特許第6887593号(P6887593)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6887593光触媒シート、空気清浄機及び光触媒シートの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6887593
(24)【登録日】2021年5月21日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】光触媒シート、空気清浄機及び光触媒シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/02 20060101AFI20210603BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20210603BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20210603BHJP
   B01J 37/34 20060101ALI20210603BHJP
   B01J 37/12 20060101ALI20210603BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20210603BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20210603BHJP
   A61L 9/00 20060101ALI20210603BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20210603BHJP
   C23C 28/00 20060101ALI20210603BHJP
   C25D 11/26 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   B01J35/02 J
   B01J35/04 331A
   B01J37/02 301J
   B01J37/02 301P
   B01J37/34
   B01J37/12
   B01J37/08
   B01D53/86 110
   A61L9/00 C
   A61L9/01 B
   C23C28/00 C
   C25D11/26 302
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-243480(P2016-243480)
(22)【出願日】2016年12月15日
(65)【公開番号】特開2018-94523(P2018-94523A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2019年9月6日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成28年12月2日に第23回シンポジウム「光触媒反応の最近の展開」(主催:光機能材料研究会)にて「光触媒を利用した新規空気清浄機の開発」を発表
(73)【特許権者】
【識別番号】305032254
【氏名又は名称】サンスター技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100156122
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100138885
【弁理士】
【氏名又は名称】福政 充睦
(72)【発明者】
【氏名】森戸 祐幸
【審査官】 佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−183240(JP,A)
【文献】 特開2000−279805(JP,A)
【文献】 特開2004−332090(JP,A)
【文献】 特開2012−161711(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/090630(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第101328574(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 − 38/74
A61L 9/00 − 9/22
B01D 53/86
C23C 24/00 − 30/00
C25D 11/00 − 11/38
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン以外の金属からなる金属基板の片面又は両面からエッチング処理を施しておもて面とうら面で異なる非周期的パターンを形成し、表裏を貫通する微細流路が形成された非周期性海綿構造とし、
