(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、荒加工技術(例えば、鋳造、転造、鍛造、押出し、スタンピング)と仕上げ加工技術(例えば、機械加工、溶接、はんだ付け、研磨)の組み合わせにより材料を所望の形状及び組立部品に加工している。最終的な使用可能な形状(「ネットシェイプ」)の複雑な組立部品を生産するには、適切な形状の所望の材料で部品を形成することだけでなく、部品に所望の冶金的特性(例えば、様々な熱処理、加工硬化、複雑なミクロ組織)の組み合わせを与えることも必要である場合が多く、通常、時間、工具及び労力の点でかなりの投資が必要である。
【0003】
前記荒工程及び仕上げ工程の1つ又は複数は、コンピュータ数値制御(CNC)工作機械などの製造センタを用いて実施することができる。CNC工作機械は、製造工程を自動化するために、精密にプログラムされた指令を用いる。このような指令は、コンピュータ支援設計(CAD)及び/又はコンピュータ支援製造(CAM)プログラムを用いて生成することができる。CNC機械の例として、ミーリング加工機、旋盤、ミルターン加工機、プラズマ切断機、放電加工機(EDM)及びウォータージェット切断機が挙げられるが、これらに限定されない。複数の工具タイプを有しており、複数の異なる加工工程を実施可能な単一の機械を提供するCNCマシニングセンタが開発されている。このようなマシニングセンタは、基本的に、1又は複数の工具を保持する主軸保持部やタレット保持部などの1又は複数の工具保持部と、一対のチャックなどのワーク保持部とを備えることができる。ワーク保持部は、工具がワークに当接して、該ワークから材料が除去される除去製造工程を実施する間、静止状態であっても移動(平行移動及び/又は回転移動)してもよい。
【0004】
原価、費用、複雑さやその他の要因から、従来の除去製造ステップの全て又は一部の代わりとなるであろう付加製造技術が開発されている。ワークから材料を精密に除去することを重視している除去製造工程とは対照的に、付加製造工程は、通常はコンピュータ制御環境において、連続した材料層を作成することによって材料を付加して三次元物体を形成するものである。このような三次元物体を本明細書では「造形物体」と称する。付加製造技術は、効率を改善するとともに無駄を削減することができ、その上、従来の製造技術を用いた場合には複数の構成部品から組み立てなくてはならないような複雑な構造を継ぎ目なく作製することを可能にするなどして製造能力を拡大することができる。本明細書及び添付の特許請求の範囲では、「複数」という語は、一貫して、「2つ以上」を意味すると解釈される。除去工程を付加技術で置き換え可能な状況は、付加工程での使用に利用可能な材料の範囲や、付加技術を用いて達成可能なサイズ及び表面仕上げ、材料を付加できる速度などのいくつかの要因に依存している。付加工程は、すぐに使用できる状態の複雑な精密ネットシェイプ部品を有利に作製することが可能である。しかしながら、場合によっては、付加工程は、ある程度の仕上げを必要とする「ニアネットシェイプ」製品を生産することもできる。
【0005】
付加製造技術には、レーザ焼結,レーザ溶融,電子ビーム溶融などの粉末床溶融結合処理、レーザ直接積層,レーザクラッディングなどの指向性エネルギー堆積処理、熱溶解積層などの材料押出し、連続式又はドロップ・オン・デマンド式を含む材料噴射、結合剤噴射、液槽重合、超音波積層造形を含むシート積層が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの指向性エネルギー堆積処理では、小さな基板材料のプールを溶融させる集束レーザビーム内に1又は複数のノズルから粉体が注入される。該プールに接触する粉体が溶融して基板上に堆積物を生成する。
【0006】
高炭素鋼などの脆性材料の指向性エネルギー堆積及び該材料への指向性エネルギー堆積は、割れ発生のレベルが高いため難しい。加えて、いくつかの応用では、付加製造工程は、当該幾何学的形状を造形した結果、或いは、用いた造形戦略、熱膨張が大きく異なる材料の使用又はその他の要因の結果、高い残留応力が生じる可能性がある。割れを減少させるためには、レーザ堆積工程中に形成される温度勾配をできるだけ小さく保つべきである。堆積物の最初の層は、基板の初期温度が周囲温度と同じであるため、それ以降の層よりも大きい熱応力を示し、よって、この層について温度勾配が最も大きくなる。新たな材料層が順次堆積されるにつれて、基板に熱が伝導され、これがヒートシンクの役割を果たす。工程が進むにつれて、基板に熱が蓄積するとともに熱勾配が小さくなり、割れのリスクが低下する。いくつかの応用では、予熱を行い、材料の冷却速度を遅くすることによって割れを減少させることが可能である。予熱によって熱勾配が小さくなり、これにより堆積物及び該堆積物の周囲の領域の冷却速度が遅くなる。
【0007】
これまで、造形物体全体を(基板とともに又は基板は除いて)加熱炉で加熱することでこのような予熱がなされてきた。加熱炉での加熱はより均一な温度分布が得られるが、通常、補助的な装置を伴うものであり、付加製造機械と加熱炉との間での造形物体の搬送を必要となり、付加製造工程が中断される。さらに、付加材料の指向性エネルギー堆積に用いられる既存の機械に加熱炉を一体化させることはあまりに難しく、また、費用がかかる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
開示した方法及び装置をより完全に理解するために、以下の添付図面により詳細に示した実施形態を参照すべきである。
【0013】
【
図1】本開示の一実施形態にかかるコンピュータ数値制御機械を、安全扉を閉じた状態で示した正面立面図である。
【0014】
【
図2】
図1に示したコンピュータ数値制御機械を、安全扉を開いた状態で示した正面立面図である。
【0015】
【
図3】
図1及び
図2に示したコンピュータ数値制御機械の内部構成要素の斜視図であり、加工主軸、第1チャック、第2チャック及びタレットを示している。
【0016】
【
図4】加工主軸、並びに主軸が平行移動時に介することができる水平及び垂直に配設されたレールを示した、
図3より拡大した斜視図である。
