(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の経路切替装置は、移動する連結管群が二本の連結管からなる大きく重いものであって、さらにその両端がケーシング内面に摺接しており摩擦抵抗が大きいので、これを平行移動させるためのアクチュエータも高出力のものとしなければならならず、装置全体が大型で高価なものとなる。また、吸引式の空気式搬送装置においては、搬送管路の継手などから空気が入り込むと、管路内の圧力や風量が低下して、搬送量や搬送距離が低下してしまうため、搬送管路やそれに付属する装置などにおける気密性の維持が重要であるが、この点、特許文献1の経路切替装置は、連結管群の両端面とケーシングの内面との間の気密性について、特別に配慮された構造ではなく、空気漏れのおそれがあり、それを補うためには高出力のブロワを接続しなければならない。
【0006】
本発明は、上記事情を鑑みたものであり、コンパクトな構成であって安価であり、気密性の高い経路切替装置およびこれを備える空気式搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のうち請求項1の発明は、空気流により搬送物を通過させる搬送管路における、一本の一方側管路と複数本の他方側管路の分岐部に設置されるものであって、ケースと、支点管と、作動管と、スライダと、アクチュエータを備え、ケースは、一方壁には一方側管路に通じる一つの一方貫通孔を設けてあり、他方壁には複数本の他方側管路に通じる複数の他方貫通孔を設けてあって内側面に凹曲面状の被摺動面を形成してあり、一方貫通孔に一方側管路が接続され、他方貫通孔に他方側管路が接続されるものであり、支点管は、一方貫通孔に取り付けてあって、ケース内部に突出しており、作動管は、一端が支点管に回動自在に支持されていて支点管と連通しており、他端がケースの他方壁に向かって延びており、スライダは、
孔を形成してあって孔に作動管が挿入されるかたちで作動管の他端に設けてあって、その他端側面が凸曲面状の摺動面となっており、アクチュエータが作動管を回動させるのに伴って、摺動面がケースの被摺動面に密接して摺動し、作動管の他端が一の他方貫通孔に連通した状態で、
摺動面が被摺動面に密接して作動管と一の他方貫通孔の間の隙間を塞ぎ、かつ摺動面が他の他方貫通孔を塞ぐものであ
り、支点管と作動管の連通部において、下流側の管が上流側の管の口径方向の外側を取り囲んでいて、支点管と作動管の間に隙間が形成されており、支点管と作動管の連通部がケースに覆われていて外部と遮られていることを特徴とする。
【0008】
本発明のうち請求項2の発明は、
スライダの孔は、作動管の延びる方向から見たスライダの中心に形成されており、スライダの摺動面は、作動管の回転軸を中心軸とする円柱面の一部または作動管の回転中心を中心とする球面の一部からなる凸曲面であり、ケースの被摺動面は、摺動面と同形状かつ同寸法の凹曲面であることを特徴とする。
【0009】
本発明のうち請求項3の発明は、
環状のバネ押さえ具と、コイルバネからなる付勢部材を備え、バネ押さえ具と付勢部材に作動管が挿入されており、バネ押さえ具は、作動管に固定されていてその固定位置が変更可能であり、付勢部材は、スライダとバネ押さえ具の間に位置していて、スライダを他端側に向けて付勢し、被摺動面に対して摺動面を押し付けていることを特徴とする。
【0010】
本発明のうち請求項4の発明は、下流側から吸引する搬送管路に設置されるもので
あることを特徴とする。
【0011】
本発明のうち請求項5の発明は、請求項1、2、3または4記載の経路切替装置と、一方側管路と、他方側管路と、空気吸引装置を備え、経路切替装置の一方貫通孔に一方側管路を接続してあり、他方貫通孔に他方側管路を接続してあり、一方側管路と他方側管路の少なくとも一方に、空気吸引装置を接続してあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のうち請求項1の発明によれば、一本の作動管を回動させて経路を切り替えるものであり、それ自体が小さくて軽く、摺動面が片側だけであるから、それを動かすためのアクチュエータも低出力のものでよいので、装置全体がコンパクトで安価なものとなる。また、作動管に設けたスライダの摺動面がケースの被摺動面に密接して摺動し、作動管の他端が一の他方貫通孔に連通した状態で、他の他方貫通孔を塞ぐので、管路が外部と連通することがなく、気密性が高い。
