特許第6887451号(P6887451)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6887451
(24)【登録日】2021年5月20日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】硫黄架橋性ゴム混合物及び車両用タイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20210603BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20210603BHJP
   C08K 5/548 20060101ALI20210603BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20210603BHJP
   C07F 7/18 20060101ALI20210603BHJP
   C08L 7/00 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   C08L9/00
   C08K3/36
   C08K5/548
   B60C1/00 A
   B60C1/00 Z
   B60C1/00 C
   C07F7/18 W
   C08L7/00
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-567162(P2018-567162)
(86)(22)【出願日】2017年6月23日
(65)【公表番号】特表2019-525973(P2019-525973A)
(43)【公表日】2019年9月12日
(86)【国際出願番号】EP2017065499
(87)【国際公開番号】WO2017220764
(87)【国際公開日】20171228
【審査請求日】2020年3月31日
(31)【優先権主張番号】102016211368.2
(32)【優先日】2016年6月24日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】コルネリア シュマウンツ−ヒアシュ
(72)【発明者】
【氏名】ユリア シェフェル
(72)【発明者】
【氏名】カーラ レッカー
(72)【発明者】
【氏名】キアステン シュヴェーケンディーク
(72)【発明者】
【氏名】トーマス クラーマー
(72)【発明者】
【氏名】カタリーナ ヘアツォーク
【審査官】 櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/172915(WO,A1)
【文献】 特表2014−526568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L,C08K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
補強材層である部品中に、硫黄架橋性ゴム混合物を含有する、車両用タイヤであって、
前記硫黄架橋性ゴム混合物
− 少なくとも1種のジエン系ゴム及び
− 少なくとも1種の、有機コバルト塩及び補強用樹脂及び2.5phrを超える硫黄をベースとするスチールコード接着剤及び
− 少なくとも1種のシリカ10〜200phr及び
− 一般組成式
I) [(RSi−X](R2−m
を有する少なくとも1種のシラン2〜20phrを含み、ここで、残基Rは、1分子内で同じか又は異なっていてよく、かつ炭素原子1〜10個を有するアルコキシ基又は炭素原子2〜10個を有する環状ジアルコキシ基又は炭素原子4〜10個を有するシクロアルコキシ基又はフェノキシ基又は炭素原子6〜20個を有するアリール基又は炭素原子1〜10個を有するアルキル基又は炭素原子2〜20個を有するアルケニル基又は炭素原子7〜20個を有するアラルキル基又はハライドであり、かつXは、極性有機尿素含有基であり、かつmは、1又は2の値を取り、かつnは、1〜8の整数であり、かつRは、水素原子又は炭素原子1〜20個を有するアシル基であ
補強材が金属製補強材である、前記車両用タイヤ
【請求項2】
前記極性有機尿素含有基Xが、少なくとも1つの尿素誘導体を極性官能基として有し、前記誘導体が、2個の窒素原子上に、有機炭化水素基を持ち、ここで、前記尿素含有基の第一の窒素原子と前記S基の硫黄との間の基が、脂肪族であり、かつ前記尿素含有基の第二の窒素原子と前記(RSi基のケイ素原子との間の基が、脂肪族又は芳香族である、請求項1に記載の車両用タイヤ
【請求項3】
前記極性有機尿素含有基Xが、少なくとも1つの尿素誘導体を極性官能基として有し、前記誘導体は、2個の窒素原子上に、有機炭化水素基を持ち、ここで、前記尿素含有基の第一の窒素原子と前記S基の硫黄との間の基が、脂肪族であり、かつ前記尿素含有基の第二の窒素原子と前記(RSi基のケイ素原子との間の基が、脂肪族であることを特徴とする、請求項1に記載の車両用タイヤ
【請求項4】
前記極性有機尿素含有基Xが、1−エチル−3−プロピル−尿素残基であることを特徴とする、請求項1に記載の車両用タイヤ
【請求項5】
前記シランが、n=1.8〜2.3である混合物であり、かつ少なくとも、式VI)によるシランが50質量%超で、前記シラン混合物中に含まれていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の車両用タイヤ
【化1】
【請求項6】
前記ゴム混合物が、少なくとも1種のブタジエンゴム5〜30phr及び少なくとも1種の天然及び/又は合成のポリイソプレン70〜95phrを含有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の車両用タイヤ
【請求項7】
前記ゴム混合物が、シリカ40〜80phrを含有することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の車両用タイヤ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫黄架橋性ゴム混合物、殊に、エラストマー製品における、殊に車両用タイヤにおける、補強材、又は車両用タイヤの内部部品のゴム引きのための硫黄架橋性ゴム混合物、及び車両用タイヤに関する。