【0017】
【
図5】
図1に示したマシニングセンタの第1チャック、加工主軸及びタレットの側面図である。
【0018】
【
図6】
図5と同様の図であるが、加工主軸をY軸方向に平行移動させている。
【0019】
【
図7】
図1に示したコンピュータ数値制御機械の主軸、第1チャック及び第2チャックの正面図であり、主軸の回転移動の許容経路を示す線を含む。
【0020】
【
図8】
図3に示した第2チャックの、
図3より拡大した斜視図である。
【0021】
【
図9】
図2に示した第1チャック及びタレットの斜視図であり、
図2におけるタレットの位置に対するタレット及びタレット台のZ軸方向の移動を示している。
【0022】
【
図10】正面扉が開いた状態の
図1のコンピュータ数値制御機械の正面図である。
【0023】
【
図11】
図1の機械の例示的な工具交換装置の斜視図である。
【0024】
【
図12】(a)から(d)は、
図11の工具交換装置の動作を示した斜視図である。
【0025】
【
図13】
図1のコンピュータ数値制御機械とともに使用する材料堆積アセンブリの概略説明図である。
【0026】
【
図14】取り外し可能な堆積ヘッドを有する材料堆積アセンブリの側面立面図である。
【0027】
【
図15】取り外し可能な堆積ヘッドを有する材料堆積アセンブリの代替実施形態の側面立面図である。
【0028】
【
図16】
図14の材料堆積アセンブリで使用される下処理ヘッドの、一部を断面図で示した側面立面図である。
【0029】
【
図17】堆積開始前に基板の温度を所定のレベルまで徐々に上昇させるために堆積用レーザを粉体流なしで使用した場合について示したグラフ表示である。予熱ありの堆積と予熱なしの堆積の熱履歴を比較可能である。
【0030】
【
図18】堆積工程後に基板の温度を徐々に低下させるために堆積用レーザを粉体流なしで使用した場合について示したグラフ表示である。再加熱ありの堆積と再加熱なしの堆積の熱履歴を比較可能である。
【0031】
【
図19】予熱・再加熱手法を用いて加熱及び冷却速度を制御した堆積と加熱及び冷却速度を制御していない堆積との比較を示したグラフ表示である。
【0032】
【
図20】造形物体の形体を予熱及び/又は再加熱する例示的な方法を概略的に示したフローチャートである。
【0033】
【
図21】造形物体の複数の独立した形体を予熱及び/又は再加熱する例示的な方法を概略的に図示したフローチャートである。
【0034】
【
図22】基板及び/又は造形物体のその場予熱を行う例示的な方法を概略的に示したフローチャートである。
【0035】
【
図23】エネルギービーム源によって生成されるエネルギービームの様々な構成を概略的に示している。
【0036】
図面は必ずしも正確な縮尺ではないこと、開示される実施形態は図式的に示される場合や部分図で示される場合があることが理解されるべきである。場合によっては、開示される方法及び装置の理解に必要でない詳細や他の詳細の認識を困難にするような詳細は省略されている場合がある。当然のことながら、本開示はここに示される特定の実施形態に限定されないことが理解されるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
任意の適切な装置を、ここに開示する方法と合わせて採用することができる。いくつかの実施形態では、
図1乃至
図10に概要を示したコンピュータ数値制御機械を用いて方法を実施する。コンピュータ数値制御機械自体は他の実施形態で提示する。
図1乃至
図10に示した機械100は、DMG Moriから複数のバージョンが入手可能なNTシリーズ又はLTシリーズ機である。或いは、DMG MoriのDMU−65(5軸立形の工作機械)工作機械、DMG MoriのLaserTec 4300 3D、又は軸の向き又は数が異なる他の工作機械を、ここに開示する装置及び方法と合わせて用いてもよい。ここに開示する、付加製造のための方法を対象とするシステム及び方法は上記のような機械を用いて実施することができるが、ここでの内容は上記のような機械での実施に限定されない。
【0038】
基本的に、
図1乃至
図3に示したNTシリーズ機を参照すると、ある適切なコンピュータ数値制御機械100は少なくとも第1保持部及び第2保持部を有しており、これらの保持部はそれぞれ、工具保持部(主軸144と関連する主軸保持部又はタレット108と関連するタレット保持部など)又はワーク保持部(チャック110、112など)とすることができる。図示した実施形態では、コンピュータ数値制御機械100は、主軸144と、タレット108と、第1チャック110と、第2チャック112とを備える。コンピュータ数値制御機械100は、以下により詳細に説明するように、第1保持部と第2保持部とに作動的に接続されてこれら保持部を制御するコンピュータ制御システムも有する。コンピュータ数値制御機械100は上記の構成要素の全てを含んでいなくてもよい実施形態や、コンピュータ数値制御機械100はここで指定するものに加えて付加的な構成要素を含んでいてもよい実施形態もあることが理解される。
【0039】
図1及び
図2に示すように、コンピュータ数値制御機械100は、基本的にワーク(図示せず)に対して様々なオペレーションが行われる機械チャンバ116を有する。主軸144、タレット108、第1チャック110及び第2チャック112はそれぞれ、全体又は一部を機械チャンバ116内に配置することができる。図示の実施形態では、2つの可動式の安全扉118がユーザと機械チャンバ116とを分離し、ユーザの負傷やコンピュータ数値制御機械100の動作における干渉を防いでいる。
図2に示したように、安全扉118を開いて機械チャンバ116へのアクセスを可能にすることができる。ここでは、直交配向された3つの直線軸(X、Y及びZ)に関してコンピュータ数値制御機械100を説明する。これら3つの直線軸については、
図4に示し、以下により詳細に説明する。X、Y及びZ軸にかかる回転軸は、それぞれ、「A」、「B」及び「C」回転軸とする。
【0040】
コンピュータ数値制御機械100は、該コンピュータ数値制御機械内の様々な手段を制御するためのコンピュータ制御システムを備える。図示の実施形態では、機械は、連結された2つのコンピュータシステムである、ユーザインタフェースシステム(
