(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特に寒冷地などでは、断熱養生ではコンクリートの温度を5℃(部材厚が小さい場合には10℃程度)以上に保つことが難しい場合もある。また、ヒータ等を使用した加熱養生では火災のおそれがある。
【0007】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであって、屋外でのプレキャストコンクリートの養生において、安全を確保しつつ初期凍害を防止できるコンクリート養生方法および養生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のある実施の形態にかかるコンクリート養生方法は養生装置を用いたコンクリート養生方法であって、養生装置は、下面開口状のカバー筐体と、カバー筐体に内包された加熱された蓄熱材と、を有し、カバー筐体を、未硬化コンクリートが内側に打設された型枠に覆設し、所定の養生期間、カバー筐体の型枠に対する被覆状態を維持する。
コンクリート養生時に、加熱された蓄熱材が内包されたカバー筐体を未硬化コンクリートが内側に打設された型枠に対して上方から覆設して所定の養生期間、被覆状態を維持することによって、被覆ブロックのように屋外などの温度管理が難しい環境下でコンクリートを養生する場合であっても、養生時の温度管理を容易に行うことができる。このとき、養生空間を保温する熱源として蓄熱材を用いることによって、火災のおそれがない。その結果、屋外でのプレキャストコンクリートの養生において、安全を確保しつつ初期凍害を防止することができる。
【0009】
好ましくは、蓄熱材はカバー筐体の側面の内面に取り付けられる。
これにより、カバー筐体の各面のうちの側面の強度を蓄熱材が取り付け可能な強度に設計すればよく、上面などの他の面の強度を高強度とする必要がない。また、蓄熱材から供給された熱がカバー筐体内全体に拡散されやすく、コンクリートを効果的に保温できる。
【0010】
好ましくは、カバー筐体は、1または複数の蓄熱材を着脱可能に内面に取り付けるための取付部材を有する。
カバー筐体が該取付部材を有することによって、カバー筐体内面に取り付ける蓄熱材の種類や個数を可変とすることができる。これによって、型枠やカバー筐体のサイズや外気温などの養生条件に応じて柔軟に蓄熱材の種類や個数を最適なものに選定できる。
【0011】
好ましくは、カバー筐体内面に取り付けられる蓄熱材の蓄熱量および個数は、養生装置の総熱必要量に基づいて決定され、総熱必要量は、養生装置の単位時間あたりの熱損失量に蓄熱材の給熱効果が必要となる時間を乗じて得られる。
これにより、コンクリートが特に寒冷地の屋外において養生される際に適した蓄熱材13の蓄熱量および個数を選定することができる。
【0012】
この発明のある実施の形態にかかる養生装置はコンクリートの養生に用いる養生装置であって、未硬化コンクリートが内側に打設された型枠に覆設される、下面開口状のカバー筐体を備え、カバー筐体は、内面に1つまたは複数の蓄熱材を着脱自在に取り付けるための取付部材を有する。
コンクリートの養生に当該養生装置を用いることによって、加熱された蓄熱材をカバー筐体内面に取り付け、該蓄熱材が取り付けられたカバー筐体を未硬化コンクリートが内側に打設された型枠に対して上方から覆設して所定の養生期間、被覆状態を維持することができる。これによって、被覆ブロックのように屋外などの温度管理が難しい環境下でコンクリートを養生する場合であっても、養生時の温度管理を容易に行うことができる。このとき、養生空間を保温する熱源として蓄熱材を用いることによって、火災のおそれがない。その結果、屋外でのプレキャストコンクリートの養生において、安全を確保しつつ初期凍害を防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によると、被覆ブロックなどの屋外でのプレキャストコンクリートの養生において、安全を確保しつつ初期凍害を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照しつつ、好ましい実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらの説明は繰り返さない。
