(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の水熱処理システムについて説明する。以下に示す構成等はあくまでも例示に過ぎず、明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。以下に示す構成等は、本発明における必須の構成要件及びその趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0013】
図1は、本実施形態の水熱処理システム1を示す模式図である。水熱処理システム1は、有機物含有廃棄物を高温高圧の水蒸気で水熱反応させて可溶化(以下「水熱処理」という)し、水熱処理された有機物含有廃棄物(以下「水熱処理物」という)から分離される溶液、混合液、またはスラリー等の液体(以下「水熱処理液」という)を用いて、微生物や菌によるガス生成を行うシステムである。
水熱処理システム1は、水熱処理装置10と、調整槽11と、第一移送装置21と、加圧分離装置12と、可溶化槽13と、第二移送装置22と、メタン発酵装置14と、脱水機15と、廃液処理装置16とを、少なくとも含んで構成される。
では、
図1に示す水熱処理システム1の全ての構成につき、以下に詳述する。
【0014】
水熱処理装置10は、有機物含有廃棄物を水熱処理する装置である。水熱処理装置10に投入される有機物含有廃棄物としては、家庭から排出される厨芥(生ごみ)、木質系廃棄物、家畜糞尿、汚泥などが挙げられる。ごみ収集車で回収された有機物含有廃棄物やごみ清掃工場のごみピットに貯留された有機物含有廃棄物をそのまま水熱処理装置10に投入してもよいし、これらの有機物含有廃棄物から無機物を取り除いた後、水熱処理装置10に投入してもよい。これらの有機物含有廃棄物の中から、ガス生成に適した有機物を含有する厨芥類、紙類、草木類を選択的に取り出し、取り出した厨芥類、紙類または草木類を水熱処理装置10に投入してもよい。水熱処理装置10は、近年、高齢者施設等で処分の問題が生じている紙おむつも水熱処理することができる。
後程明らかになるが、水熱処理システム1においては、水熱処理装置10が1回の水熱処理で取り扱う所定量の有機物含有廃棄物に占める各々の内容物の比率が、複数回実施される各々の水熱処理で取り扱うそれぞれの有機物含有廃棄物ごとに大きく異なっていても、後述のメタン発酵装置14で安定的にメタンガス(バイオガス)を生成することができる。
水熱処理装置10で所定時間の水熱処理が行われ、水熱処理装置10から排出された水熱処理物は、調整槽11に貯留される。
【0015】
調整槽11は、水熱処理装置10から排出された水熱処理物を加湿して、水熱処理物の性状を調整する装置である。なお、ここでは、水熱処理物を「加湿」するとは、水熱処理物を水や液体で湿らせる意味のほか、水熱処理物を水や液体に浸す意味も含む。
調整槽11には、後述する可溶化槽13に貯留された水熱処理液が注液されるので、調整槽11に貯留された水熱処理物が加湿される。調整槽11には、当該水熱処理液に加え、適宜、水道水(図示省略)や後述の再利用水を注水してもよい。
また、調整槽11に撹拌装置を設置し、調整槽11に貯留された水熱処理物と、注液または注水されるこれらの液または水とを攪拌して混合してもよい。撹拌装置を設置した場合は、調整槽11は、短時間で水熱処理物の性状を調整することができる。例えば、調整槽11に貯留された水熱処理物が砂状であった場合、上記注液または上記注水を行いつつ撹拌装置を動作させることにより、当該水熱処理物を短時間でスラリー状に変化させることができる。
撹拌装置は、空気撹拌や機械撹拌など、調整槽11に貯留された水熱処理物と、注液または注水されるこれらの液または水とを攪拌して混合する装置であれば、いかような装置であってもよい。
【0016】
なお、水熱処理装置10及び調整槽11は、有機物含有廃棄物を水熱処理し、且つ、水熱処理して得られた水熱処理物に加湿して貯留する設備であり、水熱処理システム1における第一段階の処理を行う第一設備2の構成要素である。
