(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6887504
(24)【登録日】2021年5月20日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】内燃機関へ燃料を供給するためのポンプユニット
(51)【国際特許分類】
F02M 59/44 20060101AFI20210603BHJP
F02M 59/46 20060101ALI20210603BHJP
F02M 59/02 20060101ALI20210603BHJP
F16K 1/36 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
F02M59/44 E
F02M59/46 W
F02M59/02
F16K1/36 Z
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-534857(P2019-534857)
(86)(22)【出願日】2017年12月15日
(65)【公表番号】特表2020-503473(P2020-503473A)
(43)【公表日】2020年1月30日
(86)【国際出願番号】EP2017083015
(87)【国際公開番号】WO2018122005
(87)【国際公開日】20180705
【審査請求日】2019年6月25日
(31)【優先権主張番号】102016000131338
(32)【優先日】2016年12月27日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】デ ルカ,アレッサンドロ
(72)【発明者】
【氏名】フィオレンティノ,ルイジ
(72)【発明者】
【氏名】ベルジョーヴィネ,バレリア セシリア
(72)【発明者】
【氏名】コリッツォ,オッタヴィオ
(72)【発明者】
【氏名】ライセル,トビアス
【審査官】
沼生 泰伸
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2010/130502(WO,A1)
【文献】
特表2013−538968(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第00209938(EP,A1)
【文献】
国際公開第2015/091264(WO,A1)
【文献】
特表2006−507446(JP,A)
【文献】
特開平05−248319(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 59/44
F02M 59/02
F02M 59/46
F16K 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関へ燃料を供給するためのポンプユニットであって、
ポンプ本体(4,9)と、前記ポンプ本体(4,9)に構成された少なくとも1つのシリンダ(14)と、前記シリンダ(14)の中でスライド可能に配置されたピストン(15)と、前記シリンダ(14)へ燃料を吸入するための吸入行程および前記シリンダ(14)に含まれる燃料を圧縮するための圧縮行程のときに前記ピストン(15)を動かすための操作装置(16)と、前記シリンダ(14)への燃料の供給を選択的に制御するための吸入弁(29)と、内燃機関への燃料の供給を選択的に制御するための圧力弁(30)と、を含んでおり、
前記圧力弁(30)は、前記シリンダ(14)の長軸(8)に対して同軸に取り付けられ、前記ピストン(15)のほうを向く端部面(52)によって軸方向で区切られ、前記圧力弁(30)の開放位置と閉止位置の間で可動である閉止部分(51)を含み、
前記閉止部分(51)は、前記端部面(52)で外方に向かって開いた、前記シリンダ(14)と連通するキャビティ(53)を有し、
前記キャビティ(53)は環形状を有する
ことを特徴とするポンプユニット。
【請求項2】
前記キャビティ(53)は前記長軸(8)を中心として延びている、請求項1に記載のポンプユニット。
【請求項3】
前記端部面(52)は球形の側方の区域(54)を含んでおり、前記キャビティ(53)は前記側方の区域(54)で外方に向かって開いている、請求項1または2に記載のポンプユニット。
【請求項4】
前記ポンプ本体(4,9)を貫いて構成され、内燃機関と接続されている拡張された区域(13b)と、前記シリンダ(14)と接続されている狭隘化された区域(12)とを含む圧力配管(12,13b)をさらに含んでいる、請求項1または2に記載のポンプユニット。
【請求項5】
前記狭隘化および前記拡張された区域(12,13b)は円錐台状の結合区域(41)を備える肩部を介して相互に結合されており、該結合区域は前記閉止部分(51)の球形状の結合区域(42)と流体密閉式に結合するように構成されている、請求項4に記載のポンプユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関へ燃料を、好ましくはディーゼルを供給するためのポンプユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特に本発明は、ポンプ本体と、ポンプ本体に構成された少なくとも1つのシリンダと、シリンダの中でスライド可能に配置されたピストンと、吸入行程のときにシリンダの中へ燃料を吸入するため、および圧縮行程のときにシリンダに含まれる燃料を圧縮するためにピストンを動かすための操作装置とを含む型式のポンプユニットに関する。