図1に114で概要を図示)からなる第1コンピュータシステムと、該第1コンピュータシステムに作動的に接続された第2コンピュータシステム(図示せず)とを備える。第2コンピュータシステムは当該機械の主軸、タレット及びその他の手段の動作を直接制御するものであり、一方、ユーザインタフェース114はオペレータに第2コンピュータシステムを制御させるものである。機械制御システム及びユーザインタフェースシステムと当該機械でのオペレーションを制御するための様々な機構とを総合して1つのコンピュータ制御システムと考えてもよい。
【0041】
コンピュータ制御システムは、メインメモリに接続された中央演算処理装置(CPU)を有する機械制御回路を含むことができる。CPUは、Intel製やAMD製などの任意の適切なプロセッサを含むことができる。一例として、CPUは、マスタプロセッサ、スレーブプロセッサ及びセカンダリ又はパラレルプロセッサを含む複数のマイクロプロセッサを含むことができる。ここで用いる機械制御回路は、機械100の内外に配設されたハードウェア、ソフトウェア又はファームウェアの組み合わせからなり、バスや別のコンピュータ、プロセッサ、装置、サービス又はネットワークと通信する又は機械100とこれらとの間のデータの伝送を制御するように構成されている。機械制御回路、より具体的にはCPUは、1又は複数の制御装置又はプロセッサからなり、このような1又は複数の制御装置又はプロセッサは、互いに近位に配設する必要はなく、別々の装置内又は別々の位置に配置することができる。機械制御回路、より具体的にはメインメモリは、互いに近位に配設する必要はなく、別々の装置内又は別々の位置に配置することができる1又は複数のメモリ装置からなる。機械制御回路は、ここに開示する様々な工作機械の方法及びその他の工程の全てを実行するように動作可能である。
【0042】
ユーザがユーザインタフェースシステムを操作して機械にプログラミングを伝える実施形態や、外部ソースを介して機械にプログラムをロード又は伝送することが可能な実施形態もある。例えば、PCMCIAインタフェース、RS−232インタフェース、ユニバーサルシリアルバスインタフェース(USB)又はネットワークインタフェース、特にTCP/IPネットワークインタフェースを介してプログラムをロードすることができると考えられる。従来のPLC(プログラマブルロジックコントローラ)機構(図示せず)を介して機械を制御することができる実施形態もある。
【0043】
図1及び
図2にさらに示すように、コンピュータ数値制御機械100は、工具マガジン142と、工具交換装置143とを有することができる。これらは、主軸144と協働して該主軸を複数の工具のうちのいずれか1つとともに動作させる。一般的に、種々の工具を設けることができ、いくつかの実施形態では、同じ種類の工具を複数設けることができる。
【0044】
例示的な実施形態にかかる工具交換装置300を
図11及び
図12(a)乃至
図12(d)により詳細に示している。工具交換装置300は、複数の工具を保持するための工具マガジン302を含む。工具マガジン302は、マガジンベース304と、該マガジンベース304に対して回転するように支持されたエンドレスキャリア306とを含むことができる。エンドレスキャリア306には複数の工具ポット308が所定のピッチで接続されており、各工具ポット308は関連する工具を取り外し可能に受けるように構成されている。回転モータ310がエンドレスキャリア306に動作可能に接続されており、工具マガジン302を所望の通りに割り出す。
【0045】
工具交換装置300は、工具マガジン302の工具受渡位置Aから次工具T2を取り出して工具交換位置Bに移送するための工具キャリア312も含む。
図11及び
図12a乃至
図12dに最良に示すように、工具キャリア312は、マガジンベース304に接続されるとともに工具受渡位置Aから工具交換位置Bまで延びた移送レール314を含むことができる。移送レール314には移送支持体316が摺動可能に接続されており、該移送支持体316は工具ポット308から工具受渡位置Aに配置された次工具T2に係合するように構成されている。移送モータ318が移送支持体316に動作可能に接続されており、該移送支持体316を工具受渡位置Aと工具交換位置Bの間で往復させることによって次工具T2を工具ポット308から取り外す。
【0046】
図示の工具交換装置300は、主軸144に保持された先工具T1を工具交換位置Bに置かれた次工具T2と交換するための工具交換アセンブリ320をさらに含む。工具交換アセンブリ320は、マガジンベース304に支持され、該マガジンベース304に対して回転可能な交換シャフト322と、該交換シャフト322に接続された交換アーム324とを含むことができる。交換駆動部326が交換シャフト322に動作可能に接続されており、該交換シャフト322を軸方向及び回転方向の両方に移動させる。
【0047】
動作時、工具交換装置300を用いて、主軸144に接続される工具を交換することができる。
図12(a)に示すように、工具マガジン302によって、次工具T2の回転割出しが行われ該次工具T2が工具受渡位置Aに配置される。
図12(b)及び
図12(c)に示すように、移送支持体316が工具受渡位置Aに配置された次工具T2に係合して該次工具T2を工具交換位置Bに移送する。次に、
図12(d)に示すように、交換アーム324によって、主軸144に装着された先工具T1が移送支持体316に保持された次工具T2に交換される。その後、先工具T1は工具マガジン302の工具ポット308のうちの所定のものに戻すことができ、主軸144に装着された次工具T2を次の工程で用いることができる。
【0048】
主軸144は、X軸及びZ軸に沿った平行移動を可能にしているキャリッジアセンブリ120に取り付けられるとともに、主軸144をY軸方向に移動させるラム132に取り付けられる。ラム132には、以下により詳細に記載するように、モータが備え付けられており、主軸のB軸方向の回転が可能となっている。図示のように、キャリッジアセンブリは、2本のねじ状の垂直レール(一方のレールを126で示す)に沿って進む第1キャリッジ124を有しており、該第1キャリッジ124及び主軸144をX軸方向に平行移動させる。キャリッジアセンブリは、水平に配設された2本のねじ状のレール(一方を
