特許第6887506号(P6887506)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6887506ドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩及びメマンチン又はその薬学的に許容可能な塩を含む認知症(dementia)及び認知機能障害の予防又は治療用薬学組成物及びその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6887506
(24)【登録日】2021年5月20日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】ドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩及びメマンチン又はその薬学的に許容可能な塩を含む認知症(dementia)及び認知機能障害の予防又は治療用薬学組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/445 20060101AFI20210603BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20210603BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20210603BHJP
   A61K 31/13 20060101ALI20210603BHJP
   A61K 9/26 20060101ALI20210603BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20210603BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   A61K31/445
   A61P25/28
   A61P43/00 121
   A61K31/13
   A61K9/26
   A61K47/26
   A61K47/38
【請求項の数】8
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2019-539722(P2019-539722)
(86)(22)【出願日】2017年9月29日
(65)【公表番号】特表2019-537620(P2019-537620A)
(43)【公表日】2019年12月26日
(86)【国際出願番号】KR2017010953
(87)【国際公開番号】WO2018062941
(87)【国際公開日】20180405
【審査請求日】2019年5月23日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0126230
(32)【優先日】2016年9月30日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2017-0125220
(32)【優先日】2017年9月27日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519113240
【氏名又は名称】バイオ ファルマーテイス カンパニー、リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(74)【代理人】
【識別番号】100090251
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クー、ヒョン モ
(72)【発明者】
【氏名】コー、チャン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】リー、マセ
【審査官】 大西 隆史
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0025139(US,A1)
【文献】 特表2008−525313(JP,A)
【文献】 特表2005−528431(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/118265(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−33/44
A61P 1/00−43/00
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/69
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メマンチン又はその薬学的に許容可能な塩及び顆粒化したドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩を含み、直接圧着された錠剤形態であることを特徴とする、認知症及び認知機能障害の予防又は治療用速放性医薬組成物であって、
前記顆粒化したドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩は120μm〜200μmの粒子分布d(0.5)を有し、前記顆粒化したドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩の粒子サイズは、20mesh以上50mesh未満が15〜25重量%、50mesh以上80mesh未満が25〜35重量%、80mesh以上200mesh未満が20〜30重量%、200mesh以上が15〜25重量%であり、
前記20mesh以上50mesh未満の粒子の含量が200mesh以上の粒子の含量より少ない、認知症及び認知機能障害の予防又は治療用速放性医薬組成物。
【請求項2】
前記顆粒化したドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩を1〜20重量%含有することを特徴とする、請求項1に記載の認知症及び認知機能障害の予防又は治療用速放性医薬組成物。
【請求項3】
前記顆粒化したドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩とメマンチン又はその薬学的に許容可能な塩とが、1:0.8〜5の重量比で混合されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の認知症及び認知機能障害の予防又は治療用速放性医薬組成物。
【請求項4】
前記顆粒化したドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩は、20meshの粒子サイズが5〜15重量%であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の認知症及び認知機能障害の予防又は治療用速放性医薬組成物。
【請求項5】
前記医薬組成物に賦形剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の認知症及び認知機能障害の予防又は治療用速放性医薬組成物。
【請求項6】
前記賦形剤は、乳糖及び微結晶セルロースが3〜20:1の重量比で混合されることを特徴とする、請求項に記載の認知症及び認知機能障害の予防又は治療用速放性医薬組成物。
【請求項7】
前記賦形剤は、80mesh以上の粒子を50重量%以上含有することを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の認知症及び認知機能障害の予防又は治療用速放性医薬組成物。
【請求項8】
ドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩を湿式工程で顆粒化する段階と、
前記顆粒化したドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩にメマンチン又はその薬学的に許容可能な塩を添加した混合物を直接圧着して均質化する段階とを含むことを特徴とする、認知症及び認知機能障害の予防又は治療用速放性医薬組成物の製造方法であって、
前記顆粒化したドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩の粒子サイズは、20mesh以上50mesh未満が15〜25重量%、50mesh以上80mesh未満が25〜35重量%、80mesh以上200mesh未満が20〜30重量%、200mesh以上が15〜25重量%であり、
前記20mesh以上50mesh未満の粒子の含量が200mesh以上の粒子の含量より少ない、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩及びメマンチン又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む認知症及び認知機能障害の予防又は治療用速放性薬学組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医学産業の発達と急速な経済成長によって生の質が向上するとともに各種の疾病と年寄り人口が増加しており、これによる経済的負担金が加重されている。
【0003】
多くの疾病のうち、近年、脳機能関連疾患が主要イシューになっており、調節又は回避の不可能なストレスのような原因によって疲労、憂鬱症、不眠症、集中力/記憶力障害又は酸化的脳損傷のような機能障害が発生している。また、アルツハイマー認知症、パーキンソン病、ハンチントン病又はレビー小体病のような退行性脳疾患(neurodegenerative disorder)とこれによる非可逆的認知症の有病率が段々増加している。
【0004】
老人性認知症の50%以上がアルツハイマー性(Alzheimer type、AD)認知症である。
【0005】
認知症又は認知機能障害用治療剤が臨床に導入されたことは1990年代に至ってからであり、ドネペジル(donepezil)、ガランタミン(galantamine)、リバスティグミン(rivastigmin)などの一連のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤(Acetylchlonesterase inhibitors、AChEi)がアルツハイマー性認知症治療剤として開発され、パーキンソン病治療剤として開発されたNMDA(N−methyl−D−aspaartate)受容体拮抗剤であるメマンチン(memantine)がアルツハイマー性認知症治療剤として承認された。
【0006】
前記アセチルコリンエステラーゼ阻害剤のうち、ドネペジル(donepezil)は一日に一回で5mgから始め、4〜6週後に10mgに増量して投薬され、フィルムコーティングされた錠剤、カプセル及び顆粒のような経口用固体剤形の形態で投薬される。
【0007】
前記メマンチン(memantine)は中等度から高度のアルツハイマー性認知症治療剤として開発されてフィルムコーティング剤又は液剤の形態で投薬される。この薬は一日に5mg投与し、その後一週ごとに5mgずつ増量し、最大容量は朝及び夕に10mgずつして1日に20mgを投与するが、現在多くの臨床研究者は1日に1回投与している。これは、60〜80時間の長い半減期と比較的高い副作用があるからである。
【0008】
従来の研究(Tariot、2004)によれば、中等度で重症アルツハイマー性認知症患者にドネペジル(donepezil)とメマンチン(memantine)を併用して処方した場合、ドネペジル(donepezil)単独治療群に比べ、24週目の追跡検査結果、認知機能、行動尺度点数の全ての面で優越であるという報告がある(Pierre N. Tariot et al., [memantine Treatment in Patients with Moderate to Severe Alzheimer Disease Already Receiving Donepezil a Randmized Controlled trial], JAMA, Vol.291, No.3, p.317-324)。
【0009】
また、認知症患者の大部分である年寄り患者は飲み込みに困難さを経験し、認知能力が低下し、患者自分の服用順応度が低下して薬に対する忠実度が低い。実際に、一錠を服用した患者が二錠の薬剤を服用した患者に比べて忠実度が約20%高く現れたという研究結果もある。このように認知症治療剤の複合剤が開発される場合、薬物服量及び薬に対する忠実度を高めることができる。
【0010】
従来の韓国特許登録第1213345号はドネペジルとメマンチンの複合製剤に関する技術で、前記ドネペジルとメマンチンの薬物のうち1種の薬物を遅延させて放出させる技術に関するものである。しかし、前記放出遅延複合製剤の場合、溶出器のような試験管内テスト(In vitro)を主として設計した製剤であり、いつも一定した放出遅延速度を有する製品の製造が易しくないだけでなく、人が直接服用する場合、人ごとに胃腸管運動の差があるため、その放出遅延時間を正確に予測することがやすくない。このように併用投与が一般化し相互作用がないと予想される半減期の長い2種の薬物の場合、いずれも短時間内に薬効を示す速放性製剤が好ましい。
【0011】
したがって、ドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩及びメマンチン又はその薬学的に許容可能な塩を用いて薬物間の相乗作用によって治療効果を向上させるとともに複合剤の溶出率が市販のドネペジルや市販のメマンチンと類似した速放性薬学組成物が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、ドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩及びメマンチン又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む認知症及び認知機能障害の予防又は治療用速放性薬学組成物を提供することにある。
【0013】
また、本発明の他の目的は、ドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩及びメマンチン又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む認知症及び認知機能障害の予防又は治療用速放性薬学組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述した目的を達成するための本発明の認知症及び認知機能障害の予防又は治療用速放性薬学組成物は、メマンチン又はその薬学的に許容可能な塩及び湿式工程で顆粒化したドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩を含んで直接圧着された錠剤形態であってもよい。
【0015】
前記顆粒化したドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩は1〜20重量%含有するものであってもよい。
【0016】