該非周期性海綿構造を有する金属基板にチタンを被覆し、チタン被覆金属基板とし、
該チタン被覆金属基板に陽極酸化処理及び加熱処理を施して表面に酸化チタン皮膜を形成し、
該酸化チタン皮膜にアナターゼ型酸化チタン粒子を担持させることを特徴とする光触媒シートの製造方法。
【請求項2】
前記非周期性海綿構造を有する金属基板に対し、チタンを厚み0.5〜2.0μmで被覆させ前記チタン被覆金属基板とすることを特徴とする請求項に記載の光触媒シートの製造方法。
【請求項3】
真空蒸着又はスパッタリングにより、前記金属基板にチタンを被覆することを特徴とする請求項又はに記載の光触媒シートの製造方法。
【請求項4】
前記アナターゼ型酸化チタン粒子を担持させた後、ジェット風を送ることを特徴とする請求項のいずれかに記載の光触媒シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒シート、空気清浄機及び光触媒シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アナターゼ型の酸化チタンは光触媒として知られており、紫外線照射によりヒドロキシラジカル(・OH)などの活性種や正孔が生成し、これによって有機物が分解されるため、脱臭効果や殺菌効果が得られ、空気清浄機などに応用されている。
【0003】
図7は光触媒を利用した従来の流体浄化装置である(特許文献1参照)。
流体浄化装置31は、ケース32内部に備えた励起光源33の周囲を囲うように光触媒構造体34が配されている。その光触媒構造体34は、直径の異なる円筒触媒35がスペーサ(図示せず)を介して所定の間隔で同心的に配され、各円筒触媒35は、金属メッシュの全表面に光触媒を担持させて形成されている。
【0004】
これによれば、円筒触媒35を同心状に配した三重構造の光触媒構造体34を用いることによって、光触媒構造体34の有効表面積が増加し、かつ、通過する流体に乱流が生じる。このため、流体中の臭気物質との接触割合が大きくなって、臭気物質を短時間で効率よく酸化分解できることが記載されている。
【0005】
しかしながら、光触媒となるアナターゼ型の酸化チタンを一般の金属メッシュや金属網目体にコーティングさせようとしても、酸化チタンは結合強度が弱く、担体となる金属表面に形成した酸化チタン膜が剥がれやすい。このため、製品寿命が短く、有害臭気成分を効率的に分解することができないという問題がある。
【0006】
特に、円筒触媒35は、表面積を増やすために細いワイヤを細かく編んだ金属メッシュが用いられるが、そのような金属メッシュで形成された円筒触媒35は手で軽く握るだけで簡単に凹んでしまう程度に機械的強度が低い。このため、組み立てが困難なだけでなく、光触媒構造体34に組み立てた後も取り扱い難い。そして、その外周面を握ることにより表面が撓んでしまうと、広範囲にわたって酸化チタン膜が簡単に剥がれ落ちてしまう。
【0007】
これに対し、特許文献2では、片面又は両面から非周期的パターンによるエッチング処理を施して表裏を貫通する多数の微細流路が形成された非周期性海綿構造を有するチタン箔の表面に、陽極酸化皮膜による酸化チタンベースが形成され、当該酸化チタンベースにアナターゼ型酸化チタン粒子が焼き付けられた光触媒シートが開示されている。
【0008】
これによれば、光触媒となるアナターゼ型酸化チタンを強固に担持させると共に剥がれを防止し、さらに、光触媒に接する機会を増大させて、光触媒による浄化処理効率を格段に向上させることができるとしている。
【0009】
しかしながら、特許文献2ではチタン箔に対してエッチング処理を施していることから、製造コストが高くなることが懸念され、コストを抑える等のさらなる向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−276558号公報
【特許文献2】特許第5474612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、光触媒となるアナターゼ型酸化チタンを強固に担持させ剥がれを防止し、さらに、光触媒に接する機会を増大させて、光触媒による浄化処理効率を格段に向上させると共に、製造コストを抑えた光触媒シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の光触媒シートは、おもて面とうら面で異なる非周期的パターンが形成され、表裏を貫通する微細流路が形成された非周期性海綿構造を有するチタン以外の金属からなる金属基板にチタンが被覆され、該チタンの表面に酸化チタン皮膜が形成され、該酸化チタン皮膜にアナターゼ型酸化チタン粒子が担持されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光触媒となるアナターゼ型酸化チタンを強固に担持させ剥がれを防止し、さらに、光触媒に接する機会を増大させて、光触媒による浄化処理効率を格段に向上させると共に、製造コストを抑えた光触媒シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る光触媒シートの一例を示す説明図である。