さらに、支点管と作動管の連通部において、下流側の管が上流側の管の口径方向の外側を取り囲んでいることで、簡易な連通構造とすることができる。そして、連通部を含めた作動管全体がケースに覆われていて外部と遮られているので、搬送管路内の圧力や風量が低下することもない。
【0013】
本発明のうち請求項2の発明によれば、摺動面を被摺動面に密接させつつ、作動管をスムーズに回動させることができる。また、摺動面と被摺動面の全体に均一に力が作用するので、一部のみが摩耗することがない。
【0014】
本発明のうち請求項3の発明によれば、付勢部材によって、より確実に摺動面が被摺動面に密接し、より気密性が高い。
そして、バネ押さえ具の固定位置を変更することにより付勢部材の撓み量が変化して、スライダに対する付勢力を調整できる。
【0015】
本発明のうち請求項4の発明によれば、支点管と作動管の連通部において、吸引する下流側の管が上流側の管の口径方向の外側を取り囲んでいることで
、支点管と作動管の間に隙間があっても、そこから搬送物が漏れることは
ない。
【0016】
本発明のうち請求項5の発明によれば、経路切替装置がコンパクトであるから、一方側管路や他方側管路が入り組んだ狭い場所にも設置可能である。また、経路切替装置の気密性が高く、空気が漏れないので、空気吸引装置も低出力のものでよく、装置全体がコンパクトで安価なものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の経路切替装置および空気式搬送装置の具体的な構成について、各図面に基づいて説明する。なお、以下の空気式搬送装置の各実施形態は、何れも下流側から空気を吸い込む吸引式のものであって、精米機などに付設されて玄米を搬送するための装置として用いられるものであり、経路切替装置に対して玄米が搬送される。
【0019】
まず、空気式搬送装置の第一実施形態は、
図1に示すものであり、経路切替装置100の第一実施形態と、搬送管路となる一方側管路110および他方側管路120を備え、ここでは一方側管路110が一本の供給管路101からなり、他方側管路120が二本の排出管路102a,102bからなるものであって、供給管路101と排出管路102a,102bがそれぞれ経路切替装置100に接続されている。また、供給管路101の始端部側には、ホッパ103を設けてあり、それぞれの排出管路102a,102bの終端部側には、空気分離減速器104a,104b、ロータリーバルブ105a,105bおよびタンク106a,106bを連続して設けてある。さらに、空気分離減速器104a,104bからは排気管107a,107bがロータリーバルブ105a,105bとは異なる方向に枝分かれして延びており、それぞれの排気管107a,107bの終端部にバグフィルタ108a,108bを設けてあり、バグフィルタ108a,108bの出口にブロワ(空気吸引装置)109a,109bを接続してある。このように、空気式搬送装置の第一実施形態は、一方側管路110が上流側、他方側管路120が下流側であり、他方側管路120に対して下流側にブロワ109a,109bを接続した構成となっている。なお、管路に流れる空気の量(風量)、風速や圧力(静圧)が、搬送される玄米の搬送量や搬送距離に影響するので、管路の途中で空気漏れがあると、搬送効率が低下してしまう。そこで、管路同士や管路と各構成機器の接合部は、シールドパッキンやOリングなどで気密性を保つ継手構造となっている。
【0020】
ホッパ103は、上方に向けて開口し、下方に向けて窄まる漏斗状のものであって、上側から玄米を投入するものである。ホッパ103の下端部には、供給管路101の始端部が接続されており、管路内に供給シャッタ131を設けてある。供給シャッタ131は、管路を開閉自在であって、玄米の供給量と管路内へ取り込む二次空気量を調整するものである。
【0021】
供給管路101は、ホッパ103の下端部から上向きに延びており、垂直部分の一部が透明管114になっていて、玄米の通過状況を目視可能となっている。そして、供給管路101は上側で屈曲して水平向きになっており、供給管路101の終端部が経路切替装置100に接続されている。そして、経路切替装置100の、供給管路101が接続された面の反対側面には、水平向きに延びる二本の排出管路102a,102bが接続されており、経路切替装置100は、上流側の一本の供給管路101に対して、下流側の二本の排出管路102a,102bの何れかを連通させて経路を切り替えるものである。この経路切替装置100の構造については、後述する。なお、