【0002】
多くのエラストマー製品、例えば車両用空気入りタイヤ、駆動ベルト、コンベヤーベルト等は、高い機械的応力に耐えるように、繊維又は金属製の補強材で、例えば黄銅めっきスチールコードで、補強されている。車両用空気入りタイヤは、例えば黄銅めっきスチールコードを、ベルト中、任意にベルト帯中、ビードコア中、ビード補強材中及び任意にカーカス中に有する。そのゴム−補強材複合体の耐久性を保証するために、埋め込むゴム混合物(ゴム引き混合物)は、該補強材への良好な接着を示すべきであり、ここで、該接着は、老化及び湿潤状態での貯蔵により損なわれるべきではない。補強材と直接接触していない、エラストマー製品内部の他の部品、例えば車両用タイヤにおいて殊にアンダートレッド(Laufstreifenunterplatten)、ベルトエッジストリップ又はビードストリップの場合にも、冒頭に挙げた、接着系を有する混合系がしばしば使用される。
そのうえ、その加硫物は、高い動的及び機械的な安定性及び亀裂形成及び亀裂成長に対する低い傾向を有するべきである。例えば、補強材で補強されたエラストマー製品の場合の熱的及び機械的な負荷が、該ゴム引き混合物中の破壊及び亀裂をまねき、これらが最終的に低下された耐久性をまねくことが明らかになっている。
【0003】
ゴムの繊維製補強材への接着は、含浸(例えば、ゴムラテックスと組み合わせたレソルシノールホルムアルデヒド樹脂、RFLディップを用いる)によって、接着混合物を用いる直接法において、又はポリイソシアネートを有する未加硫ゴムの接着溶液によって、行われる。
【0004】
ゴム−金属接着に、該ゴム引き混合物中のいわゆる補強用樹脂の添加により、有利な影響を及ぼすことができる。補強用樹脂として、例えば、リグニン、硬化剤を有するフェノール−ホルムアルデヒド樹脂及びポリマー樹脂が公知である。該ゴム−金属接着の改善のために、コバルト塩及び/又はレソルシノール−ホルムアルデヒド−シリカ系又はレソルシノール−ホルムアルデヒド系を該ゴム引き混合物用の添加剤として使用することは、久しい以前から公知である。コバルト塩及びレソルシノール−ホルムアルデヒド−シリカ系を有するゴム引き混合物は、例えば、KGK Kautschuk Gummi Kunststoffe No. 5/99, p. 322-328、GAK 8/1995, p. 536及び欧州特許出願公開第1260384号明細書(EP-A-1 260 384)から公知である。
【0005】
本発明の課題は、エラストマー製品、殊に車両用タイヤにおける補強材又は車両用タイヤの内部部品のゴム引きのための、接着系を含有する硫黄架橋性ゴム混合物であって、該エラストマー製品で改善された耐久性をもたらすものを提供することである。
【0006】
この課題は、次の成分を含有するゴム混合物によって解決される:
− 少なくとも1種のジエン系ゴム及び
− 少なくとも1種の接着系及び
− 少なくとも1種のシリカ10〜200phr及び
− 一般組成式
I) [(RSi−X](R2−m
を有する少なくとも1種のシラン2〜20phr、
ここで、残基Rは、1分子内で同じか又は異なっていてよく、かつ炭素原子1〜10個を有するアルコキシ基又は炭素原子2〜10個を有する環状ジアルコキシ基又は炭素原子4〜10個を有するシクロアルコキシ基又はフェノキシ基又は炭素原子6〜20個を有するアリール基又は炭素原子1〜10個を有するアルキル基又は炭素原子2〜20個を有するアルケニル基又は炭素原子7〜20個を有するアラルキル基又はハライドであり、かつXは、極性有機尿素含有基であり、かつmは、値1又は2を取り、かつnは、1〜8の整数であり、かつRは、水素原子又は炭素原子1〜20個を有するアシル基である。
【0007】
意外なことに、該ゴム混合物は、従来技術と比べて、そのヒートビルドアップの指標がほぼ変わらずにより高いスティフネスを示す。本発明によるゴム混合物を補強材層及び/又はその他の内部部品中に含有する車両用タイヤは、改善された耐久性を示す。
【0008】
本明細書において使用される記載phr(ゴム100質量部あたりの部数)は、その場合に、ゴム工業において通常の、混合物配合表のための量の記載である。個々の該物質の質量部の配合量は、本明細書において、該混合物中に存在している高分子の、そのために固形の全てのゴムの全質量の100質量部を基準としている。
【0009】
本発明のさらなる課題は、改善された耐久性の点で優れている車両用タイヤを提供することにある。この課題は、該車両用タイヤが、少なくとも1つの部品中に上記のような本発明によるゴム混合物を含有することによって解決される。その際に、該ゴム混合物の成分についての下記の全ての説明は、本発明による車両用タイヤにも当てはまる。
好ましくは、該部品は、補強材層、例えばベルト、ベルト帯、ビードコア、ビード補強材及び/又はカーカスである。該ゴム混合物は、この場合にはそうすると、カーカスゴム引き及び/又はベルトゴム引き等である。
【0010】
さらに、本発明によるゴム混合物は好ましくは、接着系が含まれている、車両用タイヤの他の内部部品、例えば、殊にアンダートレッド、ベルトエッジストリップ又はビードストリップに、使用される。
【0011】
本発明のさらなる課題は、車両用タイヤの耐久性を改善することにある。この課題は、本発明によれば、車両用タイヤにおける、上記の全ての実施態様及び特徴を有する上記のゴム混合物の使用によって解決される。
【0012】
車両用タイヤは、本発明の範囲内で、殊に車両用空気入りタイヤ及びソリッドゴムタイヤのような、産業及び建設車両用のタイヤ、トラック用タイヤ、乗用車用タイヤ並びに二輪車用タイヤを含めた、当業者に公知のあらゆる車両用タイヤであると理解される。
本発明の好ましい実施態様によれば、車両用空気入りタイヤである。
補強材を含有する車両用タイヤの部品は、本発明の範囲内で、殊に、そのベルト層及びカーカス層、ベルト帯、ビードコア、ビードコア補強材である。同様に接着系を有するその他の内部部品は、殊に、帯、例えば殊に該ベルト帯、及び/又はアンダートレッド及び/又はビードストリップであってよい。
【0013】