前記顆粒化したドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩とメマンチン又はその薬学的に許容可能な塩は1:0.8〜5の重量比で混合されたものであってもよい。
【0017】
前記顆粒化したドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩の粒子分布は、d(0.5)が120〜200μmであるものであってもよい。
【0018】
前記顆粒化したドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩の粒子サイズは、20mesh以上乃至50mesh未満が15〜25重量%、50mesh以上乃至80mesh未満が25〜35重量%、80mesh以上乃至200mesh未満が20〜30重量%、200mesh以上が15〜25重量%であり、前記20mesh以上乃至50mesh未満の粒子の含量が200mesh以上の粒子の含量より少ないものであってもよい。
【0019】
前記顆粒化したドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩の粒子サイズは、20meshが5〜15重量%であるものであってもよい。
【0020】
前記薬学組成物に賦形剤をさらに含むものであってもよい。
【0021】
前記賦形剤は、乳糖と微結晶セルロースが3〜20:1の重量比で混合されるものであってもよい。
【0022】
前記賦形剤は、80mesh以上の粒子を50重量%以上含有するものであってもよい。
【0023】
また、前述した他の目的を達成するための本発明の認知症及び認知機能障害の予防又は治療用速放性薬学組成物の製造方法は、ドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩を湿式工程で顆粒化する段階と、前記顆粒化したドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩にメマンチン又はその薬学的に許容可能な塩を添加した混合物を直接圧着して均質化する段階とを含むことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の認知症及び認知機能障害の予防又は治療用薬学組成物は湿式工程で顆粒化したドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩とメマンチン又はその薬学的に許容可能な塩を混合して直接圧着させて製造することにより、従来に市販されているアリセプト(Aricept、ドネペジル塩酸塩)とエビキサ(Ebixa、メマンチン塩酸塩)の併用投与時、ドネペジル活性成分の溶出低下現象によって薬効が減少する問題を解決し、速放性で短時間内に前記両物質が同時に溶出して治療効果を高めることができる。
【0025】
また、本発明の薬学組成物は、有効成分の粒子とほぼ同じ粒子サイズを有する賦形剤を選択して含量均一性を確保し、不純物質の発生を抑制して安全性を高め、服薬順応度をより向上させた。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1Aは、時間による対照群1の市販剤、対照群1及び対照群2を混合した混合錠剤及び実施例1で製造された複合錠剤のドネペジル塩酸塩の溶出率を測定したグラフであり、図1Bは、時間による対照群2の市販剤、対照群1及び対照群2を混合した混合錠剤及び実施例1で製造された複合錠剤のメマンチン塩酸塩の溶出率を測定したグラフである。
図2図2Aは、時間による実施例1〜実施例4で製造された複合錠剤のドネペジル塩酸塩の溶出率を測定したグラフである。 図2Bは、時間による実施例1〜実施例4で製造された複合錠剤のメマンチン塩酸塩の溶出率を測定したグラフである。
図3図3Aは、実施例1のドネペジル顆粒物の粒子サイズを示したグラフであり、図3Bは、実施例2のドネペジル顆粒物の粒子サイズを示したグラフであり、図3Cは、実施例3のドネペジル顆粒物の粒子サイズを示したグラフであり、図3Dは、実施例4のドネペジル顆粒物の粒子サイズを示したグラフである。
図4図4Aは、時間による対照群1、比較例2及び比較例3で製造された錠剤のドネペジル塩酸塩の溶出率を測定したグラフであり、図4Bは、時間による対照群1、比較例2及び比較例3で製造された錠剤のメマンチン塩酸塩の溶出率を測定したグラフである。
図5図5Aは、SD乳糖の粒子サイズを示したグラフであり、図5Bは、乳糖水化物の粒子サイズを示したグラフであり、図5Cは、微結晶セルロースであるvivapur12の粒子サイズを示したグラフであり、図5Dは、微結晶セルロースであるMCC102の粒子サイズを示したグラフである。
図6】前記粒子サイズを有する乳糖及び微結晶セルロースを用いて実施例1によって製造された複合錠剤の篩別分級化粒子サイズを示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明はドネペジル又はその薬学的に許容される塩及びメマンチン又はその薬学的に許容される塩を含む認知症及び認知機能障害の予防又は治療用速放性薬学組成物及びその製造方法に関する。
【0028】
ドネペジル塩酸塩は剤形化されて現在商品名‘アリセプト’(ドネペジル塩酸塩5mg、10mg含有)として販売されており、メマンチン塩酸塩は剤形化されて現在商品名‘エビキサ’(メマンチン塩酸塩10mg含有)として販売されている。市販されているアリセプトとエビキサのIn vitro(溶出試験)試験結果、エビキサは単一溶出率と複合溶出率(アリセプト+エビキサ)が同じ結果を得たが、アリセプトの場合には単一溶出率と複合溶出率(アリセプト+エビキサ)が著しく下がる現象を見つけた。すなわち、溶出時、エビキサとアリセプトの物理的な相互作用によって、アリセプトの溶出において、単一溶出率に比べて複合溶出率が15分に20%以上低く溶出した。このような溶出低下現象がドネペジルの薬物吸収率及び生体利用率に大きな影響を与えて所望の薬効を発揮することができなくなる。
【0029】
ドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩は悪心、嘔吐、下痢の消化器系副作用と筋痙攣、疲労感、目眩のような精神神経系副作用の頻度が高い活性成分の特徴のため、初期5分の溶出率を35%以下に抑制させることが好ましい。
【0030】
また、ドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩とメマンチン又はその薬学的に許容可能な塩の両成分が二層錠又は多層錠などのように分割されずに均一に混合された形態の錠剤において、溶解度の高いBCS(Biopharmaceutics Classification System)Class Iに含まれるドネペジルとメマンチン成分の溶出率が市販製剤の溶出率と同様に、初期5分間にドネペジルは35%以下、メマンチンは60%以上になるように溶出させることは特殊方法ではない一般的な方法によっては具現しにくい。
【0031】
したがって、本発明は、前記ドネペジルの初期溶出率を抑制させるために湿式顆粒化し、前記ドネペジルの溶出率が15分に20%以上低く溶出する複合製剤(アリセプト+エビキサ)を改善するためにドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩の粒子サイズを設定した。
【0032】
