(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数のリンク部材のうち少なくとも一つはCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)製の板材であるCFRPプレートで構成されており、該リンク部材は、骨格を残しつつ肉抜きが施された枠体形状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のロボットアーム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マルチコプターの応用範囲が拡大するにつれ、マルチコプターに行わせようとする作業の難易度も高まってきており、より複雑で精密な作業を高い品質で行うことのできる機体の登場が望まれている。このような要望に応えるべく、マルチコプターの機体構造を各作業に特化させ、その作業専用の機体を提供することが考えられるが、一つの機体で様々な作業を比較的高品質に行える方が好ましい場合もある。このような汎用的なマルチコプターを実現する手段としては、例えばマルチコプターにロボットアームを搭載し、種々の作業に応じた交換可能なエンドエフェクタを用意することが考えられる。
【0005】
ロボットアームは通常、駆動源を備える複数の関節部を有している。例えばこれら駆動源の出力軸にセレーションが設けられている場合、その出力軸と、出力軸の外周面に装着された部材との相対角度を変更するときには、その部材を出力軸から一度引き抜いて装着し直す必要がある。そのため、ロボットアームの本数や関節数が増えると、これら関節部の連結角度の調節やメンテナンスが煩雑になるという問題がある。さらにこの場合、セレーションの凹凸の形成間隔を最小単位としてその部材の装着位置を調節する必要がある。また、ロボットアームの各関節部は、その関節部から先の部分の重量を支持可能な強度を備えている必要がある。
【0006】
上記問題に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、作業性に優れた回転軸の連結構造、およびこれを備え、無人航空機に好適に用いることのできるロボットアームを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の回転軸の連結構造は、回転軸、テーパ部材、および連結部材を備え、前記テーパ部材には、その径方向中心に沿って貫通孔が形成されており、前記回転軸は前記テーパ部材の貫通孔に嵌合され、該貫通孔と前記回転軸の外周面とが周方向に互いに係合することにより、前記回転軸および前記テーパ部材は周方向に一体的に回転し、前記テーパ部材の外周面には、前記回転軸の軸線方向における基端側から先端側に向かってその外径寸法が次第に小さくされた第1テーパ部が形成されており、前記連結部材は、前記第1テーパ部の形状と相補的な形状をなす第2テーパ部を有しており、前記第1テーパ部が前記第2テーパ部に嵌合され、前記第2テーパ部が前記第1テーパ部側に押し付けられることで生じた摩擦力により、前記テーパ部材と前記連結部材とが周方向に一体的に回転することを特徴とする。
【0008】
回転軸と連結部材との間にテーパ部材が介在していることにより、回転軸に対する連結部材の連結角度を調節するときに、ねじを都度取り外して回転軸から連結部材を引き抜く必要がなくなる。連結部材およびテーパ部材は、これらの第1・第2テーパ部が密着したときの摩擦力で一体的に回転しているため、ねじを少し緩めて密着状態を解除するだけで、これらの相対角度を調節することができる。また、第1・第2テーパ部はどちらも凹凸のない平坦面により構成されていることから、例えば回転軸にセレーションが設けられている場合でも、セレーションの凹凸間隔に左右されることなく、回転軸と連結部材を任意の相対角度に調節することができる。
【0009】
また、上記課題を解決するため、複数の回転翼を備える無人航空機に搭載される本発明のロボットアームは、複数の関節部を有するアーム部と、前記各関節部の駆動を制御するアーム制御手段と、請求項1に記載の回転軸の連結構造と、を備え、前記アーム部は、前記複数の関節部で連結された複数のリンク部材を有しており、前記複数の関節部の少なくとも一つは、該関節部を駆動させる駆動源、前記テーパ部材、および前記連結部材を有する補強関節部であり、前記駆動源は、前記複数のリンク部材のうちの一つである第1リンク部材に配置されており、前記回転軸である前記駆動源の出力軸には前記テーパ部材が装着されており、前記連結部材は、前記第1リンク部材に隣接する前記リンク部材である第2リンク部材に固定されていることを特徴とする。
【0010】
アーム部の複数の関節部はそれぞれ、その関節部から先の部分の重量を支持可能する必要がある。これら関節部を補強関節部とすることにより、駆動源であるサーボモータの出力軸に加えられる応力を各部に分散して第2リンク部材を支持することができる。これにより、アーム部の自重やこれに装着されるエンドエフェクタの自重などを関節部で安定して支持することが可能となる。
