(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6887660
(24)【登録日】2021年5月21日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】鳥害防止具
(51)【国際特許分類】
A01M 29/32 20110101AFI20210603BHJP
H02G 7/00 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
A01M29/32
H02G7/00
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-219265(P2016-219265)
(22)【出願日】2016年11月9日
(65)【公開番号】特開2018-74955(P2018-74955A)
(43)【公開日】2018年5月17日
【審査請求日】2019年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115382
【氏名又は名称】ヨツギ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】山川 卓司
(72)【発明者】
【氏名】池側 勝己
(72)【発明者】
【氏名】冨永 孝弘
【審査官】
大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−213303(JP,A)
【文献】
特開2006−174708(JP,A)
【文献】
特開2009−039055(JP,A)
【文献】
特開2012−222872(JP,A)
【文献】
特開2014−143993(JP,A)
【文献】
実公昭49−026470(JP,Y1)
【文献】
実開昭60−162933(JP,U)
【文献】
米国特許第06477977(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 29/32
H02G 7/00− 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線に取付けられる電線取付け部と、
前記電線取付け部に連なり、前記電線の軸線に対して垂直に延びる第1把持部材であって、前記電線から離反する方向に開放する開口を有し、該開口を介して索条を嵌合可能な1または複数の嵌合凹部が設けられた支持部を備える第1把持部材と、
前記支持部の前記嵌合凹部よりも前記電線取付け部寄りの端部に、前記電線の軸線と平行な軸線まわりに角変位可能に連結され、前記嵌合凹部に嵌合した索条を前記支持部に押付ける押付け部を備える第2把持部材と、を含むことを特徴とする鳥害防止具。
【請求項2】
前記第1把持部材は、前記支持部の前記電線取付け部とは反対側の端部から突出する係合片を有し、
前記第2把持部材は、前記押付け部の前記電線取付け部とは反対側の端部から、前記係合片に近接する方向に突出し、前記係合片に係合可能な係合爪を有することを特徴とする請求項1に記載の鳥害防止具。
【請求項3】
前記嵌合凹部は、前記支持部の前記電線取付け部とは反対側の端部に、前記係合片よりも前記電線取付け部から離反する方向に間隔をあけて、前記係合爪が前記係合片に近接する方向に突出する掛合部が設けられることを特徴とする請求項2に記載の鳥害防止具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線への鳥の飛来を防止するために、電線の沿ってテグスなどの索条を張架された状態で保持するための鳥害防止具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電柱間に張架された電線への鳥の飛来による付近の汚損、営巣などの鳥害を防止するため、架設された電線に沿ってテグスなどの索条を張架された状態で保持する鳥害防止具が用いられている。
【0003】
典型的な従来技術の鳥害防止具は、たとえば特許文献1に記載されている。特許文献1の鳥害防止具は、電線に取付けられる電線取付部と、電線取付部の上部から上方に突出する離隔部とを備える。電線取付部によって電線の長手方向に間隔をあけて、複数の鳥害防止具が取付けられる。
【0004】