また、後述するが、第一設備2で貯留された水熱処理物を加圧して水熱処理液を分離(以下「加圧分離」という)し、当該加圧分離により得られた水熱処理液を可溶化する設備は、水熱処理システム1における第二段階の処理を行う第二設備3である。さらに、第二設備3で可溶化された水熱処理液を用いてガス生成する設備は、水熱処理システム1における第三段階の処理を行う第三設備4である。
【0017】
第一移送装置21は、第一設備2の調整槽11で加湿された水熱処理物を第二設備3へ移送する装置である。第一設備2と第二設備3とが互いに近接して設置されている場合、例えば、第一設備2と第二設備3との距離が約500m未満である同一または近隣の敷地に設置されている場合、第一移送装置21は、第一設備2の調整槽11と第二設備3の加圧分離装置12とに接続し、且つ、調整槽11で性状が調整された水熱処理物を加圧分離装置12へ圧送する破砕ポンプを備えたパイプラインが望ましい。パイプラインは、一般的に、一つの経路を形成するよう複数の配管が接続されて構成される。
この場合は、パイプラインを通じて、第一設備2の調整槽11に貯留された水熱処理物を、破砕ポンプにより破砕しながら第二設備3の加圧分離装置12へ移送する。水熱処理物の移送の際に、破砕ポンプで水熱処理物を細かくすることができるので、後述の加圧分離装置12(例えば、スクリュープレス)の負荷を低減できる。
【0018】
なお、以下、第一設備2、第二設備3、及び第三設備4のうち2つの設備が「近接」して設置されるという場合には、当該2つの設備同士の距離が約500m未満の同一または異なる敷地に設置されることを意味する。
【0019】
一方、第一設備2と第二設備3とが互いに遠方に設置されている場合、第一移送装置21は、貯留タンク等を備えた自動車(例えば、バキュームカー等)が望ましい。例えば、第一設備2と第二設備3とが互いに約500m以上離れて設置されていれば、同一の敷地であっても異なる敷地であっても、これらは「遠方」に設置されているといえる。この場合は、第一設備2の調整槽11に貯留された水熱処理物を自動車に積載して、第二設備3の加圧分離装置12まで運搬し、運搬した水熱処理物を加圧分離装置12へ投入する。
【0020】
ここで、自動車は、人が運転する自動車でもよいし、人ではなく人工知能(Artificial Intelligence、いわゆるAI)などのコンピュータが運転を制御する自動運転の自動車であってもよい。
また、水熱処理システム1に中央制御室を設け、監視カメラを利用して人が遠隔監視しながら、自動車の運転を制御してもよい。この場合、水熱処理システム1に含まれる設備、装置、並びに施設に監視カメラを設置すれば、中央制御室でこれらの遠隔監視をすることができ、水熱処理システム1の運転の安全性を向上することができる。
さらに、水熱処理システム1は、中央制御室で、水熱処理システム1に含まれる設備、装置、並びに施設のそれぞれの運転を制御するよう構成することもでき、AIを利用することで水熱処理システム1の運転を全自動化することも可能である。
【0021】
なお、以下、第一設備2、第二設備3、及び第三設備4のうち2つの設備が「遠方」に設置されるという場合には、当該2つの設備同士の距離が約500m以上の同一または異なる敷地に設置されることを意味する。
また、以下、「自動車」という場合には、当該自動車は、人が運転する自動車であっても、当該自動運転の自動車であってもよい。当該自動車は、人が遠隔監視して運転を制御する自動車であってもよい。
【0022】
第二設備3の加圧分離装置12は、第一設備2の調整槽11から第一移送装置21で移送された水熱処理物を加圧して、水熱処理液と残余物(水熱処理物から水熱処理液が分離されて残った物)とに分離する装置である。なお、水熱処理液は発酵適物、残余物は発酵不適物ともいわれる。
加圧分離装置12は、例えば、
図2に示すように、前段に回転式ドラムスクリーン12Aを配置し、後段にスクリュープレス12Bを配置した構成とすることができる。回転式ドラムスクリーン12Aは、例えば、三菱重工環境・化学エンジニアリング株式会社の特許第6384015号の登録公報に記載のパンチングメタルドラムスクリーン装置であってもよい。また、スクリュープレス12Bは、例えば、三菱重工環境・化学エンジニアリング株式会社の特許第6734496号の登録公報の