従来の韓国特許公開第2009−0016611号には、メマンチンを直接圧着方法で製造する場合には含量均一性が落ち、粘着性及びキャッピングの打錠問題が発生するため、メマンチンを湿式工程で顆粒化しなければならないと記載されている。しかし、本発明では、メマンチンを湿式工程で製造することによって得られる利点(打錠性、混合均一度、キャッピング)を維持しながら費用と時間を節減することができる直接圧着方法で製造した。
【0033】
また、前記ドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩及びメマンチン又はその薬学的に許容可能な塩を混合して直接圧着する方法で複合製剤を製造すれば製造工程を簡素化して費用と時間を節減することができるが、ドネペジルの初期5分間の溶出率を減少させることが難しいことがある。それだけでなく、ドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩及びメマンチン又はその薬学的に許容可能な塩を混合して湿式顆粒化するかあるいはそれぞれ湿式顆粒化する方法で複合製剤を製造すれば、ドネペジルとの相互作用によってメマンチンの不純物質が発生する。
【0034】
例えば、(a)ドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩を湿式顆粒化し、メマンチン又はその薬学的に許容可能な塩を湿式顆粒化して複合製剤を製造する工程、(b)ドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩を湿式顆粒化し、メマンチン又はその薬学的に許容可能な塩を直接圧着して製造する工程、(c)ドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩とメマンチン又はその薬学的に許容可能な塩を混合して直接圧着する工程、(d)ドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩を直接圧着し、メマンチン又はその薬学的に許容可能な塩を湿式顆粒化する製造工程、及び(e)ドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩とメマンチン又はその薬学的に許容可能な塩を混合して湿式顆粒化する工程で製造された複合製剤の安全性試験によって不純物質を確認した結果、前記(b)及び(c)の製造工程よりは(a)、(d)及び(e)製造工程で不純物質がもっと多く発生した。
【0035】
したがって、本発明者らは作用機序が互いに異なるドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩及びメマンチン又はその薬学的に許容可能な塩を含む複合製剤薬物間の相乗作用によって治療効果を向上させるとともに前記複合剤の溶出率を市販ドネペジルや市販メマンチンとほぼ同一にし、打錠性を確保し、分解産物(不純物質)の発生がほとんどなくて保管が非常に安定した本発明を完成した。
【0036】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0037】
本発明の認知症及び認知機能障害の予防又は治療用速放性薬学組成物はメマンチン又はその薬学的に許容可能な塩及び湿式工程で顆粒化したドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩を含ませて直接圧着したもの(以下、複合製剤という)であり、錠剤、カプセル剤、注射剤などの多様な剤形のうち錠剤の形態であることが好ましい。
【0038】
具体的に、本発明の認知症及び認知機能障害の予防又は治療用速放性薬学組成物の製造方法は、ドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩を湿式工程で顆粒化する段階、及び前記顆粒化したドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩にメマンチン又はその薬学的に許容可能な塩を添加した混合物を直接圧着して均質化する段階を含む。
【0039】
作用機序が互いに異なる二つの薬剤を混合する場合、水分に不安定な物理化学的特性によって不純物質が早く増加することができるので、これを克服するために、本発明は、ドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩を先に湿式工程で顆粒化し、ついでメマンチン又はその薬学的に許容可能な塩及び添加剤を添加して直接圧着することである。
【0040】
まず、本発明は、ドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩を湿式工程で顆粒化させることにより、ドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩の初期溶出率を調節する。すなわち、ドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩を湿式工程で顆粒化した後、メマンチン又はその薬学的に許容可能な塩と混合して直接圧着することにより、初期5分間ドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩が溶出することを抑制させることができる。好ましくは、初期5分間の溶出を35%以下に抑制させることができる。
【0041】
前記ドネペジル(donepezil)は化学的名称が‘1−ベンジル−4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イルメチル]ピペリジン’の化合物であり、ドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩は老人性認知症の予防、特にアルツハイマー性認知症疾患の予防及び治療に有用な薬物と知られている。
【0042】
前記ドネペジルの薬学的に許容可能な塩としては、特別な制限があるものではないが、ドネペジルの溶解度を増加させるためのものであれば、いずれもこれに相当し、好ましくは酸付加塩であり得る。
【0043】
前記薬学的に許容可能な塩は人体に毒性が低くて母化合物の生物学的活性と物理化学的性質に悪影響を与えてはいけない。また、前記薬学的に許容可能な塩の製造に使用可能な遊離酸は無機酸と有機酸に分けることができる。無機酸は、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、過塩素酸、臭素酸などを使うことができる。有機酸は、酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、フタル酸、コハク酸、乳酸、枸椽酸、クエン酸、グルコン酸、酒石酸、サリチル酸、リンゴ酸、シュウ酸、安息香酸、パポン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸などを使うことができる。有機塩基付加塩の製造に使用可能な有機塩基はトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、ジシクロヘキシルアミンなどである。アミノ酸付加塩基の製造に使用可能なアミノ酸はアラニン、グリシンなどの天然アミノ酸である。また、本発明によるドネペジルは薬学的に許容可能な塩だけではなく、全ての水化物及び溶媒化物も含むことができる。前記水化物又は溶媒化物は、前記ドネペジルをメタノール、エタノール、アセトン、1,4−ジオキサンのような水と混じることができる溶媒に溶かし、遊離酸又は遊離塩基を加えた後、結晶化するかあるいは再結晶化することができる。そのような場合、溶媒化物(特に、水化物)が形成されることができる。よって、本発明の化合物として、凍結乾燥のような方法で製造可能な多様な量の水含有化合物の他に水化物を初めとして化学量論的溶媒化物も含むことができる。
