特許第6887498号(P6887498)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6887498ステアリング伝動機構およびステアリングシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6887498
(24)【登録日】2021年5月20日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】ステアリング伝動機構およびステアリングシステム
(51)【国際特許分類】
   B62D 5/04 20060101AFI20210603BHJP
   F16H 1/16 20060101ALI20210603BHJP
   F16C 35/077 20060101ALI20210603BHJP
   F16C 19/06 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   B62D5/04
   F16H1/16 Z
   F16C35/077
   F16C19/06
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-527878(P2019-527878)
(86)(22)【出願日】2017年10月6日
(65)【公表番号】特表2019-536686(P2019-536686A)
(43)【公表日】2019年12月19日
(86)【国際出願番号】EP2017075517
(87)【国際公開番号】WO2018095639
(87)【国際公開日】20180531
【審査請求日】2019年5月23日
(31)【優先権主張番号】102016122644.0
(32)【優先日】2016年11月24日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】イェンス−ウーヴェ ハーファーマルツ
(72)【発明者】
【氏名】デニス フュクセル
【審査官】 鈴木 貴晴
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0272765(US,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第00270159(EP,A2)
【文献】 特開2009−287647(JP,A)
【文献】 特開2000−240764(JP,A)
【文献】 特開2003−074676(JP,A)
【文献】 特表2016−522874(JP,A)
【文献】 特開2012−154432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 5/04
F16C 19/06
F16C 35/077
F16H 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のステアリングシステム用のステアリング伝動機構であって、
ハウジング(1)と、
歯車(2)と、
前記歯車(2)と噛み合うピニオン(3)と、
前記ピニオン(3)を有するピニオン軸(4)と、
を備え、
前記ピニオン軸(4)は、前記ピニオン(3)の一方の側において固定式軸受(6)内に支持されており、前記固定式軸受(6)は、前記ピニオン軸(4)を受ける回転軸受を有し、前記固定式軸受(6)の前記回転軸受は、軸受スリーブ(14)内に収容されており、前記固定式軸受(6)は、さらに旋回リング(15)を有し、前記旋回リング(15)は、外リング(18)と内リング(16)とを有し、前記外リング(18)と前記内リング(16)とは、単数または複数のねじりウェブ(19)を介して旋回可能に互いに結合されており、前記内リング(16)は、前記軸受スリーブ(14)に結合されているか、または前記軸受スリーブ(14)に組み込まれており、前記外リング(18)は、前記ハウジング(1)内に固定されて配置されており、
前記ピニオン軸(4)は、前記ピニオン(3)の他方の側において浮動式軸受(8)内に支持されており、前記浮動式軸受(8)は、前記ピニオン軸(4)を受ける回転軸受を有し、前記回転軸受のために前記ハウジング(1)内での半径方向の可動性が保証されている、
ステアリング伝動機構において、
前記軸受スリーブ(14)および前記固定式軸受(6)の前記回転軸受の外側の軸受レース(11)は、結合要素(36)を介して前記浮動式軸受(8)の前記回転軸受の外側の軸受レース(11)に結合されており、