図13に記載の脱水システムであってもよい。
加圧分離装置12は、水熱処理物の含水率や粘性等により、水熱処理液の回収率や発酵不適物の除去率に影響があるため、目開きや開口率、スクリューピッチ(スクリューと排出口との距離)などが慎重に設定される。上記特許第6734496号の登録公報の
図13に記載の脱水システムは、水熱処理物の性状の変化に対応して目開きを変更するので、加圧分離装置12に好適である。加圧分離装置12は、水熱処理物の性状の変化に対応して、例えば、排出口の大きさを増減させて、装置内の圧力を変更してもよい。
また、加圧分離装置12は、
図2と異なり、スクリュープレスのみの単体で構成してもよい。
【0023】
図2の加圧分離装置12では、第一設備2の調整槽11から第一移送装置21で移送された水熱処理物は、まず、回転式ドラムスクリーン12Aに投入される。そして、回転式ドラムスクリーン12Aで、水熱処理物から一部の水熱処理液が分離される。その後、回転式ドラムスクリーン12Aから排出された水熱処理物は、スクリュープレス12Bに投入される。
従って、前段に回転式ドラムスクリーン12Aを配置しない場合(加圧分離装置12がスクリュープレスのみの単体の場合)に比べ、後段のスクリュープレス12Bは、第一移送装置21で移送された水熱処理物の総量よりも減量した水熱処理物を加圧して水熱処理液と残余物に分離する。このため、
図2の加圧分離装置12は、スクリュープレス12Bの動力低減(電力の省力化)が可能である。
なお、回転式ドラムスクリーン12Aで分離された一部の水熱処理液と、スクリュープレス12Bで分離された水熱処理液とは、いずれも第二設備3の可溶化槽13に貯留される。
【0024】
第二設備3の可溶化槽13は、加圧分離装置12で分離された水熱処理液を貯留して加温し、水熱処理液を可溶化する装置である。加温の温度は、例えば、約40℃〜60℃とすることができる。
可溶化槽13で水熱処理液を可溶化することで、水熱処理液に浮遊している不溶性の固形物(Suspended Solids、以下「SS」という)が、水熱処理液に溶解している固形物(Dissolved Solids、以下「DS」という)に変化する。このため、可溶化槽13に貯留された水熱処理液に含まれる固形物全体量(Total Solids、以下「TS」という。TS=SS+DS)に占めるSSが減少する。従って、可溶化槽13は、貯留している水熱処理液のSSを減量し、DSを増量し、酸発酵を促進する装置ともいえる。
一般的に、TSにおける有機物のDSの量が多い方が、微生物や菌によるガス生成に望ましい。可溶化槽13に貯留された水熱処理液のTS、SS、またはDSは、専用の測定装置(図示省略)で計測することができる。
また、可溶化槽13には、調整槽11と同様に、撹拌装置を設置して、可溶化槽13に貯留された水熱処理液を攪拌し、水熱処理液の可溶化を促進してもよい。
【0025】
第二移送装置22は、第二設備3の可溶化槽13に貯留された水熱処理液に含まれる有機物の濃度が所定濃度(例えば、TSが約10%、DSが約6%)未満の場合に、当該水熱処理液を可溶化槽13から第一設備2の調整槽11へ返送し、当該所定濃度に達した場合(実質的に当該所定濃度以上の場合を含む。また、当該所定濃度は、例えば、TSが約10%〜12%、DSが約6%〜8%など、範囲のある濃度であってもよい)に、当該水熱処理液を可溶化槽13から第三設備4のメタン発酵装置14に移送する装置である。
第二移送装置22は、先述の測定装置の測定結果に基づき、調整槽11とメタン発酵装置14のいずれか一方を移送先として自動的に選択し、可溶化槽13に貯留された水熱処理液を当該選択した移送先へ移送する構成としてもよい。
なお、当該所定濃度は、後述のメタン発酵装置14で、メタン発酵に適した有機物の濃度、すなわち微生物または菌によるメタンガスの生成に適した有機物の濃度に設定される。当該所定濃度においては、可溶化槽13に貯留された水熱処理液のpH値(ペーハー値)は7未満の酸性となっており、pH値が5以下であることが望ましい。
【0026】
