。すべての試験されたGelMA試料において、メタクリレート基は、全メタクリロイル置換の10%以下であることが見出された。これらの結果は、アミン基がヒドロキシル基よりもずっと高い反応性を有し、GelMA中でメタクリルアミド基が優勢形態であることを示唆した(
図3E)。
【0092】
実施例3:Gel-COREヒドロゲルの調製および材料特性
可視光活性化開始剤としてエオシンY(Sigma-Aldrich)を、共開始剤としてトリエタノールアミン(TEOA)(Sigma-Aldrich)を、触媒としてビニルカプロラクタム(VC)(Sigma-Aldrich)を用いることによって、可視光架橋性Gel-COREを作製した
15、16。この架橋システムを用いて、GelMAにおけるメタクリロイル基の重合を、100 mW/cm
2の青色光(450〜550 nm、キセノン源)への暴露を通じて開始した(
図4A〜4C)。エオシンYは、水溶性キサンテン色素であり、角膜および強膜の主成分であるコラーゲンに対する一般的な染料である。この可視光システムは、幅広い用途において十分に確立された生体適合性の実績を有しており
15〜19、ポリエチレングリコール(PEG)ベースのシーラントであるFocalSeal(登録商標)(Genzyme Biosurgical, Cambridge, MA)において、ヒト身体での使用に関してFDAの承認が得られている。可視光架橋性Gel-COREヒドロゲルは、調整可能な物理的特性を示し(
図5A〜5B)、可視光架橋を用いてGel-COREヒドロゲルの弾性係数を5〜28 kPaで調整することができた(
図5A〜5B)。加えて、その膨潤比を、7%〜13%(w/w)で変更することができた(
図6B)。
【0093】
ヒドロゲルを形成するために、異なるメタクリロイル修飾度(30%〜85%)を有するGelMAを使用することができる
14。次に、異なる濃度のGelMAプレポリマー溶液(5〜15% w/v)を、エオシンY(0.1〜0.5 mM)、TEOA(0.5〜2% w/v)およびVC(0.5〜1.5% w/v)を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で調製することができる。配合されたGelMAプレポリマー溶液は、エオシンYの吸収スペクトルと一致する青色光に20〜120秒間暴露することによって光架橋することができる(
図4B)。GelMA濃度を変更することによって、エオシンY/TEOA/VC濃度および光暴露時間が、得られるヒドロゲルの物理的特性を変化させる。
【0094】
この配合物は、角膜の修復に使用されるものなので、Gel-COREヒドロゲルは、ネイティブの角膜と類似の弾性および剛性(ヤング係数:250〜350 kPa)を有するべきである。ヒドロゲルの膨潤比は、この接着剤が角膜欠損部に適用された後もその形状を維持することを確実にするため、<20%の膨潤比を有するよう最適化されるべきである。特に、膨潤比は、封鎖される欠損部の形状、湾曲および平滑性に影響し得る。
【0095】
例えば、実施例2にしたがい製造された凍結乾燥GelMAを、10%(w/v)の濃度でPBSに溶解させた。0.1%(w/v)エオシンY、0.5%(w/v)トリエタノールアミンおよび0.5%(w/v)ビニルカプロラクタムの光開始剤混合物の添加および80℃での溶解の後、プレポリマー溶液を、可視光照射(450〜550 nm、キセノン源、100 mW/cm
2)によって光架橋しヒドロゲル(Gel-CORE)にした。
【0096】
