特許第6887598号(P6887598)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6887598
(24)【登録日】2021年5月21日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】鉄含有飲食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/16 20160101AFI20210603BHJP
   C01B 25/42 20060101ALI20210603BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20210603BHJP
   A23L 2/38 20210101ALI20210603BHJP
   A23C 9/13 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   A23L33/16
   C01B25/42
   A23L2/00 F
   A23L2/38 B
   A23C9/13
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-143814(P2016-143814)
(22)【出願日】2016年7月21日
(65)【公開番号】特開2018-11560(P2018-11560A)
(43)【公開日】2018年1月25日
【審査請求日】2019年7月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237972
【氏名又は名称】富田製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105821
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 淳
(72)【発明者】
【氏名】南 翔太
(72)【発明者】
【氏名】谷脇 孝典
【審査官】 田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−100615(JP,A)
【文献】 特開2009−108027(JP,A)
【文献】 国際公開第1998/014072(WO,A1)
【文献】 国際公開第1998/042210(WO,A1)
【文献】 特開昭50−046600(JP,A)
【文献】 特許第5757493(JP,B2)
【文献】 食品衛生学雑誌,1970年,Vol.11 No.6,P474-479
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/40−5/49
A23L 31/00−33/29
A23L 2/00−2/84
A23C 9/13
C01B 25/42
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS/WPIX(STN)
FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄含有粉末を含む飲食品であって、前記粉末はピロリン酸第二鉄及びナトリウム成分を含み、
(1)前記粉末中におけるピロリン酸第二鉄の含有量が95重量%以上であり、
(2)前記粉末における[(Fe+Na)/P]のモル比が0.8〜1.0であり、
(3)前記粉末における[最頻細孔直径/平均粒子径]の比が0.049〜0.133であり、
(4)前記粉末における平均粒子径が3.0〜3.8μmである、
ことを特徴とする鉄含有飲食品。
【請求項2】
保存時及び流通時における当該飲食品の形態は固形であって、用時において液体により当該飲食品を液状化する、請求項1に記載の鉄含有飲食品。
【請求項3】
固形である、請求項1に記載の鉄含有飲食品。
【請求項4】
液状である、請求項1に記載の鉄含有飲食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経口により鉄分を体内に補給するための鉄含有飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人体の疾病予防又は健康維持に関して、ミネラルの摂取不足が原因の一つとして指摘されており、それに関連して種々のミネラルの役割が研究・分析により解明されつつある。その中でも、鉄分は、人体内の鉄の約70%が酸素運搬を行っているヘモグロビンのヘム鉄に存在している。鉄不足になるとヘモグロビンの量が減少して酸素運搬能が減少し、貧血を発症する。貧血等の鉄欠乏症は、全人口のうち20億人が罹っているといわれている。鉄欠乏症になると、貧血の発症だけでなく、妊婦においては低体重児の出生、小児では発達遅延、異常行動等を引き起こすといわれている。これらの疾患に対する治療方法としては、鉄分を経口的に補給する手法がとられている。
【0003】
経口的に取り込まれた鉄の体内への吸収は、二価の鉄イオン(Fe2+)が十二指腸で吸収されるとされている。このメカニズムを考慮し、鉄欠乏症を緩和ないしは治癒するための食品又は医薬品が開発されている。例えば、清涼飲料水、粉ミルク、サプリメント、医薬品等に鉄剤が配合された製品が提供されている。鉄剤としては、可溶性鉄塩又は水不溶性鉄塩を主成分とするものが使用されているが、特に可溶性塩が汎用されている。ところが、可溶性鉄塩は、鉄味が強く、経口用として嗜好性に問題があることに加え、イオン化した鉄の胃壁への侵襲による副作用が問題となる。このため、近年においては、不溶性鉄塩が使用されるようになり、その中でもピロリン酸第二鉄が脚光を浴びている。