以下に、本発明による硫黄架橋性ゴム混合物の成分は、より詳細に記載される。全ての説明は、本発明によるゴム混合物を少なくとも1つの部品中に有する、本発明による車両用タイヤにも当てはまる。
【0014】
本発明によれば、該ゴム混合物は、少なくとも1種のジエン系ゴムを含有する。
ジエン系ゴムとは、ジエン及び/又はシクロアルケンの重合又は共重合により生じ、そのためにその主鎖中又は側基中のいずれかにC=C二重結合を有するゴムをいう。
【0015】
該ジエン系ゴムは、その際に、天然ポリイソプレン及び/又は合成ポリイソプレン及び/又はエポキシ化ポリイソプレン及び/又はブタジエンゴム及び/又はブタジエン−イソプレンゴム及び/又は溶液重合スチレン−ブタジエンゴム及び/又は乳化重合スチレン−ブタジエンゴム及び/又はスチレン−イソプレンゴム及び/又は20000g/molを超える分子量Mを有する液状ゴム及び/又はハロブチルゴム及び/又はポリノルボルネン及び/又はイソプレン−イソブチレンコポリマー及び/又はエチレン−プロピレン−ジエン系ゴム及び/又はニトリルゴム及び/又はクロロプレンゴム及び/又はアクリレートゴム及び/又はフッ素ゴム及び/又はシリコーンゴム及び/又は多硫化ゴム及び/又はエピクロロヒドリンゴム及び/又はスチレン−イソプレン−ブタジエンターポリマー及び/又は水素化アクリロニトリルブタジエンゴム及び/又は水素化スチレン−ブタジエンゴムからなる群から選択されている。
【0016】
殊に、ニトリルゴム、水素化アクリロニトリルブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ハロブチルゴム又はエチレン−プロピレン−ジエン系ゴムは、工業用ゴム製品、例えばベルト(Gurte)、伝動ベルト(Riemen)及びホース、及び/又は靴底の製造の際に使用される。
【0017】
好ましくは、該ジエン系ゴムは、天然ポリイソプレン及び/又は合成ポリイソプレン及び/又はブタジエンゴム及び/又は溶液重合スチレン−ブタジエンゴム及び/又は乳化重合スチレン−ブタジエンゴムからなる群から選択されている。
【0018】
本発明の好ましい展開によれば、該ゴム混合物中で、少なくとも2つの異なるジエン系ゴムタイプが使用される。
【0019】
本発明の好ましい実施態様によれば、本発明によるゴム混合物は、少なくとも1種のブタジエンゴム0〜30phr、好ましくは5〜30phr及び少なくとも1種の天然及び/又は合成のポリイソプレン70〜100phr、好ましくは70〜95phrを含有する。その種のゴム混合物は、殊に、補強材のゴム引き混合物として、例えば車両用タイヤのベルトゴム引き及び/又はカーカスゴム引きとして、良好な特性を、例えば加工性及び/又はヒートビルドアップ(転がり抵抗)及び/又は引裂特性に関して、示す。
【0020】
本発明によるゴム混合物は、少なくとも1種のシリカ10〜200phr、好ましくは20〜180phr、特に好ましくは40〜150phr、極めて特に好ましくは40〜110phr、さらにまた好ましくは40〜80phrを含有する。
該シリカは、タイヤゴム混合物用の充填剤として適している、当業者に公知のシリカであってよい。しかし、特に好ましいのは、35〜350m/g、好ましくは35〜260m/g、特に好ましくは70〜235m/g及び極めて特に好ましくは70〜205m/gの窒素表面積(BET表面積)(DIN ISO 9277及びDIN 66132による)、及び30〜400m/g、好ましくは30〜255m/g、特に好ましくは65〜230m/g及び極めて特に好ましくは65〜200m/gのCTAB表面積(ASTM D 3765による)を有する、微細な沈降シリカが使用される場合である。
そのようなシリカは、例えば、内部タイヤ部品用のゴム混合物中で、その加硫物の特に良好な物理的性質をもたらす。そのうえ、その際に、製品特性が変わらずにその混合時間が低下することによる該混合物加工における利点が明らかになり、このことは改善された生産性をもたらす。したがって、シリカとして、例えば、Evonik社のタイプUltrasil(登録商標) VN3(商用名)のもの並びに比較的低いBET表面積を有するシリカ(例えば、Solvay社のZeosil(登録商標) 1115又はZeosil(登録商標) 1085)並びに高分散性シリカ、いわゆるHDシリカ(例えば、Solvay社のZeosil(登録商標) 1165 MP)であってよい。
【0021】
本発明に本質的であるのは、該ゴム混合物が、一般組成式
I) [(RSi−X](R2−m
を有するシランを含有することであり、
ここで、残基Rは、1分子内で同じか又は互いに異なっていてよく、かつ炭素原子1〜10個を有するアルコキシ基又は炭素原子2〜10個を有する環状ジアルコキシ基又は炭素原子4〜10個を有するシクロアルコキシ基又はフェノキシ基又は炭素原子6〜20個を有するアリール基又は炭素原子1〜10個を有するアルキル基又は炭素原子2〜20個を有するアルケニル基又は炭素原子7〜20個を有するアラルキル基又はハライドであり、
かつXは、極性有機尿素含有基であり、
かつmは、値1又は2を取り、
かつnは、1〜8の整数であり、
かつRは、炭素原子1〜20個を有するアシル基又は水素原子である。
環状ジアルコキシ基は、ジオールの誘導体である。
【0022】
式I)によるこのシランは、その際に、本発明によるゴム混合物中で、
a)カップリング剤として、該ゴム混合物中に含まれるシリカを、1種もしくは複数種の該ジエン系ゴムのポリマー鎖に結合させるために
及び/又は
b)シリカの表面改質に、該ポリマー鎖に結合させずに該シリカ粒子に結合させることによって
利用される。
シランカップリング剤は、一般に公知であり、かつ該シリカの表面シラノール基又は他の極性基と、該ゴムもしくは該ゴム混合物の混合中に(インサイチュで)又は既に該充填剤の該ゴムへの添加前に前処理(予備変性)の意味で、反応する。一部のシランは、そのうえ、(1種以上の)該ゴムのポリマー鎖に結合しうる。
【0023】