別の例において、異なる濃度のGelMA(5、10、15、20%(w/v))を、材料特性について試験した。(実施例2で製造された)凍結乾燥GelMAを、1.875%(w/v)トリエタノールアミン(TEA)および1.25%(w/v)N-ビニルカプロラクタム(VC)を含むPBSに5、10、15、20%(w/v)の濃度となるよう溶解させた。エオシンYは、それとは別に、0.5 mMの濃度となるよう新しいDPBSに溶解させた。ヒドロゲルを調製するため、8μLのGelMA溶液を2μLのエオシンY溶液と混合し、次いでこの混合物を150μmスペーサーによって隔てられた2つのガラスカバースリップ間に置き、その後に450〜550 nmの範囲の青色光(100 mW/cm
2、Genzyme Biosurgery製キセノン源)に20秒間暴露した。
【0097】
Gel-CORE試料の機械的試験は、以前に公開されたようにして行った
14。簡単に説明すると、プレポリマー溶液を、以下の形状を生じるよう光架橋した:圧縮試験用のディスク形(n=3〜5;直径6 mmおよび高さ1.5 mm)ならびに引張試験用の立方形(n=7〜10;幅3 mm、長さ14 mmおよび厚み1.5 mm)。このヒドロゲルを直接分析するか、または機械的試験システム5542(Instron, Norwood, MA, USA)で試験する前に4℃で24時間PBS中に保存した。圧縮試験および引張試験における歪み速度は、1 mm/分に設定した。試料の圧縮強度および極限引張強度は、ヒドロゲルの破裂または引き裂きの時点で決定した。圧縮係数および弾性係数は、0〜0.5%の歪み速度で応力歪み曲線の勾配を測定することによって得た。
【0098】
膨潤特性を分析するため、Gel-COREヒドロゲル試料(n=5)を、1、2または3日間、PBS中で膨潤させた。実験の最後に、過剰な液体をティッシュペーパーで慎重に取り除き、湿重量を測定した。凍結乾燥後、試料の乾燥重量を測定し、その膨潤比を(湿重量 - 乾燥重量)/乾燥重量として計算した(
図6Aおよび6B)。
【0099】
Gel-COREヒドロゲルのエクスビボ試験では、外植したウサギ角膜組織を使用した。最初に、GelMAプレポリマーを、外植した角膜上に作製した切開部に適用し、その後に、最適化された光暴露時間を用いて可視光に暴露することによって光架橋させた。次いで、破裂圧力を、角膜への空気膨張後に圧力センサを用いて測定した。例えば、ウサギ角膜を、Gel-CORE(10%(w/v)、プレポリマー濃度、5 mMエオシンY、および120秒間の暴露時間を用いて封鎖した。ウサギ角膜上に作製した切開部をGel-COREで隙間なく完全に封鎖し、この組織は、健常な眼の圧力の2倍にあたる、約3.5 kPa(26 mmHg)まで加圧することができた。好ましくは、Gel-CORE試料は、15 kPa(>110 mmHg)より高い破裂圧力
20〜21、>100 kPaの重ねせん断強度、>40 kPaの接着強度および光暴露時間<60秒間以内の光重合を有する。
【0100】
実施例4:Gel-COREの機械的特性のASTM標準インビトロ試験
破裂圧力
シーラントの破裂圧力試験は、ASTM標準F2392-04(外科用シーラントの破裂強度の標準試験法)から適合させた。試料調製前に、ブタ皮膚シート(40 mm
* 40 mm)をPBSに浸した。2枚のTeflonシート(35 mm
* 35 mm)の間に設置したブタ皮膚シートの中心に円形の欠損部(直径3 mm)を作製した。上側のTeflonシートには、ブタ皮膚シートの円形欠損部上に所望の接着剤を適用できるよう穴(直径10 mm)が設けられた(
図7A)。GelMAの場合、プレポリマーを、可視光に照射した。その後、コラーゲンシートを取り出し、圧力検出・記録ユニットおよび試料に対する圧力が徐々に上昇するよう空気を適用するシリンジポンプからなる破裂圧力試験システムに設置した(
図7B)。各々の試験された接着剤グループは、5つの試料を含んでいた。
【0101】
ブタ皮膚上の標準化された欠損部を被覆するシーラントに漸増する空気圧を適用し、その破裂圧力抵抗を試験した。各々のGelMA濃度は、Coseal(商標)よりも高い破裂圧力値を示した(
図7C)。
【0102】
創傷閉鎖