図1においては、二本の排出管路102a,102bが上下に並んでいるように図示されているが、これは模式的な図であり、実際には二本の排出管路102a,102bは同じ高さ位置で水平方向に並んでいる。
【0022】
空気分離減速器104a,104bは、排出管路102a、102bの終端部に設けてあって、下流側が下向きに傾斜する外管141と、外管141内に設けた多孔状の内管142を備え、内管142の上端部(上流側)が排出管路102a,102bと連通しており、下端部(下流側)がロータリーバルブ105a,105bと連通していて、内管142の外側を外管141が覆う形になっている。そして、外管141の側面から排気管107a,107bがロータリーバルブ105a,105bとは異なる方向に枝分かれして延びており、排気管107a,107b側から吸引することで、空気が多孔状の内管142を通して吸い込まれ、玄米が減速して内管142の下端部からロータリーバルブ105a,105b側へと排出されるものである。
【0023】
ロータリーバルブ105a,105bは、ケーシング151内に回転可能に軸支された回転羽根152を設けたものであり、回転羽根152の回転によって、玄米を所定量ずつ排出するものである。なお、一般にロータリーバルブは構造上空気漏れを生じやすいものであるが、ここではケーシング151と回転羽根152の加工精度を高め、クリアランスを極小にして気密性を保つエアシールド型のものを用いており、搬送効率の低下を抑えている。
【0024】
タンク106a,106bは、略円筒形で、下部が下方に向けて窄まった形状であり、上端部にロータリーバルブ105a,105bの出口が接続されていて、玄米が貯留されるものである。
【0025】
排気管107a,107bは、空気分離減速器104a,104bの外管141から下向きに延びており、終端部がバグフィルタ108a,108bの入口に接続されている。
【0026】
バグフィルタ108a,108bはサイクロンを応用したもので、上側にエアエレメント181を備え、下側にダストボックス182を備えており、入口からエアエレメント181を経由して出口に至る経路を有する。出口には、ブロワ109a,109bの吸引口が接続されている。搬送管路内の空気は、ブロワ109a,109bに吸引される過程でこのバグフィルタ108a,108bを通過するものである。この際、玄米表面に付着している微粒子が、空気分離減速器104a,104bの内管142を通り抜け、バグフィルタ108a,108b内を旋回する過程で、質量の重い微粒子はダストボックス182内に溜まり、軽い微粒子はエアエレメント181により捕集され、微粒子が除かれた空気はブロワ109a,109bへ吸引される。ダストボックス182の下端部には開閉自在な蓋を設けてあって、空気式搬送装置の使用時には蓋が閉じられており、空気式搬送装置の停止時に蓋を開けて溜まった微粒子を回収できる。
【0027】
ブロワ109a,109bは、空気を低圧から高圧へ送り出す装置であり、吸引口をバグフィルタ108a,108bの出口に接続してあり、排気口を大気解放してある。
【0028】
このように構成された空気式搬送装置の第一実施形態は、ホッパ103から、供給管路101を経て経路切替装置100へ至り、経路切替装置100により何れかの排出管路102a,102bが選択され、空気分離減速器104a,104bおよびロータリーバルブ105a,105bを経て、タンク106a,106bへと至る経路を備えるものであり、ブロワ109a,109bにより空気を吸引することで、玄米がホッパ103から何れかのタンク106a,106bへと搬送されるものである。
【0029】
次に、上記の空気式搬送装置に設けられた、本発明の経路切替装置100の第一実施形態について、
図2〜
図4に基づき説明する。上記のように、この経路切替装置100は、搬送管路における、一本の供給管路101(一方側管路110)と二本の排出管路102a,102b(他方側管路120)の分岐部に設置されるものであって、ケース1と、支点管2と、作動管3と、スライダ4と、アクチュエータ5と、付勢部材6を備える。なお、上記のとおり
図1は模式的なものであって、
図2は経路切替装置100を上面視したものであり、以下の第一実施形態の説明において左右とは、上流側(一方側)から見た際の左右方向を示す。
【0030】