第二移送装置22は、第一移送装置21と同様に、第一設備2と第二設備3とが互いに近接して設置されている場合、第一設備2の調整槽11と第二設備3の可溶化槽13とに接続し、且つ、可溶化槽13の水熱処理液を調整槽11へ圧送するポンプを備えたパイプラインが望ましい。
一方、第一設備2と第二設備3とが互いに遠方に設置されている場合、第二移送装置22は、貯留タンク等を備えた自動車(例えば、バキュームカー等)が望ましい。この場合は、自動車によって可溶化槽13から調整槽11へ水熱処理液を運搬する。
いずれの場合も、第二移送装置22により、水熱処理液は、第一設備2と第二設備3との間を循環することになる。
【0027】
また、第二移送装置22は、第二設備3と第三設備4とが互いに近接して設置されている場合、第二設備3の可溶化槽13と第三設備4のメタン発酵装置14とに接続し、且つ、可溶化槽13の水熱処理液をメタン発酵装置14の投入口へ圧送するポンプを備えたパイプラインが望ましい。
【0028】
なお、第一設備2と第二設備3と第三設備4とが互いに近接して設置されている場合、第二移送装置22は、例えば、第二設備3の可溶化槽13と第一設備2の調整槽11とを接続するパイプラインの途中に切替装置を備え、当該パイプラインから分岐した別のパイプラインを、当該切替装置と第三設備4のメタン発酵装置14の投入口とに接続する構成としてもよい。
上述したように、第二設備3の可溶化槽13に貯留された水熱処理液に含まれる有機物の濃度に応じて、第二設備3の可溶化槽13と第一設備2の調整槽11とを接続するパイプラインと、上記別のパイプラインとのいずれか一方で、可溶化槽13に貯留された水熱処理液を移送するよう、第二移送装置22は、切替装置で択一的に選択することができる。
【0029】
一方、第二設備3と第三設備4とが互いに遠方に設置されている場合、第二移送装置22は、貯留タンク等を備えた自動車(例えば、バキュームカー等)が望ましい。この場合は、自動車によって可溶化槽13からメタン発酵装置14へ水熱処理液を運搬し、メタン発酵装置14の投入口へ当該水熱処理液が投入される。
なお、第一設備2と第二設備3とが互いに近接して設置され、且つ、第二設備3と第三設備4とが互いに遠方に設置されている場合、第二移送装置22としては、第一設備2と第二設備3との間の水熱処理液の移送はパイプライン、また、第二設備3と第三設備4との間の水熱処理液の移送は自動車であってもよい。すなわち、第二移送装置22は、パイプラインと自動車の2種類の移送装置を兼ね備えてよい。
同様に、第一設備2と第二設備3とが互いに遠方に設置され、且つ、第二設備3と第三設備4とが互いに近接して設置されている場合、第二移送装置22としては、第一設備2と第二設備3との間の水熱処理液の移送は自動車、また、第二設備3と第三設備4との間の水熱処理液の移送はパイプラインであってもよい。
【0030】
第二移送装置22は、第二設備3の可溶化槽13に貯留された水熱処理液に含まれる有機物の濃度が、上述した所定濃度になるまで、当該水熱処理液を第一設備2の調整槽11に返送する。
従って、第一設備2の調整槽11に貯留された水熱処理物を加湿することができるので、第一移送装置21による水熱処理物の移送を容易にし、第二設備3の加圧分離装置12の動力を低減することができる。
【0031】
また、第二設備3の可溶化槽13から第一設備2の調整槽11へ返送される水熱処理液は、可溶化槽13で加温されているので、当該加温された温度のまま又は自然放熱等で少々冷却されたとしても常温より高い温度を維持したまま調整槽11へ注液することが可能である。
この場合、当該返送される水熱処理液は、調整槽11に貯留された水熱処理物の少なくとも一部の可溶化を促進するなどして当該水熱処理物の性状の調整に寄与することができる。
【0032】
その上、水熱処理システム1では、時間的に順次、複数回の水熱処理が行われるが、第一設備2の水熱処理装置10が水熱処理する有機物含有廃棄物に占める各々の内容物の比率が水熱処理のたびに大きく異なり、各水熱処理で得られる水熱処理液に含まれる有機物の濃度に大きなばらつきがあっても、上記返送により、第一設備2と第二設備3との間を水熱処理液が循環することで、可溶化槽13に貯留される水熱処理液に含まれる有機物の濃度を平均化することができる。