【0044】
前記ドネペジルの薬学的に許容可能な塩として、好ましくは塩酸塩であり得る。
【0045】
本発明の薬学組成物内に前記ドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩が1〜20重量%、好ましくは2〜10重量%含有される。ドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩の含量が前記下限値未満の場合には、複合剤錠剤の質量が521.5mg以上になって服用便宜性が落ちる問題点が発生することがあり、前記上限値を超える場合には、複合製剤錠剤の質量が104.3mg未満になってメマンチン又はその薬学的に許容可能な塩との複合製剤を製造することが容易でないことがある。
【0046】
また、前記ドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩は悪心、嘔吐、下痢の消化器系副作用と筋痙攣、疲労感、目眩のような精神神経系副作用の頻度が高い活性成分の特徴があり、湿式工程で顆粒化することにより、初期5分間の溶出を35%以下に抑制させて市販中のドネペジル薬剤(アリセプト)と同等の水準にした。
【0047】
それだけでなく、前記ドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩を湿式工程ではない直接圧着工程で製造する場合には好ましい初期溶出率(5分間の溶出率35%以下)を確保することができなく、その後のメマンチン又はその薬学的に許容可能な塩と混合するとき、悪心、嘔吐、下痢の消化器系副作用と筋痙攣、疲労感、目眩のような精神神経系副作用が現れる組成物が製造されることができる。
【0048】
前記湿式工程で顆粒化する方法は、ドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩と薬学的に許容可能な第1添加剤、好ましくは賦形剤、結合剤、希釈剤及び崩壊剤から選択された1種以上を液体内で顆粒化して顆粒を形成する段階、及び前記顆粒を乾燥してオシレーティング(oscillator)する段階を含む。本発明の範囲が前記第1添加剤を使うことに限定されるものではなく、上述した添加剤の他にも本発明の効果を損なわない範囲内で当業者の選択によって通常に使われる添加剤を使うことができる。
【0049】
前記賦形剤としては、乳糖、微結晶セルロース、マンニトル、澱粉及びトウモロコシ澱粉からなる群から選択された1種以上を含むことができるが、これに限定されなく、前記結合剤としては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース及びメチルセルロースからなる群から選択された1種以上を含むことができるが、これに限定されなく、前記希釈剤としては、リン酸カルシウム(二塩基性及び/又は三塩基性)、硫酸カルシウム、粉末化したセルロース、デキストレート、デキストリン、フルクトース、カオリン、ラクチトール、ラクトース、マルトース、マンニトル、微細晶質セルロース、ソルビトール、澱粉及びスクロースから1種以上を含むことができるが、これに限定されなく、前記崩壊剤としては、クロスカルメルロースナトリウム、クロスポビドン、微細晶質セルロース、ポラクリリンカリウム、グリコール酸スターチナトリウム、低置換ヒドロキシプロピルセルロース及び澱粉から1種以上を含むことができるが、これに限定されない。
【0050】
次に、本発明は、メマンチン又はその薬学的に許容可能な塩及び第2添加剤を前記顆粒化したドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩に添加して混合した混合物を直接圧着して均質化することにより、有効成分が均一に分布するようにする。
【0051】
前記メマンチン(memantine)は化学的名称が‘3,5−ジメチルアダマンタン−1−アミン’である化合物で、経口活性NMDA受容体拮抗制と報告されており、メマンチン又はその薬学的に許容可能な塩はアルツハイマー性認知症疾患の予防及び治療に有用な薬物と知られている。
【0052】
前記メマンチンの薬学的に許容可能な塩は、特別な制限があるものではないが、メマンチンの溶解度を増加させるためのものであればいずれもこれに相当することができ、好ましくは酸付加塩、より好ましくは塩酸塩であり得る。
【0053】
前記ドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩と前記メマンチン又はその薬学的に許容可能な塩は1:0.8〜5の重量比、好ましくは1:1〜3の重量比で混合される。ドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩を基準にメマンチン又はその薬学的に許容可能な塩の含量が前記範囲を外れる場合には、悪心、嘔吐、下痢の消化器系副作用と筋痙攣、疲労感、目眩のような精神神経系副作用が現れることがある。
【0054】
また、前記メマンチン又はその薬学的に許容可能な塩、添加剤及び前記顆粒化したドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩が混合された混合物は直接圧着工程によって均質化される。直接圧着工程の代わりに湿式工程、又は直接圧着工程の代わりに湿式工程後に直接圧着工程を行う場合には不純物質が多量発生する。
【0055】
前記直接圧着工程で均質化する方法は複合剤の物理的変化なしに前記成分を直接圧着することであり、ロータリー打錠機による圧着は上下のポンチによって粉末を均質化させた後、均質化された物質を顆粒大きさに減少させてから圧縮する段階を含む。
【0056】
前記第2添加剤としては、薬学的に許容可能な賦形剤、結合剤、滑沢剤及びコーティング基剤から選択された1種以上を挙げることができる。本発明の範囲が前記第2添加剤を使うことに限定されるものではなく、上述した添加剤の他にも本発明の効果を損なわない範囲内で当業者の選択によって通常に使われる添加剤を使うことができる。
【0057】
前記賦形剤及び結合剤の種類は前記第1添加剤として記載された種類と同一であり、前記滑沢剤としては、コロイド性二酸化珪素、含水二酸化珪素、ステアリン酸マグネシウム及びフマル酸ステアリルナトリウムから1種以上を含むことができるが、これに限定されなく、コーティング基剤としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、コポビドン、オパドライシリーズ及びユドラジット(Eudragit)シリーズから1種以上を含むことができるが、これに限定されない。
【0058】
前記段階で微粒子形態として存在するメマンチン又はその薬学的に許容可能な塩が相対的に粒子の大きなドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩と均質に混合されるためには、微粒子の賦形剤と相対的に粒子の大きな賦形剤が混合された混合賦形剤を投入して倍散混合を行わなければならない。
【0059】