図2】本発明に係る光触媒シートの一例における製造方法の概略を示す説明図である。
図3】実験結果を示すグラフである。
図4】本発明に係る光触媒シートを用いた空気清浄機の一例を示す説明図である。
図5】本発明に係る他の実施例を示す説明図である。
図6】本発明に係る光触媒シートを用いた空気清浄機の他の例を示す説明図である。
図7】従来の流体浄化装置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る光触媒シート、空気清浄機及び光触媒シートの製造方法について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0016】
本発明の光触媒シートは、おもて面とうら面で異なる非周期的パターンが形成され、表裏を貫通する微細流路が形成された非周期性海綿構造を有するチタン以外の金属からなる金属基板にチタンが被覆され、該チタンの表面に酸化チタン皮膜が形成され、該酸化チタン皮膜にアナターゼ型酸化チタン粒子が担持されていることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の光触媒シートの製造方法は、チタン以外の金属からなる金属基板の片面又は両面からエッチング処理を施しておもて面とうら面で異なる非周期的パターンを形成し、表裏を貫通する微細流路が形成された非周期性海綿構造とし、該非周期性海綿構造を有する金属基板にチタンを被覆し、チタン被覆金属基板とし、該チタン被覆金属基板に陽極酸化処理及び加熱処理を施して表面に酸化チタン皮膜を形成し、該酸化チタン皮膜にアナターゼ型酸化チタン粒子を担持させることを特徴とする。
【0018】
前記金属基板は、チタン以外の金属であればよく、適宜変更することが可能である。例えば、ステンレス、鉄、ニッケル、アルミニウム等が挙げられる。
金属基板の厚みとしては、特に制限されるものではなく、適宜変更することが可能であるが、0.15〜0.35mmが好ましい。
以下の実施例では金属基板としてステンレス基板を用いた。以下、ステンレス基板を例に挙げて説明するが、これに限られるものではない。また、「チタン被覆ステンレス基板」とあるのは、チタン被覆金属基板の一例を示すものである。
【実施例1】
【0019】
図1に示す光触媒シートS1は、おもて面とうら面で異なる非周期的パターンが形成され、表裏を貫通する微細流路2が形成された非周期性海綿構造を有するステンレス基板1にチタン11が被覆され、その表面に酸化チタン皮膜3が形成され、酸化チタン皮膜3にアナターゼ型酸化チタン粒子4が担持されている。なお、おもて面とうら面は区別されない。
【0020】
図2はその光触媒シートS1の製造方法を示す説明図である。
まず、ステンレス基板1に微細流路2を形成するエッチング処理を行う。なお、エッチング処理の前にステンレス基板1を洗浄しておくことが好ましい。
本実施例ではステンレス基板1の厚みを0.2mmとした。
【0021】
エッチング処理としては以下の工程を行う。
ステンレス基板1の表裏両面にフォトレジスト剤6を塗布する塗布工程を行う(図2(a))。フォトレジスト剤6の上から非周期的パターンが形成されたマスキングフィルム7を重ねて露光する露光工程を行う(図2(b))露光後、フォトレジスト剤6の感光していない部分を洗浄して、感光した部分をステンレス基板1に残す洗浄工程を行う(図2(c))。
次に、フォトレジスト剤6で非周期編み目パターンがマスキングされたステンレス基板1をエッチング液に浸漬し、表裏両面からステンレス基板1の厚さの半分まで浸食させることにより、表裏を貫通する微細流路2を形成する浸漬工程を行う(図2(d))。
【0022】
このように、ステンレス基板1にエッチング処理を施せば、そのマスキングパターンに周期性がないことから、ステンレス基板1の表側と裏側とで異なるパターンの孔が形成される。その結果、図1に示すように、ステンレス基板1の厚さ方向に複雑なラビリンス状の微細流路2が形成され、単純なワイヤメッシュやパンチングメタルなどよりも比表面積が著しく大きくなり、自然に存在する海綿構造体と同様、比表面積を著しく大きくすることができる。かくして、非周期性海綿構造を有するステンレス基板が形成される。
【0023】
なお、本実施例において、光触媒シートS1の空隙率(エッチング処理後の重量/エッチング処理前の重量)は20%程度である。