【0016】
<コンクリート養生装置の概要>
図1(A),(B)は、本実施の形態にかかるコンクリート養生装置(以下、養生装置)1の概略を示した図である。
図2は、養生装置1の設置の仕方の他の例を示した図である。
図1(A)および
図2は概略垂直断面図、
図1(B)は概略平面図である。
【0017】
図1(A),(B)を参照して、本実施の形態にかかる養生装置1は、下面開口状カバー筐体10と、保温シート11と、1つまたは複数の蓄熱材13と、を備える。
【0018】
<カバー筐体>
カバー筐体10は、一例として、カバー筐体10は、
図1(A)〜
図2に示されたように、パネル状の側面および上面を有して底面を有しない立方体または直方体のかぶせ蓋状の形状である。カバー筐体10は
図1(A)〜
図2に示された箱形状に限定されない。たとえば、底の開放したピラミッド形状やドーム型や釣鐘型であってもよい。また、後述する保温シート11の保温性や防水性によっては、上面を有さず側面のみの柵状であってもよい。カバー筐体10は下面開口状であるため、養生するコンクリートに覆設可能である。
【0019】
養生するコンクリートは、型枠21内に打設された未硬化のコンクリートである。未硬化のコンクリートが内側に打設された型枠21は、地盤などの基面に静置される。好ましくは、基面は、
図2に示されたように、地盤の上に敷設された断熱材14である。養生装置1は、カバー筐体10内部に型枠21が位置するようにカバー筐体10を基面上に配置して、型枠21に対して覆設される。
【0020】
<被覆ブロック>
型枠21内に打設されたコンクリートはプレキャストコンクリートであって、たとえば被覆ブロックである。
図3は、被覆ブロック2の一例を表した概略図である。被覆ブロック2は、型枠21内にコンクリートを打設されて成形される。
【0021】
被覆ブロックは、防波堤や護岸堤等における法面など被覆する防護工として用いられ、重量は一般的には2t〜10t程度である。そのため、運搬等を考慮して施工現場付近の屋外で打設される場合がある。本実施の形態にかかる養生装置1は、屋外で打設されたプレキャストコンクリートの養生に用いられるものであって、屋外で打設され、屋外に配置された被覆ブロック2の養生に用いられる場合について説明する。なお、養生装置1を養生に用いるコンクリートは被覆ブロックに限定されない。養生装置1は屋外で打設され、未硬化のプレキャストコンクリート全般の養生に用いることができる。
【0022】
<保温シート>
保温シート11は保温効果の優れ、かつ柔軟な布状の部材である。たとえば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンなどからなる各種材料の合成樹脂製シート(いわゆるブルーシート)や、多重にしたシート間に円柱状の空気柱を設けた気泡緩衝材や、熱を反射するアルミニウム、ステンレスなどの金属系フィルムや、それらを組み合わせた素材、などで成形される。保温シート11は、たとえば、川上産業株式会社製のアルミプチ(登録商標)といわゆるブルーシートであるポリ塩化ビニルシートとを重ねて用いることができる。
【0023】
保温シート11は、カバー筐体10の外周、すなわち、カバー筐体10の側面および上面に覆設され、好ましくは、図示されない紐や粘着テープなどの束縛部材によって、カバー筐体10に束縛される。
【0024】
<蓄熱材>
1つまたは複数の蓄熱材13は、カバー筐体10に内包される。蓄熱材13は、潜熱蓄熱材である。好ましくは、蓄熱材13は5Kg程度以下の、人が手で持ち運び可能なサイズおよび重量である。
【0025】
好ましくは、蓄熱材13は、カバー筐体10の内面に着脱可能に取り付けられる。より好ましくは、蓄熱材13は、カバー筐体10側面の内側に取り付けられ、上面には取り付けられない。蓄熱材13がカバー筐体10側面にのみ取り付けられることで、カバー筐体10の各面のうちの側面の強度を蓄熱材13が取り付け可能な強度に設計すればよく、上面の強度を高強度とする必要がない。また、蓄熱材13から供給された熱がカバー筐体10内全体に拡散されやすく、被覆ブロック2を効果的に保温できる。