本発明によるゴム混合物中で、上記のシランは、完全にか又は部分的に、従来技術において公知のシラン、例えばTESPD(3,3′−ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)又はTESPT(3,3′−ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)又はオクチルトリエトキシシラン(例えばSi208(登録商標)、Evonik社)又はメルカプトシラン、例えば3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン(例えばSi263(登録商標)、Evonik社)、又はブロックドメルカプトシラン、例えば3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシラン(例えばNXTシラン、Momentive社)を、スティフネスを高めると同時に、転がり抵抗挙動に関する欠点を示すことなく、置換する。
【0024】
本発明の範囲内で、一般組成式I)を有する上記のシランが、従来技術からの1種以上のシランと組み合わせて使用されることも考えられる。
【0025】
一般組成式I)を有するシランは、2〜20phr、好ましくは2〜15phr、特に好ましくは5〜15phrの量で、本発明によるゴム混合物中に含まれている。
【0026】
本発明に本質的であるのは、上記の組成式I)を有するシランが、極性有機尿素含有基Xを有することである。この極性尿素含有基Xは、1個又は複数個の該ケイ素原子を、該S部分の硫黄原子と結合させる。
当該技術において、そのような結合基をスペーサーともいう、それというのも、この基は、ケイ素(該充填剤への結合)と硫黄(該ジエン系ゴムへの結合)との間隔を決定するからである。
【0027】
従来技術において公知の有機スペーサーは、通常、1つ以上のプロピル残基(又はプロピル基ともいう)を有し、例えば、これは上記のシランTESPD及びTESPT及びメルカプトシラン及びNXTシランにおいて普通である。
【0028】
本発明によるゴム混合物を用いて、従来技術からのシランの代わりに極性尿素含有スペーサーXを有するシランを接着系と組み合わせて使用して、該ゴム混合物の高められたスティフネスが、ヒートビルドアップの極めて良好な指標と同時に達成されることが見出された。これにより、殊に、車両用タイヤの補強材又はその他の内部部品のゴム引き混合物としての使用の際に、高められた耐久性が達成される。
【0029】
その際に、“極性有機尿素含有基X”は、これが、少なくとも1つの極性有機尿素官能基を有する、非分岐状、分岐状又は環状の炭化水素基であると理解すべきである。
少なくとも1つの該尿素官能基のヘテロ原子、例えば酸素(O)、窒素(N)により、ヘテロ原子を有していない炭化水素残基、例えばアルキル基と比べて、その分子内でより大きな極性となり、それにより、本発明の範囲内で、名称“極性”となる。ヘテロ原子を有していない炭化水素残基は、当該技術において一般に無極性として分類される。
“極性”という表現は、該基Xの付加的な説明であると理解すべきであり、ここで、本発明に本質的な特徴は“尿素含有”である。
【0030】
該極性有機尿素含有官能基の上記の説明は、該炭化水素含有残基中に結合された少なくとも1つの尿素官能基が、該炭化水素含有残基への結合により、尿素誘導体として存在するので、該極性有機基は、次の少なくとも1つの極性官能基を有するように理解すべきである:
II) −(H)N−CO−N(H)−
【0031】
したがって、該基II)は、直接にか又は残基R(下記のような有機炭化水素基)を介して、一方の側で該S基に、かつ他方の側で、直接にか又は残基R(下記のような有機炭化水素基)を介して、該(RSi基のケイ素原子に、結合されている。該残基Rは、両側で、同じか又は互いに異なっていてよい。
【0032】
本発明の好ましい実施態様において、該極性有機尿素含有基Xは、式II)による少なくとも1つの尿素誘導体を極性官能基として有し、該誘導体は、その2個の窒素原子上に、炭素原子1〜30個、好ましくは炭素原子1〜20個、特に好ましくは炭素原子1〜10個、極めて特に好ましくは炭素原子1〜7個、殊に好ましくは炭素原子2又は3個を有する有機炭化水素基Rを持ち、ここで、該尿素含有基の一方の窒素と該S基の硫黄との間の基は、脂肪族、好ましくはアルキル基であり、かつ該尿素含有基の他方の窒素原子と該(RSi基のケイ素原子との間の基は、脂肪族並びに芳香族であってよい。したがって、該残基Rは、両側で、同じか又は互いに異なっていてよい。
【0033】
本発明のさらに好ましい実施態様において、該極性有機尿素含有基Xは、式II)による少なくとも1つの尿素誘導体を極性官能基として有し、該誘導体は、その2個の窒素原子上に、有機炭化水素基を持ち、ここで、該尿素含有基の一方の窒素と該S基の硫黄との間の基(有機炭化水素基)は、脂肪族、特に好ましくはアルキル基であり、かつ該尿素含有基の他方の窒素原子と該(RSi基のケイ素原子との間の基は、脂肪族、特に好ましくはアルキル基である。
【0034】
したがって、特に好ましくは、一方の窒素原子と、該(RSi基のケイ素原子とは、アルキル基を介して、かつ他方の窒素原子と、該S基の硫黄原子とは、同様にアルキル基を介して、互いに結合されている。この場合に、双方の該基は、同じアルキル残基又は互いに異なるアルキル残基(例えば異なる数の炭素原子)であってよい。
これによって、従来技術に比べて、該ゴム混合物の特に高いスティフネス及び引張強さ及び/又はそれどころか改善された転がり抵抗指標が達成される。従来技術は、ここでは、特開2002−201312号公報(JP2002201312A)であり、これには窒素含有有機官能基を有する芳香族スペーサーを有する剤が開示されており、該剤は、他のシランに比べてより小さいスティフネス及びより小さい引張強さを有する。
【0035】
Roempp Online Lexikon, Version 4.0によれば、“脂肪族化合物”は、“…芳香環系を含まない、官能化された又は官能化されていない有機化合物”である。
【0036】
本発明の好ましい実施態様によれば、Xは、1−エチル−3−プロピル尿素残基である。この場合に、本発明の範囲内で、該尿素官能基の第一の窒素原子と該ケイ素原子との間に、該プロピル基が、かつ該尿素官能基の第二の窒素原子と該S基の硫黄原子との間に、該エチル基が、配置されている。このことは好ましくは、本発明の全ての実施態様に当てはまる。