GelMAならびに臨床的に確立されている外科用シーラントであるEvicel(登録商標)(Ethicon, Somerville, NJ, USA)、Coseal(商標)(Baxter, Deerfield, IL, USA)およびProgel(商標)の創傷閉鎖強度を、ASTM標準試験F2458-05(組織接着剤およびシーラントの創傷閉鎖強度の標準試験法)を参考にし、この標準法をより小さな試料サイズに適合するよう若干改変して試験した。簡単に説明すると、地元の食肉処理場から得た新しいブタ皮膚を、脂肪組織層を除去し、試料を5 mm
* 15 mmの長方形の切片に切断することによって調製した。使用しない間、PBSに浸したガーゼによりブタ皮膚を湿った状態で維持した。使用前に、ブタ皮膚を、余分な液体を除去するようふき取りにより乾かし、皮膚片の各端部を、Krazyのり(Westerville, OH, USA)を用いて2枚のポリ(メチルメタクリレート)スライド(30 mm
* 60 mm)で固定し、スライド間に6 mmの皮膚切片が入るようにした。次いでこのブタ皮膚片を、かみそり刃を用いて切断し(
図8A)、シリンジを用いてワセリンを所望の接着剤適用領域の端部に適用した。その後、6 mm
* 5 mm皮膚切片全体に40μlの接着剤を適用し、GelMAの場合は、可視光を照射した(
図8A)。PBS中での1時間のインキュベート後、2枚のプラスチックスライドを、引張試験のために、Instronシステムのグリップに固定した(
図8A)。シーラント試料の接着強度は、引き裂き時に決定した。各々の試験された接着剤グループは、4〜7つの試料を含み、その結果が
図8Bにまとめられている。引張試験により、弾性係数(5〜50 kPaの範囲)および極限引張強度(試料を引き伸ばした後の破れた時点の応力)を測定した。
【0103】
実施例5:Gel-COREの分解性および保持性
Gel-COREを、3 mm >50%深度の角膜欠損部に適用した(0.01%(w/v)エオシンY、0.5%(w/v)TEAおよび0.5%(w/v)VCを含む10%(w/v)Gel-CORE溶液を使用した)。この溶液を青色光に120秒間暴露して、損傷した角膜上にヒドロゲル層を形成させた。この手順の後、眼を、4℃のPBS中で維持した。Gel-COREの経時的変化を、細隙灯生体顕微鏡検査およびOCTによる連続評価を用いて評価した。少なくとも11日間、この生体接着剤は、本来の状態を維持し(完全な厚みおよび拡散が保持され)、すべての試験した眼において角膜に完全に付着した状態で留まったことが見出された。細隙灯生体顕微鏡検査は、この期間、この生体接着剤が平滑な表面を有する透明な状態を維持し、形状または輪郭にいかなる生体顕微鏡的変化も見られないことを示した(
図9Aおよび9C)。加えて、OCTは、Gel-COREの厚みまたは形状に変化がないことを確認した(
図9Bおよび9D)。11日後、PBS中の角膜組織は、(PBS下での長期間の保管に起因する壊死から予想されたように)分解し始め、この時点で、角膜へのGel-COREの付着は、失われ始めた。
【0104】
ニュージーランド白ウサギにおける角膜損傷モデルを、50%深度の角膜欠損を作製することによって使用した。ケタミンおよびキシラジンの筋内注射を用いてウサギの全身麻酔を行った後、3 mm生検用パンチにより右眼に円形の50%深度の角膜欠損を作製した。次に、外科用クレセントナイフを使用して、表層角膜切除を行った。表層を取り除いた後、外科手術用マイクロスポンジを用いて欠損部表面を乾かした。次いで、10μlの生体接着剤溶液を染み込ませて、角膜欠損部を満たした。次いで、マイクロスポンジを用いて、余分な溶液を取り除いた。この直後に、(FocalSeal Xenon Light Source, Genzyme, 100 w/cm
2を用いて)120秒間の青色光の適用を行い、生体接着剤を架橋した。Gel-COREの分解性および保持性を、以下に記載されるようにして、1、2および4週目に、細隙灯生体顕微鏡検査およびOCTを用いて評価した。