【0026】
好ましくは、カバー筐体10は、1または複数の蓄熱材13を着脱可能に内面に取り付けるための取付部材を有する。カバー筐体10が該取付部材を有することによって、カバー筐体10内面に取り付ける蓄熱材13の種類や個数を可変とすることができる。これによって、型枠21やカバー筐体10のサイズや外気温などの養生条件に応じて柔軟に蓄熱材13の種類や個数を最適なものに選定できる。
【0027】
蓄熱材13は、たとえば、株式会社ヤノ技研製のエネバンク(登録商標)を用いることができる。
図4は、蓄熱材13がカバー筐体10へ取り付けられた様子の一例を表した図である。
図4では、蓄熱材13としてエネバンク(登録商標)のBタイプが用いられている。この場合、蓄熱材13は平板形状で、1または複数の孔13aが設けられている。
【0028】
図4を参照して、カバー筐体10は、取付部材の一例としての取付部材10aを有している。取付部材10aは、カバー筐体10側面の内側に底辺と平行に横架された棒状部材である。蓄熱材13には取付用の機構として1または複数の孔13aが設けられ、フックや紐などの懸架部材15を孔13aに挿通して蓄熱材13を取付部材10aに懸架させる。
【0029】
他の例として、取付部材は、カバー筐体10側面から内側に向けて突起する形状の部材であってもよい。この場合、蓄熱材13は、たとえば、取付部材の突起した形状の上に載置される。
【0030】
一例として、「寒中コンクリート施工指針・同解説」(2010年1月改訂版(第5版) 日本建築学会)の第9章「保温養生」(以下、指針)に準拠して蓄熱材13と養生装置1内部に設置する個数とを選定することができる。
【0031】
詳しくは、養生装置1内部の総熱必要量Q
ALL(Kcal)は、養生装置1内部の失われる時間当たりの熱損失量(単位時間熱損失量)Q(Kcal/h)および蓄熱材の給熱効果が必要となる時間t(h)を用いて下の式(1)で表される。
Q
ALL=Q×t …式(1)
【0032】
ここで、単位時間熱損失量Qは、養生装置1内部の単位時間・温度差1℃あたりの熱損失量(単位温度熱損失量)Q1(Kcal/m
2h℃)、計画養生温度Ti(℃)、および仮定した初期養生期間の予想平均気温Tme(℃)を用いて下の式(2)で表される。
Q=Q1×(Ti−Tme) …式(2)
なお、予想平均気温Tmeは、たとえば、初期養生期間の平均気温の平年値Tsme(℃)や、平年値Tsme(℃)から所定温度(たとえば4℃)を減じた値でもよい。
【0033】
さらに、単位温度熱損失量Q1は、養生装置1を構成する部材それぞれの熱損失係数Kn(Kcal/m
2h℃)および該部材それぞれの面積Sn(m
2)を用いて下の式(3)で表される。
Q1=Σ(Kn×Sn) …式(3)
【0034】
従って、養生装置1を構成する各部材の熱損失係数Knおよび面積Snを式(3)に代入することで養生装置1の単位温度熱損失量Q1が得られ、その単位熱損失量Q1を式(2)に代入することで単位時間熱損失量Qが得られる。さらに単位時間熱損失量Qを式(1)に代入することで養生装置1内部の総熱必要量Q
ALLを得ることができる。
【0035】
養生装置1内部の総熱必要量Q
ALLは、蓄熱材13の蓄熱量qn(Kcal)と養生装置1内部に設置する蓄熱材13の個数Nn(個)とを用いて下の式(4)で表される。
Σ(Qn×Nn)=Q
ALL …式(4)
従って、算出された総熱必要量Q
ALLに対して式(4)を満たす蓄熱量qnの蓄熱材を蓄熱材13と選定し、養生装置1内部に設置する蓄熱材13の個数をNn(個)と選定することができる。
【0036】
上記指針に示された方法では、カバー筐体10内面に取り付けられる蓄熱材13の蓄熱量および個数が、養生装置1の単位時間あたりの熱損失量Qに蓄熱材の給熱効果が必要となる時間tを乗じて得られる、養生装置1の総熱必要量Q
