【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例を挙げて詳述する。これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に制限されないことは当業者において通常の知識を有する者にとって自明である。
【0043】
実施例1:植物性ペプトン培地におけるクロストリジウム・ボツリヌス菌株の培養
1−1:培養に使用した既存培地の組成
本発明で使用された試薬および培地成分は、シグマ社(Sigma、米国)、ケリー社(Kerry Inc、米国)、BD社(BD Biosciences、米国)、Gibco社(Gibco Life Technologies、米国)およびクエスト社(Quest、米国)から購入して使用した。
【0044】
ボツリヌス毒素の産生のためのクロストリジウム・ボツリヌス菌株の種培養および本培養に利用された培地は2%カゼイン加水分解物(Casein hydrolysate)[20g/L]、1%酵母抽出物(Yeast extract)[10g/L]、1%グルコース(Glucose)[10g/L]および0.5%チオグリコール酸塩培地(Thioglycollate medium)[5g/L]の組成を有する既存培地を使用した。前記既存培地1L中チオグリコール酸塩培地5gは、2.52gカゼイン消化酵素分解物(enzymatic digest of casein)、0.84g酵母抽出物(Yeast extract)、0.925gデキストロース(Dextrose)、0.085gチオグリコール酸ナトリウム(Sodium thioglycollate)、0.42g塩化ナトリウム(NaCl)、0.085g L−システイン(L−Cystein)、0.00014gレサズリン(Resazurin)および0.125g細菌性寒天(Bacteriological agar)で構成されたものである。
【0045】
1−2:培養に使用したAPF培地の組成
クロストリジウム・ボツリヌス培養用既存培地(original media)でカゼイン加水分解物(Casein hydrolysate)、酵母抽出物(Yeast
extract)およびチオグリコール酸塩培地(Thioglycollate medium)が除去された培地(陰性対照群、negative control)、前記陰性対照群組成に植物性ペプトン候補群4種(Hy−Pea
TM 7404、UltraPep
TM Cotton、HyPep
TM 7504、HyPep
TM 4601N)が添加されたAPF培地(Animal Protein Free medium)を製造した(表1)。
【0046】
下記の表1は、既存培地対比植物性ペプトンが含まれたクロストリジウム・ボツリヌス菌株培養用APF培地の成分を示したものである。
【0047】
【表1】
【0048】
1−3:クロストリジウム・ボツリヌス菌株の種培養(seed culture)
実施例1−1および1−2の培地組成を有する10mLの滅菌された培地が入っている培養チューブ(culture tube)に20μLのクロストリジウム・ボツリヌス(疾病管理本部管理番号:4−029−CBB−IS−001)を接種して35℃で嫌気的条件で22〜30時間1次種培養(静置培養)をした。1次種培養で菌株の成長が確認されると、同じ培地組成を有する800mLの滅菌された培地が入っている1L培養ボトル(culture bottle)に8mLの1次種培養液を接種して35℃で嫌気的条件で8〜15時間2次種培養(静置培養)をした。
【0049】
1−4:クロストリジウム・ボツリヌス菌株の本培養
クロストリジウム・ボツリヌス菌株を培養してボツリヌス毒素を産生するために本培養を実施して、実施例1−1および1−2の組成で培地9.3Lを調製して、10L培養器に入れた後、培地滅菌を行った。嫌気的条件は、窒素を供給して作って、温度は35℃、撹はん速度は50rpmに設定して成長環境を維持させた。
【0050】