ケース1は、ケース本体1cと、ケース本体1cに固定されるベース部材18を備える。ケース本体1cは、金属製で略直方体形の箱状のものであって、上流側(一方側)の本体一方壁11cに、一つの円形の貫通孔を設けてある。本実施形態では、本体一方壁11cが、本発明におけるケース1の一方壁11であり、貫通孔が一方貫通孔13である。また、本体一方壁11cに対向する下流側(他方側)の本体他方壁12cに、左右二つの円形の貫通孔12ca,12cbを設けてあり、さらに本体左側壁16に、アクチュエータ5を取り付けるための取付孔17を設けてある。ケース本体1cは、この四つの孔以外の部分は密閉された構造となっている。また、本体他方壁12cの内側面には、本体他方壁12c側の肉厚を増す樹脂製のベース部材18を設けてあり、ベース部材18は、二つの貫通孔12ca,12cbに対応する位置に同形状の孔18a,18bを形成してある。本実施形態では、本体他方壁12cとベース部材18を合わせたものが、本発明におけるケース1の他方壁12であり、本体他方壁12cの貫通孔12ca,12cbとこれらに連通するベース部材18の孔18a,18bを合わせたものが、本発明における他方貫通孔14a,14bである。さらに、ベース部材18の内側面に凹曲面状の被摺動面15を形成してある。被摺動面15の形状の詳細については後述する。
【0031】
支点管2は、ケース1の一方壁11と他方壁12の間隔よりも十分に短い断面円形の直管部21と、直管部21の一方側端に形成したフランジ部22からなり、直管部21の外径は一方貫通孔13に丁度嵌まる大きさである。この支点管2の直管部21を、一方貫通孔13に上流側から挿入してあって、直管部21は一方壁11からケース1内部に突出しており、フランジ部22がケース1の一方壁11に一方側から当接して接合してある。
【0032】
そして、一方貫通孔13には、供給管路101(一方側管路110)が接続されている。より詳しくは、一方貫通孔13に支点管2を取り付けてあり、支点管2に、支点管2と供給管路101を接続するための供給管基部111を取り付けてあって、供給管基部111に供給管路101の終端部を、継手を介して接続してある。供給管基部111は、断面円形の直管部112と、直管部112の他方側端に形成したフランジ部113からなり、フランジ部113を支点管2のフランジ部22に接合してある。なお、供給管基部111の直管部112は、支点管2の直管部21および供給管路101と同径である。
【0033】
また、各他方貫通孔14a,14bには、排出管路102a,102b(他方側管路120)が接続されている。より詳しくは、各他方貫通孔14a,14bに、他方貫通孔14a,14bと排出管路102a,102bを接続するための排出管基部121を取り付けてあって、排出管基部121に排出管路102a,102bの始端部を、継手を介して接続してある。排出管基部121は、断面円形で一方側端に向けて直径が漸増する二本の直管部122a,122bと、二本の直管部122a,122bの一方側端に一体に形成したフランジ部123からなり、フランジ部123がケース1の他方壁12に他方側から当接して接合してある。なお、排出管基部121の直管部122a,122bの一方側端は、他方貫通孔14a,14bと同径であり、他方側端は、排出管路102a,102bと同径である。
【0034】
作動管3は、支点管2の直管部21の外径よりも内径が大きな直管からなり、一端(一方側の端部)が支点管2の直管部21を呑み込んでいて、下流側の作動管3が上流側の支点管2の口径方向の外側を取り囲んでおり、作動管3と支点管2が連通している。そして、作動管3は、支点管2に、上下方向軸(垂直軸)周りに回動自在に軸支されている。作動管3を軸支する回転軸31は、支点管2の他方側端部から上下に突出しており、支点管2の内部を貫通しないものである。また、作動管3の他端(他方側の端部)は、ケース1の他方壁12の内側面に設けたベース部材18に向かってその直前まで延びていて、作動管3が回動してもベース部材18には接触しないようにしてある。作動管3は、他端が、左側の他方貫通孔14aに対向する位置から、右側の他方貫通孔14bに対向する位置までの範囲で、左右に首を振るように回動するものであって、これにより経路が切り替わる。
【0035】
