(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6887464
(24)【登録日】2021年5月20日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】皺を改善する皮膚外用組成物、皺を改善する皮膚外用組成物の製造方法、及び化粧品
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9789 20170101AFI20210603BHJP
A61K 8/9794 20170101ALI20210603BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20210603BHJP
A61K 8/9728 20170101ALI20210603BHJP
A61K 36/185 20060101ALI20210603BHJP
A61K 36/889 20060101ALI20210603BHJP
A61K 36/8969 20060101ALI20210603BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20210603BHJP
A61K 36/07 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61K8/9794
A61Q19/08
A61K8/9728
A61K36/185
A61K36/889
A61K36/8969
A61P17/00
A61K36/07
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-114191(P2019-114191)
(22)【出願日】2019年6月20日
(65)【公開番号】特開2020-152710(P2020-152710A)
(43)【公開日】2020年9月24日
【審査請求日】2020年4月3日
(31)【優先権主張番号】201910208848.6
(32)【優先日】2019年3月19日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519223734
【氏名又は名称】広東芭微生物科技股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】劉瑞学
(72)【発明者】
【氏名】冷群英
(72)【発明者】
【氏名】冷沁園
【審査官】
小川 慶子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2014−507469(JP,A)
【文献】
特表2018−512409(JP,A)
【文献】
特開2016−108253(JP,A)
【文献】
特表2011−522831(JP,A)
【文献】
特開2011−79755(JP,A)
【文献】
特開2015−20997(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
A61K 36/07,36/185,36/889,36/8969
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノゲイスス属抽出物14〜23重量部、ザクロ属抽出物9〜15重量部、ヤシ科抽出物4〜8重量部、及びアマドコロ抽出物3〜6重量部を含み、
前記アノゲイスス属抽出物は、アノゲイススレイオカルプス樹皮抽出物であり、前記ザクロ属抽出物は、ザクロ果皮抽出物であり、前記ヤシ科抽出物は、アサイヤシ果実抽出物である
ことを特徴とする皺を改善する皮膚外用組成物。
【請求項2】
キヌガサタケ抽出物1〜5重量部を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の皺を改善する皮膚外用組成物。
【請求項3】
前記アノゲイススレイオカルプス樹皮抽出物18〜20重量部、前記ザクロ果皮抽出物11〜14重量部、前記アサイヤシ果実抽出物5〜7重量部、前記アマドコロ抽出物4〜5重量部、及びキヌガサタケ抽出物2〜4重量部を含むことを特徴とする請求項2に記載の皺を改善する皮膚外用組成物。
【請求項4】
アノゲイススレイオカルプス樹皮抽出物14〜23重量部、ザクロ果皮抽出物9〜15重量部、アサイヤシ果実抽出物4〜8重量部、及びアマドコロ抽出物3〜6重量部を混合させ、