実施例1−3で2次種培養を完了した1L培養ボトル(culture bottle)を10L培養器の接種ポートと連結された接種線を介して10L培養器に接種した。10L培養器におけるクロストリジウム・ボツリヌス菌株は、35℃、50rpm条件で培養して、培養が進行される間培養設定条件に維持されるかを確認して記録した。100時間以上培養された時、本培養を終了した。
【0051】
クロストリジウム・ボツリヌス培養用既存培地(original media)からカゼイン加水分解物(Casein hydrolysate)、酵母抽出物(Yeast extract)およびチオグリコール酸塩培地(Thioglycollate medium)が除去された培地(陰性対照群、negative control)対比植物性ペプトン候補群4種(Hy−Pea
TM 7404、UltraPep
TM Cotton、HyPep
TM 7504、HyPep
TM 4601N)が添加されたAPF培地(Animal Protein Free medium)におけるクロストリジウム・ボツリヌス菌株の成長の可否を比較した(表1)。
【0052】
その結果、表1および
図1に示された通り、陰性対照群培地でクロストリジウム・ボツリヌス菌株は育たなく、既存培地はクロストリジウム・ボツリヌス菌株接種後24時間後に育ち、植物性ペプトンを添加した培地は、菌株接種後30時間が過ぎた後育ち始めたことが確認された。
【0053】
実施例2:植物性ペプトン、ミネラル、アミノ酸およびビタミンが添加された培地におけるクロストリジウム・ボツリヌス菌株の培養
実施例1で4種の植物性ペプトンを添加した培地で育ったクロストリジウム・ボツリヌス菌株の成長が、既存培地で培養する時より遅かったため、これの解決策を下記のように講じた。
1)嫌気性状態を作る役割をするチオグリコール酸塩(Thioglycollate)による影響を確認しようと既存培地にチオグリコール酸塩を除去して成長速度差を確認した。
2)窒素源(Nitrogen source)不足による成長速度低下である可能性があってペプトン濃度を2倍に増加させて培養した。
3)既存植物性ペプトンを含む培地にミネラル成分、アミノ酸、ビタミンを添加した培地とアラガン(Allergan)社の特許(US8,012,716)に出ているAPF培地におけるクロストリジウム・ボツリヌス菌株の成長の可否を比較した(表2)。
【0054】
下記の表2は、植物性ペプトンとミネラル、アミノ酸およびビタミンが含まれたクロストリジウム・ボツリヌス菌株培養用培地の成分を示したものである。
【0055】
【表2】
【0056】
その結果、表2および
図2に示された通り、既存培地でチオグリコール酸塩を除去して菌株を培養した場合、既存培地より育つ速度が遅く、これはチオグリコール酸塩成分が成長速度に影響を及ぼすことが確認された。ペプトンの濃度を2倍増加した場合は育たなく、ペプトンを含む培地にミネラル成分、アミノ酸およびビタミンを添加した場合は既存培地と似た速度で育つが培地滅菌後沈殿物ができることを確認して、アラガン社のAPF培地は既存培地と似た速度で成長することを確認した。
【0057】
実施例3:植物性ペプトンとミネラル、アミノ酸およびビタミンが含まれた培地の滅菌処理による沈殿物生成
実施例2でAPF培地候補群(表2:2〜4 APF培地)中植物性ペプトンとミネラル、アミノ酸およびビタミンを含む培地で既存培地と似た成長速度でクロストリジウム・ボツリヌス菌株が育つことを確認したが、培地の滅菌処理後沈殿物ができる現象が現れてそれに対する原因を把握しようとした(表3)。
【0058】
下記の表3は、滅菌処理に利用された植物性ペプトンとミネラル、アミノ酸およびビタミンが含まれたクロストリジウム・ボツリヌス菌株培養用培地の成分を示したものである。
【0059】
【表3】
【0060】
その結果、表3および
図3に示された通り、植物性ペプトンが含まれた培地にミネラルを添加した場合でだけ滅菌処理後沈殿物が形成されたので、沈殿物形成の主な原因はミネラルであることを確認した。これは、培地滅菌時高温・高圧の条件でミネラル成分間の相互作用から由来したと見た。
【0061】