前記結合要素(36)は、前記固定式軸受(6)の前記回転軸受の外側の軸受レース(11)を傾倒させる負荷を直接的または間接的に前記浮動式軸受(8)の前記回転軸受の外側の軸受レース(11)に伝達するように形成されており、
前記固定式軸受(6)の前記旋回リング(15)の前記ねじりウェブ(19)のねじりから結果として生じる弾性的な戻しモーメントは、前記固定式軸受(6)の前記軸受スリーブ(14)と、前記軸受スリーブ(14)に結合される前記結合要素(36)とを介して結合される前記浮動式軸受(8)に伝達されることを特徴とするステアリング伝動機構。
【請求項2】
前記結合要素(36)は、少なくとも部分的に管形に形成されていることを特徴とする、請求項1記載のステアリング伝動機構。
【請求項3】
前記結合要素(36)は、前記固定式軸受(6)の前記軸受スリーブ(14)と一体に形成されていることを特徴とする、請求項1または2記載のステアリング伝動機構。
【請求項4】
前記結合要素(36)は、前記軸受スリーブ(14)と1ピースに形成されていることを特徴とする、請求項3記載のステアリング伝動機構。
【請求項5】
前記結合要素(36)は、前記軸受スリーブ(14)と同一材料で形成されていることを特徴とする、請求項4記載のステアリング伝動機構。
【請求項6】
前記浮動式軸受(8)の軸受ブシュ(13)は、前記回転軸受を収容する内ブシュ(24)と、前記内ブシュ(24)を包囲し、前記ハウジング(1)内に固定されて配置される外ブシュ(25)とを有し、前記外ブシュ(25)と前記内ブシュ(24)とは、環状間隙(29)を画定し、前記外ブシュ(25)と前記内ブシュ(24)とは、半径方向の少なくとも一方向で互いに相対的に可動であるように、フレキシブルな結合区間(26)を介して互いに結合されていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載のステアリング伝動機構。
【請求項7】
前記浮動式軸受(8)の前記回転軸受は、前記結合要素(36)の一部区間内に支持され、かつ前記結合要素(36)の一部区間は、前記浮動式軸受(8)の前記軸受ブシュ(13)内に支持されていることを特徴とする、請求項記載のステアリング伝動機構。
【請求項8】
前記軸受スリーブ(14)および/または前記結合要素(36)は、金属から形成され、かつ/または前記軸受ブシュ(13)は、プラスチックまたはエラストマーから形成されていることを特徴とする、請求項または記載のステアリング伝動機構。
【請求項9】
前記固定式軸受(6)の前記回転軸受および/または前記浮動式軸受(8)の前記回転軸受は、単列のラジアル玉軸受(9)として形成されていることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のステアリング伝動機構。
【請求項10】
請求項1からまでのいずれか1項記載のステアリング伝動機構と、回転駆動するように前記ステアリング伝動機構の前記ピニオン軸(4)に接続されるステアリングモータとを備えるステアリングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングシステム用のステアリング伝動機構および自動車用の相応のステアリングシステム、特にパワーステアリングシステムに関する。
【0002】
大抵の自動車には、操舵時にアシストするトルクを発生させ、これにより、ドライバがステアリングコラムに加えねばならない操舵モーメントを減少させるパワーステアリングシステムが搭載される。
【0003】
公知のパワーステアリングシステムは、液圧式または電気式のステアリングモータの駆動出力を変換して、例えばステアリングコラムに伝達するステアリング伝動機構を基礎としている。この種のステアリング伝動機構は、ねじ転がり運動型伝動機構(Schraubwaelzgetriebe)の形態で、特にねじ歯車伝動機構またはウォーム伝動機構として形成されていることがある。而してこの種のステアリング伝動機構は、直接的または間接的にステアリングコラムに結合されていてもよい歯車と、この歯車と噛み合う、軸を介してステアリングモータにより駆動されるピニオンとを備えている。
【0004】
この種のステアリング伝動機構における問題は、部品公差、伝動機構要素のそれぞれ異なる熱膨張および/または摩耗に基づいて形成される伝動機構遊びにあることが判っている。特に「切り換え操舵(Wechsellenken)」時、すなわち、操向方向の切り換えを伴った直接的に連続する操舵時に、このような伝動機構遊びは、ピニオンおよび歯車の歯の向かい合う歯面の歯当たりが切り換わる結果として生じる望ましくないノイズを発生させる。
【0005】