前記アノゲイススレイオカルプス樹皮抽出物の製造方法は、
アノゲイススレイオカルプス樹皮を粉砕し、スクリーニングしてから、第1溶媒を添加して浸漬し、浸漬された混合物に対して超音波抽出を行って、抽出液を得るステップと、
前記抽出液を濾過して濾液を得て、前記濾液に第2溶媒を添加し、攪拌しながら降温させ、結晶が析出してから沈殿物を得た後、乾燥して前記アノゲイスス属抽出物を得るステップと、
を含むことを特徴とする皺を改善する皮膚外用組成物の製造方法。
【請求項5】
前記スクリーニングに使用されるスクリーンのメッシュ数は、70〜100メッシュであり、前記第1溶媒は、ジメチルスルホキシド又はN−メチルピロリドンであり、浸漬時間は、1〜2.5hであり、固液比は、1:10〜15g/mLであることを特徴とする請求項4に記載の皺を改善する皮膚外用組成物の製造方法。
【請求項6】
前記超音波抽出の抽出温度は、70〜90℃であり、超音波パワーは、250〜450Wであり、抽出時間は、15〜35minであることを特徴とする請求項4に記載の皺を改善する皮膚外用組成物の製造方法。
【請求項7】
前記第2溶媒は、メタノール、エタノール及び水のうちの1つであり、前記第2溶媒と前記濾液との体積比は、1:2〜5であることを特徴とする請求項4に記載の皺を改善する皮膚外用組成物の製造方法。
【請求項8】
前記降温速度は、2〜4℃/sであり、前記結晶の析出温度は、10〜20℃であることを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項に記載の皺を改善する皮膚外用組成物の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の前記皺を改善する皮膚外用組成物を含むことを特徴とする化粧品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧品分野に関し、具体的には、皺を改善する皮膚外用組成物及び化粧品に関する。
【背景技術】
【0002】
真皮は、緻密な繊維と弾性組織からなる網状のものであり、さらに、大量なコラーゲン及びエラスチンなどの繊維状粒子性質のタンパク質を組成とし、ヒアルロン酸を液体マトリックスとし、三者が共同に細胞外マトリックスにおいて互いに充填されてなるものである。年をとるにつれて、線維芽細胞におけるコラーゲンおよびエラスチンの合成は減少し、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMPs)により真皮におけるコラーゲンおよびエラスチンが分解され、さらに、内因性の生化学因子フリーラジカルもコラーゲンの架橋結合を促進するので、皮膚の張力の低下を引き起こすようになった。さらに、フリーラジカルはヒアルロン酸を直接的に分解するので、真皮の保水機能と支持力も劣化した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−7545号公報
【0004】
皮膚の皺を改善するために、肌内のコラーゲン、エラスチンの増加や、MMPsの活性の抑制、体内のフリーラジカルの減少などの様々な手段で老化を遅らせることを試みられている。また、市場で、天然、低副作用、顕著な効果を有する製品に対する要求が高まるにつれて、スキンケア添加剤として伝統的な化学物質の代わりに老化防止抽出物または抽出物の組成物を加えることが趨勢及び傾向となっている。今までの研究では、皮膚の老化問題の解決方法は、比較的単一である。多くの植物抽出物のうち実際に効果を果たす有効成分の含有量が低く、または抽出物のうちの有効成分と他の組成物との相溶性に問題があるため、化粧品に添加された組成物全体が無効になることもある。
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものである。
【発明の概要】
【0005】
本出願は、皺を改善する皮膚外用組成物を提供することを第1目的とする。活性酸素フリーラジカルの生成の抑制、MMPsの活性の抑制、コラーゲン合成の向上等の3つの手段の相乗効果によって肌の皺を改善する。さらに、組成物の組成、配合比率を合理的に設計することによって、抽出物の有効成分の間の相溶性問題を解決し、老化防止の効果がより顕著になる。
本出願は、化粧品を提供することを第2目的とする。前記皺を改善する皮膚外用組成物を活性成分として化粧品に適用することによって、幅広く適用できるようになる。