図3に130で示す)に沿って進む第2キャリッジ128も含んでおり、該第2キャリッジ128及び主軸144のZ軸方向の移動が可能となっている。各キャリッジ124,128は、それぞれ、複数のボールねじ装置を介してレールに係合しており、これにより、レール126,130の回転によって当該キャリッジのX方向又はZ方向の平行移動が生じる。レールには、それぞれ、水平に配設された又は垂直に配設されたレールのためのモータ170,172が備え付けられている。
【0049】
主軸144は、主軸接続部及び工具保持部106によって工具102を保持する。主軸接続部145(
図2に図示)は、主軸144に接続されるとともに該主軸144内に収納される。工具保持部106は、主軸接続部に接続され、工具102を保持する。当該技術分野では様々なタイプの主軸接続部が知られており、これらをコンピュータ数値制御機械100とともに用いることが可能である。通常、主軸の寿命を理由に、主軸接続部は主軸144内に収納される。主軸144へのアクセスプレート122を
図5及び
図6に示している。
【0050】
第1チャック110は、爪136を備え、コンピュータ数値制御機械100のベース111に対して静止している台150に配設される。第2チャック112も爪137を備えるが、第2チャック112はコンピュータ数値制御機械100のベース111に対して移動可能である。より具体的には、機械100は、前述のようにボールねじ機構を介して第2台152をZ方向に平行移動させるためのねじ状のレール138及びモータ139を備える。第2台152は、切屑除去を補助するために、傾斜した遠心面174と、Z方向に傾斜した面177、178を備えたサイドフレーム176とを備える。チャック110、112のための、
図1及び
図2に示した圧力計182及び制御つまみ184のような油圧制御手段及び関連する表示器を設けることができる。各台は、当該チャックを回転させるためのモータ(それぞれ161,162)を備える。
【0051】
タレット108は、
図5、
図6及び
図9に最良に示すが、同じくレール138に係合し、同様にボールねじ装置を介してZ方向に平行移動させることができるタレット台146(
図5)に取り付けられる。タレット108は、
図9に示すように、様々なタレット接続部134を備える。各タレット接続部134は、工具保持部135又は工具に接続するための他の接続部に接続することが可能である。タレット108は種々のタレット接続部134及び工具保持部135を有することが可能であるため、該タレット108によって種々の異なる工具を保持して操作することが可能である。タレット108をC’軸方向に回転させて、ワークに対して様々な工具保持部(ひいては、多くの実施形態において様々な工具)を使用することができる。
【0052】
このように、幅広い多彩なオペレーションを実施することができることがわかる。工具保持部106に保持された工具102を参照すると、該工具102は、チャック110、112の一方又は両方に保持されたワーク(図示せず)に当てることができる。工具102の交換が必要である又は望ましいときは、工具交換装置143によって代わりの工具102を工具マガジン142から回収することができる。
図4及び
図5を参照すると、主軸114は、X及びZ方向(
図4に図示)並びにY方向(
図5及び
図6に図示)に平行移動させることができる。B軸回転を
図7に示しているが、図示の実施形態は垂直線の両側に120度の範囲内での回転が可能になっている。Y方向移動及びB軸回転は、キャリッジ124の裏に配置されたモータ(図示せず)から動力が供給される。
【0053】
一般的に、
図2及び
図7に見られるように、機械は、機械チャンバ116の壁を画定するとともに切屑が該チャンバから出ないようするために、複数の垂直に配設されたリーフ180及び水平に配設されたリーフ181を備える。
【0054】
機械100の構成要素は前述のものに限定されない。例えば、追加のタレットを設けることができる例や、追加のチャック及び/又は主軸を設けることができる例もある。一般的に、機械は、機械チャンバ116内に冷却液を導入するための1又は複数の機構を備える。
【0055】
図示の実施形態では、コンピュータ数値制御機械100は多くの保持部を備える。チャック110は爪136とともに保持部を形成しており、チャック112も爪137とともに保持部を形成している。多くの例では、これらの保持部はワークを保持するのにも用いられる。例えば、チャック及び関連する台は、回転するワークのための主軸台及び任意で設けられる心押台として旋盤のように機能する。主軸114及び主軸接続部145は別の保持部を形成している。同様に、タレット108は、複数のタレット接続部134が備え付けられると、複数の保持部を形成する(
図9に図示)。
【0056】
コンピュータ数値制御機械100は、当該技術分野で知られている、或いは、適切であると考えられる種類が異なる多数の工具のいずれかを用いることができる。例えば、工具102は、フライス工具,穴あけ工具,研削工具,刃工具,ブローチ工具,旋削工具などの切削工具、又はコンピュータ数値制御機械100と関連して適切であるとみなされる他の種類の切削工具とすることができる。加えて又は或いは、以下により詳細に説明するように、工具を付加製造技術に合わせて構成することができる。いずれの場合も、コンピュータ数値制御機械100は二種類以上の工具を備えることができ、工具交換装置143及び工具マガジン142の機構を介して主軸144に工具を交換させることができる。同様に、タレット108は1又は複数の工具102を備えることができ、オペレータはタレット108を回転させて新たなタレット接続部134を適切な位置に持ってくることによって工具102の入れ替えを行うことができる。いくつかの例では、タレットはガス搬送ノズル401、402及び405の1つ又は複数を備えることができる。
【0057】
コンピュータ数値制御機械100を、安全扉を開いた状態で