【0004】
ところが、不溶性鉄塩は、不溶性の固形分(粉末)であるがゆえに、飲食品、医薬品等の製品の食感に大きな影響を与えてしまうという問題があるほか、可溶性鉄塩よりも鉄味の影響は少ないものの、少なからず鉄味による影響がある。このため、ピロリン酸第二鉄を含む鉄剤に対して種々の改良技術が提案されている。
【0005】
例えば、ガティガムと水不溶性鉄塩を含有することを特徴とする鉄強化飲食品用組成物が知られている(特許文献1)。また、増粘多糖類を添加することを特徴とする液体組成物の鉄臭味マスキング方法によって鉄臭味が抑えられた鉄含有液体組成物がある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−89634
【特許文献2】特開2008−7470
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の技術では、食品添加物製剤に含まれるピロリン酸第二鉄の含有率が少ないため、鉄を摂取する際には大量の食品添加物製剤を服用しなければならない。さらには、ピロリン酸第二鉄を微粒子化するためにビーズミル等を用いて粉砕していることから、ビーズ又は装置からのコンタミネーションのリスクが高くなる。
【0008】
また、特許文献2では、鉄独特の味及びにおいをマスキングするための添加剤を加えるので、その添加剤及びそれを添加するための余分な工程が必要となる。
【0009】
このように、従来技術では、不溶性鉄塩を含む食品を提供するに際しては、不溶性鉄塩をマスキング等の処理に頼らざるを得ず、それゆえにマスキング処理の工程が余計に必要となるだけでなく、マスキング剤の添加分だけ相対的に鉄含有量(鉄剤単位当たりの鉄含有量)を低下させてしまうこともなる。このため、マスキング等の表面処理を施すことなく、食感及び風味が良好な鉄含有食品の開発が切望されているものの、そのような鉄含有食品の開発に至っていないのが実情である。
【0010】
従って、本発明の主な目的は、マスキング等の表面処理を施さなくても良好な食感、風味等を維持できる鉄含有飲食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の組成・構造を有するピロリン酸第二鉄含有粉末を鉄成分として用いることにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、下記の鉄含有飲食品に係る。
1. 鉄含有粉末を含む飲食品であって、前記粉末はピロリン酸第二鉄及びナトリウム成分を含み、
(1)前記粉末中におけるピロリン酸第二鉄の含有量が95重量%以上であり、
(2)前記粉末における[(Fe+Na)/P]のモル比が0.8〜1.0であり、
(3)前記粉末における[最頻細孔直径/平均粒子径]の比が0.005〜0.9である、
ことを特徴とする鉄含有飲食品。
2. 前記[最頻細孔直径/平均粒子径]の比が0.01〜0.9である、前記項1に記載の鉄含有飲食品。
3. 保存時及び流通時における当該飲食品の形態は固形であって、用時において液体により当該飲食品を液状化する、前記項1に記載の鉄含有飲食品。
4. 固形である、前記項1に記載の鉄含有飲食品。
5. 液状である、前記項1に記載の鉄含有飲食品。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、マスキング等の表面処理を施さなくても(すなわち、コーティング層が表面に有していなくても)、良好な食感、風味等を維持できる鉄含有飲食品を提供することができる。また、マスキングのためのコーティング層がない場合は、その分だけ単位鉄剤当たりの鉄含有量を相対的に高めることもできる。
【0014】
特に、本発明における鉄含有粉末は、鉄分吸収性が高く、分散性に優れるがゆえに食感が良好であり、かつ、飲食品に含有された場合でも飲食品本来の風味を効果的に保持することができる。また、かかる鉄含有粉末は、マスキング等の処理を必要としないので、それだけ鉄含有量を高めることができるうえ、当該処理を必要としない分、より低コストで鉄含有飲食品を提供することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明で用いる鉄含有粉末を構成する粒子であって、一次粒子が凝集した凝集粒子(二次粒子)の一例を示す図である。
図2】実施例1〜2及び比較例1〜2で調製された鉄含有飲料の鉄味の評価結果を示すグラフである。
図3】実施例3〜4及び比較例3〜4で調製された鉄含有飲料の鉄味の評価結果を示すグラフである。
図4】実施例5〜6及び比較例5〜6で調製された鉄含有飲料の鉄味の評価結果を示すグラフである。
図5】実施例7〜8及び比較例7〜8で調製された鉄含有飲料の食感の評価結果を示すグラフである。
図6】実施例9〜10及び比較例9〜10で調製された鉄含有飲料の食感の評価結果を示すグラフである。
図7】実施例11〜12及び比較例11〜12で調製された鉄含有飲料の食感の評価結果を示すグラフである。
図8】実施例13〜14及び比較例13〜14で調製された鉄含有飲料の分散性の評価結果を示すグラフである。