本発明の上記目的を実現するために、下記の技術案を採用する。
【0006】
皺を改善する皮膚外用組成物は、アノゲイスス属抽出物14〜23重量部、ザクロ属抽出物9〜15重量部、ヤシ科抽出物4〜8重量部、及びアマドコロ抽出物3〜6重量部を含む。
アノゲイスス属抽出物は、MMPsの活性の抑制、フリーラジカルの生成の抑制等の作用を有しており、これらの効果は、主にアノゲイスス属抽出物に含有された3,3′−O−ジメチルエラグ酸、エラグ酸等の有効成分により得られるものである。さらに、出願人は、以下のことを発見した。アノゲイスス属抽出物を使用する場合に、抽出物の有効成分の水溶性に問題があるために、製品への抽出物の添加が制限されており、活性成分が良い役割を果たすことができない。しかし、アノゲイスス属抽出物がザクロ属抽出物と一緒に使用される場合、アノゲイスス属抽出物の水溶性を向上させ、より広く適用することができ、効果がより優れるようになる。また、ヤシ科抽出物を組成物に添加した場合、アノゲイスス属抽出物との相乗効果を果たすことができ、コラーゲンの分解を防ぐことができる。さらに、アマドコロ抽出物を組成物に添加した場合、アノゲイスス属抽出物の抗フリーラジカル作用を強化する作用も有する。
【0007】
好ましい実施形態では、アノゲイスス属抽出物は、14重量部、15重量部、16重量部、17重量部、18重量部、19重量部、20重量部、21重量部、22重量部、23重量部及び14〜23重量部の間の任意の重量部を取ることができる。ザクロ属抽出物は、9重量部、10重量部、11重量部、12重量部、13重量部、14重量部、15重量部及び9〜15重量部の間の任意の重量部を取ることができる。ヤシ科抽出物は、4重量部、5重量部、6重量部、7重量部、8重量部及び4〜8重量部の間の任意の重量部を取ることができる。アマドコロ抽出物は、3重量部、4重量部、5重量部、6重量部及び3〜6重量部の間の任意の重量部を取ることができる。
前記アノゲイスス属抽出物は、アノゲイススレイオカルプス樹皮抽出物(ANOGEISSUS LEIOCARPUS BARK EXTRACT)であり、前記ザクロ属抽出物は、ザクロ果皮抽出物(PUNICA GRANATUM EXTRACT)であり、前記ヤシ科抽出物は、アサイヤシ果実抽出物(EUTERPE OLERACEA FRUIT EXTRACT)であることが好ましい。
【0008】
好ましい抽出物は、組成物自身の性能を最適化且つ向上させることに寄与でき、MMPsの活性の抑制、フリーラジカルの生成の抑制、コラーゲン合成の向上作用をより強化させ、水溶性により優れ、相乗効果をより強化させることができる。
【0009】
前記皺を改善する皮膚外用組成物は、キヌガサタケ抽出物1〜5重量部を含むことが更に好ましい。
【0010】
キヌガサタケ抽出物(DICTYOPHORA INDUSIATA (MUSHROOM) EXTRACT)は、多糖類、タンパク質、アミノ酸、ビタミン、様々なミネラルを含むので、コラーゲンの生成を促進することができる。
【0011】
好ましい実施形態では、キヌガサタケ抽出物は、1重量部、2重量部、3重量部、4重量部、5重量部及び1〜5重量部の間の任意の重量部を取ることができる。
【0012】
前記皺を改善する皮膚外用組成物は、前記アノゲイススレイオカルプス樹皮抽出物18〜20重量部、前記ザクロ果皮抽出物11〜14重量部、前記アサイヤシ果実抽出物5〜7重量部、前記アマドコロ抽出物4〜5重量部、キヌガサタケ抽出物2〜4重量部を含むことが好ましい。
【0013】
各成分の使用量を最適化することによって、効果がよりよい皺を改善する皮膚外用組成物が得られる。
【0014】
前記アノゲイスス属抽出物の製造方法は、
アノゲイスス属の樹皮を粉砕し、スクリーニングしてから、第1溶媒を添加して浸漬し、浸漬された混合物に対して超音波抽出を行って、抽出液を得るステップと、
前記抽出液を濾過して濾液を得て、前記濾液に第2溶媒を添加し、攪拌しながら降温させ、結晶が析出してから沈殿物を得た後、乾燥して前記アノゲイスス属抽出物を得るステップを含むことが好ましい。
【0015】
アノゲイスス属抽出物の抽出工程を最適化することによって、得られたアノゲイスス属抽出物の有効成分の含量を向上させ、抽出工程の有効成分の損失を減少させることができるので、組成物全体の老化防止効果を確保することができる。
【0016】
粉砕する前に、アノゲイスス属樹皮を洗浄、乾燥することが好ましい。
【0017】