【0105】
2つの評価項目を、4週間の追跡期間中に評価した:(i)(虹彩細部の視認性に基づく、Fantes格付け尺度
22を用いた細隙灯生体顕微鏡検査により評価される)光学的分解の尺度となる生体接着剤の透過性;および(ii)(以下に記載されるように、OCTによって測定される)生体接着剤の厚み。
【0106】
保持性は、分解性および接着性という2つのパラメータの関数である。分解および/または準最適な接着のいずれも、ゲルの保持性を喪失させ得る。保持性を測定するために、以下に記載されるように、OCT技術を使用して、4週間の追跡期間の間、(i)角膜欠損部を被覆する生体接着剤の存在、および(ii)生体接着剤と角膜上皮または間質の間の任意の隙間の間隔を評価した。
【0107】
細隙灯生体顕微鏡検査およびOCT画像化は、1週間の追跡期間の間はウサギの両眼について、その後は手術した眼のみについて、全身麻酔下で行った。細隙灯試験では、Topcon Slit Lampシステムを使用した。25xの倍率でならびにスリットおよびブロードビームを用いて、生体接着剤の透過性を(Fantes格付け尺度を用いて)評価した。試験の際に、細隙灯写真も撮影した。光干渉断層撮影(OCT)も用いた:これは、インビボで角膜の高解像度断面画像を提供する非接触型の画像化法である。この実験では、3.9〜7μmの軸分解能のスペクトラルドメインOCT(Spectralis, Heidelberg Engineering, GmbH, Germany)を使用した。ライン走査(8 mm長)を、0、45、90および135度で、中心角膜において行った(
図10A)。独自のOCTソフトウェアを用いて、(手術した眼における)生体接着剤のおよび(手術していない他眼における)角膜の厚み(ミクロン)を、角膜の中心および中心から両方向に1 mm離れた位置で測定した(
図10B)。加えて、生体接着剤と角膜組織の間の任意の隙間の間隔を、ミクロン単位で測定した。細隙灯およびOCTの結果を、2つの眼の間および異なる時点で比較し、角膜欠損部におけるGel-COREの経時的な分解性およびその保持性を決定した。予備データに基づくと、Gel-COREは、インビトロで少なくとも30日間インタクトな状態で維持することができる。
【0108】
実施例6:Gel-COREの生体適合性および融合性
角膜修復に最適な生体接着剤は、角膜細胞に非毒性であるだけでなく、細胞がこの生体材料に長期的に融合でき、かつ押し出しを防げるようにすることである。Gel-COREのインビトロ細胞適合性および融合能を、角膜実質細胞および角膜上皮細胞を含む、角膜における2つの最も豊富に存在する細胞型を用いることによって決定した。角膜実質細胞および角膜上皮細胞を、2Dおよび3D培養システムを用いて培養した。Gel-COREの生体適合性および融合能を、角膜細胞に対する生体接着剤の影響および生体接着剤への角膜細胞の遊走を経時的に調査することによってインビボで評価した。
【0109】
予備的実験において、角膜細胞に対するGel-COREの適合性が実証された(
図11A〜11G)。角膜実質細胞は、代表的なGel-CORE組成物中に取り込まれ、2D培養システムを用いた場合、≧95%細胞生存率が、ならびにGel-COREコンストラクト上またはGel-COREコンストラクト内のいずれかで成長させた場合、角膜実質細胞の増殖および遊走が、示された(
図11G)。
【0110】
Gel-COREの細胞適合性および細胞融合のインビトロ評価。角膜に対するGel-COREのインビトロ細胞適合性を評価するため、以下の実験を行った。角膜細胞を、37℃の5%CO