【0011】
また、前記補強関節部はさらに、軸受部材を有しており、前記連結部材の外周面は前記軸受部材に回転可能に支持されており、前記軸受部材は、前記第1リンク部材に固定されていることが好ましい。
【0012】
連結部材が軸受部材で支持されていることにより、補強関節部をより円滑に回転・旋回させることが可能となる。
【0013】
また、前記複数のリンク部材のうち少なくとも一つはCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)製の板材であるCFRPプレートで構成されており、該リンク部材は、骨格を残しつつ肉抜きが施された枠体形状に形成されていることを特徴とするが好ましい。
【0014】
CFRP製の枠体でリンク部材を構成することにより、リンク部材の強度の維持と軽量化の両立を図ることができる。これにより本発明のロボットアームを、無人航空機用にさらに好適化することができる。
【0015】
また、前記リンク部材は複数の前記CFRPプレートで構成されており、前記複数のCFRPプレートは接着剤により組み立てられていることが好ましい。
【0016】
肉抜きされたCFRPプレートでリンク部材の軽量化を図る場合、リンク部材を構成する複数のCFRPプレートを組み立てるときに使われるねじの重量が無視できないことがある。また、ねじの取り付け部を設けるために、各CFRPプレートの形状が複雑化してしまうおそれもある。複数のCFRPプレートを接着剤で組み立ててリンク部材を形成することにより、このような問題を避けることができる。
【0017】
また、前記アーム部の先端に装着されたエンドエフェクタをさらに備え、前記エンドエフェクタは、閉時において環形状を形成可能な一対の爪部を有しており、前記一対の爪部の少なくとも一方は、該爪部の基端部を中心として回動可能な可動爪であり、前記一対の爪部は、前記可動爪を回動させることによりその先端部を開閉可能であり、前記一対の爪部の各先端部は、前記一対の爪部の厚み方向における位置を違えて配置されており、閉時における前記一対の爪部の各先端部は、前記環形状の環方向において重ねられており、前記一対の爪部の各先端部には、前記環形状の内側となる部位に、該環形状の外側に向かって窪んだ凹部がそれぞれ形成されており、前記各凹部は、前記環形状の環方向における同位置に形成されていることが好ましい。
【0018】
一対の爪部がその先端部の内側に凹部を有しており、これら凹部が、閉時における一対の爪部の環方向における同位置に形成されていることにより、例えばワイヤーやハンドルなどで重量物を吊支するときに、そのワイヤーやハンドルなどを凹部に掛けることで、その重量物の荷重により一対の爪部の先端部が離間不能にロックされる。これにより、重量物の運搬中に一対の爪部が意図せず開いてしまうことを防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
このように、本発明の回転軸の連結構造およびこれを備えるロボットアームによれば、関節部の連結作業やメンテナンスの作業性を高めることができ、また、無人航空機に好適に用いることができるロボットアームを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明のロボットアームの実施形態について図面を用いて説明する。以下に説明する実施形態は、複数の回転翼を備える無人航空機の一種であるマルチコプターに本発明のロボットアームが搭載された例である。以下の説明における「上」、「下」とは、
図1における上下方向をいい、
図1の座標軸表示に示されるZ軸方向に平行な方向をいう。また、「水平」とは、同座標軸表示に示されるXY平面方向をいう。「前」および「後ろ」とは、
図1における前後方向をいい、
図1の座標軸表示に示されるX軸方向に平行な方向をいう。
【0022】
(全体構成概要)
図1は、本実施形態にかかるマルチコプター100の外観を示す透過斜視図である。マルチコプター100は、その機体中央部110から水平方向に延びる6本のローター支持部120を有している。これらローター支持部120は、機体中央部110を中心として周方向等間隔に配置されており、機体中央部110から放射状に延びている。各ローター支持部120の先端には、回転翼であるローターRが配置されている。マルチコプター100のローター数は特に限定されず、その用途や、求められる飛行安定性、許容されるコスト等に応じて、ローターが2基のヘリコプターから、ローターが8基のオクタコプター、さらには8基よりも多くのローターを備えるものまで適宜変更可能である。
【0023】