前記スクリーニングに使用されるスクリーンのメッシュ数は、70〜100メッシュであり、前記第1溶媒は、ジメチルスルホキシドまたはN−メチルピロリドンであり、浸漬時間は、1〜2.5hであり、固液比は、1:10〜15g/mLであることが好ましい。
【0018】
スクリーンのメッシュ数を制限することによって、粉砕されて得た材料の粒径をその後の浸漬抽出に有利な最適範囲に維持することを保証できる。また、抽出効果を確保するために、好ましい第1溶媒を選択する。発明者は、アノゲイスス属の植物樹皮の成分に対する認識及び各成分及び様々な溶媒の極性に対する分析を行って、さらに試験を通して、適合な溶媒、浸漬時間及び固液比を得た。第1溶媒は、ジメチルスルホキシドであることが最も好ましい。
【0019】
前記超音波抽出の抽出温度は、70〜90℃であり、超音波パワーは、250〜450Wであり、抽出時間は、15〜35minであることが好ましい。
抽出温度、超音波パワー及び抽出時間は、超音波で溶媒から有効成分を抽出する際の溶出速度及び溶解度を考慮するとともに、有効成分の構造を損傷しないようにその温度での安定性を考慮して選択されたものである。
【0020】
前記第2溶媒は、メタノール、エタノール及び水のうちの1つであり、前記第2溶媒と前記濾液との体積比は、1:2〜5であることが好ましい。
第2溶媒は、主に有効成分の溶解度及び降温結晶際の操作性を考慮して選択されたものである。
【0021】
前記降温速度は、2〜4℃/sであり、前記結晶の析出温度は、10〜20℃であることが好ましい。
降温速度及び結晶の析出温度の制御は、主に抽出物の純度を確保するためである。
【0022】
化粧品は、前記皺を改善する皮膚外用組成物を含む。
【0023】
本出願による皺を改善する皮膚外用組成物の有効成分の水溶性は、強くなったので、化粧品の活性成分として水、エッセンス、エマルジョン、クリーム、マスク、ゲルなどの様々な製品に適用できる。本出願による皺を改善する皮膚外用組成物の重量は、化粧品全体重量の0.01〜5.2%であることが好ましい。組成物の含有量が0.01%未満であれば、顕著な効果を有しないので、有効成分として効果を奏することができない。組成物の含有量が5.2%を超えると、製品の安定性に問題がある。
【0024】
本発明は、従来技術と比べて、以下のような有益な効果を有する。
(1)アノゲイスス属抽出物、ザクロ属抽出物、ヤシ科抽出物、アマドコロ抽出物などの4つの成分の協働作用によって、活性酸素フリーラジカルの生成の抑制、MMPs活性の抑制、コラーゲン合成の向上等の3つの手段の相乗効果を実現し、多手段で肌の皺を改善でき、老化防止の効果は顕著になる。
(2)アノゲイスス属抽出物とザクロ属抽出物とを組み合わせて使用することによって、アノゲイスス属抽出物のエラグ酸の水溶性を向上させ、組成物の効果をよりよくなり、より広く適用できる。
(3)皺を改善する皮膚外用組成物を化粧品に適用することによって、多様な適用が実現可能である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、実施例を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明するが、以下の実施例は、本発明を説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲を制限するものではないと、理解すべきである。また、具体的な条件が特定されていない実施例は、通常の条件または製造業者が推薦する条件に従って実施される。また、使用される試薬または機器は、生産業者が特定されていないものである場合、いずれも市販で購入できる通常の製品である。
なお、本出願で使用されるアサイヤシ果実抽出物、ザクロ果皮抽出物は、広州瑞誉化工科技有限公司から購入されるものであり、アマドコロ抽出物は、莱博薬粧技術(上海)股▲フン▼有限公司から購入されるものであり、キヌガサタケ抽出物は、▲ミィアォ▼森股▲フン▼有限公司から購入されるものである。アノゲイスス属抽出物は、自分で製造されたもの以外、広州市奥雪化工有限公司から購入されるものである。
【0026】
実施例1
アノゲイスス属抽出物14重量部、ザクロ属抽出物11重量部、ヤシ科抽出物4重量部及びアマドコロ抽出物6重量部を用いて、皺を改善する皮膚外用組成物を製造して得る。
【0027】
実施例2