そして、作動管3の他端には、樹脂製のスライダ4を設けてある。スライダ4は、作動管3の回転軸31を中心軸とする円柱の一部に対応する形状のものであって、中心に孔4aを形成してあり孔4aを介して作動管3に外挿してあり、作動管3の長手方向に沿って移動可能となっている。その他方側面は、作動管3の回転軸31を中心軸とする円柱面の一部からなる凸曲面状の摺動面41となっている。換言すれば、摺動面41は、円柱面の母線方向に離隔して対向する二本の円弧辺と、円柱面の円周方向に離隔して対向する二本の直線辺とで囲まれた面であって、円柱の中心軸に直交する方向から見て矩形の面である。これに対し、ベース部材18の被摺動面15は、摺動面41と同形状かつ同寸法の凹曲面となっている。スライダ4は、作動管3の他端面よりも他方側に突出しており、作動管3の回動に伴って、摺動面41が被摺動面15に密接して摺動するものであって、作動管3が他方貫通孔14a,14bと連通した際に、隙間が生じないようになっている。また、スライダ4の円周方向幅(左右幅)は、ケース1の左右方向の内寸よりも短い大きさ、すなわち作動管3が左右に回動してもケース1に接触しない大きさであって、かつ、
図4(a)に示すように、作動管3の他端が左側の他方貫通孔14aに連通した状態で、右側の他方貫通孔14bを塞ぎ、
図4(b)に示すように、作動管3の他端が右側の他方貫通孔14bに連通した状態で、左側の他方貫通孔14aを塞ぐものである。したがって、ベース部材18の二つの孔18a,18b(他方貫通孔14a,14b)は、作動管3の回転軸31を中心とする円周方向に間隔をあけて形成されている。
【0036】
また、スライダ4の一方側面には、平板状で中心に孔を形成した座板42を取り付けてある。座板42も孔を介して作動管3に外挿されており、スライダ4と一体になっている。そして、作動管3の長手方向中間部には、環状のバネ押さえ具61を外挿して固定してあり、座板42とバネ押さえ具61の間に、コイルバネからなる付勢部材6を外挿してある。バネ押さえ具61が作動管3に固定されており、座板42およびスライダ4が作動管3に対して長手方向に移動可能であるから、付勢部材6はスライダ4を他端側に向けて付勢し、被摺動面15に対して摺動面41を押し付けている。なお、バネ押さえ具61の固定位置は変更可能であって、変更することにより付勢部材6の撓み量が変化して、スライダ4に対する付勢力を調整できる。
【0037】
さらに、このような作動管3およびスライダ4などを回動させるアクチュエータ5が、ケース1(ケース本体1c)の本体左側壁16に取り付けてある。アクチュエータ5は、本体左側壁16の外面に取り付けるアクチュエータ本体部54と、本体左側壁16の取付孔17を通してケース1内に延びるアーム51を有し、遠隔操作によりアーム51をアクチュエータ本体部54に対して長手方向に進退させることができる。そして、作動管3の長手方向中間部の左側面にロッド受具52を取り付けてあり、アーム51の先端とロッド受具52を棒状の連結ロッド53で連結してある。アーム51と連結ロッド53および連結ロッド53とロッド受具52の連結部は、それぞれ上下方向軸(垂直軸)周りに回動自在であり、これによって、アーム51を進退させることで作動管3が回動するものであり、すなわち、遠隔操作で経路を切り替えられる。
【0038】
すなわち、
図4(a)に示すように、アクチュエータ5が作動管3を左側に引き寄せれば、作動管3の他端が左側の他方貫通孔14aと連通し、供給管路101から左側の排出管路102aへと至る経路となり、
図4(b)に示すように、アクチュエータ5が作動管3を右側に押し込めば、作動管3の他端が右側の他方貫通孔14bと連通し、供給管路101から右側の排出管路102bへと至る経路となる。
【0039】
このように構成した経路切替装置100の第一実施形態によれば、一本の作動管3を回動させて経路を切り替えるものであり、それ自体が小さくて軽く、摺動面41が作動管3の片側だけであるから、それを動かすためのアクチュエータ5も低出力のものでよいので、装置全体がコンパクトで安価なものとなる。また、作動管3に設けたスライダ4の摺動面41がケース1のベース部材18の被摺動面15に密接して摺動し、作動管3の他端が左側の他方貫通孔14aに連通した状態で右側の他方貫通孔14bを塞ぎ、右側の他方貫通孔14bに連通した状態で左側の他方貫通孔14aを塞ぐ。作動管3と連通していない方の他方貫通孔が塞がれていないと、大気から空気が入り込んで連通した方の管路の圧力が低下してしまい、搬送効率が低下して場合によっては搬送不能となる。