実施例4:植物性ペプトンとミネラルが含まれた培地の滅菌処理による沈殿物生成
実施例3で確認された培地の滅菌処理による沈殿物形成に関与するミネラル成分を確認しようと様々な組み合わせでそれぞれ異なるミネラル成分を培地に添加した後、滅菌処理をした(表4)。
【0062】
下記の表4は、植物性ペプトンとミネラルが含まれたクロストリジウム・ボツリヌス菌株培養用培地の成分および前記培地の滅菌処理による結果を示したものである。
【0063】
【表4】
【0064】
その結果、表4および
図4に示された通り、植物性ペプトンとミネラルを含む培地中MgSO
4・7H
2OとK
2HPO
4を共に滅菌した場合と、MgSO
4・7H
2OとNa
2HPO
4を共に滅菌した場合、沈殿物ができることを確認した。
【0065】
実施例5:APF培地の沈殿物ができない条件でクロストリジウム・ボツリヌス菌株の培養
実施例4の植物性ペプトンとミネラルが含まれたAPF培地にビタミンとアミノ酸を追加で添加する場合、クロストリジウム・ボツリヌス菌株の培養が可能であるか否かを確認しようした。また、これとは別に植物性ペプトンとミネラルを排除してビタミン、アミノ酸および/または「BD Recharge
TM without Glucose and L−Glutamine」(Cat No.670002,BD bioscience)(酵母抽出物をベースに製作されたブドウ糖とL−グルタミンが排除された培地性分)を含む場合、菌株の培養が可能であるか否かも確認した(表5)。
【0066】
下記の表5は、植物性ペプトンとミネラルが含まれたクロストリジウム・ボツリヌス菌株培養用培地にビタミン、アミノ酸および酵母抽出物をベースに製作されたブドウ糖とL−グルタミンが排除された培地性分が追加で添加された培地の成分および前記培地で培養された菌株の成長速度を示したものである。
【0067】
【表5】
【0068】
その結果、表5および
図5に示された通り、植物性ペプトンとKH
2PO
4、K
2HPO
4およびNa
2HPO
4で構成されたミネラルの組み合わせを一つ以上含ませて、これにビタミンとアミノ酸を培地に添加した場合だけが、クロストリジウム・ボツリヌス菌株接種後24時間後に菌株が成長することを確認することができた。また、植物性ペプトンとミネラルを排除してビタミン、アミノ酸および酵母抽出物をベースに製作されたブドウ糖とL−グルタミンが排除された培地性分を含む場合、菌株接種後48時間後に菌株が成長することを確認した。結果的に、クロストリジウム・ボツリヌス菌株を培養するための最も適する培地組成は、植物性ペプトンとKH
2PO
4、K
2HPO
4、Na
2HPO
4、アミノ酸およびビタミンを添加したものである。
【0069】
実施例6:培地に含まれた植物性ペプトン種類に応じたクロストリジウム・ボツリヌス菌株の培養
実施例5のAPF培地に植物性ペプトンの種類を互いに異なる組み合わせで添加する場合、クロストリジウム・ボツリヌス菌株の培養が可能であるか否かを確認しようとした。
【0070】
下記の表6は、植物性ペプトンの種類に応じたクロストリジウム・ボツリヌス菌株培養用培地の成分および前記培地における菌株の成長の可否を示したものである。
【0071】
【表6】
【0072】
その結果、表6および
図6に示された通り、4種の植物性ペプトン中1種または2種だけを培地に添加するだけでもクロストリジウム・ボツリヌス菌株の培養が可能であることが確認された。
【0073】
したがって、実施例5および6の結果をまとめると、培地に植物性ペプトンは1種以上含ませるべきで、植物性ペプトンを「BD Recharge
TM without Glucose and L−Glutamine」(Cat No.670002,BD
bioscience)(酵母抽出物をベースに製作されたブドウ糖とL−グルタミンが排除された培地性分)で置き換えることができないことが分かった。
【0074】
実施例7:培地に含まれたミネラル3種中2種選別実験