機体中央部110は、その下部に、種々のアタッチメントを取り付け可能なアダプタプレート111を備えている。アダプタプレート111には、本実施形態のロボットアームRAを構成する二本のアーム部500が取り付けられている。二本のアーム部500はその全体が機外に露出している。アーム部500はいずれも同じ構造のものである。各アーム部500の先端にはハンド600がそれぞれ装着されている。ハンド600は本実施形態のロボットアームRAのエンドエフェクタである。なお、本発明で用いられるエンドエフェクタはハンド600には限られず、例えば、溶接装置、ねじ締め装置、穿孔装置、塗装装置、さらには撮影装置など、種々の用途に応じたエンドエフェクタが使用可能である。
【0024】
アダプタプレート111にはさらに、マルチコプター100の降着装置である一対のスキッド130が接続されている。
図1のマルチコプター100は着陸した状態にあり、これらスキッド130は地面に対して略垂直となるように配置されている。なお、本実施形態のスキッド130はリトラクタブルランディングギヤであり、マルチコプター100の飛行時には、これらスキッド130は、図示しないサーボモータによりその基端部を中心として水平方向外側に向かって持ち上げられ、ローター支持部120と平行に支持される。そして、マルチコプター100の着陸時には、スキッド130は同サーボモータにより
図1の配置に戻される。これにより、マルチコプター100の飛行中にスキッド130が各アーム部500の動作範囲を制限することが防止されている。なお、スキッド130は必須の構成ではなく、省略してもよい。
【0025】
(アーム部の構造)
図2はアーム部500の構造を示す斜視図である。本実施形態のアーム部500およびハンド600は、垂直多関節型マニピュレータを構成している。なお、本発明でいう「アーム部」には、ハンド600などのエンドエフェクタは含まれていない。アーム部500は、アーム部500の基端側から先端側に向かって、ベース部510、肩部520、上腕部530、および下腕部540の4つのリンク部材により構成されている(以下、これらを総称して「リンク部材510〜540」という。)。そして、これらリンク部材510〜540は、肩回転軸J
1、上腕旋回軸J
2、下腕旋回軸J
3、および手首回転軸J
4の4つの関節部を介して連結されている(以下、これら関節部を総称して「関節部J
1〜J
4」という。)。各関節部J
1〜J
4にはそれぞれサーボモータ551〜554が配置されており、これらサーボモータ551〜554が駆動されることにより各関節部J
1〜J
4の回転角度および旋回角度が調節される。なお、本発明の関節部の駆動源はサーボモータには限られず、回転軸によりこれら関節部を任意の回転角度・旋回角度に調節可能であることを条件として、他の駆動手段を用いることもできる。
【0026】
リンク部材510〜540のうち、アーム部500の基端部であるベース部510は、アダプタプレート111に取り付けられており(
図1参照)、ベース部510の位置はアダプタプレート111に対して固定されている。ベース部510には肩部520が連結されており、肩部520は肩回転軸J
1を中心として周方向に回転することができる。肩部520には上腕部530が連結されており、上腕部530は上腕旋回軸J
2を中心として上下方向に旋回することができる。上腕部530には下腕部540が連結されており、下腕部540は下腕旋回軸J
3を中心として上下方向に旋回することができる。そして、下腕部540にはハンド600が連結されており、ハンド600は手首回転軸J
4を中心として周方向に回転することができる。
【0027】
本実施形態のリンク部材510〜540はCFRP製の板材(以下、「CFRPプレート」という。)により構成されている。
図2に示されるように、各リンク部材510〜540はそれぞれ、骨格を残しつつ肉抜きが施された枠体形状に形成されている。これにより本実施形態のアーム部500は、軽量化と強度との両立が図られており、マルチコプター100への搭載に好適な構成とされている。
【0028】
ベース部510は略箱形に形成されたリンク部材である。ベース部510の内部には肩回転軸J
1を構成するサーボモータ551が配置されている。サーボモータ551の図示しない軸体は、ベース部510の底板511を下方に貫通している。
【0029】
肩部520は、コの字型のリンク部材であり、平行に配置された二枚の側板521,522と、これら側板521,522の板面に対して垂直に配置された天板523とにより構成されている。側板521,522はその板面を水平方向に向けて配置されており、天板523はこれら側板521,522の上端部を支持している。天板523には、サーボモータ551の図示しない軸体が結合されている。これにより肩部520は、肩回転軸J
1を中心として周方向に回転することが可能とされている。
【0030】