そこで、スライダ4が搬送管路の経路を切り替えるとともに、選択されなかった経路から入り込む空気を遮断するので、管路が外部と連通することがなく、気密性が高い。さらに、スライダ4の摺動面41とベース部材18の被摺動面15において、相互の密接度合いが低すぎると、気密性が確保できず搬送力が低下し、相互の密接度合いが高すぎると、作動管3の動きが重くなり、また摩耗が大きくなり結局気密性が確保できず搬送力が低下するところ、摺動面41が作動管3の回転軸31を中心軸とする円柱面であり、被摺動面15が摺動面41と同形状かつ同寸法の凹曲面であるから、摺動面41を被摺動面15に密接させつつ、作動管3をスムーズに回動させることができ、また摺動面41と被摺動面15の全体に均一に力が作用するので、一部のみが摩耗することがない。また、付勢部材6によって、より確実に摺動面41が被摺動面15に密接し、より気密性が高いものであって、作動管3が回動しても付勢部材6の撓み量は変化しないので、被摺動面15に対する摺動面41の押圧力は常に一定となる。そして、摺動面41と被摺動面15とが摩耗したとしても、付勢部材6がスライダ4をベース部材18に押し付けるので、摺動面41と被摺動面15との密接状態が長期間にわたって維持される。さらに、支点管2と作動管3の連通部において、吸引する下流側の作動管3に上流側の支点管2を呑み込ませることで、簡易な連通構造とすることができる。このような構成であれば、支点管2と作動管3の間に隙間があっても、そこから玄米が漏れることはなく、連通部を含めた作動管3全体がケース1に覆われていて外部と遮られているので、搬送管路内の圧力や風量が低下することもない。
【0040】
そして、この経路切替装置100を備えた空気式搬送装置の第一実施形態によれば、経路切替装置100がコンパクトであるから、供給管路101(一方側管路110)や排出管路102a,102b(他方側管路120)が入り組んだ狭い場所にも設置可能である。また、経路切替装置100の気密性が高く、空気が漏れないので、ブロワ109a,109bも低出力のものでよく、空気式搬送装置全体がコンパクトで安価なものとなる。
【0041】
次に、
図5に基づき、空気式搬送装置の第二実施形態について、第一実施形態との共通点、相違点の順に説明する。第二実施形態は、第一実施形態と同様に、経路切替装置100の第一実施形態と、搬送管路となる一方側管路110および他方側管路120を備え、ここでは一方側管路110が一本の供給管路101からなり、他方側管路120が二本の排出管路102a,102bからなるものであって、供給管路101と二本の排出管路102a,102bが1つの経路切替装置100に接続されている。また、供給管路101の始端部側には、ホッパ103を設けてあり、それぞれの排出管路102a,102bの終端部側には、空気分離減速器104a,104b、ロータリーバルブ105a,105bおよびタンク106a,106bを連続して設けてある。さらに、空気分離減速器104a,104bからは排気管107a,107bがロータリーバルブ105a,105bとは異なる方向に枝分かれして延びている。なお、第二実施形態の搬送管路に設けた各構成機器、すなわち、ホッパ103、空気分離減速器104a,104b、ロータリーバルブ105a,105b、タンク106a,106bならびに後述のバグフィルタ108およびブロワ109は、何れも第一実施形態のものと同じである。ここまでは第一実施形態との共通点である。次に相違点として、第二実施形態では、二本の排気管107a,107bが合流継手171により合流しており、合流継手171の下流側には別の排気管172が接続してあり、排気管172の終端部にバグフィルタ108を設けてあり、バグフィルタ108の出口にブロワ109を接続してある。よって、第二実施形態においては、バグフィルタ108とブロワ109を一つずつ備えており、一つのブロワ109によって、両方の排出管路102a,102bから空気を吸引する。このように、第二実施形態は、一方側管路110が上流側、他方側管路120が下流側であり、他方側管路120にブロワ109を接続した構成となっている。
【0042】
この空気式搬送装置の第二実施形態が備える経路切替装置100は、空気式搬送装置の第一実施形態が備えるものと同じであるから、同じ動作をして同じ作用効果を奏するものであり、空気式搬送装置の第二実施形態は、空気式搬送装置の第一実施形態とバグフィルタ108およびブロワ109の数が異なるだけのものであるから、やはり同様の作用効果を奏するものである。