そして、可溶化槽13に貯留された水熱処理液に含まれる有機物の濃度が所定濃度になった場合、当該所定濃度の水熱処理液が第二移送装置22によりメタン発酵装置14に移送される。このため、メタン発酵装置14に投入される水熱処理液に含まれる有機物の濃度は実質的に常に一定でばらつきが少なく、且つ、当該水熱処理液はメタンガスの発生に寄与する有機物を多く含有している。従って、メタン発酵装置14は安定的にメタンガスを生成することができる。
【0033】
有機物を原料として微生物や菌によりメタンガスを生成するメタン発酵装置では、一般的に、その装置内部で、まず、有機物の可溶化と酸発酵の2つの工程を行う必要がある。
しかし、水熱処理システム1では、可溶化槽13に貯留された水熱処理液に含まれる有機物の濃度が当該所定濃度になった場合、可溶化槽13において、既に上記2つの工程が実行され且つ完了している。従って、メタン発酵装置14は、可溶化の工程と酸発酵の工程を省略できるので、高速にメタンガスを生成することができる。
【0034】
第三設備4のメタン発酵装置14は、第二設備3の可溶化槽13に貯留された水熱処理液を用いてメタンガスと消化液を生成する装置である。メタン発酵装置14は、当該水熱処理液を加温(約37℃もしくは約55℃)し、メタン発酵によりメタンガスを生成する。メタンガスの生成後に残る液肥(発酵残渣、消化汚泥とも呼ばれる)が消化液である。
第二設備3の可溶化槽13に貯留された水熱処理液に、例えば紙類の繊維分が多く含まれる場合、当該繊維分は、メタン発酵装置14で完全には分解されず一部残留し、消化液に含有されて排出される。従って、消化液に繊維分が十分に含まれている場合は、後述の脱水機15の脱水効率を向上する目的で、後述の解繊液供給装置17や後述のし尿受入槽18を設ける必要はない。
【0035】
脱水機15は、メタン発酵装置14から排出される消化液を、脱水汚泥と脱水分離液に分離する装置(例えば、スクリュープレス)である。分離された脱水汚泥は、後述する廃棄物焼却施設20へ移送され、廃棄物焼却施設20において焼却処分することができる。一方、分離された脱水分離液は、廃液処理装置16へ移送される。
【0036】
廃液処理装置16は、脱水機15で分離された脱水分離液に対して少なくとも硝化及び脱窒素の処理、すなわち生物処理をして脱水分離液を浄化し、再利用水を生成する装置である。廃液処理装置16としては、例えば、硝化及び脱窒素の処理を行う生物処理装置やし尿処理施設が挙げられる。
廃液処理装置16で生成された再利用水は、供給路25(例えば、パイプライン)を通じて第一設備2の調整槽11に供給することができる。
水熱処理システム1の運転開始直後は、第二設備3の可溶化槽13に水熱処理液が貯留されていないため、水熱処理システム1は当該水熱処理液を調整槽11に返送することができず、当該水熱処理液で調整槽11に貯留された水熱処理物を加湿することができない。そこで、この場合に、水熱処理システム1は、再利用水を廃液処理装置16から調整槽11に供給することで、調整槽11に貯留された水熱処理物を加湿することができ、水熱処理システム1の運転開始直後から第一移送装置21による水熱処理物の移送や第二設備3の加圧分離装置12の運転を円滑に行うことができる。
上述の返送ができない場合に、水熱処理システム1は、水道水を調整槽11に注水して水熱処理物を加湿することもできる。しかし、水熱処理システム1のコストパフォーマンスを良好にするために、水道水ではなく再利用水を使用するのが望ましい。
【0037】
以上、水熱処理システム1が少なくとも備える構成について説明した。しかし、水熱処理システム1は、
図1に示すように、さらに、以下の装置や施設を備えてもよい。
【0038】
解繊液供給装置17は、紙類(例えば、古新聞などの古紙)を解繊し、液状にした解繊液を、メタン発酵装置14から排出された消化液に供給する装置である。
解繊液供給装置17が解繊液を消化液に混入するので、脱水機15では、消化液と解繊液との混合液が脱水される。解繊液には繊維分が多く含まれているため、当該混合液に含まれる繊維分が、脱水助剤の代用として機能し、上記混合液の水分を吸い取る。従って、脱水機15における当該混合液の脱水効率を向上させることができる。なお、当該繊維分は、脱水汚泥の一部として脱水機15から排出されるので、解繊液を消化液に混入しない場合に比べ、脱水汚泥の嵩が増す。
