(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6887503
(24)【登録日】2021年5月20日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】弁
(51)【国際特許分類】
F16K 31/06 20060101AFI20210603BHJP
F02B 37/16 20060101ALI20210603BHJP
F02B 39/00 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
F16K31/06 305N
F02B37/16 B
F02B39/00 U
【請求項の数】8
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2019-534388(P2019-534388)
(86)(22)【出願日】2017年12月19日
(65)【公表番号】特表2020-502455(P2020-502455A)
(43)【公表日】2020年1月23日
(86)【国際出願番号】EP2017083510
(87)【国際公開番号】WO2018114927
(87)【国際公開日】20180628
【審査請求日】2019年7月9日
(31)【優先権主張番号】102016226071.5
(32)【優先日】2016年12月22日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519031896
【氏名又は名称】ヴィテスコ テクノロジーズ ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Vitesco Technologies GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ロザリオ ボナンノ
【審査官】
加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】
独国特許出願公開第102008031738(DE,A1)
【文献】
国際公開第2016/162968(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06−31/11
F02B 33/00−41/10
F16J 1/00−10/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、該ケーシング内に配置されたソレノイドと、該ソレノイドによって可動のピンと、該ピンに結合されたピストンと、前記ケーシングと前記ピストンとの間に配置されたシールと、を備える弁であって、
前記シールは軸方向に作用するシール(16)であり、弁閉鎖状態において前記ピストン(8)のシール面(24)と協働し、
前記シール(16)は、ケーシング側のシール面(18)と、ピストン側のシール面(20)とを有しており、両シール面(17,18,19,20)は、弾性変形可能な領域(21)を介して結合されており、
前記弾性変形可能な領域(21)は、前記両シール面(17,18,19,20)を、半径方向と軸方向とにおいて互いに隔てている、ことを特徴とする、弁。
【請求項2】
前記ピストン(8)における前記シール面(24)は、前記ピストン(8)の周面(14)よりも大きな直径を有している、請求項1記載の弁。
【請求項3】
前記シール(16)の内径は、前記ピストン(8)の移動時に前記シール(16)の傍らを通過する前記ピストン(8)の前記周面(14)の領域の外径よりも大きい、請求項2記載の弁。
【請求項4】
前記ピストン(8)の前記シール面(24)は、前記ピストン(8)の、前記ソレノイドに面した側に配置されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の弁。
【請求項5】
前記ピストン(8)の前記シール面(24)は、半径方向外側に張り出した縁部(23)である、請求項1から4までのいずれか1項記載の弁。
【請求項6】
前記ピストン(8)は、金属製またはプラスチック製である、請求項5記載の弁。
【請求項7】
前記金属製のピストン(8)の前記半径方向外側に張り出した縁部(23)は、前記ピストン(8)の深絞りにより、または前記ピストン(8)の、前記ソレノイド(5)に面した側の縁曲げにより製造可能である、請求項6記載の弁。
【請求項8】
前記シール(16)は、PTFE製である、請求項1から7までのいずれか1項記載の弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、ケーシングと、ケーシング内に配置されたソレノイドと、ソレノイドによって可動のピンと、ピンに結合されたピストンと、ケーシングとピストンとの間に配置されたシールと、を備えた弁である。
【背景技術】
【0002】
このような弁は、惰行運転中に吸込み側に対してバイパスを解放するために、とりわけ自動車のターボチャージャにおけるブローオフバルブとして使用され、したがって公知である。ターボチャージャの激しい制動を防止するため、しかしまた迅速な始動をも保証するためには、弁の迅速な開閉が重要な前提条件になる。特に閉鎖時には、弁座にピストンが当接することによる即時閉鎖が重要である。弁座はターボチャージャのケーシングにより形成され、ケーシングには弁がフランジ締結される。さらに、軸方向に移動可能なピストンは、ケーシングに対してシールされていなければならない。このために、ケーシング内にV字形のシールを配置することが知られており、シールの脚部はそれぞれ、ケーシングと、ピストンの周面とに当接している。両脚部に予荷重を加えることにより、シール作用が得られる。この場合の欠点は、ピストンに当接している一方の脚部のシールリップが、開閉時のピストンの動きに基づき摩擦に晒されることになるという点であり、これは結果的に摩耗を増大させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本発明の根底を成す課題は、改良されたシール機能を備えた弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、シールが軸方向に作用するシールであり、弁閉鎖状態においてピストンのシール面と協働することによって解決される。