【0003】
さらにポンプユニットは、シリンダへ燃料を吸入するための吸入配管と、シリンダへの燃料の供給を選択的に制御するために吸入配管に沿って取り付けられた吸入弁と、内燃機関へ燃料を圧送するための圧力配管と、内燃機関への燃料の供給を選択的に制御するために圧力配管に沿って取り付けられた圧力弁とを含む。
【0004】
圧力配管はシリンダの長軸に対して同軸に延びており、その中に圧力弁の閉止部分がスライド可能に配置される。
【0005】
したがって、圧力弁の閉止部分はピストンのほうを同軸に向くとともに、圧力配管の開放位置と閉止位置の間で可動である。
【0006】
閉止部分は実質的に球形の結合区域を有していて、この結合区域は、閉止部分が閉止位置にあるときに、圧力配管の実質的に円錐台状の結合区域と液密に結合するように構成される。
【0007】
上に述べた型式の公知のポンプユニットはいくつかの欠点を有しており、主としてその原因は、ピストンが圧縮行程中にシリンダの内部で圧力波を生成し、これが圧力弁の閉止部分とピストンの間でシリンダの長軸と平行に、少なくともピストンの圧縮行程の初期段階中に、すなわち圧力弁がまだ閉じているときに、反響することにある。
【0008】
閉止部分とピストンの間での圧力波の往復運動は蒸気泡の発生を惹起し、および、閉止部分と圧力配管の結合区域でのその破裂を惹起する。
【0009】
蒸気泡の破裂はキャビテーションによって、閉止部分と圧力配管の摩耗をそれぞれの結合区域でもたらし、そのために、圧力配管と閉止部分との申し分のない流体密閉式の結合を損なう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、上に説明した欠点を有さず、施工形態に関して簡素で好都合である、内燃機関へ燃料を、特にディーゼルを供給するためのポンプユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によると、内燃機関へ燃料を、特にディーゼルを供給するためのポンプユニットが、添付の特許請求の範囲に基づいて施工される。
【0012】
次に、限定をする実施形態を示すものではない添付の図面を参照しながら、この発明について説明する。図面には次のものが示されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明によるポンプユニットの好ましい実施形態を示す、図解のために省略された部品を含む第1の模式的な断面図である。
【
図2】
図1のポンプユニットを示す、図解のために省略された部品を含む第2の模式的な断面図である。
【
図3】
図1および
図2のポンプユニットの詳細を示す模式的な断面図である。
【
図4】
図3の詳細の第1の変形例を示す模式的な断面図である。
【
図5】
図3の詳細の第2の変形例を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1および
図2を参照すると、符号1により、内燃機関(図示せず)へ燃料を、特にディーゼルを供給するためのポンプユニットが全体として表されている。
【0015】
ポンプユニット1は、上記の内燃機関(図示せず)へ燃料を供給するためのピストンポンプ2と、ポンプ2へ燃料を供給するためのフィードポンプ3、たとえば歯車ポンプとを含んでいる。
【0016】
ポンプユニット1はハウジング4を含むポンプ本体を有しており、このポンプ本体は長軸6を有する中央の穴5を備えており、および、軸6に対して横向きに延び、穴5を起点としてハウジング4の半径方向外部に向かって延びる長軸8を有する少なくとも1つの側方の穴7(通常は軸6を中心として均等に配分された多数の穴7)を備えている。
【0017】
各々の穴7は、ハウジング4と接触して配置された、軸8に対して同軸に穴7の中へ突入する延長部10を有するヘッド部分9によって閉止される。
【0018】
ヘッド部分9は、ヘッド部分9を貫いて軸8に対して同軸に構成された中央の穴11を有するとともに、拡張した2つの区域13a,13bの間に配置された狭隘化された中間区域12を含んでおり、区域13aは穴5のほうを向くとともに、ピストンポンプ2のシリンダ14を定義する。
【0019】
シリンダ14の中に、操作装置16の推進力のもとで直線状の往復運動をもって可動であるピストン15がスライド可能に配置されていて、この往復運動は、シリンダ14へ燃料を吸入するための吸入行程と、シリンダ14の中に含まれる燃料を圧縮するための圧縮行程とを含んでいる。
【0020】
装置16は、軸8に対して同軸に穴7の中でスライド可能に配置され、シリンダ14を中心として延び、環状の内側フランジ18を有する管状のスリーブ17を含んでおり、この内側フランジはスリーブ17の内面から突出して、このスリーブ17を円筒状の2つの区域19,20に分割しており、区域19が穴5のほうを向いている。