ピニオン軸の長手方向軸線に対して垂直にかつピニオンと歯車との歯列係合部に対して間隔を置いて延びる軸線回りにピニオン軸を旋回可能に支持し、単数または複数のばね要素により歯車に対して押し付けることによって、このような伝動機構遊びをできる限りなくすことが公知である。その際、ピニオン軸の旋回可能性は、通例、ピニオン軸を端部側で支持している2つの支持部の一方に組み込まれる。この支持部は、「固定式軸受」という。そして他方の端部の領域における支持部は、旋回運動により引き起こされる変位を可能とすべく、所定の遊びを有して構成されている(いわゆる「浮動式軸受」;例えば独国特許出願公開第102005035020号明細書参照)。固定式軸受は、通例、駆動側に設けられている一方、浮動式軸受は、ピニオン軸の自由端部に設けられている。その際、ピニオンを歯車に圧接させる上述の単数または複数のばね要素は、浮動式軸受に組み込まれていても、固定式軸受に組み込まれていてもよい。
【0006】
このようなステアリング伝動機構のうち、弾接用のばね力を固定式軸受により発生させるステアリング伝動機構は、例えば独国特許出願公開第102009054655号明細書において公知である。このステアリング伝動機構の場合、ピニオン軸を固定式軸受の領域で受ける玉軸受を、その外側では、旋回スリーブ内に支持している。旋回スリーブは、玉軸受を略遊びなしに収容する軸受スリーブと、略遊びなしにステアリング伝動機構のハウジングの収容部内に保持された外リングとを有し、外リングと軸受スリーブとは、複数のねじりウェブを介して結合されており、ねじりウェブは、外リングが軸受スリーブに対して回動する際にねじられる。ステアリング伝動機構の組み立て後、ねじりウェブは、ねじられており、これにより生成される弾性的な戻し作用がピニオン軸の弾接を引き起こすようになっている。
【0007】
独国特許出願公開第102009054655号明細書によるステアリング伝動機構の場合、ピニオン軸を歯車に対して押し付けるために、弾性的にねじられたねじりウェブの戻しモーメントは、玉軸受を介してピニオン軸に伝達される。玉軸受を介した戻しモーメントの伝達は、玉軸受の、軸受スリーブ内に支持される外側の軸受レースと、ピニオン軸を受ける内側の軸受レースとに荷重を加えるに至り、この荷重は、玉軸受の長手方向軸線に関して半径方向に方向付けられた軸線回りにこれらのコンポーネントを傾倒させてしまうことがある。この荷重は、軸受レースと協働して玉軸受の玉により支持されねばならない。このことは、特に独国特許出願公開第102009054655号明細書に則して玉軸受を単列のラジアル玉軸受として形成した場合、玉軸受を比較的大きく寸法設定することを招き、比較的大きな寸法設定は、全体として比較的大きく、しかも重いステアリング伝動機構につながってしまう。しかし、比較的大きなステアリング伝動機構は、困難を伴ってのみ自動車に組み込むことが可能であるか、または自動車への組み込みにとって少なくとも不利である。さらに、比較的重いステアリング伝動機構は、基本的に努められている自動車の軽量化に逆行するものである。
【0008】
本発明の根底にある課題は、基本的には独国特許出願公開第102009054655号明細書において公知であるようなステアリング伝動機構を、大きさに関して、ひいてはステアリング伝動機構を自動車に組み込むのに必要な組み込みスペースに関して改良することあるいは小型化することである。
【0009】
上記課題は、請求項1記載のステアリング伝動機構により解決される。このようなステアリング伝動機構を備えるステアリングシステムは、請求項10の対象である。本発明に係るステアリング伝動機構、ひいては本発明に係るステアリングシステムの有利な構成は、従属請求項の対象であるかつ/または本発明の以下の説明から看取可能である。
【0010】
本発明により、自動車のステアリングシステム用のステアリング伝動機構であって、ハウジングと、歯車と、歯車と噛み合うピニオン、特にねじピニオンと、ピニオンを有する(ねじ)ピニオン軸と、を備えるステアリング伝動機構を形成する。
【0011】
ピニオン軸は、ピニオンの一方の側において固定式軸受内に支持されており、固定式軸受は、回転軸受を有し、固定式軸受の回転軸受内にピニオン軸は、受けられている。このために回転軸受は、少なくとも内側の軸受レースと、外側の軸受レースと、場合によっては、好ましくは転がり軸受、特に玉軸受として構成されている場合、軸受レース間に配置される複数の転動要素、特に玉とを有し、ピニオン軸は、回転軸受の内側の軸受レース内に受けられている。固定式軸受の回転軸受、特にその外側の軸受レースは、さらに軸受スリーブ内に収容されている。加えて固定式軸受は、旋回リングを有し、旋回リングは、外リングと内リングとを有し、外リングと内リングとは、単数または複数のねじりウェブを介して旋回可能に互いに結合されており、内リングは、軸受スリーブに結合されているか、または軸受スリーブの一体の構成部材であり、外リングは、ステアリング伝動機構のハウジング内に固定されて(少なくとも一方向、好ましくはすべての方向に関して、すなわち不動に)配置されている。