さらに、解繊液に含まれる繊維分は窒素成分を含有しておらず、また、上記混合液の水分を吸い取る際、当該混合液に含まれる窒素成分も吸い取るので、脱水機15で分離される脱水分離液中の窒素濃度が薄まる。従って、廃液処理装置16における生物処理の負荷を低減できる。解繊液供給装置17は、例えば、三菱重工環境・化学エンジニアリング株式会社の特許第5905364号の登録公報に記載の紙類供給装置、解繊装置、解繊古紙貯留タンク、及び解繊古紙供給ポンプで構成されてもよい。
【0039】
し尿受入槽18は、し尿を貯留する水槽である。水熱処理システム1では、し尿の「C/N比」(液中に含まれる窒素量と生物処理における脱窒素の際に微生物が栄養源とする炭素量の比率)が約3〜5であるという特性、及び、し尿には繊維分が含まれるという特性を利用することができる。
具体的には、水熱処理システム1では、し尿受入槽18に貯留されているし尿を、メタン発酵装置14、または、メタン発酵装置14から排出される消化液、もしくは、廃液処理装置16に供給する。なお、これら三箇所のうちの一箇所のみならず、二箇所または全てにし尿を供給してもよい。
【0040】
メタン発酵装置14において効率良くメタン発酵するためには、水熱処理液に含まれる窒素量が約1000mg/L以上、かつ、約3000mg/L以下である必要がある。しかし、可溶化槽13からメタン発酵装置14に移送される水熱処理液に含まれる窒素量がこれに満たない場合がありうる。
この場合、し尿受入槽18のし尿をメタン発酵装置14に供給して水熱処理液と混合することで、メタン発酵装置14に移送された水熱処理液に含まれる窒素量の不足をし尿で補うことができる。すなわち、メタン発酵の際の窒素量のバランスを整えるためにし尿を供給する。
なお、メタン発酵装置14にし尿が供給されることで、メタン発酵装置14に貯留された水熱処理液に含まれる炭素量が増加するが、メタン発酵装置14内で、炭素は大部分がメタンガスに変化するため、水熱処理システム1に悪影響を与えることはない。
また、し尿受入槽18のし尿は、メタン発酵装置14に直接的に供給されずに、メタン発酵装置14の上流、例えば、第一設備2の調整槽11や第二設備3の可溶化槽13に供給されてもよい。この場合、し尿は、メタン発酵装置14に間接的に供給される。
【0041】
また、し尿受入槽18のし尿をメタン発酵装置14から排出された消化液に供給して混合液にする場合、上述した解繊液に含まれる繊維分と同様、し尿に含まれる繊維分が脱水助剤の代用として機能し、脱水機15における当該混合液の脱水効率を向上させることができる。
解繊液供給装置17とし尿受入槽18の両方を備えている水熱処理システム1であれば、消化液に含まれる繊維分が少なく上記脱水効率の向上のために繊維分を補う必要がある場合、解繊液やし尿の繊維分によってその不足分を補うことができる。なお、水熱処理システム1は、解繊液供給装置17とし尿受入槽18のいずれか一方のみを備えていてもよいし、両方を備えていてもよい。
【0042】
ところで、一般的に、液体の脱窒素の生物処理を行う際、当該液体のC/N比が約2〜3であると効率良く処理を行うことができる。そのため、廃液処理装置16で脱水分離液の生物処理を行う際、脱水分離液のC/N比が2未満であるときは、し尿受入槽18のし尿を脱水分離液に供給して混合することで、C/N比の値を上昇させるとよい。
脱水分離液とし尿を混合して混合液とする際、脱水分離液にし尿が追加されることで炭素量も窒素量も増加するが、上述のとおり、し尿のC/N比は約3〜5であるので、炭素量の増分の方が窒素量の増分よりも大きい。従って、脱水分離液のC/N比が2未満でも、し尿と混合することで当該混合液のC/N比を容易に約2〜3とすることができる。すなわち、ここでは、生物処理が行われる脱水分離液のC/N比のバランスを整えるためにし尿を供給する。
【0043】
第三移送装置23は、第三設備4のメタン発酵装置14で生成されたメタンガスを、後述のガス利用施設19へ移送する装置である。