【0021】
さらに装置16は、過剰寸法によって区域19の中で固定され、フランジ18と接触して配置され、タペットロール23を担持する実質的に円筒状の結合ブロック22を含むタペット21を含んでいる。
【0022】
ロール23はブロック22から穴5へと突き出すとともに、ブロック22と回転可能に結合されており、それによりこのブロック22に対して、軸8に対して実質的に垂直に延びる独自の長軸24を中心として回転する。
【0023】
フランジ18は、ピストン15を中心として延び、スリーブ17の区域20へ軸8に対して同軸に挿入され、軸方向でフランジ18のほうを向く外側の円周縁部および軸方向でピストン15の底面のほうを向く内側の円周縁部を有する、環状の皿部25を担持している。
【0024】
さらに装置16は、延長部10とスリーブ17の間で軸8に対して同軸に取り付けられ、ヘッド部分9と皿部25の間に着座し、皿部25をフランジ18と接触するように動かして通常は保持し、ロール23をカム27と接触するように動かして通常は保持する圧縮ばね26を含んでおり、このカムは、ハウジング4に対して軸6を中心として回転するために、穴5を貫いて取り付けられた駆動シャフト28の中間区域の外面に構成されている。
【0025】
ヘッド部分9はその内側に、シリンダ14へ燃料を吸入するための吸入弁29と、内燃機関(図示せず)へ燃料を圧送するための圧力弁30とを収容している。
【0026】
弁29は、軸8に対して垂直に延びる長軸32を有する吸入配管31に取り付けられるとともに、軸32を中心として延び、軸方向で配管31に沿って、配管31にねじ込まれた閉止蓋34により固定される円筒状のバルブボディ33を含んでいる。
【0027】
さらに弁29は、弁29の開放位置と閉止位置の間で動くためにバルブボディ33を貫いて取り付けられた閉止部分35を含んでいる。閉止部分35は、バルブボディ33と、軸32に対して横向きに閉止部分35に取り付けられた環状の皿部37との間に着座するばね36によって閉止位置へと動き、通常はそこで保持される。
【0028】
弁30は、ヘッド部分9を貫いて区域12および13bによって定義される圧力配管に沿って燃料の供給を制御するものであり、区域13bにスライド可能に配置されて弁30の開放位置と閉止位置の間で可動であるカップ状の閉止部分38を含んでいる。
【0029】
閉止部分38は、閉止部38と、区域13bに取り付けられたストッパスリーブ40との間に着座するばね39によって閉止位置へと動き、通常はそこで保持される。
【0030】
図3の図面によると、区域12,13bは、実質的に円錐台状の結合区域41を備える肩部によって相互に結合されており、この結合区域は、閉止部分38の実質的に円錐状の結合区域42と流体密閉式に結合するように構成されている。
【0031】
閉止部分38は、ピストン15のほうを向く自由な端部面43によって軸方向で区切られるとともに、実質的に半球状の形状を有する、軸8に対して垂直に延びる実質的に平坦な面43の中央の区域45で外方に向かって開いたキャビティ44を備えている。
【0032】
図4に示す変形例は、そこでは閉止部分38が取り外され、区域12へ突入して軸8に対して垂直に延びる実質的に平坦な端部面48によって軸方向で区切られる延長部47を有する閉止部分46で置き換えられていることによってのみ、
図3の図面と相違する。
【0033】
延長部47は区域12の断面よりも小さい断面を有するとともに、実質的に円筒状の形状を有し、軸8に対して同軸に延びる、面48で外方に向かって開いたキャビティ49を備えている。
【0034】
キャビティ49は、軸8を中心として均等に配分され、キャビティ49の側壁を貫いて軸8に対して横向きに構成された多数の半径方向の穴50を介して区域12と連通する。
【0035】
図5に示す変形例は、そこでは閉止部分38が取り外され、ピストン15のほうを向く自由な端部面52によって軸方向で区切られる閉止部分51で置き換えられていることによってのみ、
図3の図面と相違する。
【0036】
閉止部分51は、環形状を有し、軸8を中心として延び、面52の実質的に球形の側方の区域54で外方に向かって開いたキャビティ53を備えている。
【0037】
作動時には、ピストン15が圧縮行程中にシリンダ14の中で圧力波を生成する。
【0038】
少なくともピストン15の圧縮行程の初期段階中に、すなわち圧力弁30がまだ閉じているときに、圧力波が閉止部分38,46,51とピストン15の間で往復運動に伴って反響し、これが蒸気泡の発生を引き起こす。
【0039】
キャビティ44,49,53は、蒸気泡がその内部に集中することを可能にして、圧力泡が結合区域41,42に達するのを妨げ、結合区域41,42のキャビテーションによる摩耗を防止し、それによってヘッド部分9と閉止部分38,46,51との申し分のない液体密閉式の結合を保証する。
【符号の説明】
【0040】
4,9 ポンプ本体
8 長軸
12,13b 圧力配管
14 シリンダ
15 ピストン
16 操作装置
29 吸入弁
30 圧力弁
38,46,51 閉止部分
43,48,52 端部面
44,49,53 キャビティ
45,48 中央の区域
47 延長部
50 接続穴