図10に示している。図示のように、コンピュータ数値制御機械100は、少なくとも、主軸144に配設された工具保持部106と、タレット108と、1又は複数のチャック又はワーク保持部110、112と、該コンピュータ数値制御機械100のコンピュータ制御システムと連動するように構成されたユーザインタフェース114とを備えることができる。工具保持部106、主軸144、タレット108及びワーク保持部110、112はそれぞれ、加工領域190内に配設することができ、種々の軸の1つ又は複数に沿って相対的に選択的に回転可能及び/又は移動可能とすることができる。
【0058】
図10に示すように、例えば、X、Y及びZ軸によって直交する移動方向を指し示すことができ、一方、A、B及びC軸によって、それぞれ、X、Y及びZ軸を中心とした回転方向を指し示すことができる。これらの軸は三次元空間での移動を説明しやすくするために設けたものであり、したがって、添付の請求の範囲から逸脱することなく他の座標スキームを用いることもできる。加えて、移動の説明にこれらの軸を用いることは、互いに直交する実際の物理的な軸及び物理的には直交していない場合がある仮想軸を包含することを意図しており、工具経路は、該仮想軸の方向に、これらが物理的に直交しているかのように挙動するように制御装置によって操作される。
【0059】
図10に示した軸を参照すると、工具保持部106は、これを支持する主軸144のB軸について回転させることができ、一方、主軸144自体は、X軸、Y軸及びZ軸に沿って移動可能とすることができる。タレット108は、X軸に実質的に平行であるXA軸及びZ軸に実質的に平行であるZA軸に沿って移動可能とすることができる。ワーク保持部110、112は、C軸について回転可能とすることができ、さらに、加工領域190に対して1又は複数の軸に沿って独立して平行移動可能とすることができる。コンピュータ数値制御機械100は6軸機として示しているが、移動軸の数は例示的なものにすぎず、該機械は、請求の範囲から逸脱することなく6軸よりも少ない又は多い軸方向への移動が可能であってもよいことが理解される。
【0060】
コンピュータ数値制御機械100は、付加製造工程を実施するための材料堆積アセンブリを含むことができる。例示的な材料堆積アセンブリ200を、基板204に向けることが可能なエネルギービーム202を含めて
図13に概略的に示している。材料堆積アセンブリ200は、例えば、指向性エネルギー堆積に用いることができる。基板204は、チャック110、112などのワーク保持部の1つ又は複数によって支持することができる。材料堆積アセンブリ200は、集中エネルギービーム208を基板204に向けることができる光学素子206をさらに含むことができるが、該光学素子206は、集中エネルギービーム208が十分に大きいエネルギー密度を有していれば省略することができる。エネルギービーム202は、レーザビーム、電子ビーム、イオンビーム、クラスタビーム、中性粒子ビーム、プラズマジェット又は単純放電(アーク)とすることができる。集中エネルギービーム208は、蒸発、飛び散り、浸食、衝撃波の相互作用又は他の動的作用によって基板材料を失わずに成長表面基板204の小部分を溶融させてメルトプール210を形成するのに十分なエネルギー密度を有することができる。集中エネルギービーム208は、連続パスル状又は断続パルス状とすることができる。
【0061】
メルトプール210は、基板204由来の液化した材料並びに付加材料を含むことができる。例示的な実施形態では、付加材料は供給粉体として供給することができ、該供給粉体は、1又は複数のノズル214から出る供給粉体/プロペラントガス混合物212の形態でメルトプール210上に向けられる。ノズル214は、供給粉体槽216及びプロペラントガス槽218と流体連通することができる。ノズル214は、供給粉体がメルトプール210に取り込まれるように、実質的に先端215又は物理的断面が最も小さい領域に集まることができる供給粉体/プロペラントガス混合物212の流れパターンを作成する。材料堆積アセンブリ200を基板204に対して移動させる際、該アセンブリは基板204上にビーズ層を形成する工具経路を通過する。最初のビーズ層に隣接して又はこれの上に追加のビーズ層を形成して固体三次元物体を作製することができる。
【0062】
図示の実施形態は粉体形状の付加材料を示しているが、付加材料は他の形状を取ることもできる。例えば、付加材料は、ワイヤ送給材料、箔状材料、又は付加製造工程で使用されることが知られている他のタイプの材料として供給することができる。
【0063】
使用される材料及び求められる物体公差よるが、多くの場合、ネットシェイプ物体、即ち、意図された適用のためにさらなる加工が必要ない(研磨などは許容される)物体を形成することが可能である。求められる公差が材料堆積アセンブリ200によって得られるものより精密であれば、除去仕上げ工程を用いることができる。追加の仕上げ加工が必要な場合、該仕上げ前の、材料堆積アセンブリ200によって生成された物体をここでは「ニアネットシェイプ」と称し、作製工程を完了させるためには若干の材料又は加工が必要であることを示す。
【0064】
材料堆積アセンブリ200は、
図14に最良に示すように、コンピュータ数値制御機械100に組み込むことができる。この例示的な実施形態では、材料堆積アセンブリ200は、上処理ヘッド219a及び下処理ヘッド219bを有する処理ヘッドアセンブリ219を含む。下処理ヘッド219bは、上処理ヘッド219aに取り外し可能に接続されており、上処理ヘッド219aを様々な下処理ヘッド219bとともに使用することが可能となっている。下処理ヘッド219bを交換可能であるということは、様々な堆積特性が望まれる場合、例えば、エネルギービーム202及び/又は供給粉体/プロペラントガス混合物212の様々な形状及び/又は密度が必要である場合に有利となり得る。
【0065】