メタン発酵装置14とガス利用施設19とが互いに近接して設置されている場合、第三移送装置23は、メタン発酵装置14とガス利用施設19とに接続し、且つ、メタン発酵装置14で生成したメタンガスをガス利用施設19へ移送するパイプラインが望ましい。
一方、メタン発酵装置14とガス利用施設19とが互いに遠方に設置されている場合、第三移送装置23は、ガスボンベを積載する荷台を備えた自動車(トラック)やガスタンクを搭載した自動車が望ましい。この場合は、メタン発酵装置14で生成されたメタンガスをガスボンベやガスタンクに充填して自動車に積載または搭載し、ガス利用施設19へ移送することができる。
【0044】
ガス利用施設19は、第三設備4のメタン発酵装置14で生成されたメタンガスを利用する施設である。ガス利用施設19は、例えば、当該メタンガスまたは当該メタンガスに他のガスを混合した混合ガスをボイラーで燃焼して生じた熱により水蒸気を生成し、この水蒸気で蒸気タービンを回すことで発電する発電プラントである。近年、火力発電所においては、燃焼時の二酸化炭素排出量を低減するため、メタンを主成分とする液化天然ガス LNG(Liquefied Natural Gas)を燃料とする火力発電所が主流になっており、ガス利用施設19も当該火力発電所に準じた発電プラントにすることができる。
ガス利用施設19は、ガスタービン、ガスエンジン、または燃料電池などを備えた発電プラントや、当該メタンガスを改質して都市ガス等を生成する施設などでもよい。
ガス利用施設19が、ガスエンジンを備えた発電プラントである場合、一般的に、ガスエンジンで生じる排ガスの熱回収装置を備えている。当該熱回収装置は、当該排ガスから温水を生成することができる。
【0045】
ガス利用施設19が蒸気タービンで発電する発電プラントであり、且つ、第一設備2と第二設備3と第三設備4の少なくともいずれか一つとガス利用施設19とが互いに近接して設置されている場合、ガス利用施設19の蒸気タービンで発電に利用された後の高温の水蒸気である廃水蒸気を当該近接している第一設備2、第二設備3、または第三設備4で利用することができる。
例えば、蒸気タービンを備えたガス利用施設19が、第一設備2に近接して設置されている場合、ガス利用施設19と第一設備2とをパイプラインで接続して、当該パイプラインを介して廃水蒸気を第一設備2の水熱処理装置10に移送し、水熱処理装置10が使用する高温高圧の水蒸気として又はその一部として利用することができる。
また、蒸気タービンを備えたガス利用施設19が、第二設備3に近接して設置されている場合、ガス利用施設19と第二設備3とをパイプラインで接続して、当該パイプラインを介して廃水蒸気を第二設備3の可溶化槽13に移送し、可溶化槽13に貯留された水熱処理液の加温に利用することができる。
さらに、蒸気タービンを備えたガス利用施設19が、第三設備4に近接して設置されている場合、ガス利用施設19と第三設備4とをパイプラインで接続して、当該パイプラインを介して廃水蒸気を第三設備4のメタン発酵装置14に移送し、メタン発酵装置14に貯留された水熱処理液の加温に利用することができる。
【0046】
さらに、ガスエンジンを備えたガス利用施設19が、第二設備3に近接して設置されている場合、ガス利用施設19と第二設備3とをパイプラインで接続して、当該パイプラインを介して上記熱回収装置で生成された温水を第二設備3の可溶化槽13に移送し、可溶化槽13に貯留された水熱処理液の加温に利用することができる。
同様に、ガスエンジンを備えたガス利用施設19が、第三設備4に近接して設置されている場合、また、ガス利用施設19と第三設備4とをパイプラインで接続して、当該パイプラインを介して当該温水を第三設備4のメタン発酵装置14に移送し、メタン発酵装置14に貯留された水熱処理液の加温に利用することができる。
上述のように、可溶化槽13の加温の温度は約40℃〜60℃、また、メタン発酵装置14の加温の温度は約37℃もしくは約55℃であるので、可溶化槽13やメタン発酵装置14を加温するには、廃水蒸気よりも温水の方が取り扱いやすい。
【0047】