【0012】
さらに本発明に係るステアリングシステムのピニオン軸は、ピニオンの他方の側において浮動式軸受内に支持されており、浮動式軸受は、回転軸受を有し、浮動式軸受の回転軸受内にピニオン軸は、受けられており、回転軸受(ひいては回転軸受内に収容されるピニオン軸の端部)のためにハウジング内での半径方向の可動性が保証されている。好ましくは、回転軸受、特にその外レースは、ハウジング内に支持された軸受ブシュ内に収容されていて、軸受ブシュは、ハウジング内での回転軸受の半径方向の可動性を保証するようにしてもよい。このような浮動式軸受は、例えば独国特許出願公開第102005035020号明細書に記載の構成を有していてもよい。特に浮動式軸受の軸受ブシュは、回転軸受を収容する内ブシュと、内ブシュを包囲し、ハウジング内に固定されて配置される外ブシュとを有し、外ブシュと内ブシュとは、環状間隙を画定し、外ブシュと内ブシュとは、半径方向の少なくとも一方向で互いに相対的に可動であるように、フレキシブルな結合区間を介して互いに結合されているようにしてもよい。本発明に係るステアリング伝動機構の浮動式軸受の回転軸受は、少なくとも内側の軸受レースと、外側の軸受レースと、場合によっては、好ましくは転がり軸受、特に玉軸受として構成されている場合、軸受レース間に配置される複数の転動要素、特に玉とを有し、ピニオン軸は、内側の軸受レース内に受けられており、外側の軸受レースは、特に直接的に浮動式軸受の軸受ブシュの内ブシュ内に収容されている。
【0013】
このようなステアリングシステムは、本発明により、軸受スリーブおよび/または固定式軸受の回転軸受の外側の軸受レースが、単一部材のまたは複数の部分からなる結合要素を介して浮動式軸受の回転軸受の外側の軸受レースに直接的または間接的に(例えば浮動式軸受の軸受ブシュ、特にこのような軸受ブシュの内ブシュを介して)結合されていることを特徴とする。その際、結合要素は、少なくとも固定式軸受の回転軸受の外レースを傾倒させる負荷を直接的または間接的に浮動式軸受の回転軸受の外レースに伝達するように形成されている。
【0014】
基本的には独国特許出願公開第102009054655号明細書において公知のこの種のステアリング伝動機構を本発明のように発展させたことで、固定式軸受の旋回リングの、弾性的にねじられたねじりウェブの戻しモーメントが、ピニオン軸を歯車に対して押し付けるために、もはや固定式軸受の回転軸受を介してのみピニオン軸に伝達されるのではなく、固定式軸受の軸受スリーブの、戻しモーメントから生じる旋回負荷が、付加的にあるいは主に結合要素を介して浮動式軸受の回転軸受、ひいてはこの回転軸受内に支持されるピニオン軸の端部に伝達されることが達成される。固定式軸受と浮動式軸受との間に配置されている歯車とピニオンとの間の接触部との関連で、ねじられたねじりウェブの戻しモーメントに基づく、略半径方向に方向付けられた回転軸受の負荷が生じる。それゆえ、ねじりウェブのこの戻しモーメントに基づく有意な高さの傾倒モーメントを、回転軸受、特に固定式軸受の回転軸受からピニオン軸に伝達することは、行われていない。このことは、固定式軸受の回転軸受および/または浮動式軸受の回転軸受を比較的小さく寸法設定することを有利な形式で可能にし、このことは、本発明に係るステアリング伝動機構の大きさおよび重量ならびに製造コストに関してポジティブに作用し得る。さらに、構造的な観点で比較的簡単に構成される回転軸受、好ましくは単列のラジアル玉軸受を、固定式軸受および/または浮動式軸受のために選択することができ、このことは、同じく本発明に係るステアリング伝動機構の大きさおよび重量ならびに製造コストに関してポジティブに作用し得る。
【0015】
軸受ブシュ内での浮動式軸受の回転軸受の支持に代えて、例えば浮動式軸受の回転軸受あるいはその外レースが(専ら)結合要素内で支持されており、これにより結合要素によってピニオン軸の旋回が案内されるようにしてもよい。この場合は、ハウジングの所定のストッパが、浮動式軸受の回転軸受あるいはこの回転軸受を収容する結合要素の端部の半径方向の可動性を制限することができる。
【0016】