また、その表面を拡大観察すると、この時点では、図2(e)に示すように、概ねフラットな状態となっている。
【0024】
次に、上記ステンレス基板1にチタンを被覆し、チタン被覆ステンレス基板とする(図2(f))。
チタンを被覆する方法としては、適宜変更することが可能であるが、真空蒸着又はスパッタリングにより行うことが好ましい。本実施例では真空蒸着により行った。
これにより、ステンレス基板1の表面にチタン11が被覆される。なお、チタンは微細流路2の内壁面にも被覆される。
【0025】
このとき、被覆するチタンの厚みは、適宜変更することが可能であるが、0.5〜2.0μmが好ましく、0.8〜1.5μmがより好ましい。この範囲であると、ステンレス基板のクロムの影響を抑制し、脱臭性能を向上させることができる。また、チタンの使用量を抑えることで、コスト面でも有利である。被覆するチタンの厚みが1.5μmであれば、ほぼチタン箔を材料として用いた場合と同等の性能が得られる。
本実施例では被覆するチタンの厚みを0.8μmとして行った。
【0026】
次いで、その表面に酸化チタン皮膜3を形成する陽極酸化処理を行う。
陽極酸化処理は、リン酸浴(例えばリン酸3%水溶液)中で、陽極となるチタン11と陰極との間に所定電圧を印加して行われ、その結果、図2(g)に示すように、チタン11の表面が酸化されて陽極酸化皮膜が形成される。
【0027】
このとき、酸化皮膜は、チタン被覆ステンレス基板の表裏両面だけでなく、微細流路2の内壁面などリン酸浴に曝されている全表面に形成される。
その後、チタン被覆ステンレス基板を加熱処理する。加熱は例えば大気中で450〜550℃、2〜3時間加熱する。加熱処理を施すことで、陽極酸化皮膜が加熱された酸化チタン皮膜3が形成される。
【0028】
その表面を拡大観察すると、エッチング処理した時点でフラットだった表面に、陽極酸化処理及び加熱処理によるひび割れ8が出現する。
【0029】
なお、チタン11を陽極酸化処理した場合、その酸化皮膜の厚さに応じて光の干渉により異なる色が発色し、厚さ70nm程度で紫色、150nm程度で緑色、200nm程度でピンク色を呈することが知られている。本実施例では、厚さ70〜150nmの皮膜を形成した。
【0030】
そして、アナターゼ型酸化チタン粒子4を担持させる焼き付け処理を行う。
表面に酸化チタン皮膜3が形成されたステンレス基板1を、アナターゼ型酸化チタン粒子4を分散したスラリー中にディッピングした後、これを400〜450℃で焼き付けると、図2(h)に示すように、ステンレス基板1の表裏両面及び微細流路2の内壁面に光触媒層5が形成される。
【0031】
酸化チタン皮膜3と光触媒層5は、酸化チタン同士が結合することになるので、その結合性が極めて強くなり、その結果、光触媒層5が剥がれ難くなる。
【0032】
このとき、アナターゼ型酸化チタン粒子4を担持させた後、必要に応じてジェット風を送る工程を行うことが好ましい。これにより、表面に付着した剥がれやすい酸化チタン粒子を取り除くことができる。
【0033】
本実施例では、エッチング処理により微細流路2を形成したことにより表面が複雑な凹凸形状をなし、かつ陽極酸化皮膜からなる酸化チタン皮膜3はミクロンオーダーの微細なひび割れ8を生じている。そのため、その上に光触媒層5が強固に結合するだけでなく、表面積が増え、処理効率が格段に向上する。また、UV光を照射したときに光触媒層5の表面及び酸化チタン皮膜3との界面で乱反射/光散乱が起き、UV光を効率よく利用できる。
【0034】
さらにまた、ステンレス基板にチタンを被覆する方式を採用したことで、光触媒シート自体を安価に形成することができ、このことから設計の自由度が大きくなり、また耐熱性、耐薬品性にも優れるため、過酷な使用条件の下でも使用に耐え得る。
【0035】
さらに、光触媒シート1は、シート状に形成されているので、光源の配置によっては両面照射することもでき、多層化することも可能であり、その場合、光触媒効果もより向上することが期待できる。
【0036】
次に、本実施例で得られた光触媒シートについて以下の評価を行った。評価としては、容積1mの密閉空間内に、後述する図4に示されるような空気清浄機を置き、この空気清浄機に対し風速5.5m/sの風を吹き付けながら、その密閉空間内の所定濃度のアセトアルデヒドの濃度変化を経時的に測定した。また、空気清浄機としては、A5サイズの光触媒シートS1を二重に巻きつけた光触媒ユニットU1を置き、中心に波長254nmの紫外線光源9を配して、処理チャンバ10内を流れる空気流に曝すように配した。
結果を図3に示す。
【0037】