図9】実施例15〜16及び比較例15〜16で調製された鉄含有飲料の分散性の評価結果を示すグラフである。
図10】実施例13〜14及び比較例13〜14で調製された鉄含有飲料の外観の経時的変化を観察した結果を示す図である。
図11】実施例15〜16及び比較例15〜16で調製された鉄含有飲料の外観の経時的変化を観察した結果を示す図である。
図12】実施例17〜18及び比較例17〜18の鉄含有飲料の鉄味の評価結果を示すグラフである。
図13】実施例19〜20及び比較例19〜20の鉄含有飲料の食感の評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の鉄含有飲食品は、鉄含有粉末を含む飲食品であって、前記粉末はピロリン酸第二鉄及びナトリウム成分を含み、
(1)前記粉末中におけるピロリン酸第二鉄の含有量が95重量%以上であり、
(2)前記粉末における[(Fe+Na)/P]のモル比が0.8〜1.0であり、
(3)前記粉末における[最頻細孔直径/平均粒子径]の比が0.005〜0.9である、
ことを特徴とする。
【0017】
鉄含有粉末
本発明で用いる鉄含有粉末(本発明粉末)は、粉末はピロリン酸第二鉄及びナトリウム成分を含み、
(1)前記粉末中におけるピロリン酸第二鉄の含有量が95重量%以上であり、
(2)前記粉末における[(Fe+Na)/P]のモル比が0.8〜1.0であり、
(3)前記粉末における[最頻細孔直径/平均粒子径]の比が0.005〜0.9
であることを特徴とする。
【0018】
一般に、ピロリン酸第二鉄は化学式Fe(Pで示される化合物である一方、溶解性ピロリン酸第二鉄と呼ばれる化合物は確定した化学式をもたず、ピロリン酸第二鉄とピロリン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等との混合物として扱われており、これらナトリウム化合物自身の溶解特性が反映され、水に対する溶解性が高く、ナトリウムがほぼ全量溶解する。これに対し、本発明粉末は、ピロリン酸第二鉄と特定量のナトリウムとが複合化(一体的に固定化)した成分から構成されるものであるので、本発明粉末における水に対するナトリウムの溶出量も極めて低く、通常0.30mg/mL以下(90℃)、特に0.20mg/mL以下(90℃)である。従って、本発明粉末は、上記のような混合物とは明確に区別されるものである。
【0019】
また、本発明粉末では、本発明粉末を構成する個々の粒子中にピロリン酸第二鉄と特定量のナトリウムとが複合化した成分が含まれる。本発明粉末に含まれるナトリウムは、特に本発明粉末の製造時の出発原料(ナトリウム供給源)由来のナトリウムであることが上記複合化という点から望ましい。このような粉末は、後記に示すような製造方法によってより確実に製造することができる。
【0020】
前記のピロリン酸第二鉄とナトリウム成分とが複合化した成分は、通常は非晶質体である。従って、例えばX線回折分析ではナトリウム化合物による明確なピークは認められない。
【0021】
本発明粉末におけるピロリン酸第二鉄の含有量は通常95重量%以上であり、特に98重量%以上であることが好ましい。ピロリン酸第二鉄の含有量の上限値は限定的でないが、通常は99重量%程度とすれば良い。
【0022】
本発明粉末における[(Fe+Na)/P]モル比は、通常0.8〜1.0程度とし、特に0.82〜0.99とすることが好ましい。上記モル比が0.8未満の場合は、pH3.0の水に対する鉄の溶出性が低いため、十二指腸での鉄の溶出性が低くなる。上記モル比が1.0を超える場合は、pH1.2の水に対する溶出性が高いため、十二指腸までに到達する粉末中のピロリン酸第二鉄の含有量が少なくなり、十二指腸での鉄の溶出量が少なくなる。
【0023】
また、本発明粉末中におけるナトリウムの含有量は、上記モル比を満たす限りは限定されないが、通常は0.5〜4.5重量%であり、特に1〜4.5重量%程度とし、特に1〜4重量%とすることが好ましい。このような範囲内に設定することによって、より高い鉄分吸収性を得ることができる。
【0024】
本発明粉末における[最頻細孔直径/平均粒子径]の比は、通常0.005〜0.9であり、特に0.01〜0.5であることが好ましい。最頻細孔直径(モード径の直径)と平均粒子径の比は、本発明粉末を構成する粒子の外部表面における開口部の大きさを示し、その数値が高いほど液体中での液体との界面が増加し、分散性を高めることができる。その結果、食品中で凝集体を形成しにくくなり、食感等が良好な鉄含有飲食品を提供することが可能となる。
【0025】
なお、本発明粉末(粒子)が有する細孔における最頻細孔直径(モード径)も限定されないが、一般的には600nm以下であり、特に500nm以下とすることが本発明の効果を達成する上で好ましい。
【0026】
本発明粉末の性状は、通常は粉末(乾燥粉末)の形態をとり得るが、この場合の平均粒径は限定されないが、通常は1〜100μm程度とし、特に1〜50μmとすれば良い。なお、必要に応じて、水等を含む液状媒体に本発明粉末を分散させることにより分散液、ペースト等の液体の形態で使用することもできる。なお、本発明粉末は、例えば図1に示すように、一次粒子が凝集した高次構造をもち、本発明における平均粒子径はその凝集体の粒子径の平均値を示す。平均粒子径は試料を3分間超音波攪拌(超音波出力40W)した後に水中に分散させてレーザー回折法により水溶媒中にて測定を行った。測定装置としてMicrotrac社製「MICROTRAC MT3300EXII」を用いて測定した値とする。