上腕部530は略角筒形状のリンク部材であり、平行に配置された二枚の側板531,532と、これら側板531,532の短手方向の端部同士を結ぶ筋交状の側板533,534とにより構成されている。上腕部530の側板531,532は、これらの基端部近傍の各外面が、肩部520の側板521,522の各内面にそれぞれ当接するように配置されている。上腕部530の基端部には、その内側に、上腕旋回軸J
2を構成するサーボモータ552が配置されている。サーボモータ552の図示しない軸体は、上腕部530の側板531,532を厚み方向に貫通し、肩部520の側板521,522に結合されている。これにより上腕部530は、上腕旋回軸J
2を中心として上下方向に旋回することが可能とされている。
【0031】
下腕部540は略角筒形状のリンク部材であり、平行に配置された二枚の側板541,542と、これら側板541,542の短手方向の端部同士を結ぶ筋交状の側板543,544とにより構成されている。下腕部540の側板531,532は、これらの基端部近傍の各内面が、上腕部530を構成する側板531,532の先端部近傍の各外面にそれぞれ当接するように配置されている。上腕部530の先端部には、その内側に、下腕旋回軸J
3を構成するサーボモータ553が配置されている。サーボモータ553の図示しない軸体は、上腕部530の側板531,532を厚み方向に貫通し、下腕部540の側板541,542に結合されている。これにより下腕部540は、下腕旋回軸J
3を中心として上下方向に旋回することが可能とされている。
【0032】
本実施形態の下腕部540の先端およびその近傍部は、下腕部540と一体に形成された手首部540aを構成している。手首部540aはアーム部500の先端部である。手首部540aの先端には、側板541,542の板面に対して垂直に配置された前板545が設けられている。前板545には手首回転軸J
4を構成するサーボモータ554が配置されている。サーボモータ554の軸体554aは、前板545を貫通して前方に延びている。軸体554aにはハンド600が取り付けられており、これによりハンド600は、手首回転軸J
4を中心として周方向に回転することが可能とされている。
【0033】
また、本実施形態のリンク部材510〜540を構成する各CFRPプレートは接着剤で結合されている。肉抜きされたCFRPプレートでリンク部材の軽量化を図る場合、リンク部材を構成する複数のCFRPプレートを組み立てるときに使われるねじの重量が無視できないことがある。また、ねじの取り付け部を設けるために、各CFRPプレートの形状が複雑化してしまうおそれもある。本実施形態では、複数のCFRPプレートを接着剤で組み立ててこれらリンク部材を形成していることにより、このような問題が回避されている。
【0034】
(関節部の補強構造)
アーム部500の関節部J
1〜J
4はそれぞれ、その関節部J
1〜J
4から先の部分の重量を支持する必要がある。より具体的には、関節部J
1〜J
4を構成するサーボモータ551〜554の出力軸は、それぞれ、そのサーボモータ551〜554からハンド600に至るまでの、各リンク部材520〜540の自重、サーボモータ552〜554の自重、およびハンド600の自重、さらにはハンド600で持ち上げた物体の荷重を支持可能な強度を備えている必要がある。
【0035】
図3は関節部J
1の補強構造を示す側面視断面図である。本実施形態の関節部J
1〜J
4はいずれも
図3に示す補強構造を備えた補強関節部である。以下、関節部J
1を例として、関節部J
1〜J
4の補強構造について説明する。
【0036】
関節部J
1を構成するサーボモータ551の出力軸561(回転軸)には、その外周面にセレーション561aが設けられており、また、出力軸561先端面には、その中央に、雌ねじが切られたねじ穴561bが開口している。出力軸561は、テーパ部材であるテーパブロック562、連結部材563、および軸受部材564により補強されて肩部520の天板523を支持している。
【0037】
テーパブロック562は、その径方向中心に沿って貫通孔が形成された略円錐台形状の部材である。テーパブロック562の貫通孔は、出力軸561の外形寸法に対応する穴径を有するセレーション部562bと、ねじ565の軸部の外形寸法に対応する穴径を有するねじ穴部562cとにより構成されている。セレーション部562bの内周面には、出力軸561のセレーション561aに噛み合うセレーションが設けられている。セレーション部562bが出力軸561のセレーション561aに噛合することにより、出力軸561およびテーパブロック562は周方向に一体的に回動する。なお、ねじ穴部562cの内周面には雌ねじは切られていない。
【0038】
また、テーパブロック562の外周面は、出力軸561の軸線方向(肩回転軸J
1と同方向)における基端側から先端側に向かってその外径寸法が次第に小さくなるテーパ面562a(第1テーパ部)とされている。
【0039】
連結部材563は、サーボモータ551の駆動対象(