各鳥害防止具の離隔部は、電線取付部から起立する、断面がコ字状のワイヤー受け部と、ワイヤー受け部の上部に水平軸まわりに開閉自在に軸支されるワイヤー押さえ部とを有する。ワイヤー受け部には、想定される鳥のサイズによってワイヤーを掛ける位置を調整できるように、上下に間隔をあけて、ワイヤー受け部の長手方向に平行な一直線上に複数のワイヤー掛け部と被嵌合部とが設けられる。ワイヤー掛け部は、索条であるワイヤーの受入れ側の間隔が次第に拡がるテーパー状に形成され、ワイヤーをワイヤー掛け部に取付けるときに、テーパー部にワイヤーが案内され、ワイヤーのワイヤー掛け部への取付けを容易にしている。
【0005】
ワイヤー押さえ部は、ワイヤー受け部と、閉じたときに被嵌合部と嵌合する嵌合部とを有し、閉じたワイヤー受け部とワイヤー押さえ部との間で、ワイヤー掛け部に保持したワイヤーを囲んで、ワイヤーが離隔部から離脱しないようにワイヤーを拘束するように構成される。
【0006】
このような構成によって、この従来技術では、ワイヤーを離隔部に簡単に取付けることができ、離隔部からワイヤーの離脱を確実に防いで、電線に対する鳥の立留まりを防ぐ鳥害防止具が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014−143993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1に記載される従来技術では、複数のワイヤー掛け部が、ワイヤー受け部の長手方向に平行な一直線上に設けられるので、ワイヤーを作業者が鳥のサイズに応じて選んだ1つのワイヤー掛け部に掛け止めるとき、選ばれた1つのワイヤー掛け部の幅の狭いに開口にワイヤーを手作業で正確に移動させて嵌合させなければならず、ワイヤーのワイヤー掛け部への取付け作業に手間を要し、ワイヤーのワイヤー受け部への取付け作業の作業性が悪いという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、ワイヤーなどの索条の取付け作業の作業性を向上することができる鳥害防止具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、電線に取付けられる電線取付け部と、
前記電線取付け部に連なり、前記電線の軸線に対して垂直に延びる第1把持部材であって、前記電線から離反する方向に開放する開口を有し、該開口を介して索条を嵌合可能な1または複数の嵌合凹部が設けられた支持部を備える第1把持部材と、
前記支持部の
前記嵌合凹部よりも前記電線取付け部寄りの端部に、前記電線の軸線と平行な軸線まわりに角変位可能に連結され、前記嵌合凹部に嵌合した索条を前記支持部に押付ける押付け部を備える第2把持部材と、を含むことを特徴とする鳥害防止である。
【0011】
また本発明は、前記第1把持部材は、前記支持部の前記電線取付け部とは反対側の端部から突出する係合片を有し、
前記第2把持部材は、前記押付け部の前記電線取付け部とは反対側の端部から、前記係合片に近接する方向に突出し、前記係合片に係合可能な係合爪を有することを特徴とする。
【0012】
また本発明は、前記支持部の前記電線取付け部とは反対側の端部に、前記係合片よりも前記電線取付け部から離反する方向に間隔をあけて、前記係合爪が前記係合片に近接する方向に突出する掛合部が設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、
支持部の前記嵌合凹部よりも前記電線取付け部寄りの端部に第1把持部材が設けられる。第1把持部材は、支持部を備え、支持部には電線から離反する方向に開放した開口を有する1または複数の嵌合凹部が設けられる。支持部の電線取付け部寄りの端部には、第2把持部材が電線の軸線に平行な軸線まわりに角変位可能に連結される。第2把持部材は、第1把持部材の嵌合凹部に嵌合した索条を支持部に押し付けるための押付け部を備える。
【0014】
第2把持部材を第1把持部材に対して電線の軸線に平行な軸線まわりに角変位させることによって、第1把持部材と第2把持部材とが開いた状態で、開口を介して嵌合凹部に索条を嵌合させることができる。嵌合凹部は、電線から離反する方向に開放した開口を有し、このような開口を有する嵌合凹部が支持部に設けられるので、索条を第1把持部材に沿って電線に近接する方向に移動させると、索条は嵌合凹部の開口へ案内され、索条を容易に嵌合凹部へ嵌合させることができる。