アノゲイススレイオカルプス樹皮抽出物18重量部、ザクロ果皮抽出物9重量部、アサイヤシ果実抽出物8重量部及びアマドコロ抽出物3重量部を用いて、皺を改善する皮膚外用組成物を製造して得る。
【0028】
実施例3
アノゲイススレイオカルプス樹皮抽出物23重量部、ザクロ果皮抽出物15重量部、アサイヤシ果実抽出物5重量部及びアマドコロ抽出物4重量部を用いて、皺を改善する皮膚外用組成物を製造して得る。
【0029】
実施例4
アノゲイススレイオカルプス樹皮抽出物18重量部、ザクロ果皮抽出物11重量部、アサイヤシ果実抽出物7重量部、アマドコロ抽出物5重量部及びキヌガサタケ抽出物1重量部を用いて、皺を改善する皮膚外用組成物を製造して得る。
【0030】
実施例5
アノゲイススレイオカルプス樹皮抽出物20重量部、ザクロ果皮抽出物14重量部、アサイヤシ果実抽出物6重量部、アマドコロ抽出物4重量部及びキヌガサタケ抽出物5重量部を用いて、皺を改善する皮膚外用組成物を製造して得る。
【0031】
実施例1〜5に使用されるアノゲイスス属抽出物は、いずれも広州市奥雪化工有限公司から購入されるものである。
【0032】
実施例6
アノゲイススレイオカルプス樹皮抽出物19重量部、ザクロ果皮抽出物12重量部、アサイヤシ果実抽出物6重量部、アマドコロ抽出物4.5重量部及びキヌガサタケ抽出物3重量部を用いて、皺を改善する皮膚外用組成物を製造して得る。
【0033】
アノゲイススレイオカルプス樹皮抽出物の製造方法は、
アノゲイススレイオカルプス樹皮を粉砕してから、70メッシュのスクリーンを使用してスクリーニングし、次に1:10g/mLの固液比で第1溶媒であるジメチルスルホキシドを添加して1h浸漬するステップと、
浸漬された混合物に対して、70℃の抽出温度、250Wの超音波パワー、15minの抽出時間で、超音波抽出を行って抽出液を得るステップと、
抽出液を濾過して濾液を得て、濾液に第2溶媒であるメタノールを添加し、第2溶媒と濾液の体積比は1:2であるステップと、
2℃/sの降温速度で攪拌しながら降温させ、結晶の析出温度を20℃に制御し、結晶が析出してから濾過し、さらに遠心分離によって沈殿物を得た後、体積分率が40%であるエタノール水溶液で沈殿物を2回洗浄し、そして真空乾燥を行って、アノゲイススレイオカルプス樹皮抽出物を得るステップと、を含む。
【0034】
実施例7
アノゲイススレイオカルプス樹皮抽出物18.5重量部、ザクロ果皮抽出物13部、アサイヤシ果実抽出物6.5部、アマドコロ抽出物4部及びキヌガサタケ抽出物2重量部を用いて、皺を改善する皮膚外用組成物を製造して得る。
アノゲイススレイオカルプス樹皮抽出物の製造方法は、
アノゲイススレイオカルプス樹皮を粉砕してから、80メッシュのスクリーンを使用してスクリーニングし、次に1:12g/mLの固液比で第1溶媒であるジメチルスルホキシドを添加して2h浸漬するステップと、
浸漬された混合物に対して、80℃の抽出温度、300Wの超音波パワー、25minの抽出時間で、超音波抽出を行って抽出液を得るステップと、
抽出液を濾過して濾液を得て、濾液に第2溶媒である水を添加し、第2溶媒と濾液の体積比は1:4であるステップと、
3℃/sの降温速度で攪拌しながら降温させ、結晶の析出温度を15℃に制御し、結晶が析出してから濾過し、さらに遠心分離によって沈殿物を得た後、体積分率が40%であるエタノール水溶液で沈殿物を2回洗浄し、そして真空乾燥を行って、アノゲイススレイオカルプス樹皮抽出物を得るステップと、を含む。
【0035】
実施例8
組成物は、実施例3と同じであり、相違点は、アノゲイススレイオカルプス樹皮抽出物の製造方法である。
アノゲイススレイオカルプス樹皮抽出物の製造方法は、
アノゲイススレイオカルプス樹皮を洗浄、乾燥、粉砕してから、100メッシュのスクリーンを使用してスクリーニングし、次に1:15g/mLの固液比で第1溶媒であるN−メチルピロリドンを添加して2.5h浸漬するステップと、
浸漬された混合物に対して、90℃の抽出温度、450Wの超音波パワー、35minの抽出時間で、超音波抽出を行って抽出液を得るステップと、
抽出液を濾過して濾液を得て、濾液に第2溶媒であるエタノールを添加し、第2溶媒と濾液の体積比は1:5であるステップと、
4℃/sの降温速度で攪拌しながら降温させ、結晶の析出温度を10℃に制御し、結晶が析出してから濾過し、さらに遠心分離によって沈殿物を得た後、体積分率が40%であるエタノール水溶液で沈殿物を3回洗浄し、そして真空乾燥を行って、アノゲイススレイオカルプス樹皮抽出物を得るステップと、を含む。