2加湿インキュベーターにおいて、培養培地(10%ウシ胎仔血清、1%ペニシリン・ストレプトマイシンおよび1%グルタミン酸を含むDulbecco's Modified Eagle's Medium(DMEM))中で培養した。上皮細胞をGel-CORE上に播種し上皮単層を形成させる2D培養システムを使用した。さらに、3D培養システムを使用して、Gel-CORE内に角膜実質細胞を被包し、角膜組織を形成させた。
【0111】
2D培養においては、Gel-COREを、本明細書で詳述されているように可視光への暴露により構築した。次いで、このゲルに1 x 10
6〜1 x 10
8細胞/mLの範囲の細胞密度の上皮細胞を播種し、14日間インキュベートした。培地を一日おきに交換した。細胞生存率を、カルセイン-AM/エチジウムホモダイマー生/死アッセイを使用することによって、第1、4、7および14日に評価した
23。以前に説明されたように、アクチン/DAPI染色を用いて、細胞接着および拡散を評価した
13,24-26。加えて、細胞の代謝活性を、第1、4、7および14日に、PrestoBlueアッセイを使用しその後にマイクロプレート分光光度計で吸光度を読み取ることによって評価した。加えて、第14日に、ヒドロゲル内への細胞の浸潤およびヒドロゲル内での成長を、組織学的分析によって調査した
27〜29。さらに、角膜上皮機能を維持する上でのその確認されている役割から、角膜上皮細胞におけるK12発現を分析した。上皮細胞は、ヒドロゲルの表面上で(ゲル内に浸透せずに)成長して、眼の保護に必要とされる高密度の細胞層を形成することが重要である。これらのインビトロ実験に基づき、Gel-COREは、非細胞傷害性であり(細胞生存率>90%)、細胞の代謝活性および接着を促進し、ゲル内への浸透が限定的であることが示された。
【0112】
3D培養においては、角膜実質細胞を、1 x 10
6〜1 x 10
8細胞/mLの範囲の濃度でGelMAプレポリマー溶液と混合した。次いでこの混合物を光に暴露して細胞含有Gel-CORE接着剤を形成させた。次いでこのゲルをPBSで3回洗浄し、37℃の培養インキュベーターにおいて、培地中で14日間インキュベートした。細胞生存率(生/死アッセイ)、細胞接着および拡散(アクチン/DAPI)、増殖(Picogreenアッセイ)、コラーゲン沈着(Picrosirius Red)、ならびに角膜組織形成(ヘマトキシリンおよびエオシン染色)を、第1、4、7および14日に評価した。これらの3D研究に基づき、Gel-COREは、細胞適合性であり、角膜組織形成を促進するであろうことが示された。
【0113】
角膜におけるGel-COREのインビボ生体適合性および融合能。ニュージーランド白ウサギにおける角膜損傷モデルを、本明細書に記載されるように、50%深度角膜欠損を形成することによって使用した。ウサギを3グループに分けた:(i)Gel-COREグループ、このグループでは本明細書に記載されるように生体接着剤を使用して角膜欠損を充填した;(ii)シアノアクリレートグループ、このグループでは、穿孔を防ぐための角膜欠損の充填における標準治療(未承認ではあるが)であるシアノアクリレートのりを使用した。このために、10μlのシアノアクリレートのり(MSI-EpiDermGlu + Flex、Medisav Services, Canada)を適用して角膜欠損を充填し、その後ただちに柔らかい包帯コンタクトレンズを角膜上に設置した。(iii)対照グループ、このグループでは、角膜欠損を接着剤によって充填せず、1週間の間、予防用抗生物質(エリスロマイシン)軟膏を与えた。その後、ウサギを12週間追跡した。1、2、4および12週目に、Gel-COREの生体適合性および融合能ならびに角膜炎症および新血管形成の程度を、(以下に記載されるように)細隙灯生体顕微鏡検査およびIVCMを用いて評価し、他のグループと比較した。加えて、各時点で、グループあたり6匹のウサギを、組織学的(n=3)および免疫組織化学的評価(n=3)のための角膜の収集のために屠殺した。
【0114】