実施例1〜7でクロストリジウム・ボツリヌス菌株培養用として利用されたAPF培地組成は、ブドウ糖(glucose)、塩化ナトリウム(NaCl)、植物性ペプトン4種、ミネラル成分3種、アミノ酸、ビタミンに確定して、これらの中成長に大きい影響を及ぼさない培地成分は除去して培地の種類を減少させようとした。したがって、アミノ酸とビタミンは、クロストリジウム・ボツリヌス菌株の成長に大きい影響を及ぼさないとの判断下で培地成分から除去した。また、ミネラル3種中2種を選別するために、表7のような培地組成で菌株を培養して菌株接種後24時間および48時間が過ぎた時点で、OD(540nm、600nm)を測定してその値を比較した。
【0075】
下記の表7は、1次ミネラル選別による培地の組成および前記培地を利用したクロストリジウム・ボツリヌス菌株の成長を示したものである。
【0076】
【表7】
【0077】
その結果、表7に示された通り、菌株接種後24時間基準では、既存培地はOD(540nm)が0.942を示し、APF培地中K
2HPO
4とNa
2HPO
4を含む場合OD(540nm)が4.964と最も高い値を示した。また、菌株接種後48時間基準では、KH
2PO
4とNa
2HPO
4を添加した場合、最も高いOD値を示して菌株成長が旺盛であることが確認された。
【0078】
一方、
図7に示された通り、主効果が大きいK
2HPO
4とNa
2HPO
4に対してcontour plotを作成した。その結果、K
2HPO
4とNa
2HPO
4が共に増加するほどOD値が増加する傾向を示した。また、クロストリジウム・ボツリヌス菌株が最大成長を示す条件は、KH
2PO
4=0g/L、K
2HPO
4=5.5g/L、Na
2HPO
4=5g/Lとミネラルが培地に添加される時であることが分かった。
【0079】
一方、より正確なミネラル添加による菌株培養の結果確認のために、反応表面法で2次実験を進めた。培地組成が負の値を有することができなのでCCF(Central composite faced)デザインで設計して実験を表8のような培地組成で菌株を培養して実験を行った後、先に行ったFFD結果と合わせて統計分析を行った。
【0080】
下記の表8は、2次ミネラル選別による培地の組成および前記培地を利用したクロストリジウム・ボツリヌス菌株の成長を示したものである。
【0081】
【表8】
【0082】
Contour plotsを描いて比較した結果、
図8に示された通り、KH
2PO
4が少ないほどOD値が増加して、最適条件を比較すると曲律効果によってFFDの結果と差を見せて、K
2HPO
4の値は同じであるが、Na
2HPO
4の値が5g/Lから3.1313g/Lに変わった。したがって、統計分析よる培地の最適なミネラル条件は、K
2HPO
4 5.5g/L、Na
2HPO
4 3g/Lと確定した。
【0083】
実施例8:培地に含まれた植物性ペプトン選別実験
表9および表10に示された通り、混合物設計に従って植物性ペプトンを組み合わせてクロストリジウム・ボツリヌス菌株の成長を確認した。
【0084】
下記の表9は、1次植物性ペプトン選別による培地の組成および前記培地を利用したクロストリジウム・ボツリヌス菌株の成長を示したものである。
【0085】
【表9】
【0086】
下記の表10は、2次植物性ペプトン選別による培地の組成および前記培地を利用したクロストリジウム・ボツリヌス菌株の成長を示したものである。
【0087】
【表10】
【0088】
その結果、
図9に示された通り、Contour plotsを描いて分析した結果、成分Cに該当するHyPep
TM 7504がクロストリジウム・ボツリヌス菌株の成長に最も影響を及ぼすことができないと判断されて培地成分から除外させた。結果的に、培地に含まれる最終選別された植物性ペプトンの組成は、Hy−Pea
TM 7404 5g/L、UltraPep
TM Cotton 10g/LおよびHyPep
TM 4601N 5g/Lと決めた。
【0089】
実施例9:培地にNaCl添加有無によるクロストリジウム・ボツリヌス菌株の培養
実施例1〜8で使用された培地組成中NaClの濃度は0.5g/Lで少量添加された。NaClの濃度によるクロストリジウム・ボツリヌス菌株の成長を調べようと培地のNaCl添加量を0〜1g/Lに調節した後、前記菌株を培養した。