【0027】
本発明粉末の比表面積は限定的でないが、通常は10m/g以上であり、特に15m/g以上とすることが本発明の効果の見地より好ましい。なお、比表面積の上限は特に限定されないが、通常は40m/g程度とすれば良い。
【0028】
鉄含有粉末の製造方法
本発明粉末は、例えば以下のような製造方法により好適に調製することができる。すなわち、水性溶媒中で水溶性第二鉄塩、ピロリン酸塩及び炭酸塩を反応させることにより反応生成物を得るに際し、前記反応生成物の(Fe+Na)/Pモル比が0.8〜1.0となるように添加及び混合することにより、前記反応生成物を含む水性スラリーを調製する工程(反応工程)を含む、ことを特徴とする製造方法を好適に採用することができる。
【0029】
a)反応工程
反応工程では、水性溶媒中において、水溶性第二鉄塩、ピロリン酸塩及び炭酸塩を反応させることにより反応生成物を得るに際し、前記反応生成物の(Fe+Na)/Pモル比が0.8〜1.0となるように添加及び混合することにより、前記反応生成物を含む水性スラリーを調製する。
【0030】
水溶性鉄塩としては、特に限定されるものではなく、例えば塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硫酸第二鉄アンモニウム、硝酸第二鉄、臭化第二鉄、ギ酸第二鉄、酢酸第二鉄、クエン酸鉄、クエン酸鉄アンモニウム等が挙げられる。特に、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄等の少なくとも1種が好ましく、その中でも塩化第二鉄及び硫酸第二鉄の少なくとも1種がより好ましい。最も好ましいのは塩化第二鉄である。
【0031】
ピロリン酸塩としては、特に限定されるものではなく、例えばピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、ピロリン酸リチウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム等が挙げられる。特に、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸ナトリウム等の少なくとも1種が好ましく、さらにはピロリン酸ナトリウム及びピロリン酸カリウムの少なくとも1種が好ましく、ピロリン酸ナトリウムが最も好ましい。
【0032】
炭酸塩は、特に限定されず、例えば炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム等が挙げられる。その中でも、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等の少なくとも1種が好ましく、特に炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムの少なくとも1種がより好ましく、炭酸ナトリウムが最も好ましい。
【0033】
本発明の製造方法では、水溶液鉄塩、ピロリン酸塩及び炭酸塩を反応生成物の(Fe+Na)/Pモル比が0.8〜1.0となるように添加及び混合するので、特に前記ピロリン酸塩及び炭酸塩の少なくとも一方をナトリウム塩とする。特に、本発明では、ナトリウム供給源として炭酸塩を用いることが好ましい。
【0034】
水性媒体としては、水及び水溶性有機溶媒の少なくとも1種を好適に使用することができる。水溶性有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類を好ましく使用することができる。本発明では、特に水を用いることが好ましい。水性媒体の使用量は特に制限されず、通常は反応生成物の固形分濃度が0.1〜40重量%、さらに好ましくは0.3〜50重量%程度となるように適宜調製すれば良い。
【0035】
本発明の製造方法では、水性媒体に水溶液鉄塩、ピロリン酸塩及び炭酸塩を配合する方法であっても良いし、これらを予め水溶液の形態としたうえで添加及び混合しても良い。この場合の各水溶液の濃度は限定的ではないが、通常は水溶液鉄塩では1〜2mol/L、ピロリン酸塩では0.1〜1mol/L、炭酸塩では0.01〜0.15mol/L程度の範囲内とすれば良い。
【0036】
また、本発明では、必要に応じて水性媒体中にpH調整剤等を適宜配合することもできる。pH調整剤としては、例えばフッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、塩化アルミニウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水等を用いることができる。
【0037】
本発明の製造方法においては、これら所定の割合となるように秤量された出発原料を水性媒体中で混合し、反応させることによって、所望の反応生成物を含む水性スラリーを得ることができる。原料仕込み量として、例えば(Fe+Na)/Pモル比が2.7から3.1となるように設定することが望ましい。これによって、より確実に所望のピロリン酸第二鉄含有粉末を調製することが可能となる。
【0038】