生体適合性評価のために、以下を評価項目とみなした:(i)(Fantes格付け尺度を用いて細隙灯生体顕微鏡検査によって評価される)接着剤/欠損周囲の
角膜の透過性、ならびに(ii)(以下で詳述されるように、IVCM、組織学的染色および/または免疫組織化学染色によって測定される)生体接着剤周囲の角膜における上皮細胞、間質角膜実質細胞、炎症細胞および血管の密度。
【0115】
融合能の評価のために、以下を評価項目としみなした:(i)(Fantes格付け尺度を用いて細隙灯生体顕微鏡検査によって評価される)
生体接着剤の透過性、(ii)(以下で詳述されるように、細隙灯生体顕微鏡検査、IVCMおよび組織学的染色により測定される)生体接着剤上での角膜上皮細胞の遊走の程度、ならびに(iii)(以下に記載される、IVCM、組織学的染色および/または免疫組織化学染色によって測定される)生体接着剤/角膜欠損領域内の間質角膜実質細胞、角膜神経、炎症細胞および血管の密度。
【0116】
細隙灯生体顕微鏡検査およびIVCMは、全身麻酔下で行った。本明細書に記載されるように、細隙灯試験および撮影を使用して、角膜および生体接着剤の透過性を評価した。加えて、生体接着剤上での上皮の遊走を評価するため、フルオレセイン染色を用いて細隙灯撮影を行い、生体接着剤上の角膜上皮欠損領域を、各時点でImage J's Measure Areaツールを用いて評価した。インビボ共焦点顕微鏡検査(IVCM)を用いて、同じウサギにおける経時的な細胞の変化および遊走を、この動物を屠殺せずに評価した。これは、生きた動物内の角膜から細胞レベルの高解像度画像を提供する非侵襲的画像化法である(
図12A〜12F)。この実験において、670 nmダイオードレーザーを用い、1μmの解像度を有するレーザー走査IVCM(Heidelberg Retina Tomograph 3 with Rostock Cornea Module, Heidelberg, Germany)を使用した。それは、400 x 400μmの角膜領域の画像を提供する。IVCMベースの読み取りのために、以下を走査し、試験した:(i)(生体接着剤、シアノアクリレートのりまたは対照グループにおいては元の欠損上の)1.5 mm中心角膜、および(ii)4分割した(上部、鼻部、下部、側部)、生体接着剤の周囲1 mmを取り囲む角膜組織。走査のために、1回のシークエンスあたり100枚の連続画像を自動的に取得するSequence Modeを使用した。手作業で進めることにより、各走査ですべての角膜層(上皮、間質および内皮)を画像化した。5ヵ所(中心、上部、鼻部、下部および側部)の各々において、2回のSequence Mode走査を行った。中心角膜における画像分析では、各走査において異なる深度から5枚の画像を無作為に選択した(計10枚の画像)。接着剤周囲の角膜における画像分析では、各角膜層(上皮、基底下層および間質)から無作為に選択される1枚の画像を、各々個々のシークエンス走査から選択した(1つの層あたり計8枚の画像)。分析のために、上皮細胞、基底下炎症細胞および間質角膜実質細胞の密度を、以前に記載されたように、Image Jソフトウェアを用いて盲検の観察者により測定した
30〜35。加えて、角膜神経の密度も、以前に報告されたようにNeuronJソフトウェアを用いて盲検の観察者により評価した
30,36,37。
【0117】
ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色を用いた組織学的評価を、収集した角膜の凍結切片において行った。各角膜において、欠損/生体接着剤位置の両方およびその周囲の角膜組織を含む中心角膜から5つの切片を得た。画像分析では、すべての切片を盲検の観察者により評価させた。接着剤上での角膜上皮細胞の遊走を決定した。加えて、間質角膜実質細胞および炎症細胞の密度を、接着剤の縁部から200μmの周囲角膜の10ヵ所の無作為に選択された領域に加えて、接着剤内の(接着剤の中心および辺縁の両方における)10ヵ所の無作為に選択された領域において決定した。