図3において、本実施例で得られた光触媒シート(チタンの厚み:0.8μm)で得られた結果を図中(A)で示している。図中(B)のグラフは、ステンレス基板1ではなく、チタン基板を用いて光触媒シートを作製した場合の評価結果である。すなわち、チタン基板をエッチングして非周期性海綿構造とし、陽極酸化処理を施し、アナターゼ型酸化チタン粒子を担持させたものである(特許文献2参照)。また、図中(C)のグラフは、ステンレス基板をエッチングして非周期性海綿構造とし、チタンの被覆を行わずに、アナターゼ型酸化チタン粒子を担持させたものである。
【0038】
図3(A)のグラフに示されるように、本実施例で得られた光触媒シートによれば、時間経過と共にアセトアルデヒドガスの濃度(ppm)が低下し、良好な脱臭性能が得られていることがわかる。一方、図中(C)のグラフに示されるように、チタンで被覆していない場合、アセトアルデヒドガスの濃度(ppm)の低下は少なく、脱臭性能が劣っていることがわかる。これは、チタン被覆していないステンレス基板を用いた場合、クロムの影響により脱臭性能が低くなるのに対し、チタン被覆したステンレス基板を用いた場合、クロムの影響が少ないため、脱臭性能が良好であると考えられる。
【0039】
また、図中(A)と(B)を比べると、本実施例で得られた光触媒シートはチタン基板を用いた光触媒シートに対して約80%の脱臭性能を示しており、チタン基板を用いた光触媒シートに近い脱臭性能を示していることがわかる。
【実施例2】
【0040】
次に、本発明の光触媒シートを備えた空気清浄機の一例について説明する。図4に示されるように、実施例1で製造された光触媒シートS1を円筒状に巻いて、その中心に紫外線光源9を配した光触媒ユニットU1とし、これを、空気清浄機の処理チャンバ10内を流れる空気流に曝すように配して使用することができる。
このように本発明の光触媒シートは、フレキシブルなシート状に形成することができ、空気清浄機の仕様に応じて任意の形状に折り曲げたり巻回したりすることができる。
【実施例3】
【0041】
次に、実施例1において、ステンレス基板1を被覆するチタンの厚みを1.5μmとした以外は実施例1と同様にして光触媒シートを作製した。得られた光触媒シートについて実施例1と同様に評価を行った。その結果、本実施例で得られた光触媒シートは、図3(B)のグラフに示される結果とほぼ同じであった。すなわち、チタン基板を用いた光触媒シートと同程度の脱臭性能が得られることがわかった。
【実施例4】
【0042】
本実施例の光触媒シートS2は、図5に示すように、一方向に沿って連続する起伏が折曲形成された波板状に形成されている。この光触媒シートS2も、実施例1の光触媒シートと同様、片面又は両面から非周期的パターンによるエッチング処理を施して表裏を貫通する多数の微細流路2が形成された非周期性海綿構造を有するステンレス基板1にチタンが被覆されている。そして、陽極酸化処理及び加熱処理を施して、表面に陽極酸化皮膜による酸化チタン皮膜3を形成し、当該酸化チタン皮膜3にアナターゼ型酸化チタン粒子4を担持させて光触媒層5が形成されている。
【0043】
また、本実施例では、光触媒シートS2を波板状に形成するため、陽極酸化処理を施した後、加熱処理を施す前に、プレス加工により波板状に形成する成形処理を施してステンレス基板1の長手方向に沿って連続する起伏を折曲形成している。
【0044】
この成形加工は、エッチング処理後、酸化チタンにアナターゼ型酸化チタン粒子を担持させる処理の前であればよく、例えば、エッチング処理後、陽極酸化処理の前にプレス加工をしても良い。
【0045】
そして、図6に空気清浄機の他の例として示されるように、このように製造された光触媒シートS2を円筒状に巻いて、その中心に紫外線光源9を配した光触媒ユニットU2とし、これを、空気清浄機の処理チャンバ10内を流れる空気流に曝すように配して使用することができる。
【0046】
本実施例で得られた光触媒シートについて、実施例1と同様に脱臭性能の評価を行ったところ、実施例1と同様に良好な結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、医療施設、工場、住宅、オフィスの空気を浄化する空気清浄機や、水を浄化する浄水器、空気清浄機能搭載蚊取り器の用途に適用し得る。
【符号の説明】
【0048】
S1、S2 光触媒シート
U1、U2 光触媒ユニット
1 ステンレス基板
2 微細流路
3 酸化チタン皮膜
4 アナターゼ型酸化チタン粒子
5 光触媒層
6 フォトレジスト剤
7 マスキングフィルム
8 ひび割れ
9 紫外線光源
10 処理チャンバ
11 チタン
31 流体浄化装置
32 ケース
33 励起光源
34 光触媒構造体
35 円筒触媒
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7