【0036】
本出願による皺を改善する皮膚外用組成物は、スキンケア製品の添加剤として例えば、水、エッセンス、エマルジョン、クリーム、マスク、ゲル等の様々な化粧品に添加されることが可能である。
【0037】
比較例1
組成物は、主に、アノゲイススレイオカルプス樹皮抽出物14重量部、アサイヤシ果実抽出物4重量部、アマドコロ抽出物6重量部を含む。
【0038】
比較例2
組成物は、主に、アノゲイススレイオカルプス樹皮抽出物14重量部、ザクロ果皮抽出物11重量部、アマドコロ抽出物6重量部を含む。
【0039】
比較例3
組成物は、主に、アノゲイススレイオカルプス樹皮抽出物14重量部、ザクロ果皮抽出物11重量部、アサイヤシ果実抽出物4重量部を含む。
【0040】
実施例1〜8及び比較例1〜3で得た組成物に対して性能測定を行う。
測定1:活性酸素の生成の抑制
蛍光測定のために、96ウェルブラックプレートの各ウェルに100μLの人間角化細胞であるHaCat細胞株を添加し、2.0×10
5細胞/mLの密度で、37℃、5%の二酸化炭素のインキュベータにおいて24h培養する。次に、実施例1〜8及び比較例1〜3の組成物で細胞を処理する。組成物は、総重量の0.05%を占める。各実施例及び比較例の組成物とともに細胞を24h培養してから、HCSS(HEPES−緩衝液)で各ウェルを洗浄して残留な媒体を除去し、そして100μLの20μMのDCFH−DA(2',7'−ジクロロジヒドロフルオレセインジアセテート)のHCSS溶液を各ウェルに添加する。次に、細胞を、37℃で、5%の二酸化炭素のインキュベータで20min培養し、さらにHCSSで洗浄する。次に、実施例及び比較例と異なる組成物が含まれる100μLのHCSS溶液を各ウェルに添加し、UV−B光(30mJ/cm
2)で各ウェルを照射する。3h後、フルオロメータ(Ex=485nm、Em=530nm)で各ウェルの蛍光強度を計測し、そして6回計測して平均値を取る。ここで、対照群は、実施例及び比較例の組成物で処理されていない群である。
計測の結果は、下記の表1に示す。
【0042】
上記表1の結果から分かるように、細胞が紫外線により照射された後、細胞内の活性酸素は、紫外線により照射されない対照群の186.4%まで上昇した。細胞が本出願による皺を改善する皮膚外用組成物で処理されると、このような細胞内の活性酸素の含有量が抑制される。特に、本発明の製造方法により得られたアノゲイススレイオカルプス樹皮抽出物が添加された場合、組成物全体の活性酸素は、対照群の114.8%まで抑制された。実施例は、比較例の組成物と比べて、活性酸素の生成に対してより顕著な抑制作用を有する。
【0043】
測定2:MMP−1作用の抑制に関する分析
組成物の皺を改善する効果を評価するために、実験を通じて、組成物がMMP−1の作用を抑制できることを証明する。人間の繊維細胞(HS68細胞、ATCC(Rockville、 MD、米国)から購入)を7.5×10
4細胞/ウェルの密度でウェルプレートに入れ、10%のFBSが含まれるDMEMで24h培養してから、PBS(リン酸緩衝液)で洗浄し、さらに、その中に0.5mlのPBSを添加し、培養して得られた細胞に紫外線(UVB30mJ/cm
2)を照射してMMP−1の作用を誘導する。また、無血清のDMEMに交換された後、実施例及び比較例の組成物(質量濃度1%)によって、得られたものに対して処理する。MMP−1のELISAキットで48h培養されて得た上澄液の量を計測する。紫外線で人間の真皮繊維芽細胞HS68を処理してMMP−1の作用を増加させてから、各サンプルのそれぞれで、得られたHS68細胞を処理して、MMP−1の作用が低減されたか否かを研究する。ここで、レチノイン酸(RA、5μM、MMP−1の抑制作用を有する)を陽性対照群とする。測定結果は、表2に示す。
【0045】
表2の実験結果から分かるように、実施例1〜8の組成物によるMMP−1の作用に対する抑制効果は、比較例と比べてより顕著になり、特に本発明の製造方法で得られたアノゲイススレイオカルプス樹皮抽出物が添加された場合、本発明のMMP−1の作用に対する抑制効果は、レチノイン酸の抑制効果と近い。
【0046】
測定3:人間の皮膚細胞のコラーゲンの生合成に対する作用