前記混合賦形剤に含有された微粒子の賦形剤は微粒子形態として存在するメマンチン又はその薬学的に許容可能な塩と粒子サイズがほぼ同一でなければならなく、前記混合賦形剤に含有された相対的に粒子の大きな賦形剤は相対的に粒子の大きなドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩と粒子サイズがほぼ同一でなければならない。前記混合賦形剤に含有された賦形剤の各粒子サイズがメマンチン又はその薬学的に許容可能な塩及びドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩とほぼ同一でない場合には、メマンチン又はその薬学的に許容可能な塩及びドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩を含む複合材が含量均一性の面で許容範囲を満たしていないことがあり得る。
【0060】
一例として、湿式工程によって顆粒化したドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩のd(0.5)値(ドネペジルd(0.5)μm)に対して賦形剤の粒子分布d(0.5)値はドネペジルd(0.5)μm±55〜60μmであり、d(0.9)値(ドネペジルd(0.9)μm)に対して賦形剤の粒子分布d(0.9)値はドネペジルd(0.9)μm±380〜400μmであり、メマンチン又はその薬学的に許容可能な塩のd(0.5)値(メマンチンd(0.5)μm)に対して賦形剤の粒子分布d(0.5)値はメマンチンd(0.5)μm±55〜60μmであり、d(0.9)値(メマンチンd(0.9)μm)に対して賦形剤の粒子分布d(0.9)値はメマンチンd(0.9)μm±90〜95μmであるとともにメマンチン又はその薬学的に許容可能な塩とドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩のd(0.5)の差分値を100であるとすれば、混合賦形剤に含有された賦形剤の各粒子分布のd(0.5)の差分値は93〜105であり、メマンチン又はその薬学的に許容可能な塩とドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩のd(0.9)の差分値を100であれとすれば、混合賦形剤に含有された賦形剤の各粒子分布のd(0.9)の差分値は30〜50であることが好ましい。前記d(0.5)及びd(0.9)は粒度分析器で測定した累積分布で最高値の50%、90%に相当する大きさ(size)値を意味する。
【0061】
粉体は微細化するほど比表面積が増加し、粉体間の付着凝集性が増加する。例えば、有効成分は粒子サイズが小さいが、有効成分より粒子がかなり大きい賦形剤を使えば、小さな粒子の有効成分が賦形剤と充分に均一に混じらず一部が凝集するかある一部分に偏る現象が発生して混合の不均一が引き起こされ、反対の場合も同じ現象が発生する。
【0062】
したがって、ドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩の5分間溶出率を35%以下にするために、湿式顆粒化した粒子の分布はd(0.5)が120〜200μmであることが好ましい。d(0.5)が前記下限値未満の場合には、初期溶出5分時点で35%を超える溶出率を示し、前記上限値を超える場合には、初期溶出5分時点の溶出率が35%を超えないが、15分間溶出率が対照薬アリセプト溶出率(85%)より著しく下がった70%溶出率を示す。
【0063】
さらに、前記ドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩の粒子サイズは20mesh以上乃至50mesh未満が15〜25重量%、50mesh以上乃至80mesh未満が25〜35重量%、80mesh以上乃至200mesh未満が20〜30重量%及び200mesh以上が15〜25重量%であることが初期溶出5分時点で35%を超えない溶出率を示す。より好ましくは、前記20mesh以上乃至50mesh未満の粒子の含量が200mesh以上の粒子の含量より少ないことが初期溶出5分時点で35%を超えない溶出率を示すとともに15分間溶出率が対照薬アリセプト溶出率(85%)より高い。
【0064】
また、湿式顆粒化したドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩と直接圧着した後に混合したメマンチン又はその薬学的に許容可能な塩の混合均一度のために、一具現例では乳糖(spray−dried lactose)(d(0.1)23.1μm、d(0.5)69.2μm、d(0.9)164.9μm)、微結晶セルロース(Microcrystalline Cellulose、Vivapur12;d(0.1)153.5μm、d(0.5)193.0μm、d(0.9)386.7μm)の比率を調節して含量均一性を確保した。
【0065】
より好ましくは、乳糖と微結晶セルロースの粒子サイズが80mesh以上のものが50重量%以上含有されれば、より優れた含量均一性を確保することができる。
【0066】
前記乳糖と微結晶セルロースの重量比は3〜20:1、好ましくは5〜15:1である。微結晶セルロースを基準に乳糖の含量が前記範囲を外れる場合には、ドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩の5分間溶出率を35%以下に抑制させにくいことがある。
【0067】
本発明の薬学組成物はpH1.2の溶出液条件で初期5分間にドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩が35%以下溶出するように抑制させ、メマンチン又はその薬学的に許容可能な塩が初期5分間に60%以上溶出するようにする。それだけでなく、本発明の薬学組成物は、pH1.2の溶出液条件でドネペジル又はその薬学的に許容可能な塩は15分後に有効成分総重量の75%以上、好ましくは80%以上溶出し、メマンチン又はその薬学的に許容可能な塩の全てが15分後に有効成分総重量の85%以上、好ましくは85〜95%、30分後有効成分総重量の90%以上溶出する。
【0068】
前記組成物の選択される投与水準は、化合物の活性、投与経路、治療される病態の重症度及び治療される患者の病態及び以前の病歴によって決定されるであろう。しかし、所望の治療効果の達成のために要求されるものより低い水準の化合物の容量で始めて、所望の効果が達成されるまで投与量を徐々に増加させることは当該分野の知識内にあり、好ましい投与量は年齢、性別、体形、体重によって決定されることができる。前記組成物は薬剤学上許容可能な製薬製剤に製剤化する前に追加的に加工されることができ、好ましくはより小さな粒子に粉砕又は研磨されることができる。また、前記組成物は病態及び治療される患者によって違うが、これは非独創的に決定することができる。
【0069】
発明の実施のための形態
以下、本発明の理解を助けるために好適な実施例を提示するが、下記の実施例は本発明を例示するものであるだけ、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で多様な変更及び修正が可能であるのは当業者に明らかであり、このような変形及び修正が添付の特許請求範囲に属することは言うまでもない。
【0070】
対照群1.市販製剤アリセプト10mg
ドネペジル塩酸塩を10mgの含量で含むEisai Korea社のアリセプト10mgを使った。
【0071】
対照群2.市販製剤エビキサ10mg×2
メマンチン塩酸塩を10mgの含量で含むLundbeck Korea社のエビキサ20mg(10mg×2)を使った。
【0072】
実施例1.複合錠剤