図3の例では肩部520の天板523)を出力軸561に連結する部材である。連結部材563は、略円筒形状の本体部563a、および、本体部563aから径方向外側に向かって円環形状に延出した平板部であるフランジ部563bにより構成されている。フランジ部563bはねじ563sで肩部520の天板523に結合されている。本体部563aの筒内には、テーパブロック562の上面と、ねじ565の頭部との間に挟まれる平板部である被挟持部563dが設けられている。被挟持部563dの中央には、ねじ565の軸部が挿通されるねじ穴が設けられている。なお、被挟持部563dのねじ穴には雌ねじは切られていない。連結部材563は、ねじ565が、被挟持部563dのねじ穴と、テーパブロック562のねじ穴部562cとに挿通され、出力軸561のねじ穴561bに螺合されることにより、テーパブロック562を間に介在させて出力軸561に固定される。
【0040】
本体部563aの筒内のうち、テーパブロック562のテーパ面562aに対応する部分の内周面には、テーパブロック562のテーパ面562aの形状と相補的な形状をなすテーパ面563c(第2テーパ部)が設けられている。なお、テーパブロック562のテーパ面562a、および連結部材563のテーパ面563cは、どちらも凹凸のない平坦面で構成されている。
【0041】
テーパブロック562のテーパ面562aに連結部材563のテーパ面563cが嵌合され、連結部材563がねじ565でテーパブロック562側に締め付けられると、これらテーパ面562a,563cが互いに押し付けられ、密着する。テーパ面562a,563cが密着すると、これらテーパ面562a,563cの間には、互いを周方向へ連れ回すように作用する摩擦力が生じる。この摩擦力によりテーパブロック562および連結部材563は周方向に一体的に回動する。
【0042】
出力軸561と連結部材563との間にテーパブロック562が介在していることにより、ベース部510(第1リンク部材)に対する肩部520(第2リンク部材)の連結角度を調節するときに、ねじ565を都度取り外して出力軸561から連結部材563を引き抜く必要がなくなる。上で述べたように、出力軸561の外周面にはセレーション561aが設けられている。そのため、出力軸561と、出力軸561の外周面に装着された部材との相対角度を変更するときには、その部材を出力軸561から一度引き抜いて装着し直す必要がある。また、この場合、セレーション561aの凹凸の形成間隔を最小単位として装着位置を調節しなければならない。本実施形態の関節部の補強構造では、出力軸561の外周面にはテーパブロック562が装着されており、また、連結部材563とテーパブロック562は、これらのテーパ面562a,563cが密着したときの摩擦力で一体的に回動する。そのため、ねじ565を少し緩め、これらの密着状態を解除するだけで、ベース部510と肩部520とがねじ565で繋がった状態を維持したまま、これらの相対角度を調節することができる。また、テーパ面562a,563cはどちらも凹凸のない平坦面により構成されていることから、セレーション561aの凹凸の形成間隔に影響されることなく、これらを任意の相対角度に設定することができる。
【0043】
連結部材563は、サーボモータ551側の外周面が軸受部材564に支持されている。軸受部材564は、連結部材563を回転可能に支持するリング状のベアリング部564aと、ベアリング部564aから径方向外側に向かって円環形状に延出した平板部であるフランジ部564bと、により構成されている。フランジ部564bはねじ564sによりベース部510の底板511に固定されている。
【0044】
関節部J
1〜J
4が
図3に示す補強構造を有していることにより、サーボモータ551〜554の出力軸に対してラジアル方向に加えられた応力は各部に分散される。これにより、アーム部500やハンド600の自重、さらにはハンド600で持ち上げた物体の荷重を関節部J
1〜J
4で安定して支持することが可能とされている。なお、本実施形態では関節部J
1〜J
4の全てが
図3の補強構造を有する補強関節部とされているが、想定される荷重に応じて、関節部J
1〜J
4の一部のみを補強関節部としてもよい。
【0045】
(ハンドの構造)
図4は、ハンド600の構造を示す側面図および正面図である。
図4(a)はハンド600が環形状に閉じた状態を示す側面図であり、
図4(b)のハンド600を矢示B方向に見た図である。
図4(b)は、
図4(a)のハンド600を矢示A方向に見たハンド600の正面図である。
図4に示されるように、本実施形態のハンド600はフォーククロー形状のグリッパ機構であり、その用途は特に限定されない。なお、本実施形態のハンド600は、リンク部材510〜540と同様に、CFRPプレートにより構成されている。
【0046】