【0043】
次に、
図6に基づき、空気式搬送装置の第三実施形態について、第一実施形態との相違点に絞って説明する。第三実施形態は、経路切替装置200の第二実施形態と、搬送管路となる一方側管路110および他方側管路120を備え、ここでは一方側管路110が一本の排出管路102からなり、他方側管路120が二本の供給管路101a,101bからなるものであって、供給管路101a,101bと排出管路102がそれぞれ経路切替装置200に接続されている。また、それぞれの供給管路101a,101bの始端部側には、ホッパ103a,103bを設けてあり、排出管路102の終端部側には、空気分離減速器104、ロータリーバルブ105およびタンク106を連続して設けてある。さらに、空気分離減速器104からは排気管107がロータリーバルブ105とは異なる方向に枝分かれして延びており、排気管107の終端部にバグフィルタ108を設けてあり、バグフィルタ108の出口にブロワ109を接続してある。なお、第三実施形態の搬送管路に設けた各構成機器、すなわち、ホッパ103a,103b、空気分離減速器104、ロータリーバルブ105、タンク106、バグフィルタ108およびブロワ109は、何れも第一実施形態のものと同じである。このように、空気式搬送装置の第三実施形態は、一方側管路110が下流側、他方側管路120が上流側であり、一方側管路110に対して下流側にブロワ109を接続した構成となっている。
【0044】
供給管路101a,101bは、ホッパ103a,103bの下端部から上向きに延びており、垂直部分の一部が透明管114a,114bになっていて、玄米の通過状況を目視可能となっている。そして、供給管路101a,101bは上側で屈曲して水平向きになっており、供給管路101a,101bの終端部が経路切替装置200に接続されている。そして、経路切替装置200の、供給管路101a,101bが接続された面の反対側面には、水平向きに延びる一本の排出管路102が接続されており、経路切替装置200は、下流側の一本の排出管路102に対して、上流側の二本の供給管路101a,101bの何れかを連通させて経路を切り替えるものである。この経路切替装置200の構造については、後述する。なお、
図6においては、二本の供給管路101a,101bが上下に並んでいるように図示されているが、これは模式的な図であり、実際には二本の供給管路101a,101bは同じ高さ位置で水平方向に並んでいる。
【0045】
このように構成された空気式搬送装置の第三実施形態は、経路切替装置200により何れかの供給管路101a,101bが選択され、選択された供給管路101a,101bに接続されたホッパ103a,103bから、供給管路101a,101b、経路切替装置200、空気分離減速器104およびロータリーバルブ105を経て、タンク106へと至る経路を備えるものであり、ブロワ109により空気を吸引することで、玄米が何れかのホッパ103a,103bからタンク106へと搬送されるものである。
【0046】
次に、上記の空気式搬送装置に設けられた、本発明の経路切替装置200の第二実施形態について、
図7および
図8に基づき、第一実施形態との相違点に絞って説明する。上記のように、この経路切替装置200は、搬送管路における、二本の供給管路101a,101b(他方側管路120)と一本の排出管路102(一方側管路110)の分岐部に設置されるものであって、ケース1と、支点管2と、作動管3と、スライダ4と、アクチュエータ5と、付勢部材6を備える、第一実施形態と略同様の構成であり、支点管2と作動管3の連通部の形状のみが異なるものである。なお、上記のとおり
図6は模式的なものであって、
図7は経路切替装置200を上面視したものであり、以下の第二実施形態の説明において左右とは、上流側(他方側)から見た際の左右方向を示す。
【0047】
支点管2は、ケース1の一方壁11と他方壁12の間隔よりも十分に短く、断面円形で他方側に向けて直径が漸増する直管部21と、直管部21の一方側端に形成したフランジ部22からなり、直管部21の一方側端部の外径は一方貫通孔13に丁度嵌まる大きさである。この支点管2の直管部21を、一方貫通孔13に上流側から挿入してあって(一方貫通孔13よりも直管部21の他方側端の方が径が大きいので、一方壁11を分割して直管部21の外周側から嵌める)、直管部21は一方壁11からケース1内部に突出しており、フランジ部22が一方壁11に一方側から当接して接合してある。