しかしながら、根底にある技術的課題の解決のために、原則的に、該エチル残基及びプロピル残基が、尿素とSiもしくは尿素と硫黄原子との間に逆に配置されていることも考えられる。
【0037】
上記のような少なくとも1つの尿素官能基に加えて、基Xは、上記のような有機炭化水素基(残基R)上でF−、Cl−、Br−、I−、CN−又はHS−で置換されていてよい。
【0038】
該ケイ素原子に結合された残基Rは、炭素原子1〜10個を有するアルコキシ基、好ましくはメトキシ基又はエトキシ基、又は炭素原子2〜10個を有する環状ジアルコキシ基又は炭素原子4〜10個を有するシクロアルコキシ基又はフェノキシ基又は炭素原子6〜20個を有するアリール基、好ましくはフェニル、又は炭素原子1〜10個を有するアルキル基、好ましくはメチル基又はエチル基、又は炭素原子2〜20個を有するアルケニル基又は炭素原子7〜20個を有するアラルキル基又はハライド、好ましくはクロリド(R=Cl)であり、かつ1分子内で同じか又は互いに異なっていてよい。
その際に、環状ジアルコキシ基(ジオールの誘導体)が、双方の酸素原子で該ケイ素原子に結合されているように結合されており、ひいては2つの結合された残基Rとみなされ、ここで、さらなる残基Rは、上記の可能性から選択されていることも考えられる。
しかしながら、好ましくは、Rは、メトキシ基及び/又はエトキシ基である。特に好ましくは、3つ全ての残基Rが、同じであり、かつメトキシ基及び/又はエトキシ基であり、極めて特に好ましくは3つのエトキシ基である。
【0039】
添え字mは、値1又は2を取ることができる。したがって、基
III) [(RSi−X]
は、1分子あたり1又は2つ存在していてよい。m=2の場合に、該硫黄は、すなわちこれらの2つの基のみに結合されているので、この場合に、残基Rは該分子中に存在していない。双方の該基III)は、そうすると、n=1〜8である該S部分を介して、すなわち、1個の硫黄原子又は硫黄原子2〜8個の鎖を介して、結合されている。
好ましくは、nは、1.4〜6、特に好ましくは1.6〜4の整数である。これによって、スティフネス及び加硫挙動、殊に加硫時間に関して特に良好な性質がもたらされる。
その硫黄含量(nの値)の決定は、H−NMRによって行われる。
【0040】
m=1である場合には、残基Rは、該シリル基から最も離れている硫黄原子に結合されている。Rは、水素原子又は炭素原子1〜20個を有するアシル基である。残基Rがアシル基である場合には、好ましくは、そのケト基、すなわち酸素原子への二重結合を持つ炭素原子は、該シリル基から最も離れている硫黄原子へ結合されている。
好ましい実施態様によれば、該アシル基は、アセチル残基、すなわち−CO−CH部分である。
シリル基は、本発明の範囲内で、
IV) (RSi−
部分であると理解される。
【0041】
したがって、該シランは、メルカプトシラン又は、ブロックドメルカプトシランともいう、保護されたメルカプトシランのいずれかであってよい。
【0042】
本発明の好ましい実施態様によれば、本発明によるゴム混合物は、次の構造:
V) [(RSi−X]
を有するシランを含有する。
上記の組成式I)において、
mは、したがって2であるので、該S部分は、両側で
III) [(RSi−X]
部分に結合されている。
特に好ましくは、該極性尿素含有基X及び該残基Rは、該分子の両側で同じである。
この場合に、Rは、特に好ましくは、エトキシ基であり、そうするとこれは該分子中に全部で6つ存在している。
好ましくは、Xは、両側で、1−エチル−3−プロピル尿素残基である。
【0043】
好ましい実施態様によれば、m=2及びn=1.8〜2.3であるので、硫黄原子の異なる鎖を有するシランの混合物が存在する。好ましくは、この混合物中に、50質量%を上回る、好ましくは70〜100質量%の、n=2であるジシランが含まれている。好ましくは含まれる該シランは、すなわち、次の構造VI):
【化1】
を有する。
この場合に、それぞれ1個の硫黄原子が、2つの該1−エチル−3−プロピル尿素残基のエチル基のそれぞれ1つに結合されている。
【0044】
このシランを用いて、変わらないヒートビルドアップで特に良好なスティフネスが達成される。
このシランは、例えば、シスタミン二塩酸塩と、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシランとの、水中での、少なくとも1つの塩基、例えば50%KOH溶液(KOH=水酸化カリウム)の添加を伴う反応により、得ることができる。
【0045】
式I)による実施態様の、記載されたシランの分析は、13C−NMR、1H−NMR及び29Si−NMRによって行われる。
【0046】
さらに好ましい実施態様によれば、m=2であり、かつnは2〜8の整数、特に好ましくは3又は4であり、ここで、他の全ての残基は、好ましくは、式VI)に示されている通りである。
この場合に、本発明によるゴム混合物中に、nについて異なる値を有するシラン分子の混合物が含まれていてもよい。例えば、該ゴム混合物(前記の説明に類似)は、n=2及び/又はn=3及びn=4であるシランの混合物を有していてよい。
分64mol%(S<5mol%を有する、ここでxはこの場合に>4である)及びS分36mol%を有するそのようなシランは、例えば、エタノール中での3−アミノプロピルトリエトキシシランと2−クロロエチルイソシアネートとの反応、続いて多硫化ナトリウム(Na)との反応により、得ることができる。
【0047】
本発明のさらに好ましい実施態様によれば、n=1及びm=2であるので、モノスルファンシランが存在する。
他の全ての残基は、好ましくは、式VI)に示されている通りであり、すなわち、R=エトキシ(EtO)及びX=1−エチル−3−プロピル−尿素残基である。
このシランは、エタノール中での3−アミノプロピルトリエトキシシランと2−クロロエチルイソシアネートとの反応、続いて硫化ナトリウム(NaS)との反応により、得ることができる。
意外なことに、モノスルファン(ここで、n=1及びm=2)を用いても、ポリマーに結合していない従来技術からのシランと比べて、スティフネスの増大が、変わらない又はそれどころか改善された転がり抵抗の指標と共に、明らかになる。