本発明に係るステアリング伝動機構の好ましい一構成形態において、結合要素は、少なくとも部分的に管形に形成されているようにしてもよい。特に結合要素は、その長さ全体にわたって管形に形成されており、その際、ピニオン軸を包囲し、ピニオンの領域に配置される(好ましくは単一の)(貫通)開口が、結合要素の管側面に設けられており、開口は、管側面の周の一部および長さの一部にわたって延在し、歯車とピニオンの係合を可能にするようにしてもよい。このような管形の結合要素は、比較的(特に部品重量に関して比較的)高い曲げ剛性を示し、この比較的高い曲げ剛性は、旋回負荷を軸受スリーブおよび/または固定式軸受の回転軸受の外側の軸受レースから浮動式軸受に有利に伝達することを可能にする。
【0017】
本発明に係るステアリング伝動機構の、特に製造技術的な理由から有利な一構成形態において、結合要素は、軸受スリーブと一体(インテグラル)に(すなわち、少なくとも直接的に互いに結合されて)、好ましくは1ピースに(すなわち、別個の結合要素を介して互いに結合されずに)、特に同一材料で、形成されているようにしてもよい。
【0018】
特に本発明に係るステアリング伝動機構のこのような一構成において、この場合、さらに浮動式軸受の回転軸受は、結合要素の一部(端部)区間内に支持され、結合要素の(同じまたは別の一部)区間は、浮動式軸受の軸受ブシュ内に直接的または間接的に支持されているようにしてもよい。これにより、特にこのような本発明に係るステアリング伝動機構の比較的良好な組み立て可能性を得ることができる。
【0019】
本発明に係るステアリング伝動機構、特に前述の一方または両方の構成形態による本発明に係るステアリング伝動機構の有利な一発展形は、結合要素が(好ましくは固定式軸受の軸受スリーブも)、金属から形成され、かつ/または軸受ブシュが、プラスチック、特に熱可塑性のプラスチック、またはエラストマーから形成されていることを特徴としていてもよい。結合要素を金属で構成したことで、結合要素に関して、比較的低い製造コストで有利な負荷容量、ひいては軸受スリーブおよび/または固定式軸受の回転軸受の外側の軸受レースから浮動式軸受への旋回負荷の有利な伝達が実現され得る。これに対して、軸受ブシュをプラスチックから構成したことは、特に運転中のステアリング伝動機構のノイズ特性に関してポジティブである点で優れている。
【0020】
本発明に係るステアリング伝動機構の代替的な構成も、同じく可能である。例えば結合要素は、(代替的または付加的に)回転軸受の外側の軸受レースまたは軸受ブシュ(特に軸受ブシュのために好ましくは設けられている内ブシュ)と一体に、1ピースにかつ/または同一材料で形成されていてもよい。同じく固定式軸受の回転軸受は、結合要素の一部区間内に支持され、結合要素の一部区間/この区間は、固定式軸受の軸受スリーブ内に支持されているようにしてもよい。
【0021】
本発明に係るステアリングシステムは、少なくとも1つの本発明に係るステアリング伝動機構と、回転駆動するようにピニオン軸に接続されるステアリングモータとを備えている。ステアリング伝動機構の歯車は、さらに相対回動不能にまたは回転駆動するようにステアリングシステムのステアリングシャフト、特にステアリングコラムに結合されていることができる。本発明に係るステアリングシステムは、特にパワーステアリングシステムとして形成されていることができ、パワーステアリングシステムの場合、ステアリングモータによって、アシストするトルクを発生させることができるので、パワーステアリングシステムを有する自動車のドライバが自動車の操舵のためにステアリングコラムに加えねばならない操舵モーメントは、(場合によっては一時的にゼロにまで)減じられている。これに代えて、(特に、(そもそもそれがまだ設けられているのであれば)ステアリングハンドルと、操舵可能なホイールとの間の機械的な結合関係が存在しないステアリングシステムあるいは自動車のいわゆるステアバイワイヤ機能のために)ステアリングモータによって(常に)、操舵のために必要なすべての操舵モーメントを発生させるように、ステアリングシステムを形成する可能性もある。
【0022】
本発明は、本発明に係るステアリングシステムを備える自動車にも関する。
【0023】
特に特許請求の範囲、および特許請求の範囲を一般的に説明している明細書中に含まれる不定冠詞(「ein」、「eine」、「einer」および「eines」)は、不定冠詞と解すべきであって、数詞と解すべきではない。これにより、相応にこれらの不定冠詞を伴って記したコンポーネントは、当該コンポーネントが少なくとも1つあり、それが複数あっても構わないと解すべきである。