より具体的には、上処理ヘッド219aは、主軸144を含むことができる。複数のポートを主軸144に接続することができ、該ポートは、接続時に下処理ヘッド219bと連動するように構成される。例えば、主軸144は、供給粉体槽及びプロペラント槽を含むことができる供給粉体供給部(図示せず)と流体連通する供給粉体/プロペラントポート220を備えることができる。加えて、主軸144は、シールドガス供給部(図示せず)と流体連通するシールドガスポート222及びクーラント供給部(図示せず)と流体連通するクーラントポート224を備えることができる。供給粉体/プロペラントポート220、シールドガスポート222及びクーラントポート224は、個々に、又は管路アセンブリ226のような束ねられた管路を介して各々の供給部に接続することができる。
【0066】
上処理ヘッド219aは、作製エネルギー供給部(図示せず)に作動的に接続された作製エネルギーポート228をさらに含むことができる。図示の実施形態では、作製エネルギー供給部は、主軸144のハウジング内に延びるレーザファイバ230によって作製エネルギーポート228に接続されたレーザである。レーザファイバ230は、主軸144の本体内を進むようにしてもよく、この場合、作製エネルギーポート228は、主軸144の底部に形成されたソケット232内に配置することができる。したがって、
図14の実施形態では、作製エネルギーポート228はソケット232の内部に配設されており、一方、供給粉体/プロペラントポート220、シールドガスポート222及びクーラントポート224はソケット232に隣接して配設されている。上部処理ヘッド219aは、エネルギービームを形作るための追加の光学素子、例えば、コリメーションレンズ、部分反射ミラー又は湾曲ミラーなどをさらに含むことができる。
【0067】
上処理ヘッド219aは、複数の下処理ヘッド219bの1つに選択的に接続することができる。
図14に示すように、例示的な下処理ヘッド219bは、一般的に、ベース242と、光学チャンバ244と、ノズル246とを含むことができる。加えて、エネルギービームに対するノズル246の位置及び/又は向きを平行移動又は回転させる、或いは調節するためにノズル調節アセンブリを設けることができる。ベース242は、下処理ヘッド219bと上処理ヘッド219aとが解除可能に係合できるようにソケット232の内部に密接に嵌合するように構成される。
図14の実施形態では、ベース242は、作製エネルギーポート228に取り外し可能に接続するように構成された作製エネルギーインタフェース248も含む。光学チャンバ244は、何も含んでいなくても、所望の集中エネルギービームを形成するように構成された集束光学素子250のような最終光学装置を含んでいてもよい。下処理ヘッド219bは、それぞれ供給粉体/プロペラントポート220、シールドガスポート222及びクーラントポート224と作動的に接続するように構成された供給粉体/プロペラントインタフェース252、シールドガスインタフェース254及びクーラントインタフェース256をさらに含むことができる。
【0068】
ノズル246は、供給粉体/プロペラントを所望の対象領域に向けるように構成することができる。
図16に示した実施形態では、ノズル246は、ノズル内壁272から間隔を空けたノズル外壁270を含み、該ノズル外壁270とノズル内壁272との間の空間に粉体/プロペラントチャンバ274を画定している。粉体/プロペラントチャンバ274は、一端が供給粉体/プロペラントインタフェース252と流体連通しており、他端はノズル出口オリフィス276を終点としている。例示的な実施形態では、ノズル出口オリフィス276は環状形状を有するが、それ以外では、ノズル出口オリフィス276は本開示の範囲を逸脱することなく他の形状を有することができる。粉体/プロペラントチャンバ274及びノズル出口オリフィス276は、1又は複数の供給粉体/プロペラントジェットを所望の収束角度で形成するように構成することができる。図示の実施形態のノズル246は、円錐形の粉体/プロペラントガスジェットを1つだけ搬送することができる。しかしながら、ノズル出口オリフィス276は複数の分散した粉体/プロペラントガスジェットを形成するように構成することができることが認識されるであろう。またさらに、生じる粉体/プロペラントガスジェットは、円錐形以外の形状を有することもできる。
【0069】
ノズル246は、さらに、エネルギービームが対象領域に向かって進む際に該ノズル246を通過可能なように構成することができる。
図16に最良に示すように、ノズル内壁272は、光学チャンバ244及び任意で設けられる集束光学素子250と整列した作製エネルギー出口282を有する中央チャンバ280を画定する。よって、ノズル246は、作製エネルギーのビームが該ノズル246を通過して下処理ヘッド219bから出ていけるようになっている。
【0070】
代替実施形態では、
図15に最良に示すように、上処理ヘッド219a’は、主軸144のハウジングの外に作製エネルギーポート228を設けることができる。この実施形態では、作製エネルギーポート228は、主軸144の側部に設けられたエンクロージャ260に配置され、したがって、該ポートは、上記の実施形態とは異なり、ソケット232内に設けられていない。エンクロージャ260は、作製エネルギーを主軸144のソケット232の下方に向けるための第1ミラー262を含む。代替的な下処理ヘッド219b’は光学チャンバ244を含み、該光学チャンバ244は、作製エネルギーがエンクロージャ260から該光学チャンバ244の内部までの間に通過することができる作製エネルギーレセプタクル264を含む。光学チャンバ244は、ノズル246を通過して所望の対象位置に向かう作製エネルギーの向きを転換するための第2ミラー266をさらに含む。
【0071】
例示的な実施形態では作製エネルギーを処理ヘッドアセンブリ219に組み込んでいるが、作製エネルギーは処理ヘッドアセンブリ219から独立して設けることができることが認識されるであろう。即ち、別のアセンブリ、例えば、タレット108、第1チャック110、第2チャック112又は機械100とともに設けた専用のロボットなどを用いて作製エネルギーを基板204に向けることができる。この代替的な実施形態では、処理ヘッドアセンブリ219は、作製エネルギーポート、作製エネルギーインタフェース、作製エネルギー出口、光学チャンバ及び集束光学素子を省略することになる。
【0072】