反応温度は、特に限定的ではなく、例えば5〜50℃、特に15〜35℃の範囲内で適宜設定すれば良い。また、反応雰囲気としては特に限定的ではないが、大気中(大気圧下)とすれば良い。
【0039】
反応時(反応中)における反応系のpHは特に限定されないが、粒子径を制御できるという点において通常1.0〜5.0程度とし、特に1.5〜3.0とすることが好ましく、さらには1.6〜2.2とすることがより好ましい。また、本発明の製造方法において、すべての出発原料を添加した後の反応生成物を含む水性スラリーのpHは、水酸化鉄のような副生成物の生成を抑制するという点において、2.0〜5.0の範囲内となるように調整することが好ましい。なお、これらのpH調整は、各原料の添加速度を調節する方法のほか、公知のpH調整剤(例えばフッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、塩化アルミニウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水等)の添加による方法等を採用すれば良い。
【0040】
このようにして反応生成物を含む水性スラリーが得られるが、必要に応じてさらに熟成工程を実施することもできる。熟成工程では、出発原料の添加がすべて完了した後の混合液を一定時間撹拌し続けることによって実施することができる。これにより、ピロリン酸第二鉄の生成反応を促進することができる。熟成工程の温度は通常5〜80℃程度とすれば良く、特に10〜50℃とすることが好ましい。また、熟成時間は、出発原料の添加がすべて完了した直後から0.15〜5時間程度とすれば良く、特に0.15〜1時間とすることが好ましい。
【0041】
なお、熟成工程における上記水性スラリーの固形分濃度は特に限定されないが、通常は1〜20重量%程度とし、特に3〜15重量%とすることが好ましい。固形分濃度を調整するために脱水又は水の添加を適宜実施することもできる。
【0042】
b)その他の工程
前記の水性スラリーは、通常は反応生成物である本発明粉末が分散した液体であるので、そのまま使用することもできるが、必要に応じて固液分離工程、水洗工程、乾燥工程、粉砕・分級工程等のいずれかの工程に供することもできる。
【0043】
固液分離工程
固液分離工程では、前記水性スラリーを固液分離することによって固形分を回収する。固液分離方法は、公知の方法に従えば良く、例えばろ過、遠心分離等の各種の脱水方法を採用することができる。
【0044】
水洗工程
前記水性スラリーは、固液分離工程の前工程及び/又は後工程として水洗工程を実施することもできる。水洗工程により、反応生成物中に含まれる副生成物、不純物等が含まれる場合、これらを効果的に除去することができる。
【0045】
水洗工程は、固液分離工程と交互に繰り返すことにより好適に実施することができる。従って、水洗工程は、例えば加圧ろ過、減圧濾過、真空ろ過、自然ろ過、遠心ろ過等の一般的なろ過方法により水性スラリーを脱水し、得られた固形分を一般的な水洗設備を用いることにより水で洗浄を行った後、例えばフィルタープレス、遠心分離機等を用いることにより固液分離するという一連の工程を1回又は2回以上実施すれば良い。
【0046】
なお、水洗工程の終点は、例えばフィルタープレス等による場合、水洗ろ液の導電率(22℃)を100〜200μS/cmとすれば良く、さらに好ましくは100〜150μS/cmとすれば良い。
【0047】
乾燥工程
固液分離後又は水洗工程後の固形分は、必要に応じて乾燥工程に供することができる。乾燥温度は20〜400℃の範囲内で適宜設定すれば良いが、特に80〜120℃で行うのが好ましい。乾燥時間は、乾燥温度により適時設定することができるが、強熱減量で30%以下、特に好ましくは20%以下になるように乾燥時間を設定することが好ましい。
【0048】
乾燥方法としては限定的でなく、例えば温風乾燥、赤外線乾燥、ホットプレート乾燥、真空乾燥、吸引乾燥と蒸気乾燥、温純水引上げ乾燥・マランゴニ乾燥・エアナイフ水切り・スピン乾燥、ロール乾燥が「液きり」等の一般的な方法を用いることにより乾燥することができ、例えば、静置式の棚段・箱形乾燥機、スプレードライヤー、バンド乾燥機、真空乾燥機、凍結乾燥機、マイクロ波乾燥機、ドラムドライヤー、流動乾燥機等の一般的な乾燥設備を用いることができる。
【0049】
粉砕工程
生成した本発明粉末は、必要に応じて粉砕することができる。粉砕方法としては、例えば乾式粉砕、湿式粉砕、凍結粉砕等の一般的な方法を用いることができる。粉砕装置としても、例えばジェットミル、フェザーミル、ハンマーミル、パルペライザー、ボールミル、ビーズミル等一般的な設備で粉砕を行うことができる。粉砕の程度は適宜調整できるが、一般的には粉砕後の平均粒子径が1〜100μm程度、特に1〜50μmとすることが好ましい。なお、所望の粒子径に調整するために、粉砕物を適宜分級することもできる。
【0050】
分散工程
前記1.で説明したように、本発明粉末を液体の形態(分散体)で使用する場合は、固液分離工程、水洗工程、乾燥工程、粉砕工程等のいずれかの工程で得られた本発明粉末又はその水性スラリーを用いて、その分散体を調製すれば良い。分散体の調製に際しては、例えば撹拌機、乳化機、湿式粉砕機、遊星ボールミル等の公知の装置を用いることができる。また、分散性を高めるための分散剤のほか、各種の添加剤を適宜配合しても良い。