ハンド600は一対の爪部である略円弧形状の固定爪610および可動爪620を有している。固定爪610は平行に配置された二枚の側板611,612により構成されている。側板611および側板612の間には、これら側板611,612の板面に対して垂直に配置された三本のパイプ材615が配置されており、これらパイプ材615により側板611と側板612とが結合されている。同様に、可動爪620も平行に配置された二枚の側板621,622により構成されている。側板621および側板622の間には、これら側板621,622の板面に対して垂直に配置された三本のパイプ材625が配置されており、これらパイプ材625により側板621と側板622とが結合されている。側板611,612および側板621,622が中空のパイプ材615,625で結合されていることにより、ハンド600の肉抜きによる軽量化と強度の維持との両立が図られている。
【0047】
また、固定爪610の基端部610bには、手首回転軸J
4を介して手首部540aに連結される底板613が取り付けられている。固定爪610の基端部610bにはさらに、可動爪620の駆動源であるサーボモータ640が配置されている。サーボモータ640の軸体641は、固定爪610の側板611,612を貫通して可動爪620に結合されている。本実施形態の固定爪610は基本的に固定された状態にあり、可動爪620がサーボモータ640の軸体641を中心として回動することによりハンド600の先端部610a,620aが開閉される。
【0048】
図5は、ハンド600の開閉動作を示す側面図である。
図5(a)は可動爪620が開方向Oに向かって回動した状態を示す図である、
図5(b)は可動爪620が閉方向Cに向かって最も深く回動した状態を示す図である。上でも述べたように、ハンド600の開閉動作は、可動爪620がサーボモータ640の軸体641を中心として回動することにより行われる。
図4(b)に示されるように、固定爪610の側板611,612と可動爪620の側板621,622とは、その厚み方向における位置を違えて配置されている。具体的には、可動爪620の側板621,622は、その内側の板面が、固定爪610の側板611,612の外側の板面に接する位置に配置されている。つまり、可動爪620および固定爪610の先端部610a,620aは、可動爪620の回動時に互いに衝突しない位置に配置されている。これにより、可動爪620は、可動爪620のパイプ材625が固定爪610に接触する位置(
図5(b))まで深く閉じることができる。
【0049】
(ハンドのロック構造)
図4(a)に示されるように、本実施形態の固定爪610および可動爪620の先端部610a,620aには、それぞれ凹部619,629が形成されている。凹部619,629は、ハンド600が環形状に閉じられたときに、先端部610a,620aの内側の一部が外側に向かって窪んだ形状とされている。これら凹部619,629は、環形状に閉じられたハンド600のその環方向における同位置に形成されている。
【0050】
例えばワイヤーやハンドルなどで重量物を吊支するときに、凹部619,629に対して
図4(a)に示される矢示L方向の荷重をかけることにより、固定爪610および可動爪620の先端部610a,620aを離間不能にロックすることができる。これにより、重量物の運搬中にハンド600が意図せず開いてしまうことを防止することが可能とされている。
【0051】
(マルチコプターの飛行機能)
図6はマルチコプター100の機能構成を示すブロック図である。マルチコプター100の機能は、主に、フライトコントローラFC、複数のローターR、ローターRごとに備えられたESC241(Electric Speed Controller)、本実施形態のロボットアームRA、およびこれらに電力を供給するバッテリー900により構成されている。以下、マルチコプター100の基本的な飛行機能について説明する。
【0052】
各ローターRは、モータ242と、その出力軸に連結されたブレード243とにより構成されている。ESC241は、ローターRのモータ242に接続されており、フライトコントローラFCから指示された速度でモータ242を回転させる。
【0053】
フライトコントローラFCは、オペレータ(送信器210)からの操縦信号を受信する受信器231と、受信器231が接続されたマイクロコントローラである制御装置220を備えている。制御装置220は、中央処理装置であるCPU221、ROMやRAMなどの記憶装置であるメモリ222、および、ESC241を介して各モータ242の回転数を制御するPWM(Pulse Width Modulation)コントローラ223を有している。
【0054】