処理ヘッドアセンブリ219がいくつかの下処理ヘッド219bのうちのいずれか1つと選択的に接続するように構成された上処理ヘッド219aを有する場合、コンピュータ数値制御機械100を様々な付加製造技術に合わせて素早く且つ容易に構成し直すことができる。工具マガジン142は下処理ヘッド219bのセットを保持することができ、該セットの各下処理ヘッドは特定の付加製造工程に適した独自の仕様を有する。例えば、各下処理ヘッドは、それぞれ異なる種類の光学素子やインタフェース並びに異なるノズル角度を有することができ、これらにより、基板上に材料を堆積させる又はエネルギーを対象領域に向ける態様が変えられる。様々な付加製造技術を用いて部品を形成しなければならない(又は複数の異なる技術を用いるとより素早く且つ効率的に形成できる)場合、工具交換装置143を用いて主軸144に接続される堆積ヘッドを素早く且つ容易に交換することができる。
図14及び
図15に示した例示的な実施形態では、1つの取付工程だけを用いてエネルギー供給部、供給粉体/プロペラントガス供給部、シールドガス供給部及びクーラント供給部を堆積ヘッドに接続することができる。同様に、1つの接続解除工程で取り外しを終えることができる。よって、機械100を様々な材料堆積技術に合わせてより素早く且つ容易に変更することができる。
【0073】
ある付加製造応用では、ある材料を使って及び/又はある造形物体形状について作業する場合には材料及び/又は周辺領域の温度を制御することが有利となり得る。高炭素鋼やチタンなどの材料は、例えば、ワーク全体に亘って高い温度勾配が存在する場合に割れ又はその他の変形が起こりやすいことがある。本明細書で用いる「高炭素鋼」という用語は、0.2%以上の炭素含有量を有する鋼を含む。加えて又は或いは、所望の最終的な造形物体の形状又は幾何学的形状によっては、例えば、厚い形体を形成している間に隣接する薄い形体が加熱されすぎる場合がある造形戦略が必要となることがある。さらに、冷却を制御しないと、いくつかの応用では、付加製造工程によって、当該幾何学的形状を造形した結果、或いは、用いた造形戦略や、熱膨張が大きく異なる材料の使用又はその他の要因の結果、高い残留応力が生じる可能性がある。冷却速度を制御することによって、部品が冷えるにつれてこれらの応力を徐々に開放することが可能である。
【0074】
予熱及び/又は再加熱工程を制御して所望の温度目標を達成することができる。本明細書で用いる「温度目標」という用語は、所望の温度値及び温度変化率を包含することを意図している。例えば、造形物体の選択した領域が所望の温度値としての温度目標より高く維持されるようにエネルギービーム源を制御することができる。或いは、造形物体の選択した領域が所望の冷却速度としての温度目標を達成するようにエネルギービーム源を制御することができる。
【0075】
図17は、予熱サイクルの熱効果を概略的に示している。予熱なしの堆積の熱履歴と比較すると、予熱サイクルは加熱速度を大きく低下させ、基板材料の熱衝撃を低減させる。この予熱サイクルは、例えば、付加材料の堆積時に使用するものと同じエネルギービーム源を適用することによって実施することができる。予熱時、エネルギービーム源は、堆積時に使用するエネルギービームのパワーレベルよりもパワーレベルを下げて動作させることができる。予熱は、鋳鉄、高炭素鋼、コバルトクロム合金、又は、脆性破壊様式を有する傾向がある、或いは、わずかにしか溶接できない材料として分類される又は知られている他の材料から造形物体を形成する場合に有利となり得る。いくつかの実施形態では、予熱サイクル時の最大加熱速度が約7.8K/分以下となるように且つ予熱サイクル時の平均加熱速度が約3.4K/分以下となるように予熱を制御する。
【0076】
或いは、他の基板及び/又は造形物体の加熱源、例えば、摩擦を生じる機械的係合又は誘導加熱装置などを用いることもできる。
【0077】
図18は、加熱後サイクルの熱効果を概略的に示している。低パワーのエネルギービームパスを用いて造形物体及び/又は基板材料の冷却速度を低下させ、熱衝撃を防いで残留応力を低減させることができる。再加熱は、チタン、又は溶接及び/又は付加製造工程時の残留応力に関して問題があることが知られている他の材料から造形物体を形成する場合に有利となり得る。いくつかの実施形態では、再加熱サイクル時の冷却速度が約1.4K/分以下となるように再加熱を制御する。
【0078】
図19は、付加製造工程における予熱サイクル及び加熱後サイクルの両方の熱効果を概略的に示している。
【0079】
温度感知装置217(
図13)を用いて造形物体の温度を測定することができ、該温度感知装置217は、IRカメラ、パイロメータ又は熱電対を含むがこれらに限定されない数個の装置のうちの1つ又は複数として設けることができる。全ての実施形態について、特に、予熱又は再加熱サイクルの設計にシミュレーション又は経験を利用する実施形態について、温度測定は必要ない場合もある。
【0080】
いくつかの実施形態では、閉ループ制御システムが用いられる。この制御システムは、サイクル間の時間、サイクルの持続時間及び/又はレーザパワーを変動させて、加熱又は冷却速度を特定の範囲内に維持する、又は、温度を閾値より高く維持することができる。付加的な予熱サイクルを、手動で作動させる、時間シーケンスによって作動させる、又はシミュレーション又は経験によって予め定めた手法によって作動させることも可能である。
【0081】
いくつかの実施形態では、レーザ直下の局所温度がオーバーヒートしないようにエネルギービームを拡散させることができる。これは、レーザを焦点外に移動させる、非常に速い処理速度を使用する、又はレーザ光学素子を変更することによって行うことが可能である。例示的な実施形態では、堆積時に使用した堆積ヘッドを、光学素子が異なる別のヘッドに取り換えることによってレーザを拡散させることができる。例えば、予熱/加熱時に使用するヘッドは、エネルギー密度が低い大きいビームスポットを生成することができる。ビームスポットは、付加材料及び/又は基板材料を溶融させない又はこれらの溶融を最小限とする十分な大きさにすることができる。或いは、同じ堆積ヘッドを、レーザビームの焦点をぼかして(即ち、基板は光学素子の焦点位置に位置していない)使用することもできる。