【0118】
収集した角膜の凍結切片において、以下に対する抗体を用いて免疫組織化学染色も行った:βチューブリンIII(2G10 Ab;Abcam)、ベータ2(CD18)インテグリン(炎症細胞用L13/64;GeneTex)、およびCD31(血管用ポリクローナル抗CD31;Abcam)。これらの細胞の密度を、H&E染色について記載されたように、接着剤を適用したおよび周囲の角膜マトリクスの両方において盲検の観察者によって決定した。このために、接着剤内の10ヵ所の無作為に選択された領域および接着剤から200μm以内の周囲角膜の10ヵ所の無作為に選択された領域からの連続切片を分析に使用した。各測定で、平均および標準偏差(SD)を測定した。
【0119】
細隙灯、IVCM、組織学および免疫組織化学の結果を、各時点の3つのグループ間で比較し、角膜欠損の充填におけるGel-COREの生体適合性および融合能を決定した。Gel-COREグループと対照グループの間でのこれらの比較は、Gel-COREが、二次的治癒(これも対照として含まれる)から予想されたよりも多い炎症および組織損傷を引き起こしたのかそれとも少ないそれらを引き起こしたのかの決定を助けた。加えて、Gel-COREグループとシアノアクリレートグループの間の比較は、潜在的組織損傷が現在の標準治療用の接着剤と比較してGel-COREグループにおいて少ないかどうかを示した。各グループにおける、異なる時点の間の比較は、Gel-COREへの角膜細胞の融合が経時的に起こったかどうかおよび接着剤に起因する潜在的な組織損傷が経時的に弱まったかまたは悪化したかどうかを示した。
【0120】
実施例7:角膜間質欠損の急速かつ長期的修復のための新しい生体接着剤
その物理および接着特性を最適化するための生体接着剤の調整可能な特性の使用。データは、80〜90%のメタクリロイル官能化度を有するGelMAプレポリマーが、光感作剤としてエオシンYを、開始剤としてトリエタノールアミン(TEOA)を、触媒としてビニルカプロラクタム(VC)を用いることによって効果的に架橋され、調整可能な物理的特性を有する安定なヒドロゲルを形成することができることを示している。架橋効率は光感作剤、開始剤および触媒の濃度に依存するので、これらの条件の体系的最適化が必須である。エオシンY、TEOAおよびVCの濃度を調整することによって、ネイティブの角膜と同等の引張および圧縮係数を有する配合物が生成されるよう、ヒドロゲルの重要な機械的特性を精密に制御することができる(
図14A〜14C、15Aおよび15B)。データに基づき、エオシンY(0.05 mM)、TEOA(0.4% w/v)およびVC(0.4% w/v)の最適濃度を、以下の実験で使用する。
【0121】
作製された生体接着剤の接着特性。標準的な破裂圧力試験を使用して、様々な可視光暴露時間で形成された20% w/v可視光架橋GelMAヒドロゲルの封鎖能力の総合評価を行った。このエクスビボ試験は、2mmの全層切開部を有するウサギ角膜の破裂圧力を測定するよう行った(
図16Aおよび16B)。作製されたGelMAの破裂圧力は、健常な眼の約10倍の圧力である200 mmHgよりも高く、かつ市販の対照であるReSure(登録商標)の破裂圧力よりも有意に高かった(
図16B)。
【0122】
平滑性、透過性および保持性のエクスビボ評価。外植されたウサギ角膜を用いてGelMA生体接着剤を評価するためのエクスビボ試験を実施した。生体接着剤を、ニュージーランドウサギの3 mm >50%深度の角膜欠損にエクスビボ適用した。このために、0.05 mMエオシンY、0.4% w/v TEOAおよび0.4% w/v VCを含む20% w/v GelMA溶液を使用した。この溶液を120秒間可視光に暴露し、角膜欠損上にヒドロゲル層を形成させ、これにより角膜間質への生体接着剤の強固な接着性が示された。加えて、この生体接着剤は、