【0024】
本発明について、以下に図面に示した一実施例を基に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明に係るステアリング伝動機構の縦断面図である。
図2図1に示したステアリング伝動機構の固定式軸受と、固定式軸受に組み込まれた結合要素との斜視図である。
図3図2に示した結合要素が組み込まれた固定式軸受の縦断面図である。
図4図1に示したステアリング伝動機構の浮動式軸受の軸受ブシュの横断面図である。
【0026】
図1は、本発明に係るステアリング伝動機構の主要な構成部材を示している。ステアリング伝動機構は、ハウジング1を備え、ハウジング1内には、歯車2と、歯車2と噛み合うねじピニオンの形態のピニオン3とが回転可能に配置されている。ピニオン3と、ピニオン3を有する(ねじ)ピニオン軸4とは、ウォームの形態で一体に形成されている。
【0027】
歯車2は、ステアリング伝動機構の被動軸5(図1参照)に堅固に取り付けられている。図示の構成例では、歯車2に相対回動不能に確実に結合すべく歯列を有したこの被動軸5は、例えば少なくとも一部区間においてラックとして形成されるステアリングロッドと噛み合うことができ、これにより、ラックは、並進運動を実施し、この並進運動は、公知の形式でホイールステアリングレバー(図示せず)を介して自動車の操舵可能なホイール(図示せず)の旋回運動に変換され得る。しかし、被動軸5は、パワーステアリングシステムの、ステアリングホイールに結合されていて、ステアリングピニオンを介してステアリングロッドに作用するステアリングコラムであってもよい。
【0028】
ピニオン軸4は、駆動側の端部を有し、駆動側の端部を介してピニオン軸4は、ステアリングモータ(図示せず;例えば電気モータ)の被動軸に結合可能である。この駆動側の端部の領域でピニオン軸4は、第1の支持部によりハウジング1内に支持されている。この支持部は、旋回軸線7(図2参照)回りのピニオン軸4の旋回を許容する固定式軸受6として形成されている。この旋回は、ピニオン軸4の、駆動側の端部とは反対側の端部の変位を引き起こす。ピニオン軸4は、駆動側の端部とは反対側の端部で、浮動式軸受8によりハウジング1の対応する収容部内に支持されている。この浮動式軸受8は、ピニオン軸4の旋回から生じるこの端部の変位を許容するように形成されている。
【0029】
固定式軸受6も、浮動式軸受8も、玉軸受9の形態のそれぞれ1つの回転軸受を有している。これらの玉軸受9の内側の軸受レース10内には、ピニオン軸4の対応する区間が支持されている一方、玉軸受9の外側の軸受レース11は、それぞれ1つの軸受装置12,13内に支持されている。軸受装置12,13は、他方、ハウジング1の対応する収容部内に収容されている。軸受装置12,13は、構造的に、固定式軸受6では、旋回軸線7回りのピニオン軸4の旋回を可能にし、浮動式軸受8では、ピニオン軸4の自由端部の変位を可能にするように形成されている。
【0030】
このために固定式軸受6の軸受装置12は、円環形の横断面を有する軸受スリーブ14を有し、軸受スリーブ14は内側に、第1の長手方向区間において対応する玉軸受9を収容し、第2の長手方向区間において旋回リング15の内リング16を収容している。旋回リング15のこの内リング16は、支持ディスク17を介在させて相対回動不能にかつ軸方向では止められて軸受スリーブ14内に支持されている。内リング16は、固定式軸受6の玉軸受9の外側の軸受レース11に支持されている。旋回リング15は、内リング16の他にさらに外リング18を有している。外リング18は、2つのねじりウェブ19(図2参照)を介して内リング16に結合されている。外リング18、内リング16およびねじりウェブ19は、好ましくは1ピースに例えばばね鋼から形成されている。
【0031】
ピニオン軸4上での固定式軸受6の玉軸受9の軸方向の位置止めは、スラストピース20を介在させてねじ21により行われる。ねじ21は、ピニオン軸4の駆動側の端部に内設された雌ねじ山にねじ込まれている。ハウジング1内での旋回リング15の外リング18の軸方向の位置止めは、雄ねじ山を有するねじリング22により行われ、ねじリング22の雄ねじ山は、ハウジング1の対応する雌ねじ山にねじ込まれている。
【0032】