【0048】
さらなる実施態様によれば、式I)によるシランは、メルカプトシランである。この場合に、m=1、及びR=H、及びn=1である。
Xは、ここでも、好ましくは、1−エチル−3−プロピル尿素残基であり、ここで、該尿素官能基の第一の窒素原子と該ケイ素原子との間に、該プロピル基が、かつ該尿素官能基の第二の窒素原子と該硫黄原子との間に、該エチル基が存在する。このシランは、エタノール中のNaSH(ナトリウム及びエタノールから製造されるナトリウムエトキシド溶液中へのHSの導通による)とエタノール中のハロシラン(EtO)Si−CHCHCH−NH−CO−NH−CHCH−Clとの反応により、得ることができる。
【0049】
さらなる実施態様によれば、式I)によるシランは、ブロックドメルカプトシランである。この場合に、m=1、及びR=炭素原子1〜20個を有するアシル基(アルカノイル残基)、好ましくはアセチル残基(−CO−CH)、及びn=1である。
Xは、ここでも、好ましくは、1−エチル−3−プロピル尿素残基であり、ここで、該尿素官能基の第一の窒素原子と該ケイ素原子との間に、該プロピル基が、かつ該尿素官能基の第二の窒素原子と該硫黄原子との間に、該エチル基が存在する。このシランは、エタノール中での3−アミノプロピルトリエトキシシランと2−クロロエチルイソシアネートとの反応、続いてカリウムチオアセテートとの反応により、得ることができる。
【0050】
本発明によるゴム混合物は、シリカに加えてさらに、公知のさらなる極性及び/又は無極性の充填剤、例えばカーボンブラックを含有していてよい。
【0051】
本発明によるゴム混合物がカーボンブラックを含有する場合には、好ましくは、30g/kg〜250g/kg、好ましくは30〜180g/kg、特に好ましくは40〜180g/kg、及び極めて特に好ましくは40〜130g/kgのASTM D 1510によるヨウ素吸着量、及び60〜200ml/100g、好ましくは70〜200ml/100g、特に好ましくは90〜150ml/100gのASTM D 2414によるDBP吸収量を有する、カーボンブラックが使用される。
本発明によるゴム混合物中のカーボンブラックの量は、好ましくは0〜50phr、特に好ましくは0〜20phr及び極めて特に好ましくは0〜7phr、しかし好ましい実施態様において少なくとも0.1phrである。
本発明の特に好ましい実施態様において、該ゴム混合物は、カーボンブラック0.1〜7phrを含有する。
本発明のさらに好ましい実施態様において、該ゴム混合物は、カーボンブラック0〜0.5phrを含有する。
【0052】
さらに、該ゴム混合物が、カーボンナノチューブ(carbon nanotubes(CNT)、離散CNT、いわゆる中空炭素繊維(HCF)及び1つ以上の官能基、例えばヒドロキシ、カルボキシ及びカルボニル基を有する改質CNTを含む)を含有することが考えられる。
また、グラファイト及びグラフェン並びにいわゆるCSDPフィラー(“carbon-silica dual-phase filler”)も、充填剤として考えられる。
該ゴム混合物は、そのうえ、さらに他の極性充填剤、例えばアルミノケイ酸塩、チョーク、デンプン、酸化マグネシウム、二酸化チタン又はゴムゲルを含有していてよい。
【0053】
本発明によるゴム混合物は、少なくとも1種の接着系を含有する。
該ゴム混合物が、繊維又は金属製の補強材用のゴム引きのどちらに使用されるかに応じて、該ゴム−繊維接着用の接着系又は該ゴム−金属接着用の接着系のいずれかが使用される。同じことは、補強材を有していないが、タイヤ中で繊維又は金属製の補強材を有する部品に隣接して配置されている内部部品に当てはまる。内部部品、例えば、トラック又は乗用車用タイヤのベルトクッションは、例えば、スチールを含有するベルト層に隣接しており;そうすると、該ベルトクッション中に、好ましくは同様に、すなわち該ベルトゴム引きのように、該ゴム−金属接着用の接着系が含まれている。
類似して、繊維製補強材を有する乗用車用タイヤのカーカス層に隣接している内部部品は、好ましくは、すなわち該カーカスゴム引きのように、該ゴム−繊維接着のための接着系を含有する。
【0054】
本発明の好ましい展開によれば、該補強材は、金属製補強材である。該接着及び該亀裂挙動の改善は、金属製補強材の場合に特に有利に作用する、それというのも、これらは、接着損失及び亀裂形成の際によりいっそう腐食に曝されており、このことは、該エラストマー製品、殊に車両用空気入りタイヤの寿命を著しく損なわせるからである。
【0055】
該ゴム混合物が、金属製補強材、殊にスチールコードのゴム引きに使用される場合には、好ましくは、有機コバルト塩及び補強用樹脂及び2.5phrを超える硫黄をベースとするスチールコード接着系が使用される。
【0056】
該有機コバルト塩は、通常、0.2〜2phrの量で使用される。コバルト塩として、例えば、ステアリン酸コバルト、ホウ酸コバルト、コバルト−ボレート−アルカノエート、ナフテン酸コバルト、ロジン酸コバルト、オクタン酸コバルト、アジピン酸コバルト等を使用することができる。補強用樹脂として、レソルシノール−ホルムアルデヒド樹脂、例えばレソルシノール−ヘキサメトキシメチルメラミン樹脂(HMMM)又はレソルシノール−ヘキサメチレンテトラミン樹脂(HEXA)、又は変性フェノール樹脂、例えばAlnovol(登録商標)タイプを使用することができる。該レソルシノール樹脂のうち、その初期縮合物を使用することもできる。
【0057】
該ゴム混合物中に、少なくとも1種の軟化剤0〜100phr、好ましくは0.1〜80phr、特に好ましくは0.1〜70phr及び極めて特に好ましくは0.1〜50phrが存在していてよい。これらには、当業者に公知のあらゆる軟化剤、例えば芳香族系、ナフテン系又はパラフィン系の鉱油軟化剤、例えばMES(mild extraction solvate)又はTDAE(treated distillate aromatic extract)、又はゴム液化油(RTL)又はバイオマス液化油(BTL)又はファクチス又は軟化剤樹脂又は液状ポリマー(例えば液状BR)が含まれ、それらの平均分子量(GPC=ゲル浸透クロマトグラフィーによる決定、BS ISO 11344:2004に従う)は、500〜20000g/molである。本発明によるゴム混合物中で、液状ポリマーが軟化剤として使用される場合には、これらは、該ポリマーマトリックスの組成の計算にゴムとして入れない。