【0051】
鉄含有粉末を含む飲食品
本発明の鉄含有粉末を含む飲食品(本発明飲食品)は、本発明粉末を含むものであり、既製の飲食品又はその原料に本発明粉末を添加することにより本発明飲食品を提供することができる。飲食品の原料に添加する場合は、その添加時期は限定的でなく、製造工程中のいずれかの段階で本発明粉末を添加することができる。
【0052】
本発明粉末を添加する場合、本発明の効果を妨げない範囲内において、必要に応じて予め本発明粉末に対して公知のマスキング処理(コーティング処理)を施すこともできるが、製造工程の簡略化、鉄分の高濃度化等を図るうえで、本発明粉末にマスキング処理を施すことなく、本発明粉末を飲食品に添加することが好ましい。すなわち、本発明粉末を構成する粒子表面にはコーティング処理に伴うマスキング層(特にコーティング層)が実質的に存在しないことが好ましい。
【0053】
本発明飲食品における本発明粉末の添加量(含有量)は、特に限定されるものではないが、飲食品の摂取量に応じて鉄の量が過剰量とならないように添加すれば良い。好ましくは、消費者が直接摂取する最終製品の量に応じて添加量を調整すれば良い。例えば日本人の食事摂取基準(2015年版)に示されているように、成人の一日の摂取量の目安である鉄として5〜15mg程度を摂取できるように配合すれば良い。なお、最終製品に鉄を添加するための中間製品の場合は、最終製品に添加する中間製品の量に応じて消費者が摂取する鉄量が決定されるが、中間製品に含まれる鉄含量で通常0.5〜30重量%程度とし、好ましくは1.2〜30重量%とすれば良い。
【0054】
本発明粉末の添加方法としては、特に限定されるものではなく、例えば1)本発明粉末を乾燥粉末の状態で添加し、混合する方法、2)予め本発明粉末を水又は親水性有機溶媒に懸濁させ、化学的分散方法あるいは粉砕機及び/又は分散機を用いる物理的方法により本発明粉末を粉砕及び/又は分散処理した後、添加、混合する方法等を採用することができる。
【0055】
なお、本発明粉末を添加するに際し、本発明の効果を妨げない範囲内において、例えば増粘多糖類、乳化剤、香料、色素、酸化防止剤、日持ち向上剤、保存料、糖類等の添加剤も添加することができる。これらを併用することで本発明飲食品の味質、香り、テクスチャー等に変化を与えることができ、より高い嗜好性を付与することができる。
【0056】
本発明飲食品は、消費者に直接摂取される製品(最終製品)のほか、最終製品に鉄分を添加するための中間製品も包含する。中間製品としては、例えば本発明粉末及び添加物から構成される食品添加物製剤又は製造専用の食品材料が挙げられる。前記の添加物としては、限定的でなく、例えば増粘多糖類、乳化剤、香料、色素、酸化防止剤、日持ち向上剤、保存料、糖類等の添加物が挙げられる。
【0057】
本発明飲食品の性状も特に限定されず、公知の飲食品がとり得る形態(液体又は固体)のいずれであっても良い。液体としては、例えば水又はそれに近い粘性の液体のほか、水よりも粘度が高粘性液体(例えばスラリー状物)でも良い。固体としては、例えば成形体(タブレット、ペレット、棒状体、板状体等)、粉末、顆粒、造粒物等が挙げられる。また、乾燥物でも良いし、含水物(ゲル状物等)であっても良い。また、本発明飲食品は、保存時及び流通時における形態は固形であって、用時において溶媒(水、飲料等)により当該飲食品を液状化するものも包含される。さらに、本発明飲食品は、必要に応じて製剤化しても良く、例えば錠剤、散剤、カプセル剤等の各種の剤形を採用することもできる。
【0058】
本発明飲食物の種類(分類)も、本発明粉末が添加できる限り特に制限されず、既存の飲食品のいずれにも適用することができる。例えば、調味料(醤油、ドレッシング、ソース、ケチャップ、つゆ等)、食用油(サラダ油、動物性油脂等)、スプレッド類(ジャム・マーマレード、ピーナッツ・チョコクリーム等)、乳製品(バター、マーガリン・ファストスプレッド類、チーズ、スキムミルク、フレッシュクリーム、ホイップクリーム等)、調理品(インスタントカレー、インスタントシチュー、ソースミックス、レンジ専用食品、米飯加工品等)、スープ(調理用スープ、インスタントスープ等)、冷凍食品(冷凍麺、冷凍調理、冷凍米飯加工品等)、缶詰(水産缶詰、マグロ・カツオ缶詰、果実・デザート缶詰等)、粉類(小麦粉、天ぷら粉、パン粉、片栗粉、唐揚げ粉類等)、ホームメーキング材料(プレミックス、シロップ、デザートの素等)、麺類(乾麺、生麺・ゆで麺、インスタント袋麺、カップ麺、スパゲッティ、マカロニ等)、パン・シリアル類(食パン、菓子パン、調理パン等)、穀物(米、包装餅等)、加工肉類(畜肉ハム、畜肉ソーセージ、魚肉ソーセージ等)、練り製品(蒲鉾、竹輪、はんぺん、揚げ物等)、漬物・佃煮(漬物、佃煮、いりぬか・漬物の素等)、水物(豆腐、コンニャク、油揚げ、納豆等)、惣菜類(サラダ、煮豆、中華惣菜、洋惣菜等)、菓子(キャンディ・キャラメル、チョコレート、チューインガム、ビスケット・クッキー、米菓、生菓子、半生菓子、スナック等)、デザート・ヨーグルト(デザート類、ヨーグルト等)、アイスクリーム類(プレミアムアイス、ファミリーアイス等)、嗜好飲料(インスタントコーヒー、レギュラーコーヒー、ココア、紅茶、日本茶、麦茶、中国茶等)、果実飲料(果汁飲料、果肉飲料、野菜ジュース、トマトジュース等)、清涼飲料(コーラ、炭酸フレーバー、コーヒードリンク、ココアドリンク、紅茶ドリンク、日本茶・麦茶ドリンク、中国茶ドリンク、炭酸水、スポーツドリンク、栄養ドリンク、ビネガードリンク等)、乳飲料(牛乳、豆乳、乳酸飲料、乳酸菌飲料等)、アルコール飲料(清酒、ビール、焼酎、ウイスキー、ブランデー、果実酒等)、乳幼児食品(育児用ミルク、ベビーフード等)、健康食品(健康食品、妊産婦用食品等)等が挙げられる。