24ウェル微量培養プレートで人間繊維芽細胞を培養し、これらの培養基を質量分率が1.5%である実施例及び比較例の組成物が含まれる培養基に変換する。3日間培養してから、各ウェルに10%ウシ胎児血清(FBS)が含まれる0.5mLのDMEM培養基を添加し、さらに10μCiのL[2,3,4,5−3H]−プロリンを添加する。24h後、培養基と細胞が含まれる培養プレートを傾斜させ、5%トリクロロ酢酸を添加する。次に、各サンプルをそれぞれ二つの試験管に注入し、対をなす試験管のうちの一つ試験管に1単位/μLのI型コラゲナーゼを添加し、37℃で90min培養し、他の一つは4℃で保存される。そして、各試験管にそれぞれ0.05mlの50%TCAを添加し、4℃で20min放置されてから、12000回転/分(rpm)で、各試験管のそれぞれに対して10minの遠心分離を行う。さらに、液体シンチレーションカウンタを用いて各組の上澄液と沈殿物を処理してCPM値を得てから、以下の数式1に基づいて実施例及び比較例のコラーゲン生合成値(RCB)を求める。得られた結果は、相対値であり、組成物が含まれない培養基である対照群の値を100に設定する。測定結果は、表3に示す。
【0049】
表3の実験結果から分かるように、実施例の組成物は、比較例の組成物と比べてよりよいコラーゲン生合成の促進効果を有する。
実施例1〜8及び比較例1〜3による組成物を用いてアイクリームを製造し、当該アイクリームの主な成分(重量百分率)は、下記の表4に示す。
【0051】
測定4:皮膚弾性の測定
1)実験方法:年齢が30〜45歳、皮膚が健康で損傷がない女性ボランティアを40名、男性ボランティアを20名選択する。ボランティア全体を5名ずつ、12組にランダムに分けて、それぞれ、実施例1〜8及び比較例1〜3の組成物が含まれるアイクリーム(表4ご参照)を使用する。また、実施例及び比較例の組成物が含まれていないアイクリームの対照群を設ける。被験者は、朝と夕方に洗顔をしてから、適量(大豆の大きさほど)のアイクリームを目の周りに均一に塗りつけて、さらに4週間継続使用する。実験期間内に、被験者の実験部位には他の化粧品を塗ってはならない。
【0052】
2)試験機器
皮膚弾性測定装置Cutometer MPA580 本体、Reviscometer RV600弾性繊維組織検査プローブ(ドイツCK会社)
【0053】
3)弾性測定方法:皮膚弾性測定装置Cutometer MPA580を使用してそれぞれ第0週と第4週の皮膚状態を測定し、測定部位が目尻であり、プローブで同一な位置を3回測定して平均値を取る。測定パラメータは、R2(負圧がない場合の皮膚の弾力量Uaと負圧がある場合の最大伸び量Ufの比率)であり、R2が1に近づくほど、皮膚の弾性がよいことを表明する。R2の平均変化率=R2の平均変化値/第0週のR2値。測定パラメータR5は、皮膚測定の第1回のサイクルにおける皮膚復原過程の弾性部分の変形量と負圧加圧過程の弾性部分の変形量との比率を表し、該当値が1に近づくほど、皮膚の弾性が良いことを表明する。R5の平均変化率=R5の平均変化値/第0週のR5値。具体的な皮膚弾性の測定結果は、表5に示す。
【0055】
表5のデータから分かるように、実施例1〜8の組成物が含まれるアイクリームが一定期間に使用された場合、皮膚の弾性が効果的に改善された。本発明の組成物は、非常に優れた皺改善効果を有する。
【0056】
本発明は、アノゲイスス樹皮抽出物、ザクロ果皮抽出物、アサイヤシ果実抽出物、アマドコロ抽出物を合理的に組み合わせ、科学的に配合し、この4つの成分の協働作用で、活性酸素フリーラジカルの生成の抑制、MMPs活性の抑制、コラーゲン合成の向上等の3つの手段の相乗効果を実現し、多手段で肌の皺を改善した。本発明は、ザクロ果皮抽出物とアノゲイスス樹皮抽出物を科学的に組み合わせることによって、アノゲイスス樹皮抽出物のエラグ酸の水溶性を向上させ、組成物の適用がより広くなった。本発明の抽出工程において、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドンを第1溶媒とするとともに、第2溶媒及び濾液の配合比率、降温速度及び結晶温度等を合理的に設計することによって、アノゲイスス樹皮抽出物の有効成分であるエラグ酸の含有量をより高くさせ、これが製品に使用される場合、老化防止の効果がより顕著になる。
【0057】
上記の具体的な実施例を用いて本発明を説明したが、本発明の精神及び範囲から逸脱しない限り、さらに置換、修正することができる。したがって、本発明の範囲内のすべての変化及び修正は、いずれも添付された特許請求の範囲内に属する。