ALLに基づいて決定される。これにより、被覆ブロック2が、特に寒冷地の屋外において養生される際に適した蓄熱材13の蓄熱量および個数を選定することができる。
【0037】
<コンクリートの養生方法>
図5は、養生装置1を用いたコンクリート養生方法を説明するための図である。
図5を参照して、被覆ブロック2の打設現場近傍でカバー筐体10が組み立てられ、外周に保温シート11が覆設される(ステップS1)。次に、加熱された蓄熱材13が、たとえば上記のように選定した個数、カバー筐体10の側面内側に取り付けられる(ステップS2)。ステップS1,2は逆順でもよい。
【0038】
被覆ブロック2の打設現場において地盤上または図示しない断熱材上に型枠21がセットされ(ステップS3)、その内側に未硬化コンクリートが打設される(ステップS4)。
【0039】
養生装置1には吊下用ワイヤなどの吊下部材が接続され、クレーン等の揚重機によって吊り上げられる。養生装置1は被覆ブロック2の打設現場まで移動され、被覆ブロック2の上方から下降されて被覆ブロック2に覆設される(ステップS5)。所定の養生期間、養生装置1による被覆ブロック2の被覆状態が維持される。
【0040】
養生期間が経過すると、養生装置1は再びクレーン等の揚重機によって吊り上げられ、撤去される(ステップS6)。その後、型枠21が解体されて撤去され、被覆ブロック2が完成する(ステップS7)。撤去された養生装置1は転用される(ステップS8)。
【0041】
<検証試験>
発明者らは、養生装置1の効果を検証するための試験を行った。
図6(A)〜
図6(D)は検証試験に用いた養生装置1およびコンクリートブロック体2’の概略図である。
図7は、試験結果を表した図である。
【0042】
検証試験は、養生装置1内部に蓄熱材13を設置する場合(蓄熱有)と、全く設置しない場合(蓄熱無)と、の2条件で行われた。蓄熱有の場合、上記指針に準拠して上記エネバンク(登録商標)を合計16個用いた。予め蓄熱材13を加熱して、カバー筐体10の4側面それぞれに、高さ方向に2つ、横方向に2つ並列して4つずつ設置した。
【0043】
図6(A),(B)を参照して、カバー筐体10は、上面および4側面それぞれが1500mmの正方形である、かぶせ蓋状の形状(底面のない立方体形状)である。保温シート11はカバー筐体10外周を完全に覆うサイズであって、川上産業株式会社製のアルミプチ(登録商標)と、いわゆるブルーシートであるポリ塩化ビニルシートとを、この順にカバー筐体10に覆設して用いた。蓄熱材13は、株式会社ヤノ技研製のエネバンク(登録商標)のBタイプ(種類:BE27)を用いた。
【0044】
図6(C),(D)を参照して、コンクリートブロック体2’は一辺500mmの立方体の型枠に未硬化コンクリートを打設してなる。縦2m横5mのコンクリート基礎の上にコンクリートブロック体2’を静置し、内部の中央に位置するようにコンクリートブロック体2’に覆設することでコンクリートブロック体2’を養生装置1によって密閉した。養生装置1の内部空間およびコンクリートブロック体2’内には、温度測定のための熱電対T1〜T5を
図6(A),(C),(D)に示された位置に配置した。
【0045】
コンクリートブロック体2’の打設直後から10分間隔で22時間後まで温度を測定した。
図7の横軸が経過時間(時間)、縦軸が温度(℃)で、以下に説明する各位置の測定温度の時間変化を表している。
【0046】
図7の「蓄熱有Co中央」および「蓄熱無Co中央」は、それぞれ、蓄熱材13有りの条件および蓄熱材13無しの状態で熱電対T3による測定結果を表している。熱電対T3はコンクリートブロック体2’中央に設置されている。熱電対T3で測定された温度は、コンクリートブロック体2’内部温度である。
【0047】
図7の「蓄熱有Co中5cm」および「蓄熱無Co中5cm」は、それぞれ、蓄熱材13有りの条件および蓄熱材13無しの状態で熱電対T4による測定結果を表している。熱電対T4はコンクリートブロック体2’中央から側面に向かって200mmずれた、コンクリートブロック体2’内部の位置、つまり、コンクリートブロック体2’側面の中心から中央に向かって50mm内側の位置に設置されている。熱電対T4で測定された温度は、コンクリートブロック体2’の側面の表面付近の内部温度と言える。