【実施例】
【0059】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。なお、実施例中に記載の「%」「ppm」はそれぞれ「重量%」「重量ppm」を意味する。
【0060】
製造例1
ピロリン酸第二鉄含有粉末として、以下に示す試料をそれぞれ合成・用意した。これらの試料の物性を表1に示す。
【0061】
[試料1]
10tのタンクに1429kgの水を量りとり、1.81mol/Lの塩化第二鉄水溶液、0.56mol/Lのピロリン酸ナトリウム水溶液及び0.10mol/Lの炭酸ナトリウム水溶液を原料仕込みモル比(Fe+Na)/Pが2.84になるように前記水に添加して40Hzで撹拌した。添加終了後、室温で10分間攪拌して熟成を行い、反応生成物を含む水性スラリーを得た。熟成終了後の最終pHは3.45であった。熟成後、この水性スラリーをろ過して脱水し、水洗した。得られた反応生成物を乾燥機に入れて乾燥し、乾燥品をパルベライザーにて粉砕して試料1を得た。
【0062】
[試料2]
10tのタンクに1429kgの水を量りとり、1.81mol/Lの塩化第二鉄水溶液、0.56mol/Lのピロリン酸ナトリウム水溶液及び0.13mol/Lの炭酸ナトリウム水溶液を原料仕込みモル比(Fe+Na)/Pが2.90になるように前記水に添加して40Hzで撹拌した。添加終了後、室温で10分間攪拌して熟成を行い、反応生成物を含む水性スラリーを得た。熟成終了後の最終pHは2.48であった。熟成後、この水性スラリーをろ過して脱水し、水洗した。得られた反応生成物を乾燥機に入れて乾燥し、乾燥品をパルベライザーにて粉砕して試料2を得た。
【0063】
[試料3]
比較のための試料3として、米山化学工業株式会社製「ピロリン酸第二鉄」(Lot No. 408044)を用いた。
【0064】
[試料4]
比較のための試料4として、ポールローマン社製「ピロリン酸第二鉄」(Lot No. 1039686)を用いた。
【0065】
【表1】
【0066】
実施例1
市販の脱脂粉乳(雪印メグミルク株式会社製「北海道スキムミルク」)に水を添加し、規定量で調整した脱脂粉乳100重量部に試料1を1重量部添加し、容器中で転倒混和することにより前記試料を懸濁させることにより鉄含有飲料を得た。
【0067】
実施例2
試料1に代えて試料2を使用したほかは、実施例1と同様にして鉄含有飲料を得た。
【0068】
比較例1
試料1に代えて試料3を使用したほかは、実施例1と同様にして鉄含有飲料を得た。
【0069】
比較例2
試料1に代えて試料4を使用したほかは、実施例1と同様にして鉄含有飲料を得た。
【0070】
実施例3
市販の清涼飲料水(大塚製薬株式会社製「ポカリスエット」)100重量部に試料1を1重量部添加した後、容器中で転倒混和することにより前記試料を懸濁させることにより鉄含有飲料を得た。
【0071】
実施例4
試料1に代えて試料2を使用したほかは、実施例3と同様にして鉄含有飲料を得た。
【0072】
比較例3
試料1に代えて試料3を使用したほかは、実施例3と同様にして鉄含有飲料を得た。
【0073】
比較例4
試料1に代えて試料4を使用したほかは、実施例3と同様にして鉄含有飲料を得た。
【0074】
実施例5
市販の豆乳(キッコーマンソイフーズ株式会社製「調製豆乳」)100重量部に試料1を1重量部添加した後、容器中で転倒混和することにより前記試料を懸濁させることにより鉄含有飲料を得た。
【0075】
実施例6
試料1に代えて試料2を使用したほかは、実施例5と同様にして鉄含有飲料を得た。
【0076】
比較例5
試料1に代えて試料3を使用したほかは、実施例5と同様にして鉄含有飲料を得た。
【0077】
比較例6
試料1に代えて試料4を使用したほかは、実施例5と同様にして鉄含有飲料を得た。
【0078】
試験例1
実施例1〜6及び比較例1〜6で得られた鉄含有飲料について、その鉄味の程度を表2に示す評価基準を用いて成人男女9名で4段階評価した。その結果を図2〜4に示す。なお、本試験例では数字が大きいほど鉄味がしないことを示す。
【0079】
【表2】
【0080】
図2図4の結果からも明らかなように、実施例1〜6では、鉄味が効果的に抑えられており、良好な風味が維持できることがわかる。一方、比較例1〜6では、実施例と比較して鉄味が目立ち、風味に悪影響を与えていることがわかる。
【0081】
実施例7
市販の清涼飲料水(大塚製薬株式会社製「ポカリスエット」)100重量部に試料1を1重量部添加した後、容器中で転倒混和することにより前記試料を懸濁させることにより鉄含有飲料を得た。
【0082】
実施例8
試料1に代えて試料2を使用したほかは、実施例7と同様にして鉄含有飲料を得た。
【0083】
比較例7
試料1に代えて試料3を使用したほかは、実施例7と同様にして鉄含有飲料を得た。
【0084】
比較例8
試料1に代えて試料4を使用したほかは、実施例7と同様にして鉄含有飲料を得た。
【0085】