【0015】
嵌合凹部に索条を嵌合させた状態で、第1把持部材と第2把持部材とを閉じると、第2把持部材の押付け部によって索条が押圧されて、第1把持部材の支持部に押付けられ、支持部と押付け部とによって挟持される。また、第1把持部材の支持部に複数の嵌合凹部が設けられるので、索条の電線の軸線に垂直な方向の距離を、各嵌合凹部に対応する異なる距離に変更することが可能となり、鳥の大きさなどに応じて適切な距離だけ電線から離れた位置に索条を保持することができる。
【0016】
このように索条を第1把持部材に沿って移動させるだけで、索条が嵌合凹部に案内させるので、索条の取付け作業を容易かつ確実に行うことができ索条の取付け時の作業性を向上することができる。
【0017】
また本発明によれば、第1把持部材は係合片を有し、第2把持部材は係合爪を有するので、第1把持部材と第2把持部材とを閉じると、係合爪が係合片に係合して、第1把持部材と第2把持部材とが開くことを阻止することができる。第1把持部材と第2把持部材とが閉じられると、互いに開く方向への角変位が阻止されるので、索条を第1および第2把持部材間に挟持された状態に維持することができる。
【0018】
また、鳥害防止具の保守点検、交換、位置の調整などのために索条の挟持状態を解除する必要が生じた場合には、係合爪を係合片から離反する方向へ変位させることによって、係合爪の係合片に対する係合状態を容易に解除、第1および第2把持部材を開いて索条を解放することができる。
【0019】
また本発明によれば、支持部の前記電線取付け部とは反対側の端部に、掛合部が設けられるので、間接工法などで用いられる挟持用工具または作業者が手作業で掛合部と係合爪とを把持して、係合爪を掛合部に近接する方向に変位させることによって、係合爪の係合片への係合状態を容易に解除することができ、解除作業を容易化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態の鳥害防止具1の閉じた状態を示す正面図であり
【
図2】鳥害防止具1の開いた状態を示す正面図であり
【
図3】鳥害防止具1の開いた状態を示す斜視図である。
【
図6】鳥害防止具1全体の外観を簡略化して示す正面図である。
【
図7】鳥害防止具1を
図4の上方から見た拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は本発明の一実施形態の鳥害防止具1の閉じた状態を示す正面図であり、
図2は鳥害防止具1の開いた状態を示す正面図であり、
図3は鳥害防止具1の開いた状態を示す斜視図である。
図4は鳥害防止具1の右側面図であり、
図5は鳥害防止具1の左側面図である。なお、
図1〜
図5において、電線取付け部2は簡略化して示されている。
【0022】
本実施形態の鳥害防止具1は、電線Cに取付けられる複数(本実施形態では2)の電線取付け部2と、電線取付け部2に連なり、電線Cの軸線L1に対して垂直に延び、電線Cから離反する方向に開放する開口3を有し、開口3を介して索条4を嵌合可能な嵌合凹部5が設けられた支持部6を備える第1把持部材7と、支持部6の電線取付け部2寄りの一端部に、ヒンジピン13およびヒンジ片14によって、電線Cの軸線L1と平行な軸線L2まわりに角変位可能に連結され、嵌合凹部5に嵌合した索条4を支持部6に押付ける押付け部8を備える第2把持部材9と、を含む。
【0023】
第1および第2把持部材7,9は、耐候性および電気絶縁性の高い熱可塑性合成樹脂から成り、たとえば射出成形によって形成される。耐候性および電気絶縁性の高い熱可塑性合成樹脂としては、たとえばポリカーボネート、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)AES(Acrylonitrile Ethylene Styrene)のいずれかを好適に用いることができる。
【0024】
第1把持部材7は、支持部6の電線取付け部2とは反対側の一端部から突出する係合片11を有する。第2把持部材9は、押付け部8の電線取付け部2とは反対側の一端部から、係合片11に近接する方向に突出し、係合片11に係合可能な係合爪12を有する。また、支持部6の電線取付け部2とは反対側の端部には、係合片11よりも電線取付け部2から離反する方向に間隔をあけて、係合爪12が係合片11に近接する方向、すなわち