【0090】
下記の表11は、NaClが添加されたクロストリジウム・ボツリヌス菌株培養用培地の成分および前記培地におけるクロストリジウム・ボツリヌス菌株の成長を示したものである。
【0091】
【表11】
【0092】
その結果、表11に示された通り、NaCl添加有無による成長の差がなかった。したがって、NaClを最終APF培地成分から除去した。
【0093】
実施例10:最終選別されたAPF培地で育ったクロストリジウム・ボツリヌス菌株の成長パターンおよび毒素濃度測定
実施例1〜9に基づいて組成された最終選別されたクロストリジウム・ボツリヌス菌株培養用培地(ブドウ糖10g/L、Hy−Pea
TM 7404 5g/L、UltraPep
TM Cotton 10g/L、HyPep
TM 4601N 5g/L、K
2HPO
4 5.5g/L、Na
2HPO
4 3g/L)にクロストリジウム・ボツリヌス菌株を接種した後、菌株の成長パターンと毒素濃度を測定した。
【0094】
下記の表12は、最終選別されたAPF培地で育ったクロストリジウム・ボツリヌス菌株の時間別OD値および毒素(toxin)濃度を示したものである。
【0095】
【表12】
【0096】
その結果、表12および
図10に示された通り、クロストリジウム・ボツリヌス菌株培養12時間後からOD値が増加し始めて培養24時間が経過した時点でOD
540nmが3.5465、OD
600nmが3.0695を示した。また、その後OD値が徐々に減少して48時間が経過した時点ではOD
540nmが0.792、OD
600nmが0.7224を示した。クロストリジウム・ボツリヌス毒素の上澄み液中の毒素濃度は培養5時間後から増加して最終31.41μg/mlの値を示して、菌株を破砕して測定した場合、培養5時間後から毒素が生成され始めて継続して毒素量が増加して28時間後からは似た量の毒素濃度が測定されて最終38.39μg/mlの値を示した。
【0097】
結果的に、実施例1〜10の結果で最終選別されたAPF培地(Animal Protein Free medium)組成は下記の表13に示された通りである。
【0098】
【表13】
【0099】
実施例11:植物性ペプトン及びカゼイン加水分解物が添加された培地組成選別
実施例1〜10を介して確立されたAPF培地組成でも、既存培地比向上された菌株の成長率を示したが、菌株の成長率をさらに向上させながらもTSEなどの感染の恐れがない培地成分の添加を考慮し、その結果、TSE−フリー(TSE−free)なカゼイン加水分解物(例えば、TSE−Certificated casein hydrolysate)をAPF培地に添加して菌株の成長を調べることにした。
【0100】
実施例1〜10で確立されたAPF培地に2種のTSE感染の恐れがないカゼイン加水分解物を1種または2種添加した。つまり、植物性ペプトンを含有する培地組成物にカゼイン加水分解物であるNZ−Amine Aを含むA培地、またはNZ−Case TTを含むB培地、またはカサミノ酸(Casamino acid)を含むC培地、またはトリプトン(Tryptone)を含むD培地を利用して、クロストリジウム・ボツリヌス菌株を24時間、48時間培養する中でOD(540nm、600nm)値を測定し、菌株の成長を調べてみた(表14)。また、前記結果は、統計プログラムを利用して統計分析を行って、菌株培養24時間経過時の最大の成長を示す培地組成選別した。
【0101】
下記の表14は、カゼイン加水分解物が添加された植物性ペプトンを含有する培地組成物におけるクロストリジウム・ボツリヌス菌株の経時的な成長を確認したものである。
【0102】
【表14】
【0103】
一方、
図11に示された通り、菌株培養24時間経過時の最大成長を示す条件を調べるためにLower bound settingとmiddle setting条件に対してmixture contour plotsをそれぞれ描いてみた結果、A培地とB培地が存在してC培地とD培地が0の値を示す領域でボツリヌス菌株が最大成長を示すことが分かった。また、