【0048】
そして、一方貫通孔13には、排出管路102(一方側管路110)が接続されている。より詳しくは、一方貫通孔13に支点管2を取り付けてあり、支点管2に、支点管2と排出管路102を接続するための排出管基部121を取り付けてあって、排出管基部121に排出管路102の始端部を、継手を介して接続してある。排出管基部121は、断面円形の直管部122と、直管部122の他方側端に形成したフランジ部123からなり、フランジ部123を支点管2のフランジ部22に接合してある。なお、排出管基部121の直管部122は、支点管2の直管部21の一方側端部および排出管路102と同径である。
【0049】
また、各他方貫通孔14a,14bには、供給管路101a,101b(他方側管路120)が接続されている。より詳しくは、他方貫通孔14a,14bに、他方貫通孔14a,14bと供給管路101a,101bを接続するための供給管基部111を取り付けてあって、供給管基部111に供給管路101a,101bの終端部を、継手を介して接続してある。供給管基部111は、断面円形で一方側端に向けて直径が漸増する二本の直管部112a,112bと、二本の直管部112a,112bの一方側端に一体に形成したフランジ部113からなり、フランジ部113がケース1の他方壁12の他方側から当接して接合してある。なお、供給管基部111の直管部112a,112bの一方側端は、他方貫通孔14a,14bと同径であり、他方側端は、供給管路101a,101bと同径である。
【0050】
作動管3は、支点管2の直管部21の他方側端部の内径よりも外径が小さな直管からなり、支点管2の直管部21が作動管3の一端を呑み込んでいて、下流側の支点管2が上流側の作動管3の口径方向の外側を取り囲んでおり、作動管3と支点管2が連通している。そして、作動管3は、支点管2に、上下方向軸(垂直軸)周りに回動自在に軸支されている。作動管3を軸支する回転軸31は、作動管3の一端から上下に突出しており、作動管3の内部を貫通しないものである。
【0051】
この経路切替装置200の第二実施形態は、
図8(a)に示すように、アクチュエータ5が作動管3を左側に引き寄せれば、作動管3の他端が左側の他方貫通孔14aと連通し、左側の供給管路101aから排出管路102へと至る経路となり、
図8(b)に示すように、アクチュエータ5が作動管3を右側に押し込めば、作動管3の他端が右側の他方貫通孔14bと連通し、右側の供給管路101bから排出管路102へと至る経路となる。
【0052】
この経路切替装置200の第二実施形態は、第一実施形態と空気の流れの向きが逆転したものであるが、同様の作用効果を奏するものであり、空気式搬送装置の第三実施形態は、集合搬送である点が、分散搬送である空気式搬送装置の第一実施形態と異なるが、やはり同様の作用効果を奏するものである。
【0053】
本発明は、上記の実施形態に限定されない。たとえば、空気式搬送装置は、一本の一方側管路が三本以上の他方側管路に分岐しているものであってもよく、その場合、経路切替装置もそれに応じた構成となる。また、搬送管路の上流にブロワを設け、上流側から空気を吹き込む圧送式のものや、搬送管路の上流と下流にブロワを設け、上流側から空気を吹き込みかつ下流側から空気を吸い込む圧送吸引式のものであってもよい。さらに、空気式吸引装置は、ブロワの他、ファンや圧縮機など、空気流を作り出すものであればどのようなものであってもよく、管路側から吸引すれば吸引式となり、大気側から吸引すれば圧送式となる。また、経路切替装置において、スライダの摺動面が作動管の回転中心を中心とする球面の一部からなる凸曲面であり、ベース部材の被摺動面が摺動面と同形状かつ同寸法の凹曲面であるものであってもよく、その場合、作動管は、一軸周りの二次元的な回動ではなく、一点を中心として三次元的に回動するものであってもよい。また、支点管と作動管の連通部においては、ベローズなどの伸縮部材により両管を隙間なく接合してもよい。さらに、スライダとベース部材の素材は、相互に密接しかつ滑らかに摺動するものであれば、種々の樹脂や金属など、どのようなものであってもよく、スライダとベース部材が異なる素材からなるものであってもよい。また、ベース部材がなく、ケース本体の本体他方壁に被摺動面を形成したものであってもよい。さらに、搬送物は玄米に限られず、その他の穀物や豆類、あるいは樹脂製または金属製のペレットなど、種々の粒体が対象となる。