ドネペジル塩酸塩一水化物41.72g(10.4mg)、マンニトル480g(120mg)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース20g(5mg)を混合する。これとは別に、精製水120gにヒドロキシプロピルセルロース20g(5mg)を添加して溶解させた後、前記ドネペジル塩酸塩混合物に添加し、スピードミキサーで混合させた後、前記混合物を60℃で2時間乾燥し、オシレーター20meshで濾過して定粒(d(0.1)9.6μm、d(0.5)141.8μm、d(0.9)784.3μm)する。
【0073】
メマンチン塩酸塩80g(20mg;d(0.1)1.9μm、d(0.5)12.3μm、d(0.9)73.7μm)、SD乳糖492g(123mg;d(0.1)23.2μm、d(0.5)69.2μm、d(0.9)164.9μm)、Vivapur12 48g(12mg;d(0.1)153.5μm、d(0.5)193.0μm、d(0.9)386.7μm)を20meshで濾過して混合した後、前記濾過されたドネペジル定粒物及びステアリン酸マグネシウム16g(4mg)を追加的に添加して混合した。その後、前記ドネペジルとメマンチンが混合された混合物をロータリー打錠機で圧縮して打錠した後、オパドライ40g(10mg)コーティング基剤を用いてフィルムコーティングした。
【0074】
実施例1はドネペジル塩酸塩10mg、メマンチン塩酸塩20mgが満たされるように製造したものである。
【0075】
実施例2.複合錠剤_16mesh定粒
前記実施例1と同様な方法で実施するが、混合物をオシレーター16meshで濾過して定粒してドネペジル定粒物を収得して用いた。
【0076】
実施例3.複合錠剤_25mesh定粒
前記実施例1と同様な方法で実施するが、混合物をオシレーター25meshで濾過して定粒してドネペジル定粒物を収得して用いた。
【0077】
実施例4.複合錠剤_30mesh定粒
前記実施例1と同様な方法で実施するが、混合物をオシレーター30meshで濾過して定粒してドネペジル定粒物を収得して用いた。
【0078】
比較例1.複合錠剤_粒子分布が小さい
前記実施例1と同様な方法で濾過されたドネペジル定粒物を製造する。
【0079】
メマンチン80g(20mg;d(0.1)1.9μm、d(0.5)12.3μm、d(0.9)73.7μm)、含水乳糖492g(123mg;d(0.1)4.6μm、d(0.5)15.8μm、d(0.9)66.7μm)、微結晶セルロース48g(12mg;d(0.1)20.1μm、d(0.5)61.2μm、d(0.9)157.2μm)を20meshで濾過して混合した後、前記濾過されたドネペジル定粒物及びステアリン酸マグネシウム16g(4mg)を追加的に添加して混合した。その後、前記ドネペジルとメマンチンが混合された混合物をロータリー打錠機で圧縮して打錠した後、オパドライ40g(10mg)コーティング基剤を用いてフィルムコーティングした。
【0080】
実施例2もドネペジル塩酸塩10mg、メマンチン塩酸塩20mgが満たされるように製造したものである。
【0081】
比較例2.ドネペジル塩酸塩+メマンチン塩酸塩混合物湿式工程後に直接圧着
実施例1と同様な物質及び含量を使った。
【0082】
ドネペジル塩酸塩一水化物41.72g、マンニトル480g、ヒドロキシプロピルメチルセルロース20g、メマンチン塩酸塩80gを混合する。これとは別に、精製水150gにヒドロキシプロピルセルロース20gを入れて溶解させた後、前記混合物に添加し、スピードミキサーで混合した後、前記混合物を60℃で2時間乾燥し、オシレーターで定粒した。SD乳糖492g、Vivapur12 48gを20meshで濾過した濾過物を前記ドネペジルとメマンチンの混合物に添加して混合した後、ステアリン酸マグネシウム16gを追加的に添加して混合した。その後、前記ドネペジルとメマンチンが混合された混合物をロータリー打錠機で圧縮して打錠した後、オパドライ40gコーティング基剤を用いてフィルムコーティングした。
【0083】
比較例3.ドネペジル塩酸塩湿式工程+メマンチン塩酸塩湿式工程後に直接圧着
実施例1と同様な物質及び含量を使った。
【0084】
ドネペジル塩酸塩一水化物41.72g、マンニトル480g、ヒドロキシプロピルメチルセルロース20gを混合する。これとは別に、精製水120gにヒドロキシプロピルセルロース20gを入れて溶解させた後、前記ドネペジル塩酸塩混合物に添加してスピードミキサーで混合した。
【0085】
メマンチン塩酸塩80g、SD乳糖492gを混合した後、精製水180gを添加してスピードミキサーで混合した。
【0086】
前記ドネペジル塩酸塩混合物及びメマンチン塩酸塩混合物を60℃で2時間乾燥し、オシレーターで定粒した後、20meshで濾過した後、20meshで濾過されたVivapur12 48gを添加して混合し、ステアリン酸マグネシウム16gを追加的に添加して混合した。その後、前記ドネペジルとメマンチンが混合された混合物をロータリー打錠機で圧縮して打錠した後、オパドライ40gコーティング基剤を用いてフィルムコーティングした。
【0087】
比較例4.ドネペジル塩酸塩とメマンチン塩酸塩単純混合後に直接圧着
ドネペジル塩酸塩一水化物41.72g、マンニトル480g、ヒドロキシプロピルメチルセルロース20g、メマンチン80g、ヒドロキシプロピルセルロース20g、SD乳糖492g、Vivapur12 48gを20meshで濾過して混合した後、ステアリン酸マグネシウム16gを追加的に添加して混合した。その後、前記ドネペジルとメマンチンが混合された混合物をロータリー打錠機で圧縮して打錠した後、オパドライ40gコーティング基剤を用いてフィルムコーティングした。
【0088】
<試験例>
試験例1.溶出試験
対照群1及び2と実施例1で製造された複合錠剤に対して下記の条件で溶出試験を実施した。
対照群1:対照群1(アリセプト10mg)単一溶出
対照群2:対照群2(エビキサ10mg×2錠)単一溶出
対照群1、2:対照群1(アリセプト10mg)及び対照群2(エビキサ10mg×2錠)を単純混合して同時複合溶出
実施例1:複合錠剤
【表1】
図1aは時間による対照群1の市販剤、対照群1及び対照群2を混合した混合錠剤及び実施例1で製造された複合錠剤のドネペジル塩酸塩の溶出率を測定したグラフ、図1bは時間による対照群2の市販剤、対照群1及び対照群2を混合した混合錠剤及び実施例1で製造された複合錠剤のメマンチン塩酸塩の溶出率を測定したグラフである。
【0089】
対照群1の単一溶出は初期5分間35%未満で溶出し、15分間80%以上溶出する。しかし、対照群1及び対照群2で同時複合溶出を実施するとき、初期5分間35%未満で溶出するが、15分間60%未満で溶出することから、対照群2の物理的な干渉によって溶出率が低下する現象が現れることを確認した。
【0090】
実施例1は分割されずに均質に混合されているドネペジル塩酸塩とメマンチン塩酸塩を同時に溶出するとき、ドネペジルが5分間35%未満で溶出し、15分間80%以上溶出し、メマンチンが5分間60%以上、15分間90%以上溶出することを確認した。
【0091】
したがって、図1a及び図1bに示したように、本発明の実施例1によって製造された複合錠剤は、市販剤である対照群1と同様に、ドネペジル塩酸塩が初期5分間35%未満で溶出するように抑制させ、対照群2と同様に、メマンチン塩酸塩が初期5分間60%以上溶出するように製造された。また、実施例1によって製造された複合錠剤は、ドネペジル塩酸塩が15分に87%溶出し、30分に97%溶出したことを確認し、メマンチン塩酸塩が15分に90%溶出し、30分に95%溶出したことを確認した。
【0092】