【0082】
いくつかの実施形態では、予熱及び再加熱サイクル時にレーザが使用する工具経路を、造形物体の幾何学的形状に基づいて堆積で使用する工具経路と同様とすることができる。他の実施形態では、予熱/加熱時に使用する工具経路を、堆積時に使用するものと全く別物とすることができる。より大きい領域を加熱して、造形物体内の熱勾配を低下させる、又は、造形物体又はその特定の形体の冷却速度を制御することができる。
【0083】
予熱は、全ての堆積前に実施する必要はなく、同じ要素上の新たな堆積領域に移動する際、すでに許容温度より低い温度に冷却された部分に戻る際、又は1又は複数の他の中間加工ステップ後に実施することができる。再加熱は、工程が要素の別の形体に移る前にある領域の温度を維持する又はある形体の冷却速度を低下させるための中間処理ステップとして実施することが可能である。処理中の再加熱及び/又は予熱を採用するか否かは、形体及び/又は幾何学的形状によって決まるようにすることができる。
【0084】
造形物体の様々な形体に対して所望される冷却速度は、幾何学的形状によって異なっていてもよい。所望の冷却速度は、経験、シミュレーション又は制御システムによって決定することができる。逆に、この手法を用いて、同じ部品の大きく異なる複数の幾何学的形状に亘って冷却を均一に維持して残留応力を低減させることも可能であろう。他の実施形態では、1又は複数の特定の形体又は領域を再加熱することによって造形物体の全体温度を所望の値より高く維持し、これにより、造形物全体をより均一な速度で冷却することができる。
【0085】
ここで
図20を参照すると、造形物体を付加製造するための例示的な方法500がブロック図で示されている。この方法500は、機械100と関連する又は機械100の一部であるあらゆる要素を含む前述のシステム、方法及び装置のいずれかを用いることができる。この方法500は、具体的には、付加製造工程時に予熱及び/又は再加熱サイクルを実施するように構成することができる。方法500のブロック502において、基板を所望の温度まで予熱する。方法500は、続いて、ブロック504において、本明細書に記載した付加製造工程のいずれか1つなどによって基板上に形体を堆積させる。方法500のブロック506において、前記形体を再加熱して冷却を制御する。
【0086】
図21は、形体を複数有する造形物体を付加製造するための例示的な方法600を示している。付加製造工程を通して各形体を選択的に予熱及び/又は再加熱して、付加材料の堆積の前又は後に所望の温度を得ることができる。例えば、方法600のブロック602において、第1の基板を予熱する。方法600は、続いて、ブロック604において、前記第1の基板上に第1の形体(「形体A」とする)を堆積させる。ブロック606において、第2の基板を予熱する。ここで用いる第1及び第2の基板は、独立した全く異なる基板であっても、同一基板の異なる領域であっても、堆積される材料とは別に形成された基板であっても、先に堆積された材料によって形成された基板であってもよい。方法のブロック608において、前記形体Aを再加熱して冷却速度を制御する。ブロック608は、ブロック606と同時に実施することもブロック606に続けて実施することもできる。方法600は、続いて、ブロック610において、前記第2の基板上に第2の形体(「形体B」とする)を堆積させる。方法600は、続いて、ブロック612において、前記形体Aの再加熱を再度行って前記形体Aの冷却速度を制御することができ、一方、ブロック614において、前記形体Bを再加熱して前記形体Bの冷却速度を制御することができる。ブロック612は、ブロック614と同時に実施することもブロック614に続けて実施することもできる。したがって、図示のように、600の方法は、予熱/再加熱ステップと堆積ステップとを交互に行う。
【0087】
図22は、造形物体及び/又は基板のその場加熱を伴う、造形物体を付加製造するための例示的な方法700を示している。方法700のブロック702において、基板を所望の温度まで予熱する。ブロック704において、予熱された基板上に形体を堆積させる。方法700は、続いて、ブロック706において、前記形体の加工(例えば、除去加工)を行う。ブロック708において、前記形体が堆積された領域を予熱し、その後、ブロック704においてさらに材料を堆積させ、ブロック706において形体をさらに加工する。前記形体が完成するまでブロック704、706及び708を繰り返すことができ、完成した時点でブロック710において工程が終了する。
【0088】
図23は、予熱/再加熱及び材料堆積を同時に実施するのに用いることができるエネルギービーム源によって生成されるエネルギービーム構成を示している。例えば、
図23には、エネルギービーム800が、内領域802、中間領域804及び外領域806を有するものとして示されている。図示の実施形態では、中間領域804は内領域802を完全に囲んでおり、外領域806は中間及び内領域802、804を完全に囲んでいる。内及び中間領域802、804は、これらの領域の搬送されるエネルギー量が基板上に堆積される付加材料を溶融させられるよう十分に大きくなるように構成することができる。外領域806は、この領域に搬送されるエネルギー量が、比較的小さく、堆積された形体の予熱/再加熱に適するように構成することができる。この実施形態では、基板の第1の領域で予熱/再加熱を実施するとともに該基板の第2の領域で付加材料の堆積を実施し、予熱/再加熱工程と付加材料の堆積とを同時に実施することができる。
【0089】
各領域802、804、806は選択的に有効又は無効にすることができる。よって、
図23は、この実施形態で使用可能な7つの異なる領域の組み合わせも示している。第1のビーム構成810は、内領域802のみを含む。第2のビーム構成812は、内及び中間領域802、804を含む。第3のビーム構成814は、中間領域804のみを含む。第4のビーム構成816は、中間及び外領域804、806を含む。第5のビーム構成818は、外領域806のみを含む。第6のビーム構成820は、内及び外領域802、806を含む。第7のビーム構成822は、内、中間及び外領域802、804、806を含む。