【0058】
該軟化剤は、好ましくは、上記の軟化剤からなる群から選択されている。
鉱油は、軟化剤として特に好ましい。
鉱油を使用する場合に、これは、好ましくは、DAE(Destillated Aromatic Extracts)及び/又はRAE(Residual Aromatic Extract)及び/又はTDAE(Treated Destillated Aromatic Extracts)及び/又はMES(Mild Extracted Solvents)及び/又はナフテン系油からなる群から選択されている。
【0059】
さらに、本発明によるゴム混合物は、通常の添加剤を、通常の質量部で含有していてよい。これらの添加剤には、
a)老化防止剤、例えばN−フェニル−N′−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン(6PPD)、N,N′−ジフェニル−p−フェニレンジアミン(DPPD)、N,N′−ジトリル−p−フェニレンジアミン(DTPD)、N−イソプロピル−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン(IPPD)、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン(TMQ)、
b)活性剤、例えば酸化亜鉛及び脂肪酸(例えばステアリン酸)、
c)ワックス、
d)素練り助剤、例えば2,2′−ジベンズアミドジフェニルジスルフィド(DBD)及び
e)加工助剤、例えば脂肪酸塩、例えば亜鉛セッケン、及び脂肪酸エステル及びそれらの誘導体
が含まれる。
【0060】
さらなる添加剤の全量の量割合は、3〜150phr、好ましくは3〜100phr及び特に好ましくは5〜80phrである。
さらなる添加剤の全量割合中に、さらに0.1〜10phr、好ましくは0.2〜8phr、特に好ましくは0.2〜4phrの酸化亜鉛(ZnO)が見出される。
これは、当業者に公知のあらゆるタイプの酸化亜鉛、例えばZnO顆粒又はZnO粉末であってよい。従来使用される酸化亜鉛は、通例、10m/g未満のBET表面積を有する。しかし、10〜60m/gのBET表面積を有するいわゆるナノ酸化亜鉛を使用することもできる。
ゴム混合物に、加硫促進剤を用いる硫黄架橋のために、酸化亜鉛を活性剤として、たいてい脂肪酸(例えばステアリン酸)と組み合わせて、添加することは普通である。該硫黄は、ついで該加硫のための錯形成によって活性化される。
【0061】
該加硫は、硫黄又は硫黄供与剤の存在下で加硫促進剤を用いて実施され、ここで、一部の加硫促進剤が同時に硫黄供与剤として作用しうる。硫黄又は硫黄供与剤並びに1種以上の促進剤は、最後の混合工程において、挙げた量で、該ゴム混合物に添加される。その際に、該促進剤は、チアゾール促進剤及び/又はメルカプト促進剤及び/又はスルフェンアミド促進剤及び/又はチオカルバメート促進剤及び/又はチウラム促進剤及び/又はチオホスフェート促進剤及び/又はチオ尿素促進剤及び/又はキサントゲン酸塩促進剤及び/又はグアニジン促進剤からなる群から選択されている。
好ましいのは、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)及び/又はN,N−ジシクロヘキシルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド(DCBS)及び/又はベンゾチアジル−2−スルフェンモルホリド(MBS)及び/又はN−tert−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(TBBS)からなる群から選択されている、スルフェンアミド促進剤の使用である。
【0062】
硫黄供与物質として、その際に、当業者に公知のあらゆる硫黄供与物質を使用することができる。該ゴム混合物が、硫黄供与物質を含有する場合には、これは好ましくは、例えばチウラムジスルフィド、例えばテトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)及び/又はテトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)及び/又はテトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、及び/又はチウラムテトラスルフィド、例えばジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)、及び/又はジチオホスフェート、例えばDipDis(ビス−(ジイソプロピル)チオホスホリルジスルフィド)及び/又はビス(O,O−2−エチルヘキシル−チオホスホリル)ポリスルフィド(例えばRhenocure SDT 50(登録商標)、Rheinchemie GmbH)及び/又は亜鉛ジクロリルジチオホスフェート(例えばRhenocure ZDT/S(登録商標)、Rheinchemie GmbH)及び/又は亜鉛アルキルジチオホスフェート、及び/又は1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン及び/又はジアリールポリスルフィド及び/又はジアルキルポリスルフィドを含む群から選択されている。
【0063】
本発明によるゴム混合物の製造は、ゴム工業において通常の方法により行われ、その際にまず最初に、1つ以上の混合段階において、該加硫系の成分、例えば硫黄及び加硫促進剤以外の全ての成分を有する基本混合物が製造される。最後の混合段階における該加硫系の添加により、最終混合物が製造される。該最終混合物は、例えば、押出し過程によりさらに加工され、かつ対応する形状にされる。
好ましくは、本発明によるゴム混合物は、車両用タイヤの1つ以上の補強材層の補強材のゴム引き混合物として、例えば、カーカスゴム引き及び/又はベルトゴム引き及び/又はそのベルト帯のゴム引き及び/又はそのビードコア及び/又はビード補強材におけるゴム引きとして、使用される。