図12に示された通り、菌株の最大成長を示す条件を調べたところ、A=0.8725、B=1.1275、C=0、D=0である条件で、最大の菌株の成長を示すことが確認された。結果的に、前記の結果を基に、4種の培地成分の中でA培地(N−Z−Amine A)とB培地(N−Z−Case T)を最終選別した。
【0104】
実施例12:植物性ペプトン及びカゼイン加水分解物が添加された培地の濃度の最終選別
実施例11で選別された2種のカゼイン加水分解物培地成分について最適培地条件を調べるために、CCF(Central composite faced)デザインで反応表面法実験を行った。
【0105】
下記の表15は、CCF反応表面法を利用して、カゼイン加水分解物が添加された植物性ペプトンを含有する培地組成物におけるクロストリジウム・ボツリヌス菌株の経時的な成長を確認したものである。
【0106】
【表15】
【0107】
その結果、表15に示された通り、クロストリジウム・ボツリヌス菌株の成長の結果を確認した。
【0108】
一方、統計プログラムを利用して樹立したモデルのcontour plotを描いてみた結果、
図13(A)に示された通り、A培地成分が実験の範囲外に増加して、最適条件があることを確認した。また、これを確認するために、統計プログラムを利用して、A培地成分(NZ−Amine A)の範囲を実験の範囲外にまで拡張してcontour
plotを描いてみた結果、
図13(B)に示された通り、A培地成分が増加するほど菌株の成長が増加することを確認した。但し、カゼイン加水分解物の含量が増加すると溶解度(solubility)に問題が発生し得るため、実験条件の中で最適の条件を探そうとした。
【0109】
その結果、菌株が24時間で最大成長が出る条件は、A=2.0、B=1.1402で出てきて、この結果を基に、APF培地(Animal Protein Free medium)にカゼイン加水分解物が添加されたクロストリジウム・ボツリヌス菌株の成長を最大にする培地組成を表16の通り確定した。
【0110】
【表16】
【0111】
実施例13:植物性ペプトン及びカゼイン加水分解物が添加された培地におけるクロストリジウム・ボツリヌス菌株の成長パターン
実施例1〜10に係る方法で植物性ペプトン及び/またはカゼイン加水分解物が添加された培地組成物を利用して、クロストリジウム・ボツリヌス菌株を培養して菌株の成長パターンを調べた。
【0112】
下記の表17は、既存培地、植物性ペプトンが添加された培地(APF培地)、または植物性ペプトン及びカゼイン加水分解物が添加された最終培地(APF培地+カゼイン)におけるクロストリジウム・ボツリヌス菌株の成長を時間別OD値で比較したものである。
【0113】
【表17】
【0114】
その結果、表17及び
図15に示された通り、既存培地は、クロストリジウム・ボツリヌス菌株培養24時間後から成長速度が増加して、培養39時間経過時に最大値であるOD
540nm 3.384を示して、植物性ペプトンを含む培地(APF培地)は、培養18時間後から成長率が増加して培養28時間経過時に最大値OD
540nm 3.526を示した。
【0115】
また、植物性ペプトンが含まれた培地にカゼイン加水分解物を添加した場合、培養18時間から成長速度が増加して、培養26時間に最大値であるOD
540nm 5.628を示した。したがって、24時間経過した時点で、OD
540nm値を比較した時、既存培地で培養した場合、1.2382を示し、植物性ペプトンが含まれている培地の場合は2.8595、植物性ペプトンが含まれた培地にカゼイン加水分解物を添加した場合は5.244を示した。したがって、植物性ペプトンとカゼイン加水分解物が含まれた培地のOD値が既存培地より24時間基準で約4.23倍、植物性ペプトンが含まれた培地より約1.83倍高いことが示された。また、最大OD値で比較すると、植物性ペプトンとカゼイン加水分解物が含まれた培地は、植物性ペプトンが含まれた培地より約1.6倍高いことが確認された。