図17に示されるように、透過性であり、平滑な表面を有していた。
【0123】
この手順の後、眼を4℃のPBS中で維持した。生体接着剤における経時的変化を、細隙灯生体顕微鏡検査および前方部光干渉断層撮影(AS-OCT)による連続評価を用いて評価した。30日間の評価期間の間、生体接着剤は、すべての試験した眼において、本来の状態を維持し(厚みおよび拡散性が完全に保持され)、角膜に完全に付着した状態を維持したことが見出された。細隙灯生体顕微鏡検査は、この期間、この生体接着剤が平滑な表面を有する透明な状態を維持し、形状または輪郭にいかなる生体顕微鏡的変化も見られないことを示した(
図18)。加えて、AS-OCTは、生体接着剤の厚みまたは形状に変化がないことを確認した。
【0124】
生体適合性および生体融合性のインビボ評価。ニュージーランド白ウサギにおける角膜損傷モデルを、50%深度の角膜欠損を作製することによって使用した。ケタミンおよびキシラジンの筋内注射を用いた全身麻酔の後、右目に中心50%深度の角膜切り込みを作製し、その後に生体接着剤を適用した。光架橋の直後に、角膜欠損に対する生体接着剤の強固な接着が見られた。手術の1日後(
図19A〜19C)、生体接着剤は、透明であり、平滑な表面を有し、そして周囲の角膜は、透明であり、炎症を起こしていなかった。AS-OCTはまた、間質床への完全な接着を示した。手術1週間後(
図19D〜19F)、生体接着剤は依然として透明であり、生体接着剤上での角膜上皮の一定の遊走が見られた。
【0125】
手術実施2週間後の収集したウサギ角膜の組織学的評価は、生体接着剤上での上皮細胞の遊走および生体接着剤内への角膜実質細胞の遊走を示した(
図20C)。加えて、予備的なIHC研究は、生体接着剤を用いずに治癒させた損傷角膜と比較して、GelMA生体接着剤で充填した角膜では、CD45
+細胞の浸潤が20.9%減少したことを示した。
【0126】
実施例8:GelMAヒドロゲルの架橋
1HNMR分析。
1HNMR分析を行い、1、2および4分間を含む様々な可視光暴露時間を用いることによって作製されたゼラチンメタクリロイル(GelMA)ヒドロゲルの架橋度を得た(
図21)。
1HNMR試験を実施するために、未架橋のGelMAプレポリマーおよび様々な可視光暴露時間で作製されたGelMAヒドロゲルを、重水素化DMSOに溶解させた。架橋度を定量するために、すべてのスペクトルをフェニルアラニンシグナル(δ=6.9〜7.3 ppm)に対して正規化した。GelMA内のメタクリレート基のプロトンに関連するシグナルは、δ=5.30および5.64 ppmに位置するピークとして現れることが多数報告されている
47,48。架橋度は、架橋プロセス後にメタクリレート化基内に残存するC=Cの比を表す次式により算出した:
【0127】
1HNMR結果。
1HNMR分析に基づき、δ=5.30および5.64 ppmにおけるメタクリレート化基に関連するC=C結合の消失から架橋度を計算した。20%(w/v)GelMAヒドロゲルの架橋度は、それぞれ1分間の架橋時間における63.4±2.7から4分間における88.9±7.8に増加した(
図22および表2)。さらに、10%(w/v)GelMA濃度では、1分間の反応時間後に、当初のメタクリレート化基の86.8±1.3が消費された(
図22)。架橋度は、2分および4分後に、それぞれ90.7±0.2および92.9±2.2%であった。
【0128】
(表2)
1HNMRスペクトルに基づく、様々な可視光暴露時間(1、2および4分間)で10%および20%(w/v)プレポリマー濃度を用いることによって作製されたGelMAヒドロゲルの架橋度の定量
【0129】
参照文献
【0130】
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