図1の左方に突出する掛合部30が設けられる。このような掛合部30によって、間接工法などで用いられる、ヤットコなどとも称される挟持用工具31または作業者が手作業で、掛合部30と係合爪12とを把持して、係合爪12を掛合部30に近接する方向に変位させることによって、係合爪12の係合片11への係合状態を容易に解除し、鳥害防止具1の取外し作業、位置の調整などを容易に行うことができ、解除作業を容易化することができる。
【0025】
図6は鳥害防止具1全体の外観を簡略化して示す正面図であり、
図7は鳥害防止具1を
図4の上方から見た拡大平面図である。前述のように、本実施形態の鳥害防止具1は、電線Cに取付けられる電線取付け部2に第1把持部材7が設けられ、第1把持部材7は、支持部6を備え、支持部6には電線Cから離反する方向に開放した開口3を有する嵌合凹部5が設けられる。支持部6の電線取付け部2寄りの一端部には、第2把持部材9が電線Cの軸線L1に平行な軸線まわりに角変位可能に連結される。第2把持部材9は、第1把持部材7の嵌合凹部5に嵌合した索条4を支持部6に押し付けるための押付け部8を備える。
【0026】
電線取付け部2は、操作部20と、操作部20が軸線方向一端部に設けられるボルト21と、ボルト21の軸線方向他端部に設けられる電線支持部22と、正面視で略C字状の保持具本体23と、保持具本体23に電線Cの軸線L1に平行な軸線L3まわりに角変位可能に連結される保持具蓋体24と、を備える。操作部20を回転操作することによって、ボルト21が保持具本体23に対して螺進/螺退し、保持具本体23の上部と電線支持部22とによって、電線Cを挟着することができる。
【0027】
第2把持部材9を第1把持部材7に対して電線Cの軸線L1に平行な軸線まわりに角変位させることによって、第1把持部材7と第2把持部材9とが開いた状態で、開口3を介して嵌合凹部5に索条4を嵌合させることができる。嵌合凹部5は、電線Cから離反する方向に開放した開口3を有し、このような開口3を有する嵌合凹部5が支持部6に設けられるので、索条4を第1把持部材7に沿って電線Cに近接する方向に移動させると、索条4は嵌合凹部5の開口3へ案内され、索条4を容易に嵌合凹部5へ嵌合させることができる。
【0028】
嵌合凹部5に索条4を嵌合させた状態で、第1把持部材7と第2把持部材9とを閉じると、第2把持部材9の押付け部8によって索条4が押圧されて、第1把持部材7の支持部6に押付けられ、支持部6と押付け部8とによって挟持される。
【0029】
このように索条4を第1把持部材7に沿って移動させるだけで、索条4が嵌合凹部5に案内させるので、索条4の取付け作業を容易かつ確実に行うことができ、索条4の取付け時の作業性を向上することができる。
【0030】
また、第1把持部材7は係合片を有し、第2把持部材9は係合爪を有するので、第1把持部材7と第2把持部材9とを閉じると、係合爪12が係合片11に係合して、第1把持部材7と第2把持部材9とが開くことを阻止することができる。第1把持部材7と第2把持部材9とが閉じられると、互いに開く方向への角変位が阻止されるので、索条4を第1および第2把持部材7,9間に挟持された状態に維持することができる。
【0031】
また、鳥害防止具1の保守点検、交換、位置の調整などのために索条4の挟持状態を解除する必要が生じた場合には、係合爪12を係合片11から離反する方向へ変位させることによって、係合爪12の係合片11に対する係合状態を容易に解除、第1および第2把持部材7,9を開いて索条4を解放することができる。
【0032】
また、第1把持部材7の支持部6に複数の嵌合凹部5が設けられるので、索条4の電線Cの軸線L1に垂直な方向の距離を、各嵌合凹部5に対応する異なる距離に変更することが可能となり、鳥の大きさなどに応じて適切な距離だけ電線Cから離れた位置に索条4を保持することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 鳥害防止具
2 電線取付け部
3 開口
4 索条
5 嵌合凹部
6 支持部
7 第1把持部材
8 押付け部
9 第2把持部材
11 係合片
12 係合爪
C 電線
L1 電線Cの軸線