すなわち、本発明の実施例1によって製造された複合錠剤は市販されているアリセプト(対照群1)とエビキサ(対照群2)の併用投与時に発生し得るドネペジルの溶出率低下現象を改善し、ドネペジル塩酸塩とメマンチン塩酸塩が共に市販剤である各対照群の錠剤と同様な溶出パターンで溶出することを確認した。
【0093】
また、図2aは時間による実施例1〜4で製造された複合錠剤のドネペジル塩酸塩の溶出率を測定したグラフ、図2bは時間による実施例1〜4で製造された複合錠剤のメマンチン塩酸塩の溶出率を測定したグラフである。
【0094】
下記の表2はドネペジル塩酸塩の溶出率を数値で記載したものであり、表3はメマンチン塩酸塩の溶出率を数値で記載したものである。
【表2】
【表3】
図2a、図2b、表2及び表3に示したように、実施例1の分割されずに均質に混合されているドネペジル塩酸塩とメマンチン塩酸塩の複合製剤を同時に溶出するとき、ドネペジルが5分間35%未満で溶出し、15分間80%以上溶出し、メマンチンが5分間60%以上、15分間90%以上溶出した。
【0095】
一方、実施例2の複合製剤はドネペジルが5分間35%未満で溶出するが、15分間71%溶出するので、15分以後の溶出率が低下する現象が現れることを確認し、メマンチンが5分間60%以下、15分間90%以上溶出するので、初期溶出率が低いことを確認した。
【0096】
また、実施例3及び実施例4はドネペジルが5分間35%以上、15分間90%以上溶出するので、初期溶出率が高いことを確認し、メマンチンが5分間60%以上、15分間90%以上溶出することを確認した。
【0097】
したがって、実施例1の複合製剤とは違い、実施例2〜4の複合製剤は、市販剤である対照群1と同様に、ドネペジル塩酸塩が初期5分間35%未満で溶出するように抑制させ、対照群2と同様に、メマンチン塩酸塩が初期5分間60%以上溶出するように製造されることができなかった。
【0098】
また、図3aは実施例1のドネペジル顆粒物の粒子サイズを示したグラフ、図3bは実施例2のドネペジル顆粒物の粒子サイズを示したグラフ、図3cは実施例3のドネペジル顆粒物の粒子サイズを示したグラフ、図3dは実施例4のドネペジル顆粒物の粒子サイズを示したグラフである。
【0099】
図3a〜図3dに示したように、実施例1のように粒子サイズが20mesh以上乃至50mesh未満が15〜25重量%、50mesh以上乃至80mesh未満が25〜35重量%、80mesh以上乃至200mesh未満が20〜30重量%及び200mesh以上が15〜25重量%でありながら前記20mesh以上乃至50mesh未満の粒子の含量が200mesh以上の粒子の含量より少なく、特に20meshの粒子サイズが5〜15重量%残っているときにドネペジルが5分間35%未満で溶出し、15分間80%以上溶出することを確認した。
【0100】
また、図4aは時間による対照群1、比較例2及び比較例3で製造された錠剤のドネペジル塩酸塩の溶出率を測定したグラフ、図4bは時間による対照群1、比較例2及び比較例3で製造された錠剤のメマンチン塩酸塩の溶出率を測定したグラフである。
【0101】
下記の表4はドネペジル塩酸塩の溶出率を数値で記載したものであり、表5はメマンチン塩酸塩の溶出率を数値で記載したものである。
【表4】
【表5】
図4a、図4b、表4及び表5に示したように、比較例2の錠剤を溶出するとき、ドネペジルが5分間35%未満で溶出し、15分間80%以上溶出し、メマンチンが5分間60%以上、15分間90%以上溶出して溶出基準に適合するが、メマンチン塩酸塩の不純物質含量が加速実験で4週頃に許容基準水準まで発生することから好ましくない製造方法であることを確認した。
【0102】
試験例2.不純物質含量測定
実施例及び比較例で製造された複合錠剤を40及び75%相対湿度でアルミニウム(Alu−Alu)包装を適用して加速安全性試験を実施し、2週ごとに気体クロマトグラフィー法で時間による総不純物質含量(%)を分析した。
【表6】
【表7】
前記表7に示したように、実施例1によって製造された複合錠剤は市販剤である対照群1及び2と類似した不純物質含量を示すことを確認した。
【0103】
アメリカ薬局方のMemantine tabletの不純物質許容基準は不純物質E(エチル4−アセトアミド−2−エトキシベンゾエート)0.15%、未知不純物質0.20%、総不純物質0.5%に決めていることを考慮するとき、4週頃に比較例2及び3は未知不純物質の含量が許容基準水準まで発生することを確認した。
【0104】
すなわち、メマンチン塩酸塩を湿式工程で処理した比較例2及び比較例3は実施例1に比べて不純物質に対して安定しないことを確認した。
【0105】
試験例3.含量均一性測定
含量均一性測定は試験例1の溶出試験の分析法と同一であり、試験は大韓民国薬典一般試験法の製剤均一性試験法によって試験した。製剤均一性試験法は各製剤間の主成分含量の均一な程度を示すための試験法である。
【0106】
10個の検体に対して各製剤中の主成分含量を適切な方法で測定して判定値を計算する(判定値基準:15以下のときに含量均一性を確保したと判定)。
【0107】
判定値は大韓民国薬典一般試験法のうち製剤均一性試験法の下記の式1によって計算される。
判定値=M−平均含量+(2.4×標準偏差)
【0108】
前記M値は、1)平均含量が98.5%以上かつ101.5%以下のとき、M=平均含量
2)平均含量が98.5%未満のとき、M=98.5%
3)平均含量が101.5%を超えるとき、M=101.5%
【0109】
下記の表8はドネペジルの含量均一性を示した表であり、下記の表9はメマンチン含量均一性を示した表である。
【表8】
【表9】
前記表4及び表5に示したように、ドネペジル塩酸塩及びメマンチン塩酸塩と類似した粒子分布を有する賦形剤を使った実施例1はドネペジル塩酸塩顆粒及びメマンチン塩酸塩と類似していない粒子分布を有する賦形剤を使った比較例1及び比較例4に比べて標準偏差が小さく、判定値(判定値=15以下)でも適合することが現れた。
【0110】
ドネペジル塩酸塩及びメマンチン塩酸塩と類似した粒子分布を有する賦形剤を使った場合が安定した含量均一性を確保することを確認した。
【0111】
試験例4.賦形剤粒子サイズによる含量均一性測定
図5aはSD乳糖の粒子サイズを示したグラフ、図5bは乳糖水化物の粒子サイズを示したグラフ、図5cは微結晶セルロースであるvivapur12の粒子サイズを示したグラフ、図5dは微結晶セルロースであるMCC102の粒子サイズを示したグラフである。
【0112】
また、図6は前記の粒子サイズを有する乳糖及び微結晶セルロースを用いて実施例1によって製造された複合錠剤の篩別分級化粒子サイズを示したグラフである。
【0113】
図5a〜図5dに示したように、乳糖及び微結晶セルロースは共に篩別分級時に80mesh以上の粒子を50重量%以上含むので、その比率を調節して錠剤を製造すれば含量均一性を確保することができることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の認知症及び認知機能障害の予防又は治療用薬学組成物は従来の市販されているアリセプト(ドネペジル塩酸塩)とエビキサ(メマンチン塩酸塩)の併用投与時にドネペジル活性成分の溶出低下現象によって薬効が低下する問題を解決し、速放性で短時間内に前記両物質が同時に溶出して治療効果を高めることができるので、認知症及び認知機能障害の予防又は治療に広く用いられることができる。
図1a
図1b
図2a
図2b
図3a
図3b
図3c
図3d
図4a
図4b
図5a
図5b
図5c
図5d
図6