実施例9
市販のヨーグルト飲料(株式会社明治製「明治ブルガリアのむヨーグルトLB81プレーン」)100重量部に試料1を1重量部添加した後、容器中で転倒混和することにより前記試料を懸濁させることにより鉄含有飲料を得た。
【0086】
実施例10
試料1に代えて試料2を使用したほかは、実施例9と同様にして鉄含有飲料を得た。
【0087】
比較例9
試料1に代えて試料3を使用したほかは、実施例9と同様にして鉄含有飲料を得た。
【0088】
比較例10
試料1に代えて試料4を使用したほかは、実施例7と同様にして鉄含有飲料を得た。
【0089】
実施例11
市販の豆乳(キッコーマンソイフーズ株式会社製「調製豆乳」)100重量部に試料1を1重量部添加した後、容器中で転倒混和することにより前記試料を懸濁させることにより鉄含有飲料を得た。
【0090】
実施例12
試料1に代えて試料2を使用したほかは、実施例11と同様にして鉄含有飲料を得た。
【0091】
比較例11
試料1に代えて試料3を使用したほかは、実施例11と同様にして鉄含有飲料を得た。
【0092】
比較例12
試料1に代えて試料4を使用したほかは、実施例11と同様にして鉄含有飲料を得た。
【0093】
試験例2
実施例7〜12及び比較例7〜12で得られた鉄含有飲料について、その食感を表3に示す評価基準を用いて成人男女9名で4段階評価した。その結果を図5図7に示す。なお、本試験例では数字が大きいほど食感が良好であることを示す。
【0094】
【表3】
【0095】
図5図7の結果からも明らかなように、実施例7〜12では、良好な食感が得られることがわかる。一方、比較例7〜12では、舌にざらつきを感じ、特に飲むヨーグルトを用いた場合には顕著な差が現れていることがわかる。このように、特定のピロリン酸第二鉄含有粉末を鉄剤として用いることにより、食感の良好な飲料を得ることができた。
【0096】
実施例13
水100重量部に対して試料1を1重量部添加した後、容器中で転倒混和することにより前記試料を懸濁させることにより鉄含有飲料を得た。
【0097】
実施例14
試料1に代えて試料2を使用したほかは、実施例13と同様にして鉄含有飲料を得た。
【0098】
比較例13
試料1に代えて試料3を使用したほかは、実施例13と同様にして鉄含有飲料を得た。
【0099】
比較例14
試料1に代えて試料4を使用したほかは、実施例13と同様にして鉄含有飲料を得た。
【0100】
実施例15
市販の清涼飲料水(大塚製薬株式会社製「ポカリスエット」)100重量部に試料1を1重量部添加した後、容器中で転倒混和することにより前記試料を懸濁させることにより鉄含有飲料を得た。
【0101】
実施例16
試料1に代えて試料2を使用したほかは、実施例15と同様にして鉄含有飲料を得た。
【0102】
比較例15
試料1に代えて試料3を使用したほかは、実施例15と同様にして鉄含有飲料を得た。
【0103】
比較例16
試料1に代えて試料4を使用したほかは、実施例15と同様にして鉄含有飲料を得た。
【0104】
試験例3
実施例13〜16及び比較例13〜16で得られた鉄含有飲料中での分散性を調べた。より具体的には、鉄含有飲料の調製後10分、30分、1時間及び1日後にそれぞれ鉄含有飲料の外観を確認し、その分散状態の変化を調べた。鉄含有飲料の外観の観察結果を図10図11に示す。
【0105】
図10図11の観察結果に基づき、1日後の固液界面の高さを数値化し、最も沈降した場合を「1」としてその分散性を相対的に数値で表した。その結果を表4及び図8、表5及び図9にそれぞれ示す。
【0106】
【表4】
【0107】
【表5】
【0108】
これらの結果からも明らかなように、実施例13〜16は、比較例13〜16と比較して良好な分散性を発揮できることがわかる。このように、特定のピロリン酸第二鉄含有粉末を配合することにより、前記粉末が良好に分散した飲料を得ることができた。
【0109】
試験例4
試料1〜試料4について、粉末状態のままでの鉄味及び食感の評価を行った。その粉体の鉄味及び食感を成人9名で4段階評価した。試料1〜試料4の鉄味の評価結果を図12にそれぞれ実施例17(試料1)、実施例18(試料2)、比較例17(試料3)及び比較例18(試料4)として示す。また、試料1〜試料4の食感の評価結果を図13にそれぞれ実施例19(試料1)、実施例20(試料2)、比較例19(試料3)及び比較例20(試料4)として示す。鉄味及び食感の評価基準は、表6〜表7にそれぞれ示す。なお、数字が大きいほど鉄味がしないこと及び食感が良好であることを示している。
【0110】
【表6】
【0111】
【表7】
【0112】
これらの結果からも明らかなように、本発明粉末は、粉末のままでも鉄味が効果的に抑制されており、かつ、良好な舌触りが得られることがわかる。これにより、飲食品本来の良好な風味、食感が阻害されることなく、鉄吸収性の高い鉄強化食品を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明では、本発明粉末である特定のピロリン酸第二鉄に対してマスキング等の特別なコーティング処理を加える必要がなく、風味、食感等の嗜好性が有効に維持・確保された鉄分吸収性の高い飲食品を提供することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13