2つのねじりウェブ19は、旋回リング15の内リング16に対して相対的に外リング18が旋回し得る旋回中心としての旋回軸線7の位置を規定している。しかし、その際、ねじりウェブ19、ひいては旋回軸線7は、旋回リング15の中心を通っておらず、ひいてはピニオン軸4の横断面の中心も通っておらず、これらの中心に対して半径方向でずらされている(図2参照)。これにより旋回軸線7は、ピニオン軸4の長手方向軸線23と交わらない。旋回リング15の中心に対するねじりウェブ19の半径方向のずれにより、旋回軸線7は、ピニオン軸4の外周部近傍に移動され、これにより、ピニオン3と歯車2との歯係合時に生じる噛合力の結果として、この噛合力の作用線と旋回軸線7との間隔との関連で生じるあるいは生じるであろうリアクションモーメントの形成は、軽減または回避され得る。このリアクションモーメントをできる限り完全に回避すべく、旋回軸線7は、歯車2およびピニオン3の両ピッチ円あるいは転動円の接触点に形成されている接線方向平面内に位置している。
【0033】
旋回リング15のねじりウェブ19は、内リング16に対する外リング18の旋回、ひいては歯車2あるいはハウジング1に対して相対的なピニオン軸4の旋回を可能にするだけでなく、同時に、ピニオン軸4のピニオン3を歯車2の歯列内に押し込むばね力を発生させ、これにより、できる限り小さい伝動機構遊び、ひいては、ステアリング伝動機構の運転中の、特に「切り換え操舵(Wechsellenken)」時の少ないノイズ発生を実現することができる。このばね力は、ステアリング伝動機構の組み立て時に、ピニオン軸4が歯車2との接触の結果として、ねじりウェブ19の十分なねじりが得られるまで変位されることから生じ、これにより、ねじりウェブ19のねじりから結果として生じる弾性的な戻しモーメントが、ピニオン軸4のこの変位とは反対方向に作用し、これによりピニオン軸4を歯車2に向かって付勢する。
【0034】
浮動式軸受8の軸受装置13は、軸受ブシュ13の形態で形成されている。軸受ブシュ13は、内ブシュ24を有し、内ブシュ24は、軸受ブシュ13の、荷重がかかっていない中立位置では、外ブシュ25内にできる限り同心に配置されている(図4参照)。内ブシュ24は、一部区間において結合区間26を介して外ブシュ25に結合されている。結合区間26の領域において、内ブシュ24と外ブシュ25とは、横断面あるいはラジアル断面(図4参照)内に、湾曲して延びるそれぞれ1つの突出部27,28を有し、突出部27,28は、向かい合うようにして、内ブシュ24と外ブシュ25との間に形成される環状間隙29内に突出している。その際、両突出部27,28の先端は、互いに接触している。
【0035】
突出部27,28の領域で内ブシュ24と外ブシュ25とは、エラストマー被覆30により包囲されている。その際、エラストマー被覆30は、内ブシュ24および外ブシュ25の表面から張り出さないように構成されている。このために、一方では、内ブシュ24および外ブシュ25の軸方向の長さは、突出部27,28を形成する周区間において、他の周区間における軸方向の長さより短くなっている。これにより凹部(不可視)が形成され、凹部内にエラストマー被覆30の弾性的な素材が収容されている。さらに内ブシュ24はその内面に、そして外ブシュ25はその外面に、それぞれ1つの別の、軸方向で延びる凹部31,32を有し、エラストマー被覆30の素材は、同じくこれらの凹部31,32内に収容されている。環状間隙29の領域でも、突出部27,28は、(周方向)両側でエラストマー被覆30の弾性的な素材により包囲されているあるいはエラストマー被覆30の弾性的な素材内に埋設されている。エラストマー被覆30は、内ブシュ24と外ブシュ25とを1つにまとめると同時に、これらのコンポーネントの所定の相対可動性を可能にしている。すなわち結合区間26は、小さな旋回モーメントを有する旋回継手を形成し、旋回継手は、結合区間26の領域に位置する旋回軸線回りの、内ブシュ24に対する外ブシュ25の旋回を可能にする。この旋回運動時、内ブシュ24および外ブシュ25の突出部27,28は、互いに滑動あるいは転動する一方、エラストマー被覆30は、内ブシュ24と外ブシュ25とのこの相対運動を本質的に妨げない。
【0036】