【0048】
図7の「蓄熱有Co上5cm」および「蓄熱無Co上5cm」は、それぞれ、蓄熱材13有りの条件および蓄熱材13無しの状態で熱電対T5による測定結果を表している。熱電対T5はコンクリートブロック体2’中央から上面に向かって200mmずれた、コンクリートブロック体2’内部の位置、つまり、コンクリートブロック体2’上面の中心から中央に向かって50mm内側の位置に設置されている。熱電対T5で測定された温度は、コンクリートブロック体2’の上面の表面付近の内部温度と言える。
【0049】
図7の「蓄熱有内部1m」および「蓄熱無内部1m」は、それぞれ、蓄熱材13有りの条件および蓄熱材13無しの状態で熱電対T1による測定結果を表している。熱電対T1は、コンクリートブロック体2’中央真上であって、コンクリート基礎から1000mm上に配置されている。熱電対T1で測定された温度は、養生装置1内部温度であって、コンクリートブロック体2’よりも上方の温度である。
【0050】
図7の「蓄熱有内部0.3m」および「蓄熱無内部0.3m」は、それぞれ、蓄熱材13有りの条件および蓄熱材13無しの状態で熱電対T2による測定結果を表している。熱電対T2は、コンクリートブロック体2’近傍であって、コンクリート基礎から300mm上に配置されている。熱電対T2で測定された温度は、養生装置1内部温度であって、コンクリートブロック体2’よりも下方の温度である。
【0051】
図7の「外気温」は養生装置1外部温度(外気温)であって、養生装置1から3mほど離たり、コンクリート基礎から1200mm上に配置された図示されない熱電対によって測定された温度である。当該温度は、養生装置1が設置された屋外の外気温と言える。
【0052】
図7の「外気温土間Co上」は養生装置1外部温度(外気温)であって、養生装置1から0.3mほど離たり、コンクリート基礎すぐ上に配置された図示されない熱電対によって測定された温度である。当該温度は、養生装置1が設置された位置の屋外の地表温度と言える。
【0053】
図7の結果より、外気温はコンクリートブロック体2’打設後、5時間経過時に−3℃付近まで低下している。この気温条件下において、養生装置1内部に蓄熱材13が設置されていない試験条件下では、打設直後から急激に低下し、打設後5時間時に−1℃付近に達している。これに対して蓄熱材13が設置された試験条件下では、養生装置1内部温度は8〜14℃を維持して推移している。
【0054】
また、コンクリートブロック体2’上面の表面付近の内部温度は、養生装置1内部に蓄熱材13が設置されていない試験条件下では打設直後から低下し、打設後5時間経過時に約7℃、10時間経過時に約5℃に達した。これに対して蓄熱材13が設置された試験条件下では、打設直後から5時間が経過するまで当初温度(約10℃)から大きく変化がなかった。コンクリートブロック体2’中央温度は、その後、徐々に温度上昇して打設後13時間経過時に約12℃程度に達した。上面の表面付近温度および側面の表面付近温度は、10℃付近で推移している。
【0055】
この試験から、当該試験条件下では、打設後5時間が経過するまではコンクリートブロック体2’中央の温度と表面付近の温度との差がほとんどなく、打設後5時間から10時間経過までの差も、蓄熱材13が設置されていない試験条件下での差よりも格段に小さいことがわかる。これより、屋外などの温度管理の困難な環境におけるコンクリートの養生において、養生装置1内部に蓄熱材13を配置することが初期凍害の防止に効果的であることが検証された。また、指針に基づいた蓄熱材13と養生装置1内部に設置する個数との選定も適切であることが検証された。
【0056】
なお、この検証試験は実際の現場施工の時間帯と近い時間帯(13時〜11時)で行われている。そのため、養生装置1が実際の屋外でのプレキャストコンクリートの養生において初期凍害の防止に効果的であることが検証された。
【0057】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。