フライトコントローラFCはさらに、飛行制御センサ群232およびGPS受信器233(以下、これらを総称して「センサ等」ともいう。)を備えており、これらは制御装置220に接続されている。本実施形態におけるマルチコプター100の飛行制御センサ群232には、3軸加速度センサ、3軸角速度センサ、気圧センサ(高度センサ)、地磁気センサ(方位センサ)などが含まれている。制御装置220は、これらセンサ等により、機体の傾きや回転のほか、飛行中の緯度経度、高度、および機首の方位角を含む自機の位置情報を取得可能とされている。
【0055】
制御装置220のメモリ222には、マルチコプター100の飛行時における姿勢や基本的な飛行動作を制御するアルゴリズムが実装されたプログラムである飛行制御プログラムFCPが記憶されている。飛行制御プログラムFCPは、オペレータからの指示に従い、センサ等から取得した情報を基に、個々のローターRの回転数を調節し、機体の姿勢や位置の乱れを補正しながらマルチコプター100を飛行させる。
【0056】
マルチコプター100の操縦は、オペレータが送信器210を用いて手動で行うほか、マルチコプター100の飛行経路や速度、高度などのパラメータである飛行計画FPを自律飛行プログラムAPPに予め登録しておき、マルチコプター100を目的地へ自律的に飛行させることも可能である(以下、このような自律飛行のことを「オートパイロット」という。)。
【0057】
このように、本実施形態におけるマルチコプター100は高度な飛行制御機能を備えている。ただし、本発明における無人航空機はマルチコプター100の形態には限定されず、ロボットアームRAを備えていることを条件として、例えばセンサ等から一部のセンサが省略された機体や、オートパイロット機能を備えず手動操縦のみにより飛行可能な機体を用いることもできる。
【0058】
(ロボットアームの機能構成)
図6に示されるように、本実施形態のロボットアームRAは、主に、オペレータ(送信器210)からの操縦信号を受信する受信器731と、受信器731が接続されたマイクロコントローラである制御装置720、アーム部500の各関節部J
1〜J
4を駆動するサーボモータ551〜554、サーボモータ551〜554ごとに備えられたサーボアンプ741、および、アーム部500の位置の変化および傾きを検知する変位検知部であるIMU(Inertial Measurement Unit)732を備えている。サーボアンプ741は、サーボモータ551〜554からのフィードバックをうけながらサーボモータ551〜554の出力軸を指示された角度位置に調節する。IMU732は一般的な慣性計測装置であり、主に加速度センサおよび角速度センサにより構成されている。
【0059】
制御装置720は、中央処理装置であるCPU721、ROMやRAMなどの記憶装置であるメモリ722、および、サーボアンプ741に対してサーボモータ551〜554の回転角度を指示するサーボコントローラ723を有している。メモリ722には、各サーボモータ551〜554の駆動を制御するアーム制御手段であるアーム制御プログラムACPが登録されている。アーム制御プログラムACPは、オペレータの指示に従って、アーム部500の姿勢を変化させ、また、ハンド600を開閉させる。
【0060】
アーム制御プログラムACPはさらに、アーム部500の意図しない位置の変化または傾きである位置ずれをIMU731が検知したときに、その位置ずれを関節部J
1〜J
4で自動的に吸収し、位置ずれが手首部540aに伝達されることを可能な限り抑制する。なお、アーム制御プログラムACPが対処する位置ずれは、アーム部500の「意図しない」位置の変化や傾きであるため、例えばオペレータの操作によるアーム部500の姿勢変化や機体の移動は無視することができる。
【0061】
なお、本実施形態のIMU732は機体中央部110の中に収容されている。これにより、マルチコプター100の機体位置の変化や傾きを正確に検知することができる。本実施形態のアーム制御プログラムACPは、かかる機体の変位量からアーム部500の位置ずれを間接的に算出する。その他、例えば手首部540aにIMU732を配置することにより、手首部540aやハンド600の状態を直接的に把握することが可能となり、ハンド600の空間中の位置や姿勢をより高い精度で安定させることもできる。
【0062】
(ロボットアーム機能の変形例)
図7はロボットアームRAの機能構成の変形例を示すブロック図である。本実施形態のロボットアームRAは、独自の受信器731およびIMU732を備えているが、これらに代えて、フライトコントローラFCの受信器231や、飛行制御センサ群232の3軸加速度センサ、3軸角速度センサをロボットアームRA用に併用することも可能である。
【0063】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。例えば、ロボットアームRAを構成するアーム部500やアーム部500´の本数は二本には限定されず、一本でもよく、三本以上としてもよい。なお、本発明の回転軸の連結構造はロボットアームの関節部のみならず、回転軸を用いるあらゆる駆動構造に利用可能である。