軸受ブシュ13は、固定式軸受6により規定される旋回軸線7回りのピニオン軸4の旋回が、内ブシュ24を外ブシュ25に対して相対的に、結合区間26を通るラジアル軸線33に対して略垂直な方向で移動させるように、ステアリング伝動機構のハウジング1内に組み込まれている。これに対して、このラジアル軸線33に沿った方向では、ステアリング伝動機構の運転中、歯車2上でのピニオン3の振れを回避すべく、外ブシュ25に対して相対的な内ブシュ24の移動は、できる限り不可能であることが望ましい。このことは、内ブシュ24と外ブシュ25との間の間隔が、軸受ブシュ13の、結合区間26に関して半径方向で反対側の周区間において、比較的小さな寸法、例えば0.1mmに制限されていることにより達成される。このことは、制限要素34により実現され、制限要素34は、半径方向で移動可能に外ブシュ25内に支持されている。制限要素34は、外ブシュ25の半径方向の幅より大きな半径方向の幅を有している。ハウジング1内にまだ組み付けられていない軸受ブシュ13の制限要素34は、外ブシュ25の外面から張り出すまで外向きに移動される。これにより、内ブシュ24の外面と制限要素34との間には、比較的大きな間隔が生じ、この比較的大きな間隔は、軸受ブシュ13の比較的簡単な組み付けを可能にする。この間隔は、ハウジング1内での浮動式軸受8の組み付けの枠内で所望の小さな寸法に減じられる。それというのも、こうして制限要素34は、ハウジング1との当接の結果、外ブシュ25の外面からもはや張り出し得ず、したがって内ブシュ24に向かって移動されている必要があるからである。
【0037】
軸受ブシュ13の外ブシュ25は、さらに弾性的なストッパ要素35も有し、ストッパ要素35は、一方向(図1で見て上方)へのピニオン軸4の旋回時の内ブシュ24の運動を制限する。
【0038】
ステアリング伝動機構は、さらに結合要素36も有し、結合要素36は、固定式軸受6の軸受スリーブ14に(1ピースにかつ同一材料で)組み込まれているあるいは固定式軸受6の軸受スリーブ14の延長部として形成されている。特に図2および3から看取可能であるように、延長要素36は、(部分)円環形の横断面を有して管形に形成されており、側面開口37を形成している。側面開口37は、結合要素36の長手方向軸線23に関して中央の区間に配置され、結合要素36の周回りの一部区間にわたって延在している。この側面開口37を通して、歯車2の一部区間が、結合要素36により画定される内容積であって、ピニオン軸4を、とりわけピニオン3を形成する区間において収容する内容積内に進入することができ、これにより、歯車2をピニオン3に係合させることができる。
【0039】
結合要素36の(管形の)端部区間は、ステアリング伝動機構の浮動式軸受8内まで延在し、浮動式軸受8の玉軸受9は、対応する外側の軸受レース11でもって結合要素36のこの端部区間内に支持されているのに対し、この端部区間は、他方、浮動式軸受8の軸受ブシュ13の内ブシュ24の内側で支持されている。
【0040】
結合要素36により、固定式軸受6の旋回リング15のねじりウェブ19のねじりから結果として生じる弾性的な戻しモーメントが、固定式軸受6の玉軸受9を介してのみピニオン軸4に伝達されないことが達成される。戻しモーメントが玉軸受9を介してのみピニオン軸4に伝達されてしまうと、この玉軸受9の比較的高い傾倒負荷に結び付くことがある。この弾性的な戻しモーメントは、むしろ、主に固定式軸受6の軸受スリーブ14と、軸受スリーブ14に一体に結合される結合要素36とを介して浮動式軸受8の玉軸受9に伝達され、これにより引き起こされるこの玉軸受9の負荷は、実質的に、長手方向軸線23に関して半径方向で作用する力として与えられている。それゆえこの玉軸受9にも、有意な高さの傾倒モーメントの負荷はかからない。
【0041】
したがって両玉軸受9のいずれも、有意な高さの傾倒モーメントをピニオン軸4に伝達する必要がないため、両玉軸受9を、有利な形式で比較的小型に寸法設定することに加え、構造的に比較的簡単な単列のラジアル玉軸受9の形態で形成することができる。このことは、ステアリング伝動機構の大きさ、重量および製造コストに関してポジティブに作用する。
【符号の説明】
【0042】
1 ハウジング
2 歯車
3 (ねじ)ピニオン
4 (ねじ)ピニオン軸
5 ステアリング伝動機構の被動軸
6 固定式軸受
7 旋回軸線
8 浮動式軸受
9 (ラジアル)玉軸受
10 玉軸受の内側の軸受レース
11 玉軸受の外側の軸受レース
12 固定式軸受の軸受装置
13 浮動式軸受の軸受装置/軸受ブシュ
14 軸受スリーブ
15 旋回リング
16 旋回リングの内リング
17 支持ディスク
18 旋回リングの外リング
19 ねじりウェブ
20 スラストピース
21 ねじ
22 ねじリング
23 ピニオン軸/結合要素/玉軸受の長手方向軸線
24 軸受ブシュの内ブシュ
25 軸受ブシュの外ブシュ
26 軸受ブシュの結合区間
27 内ブシュの突出部
28 外ブシュの突出部
29 内ブシュと外ブシュとの間の環状間隙
30 軸受ブシュのエラストマー被覆
31 内ブシュの凹部
32 外ブシュの凹部
33 軸受ブシュの結合区間を通るラジアル軸線
34 制限要素
35 ストッパ要素
36 結合要素
37 側面開口
図1
図2
図3
図4