さらに、本発明によるゴム混合物は、好ましくは内部タイヤ部品中で使用され、その場合に、同様に、取り囲む部品への接着は、殊に車両運転における、該タイヤの耐久性に関連しており、例えば好ましくはアンダートレッド、ベルトエッジストリップ及び/又はビードストリップである。
【0064】
該ゴム混合物は、さらに、工業用ゴム製品、例えばコンベヤーベルト、伝動ベルト、ベルト、ホース、印刷用ブランケット、空気ばね又は減衰要素、又は靴底の製造に適している。
【実施例】
【0065】
本発明は、目下、第1表にまとめられている比較例及び実施例に基づいて、より詳細に説明される。
該比較混合物にはV、本発明による混合物にはEの符号が付けられている。
該混合物製造を、ゴム工業において通常の方法によって、通常の条件下で、2つの段階において、体積300mL〜3Lを有する実験室用混合機中で行い、その際に、まず最初に、第一の混合段階(基本混合段階)において、該加硫系(硫黄及び加硫に影響を及ぼす物質)以外の全ての成分を、200〜600秒間、145〜165℃、目標温度152〜157℃で混合した。第二の段階(最終混合段階)における該加硫系の添加により、該最終混合物を製造し、ここで、180〜300秒間、90〜120℃で混合した。
【0066】
ゴム混合物及びそれらの加硫物の製造のための一般的な方法は、“Rubber Technology Handbook”, W. Hofmann, Hanser Verlag 1994に記載されている。
【0067】
全ての混合物から、試験体を、t95(ASTM D 5289-12/ ISO 6502に従いMoving Disc Rheometerで測定)後の加圧下で160℃での加硫により製造し、かつこれらの試験体を用いて、ゴム工業に典型的な材料特性について、以下に示される試験方法を用いて求めた。
・ DIN ISO 7619-1による室温(RT)でのショアA硬さ
・ DIN 53 512によるRTでの反発弾性
・ 0.15%ひずみ及び8%ひずみでの、ISO 4664-1による55℃での動的貯蔵弾性率E‘
・ 損失係数tan d、tan δと同義、動的−機械的測定から、温度掃引("temperature sweep“);DIN53513 (1978)による動的弾性率Ekorrの計算、コンディショニング:20%±14%、周波数10Hz、温度範囲−80℃〜−100℃、加熱速度1.6K/分、静ひずみ10%、動ひずみ0.2%
・ DIN 53 504による室温での、引張強さ及び100%(モジュラス100、M100)並びに300%静ひずみ(モジュラス300、M300)での応力値。
【0068】
使用された物質
a) BR:ポリブタジエン、高シスNd−BR、官能化されていない、T=−105℃、BUNA(登録商標) CB25、Lanxess社
b) シリカ:Hi-Sil (商標) 160G、PPG Silica Products
c) シランTESPT、カーボンブラック上50%
d) 極性有機尿素含有スペーサーを有する構造VI)によるシラン:
【化2】
この場合に、式VI)によれば:n=2;R=(EtO);X=1−エチル−3−プロピル−尿素;m=2であり;
下記の方法E)により製造される。
【0069】
該シランの製造
水中での式VI) [(EtO)Si−(CH−NH−C(=O)−NH−(CH−S−]によるシランの製造(ヘキサン洗浄なし):
精密ガラス撹拌棒、還流冷却器、内部温度計及び滴下漏斗を備え、Nでパージした1Lジャケット付四つ口フラスコ中に、シスタミン二塩酸塩(108.39g、0.47mol、1.00当量)を装入し、脱イオン水(382mL)中に溶解させる。滴下漏斗を用いて、50%KOH溶液(92.31g、0.82mol、1.75当量)を15〜23℃で計量供給し、かつ30min撹拌する。目下、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン(221.05g、0.85mol、1.8当量)を、30℃の内部温度を超えないように計量供給する。その後、24℃で1時間撹拌する。その白色懸濁液を加圧下にろ過し、3つの部分の脱イオン水(全部で340mL)ですすぎ、乾燥Nで2h乾燥させる。そのろ過ケークを、ロータリーエバポレーター中で、35℃及び166mbarで7h、35℃及び150mbarで10h及び35℃及び100mbarで9h、N流中で乾燥させる。
【0070】
生成物[(EtO)Si−(CH−NH−C(=O)−NH−(CH−S−]は、微細な白色粉末である(246.38g、90.7% d.Th.=理論値の;理論値は、最大限可能な収率に相当する);
H−NMR(δppm、500MHz、DMSO−d6): 0.52(4H,t),1.14(18H,t),1.42(4H,m),2.74(4H,m),2.96(4H,m),3.29(4H,m),3.74(12H,q),6.05(4H,m);
13C−NMR(δppm、125MHz、DMSO−d6): 7.3(2C),18.2(6C),23.5(2C),38.5(2C),39.6(2C),42.0(2C),57.7(6C),157.9(2C)。
29Si−NMR(δppm、100MHz、DMSO−d6): −45.3(シラン100%);
内標準TPPOの使用下でのd6−DMSO中の可溶分:86.0%;
含水量(DIN 51777):0.7%;
溶融開始:97℃;
イソシアネート残留含量:0.08%
【0071】
第1表からE1対V1の比較(該シランの等モル交換)に基づいて認識されうるように、本発明によるゴム混合物は、明らかにより高いスティフネスを有し、このことは、モジュラス100、モジュラス300並びにE‘(0.15%ひずみでの)及びE‘(8%ひずみでの)の高められた値に現れる。同時に、本発明によるゴム混合物E1は、より低い損失係数tan dを、殊にヒートビルドアップに関連する温度、例えば55℃及び80℃で、有する。
【0072】
このことから、車両用タイヤにおける、殊に車両用空気入りタイヤの内部部品における本発明によるゴム混合物の使用のために、該タイヤの改善された耐久性が明らかになる。
【0073】
第1表
【表1】