【0005】
閉鎖状態においてのみピストンと協働する、軸方向に作用するシールの配置により、シールとピストンとの接触が、ピストンが静止している時間に制限されることが達成される。この時間には、ピストンが静止する直前の時間が含まれる。これは、ピストンとシールとが、閉鎖位置の直前で既に接触し合うことを意味する。最終的にピストンが閉鎖位置へ移動することでシールは変形し、これにより各シール面には、互いに予荷重が加えられていることになる。つまり、軸方向に作用するシールにより、ピストン移動中の開閉時にシールがピストンに接触し、これに伴って生じる摩擦に晒されることが防止される。したがって、摩擦に起因する摩耗が防がれると共に、シールの耐用年数が改良される。
【0006】
シールとピストンとの接触は、ピストンにおけるシール面が、ピストンの周面よりも大きな直径を有していると、確実に防がれる。この構成に基づき、シールのピストン側のシール面もやはり、ピストンの周面よりも大きな直径を備えて形成されてよい。
【0007】
ピストンのシール面が、ピストンの、ソレノイドに面した側に配置されていると、ピストンを簡単に製造することができ、ひいては廉価な形状を備えて形成することができる。
【0008】
特に有利な構成では、ピストンのシール面は、半径方向外側に張り出した縁部である。
【0009】
軸方向に作用するシールは、金属ピストンとも、プラスチック製のピストンとも協働することができるという利点を有している。
【0010】
金属ピストンを使用した場合、半径方向外側に張り出した縁部は、ピストンの深絞りによって特に簡単に、ひいては追加的な作業ステップ無しで製造することができる。しかしまた、縁部を、ピストンのソレノイドに面した側の縁曲げによって製造することも考えられる。このような追加的な作業ステップは、小さな手間を必要とするだけに過ぎない。
【0011】
プラスチック製のピストンの場合、半径方向に張り出した縁部は、ピストンの射出成形時に形成されると、追加的な手間無しで設けられる。
【0012】
有利な構成では、シールはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製である。この材料は良好に処理可能であると共に、小さな摩擦抵抗という点において優れている。
【0013】
別の有利な構成では、シールは、ケーシング側のシール面と、ピストン側のシール面とを有しており、この場合、両シール面は、弾性変形可能な領域を介して結合されている。弁閉鎖位置での弾性的な領域の変形は予荷重を生じさせ、この予荷重に基づき、ケーシングおよびピストンにおけるシールのシール面が当接し合い、これがシール作用を高める。
【0014】
別の有利な構成では、シールは、弾性変形可能な領域が両シール面を、半径方向と軸方向とにおいて互いに隔てていると、特に簡単かつ廉価に形成される。最も簡単なケースでは、弾性的な領域は、シールの横断面に対して直線的に形成されていてよい。それぞれ隣り合う構成部材に対する各シール面の予荷重は、弾性的な領域の形態に基づき、広範に調整することができる。つまり、弾性的な領域は、一定のまたは可変の横断面を有していてよい。弾性的な領域の長さも、予荷重に適宜に影響を及ぼし得る。しかしまた、弾性的な領域がシールの両シール面を結合する角度により、予荷重を的確に調整することも可能である。
【0015】
シールの内径が、ピストン移動時にシールの傍らを通過するピストンの周面領域の外径よりも大きいと、ピストンとシールとの接触が確実に回避される。このようにして、温度上昇による弁の個別部品の寸法変化が、開閉中にピストンとシールとの接触を招くことがなくなっている。
【0016】
本発明を、一実施例に基づきより詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】本発明による弁のシール領域におけるピストンの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に示す弁は、弁を電気的に接続するためのソケット2が一体成形されたケーシング1を有している。ケーシング1はさらに、一体成形されたフランジ3と3つの孔3aとを有しており、これらの孔3aを介してケーシング1は、バイパス管路4の領域に設けられたターボチャージャ(図示せず)にフランジ締結されている。図示の取付け位置において、フランジ3にはケーシングスリーブ13が接続している。ケーシング1内には、コイル6および金属ピン7を備えたソレノイド5が配置されている。金属ピン7は鉢形のピストン8に結合されており、ピストン8はその底部9の周りに、軸方向に突出した環状のシール面10を有している。図示の閉鎖位置において、シール面10はバイパス管路4を閉じるために弁座11に当接しており、そのため、管路4から管路12内へ媒体が流入することは一切できなくなっている。この場合、ばね7aがピストン8を弁座11に向かって押圧している。ばね7aによって形成された力に抗して、管路12内の圧力に基づき底部9に作用する力が働く。
【0019】
図2には、閉鎖位置における、円筒状の周面14を備えたピストン8の、ケーシング1に面した領域が示されている。ケーシングスリーブ13は、半径方向内向きのカラー15を有している。このカラー15にはシール16が支持されている。シール16は、ケーシング側のシール面18を備えた領域17と、ピストン側のシール面20を備えた領域19とを有している。これらの領域17,19ひいてはシール面18,20は、弾性変形可能な領域21を介して結合されている。ケーシング側の領域17は、カラー15と、ケーシングスリーブ13内に配置されたシリンダ22との間に緊締されており、したがって、シール16はケーシングスリーブ13内で不動に配置されていることになる。金属製のピストン8は、その開いた端部に、縁曲げによって形成され、シール面24を備えた、半径方向外側に張り出した縁部23を有している。ピストン8の閉鎖時に、ピストン8は下方に向かって移動する。閉鎖位置に到達する直前に、ピストン8のシール面24は、シール16のシール面20と接触する。ピストン8が閉鎖位置へさらに移動すると、シール面24はシール面20に対して押圧され、これは弾性的な領域21を変形させる。この変形により、両シール面24,20に予荷重が加えられるようになっている。