このように、ガス利用施設19が蒸気タービンを備えている場合、蒸気タービンから排出される廃水蒸気を熱源として水熱処理システム1内で利用でき、また、ガス利用施設19がガスエンジンを備えている場合、上記熱回収装置で生成される温水を熱源として水熱処理システム1内で利用できるため、水熱処理システム1のコストパフォーマンスをさらに向上することができる。
【0048】
第四移送装置24は、第二設備3の加圧分離装置12で分離された残余物を、後述の廃棄物焼却施設20へ移送する装置である。
第二設備3と廃棄物焼却施設20とが互いに近接して設置されている場合、第四移送装置24は、加圧分離装置12の残余物の排出口と廃棄物焼却施設20のごみピットとに接続し、且つ、加圧分離装置12から排出された残余物をごみピットへ移送するコンベヤが望ましい。
一方、第二設備3と廃棄物焼却施設20とが互いに遠方に設置されている場合、第四移送装置24は、トラックやゴミ収集車などの自動車が望ましい。この場合は、加圧分離装置12から排出された残余物をトラックの荷台やごみ収集車内へ積載または貯留し、廃棄物焼却施設20へ移送することができる。
【0049】
廃棄物焼却施設20は、廃棄物を焼却炉で焼却する施設であり、第二設備3の加圧分離装置12から排出された残余物及び脱水機15で分離された脱水汚泥も焼却することができる。廃棄物焼却施設20は、焼却炉で生じた熱により、ボイラーで高温高圧の水蒸気を生成し、この高温高圧の水蒸気で蒸気タービンを回すことで、発電することができる。
第一設備2と第二設備3と第三設備4の少なくともいずれか一つと廃棄物焼却施設20とが互いに近接して設置されている場合、廃棄物焼却施設20の蒸気タービンで発電に利用された後の高温の水蒸気である廃水蒸気を当該近接している第一設備2や第二設備3や第三設備4で利用することができる。
例えば、廃棄物焼却施設20が、第一設備2と近接して設置されている場合、廃棄物焼却施設20と第一設備2とをパイプラインで接続して、当該パイプラインを介して廃水蒸気を第一設備2の水熱処理装置10に移送し、水熱処理装置10が使用する高温高圧の水蒸気として又はその一部として利用することができる。
また、廃棄物焼却施設20が、第二設備3に近接して設置されている場合、廃棄物焼却施設20と第二設備3とをパイプラインで接続して、当該パイプラインを介して廃水蒸気を第二設備3の可溶化槽13に移送し、可溶化槽13に貯留された水熱処理液の加温に利用することができる。
さらに、廃棄物焼却施設20が、第三設備4に近接して設置されている場合、廃棄物焼却施設20と第三設備4とをパイプラインで接続して、当該パイプラインを介して廃水蒸気を第三設備4のメタン発酵装置14に移送し、メタン発酵装置14に貯留された水熱処理液の加温に利用することができる。
このように、廃棄物焼却施設20の廃水蒸気を熱源として水熱処理システム1内で有効に利用できるため、水熱処理システム1のコストパフォーマンスをさらに向上することができる。
【0050】
なお、水熱処理システム1は、(1)解繊液供給装置17、(2)し尿受入槽18、(3)第三移送装置23及びガス利用施設19、(4)第四移送装置24及び廃棄物焼却施設20の四つのうち、いずれも具備しないシステムであってもよいし、いずれか一つ、二つまたは三つのみ具備するシステムであってもよいし、四つ全てを具備するシステムであってもよい。
【解決手段】水熱処理システム1は、有機物含有廃棄物を水熱反応させる水熱処理装置10と、水熱反応された水熱処理物を加湿する調整槽11と、加湿された水熱処理物を移送する第一移送装置21と、移送された水熱処理物を加圧して水熱処理液と残余物とに分離する加圧分離装置12と、分離された水熱処理液を貯留して加温する可溶化槽13と、加温され且つ可溶化された水熱処理液を調整槽11に返送する第二移送装置22と、可溶化槽13に貯留された水熱処理液を用いてメタンガスと消化液を生成するメタン発酵装置14と、消化液を脱水汚泥と脱水分離液に分離する脱水機15と、脱水分離液を硝化及び脱窒素して再利用水を生成する廃液処理装置16とを有する。第二移送装置22は、可溶化槽13に貯留された水熱処理液に含まれる有機物の濃度が所定濃度の場合に、メタン発酵装置14に水熱処理液を移送する。